ボルト緩み検出システム、ボルト緩み検出装置、及びボルト管理具
【課題】 簡易な構造でボルトの緩みを正確に効率良く検出できるボルト緩み検出システムを提供する。
【解決手段】 RFIDタグ11をボルト20の頭部に設置し、RFIDタグ11及びボルト20を電波遮蔽カバー12で覆う。RFIDタグ11から送信された応答波のうち、電波遮蔽カバー12に設けられたスリット13を通過したものを、RFIDリーダライタで受信する。ボルト20の緩み角度に応じてスリット13を通過する電波の強度が変化するため、応答波に含まれるID情報の読み取り可否や受信電界強度に基づき、ボルト20の緩みを検出する。
【解決手段】 RFIDタグ11をボルト20の頭部に設置し、RFIDタグ11及びボルト20を電波遮蔽カバー12で覆う。RFIDタグ11から送信された応答波のうち、電波遮蔽カバー12に設けられたスリット13を通過したものを、RFIDリーダライタで受信する。ボルト20の緩み角度に応じてスリット13を通過する電波の強度が変化するため、応答波に含まれるID情報の読み取り可否や受信電界強度に基づき、ボルト20の緩みを検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Radio Frequency Identification(以下、RFIDと称す)システムを用いて、ボルトの緩みを検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDシステムは、ICチップを備えたRFIDタグとRFIDリーダライタとの間で無線通信を行うシステムである。RFIDタグには、バッテリーを搭載し、その電力で駆動するアクティブ型タグと、RFIDリーダライタからの電力を受けて、これを電源とし駆動するパッシブ型タグとがある。アクティブ型はパッシブ型に比べ、バッテリーを搭載しているため、通信距離、通信の安定度などのメリットがある反面、構造の複雑化、サイズの大型化、高コスト化などのデメリットもある。
【0003】
近年の半導体技術の向上により、パッシブ型タグ用のICチップの小型化、高性能化が進み、パッシブ型タグの幅広い分野での利用が期待されている。パッシブ型タグにおいては、周波数帯が長波帯、短波帯の場合は電磁誘導方式が適用されている。電磁誘導方式では、RFIDリーダライタの送信アンテナコイルとRFIDタグのアンテナコイルとの間の電磁誘導作用でRFIDタグに電圧が誘起され、この電圧によりICチップを起動して通信を可能としている。従って、RFIDリーダライタによる誘導電磁界内でしかRFIDタグが動作せず、通信距離は数十cm程度に限られてしまう。
【0004】
一方、UHF帯またはマイクロ波帯などの高い周波数帯のRFIDタグでは、電波通信方式が適用されている。電波によりRFIDタグのICチップに電力を供給しているため、通信距離は1〜7m程度と大幅に向上している。従って、通信距離の短い長波帯、短波帯のRFIDシステムでは実現が困難であった移動中の通信が可能となり、その利用範囲は大幅に広がると考えられる。
【0005】
機械類や設備類には多数のボルトが使用されるが、RFIDシステムを用いて、ボルトの締結状態を管理する方法が提案されている。従来のボルト管理具は、ボルト近傍に配置されたスイッチが、ボルトの締結状態に応じて閉成・開成が切り換わり、このスイッチの状態に応じてRFIDタグが応答する。スイッチは、ボルトが正常に締結されている場合は閉成し、ボルトが緩んだ場合に開成する構造となっている。ボルト管理具に備わるRFIDタグからの応答情報をRFIDリーダライタで読み取ることで、ボルトの緩みを検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
例えば、鉄道分野では地上設備のメンテナンスを簡略化したいという要求がある。鉄道分野の地上装置では、鉄道用レール(以下、レールと記す。)を枕木に固定するために複数のボルトが使用されるが、このボルトの緩みを検出するために、上記ボルト管理具を利用することが提案されている。レールを枕木に固定するためのボルトの近傍にボルト管理具を配置し、レール上を走行する列車にRFIDリーダライタを配置することで、列車が走行中にRFIDリーダライタとボルト管理具のRFIDタグとの間で通信を行い、ボルトの緩みを検出している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−066667号公報
【特許文献2】特開2009−064111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のボルト管理具は、ボルトの締結状態に応じて閉成・開成が切り換わる機械的なスイッチを必要とし、当該スイッチとボルト及びRFIDタグとを接続しなければならないため構造が複雑である。ボルト管理具に使用するスイッチが故障した場合は、ボルト緩み検出システムにおいて正確にボルトの緩みを検出できないという問題点がある。このため、ボルト管理具自体をメンテナンスする必要が生じ、結局のところ、機械類や設備類のメンテナンスを簡略化できず、実現性、運用性が低いという問題点がある。特に、鉄道分野においては、地上設備のメンテナンスを簡略化したいという要求があるが、機械的なスイッチを含むボルト管理具自体のメンテナンスを要するため、地上設備のメンテナンスの簡略化が実現できない。
【0009】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、簡易な構造でボルトの緩みを正確に効率良く検出することができるボルト緩み検出システム、これを構成するボルト緩み検出装置及びボルト管理具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るボルト緩み検出システムは、ボルトに固定されたRFIDタグと、スリットが設けられた電波遮蔽カバーとを有するボルト管理具と、RFIDタグから放射されスリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、アンテナ部で受信した電波を復調して、RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、ボルトの緩みを検出する検出部とを有するボルト緩み検出装置と、を備えたものである。
【0011】
本発明に係るボルト緩み検出装置は、スリットを有する電波遮蔽カバーにより覆われたRFIDタグから放射されスリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、アンテナ部で受信した電波を復調して、RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、ボルトの緩みを検出する検出部と、を備えたものである。
【0012】
本発明に係るボルト管理具は、ボルトに固定されたRFIDタグと、スリットが設けられ、ボルトとRFIDタグとを覆う電波遮蔽カバーと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ボルトの緩みにより電波遮蔽カバーのスリットを通過する電波の強度が変化することを利用して、ボルトの緩みをボルト管理具からボルト緩み検出装置へ通知するため、RFIDタグと電波遮蔽カバーという簡易な構成でボルト管理具を実現でき、正確に効率良くボルトの緩みを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出システムを示す説明図である。
