説明

ホットカーペット用表面材、およびその製造方法

【課題】 表面が汚れにくく、表面に汚れが付いた場合にはその除去が容易であり、耐荷重性に優れ、表面材自体の構成材料による凹凸等の影響が表面に出現せず、低コストで提供し得るホットカーペット用表面材と、その製造方法を提供する。
【解決手段】 上から順に、ポリプロピレンフィルム1、第1のポリオレフィン系樹脂層3、ガラス不織布層4、第2のポリオレフィン系樹脂層5、フェルト層6が積層され、上記フィルム1は、裏面に装飾層2が形成され、上記第1のポリオレフィン系樹脂層3の上記フィルム1との接着面が表面酸化処理されている。
上記フィルム1の装飾層2上に、第1のポリオレフィン系樹脂層3を、該樹脂層3の該フィルム1との接着面を表面酸化処理しつつ、押出しラミネートし、同時にガラス不織布層4を貼着し、
該ガラス不織布層4上に、第2のポリオレフィン系樹脂層5を押出しラミネートしつつ、フェルト層6を貼着する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットカーペット用表面材と、その製造方法とに関し、特に、表面が汚れにくく、また表面に汚れが付いた場合にはその除去が容易であるとともに、耐荷重性に優れるばかりでなく、表面材自体の構成材料による凹凸等の影響が表面に出現せず、しかも生産効率が優れた上記表面材と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりホットカーペット用表面材としては、保温性、意匠性に優れるという観点から、表面が繊維素材よりなるものが一般的に使用されている。
しかし、特にキッチンやダイニングなどにおいて、また小さい子供のいる家庭などにおいては、食物、飲料、調味料などをこぼすことなどにより汚れが頻繁に付着し、この除去を容易にするために、近年、表面が合成樹脂製であるホットカーペット用表面材が提案されている(例えば、特開平8−84653号、特開2003−294257公報等参照)。
【0003】
上記のようなホットカーペット用表面材として、成形加工性や意匠付与性などに優れることから、塩化ビニル樹脂からなる表面材なども提案されているが、火災の際などにおける低温での燃焼時に有毒ガスを発生する虞れがあることや、昨今の地球環境保全の観点から、塩化ビニル樹脂から他の素材への代替の市場要求が強くなってきている。
上記の特開2003−294257公報においても、ホットカーペット用の表面材としてポリオレフィン系樹脂が使用されている。
【0004】
この先提案のものは、裏面に意匠層を形成したポリオレフィン系樹脂からなる表面保護層と、補強のためのガラス不織布層やガラスネット等をポリオレフィン系樹脂層で挟持した心材層と、断熱のためのフェルト層とからなり、ポリオレフィン系樹脂は接着性に劣ることから、表面保護層と心材層とを強固に接着するために両層間に不織布層を介在させている。
【0005】
このように、先提案のものでは、表面保護層と心材層との間に不織布層を介在させるために、工程が煩雑になり、生産効率の低化を招いている。
また、耐荷重性を向上させるために、上記の不織布層に加えて、あるいは上記の不織布層に代えて、ポリエステル等によるネットを使用することもあるが、これらの不織布やネットの目が、表面に凹凸として出現してしまうことがある。
これを解消するために、不織布やネットが完全に埋没するように、心材層におけるポリオレフィン系樹脂層を厚くしているが、ポリオレフィン系樹脂を1回の加工で厚く積層することはできないため、複数回の積層工程を必要とし、生産効率をより一層低化させる要因となっている。
【特許文献1】特開平8−84653号公報
【特許文献2】特開2003−294257公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の諸点を考慮し、表面が汚れにくく、また表面に汚れが付いた場合にはその除去が容易であって、耐荷重性に優れるのみならず、表面材自体の構成材料による凹凸等の影響が表面に出現することのない、しかも生産効率の優れたホットカーペット用表面材と、その製造方法とに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を行った結果、
(1)心材層の最上層を構成するポリオレフィン系樹脂層と、表面保護層とを、不織布等の言わば接着補助材の介在を必要とせずに強固に接着させるには、該ポリオレフィン系樹脂層の表面保護層との接着面に接着性を付与すればよく、このためには、該ポリオレフィン系樹脂層の押し出しラミネートの際に、該樹脂層に表面酸化処理を施せばよいこと、
(2)また、耐荷重性を向上させるためには、心材層に内装する補強材としてガラス不織布層を使用し、該ガラス不織布層を上・下面で挟持するポリオレフィン系樹脂層で完全に埋没させればよいこと、
