説明

ボスカリド無水物の新規な結晶変態

本発明は、147〜148℃の温度で融解する式Iの単斜晶2-クロロ-N-(4'-クロロビフェニル-2-イル)-ニコチンアミド、およびその製造方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、147〜148℃で融解する式Iの単斜晶2-クロロ-N-(4'-クロロビフェニル-2-イル)-ニコチンアミドに関する。
【0002】

本発明はさらに上記化合物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
144〜145℃で融解する式Iの単斜晶2-クロロ-N-(4'-クロロビフェニル-2-イル)-ニコチンアミドは、EP-A-545099およびPCT/EP02/10320に記載されており、一般名ボスカリド(boscalid)として知られている。PCT/EP02/10320は、ボスカリドの無水物および水和物、ならびにボスカリド無水物からのボスカリド水和物の調製について記載している。
【0004】
本明細書において、既知のボスカリド無水物を変態Iとよび、そして本出願の請求項1に記載したボスカリド無水物を変態IIと呼ぶ。
【0005】
PCT/EP02/10320によると、ボスカリドの無水物から水性懸濁濃縮物(SC)またはサスポエマルジョン(SE)を調製するには、まずボスカリドの水和物を調製し、次いでそれを水およびさらなる補助剤の存在下で微細に粉砕する必要がある。この方法は、ボスカリドの無水物については不可能である。何故ならば、水中で補助剤とともにボスカリドの無水物を粉砕した場合、それは粘土様の固体を形成してしまい、その後の粉砕処理を妨害するからである。
【0006】
PCT/EP02/10320によると、変態Iのボスカリドの水和物は、変態Iのボスカリドの無水物を水溶性の溶媒に溶解させ、次いで水を添加して水和物を析出させることにより調製する。
【0007】
固体製剤、例えば噴霧乾燥されたまたは押出し成形された水分散性の顆粒剤は、変態Iのボスカリドの無水物から、前もって水和物への変換を行うことなく直接調製することができる。
【0008】
次いでこれらの水分散性顆粒剤を水で希釈し、溶媒を含有する作物保護調製物(例えばエマルジョン濃縮物(EC))と混合した場合、施用中に問題が生じることがある。何故ならば、ボスカリドの結晶が形成されて、散布器具のフィルターの目詰まりを起こしうるからである。
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は、水分散性顆粒剤の場合について記載した上記欠点を取り除くことである。
【0010】
本発明者らは、147〜148℃で融解する式Iのボスカリドの変態IIの単斜晶無水物を提供することにより、この目的を達成することができることを見いだした。驚くべきことに、式Iのボスカリドの変態IIの形の無水物は、溶媒の存在下でほとんど結晶成長を示さないことが見いだされた。
【0011】
式Iのボスカリドの変態Iの無水物の調製は、EP-A-545099およびPCT/EP02/10320に記載されている。
【0012】
本発明はさらに、ボスカリドの変態IIの無水物の調製方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1つの実施形態(方法1)において、この方法は以下の段階を含む:
a) 式Iの化合物の変態Iの無水物を、極性有機溶媒または芳香族炭化水素に溶解させること、
b) 該溶媒を冷却することにより式Iの化合物の変態IIの無水物を析出させること。
【0014】
適当な極性溶媒は、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル、アミドおよびこれらの溶媒の混合物である。さらに芳香族炭化水素が適している。
【0015】
アルコールの例としてはメタノール、エタノールおよびプロパノールが挙げられる。メタノールはとりわけ好適である。
【0016】
適当なグリコールは、例えばエチレングリコールおよびジエチレングリコールである。
【0017】
適当なケトンは、例えばアセトンおよびシクロヘキサノンである。
【0018】
適当なエーテルは、例えばジオキサンおよびテトラヒドロフランである。
【0019】
適当なエステルは、例えば酢酸エチルである。
【0020】
適当なアミドは、例えばジメチルホルムアミドである。
【0021】
適当な芳香族溶媒は、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレンである。
【0022】
段階a)における式Iの化合物の変態Iの無水物の溶解は、20〜150℃、好ましくは40〜115℃、特に好ましくは50〜95℃で行う。
【0023】
段階b)における式Iの化合物の変態IIの無水物の析出は、段階a)で得られた溶液を、0〜30℃、好ましくは10〜25℃、特に好ましくは20〜25℃に冷却することにより行う。1〜24時間、好ましくは2〜20時間かけて析出を行う。
【0024】
段階b)で式Iの化合物の変態IIの無水物の種結晶を添加することは特に有利であり、実質的に析出を加速させる。
【0025】
さらなる実施形態(方法2)において、この方法は以下の段階を含む:
a) 式Iの化合物の変態Iの無水物を、全部が融解するまで150℃以上に加熱すること、
b) 式Iの化合物の変態IIの無水物の種結晶を添加して、該融解物を冷却すること。
【0026】
段階b)では、種結晶を0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量で添加する。
【0027】
この方法は好ましくは適当なステンレススチール製の容器中で実施する。式Iの化合物の変態Iの無水物の、変態IIへの変換は定量的に進行する。
【0028】
式Iの化合物の無水物の2種類の変態の物理的性質を表1で比較する:
【表1】