【図2】図1のX部を示す拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるアンテナ部及びボルト管理具を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部を示す構成図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部を示す機能ブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図12】本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部を示す機能ブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図14】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図15】本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図17】本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る各実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各図において、同一符号は、同一または相当の構成を示す。なお、以下に示す各実施の形態では、本発明を鉄道分野で利用する場合について説明するが、本発明は以下に示す各実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出システムを示す説明図である。図2は、図1のX部を示す拡大図である。図3は、本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す斜視図である。なお、図2の一部、及び図3は、ボルト管理具の内部構造を示すため、後述する電波遮蔽カバー12を透視した図である。図4は、本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す断面図である。図5は、本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置を示す構成図である。以下、図1乃至図5を参照してボルト緩み検出システムの構成を説明する。
【0017】
ボルト緩み検出システムは、ボルト緩み検出装置1とボルト管理具10とを備える。本実施の形態のボルト緩み検出システムを用いて、レールを枕木に固定するための固定具であるボルト20の緩みを検出する場合には、レール上を走行する列車(検測車等を含む鉄道車両全般を指す)にボルト緩み検出装置1を設置し(図1及び図2では図示せず)、ボルト20の近傍にボルト管理具10を設置する。
【0018】
ボルト管理具10は、枕木にレールを固定するためのボルト20の頭部に取付けたパッシブ型のRFIDタグ11と、当該RFIDタグ11とボルト20とを覆う電波遮蔽カバー12とを備える。電波遮蔽カバー12は電波を遮蔽する素材により形成され、スリット13を有している。
【0019】
RFIDタグ11は、ボルト20の頭部に接着剤等で固定してもよいし(図3参照)、図4に示すように、ボルト20の頭部を覆うためのボルトキャップ14を用いて固定してもよい。RFIDタグ11を備えたボルトキャップ14をボルト20の頭部に被せることにより、RFIDタグ11をボルト20の頭部に簡単に固定でき、RFIDタグ11のボルト20への固定作業の効率が高まる。また、ボルト20の頭部よりも大きなボルトキャップ14を熱硬化性樹脂により形成すれば、ボルトキャップ14をボルト20の頭部へ被せる際に、RFIDタグ11が所望の方向に向くように自由にボルトキャップ14の向きを決定した後、ボルトキャップ14を熱硬化させてボルト20の頭部へ被せることができる。
【0020】
図5に示すように、ボルト緩み検出装置1は、アンテナ部2と、RFIDリーダライタ部3と、検出部4とを備える。RFIDリーダライタ3は、アンテナ部2を介してボルト管理具10のRFIDタグ11との間で無線通信を行い、検出部4は、RFIDリーダライタ3からの入力データに基づきボルト20の緩みを検出する。
【0021】
RFIDリーダライタ3からRFIDタグ11に対する質問波と、RFIDタグ11からRFIDリーダライタ3に対する応答波とは、電波遮蔽カバー12のスリット13を通過してそれぞれ伝達される。RFIDリーダライタ3からの質問波を受信したRFIDタグ11は、固有のID情報を付加した応答波をRFIDリーダライタ3へ返信する。アンテナ部2で受信した応答波を復調したRFIDリーダライタ3は、RFIDタグ11から送信された固有のID情報、受信電界強度、時刻情報等を検出部4へ出力する。検出部4では、RFIDリーダライタ3から出力されたデータを用いてボルト20の緩みを検出する。
【0022】
なお、検出部4の換わりに、RFIDリーダライタ3から出力されるデータを保存する記憶部を備えても良い。例えば、記録部を持ち出し可能な記録媒体で構成すれば、検出部4がRFIDリーダライタ3と直接接続しておらず、物理的に離れた場所に設置されていても、当該記録媒体に対して検出部4がアクセスすることで、ボルト20の緩みを検出できる。
【0023】
図6は、本発明の実施の形態1におけるアンテナ部及びボルト管理具を示す斜視図である。図6(a)は、ボルトに緩みがない正常な状態の斜視図であり、図6(b)は、ボルトが緩んだ状態の斜視図である。図6を参照して、ボルト20の緩み検出の原理を説明する。なお、図6は、ボルト管理具10の内部構造を説明するため、電波遮蔽カバー12を透視した図である。
【0024】
ボルト緩み検出装置1のアンテナ部2から射出された電波(質問波)は、電波遮蔽カバー12のスリット13を通過して電波遮蔽カバー12の内部に配置されたRFIDタグ11へと到達する。ボルト緩み検出装置1からの電波により電力を供給されたRFIDタグ11は、固有のID情報を付加した応答波を射出する。
【0025】
RFIDタグ11を取付けているボルト20が、図6(a)に示す正常な状態から、振動や温度変化等の要因により緩んで、図6(b)に示す状態に変化した場合について説明する。RFIDタグ11はボルト20の頭部に固定されているため、ボルト20の緩み角度に応じて、RFIDタグ11のスリット13に対する相対角度が変化する。この相対角度の変化に伴い、スリット13を通過する電波の強度も変化する。例えば、図6(a)に示すRFIDタグ11とスリット13との位置関係において、スリット13を通過する電波の強度が最大(即ち、電波遮蔽カバー12により遮蔽される電波の強度が最小)になるものとする。一方、図6(b)に示すRFIDタグ11とスリット13との位置関係においては、RFIDタグ11のスリット13に対する相対角度が図6(a)に示す状態とは異なるため、図6(a)に示す状態と比較すると、スリット13を通過する電波の強度が減少(即ち、電波遮蔽カバー12により遮蔽される電波の強度が増加)する。
【0026】
図6(a)に示すボルト20の締め付けが正常な状態においては、RFIDリーダライタ3でのRFIDタグ11のID情報の読み取りが可能である。一方、図6(b)に示すボルト20に緩みが生じた状態では、電波遮蔽カバー12により遮蔽される電波の強度が図6(a)に示す状態よりも増加するため、RFIDリーダライタ3でのRFIDタグ11の読み取りが不能となる。もしくは、RFIDタグ11の読み取りが可能であっても、正常な状態と比較するとRFIDリーダライタ3での受信電界強度は減少する。即ち、ボルト20の緩み発生前後において、RFIDタグ11のID情報の読み取り可否状態が変化するか、もしくは読み取り可否状態は変化しなくともRFIDリーダライタ3での受信電界強度は変化する。この状態変化を利用して、ボルト20の緩みを検出する。RFIDタグ11のID情報の読み取り可否に基づき、または、読み取り可否と受信電界強度とに基づき、ボルト20の緩みを検出する。
【0027】
以下、ボルト緩み検出システムの動作について説明する。図7は、本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。ステップS10において、RFIDリーダライタ3はRFIDタグ11からの応答波を復調し、RFIDタグ11のID情報を読み取る。次に、RFIDリーダライタ3は、RFIDタグ11のID情報が読み取れたか否かを判断する(ステップS20)。
【0028】
ステップS20において、ID情報が読み取れなかった場合は、ステップS60へ移行して終了するか否かを判断し、継続する場合はステップS10へ戻って再度RFIDタグ11のID情報を読み取る。一方、ステップS20において、ID情報を読み取れた場合は、検出部4においてID情報の読み溢しの有無を判断する(ステップS30)。例えば、隣り合うボルト20に連番でID情報を設定しておけば、新たに読み取ったボルト20のID情報が、一つ前のボルト20(新たに読み取ったボルト20の隣に設置されたボルト20)のID情報と連番であるか否かを判断すればよい。なお、列車が停車中の場合は、同一のボルト20に設置されたRFIDタグ11のID情報を連続して読み取ることが考えられる。このため、ID情報が連番ではなく同一であっても、番号飛びがなければID情報の読み溢しは無いものと判断する。