(3)上記(2)のような構成にすることにより、補強のためのガラス不織布による凹凸はもとより、ホットカーペットの内臓ヒーターによる凹凸をも、ほぼ完全に解消できること、
を見出した。
【0008】
本発明は、以上の知見に基づいてなし得たものであり、
〔1〕上から順に、ポリプロピレンフィルム、第1のポリオレフィン系樹脂層、ガラス不織布層、第2のポリオレフィン系樹脂層、フェルト層が積層され、
前記ポリプロピレンフィルムの前記第1のポリオレフィン系樹脂層との接着面(すなわち、裏面)に装飾層が形成され、
前記第1のポリオレフィン系樹脂層の前記ポリプロピレンフィルムとの接着面が表面酸化処理されている
ことを特徴とするホットカーペット用表面材、および
〔2〕裏面に装飾層が形成されたポリプロピレンフィルムの該装飾層上に、第1のポリオレフィン系樹脂層を、該樹脂層の該ポリプロピレンフィルムとの接着面を表面酸化処理しつつ、押し出しラミネートし、同時にガラス不織布層を貼着し、
該ガラス不織布層上に、第2のポリオレフィン系樹脂層を押し出しラミネートしつつ、フェルト層を貼着する
ことを特徴とする〔1〕に記載のホットカーペット用表面材の製造方法、
を要旨とする。
なお、前記の装飾層は、前記第1のポリオレフィン系樹脂層に対して接着性を有するインクで形成されていてもよく、また前記ガラス不織布層は、第1,第2のポリオレフィン系樹脂層中に完全に埋没していることが好ましい。
【0009】
本発明のホットカーペット用表面材において、最上層に位置するポリプロピレンフィルムは、表面保護層としての役割をなすものであり、裏面(すなわち、第1のポリオレフィン系樹脂層との接着面)に装飾層が形成されたものである。
このポリプロピレンフィルムは、この種の表面材の保護層として通常使用される通常のポリプロピレンフィルムを使用することができる。
フィルムの厚さも、この種の表面材の保護層として通常使用される通常の厚さで充分であり、本発明では、表面保護層としての作用を良好に発現し、しかも取り扱い性等の面から、50〜300μm程度のものを好適に使用することができる。
【0010】
上記ポリプロピレンフィルムの裏面に設けられる装飾層は、例えば、ポリプロピレンフィルムの裏面にコロナ放電処理した後、ロールコーティング、ドクターナイフコーティング、ロータリースクリーンティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、その他適宜の手段により形成される。
このとき使用するインクは、ポリプロピレンフィルムに通常使用されているどのようなインクであってもよいが、下記する第1のポリオレフィン系樹脂層に対して接着性を有するインクであってもよい。
【0011】
この接着性を有するインクは、例えば、エチレン−酢酸ビニル系、ブタジエン系、エポキシ系等のアンカーコート剤に着色剤を配合したもの、あるいは特開2001−271015公報に記載のポリエステルポリオール樹脂またはポリエステルポリウレタン樹脂を含有するインクが好ましく使用できる。
このポリエステルポリウレタン樹脂は、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合により得られる両末端にヒドロキシル基を有するポリエステルを、ジイソシアネートを用いて鎖伸長して得られる樹脂であり、ポリエステルポリウレタン樹脂は、上記のポリエステルをジイソシアネートを用いて鎖伸長して得られる両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを、さらにジアミンを用いて鎖伸長して得られる樹脂である。
上記の接着性を有するインクには、塩素化ポリプロピレン、アニリンブラック、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合物、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシアルキル共重合物の少なくとも1つを含有していてもよい。
【0012】
また、上記のような接着性を有するインクに代えて、通常のインクを使用して上記の手段により装飾層を形成し、その装飾層上に更にアンカーコート剤を使用して装飾層と同様の手段によりアンカーコート層を形成する等の手法によってもよい。
なお、アンカーコート剤は、接着性を有するインクと同様の樹脂成分を使用することができる。
【0013】
このようにして装飾層やアンカーコート層を形成することで、表面保護層の裏面、すなわち第1のポリオレフィン系樹脂層との接着面にも、より良好な接着性を付与することが可能となる。
さらに、接着性を向上させるために、装飾層やアンカーコート層を形成した表面保護層の裏面に、コロナ放電処置等を行ってもよい。