【0029】
Siemens社の単結晶回折計を用いた結晶学的検査からのセルパラメーターを表2に示す:
【表2】

【0030】
示したパラメーターは以下の意味を有する:
a、b、c=単位セルのエッジの長さ
α、β、γ=対応する角度
Z=単位セル中の分子の数
【実施例】
【0031】
実施例1
式Iの化合物の変態IIの無水物の調製
最初に30gのメタノールを、磨りガラスのジョイントを有する三角フラスコに入れた。次いで、変態Iの式Iの化合物の無水物5gを添加し、この混合物を、全てが溶解するまで(約10分)、撹拌しながら水浴中で55℃に加熱した。その後、フラスコを加熱浴から取り出し、周囲温度(約20℃)で18時間にわたり冷却させた。式Iの化合物の変態IIの無水物が晶出した。融点は147.2℃である。
【0032】
実施例2
200gの式Iの化合物の変態Iの無水物を、ステンレススチール製容器中で160℃に加熱した。次いでこの融解物を撹拌しながら冷却した。150℃で、式Iの化合物の変態IIの無水物の種結晶を入れ、冷却を続行した。式Iの化合物の変態IIの無水物が得られた。
【0033】
実施例3
式Iの化合物の変態IまたはIIの無水物の水分散性顆粒剤の調製
組成:

【0034】
調製法
適当な濃度の懸濁物を用意し、パールミルを用いて所望の粒子サイズ(50%<2μm)に粉砕する。次いで懸濁物を噴霧塔で乾燥させる。
【0035】
タンク混合適合性の比較
比較のために、式Iの化合物の変態Iの無水物を含む、上述の組成の水分散性顆粒剤(製剤A)と、式Iの化合物の変態IIの無水物を含む、上述の組成の水分散性顆粒剤(製剤B)を調製した。
【0036】
次いで、硬度342ppm、pH6.0〜7.0のCIPAC D水(Ca++/Mg++(4:1))中のそれぞれの水分散性顆粒剤の5%濃度懸濁物を調製した。次いでこの懸濁物を、溶媒含有液体製剤(例えばEC)用の典型的な溶媒としての1%のSolvesso 200(芳香族炭化水素類の混合物)と混合した。次いで、対応するスプレー液を特定の温度で特定の期間にわたり貯蔵した。品質を評価するために、貯蔵後に75μmふるい上の固形残分を測定した。
【0037】
結果


【特許請求の範囲】
【請求項1】
147〜148℃で融解する式Iの単斜晶2-クロロ-N-(4'-クロロビフェニル-2-イル)-ニコチンアミド。

【請求項2】
a) 144〜145℃で融解する式Iの2-クロロ-N-(4'-クロロビフェニル-2-イル)-ニコチンアミドをプロトン性極性溶媒または芳香族炭化水素中に溶解させ、
b) 冷却後、該溶媒から晶出させる、
請求項1に記載の化合物Iの調製方法。
【請求項3】
使用するプロトン性極性溶媒が、アルコール、グリコール、ケトン、エーテル、エステル、アミド、ジメチルスルホキシド、またはこれらの混合物である、請求項2に記載の化合物Iの調製方法。
【請求項4】
使用するプロトン性極性溶媒が、アルコール、エステルまたはケトンである、請求項3に記載の化合物Iの調製方法。
【請求項5】
使用するアルコールがメタノールまたはエタノールである、請求項4に記載の化合物Iの調製方法。
【請求項6】
段階a)において、式Iの化合物を20〜150℃で溶解させる、請求項2に記載の化合物Iの調製方法。
【請求項7】
段階a)において、式Iの化合物を40〜115℃で溶解させる、請求項2に記載の化合物Iの調製方法。
【請求項8】
請求項1に記載の式Iの化合物および不活性添加剤を含有する除草剤。
【請求項9】
請求項1に記載の式Iの化合物を0.1〜95重量%の量で含有する、請求項8に記載の除草剤。
【請求項10】
有害真菌を防除する方法であって、有害真菌、それらの生息地、または有害真菌のない状態にすべき植物、地域、材料もしくは空間を、殺真菌量の請求項1に記載の式Iの化合物または請求項1に記載の式Iの化合物を含有する請求項8に記載の除草剤で処理する、前記方法。

【公表番号】特表2006−517548(P2006−517548A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501625(P2006−501625)
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000703
【国際公開番号】WO2004/072039
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】