【0029】
ステップS30において、ID情報の読み溢しがあると判断した場合は、ステップS35へ移行し、読み溢したID情報を抽出して記録する。一方、ステップS30において、ID情報の読み溢しがないと判断した場合は、RFIDタグ11からの応答波の受信電界強度が適当であるか否かを判断する(ステップS40)。受信電界強度の適否については、例えば、所定の閾値と受信電界強度とを比較して、所定の閾値よりも受信電界強度が高ければ適当であると判断する。もしくは、同一のID情報において、前回のボルト緩み検出時に取得した受信電界強度と新たに取得した受信電界強度との差が、所定の判定値よりも大きければ不適当であると判断する。
【0030】
ステップS40において、応答波の受信電界強度が適当でないと判断した場合は、ステップS45へ移行し、受信電界強度が異常であることを記録する。一方、ステップS40において、応答波の受信電界強度が適当であると判断した場合は、ID情報の読み取り実績を保存する(ステップS50)。ID情報の読み取り実績とは、例えば、ID情報、受信電界強度、時刻等が考えられる。ステップS60において、ボルト緩み検出を終了するか否かを判断し、継続する場合はステップS10へ戻る。
【0031】
上述のボルト緩み検出の原理で説明したとおり、ボルト20が緩むとスリット13に対するRFIDタグ11の相対角度が変化し、スリット13を通過する電波の強度が変化する。このため、当初(ボルト締め付け時)はID情報をRFIDリーダライタ3で読み取れていたものが、緩んだボルト20に固定したRFIDタグ11のID情報については、読み取り不可となり、ステップS30においてID情報の読み溢しと判断される。また、読み取り不可とならずとも、ボルト20が緩んだ場合、スリット13で遮蔽される電波の強度が増加するため、RFIDリーダライタ3で受信する応答波の受信電界強度が低くなり、ステップS40において受信電界強度が適当でないと判断される。ステップS35において読み溢したID情報を記録し、また、受信電界強度が適正でない場合にもID情報をステップS45で記録するため、当該ID情報に対応するボルト20が緩んでいることを検出できる。ID情報の読み取り可否にのみ基づき、ボルト20の緩みを検出してもよいし、ID情報の読み取り可否に加えてさらに受信電界強度に基づき、ボルト20の緩みを検出してもよい。
【0032】
電波遮蔽カバー12のスリット13に対するRFIDタグ11の相対角度が、ボルト20の緩みにより変化し、スリット13を通過する電波の強度が変化することを利用してボルト20の緩みを通知するため、本実施の形態1におけるボルト管理具10は、RFIDタグ11と電波遮蔽カバー12という簡易な構成で実現できる。
【0033】
本実施の形態1におけるボルト緩み検出システムは、ボルト管理具10のスリット13を通過した応答波から得られるRFIDタグ11のID情報に基づき、またはID情報及び受信電界強度に基づき、ボルト緩み検出装置1でボルト20の緩みを検出するため、正確に効率良くボルト20の緩みを検出できる。
【0034】
実施の形態2.
ボルト緩み検出装置を、列車のように高速で移動するものに設置する場合、一度に複数のRFIDタグと通信を行ってしまい、目的のボルトのRFIDタグではなく、隣のボルトに設置されたRFIDタグのID情報を読み込んでしまうおそれがある。識別対象のRFIDタグとのみ通信するためには、アンテナ部のビーム幅を狭くすれば良い。しかし、アンテナ部のビーム幅を狭くするためには、アンテナ部の形状を大きくしなければならず、実用的でない。本実施の形態2は、アンテナ部2を複数の素子アンテナで構成し、アンテナ部2をアンテナ制御部5からビーム制御する。
【0035】
以下では、実施の形態1におけるボルト緩み検出システムとの相違点について説明する。図8は、本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置1を示す構成図である。アンテナ部2は、第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを備える。アンテナ制御部5は、RFIDリーダライタ3からの制御信号に基づき、アンテナ部2のビーム制御をする。
【0036】
図9は、本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部5を示す構成図である。アンテナ制御部5内のスイッチ回路であるS1スイッチ50aは、RFIDリーダライタ3に接続されている。S1スイッチ50aは、スイッチ回路であるS2スイッチ50bに接続されている(P1−PC)。S2スイッチ50bは、スイッチ回路であるS3スイッチ50cとハイブリッド結合器(180°)51とに接続されている(P1−P2、P2−PC)。S3スイッチ30cは、S2スイッチ50bとの接続(P1−P2)に加えて、ハイブリッド結合器(180°)51とも接続されている(P1−PC)。
【0037】
S1スイッチ50aは、スイッチ回路であるS4スイッチ50dとも接続されている(P2−PC)。S4スイッチ50dは、スイッチ回路であるS5スイッチ50eとハイブリッド結合器(180°)51とに接続されている(P1−P2、P1−PC)。S5スイッチ50eは、S4スイッチ50dとの接続(P1−P2)に加えて、ハイブリッド結合器(180°)51とも接続されている(P2−PC)。なお、P1,P2,PCは各スイッチ回路やハイブリッド結合器(180°)51のポート(端子)名であり、ハイブリッド結合器(180°)51のポートに関しては、説明の簡略化のために4端子を全て「PC」としているが、実際の接続関係は図9に示すとおりで、異なるポートであることはいうまでもない。
【0038】
このような構成をアンテナ制御部5が採っているので、スイッチ回路であるS1スイッチ50a,S2スイッチ50b,S3スイッチ50c,S4スイッチ50d,S5スイッチ50eの接続を変更することにより、アンテナ制御部5は、アンテナ部2に対してビーム制御を行うことができる。なお、各スイッチ回路の接続の制御は、RFIDリーダライタ3から供給される制御信号に基づき行われる。つまり、RFIDリーダライタ3が、アンテナ制御部5を介して、アンテナ部2に対してビーム制御を行っているともいえる。
【0039】
次に、アンテナ部2のビーム制御について、図10〜図17を参照して説明する。なお、図10以降で、図9に記載のアンテナ制御部5の結線状態を示す図が複数あるが、それらにおいて、結線されていない部分は模式的に配線を省いて記している。また、図11以降で、放射パターンを示す図が複数あるが、縦軸のX[m]は、アンテナ部2のアンテナ面に沿った放射パターンの大きさを示し、横軸のZ[m]は、アンテナ部2のアンテナ面の前方に向かった放射パターンの大きさを示す。
【0040】
図10は本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部5を示す機能ブロック図である。図11は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部2の放射パターン図である。図11に示す放射パターン31は、第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを同位相で合成したときの放射パターンである。RFIDリーダライタ3からの制御信号により、図10に示すように、アンテナ制御部5内の各スイッチ回路及びハイブリッド結合器51が切り替えられ、S1スイッチ50a−S2スイッチ50b−ハイブリッド結合器51−S3スイッチ50c−第1の素子アンテナ2a,S1スイッチ50a−S2スイッチ50b−ハイブリッド結合器51−S5スイッチ50e−第2の素子アンテナ2bと接続される。第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとはハイブリッド結合器51により同位相で合成される。
【0041】