【0014】
次に、裏面に装飾層やアンカーコート層が形成されたポリプロピレンフィルムからなる表面保護層の裏面に、第1のポリオレフィン系樹脂層が、次のようにして形成される。
すなわち、表面保護層の裏面に、押し出しラミネート等の方法で第1のポリオレフィン系樹脂層を積層する。この第1のポリオレフィン系樹脂層の表面は、該樹脂の溶融温度以上に加熱されるため、この高温で表面酸化処理されることとなる。この温度は、使用するポリオレフィン系樹脂によって、290〜330℃程度の範囲から最適な温度が選択される。
なお、この高温での表面酸化処理では、使用するポリオレフィン系樹脂によっては、接着強度が不足する場合があり、このような場合には、高温での表面酸化処理に、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等を付加して、接着強度の向上を図ることもできる。
本発明において、上記のような表面酸化処理を行うことで、表面保護層と第1のポリオレフィン系樹脂層の接着性が向上し、表面保護層と第1のポリオレフィン系樹脂層との間に、不織布等の接着補助材を介在させる必要がなくなる。
【0015】
この表面酸化処理によって、本発明では、上記のポリプロピレンフィルムと第1のポリオレフィン系樹脂層との接着性を良好にすることができる。
もちろん、ポリプロピレンフィルムの裏面に形成する装飾層を前記した接着性を有するインク等により行えば、この装飾層との相乗作用により、一層良好な接着性を確保することができる。
【0016】
上記の第1のポリオレフィン系樹脂層には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の融点100℃以上の樹脂が使用され、これらのポリオレフィン系樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、適宜の組み合わせによる2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記第1のポリオレフィン系樹脂層の裏面(下側)に、ガラス不織布層が積層される。ガラス不織布の積層は、表面保護層と第1のポリオレフィン系樹脂層との貼り合わせ時や直後に行うことが好ましい。
このガラス不織布としては、従来から、床材や、カーペット等の素材として使用されているものが使用できる。
ガラス不織布の厚さ(目付け量)は、薄すぎれば、本発明におけるホットカーペット用表面材に必要な耐荷重性を付与することができないばかりか、本発明のホットカーペット用表面材の下側に配置されるホットカーペットの内臓ヒーターによる凹凸を解消することができず、逆に厚すぎても、この耐荷重性や凹凸解消効果が飽和するのみならず、折り曲げや巻き取り等の作業性が極端に低化したり、樹脂含浸が不十分になり層間剥離の原因になるため、20〜200g/m程度とすることが適している。
【0018】
上記のガラス不織布層の裏面(下側)には、第2のポリオレフィン系樹脂層が積層される。
この第2のポリオレフィン系樹脂層としては、前記した第1のポリオレフィン系樹脂層と同様のポリオレフィン系樹脂が使用される。
【0019】
本発明において、上記のガラス不織布層を、上記の第1,第2のポリオレフィン系樹脂層に完全に埋没させることで、ホットカーペットの内臓ヒーターによる凹凸の出現、あるいはガラス不織布層の層間剥離を防止することができる。
【0020】
なお、本発明において、第1のポリオレフィン系樹脂層は、該樹脂層の裏面(下側)に積層されるガラス不織布層を触覚的あるいは視覚的に隠蔽するための層としての役割をも有し、第2のポリオレフィン系樹脂層は、本発明の表面材に充分な耐荷重性を付与するためと、ガラス不織布層や第1のポリオレフィン系樹脂層との相乗作用で、本発明の表面材の裏面(下側)に配置されるホットカーペット内臓ヒーターによる凹凸を解消するための層としての役割をも有し、さらにこれら両ポリオレフィン系樹脂層がガラス不織布層に含浸していることで、ガラス不織布層の層間剥離を防止する効果をも有する。
これらの作用を良好に得る上で、第1、第2のポリオレフィン系樹脂層の厚さは、両者とも、50〜500μm程度が好ましい。
【0021】
なお、ガラス不織布層は、上記第1、第2のポリオレフィン系樹脂層で完全に埋没して積層され、積層位置は、第1のポリオレフィン系樹脂層の厚さ:第2のポリオレフィン系樹脂層の厚さ=1:1〜5の式を満足する位置が好ましく、より好ましくは1:1〜3の位置である。
第1のポリオレフィン系樹脂層が厚くなると、製品表面材の表面側への反りが強くなり、製品の品質上問題であるのみならず、第1のポリオレフィン系樹脂層が厚くなって表面保護層からの距離が大きくなるのに従い製品としての剛性が必要以上に高くなって製品が板状になり、巻いたり曲げたりができなくなり、取り扱い性が極めて悪くなる。