なお、第1の素子アンテナ2aのみを用いた場合の放射パターン32を図11に破線で示す。放射パターン32と放射パターン31とを比較すると、放射パターン31のビーム幅が狭くなっていることがわかる。アンテナ制御部5により第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを同位相で合成することで、アンテナ部2のビーム幅を狭くできる。
【0042】
図11に示すようにRFIDタグ11a〜11cが配置されている場合、同位相で合成された放射パターン31では、RFIDタグ11aと通信可能であるが、RFIDタグ11aの両隣に配置されるRFIDタグ11b、11cとは通信不能であり、識別対象となるRFIDタグ11aとのみ通信することができる。なお、第1の素子アンテナ2aのみを用いた場合は、放射パターンが32となるため、複数のRFIDタグ11a、11bと通信可能となってしまう。第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した方がビーム幅を狭くでき、識別対象となるRFIDタグ11aとのみ通信するため、近傍のRFIDタグ11b、11cの誤検出がなくなり、ボルトの緩みをより正確に検出できる。
【0043】
図12は本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部5を示す機能ブロック図である。図13は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部2の放射パターン図である。図13に示す放射パターン33は、第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを逆位相で合成したときの放射パターンである。
【0044】
RFIDリーダライタ3からの制御信号により、図12に示すように、アンテナ制御部5内の各スイッチ回路及びハイブリッド結合器51が切り替えられ、S1スイッチ50a−S4スイッチ50d−ハイブリッド結合器51−S3スイッチ50c−第1の素子アンテナ2a,S1スイッチ50a−S4スイッチ50d−ハイブリッド結合器51−S5スイッチ50e−第2の素子アンテナ2bと接続される。第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとはハイブリッド結合器51により逆位相で合成される。
【0045】
第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31と、逆位相で合成した放射パターン33とを用いることにより、RFIDタグの検出エリアを狭めることができる。図14は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部1の放射パターン図である。図15は本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートであり、図7に示すステップS10のID情報読み取り動作の詳細を示すものである。
【0046】
まず、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31で電波を放射し(ステップS11)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS12)。ここでは、放射パターン31の領域内に存在するRFIDタグ11a及び11bのID情報が取得される。
【0047】
次に、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを逆位相で合成した放射パターン33で電波を放射し(ステップS13)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS14)。ここでは、放射パターン33の領域内に存在するRFIDタグ11b、11c及び11dのID情報が取得される。
【0048】
検出エリア34(図14に示す斜線部分)の領域に含まれるRFIDタグを識別対象と認識し、そのID情報を読み取る(ステップS15)。即ち、放射パターン31で検出され、且つ放射パターン33では未検出のRFIDタグ11aが識別対象となる。例えば、RFIDタグ11bは放射パターン31及び33の両方で検出されているため識別対象とはならない。検出エリア34は、放射パターン31から放射パターン33を差し引いたものであり、放射パターン31よりも更に狭い領域となっている。
【0049】
他にも、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31と、第1の素子アンテナの放射パターン32とを用いることにより、RFIDタグの検出エリアを狭めることもできる。図16は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部2の放射パターン図である。図17は本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートであり、図7に示すステップS10のID情報読み取り動作の詳細を示すものである。
【0050】
まず、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31で電波を放射し(ステップS11)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS12)。ここでは、放射パターン31の領域内に存在するRFIDタグ11a及び11bのID情報が取得される。
【0051】
次に、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1の素子アンテナ2a単独の放射パターン32で電波を放射し(ステップS16)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS17)。ここでは、放射パターン32の領域内に存在するRFIDタグ11a及び11cのID情報が取得される。
【0052】
放射パターン31と放射パターン32との共通読取範囲である検出エリア35(図16に示す斜線部分)に含まれるRFIDタグを識別対象と認識し、そのID情報を読み取る(ステップS18)。検出エリア35は、放射パターン31及び放射パターン32の共通部分であり、放射パターン31よりも更に狭い領域となっている。ここでは、放射パターン31の領域内に存在し、且つ放射パターン2の領域内に存在するRFIDタグ11aが識別対象となる。
【0053】
なお、検出エリアについては、図14及び図16に示す斜線部分に限られるものではない。第1の放射パターンと第2の放射パターンとの共通エリア、またはどちらか一方の放射パターンにのみ属するエリアを検出エリアとし、当該検出エリアで取得されたID情報を識別対象のRFIDタグ11のID情報として読み取る。第1及び第2の放射パターンとしては、放射パターン31、放射パターン33、第1の素子アンテナの放射パターン32、及び第2の素子アンテナの放射パターンを組み合わせて、システムに合わせた検出エリアを生成できる。
【0054】
本実施の形態2では、アンテナ部2を2つの素子アンテナ2a、2bで構成する場合について例示的に説明したが、素子アンテナの数はこれに限られたものではない。例えば、アンテナ部2をn個の素子アンテナを有するフェイズドアレイアンテナで構成し、アンテナ制御部5でフェイズドアレイアンテナのビーム制御を行ってもよい。
【0055】
本実施の形態2におけるボルト緩み検出システムは、アンテナ制御部によりアンテナ部のビーム制御を行うことで、アンテナ部のビーム幅を狭くして、RFIDタグを読み取る検出エリアを狭めることができる。また、アンテナ部の放射パターンを切り替え可能とし、複数の放射パターンを用いて検出エリアを狭めることもできる。検出エリアを狭めることで、識別対象となるRFIDタグのID情報のみを正確に検出し、近傍に位置するRFIDタグのID情報の誤検出を防止することができる。これにより、ボルト管理具とボルト緩み検出装置との相対速度が大きなシステムにおいても、ボルトの緩みを正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ボルト緩み検出装置
2 アンテナ部
2a 第1の素子アンテナ
2b 第2の素子アンテナ
3 RFIDリーダライタ
4 検出部
5 アンテナ制御部
10 ボルト管理具
11 RFIDタグ
12 電波遮蔽カバー
13 スリット
20 ボルト
31 放射パターン
32 放射パターン
33 放射パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、Radio Frequency Identification(以下、RFIDと称す)システムを用いて、ボルトの緩みを検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDシステムは、ICチップを備えたRFIDタグとRFIDリーダライタとの間で無線通信を行うシステムである。RFIDタグには、バッテリーを搭載し、その電力で駆動するアクティブ型タグと、RFIDリーダライタからの電力を受けて、これを電源とし駆動するパッシブ型タグとがある。アクティブ型はパッシブ型に比べ、バッテリーを搭載しているため、通信距離、通信の安定度などのメリットがある反面、構造の複雑化、サイズの大型化、高コスト化などのデメリットもある。
【0003】
近年の半導体技術の向上により、パッシブ型タグ用のICチップの小型化、高性能化が進み、パッシブ型タグの幅広い分野での利用が期待されている。パッシブ型タグにおいては、周波数帯が長波帯、短波帯の場合は電磁誘導方式が適用されている。電磁誘導方式では、RFIDリーダライタの送信アンテナコイルとRFIDタグのアンテナコイルとの間の電磁誘導作用でRFIDタグに電圧が誘起され、この電圧によりICチップを起動して通信を可能としている。従って、RFIDリーダライタによる誘導電磁界内でしかRFIDタグが動作せず、通信距離は数十cm程度に限られてしまう。
【0004】
一方、UHF帯またはマイクロ波帯などの高い周波数帯のRFIDタグでは、電波通信方式が適用されている。電波によりRFIDタグのICチップに電力を供給しているため、通信距離は1〜7m程度と大幅に向上している。従って、通信距離の短い長波帯、短波帯のRFIDシステムでは実現が困難であった移動中の通信が可能となり、その利用範囲は大幅に広がると考えられる。
【0005】
機械類や設備類には多数のボルトが使用されるが、RFIDシステムを用いて、ボルトの締結状態を管理する方法が提案されている。従来のボルト管理具は、ボルト近傍に配置されたスイッチが、ボルトの締結状態に応じて閉成・開成が切り換わり、このスイッチの状態に応じてRFIDタグが応答する。スイッチは、ボルトが正常に締結されている場合は閉成し、ボルトが緩んだ場合に開成する構造となっている。ボルト管理具に備わるRFIDタグからの応答情報をRFIDリーダライタで読み取ることで、ボルトの緩みを検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
例えば、鉄道分野では地上設備のメンテナンスを簡略化したいという要求がある。鉄道分野の地上装置では、鉄道用レール(以下、レールと記す。)を枕木に固定するために複数のボルトが使用されるが、このボルトの緩みを検出するために、上記ボルト管理具を利用することが提案されている。レールを枕木に固定するためのボルトの近傍にボルト管理具を配置し、レール上を走行する列車にRFIDリーダライタを配置することで、列車が走行中にRFIDリーダライタとボルト管理具のRFIDタグとの間で通信を行い、ボルトの緩みを検出している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−066667号公報
【特許文献2】特開2009−064111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のボルト管理具は、ボルトの締結状態に応じて閉成・開成が切り換わる機械的なスイッチを必要とし、当該スイッチとボルト及びRFIDタグとを接続しなければならないため構造が複雑である。ボルト管理具に使用するスイッチが故障した場合は、ボルト緩み検出システムにおいて正確にボルトの緩みを検出できないという問題点がある。このため、ボルト管理具自体をメンテナンスする必要が生じ、結局のところ、機械類や設備類のメンテナンスを簡略化できず、実現性、運用性が低いという問題点がある。特に、鉄道分野においては、地上設備のメンテナンスを簡略化したいという要求があるが、機械的なスイッチを含むボルト管理具自体のメンテナンスを要するため、地上設備のメンテナンスの簡略化が実現できない。
【0009】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、簡易な構造でボルトの緩みを正確に効率良く検出することができるボルト緩み検出システム、これを構成するボルト緩み検出装置及びボルト管理具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るボルト緩み検出システムは、ボルトに固定されたRFIDタグと、スリットが設けられた電波遮蔽カバーとを有するボルト管理具と、RFIDタグから放射されスリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、アンテナ部で受信した電波を復調して、RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、ボルトの緩みを検出する検出部とを有するボルト緩み検出装置と、を備えたものである。
【0011】
本発明に係るボルト緩み検出装置は、スリットを有する電波遮蔽カバーにより覆われたRFIDタグから放射されスリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、アンテナ部で受信した電波を復調して、RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、ボルトの緩みを検出する検出部と、を備えたものである。
【0012】
本発明に係るボルト管理具は、ボルトに固定されたRFIDタグと、スリットが設けられ、ボルトとRFIDタグとを覆う電波遮蔽カバーと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ボルトの緩みにより電波遮蔽カバーのスリットを通過する電波の強度が変化することを利用して、ボルトの緩みをボルト管理具からボルト緩み検出装置へ通知するため、RFIDタグと電波遮蔽カバーという簡易な構成でボルト管理具を実現でき、正確に効率良くボルトの緩みを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出システムを示す説明図である。
【図2】図1のX部を示す拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるアンテナ部及びボルト管理具を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部を示す構成図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部を示す機能ブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図12】本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部を示す機能ブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図14】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図15】本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態2におけるアンテナ部の放射パターン図である。