また、ガラス不織布層への第1,第2のポリオレフィン系樹脂の含浸度合いは、これらの樹脂層中にガラス不織布層が完全に埋没していることが必要であり、含浸が不十分でガラス不織布層の未含浸部分が存在すると、製品としての使用中に動荷重による負荷などでガラス不織布層の層間剥離が生じる虞れがある。
【0022】
上記の第2のポリオレフィン系樹脂層の裏面(下側)に積層されるフェルト層は、上記した先提案と同様に断熱層として作用するものであり、目付け量が小さすぎれば、所望の断熱効果を得ることができず、大きすぎると、この断熱効果が飽和するのみならず、折り曲げや巻き取り等の作業性が極端に低化するため、100〜500g/m程度とすることが適している。
また、このフェルト層は、どのような繊維で構成されたものであってもよく、また繊維等の接着剤として作用する溶融繊維が配合されているものであっても、配合されていないものであってもよく、この溶融繊維の配合割合は、0〜30重量%程度が適している。
【0023】
以上のような構成を有する本発明のホットカーペット用表面材は、次のような本発明の製造方法によって得ることができる。
先ず、本発明のホットカーペット用表面材の保護層となるポリプロピレンフィルムを準備する。
このフィルムの裏面には、前記した種々の手法による装飾層が形成されている。
さらに、このフィルムと下記する第1のポリオレフィン系樹脂層との接着性を向上させるために、装飾層を形成したフィルムの裏面に、コロナ放電処置等を行ってもよい。
【0024】
次に、このフィルムの装飾層上に、第1のポリオレフィン系樹脂層を、該フィルムとの接着面を、前記したような種々の手法で表面酸化処理しつつ、押し出しラミネートする。
すなわち、第1のポリオレフィン系樹脂を加熱溶融し、これを上記のポリプロピレンフィルムの装飾層上に押し出して、該フィルムにラミネートする。このラミネートに際して、第1のポリオレフィン系樹脂層の、ポリプロピレンフィルムとの接着面に、表面酸化処理を施す。
【0025】
この押し出し、表面酸化処理、およびラミネートと同時に、第1のポリオレフィン系樹脂層上にガラス不織布層を貼着する。
この貼着に際しては、ガラス不織布層の少なくとも一部が、第1ポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一部に埋没するようにする。
すなわち、上記の表面酸化処理を施しつつ、上記のポリプロピレンフィルムの装飾層上に押し出されてラミネートすると同時に、ガラス不織布層を該第1のポリオレフィン系樹脂層上に載置し、ガラス不織布層の少なくとも一部が該第1のポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一部に埋没するようにプレスして、貼着させる。
このプレス圧は、特に限定されるものではなく、溶融状態の第1のポリオレフィン系樹脂の粘度や、該第1のポリオレフィン系樹脂層へのガラス不織布層の埋没量(埋没深さ)等に応じて、最適な圧に設定される。
【0026】
続いて、上記のガラス不織布層上に、第2のポリオレフィン系樹脂層を押し出しラミネートしつつ、該ガラス不織布層の少なくとも一部が、該第2のポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一部に埋没するようにする。
すなわち、第2のポリオレフィン系樹脂を加熱して溶融させ、これを上記のガラス不織布層上に押し出して、該ガラス不織布層にラミネートする。このラミネートと同時に、ガラス不織布層の少なくとも一部が、溶融状態の第2のポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一部に埋没するようにプレスする。
このプレス圧も、特に限定されるものではなく、溶融状態の第2のポリオレフィン系樹脂の粘度や、該第2のポリオレフィン系樹脂層へのガラス不織布層の埋没量(埋没深さ)等に応じて、最適な圧に設定される。
【0027】
最後に、上記第2のポリオレフィン系樹脂層上に、フェルト層を貼着すればよい。
このフェルト層の貼着は、第2のポリオレフィン系樹脂層が溶融状態のとき(例えば、第2のポリオレフィン系樹脂層の押し出しラミネートと当時)に行えば、また接着剤として作用する溶融繊維の溶融温度下で行えば、別途、接着剤を使用せずに、良好な強度での貼着が実現できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のホットカーペット用表面材は、表面保護層としてのポリプロピレンフィルムの下側に積層する第1のポリオレフィン系樹脂層の、該フィルムとの接着面を表面酸化処理してあるため、先提案のように、不織布等の接着補助材を介在させる必要なく、良好な接着強度を有して、該フィルムと第1のポリオレフィン系樹脂層とを積層することができるし、この結果として接着補助材等による繊維目等が表面に出現すると言った事態は生じない。