【図17】本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る各実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各図において、同一符号は、同一または相当の構成を示す。なお、以下に示す各実施の形態では、本発明を鉄道分野で利用する場合について説明するが、本発明は以下に示す各実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出システムを示す説明図である。図2は、図1のX部を示す拡大図である。図3は、本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す斜視図である。なお、図2の一部、及び図3は、ボルト管理具の内部構造を示すため、後述する電波遮蔽カバー12を透視した図である。図4は、本発明の実施の形態1におけるボルト管理具を示す断面図である。図5は、本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置を示す構成図である。以下、図1乃至図5を参照してボルト緩み検出システムの構成を説明する。
【0017】
ボルト緩み検出システムは、ボルト緩み検出装置1とボルト管理具10とを備える。本実施の形態のボルト緩み検出システムを用いて、レールを枕木に固定するための固定具であるボルト20の緩みを検出する場合には、レール上を走行する列車(検測車等を含む鉄道車両全般を指す)にボルト緩み検出装置1を設置し(図1及び図2では図示せず)、ボルト20の近傍にボルト管理具10を設置する。
【0018】
ボルト管理具10は、枕木にレールを固定するためのボルト20の頭部に取付けたパッシブ型のRFIDタグ11と、当該RFIDタグ11とボルト20とを覆う電波遮蔽カバー12とを備える。電波遮蔽カバー12は電波を遮蔽する素材により形成され、スリット13を有している。
【0019】
RFIDタグ11は、ボルト20の頭部に接着剤等で固定してもよいし(図3参照)、図4に示すように、ボルト20の頭部を覆うためのボルトキャップ14を用いて固定してもよい。RFIDタグ11を備えたボルトキャップ14をボルト20の頭部に被せることにより、RFIDタグ11をボルト20の頭部に簡単に固定でき、RFIDタグ11のボルト20への固定作業の効率が高まる。また、ボルト20の頭部よりも大きなボルトキャップ14を熱硬化性樹脂により形成すれば、ボルトキャップ14をボルト20の頭部へ被せる際に、RFIDタグ11が所望の方向に向くように自由にボルトキャップ14の向きを決定した後、ボルトキャップ14を熱硬化させてボルト20の頭部へ被せることができる。
【0020】
図5に示すように、ボルト緩み検出装置1は、アンテナ部2と、RFIDリーダライタ部3と、検出部4とを備える。RFIDリーダライタ3は、アンテナ部2を介してボルト管理具10のRFIDタグ11との間で無線通信を行い、検出部4は、RFIDリーダライタ3からの入力データに基づきボルト20の緩みを検出する。
【0021】
RFIDリーダライタ3からRFIDタグ11に対する質問波と、RFIDタグ11からRFIDリーダライタ3に対する応答波とは、電波遮蔽カバー12のスリット13を通過してそれぞれ伝達される。RFIDリーダライタ3からの質問波を受信したRFIDタグ11は、固有のID情報を付加した応答波をRFIDリーダライタ3へ返信する。アンテナ部2で受信した応答波を復調したRFIDリーダライタ3は、RFIDタグ11から送信された固有のID情報、受信電界強度、時刻情報等を検出部4へ出力する。検出部4では、RFIDリーダライタ3から出力されたデータを用いてボルト20の緩みを検出する。
【0022】
なお、検出部4の換わりに、RFIDリーダライタ3から出力されるデータを保存する記憶部を備えても良い。例えば、記録部を持ち出し可能な記録媒体で構成すれば、検出部4がRFIDリーダライタ3と直接接続しておらず、物理的に離れた場所に設置されていても、当該記録媒体に対して検出部4がアクセスすることで、ボルト20の緩みを検出できる。
【0023】
図6は、本発明の実施の形態1におけるアンテナ部及びボルト管理具を示す斜視図である。図6(a)は、ボルトに緩みがない正常な状態の斜視図であり、図6(b)は、ボルトが緩んだ状態の斜視図である。図6を参照して、ボルト20の緩み検出の原理を説明する。なお、図6は、ボルト管理具10の内部構造を説明するため、電波遮蔽カバー12を透視した図である。
【0024】
ボルト緩み検出装置1のアンテナ部2から射出された電波(質問波)は、電波遮蔽カバー12のスリット13を通過して電波遮蔽カバー12の内部に配置されたRFIDタグ11へと到達する。ボルト緩み検出装置1からの電波により電力を供給されたRFIDタグ11は、固有のID情報を付加した応答波を射出する。
【0025】
RFIDタグ11を取付けているボルト20が、図6(a)に示す正常な状態から、振動や温度変化等の要因により緩んで、図6(b)に示す状態に変化した場合について説明する。RFIDタグ11はボルト20の頭部に固定されているため、ボルト20の緩み角度に応じて、RFIDタグ11のスリット13に対する相対角度が変化する。この相対角度の変化に伴い、スリット13を通過する電波の強度も変化する。例えば、図6(a)に示すRFIDタグ11とスリット13との位置関係において、スリット13を通過する電波の強度が最大(即ち、電波遮蔽カバー12により遮蔽される電波の強度が最小)になるものとする。一方、図6(b)に示すRFIDタグ11とスリット13との位置関係においては、RFIDタグ11のスリット13に対する相対角度が図6(a)に示す状態とは異なるため、図6(a)に示す状態と比較すると、スリット13を通過する電波の強度が減少(即ち、電波遮蔽カバー12により遮蔽される電波の強度が増加)する。
【0026】
図6(a)に示すボルト20の締め付けが正常な状態においては、RFIDリーダライタ3でのRFIDタグ11のID情報の読み取りが可能である。一方、図6(b)に示すボルト20に緩みが生じた状態では、電波遮蔽カバー12により遮蔽される電波の強度が図6(a)に示す状態よりも増加するため、RFIDリーダライタ3でのRFIDタグ11の読み取りが不能となる。もしくは、RFIDタグ11の読み取りが可能であっても、正常な状態と比較するとRFIDリーダライタ3での受信電界強度は減少する。即ち、ボルト20の緩み発生前後において、RFIDタグ11のID情報の読み取り可否状態が変化するか、もしくは読み取り可否状態は変化しなくともRFIDリーダライタ3での受信電界強度は変化する。この状態変化を利用して、ボルト20の緩みを検出する。RFIDタグ11のID情報の読み取り可否に基づき、または、読み取り可否と受信電界強度とに基づき、ボルト20の緩みを検出する。
【0027】
以下、ボルト緩み検出システムの動作について説明する。図7は、本発明の実施の形態1におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートである。ステップS10において、RFIDリーダライタ3はRFIDタグ11からの応答波を復調し、RFIDタグ11のID情報を読み取る。次に、RFIDリーダライタ3は、RFIDタグ11のID情報が読み取れたか否かを判断する(ステップS20)。
【0028】
ステップS20において、ID情報が読み取れなかった場合は、ステップS60へ移行して終了するか否かを判断し、継続する場合はステップS10へ戻って再度RFIDタグ11のID情報を読み取る。一方、ステップS20において、ID情報を読み取れた場合は、検出部4においてID情報の読み溢しの有無を判断する(ステップS30)。例えば、隣り合うボルト20に連番でID情報を設定しておけば、新たに読み取ったボルト20のID情報が、一つ前のボルト20(新たに読み取ったボルト20の隣に設置されたボルト20)のID情報と連番であるか否かを判断すればよい。なお、列車が停車中の場合は、同一のボルト20に設置されたRFIDタグ11のID情報を連続して読み取ることが考えられる。このため、ID情報が連番ではなく同一であっても、番号飛びがなければID情報の読み溢しは無いものと判断する。
【0029】
ステップS30において、ID情報の読み溢しがあると判断した場合は、ステップS35へ移行し、読み溢したID情報を抽出して記録する。一方、ステップS30において、ID情報の読み溢しがないと判断した場合は、RFIDタグ11からの応答波の受信電界強度が適当であるか否かを判断する(ステップS40)。受信電界強度の適否については、例えば、所定の閾値と受信電界強度とを比較して、所定の閾値よりも受信電界強度が高ければ適当であると判断する。もしくは、同一のID情報において、前回のボルト緩み検出時に取得した受信電界強度と新たに取得した受信電界強度との差が、所定の判定値よりも大きければ不適当であると判断する。
【0030】
ステップS40において、応答波の受信電界強度が適当でないと判断した場合は、ステップS45へ移行し、受信電界強度が異常であることを記録する。一方、ステップS40において、応答波の受信電界強度が適当であると判断した場合は、ID情報の読み取り実績を保存する(ステップS50)。ID情報の読み取り実績とは、例えば、ID情報、受信電界強度、時刻等が考えられる。ステップS60において、ボルト緩み検出を終了するか否かを判断し、継続する場合はステップS10へ戻る。
【0031】
上述のボルト緩み検出の原理で説明したとおり、ボルト20が緩むとスリット13に対するRFIDタグ11の相対角度が変化し、スリット13を通過する電波の強度が変化する。このため、当初(ボルト締め付け時)はID情報をRFIDリーダライタ3で読み取れていたものが、緩んだボルト20に固定したRFIDタグ11のID情報については、読み取り不可となり、ステップS30においてID情報の読み溢しと判断される。また、読み取り不可とならずとも、ボルト20が緩んだ場合、スリット13で遮蔽される電波の強度が増加するため、RFIDリーダライタ3で受信する応答波の受信電界強度が低くなり、ステップS40において受信電界強度が適当でないと判断される。ステップS35において読み溢したID情報を記録し、また、受信電界強度が適正でない場合にもID情報をステップS45で記録するため、当該ID情報に対応するボルト20が緩んでいることを検出できる。ID情報の読み取り可否にのみ基づき、ボルト20の緩みを検出してもよいし、ID情報の読み取り可否に加えてさらに受信電界強度に基づき、ボルト20の緩みを検出してもよい。
【0032】
電波遮蔽カバー12のスリット13に対するRFIDタグ11の相対角度が、ボルト20の緩みにより変化し、スリット13を通過する電波の強度が変化することを利用してボルト20の緩みを通知するため、本実施の形態1におけるボルト管理具10は、RFIDタグ11と電波遮蔽カバー12という簡易な構成で実現できる。
【0033】
本実施の形態1におけるボルト緩み検出システムは、ボルト管理具10のスリット13を通過した応答波から得られるRFIDタグ11のID情報に基づき、またはID情報及び受信電界強度に基づき、ボルト緩み検出装置1でボルト20の緩みを検出するため、正確に効率良くボルト20の緩みを検出できる。
【0034】
実施の形態2.
ボルト緩み検出装置を、列車のように高速で移動するものに設置する場合、一度に複数のRFIDタグと通信を行ってしまい、目的のボルトのRFIDタグではなく、隣のボルトに設置されたRFIDタグのID情報を読み込んでしまうおそれがある。識別対象のRFIDタグとのみ通信するためには、アンテナ部のビーム幅を狭くすれば良い。しかし、アンテナ部のビーム幅を狭くするためには、アンテナ部の形状を大きくしなければならず、実用的でない。本実施の形態2は、アンテナ部2を複数の素子アンテナで構成し、アンテナ部2をアンテナ制御部5からビーム制御する。
【0035】
以下では、実施の形態1におけるボルト緩み検出システムとの相違点について説明する。図8は、本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置1を示す構成図である。アンテナ部2は、第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを備える。アンテナ制御部5は、RFIDリーダライタ3からの制御信号に基づき、アンテナ部2のビーム制御をする。
【0036】
図9は、本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部5を示す構成図である。アンテナ制御部5内のスイッチ回路であるS1スイッチ50aは、RFIDリーダライタ3に接続されている。S1スイッチ50aは、スイッチ回路であるS2スイッチ50bに接続されている(P1−PC)。S2スイッチ50bは、スイッチ回路であるS3スイッチ50cとハイブリッド結合器(180°)51とに接続されている(P1−P2、P2−PC)。S3スイッチ30cは、S2スイッチ50bとの接続(P1−P2)に加えて、ハイブリッド結合器(180°)51とも接続されている(P1−PC)。
【0037】
S1スイッチ50aは、スイッチ回路であるS4スイッチ50dとも接続されている(P2−PC)。S4スイッチ50dは、スイッチ回路であるS5スイッチ50eとハイブリッド結合器(180°)51とに接続されている(P1−P2、P1−PC)。S5スイッチ50eは、S4スイッチ50dとの接続(P1−P2)に加えて、ハイブリッド結合器(180°)51とも接続されている(P2−PC)。なお、P1,P2,PCは各スイッチ回路やハイブリッド結合器(180°)51のポート(端子)名であり、ハイブリッド結合器(180°)51のポートに関しては、説明の簡略化のために4端子を全て「PC」としているが、実際の接続関係は図9に示すとおりで、異なるポートであることはいうまでもない。
【0038】
このような構成をアンテナ制御部5が採っているので、スイッチ回路であるS1スイッチ50a,S2スイッチ50b,S3スイッチ50c,S4スイッチ50d,S5スイッチ50eの接続を変更することにより、アンテナ制御部5は、アンテナ部2に対してビーム制御を行うことができる。なお、各スイッチ回路の接続の制御は、RFIDリーダライタ3から供給される制御信号に基づき行われる。つまり、RFIDリーダライタ3が、アンテナ制御部5を介して、アンテナ部2に対してビーム制御を行っているともいえる。
【0039】
次に、アンテナ部2のビーム制御について、図10〜図17を参照して説明する。なお、図10以降で、図9に記載のアンテナ制御部5の結線状態を示す図が複数あるが、それらにおいて、結線されていない部分は模式的に配線を省いて記している。また、図11以降で、放射パターンを示す図が複数あるが、縦軸のX[m]は、アンテナ部2のアンテナ面に沿った放射パターンの大きさを示し、横軸のZ[m]は、アンテナ部2のアンテナ面の前方に向かった放射パターンの大きさを示す。
【0040】
図10は本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部5を示す機能ブロック図である。図11は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部2の放射パターン図である。図11に示す放射パターン31は、第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを同位相で合成したときの放射パターンである。RFIDリーダライタ3からの制御信号により、図10に示すように、アンテナ制御部5内の各スイッチ回路及びハイブリッド結合器51が切り替えられ、S1スイッチ50a−S2スイッチ50b−ハイブリッド結合器51−S3スイッチ50c−第1の素子アンテナ2a,S1スイッチ50a−S2スイッチ50b−ハイブリッド結合器51−S5スイッチ50e−第2の素子アンテナ2bと接続される。第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとはハイブリッド結合器51により同位相で合成される。
【0041】
なお、第1の素子アンテナ2aのみを用いた場合の放射パターン32を図11に破線で示す。放射パターン32と放射パターン31とを比較すると、放射パターン31のビーム幅が狭くなっていることがわかる。アンテナ制御部5により第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを同位相で合成することで、アンテナ部2のビーム幅を狭くできる。
【0042】
図11に示すようにRFIDタグ11a〜11cが配置されている場合、同位相で合成された放射パターン31では、RFIDタグ11aと通信可能であるが、RFIDタグ11aの両隣に配置されるRFIDタグ11b、11cとは通信不能であり、識別対象となるRFIDタグ11aとのみ通信することができる。なお、第1の素子アンテナ2aのみを用いた場合は、放射パターンが32となるため、複数のRFIDタグ11a、11bと通信可能となってしまう。第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した方がビーム幅を狭くでき、識別対象となるRFIDタグ11aとのみ通信するため、近傍のRFIDタグ11b、11cの誤検出がなくなり、ボルトの緩みをより正確に検出できる。