【0029】
また、上記のフィルムの裏面(すなわち、第1のポリオレフィン系樹脂層との接着面)に形成する装飾層を、該第1のポリオレフィン系樹脂層に対して接着性を有するインクにより形成すれば、この接着性を一層向上させることができる。
【0030】
さらに、第1のポリオレフィン系樹脂層の下側に積層するガラス不織布層により、耐荷重性にも優れたものとすることができる。
そして、このガラス不織布層は、その上,下面に積層する第1,第2のポリオレフィン系樹脂層中に完全に埋没させるため、本発明のホットカーペット用表面材の下側に配置されるホットカーペットの内臓ヒーターによる凹凸や、該ガラス不織布層自体の繊維目の影響が、表面に出るのを解消することができる。
【0031】
加えて、第1のポリオレフィン系樹脂層の表面酸化処理は、該樹脂層の押し出しラミネートと同時に行うことができ、しかも第1,第2のポリオレフィン系樹脂層へのガラス不織布層の埋没は、第1,第2のポリオレフィン系樹脂層の押し出しラミネートと、ガラス不織布層のこれらへの貼着の際に行うことができるため、製造工程が極めて簡単・容易化し、製造コストの大幅な低減効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
〔実施例1〕
図1に示す構成のホットカーペット用表面材を、以下の要領で製造した。
厚さ200μmのポリプロピレンフィルム1の裏面に、接着性を有するインク(大日精化社製商品名“ラミックFIT”)で印刷して装飾層2を形成した。
【0033】
次いで、この装飾層2にコロナ放電処理を施し、その上に320℃以上に加熱溶融した第1のポリエチレンを、厚さ100μmとなるように押し出しラミネートし、同時に該第1のポリエチレン層3に、目付け50g/mのガラス不織布4を、該ガラス不織布4の上層部41が該第1のポリエチレン層3の下層部31に埋没するように、プレス貼着した。
【0034】
続いて、上記のガラス不織布4の裏面に、190〜250℃に加熱溶融した第2のポリエチレンを、厚さ250μmとなるように、押し出しラミネートしつつ、該ガラス不織布4の下層部42が該第2のポリエチレン層5の上層部51に埋没するようにプレス貼着した。
【0035】
また、上記の第2のポリエチレン層5の押し出しラミネートと同時に、目付け300g/mのフェルト層6を、第2のポリエチレン層5の裏面に貼着して、図1に示す構成の本発明によるホットカーペット用表面材を製造した。
【0036】
〔実施例2〕
図1に示す構成のホットカーペット用表面材を、以下の要領で製造した。
実施例1で使用した厚さポリプロピレンフィルム1の裏面に、通常のインクを使用したグラビア印刷により装飾層2を形成した後、エチレン−酢酸ビニル樹脂系アンカーコート剤を使用してグラビア印刷を行った。
【0037】
次いで、このアンカーコート層2′にコロナ放電処理を施し、その上に300〜320℃に加熱溶融した第1のポリエチレンを、厚さ100μmとなるように、押し出しラミネートし、同時に該第1のポリエチレン層3に、目付け50g/mのガラス不織布4を、該ガラス不織布4の上層部41が該第1のポリエチレン層3の下層部31に埋没するように、プレス貼着した。
【0038】
続いて、上記のガラス不織布層4の裏面に、実施例1と同様にして、第2のポリエチレンを押し出しラミネートしつつ、該ガラス不織布4の下層部42が該第2のポリエチレン層5の上層部51に埋没するようにプレス貼着すると共に、フェルト層6を、該第2のポリエチレン層5の裏面に貼着して、図1に示す構成の本発明によるホットカーペット用表面材を製造した。
【0039】
〔比較例1〕
図2に示す構成のホットカーペット用表面材を、以下の要領で製造した。
ガラス不織布層を積層しない、従ってガラス不織布層を第1,第2のポリエチレン層に埋没させない以外は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の比較ホットカーペット用表面材を製造した。
【0040】
〔比較例2〕
図2に示す構成のホットカーペット用表面材を、以下の要領で製造した。
ガラス不織布層を積層しない、従ってガラス不織布層を第1,第2のポリエチレン層に埋没させない以外は、実施例2と同様にして、図2に示す構成の比較ホットカーペット用表面材を製造した。
【0041】
実施例1,2、比較例1,2により得られたホットカーペット用表面材について、次の要領・基準による耐久性、接着性、印刷多様性の評価を行い、結果を表1に示す。なお、表1中、重要度は、1が最も重要、2が2番目に重要、3が重要度合いが低いを意味し、◎,○,△,×の意味は以下に示す通りであって、◎は最適、○は適している、△はやや問題あり、×は不適である。
【0042】
(1)耐久性(接着性):実施例および比較例で得たホットカーペット用表面材を、指定のヒーター線、裏フェルトを貼り合わせ一体化したものを、椅子の動荷重を想定したキャスターチェアー試験機で反復動荷重負荷試験を行い、外観変化を評価した。
◎:外観に何ら異常はなく、層間剥離も起こらず、また貼り合わせたヒーター線の表面への浮き上がりも少なく良好な状態を維持しているもの。
○:外観上の問題も、層間剥離も起こらないが、貼り合わせたヒーター線の表面への浮き上がり多いもの。
△:外観は○の場合と同程度であるものの、貼り合わせたヒーター線の断線が一部に見られるもの。
・:表面保護層が剥離し外観上問題が生じており、貼り合わせたヒーター線の断線もが生じ製品になり得ないもの。
(2)接着性:実用を想定して20〜120℃の恒温槽内で剥離試験を行い、温度と剥離強度の関係を評価した。
◎:各温度で接着強度に変化が見られないもの。
○:100℃以上の高温域で接着強度が低化するが、製品上問題なく仕様規格範囲内にあるもの。
△:100℃以上の高温域で接着強度が極端に低化し、層間剥離が生じるもの。
・:60℃近辺で接着強度が仕様規格範囲以下になり、製品になり得ないもの。
(3)印刷の多様性:印刷加工の制限を受けることを加味しつつ、意匠表現性を評価した。
◎:印刷加工の制限を受けることなく、殆どの意匠表現が可能であるもの。
○:印刷加工の制限を一部受けるものの、おおよそ希望の意匠表現が可能であるもの。
△:印刷加工の制限を受けるため限られた意匠表現しかできないが、この限られた範囲内で希望の意匠表現ができるもの。
・:印刷加工の制限を受けて、希望の意匠表現ができないもの。。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のホットカーペット用表面材は、電気機器であるホットカーペットの上面に敷くことにより、特にキッチンやダイニングにおける食物、飲料、調味料などのこぼし汚れなどの除去を容易にすることができる。
また、耐熱性や柔軟性を必要とするその他の電気機器用部材、自動車などの車輌用部材、建築用部材などにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例で製造した本発明のホットカーペット用表面材を説明するための断面図である。
【図2】比較例で製造した比較のホットカーペット用表面材を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ポリプロピレンフィルム
2 装飾層
2′ アンカーコート層
3 第1のポリオレフィン系樹脂層
4 ガラス不織布層
5 第2のポリオレフィン系樹脂層
6 フェルト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から順に、ポリプロピレンフィルム、第1のポリオレフィン系樹脂層、ガラス不織布層、第2のポリオレフィン系樹脂層、フェルト層が積層され、
前記ポリプロピレンフィルムの前記第1のポリオレフィン系樹脂層との接着面に装飾層が形成され、
前記第1のポリオレフィン系樹脂層の前記ポリプロピレンフィルムとの接着面が表面酸化処理されている
ことを特徴とするホットカーペット用表面材。
【請求項2】
前記装飾層が、前記第1のポリオレフィン系樹脂層に対して接着性を有するインクで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホットカーペット用表面材。
【請求項3】
裏面に装飾層が形成されたポリプロピレンフィルムの該装飾層上に、第1のポリオレフィン系樹脂層を、該樹脂層の該ポリプロピレンフィルムとの接着面を表面酸化処理しつつ、押し出しラミネートし、同時にガラス不織布層を貼着し、
該ガラス不織布層上に、第2のポリオレフィン系樹脂層を押し出しラミネートしつつ、フェルト層を貼着する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のホットカーペット用表面材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−145077(P2006−145077A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332952(P2004−332952)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】