【0043】
図12は本発明の実施の形態2におけるアンテナ制御部5を示す機能ブロック図である。図13は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部2の放射パターン図である。図13に示す放射パターン33は、第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとを逆位相で合成したときの放射パターンである。
【0044】
RFIDリーダライタ3からの制御信号により、図12に示すように、アンテナ制御部5内の各スイッチ回路及びハイブリッド結合器51が切り替えられ、S1スイッチ50a−S4スイッチ50d−ハイブリッド結合器51−S3スイッチ50c−第1の素子アンテナ2a,S1スイッチ50a−S4スイッチ50d−ハイブリッド結合器51−S5スイッチ50e−第2の素子アンテナ2bと接続される。第1の素子アンテナ2aと第2の素子アンテナ2bとはハイブリッド結合器51により逆位相で合成される。
【0045】
第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31と、逆位相で合成した放射パターン33とを用いることにより、RFIDタグの検出エリアを狭めることができる。図14は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部1の放射パターン図である。図15は本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートであり、図7に示すステップS10のID情報読み取り動作の詳細を示すものである。
【0046】
まず、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31で電波を放射し(ステップS11)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS12)。ここでは、放射パターン31の領域内に存在するRFIDタグ11a及び11bのID情報が取得される。
【0047】
次に、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを逆位相で合成した放射パターン33で電波を放射し(ステップS13)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS14)。ここでは、放射パターン33の領域内に存在するRFIDタグ11b、11c及び11dのID情報が取得される。
【0048】
検出エリア34(図14に示す斜線部分)の領域に含まれるRFIDタグを識別対象と認識し、そのID情報を読み取る(ステップS15)。即ち、放射パターン31で検出され、且つ放射パターン33では未検出のRFIDタグ11aが識別対象となる。例えば、RFIDタグ11bは放射パターン31及び33の両方で検出されているため識別対象とはならない。検出エリア34は、放射パターン31から放射パターン33を差し引いたものであり、放射パターン31よりも更に狭い領域となっている。
【0049】
他にも、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31と、第1の素子アンテナの放射パターン32とを用いることにより、RFIDタグの検出エリアを狭めることもできる。図16は本発明の実施の形態2におけるアンテナ部2の放射パターン図である。図17は本発明の実施の形態2におけるボルト緩み検出装置の動作を示すフローチャートであり、図7に示すステップS10のID情報読み取り動作の詳細を示すものである。
【0050】
まず、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1及び第2の素子アンテナ2a、2bを同位相で合成した放射パターン31で電波を放射し(ステップS11)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS12)。ここでは、放射パターン31の領域内に存在するRFIDタグ11a及び11bのID情報が取得される。
【0051】
次に、RFIDリーダライタ3から制御信号によりアンテナ制御部5の各スイッチ及びハイブリッド結合器51を切り替えて、第1の素子アンテナ2a単独の放射パターン32で電波を放射し(ステップS16)、RFIDタグからの応答波を復調してID情報を取得する(ステップS17)。ここでは、放射パターン32の領域内に存在するRFIDタグ11a及び11cのID情報が取得される。
【0052】
放射パターン31と放射パターン32との共通読取範囲である検出エリア35(図16に示す斜線部分)に含まれるRFIDタグを識別対象と認識し、そのID情報を読み取る(ステップS18)。検出エリア35は、放射パターン31及び放射パターン32の共通部分であり、放射パターン31よりも更に狭い領域となっている。ここでは、放射パターン31の領域内に存在し、且つ放射パターン2の領域内に存在するRFIDタグ11aが識別対象となる。
【0053】
なお、検出エリアについては、図14及び図16に示す斜線部分に限られるものではない。第1の放射パターンと第2の放射パターンとの共通エリア、またはどちらか一方の放射パターンにのみ属するエリアを検出エリアとし、当該検出エリアで取得されたID情報を識別対象のRFIDタグ11のID情報として読み取る。第1及び第2の放射パターンとしては、放射パターン31、放射パターン33、第1の素子アンテナの放射パターン32、及び第2の素子アンテナの放射パターンを組み合わせて、システムに合わせた検出エリアを生成できる。
【0054】
本実施の形態2では、アンテナ部2を2つの素子アンテナ2a、2bで構成する場合について例示的に説明したが、素子アンテナの数はこれに限られたものではない。例えば、アンテナ部2をn個の素子アンテナを有するフェイズドアレイアンテナで構成し、アンテナ制御部5でフェイズドアレイアンテナのビーム制御を行ってもよい。
【0055】
本実施の形態2におけるボルト緩み検出システムは、アンテナ制御部によりアンテナ部のビーム制御を行うことで、アンテナ部のビーム幅を狭くして、RFIDタグを読み取る検出エリアを狭めることができる。また、アンテナ部の放射パターンを切り替え可能とし、複数の放射パターンを用いて検出エリアを狭めることもできる。検出エリアを狭めることで、識別対象となるRFIDタグのID情報のみを正確に検出し、近傍に位置するRFIDタグのID情報の誤検出を防止することができる。これにより、ボルト管理具とボルト緩み検出装置との相対速度が大きなシステムにおいても、ボルトの緩みを正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ボルト緩み検出装置
2 アンテナ部
2a 第1の素子アンテナ
2b 第2の素子アンテナ
3 RFIDリーダライタ
4 検出部
5 アンテナ制御部
10 ボルト管理具
11 RFIDタグ
12 電波遮蔽カバー
13 スリット
20 ボルト
31 放射パターン
32 放射パターン
33 放射パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトに固定されたRFIDタグと、
スリットが設けられ、前記ボルトと前記RFIDタグとを覆う電波遮蔽カバーと、
を有するボルト管理具と、
前記RFIDタグから放射され前記スリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部で受信した電波を復調して、前記RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、
前記RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、前記ボルトの緩みを検出する検出部と、
を有するボルト緩み検出装置と、
を備えたボルト緩み検出システム。
【請求項2】
前記RFIDタグから放射された電波の受信電界強度に基づき、前記ボルトの緩みを検出することを特徴とする請求項1記載のボルト緩み検出システム。
【請求項3】
前記RFIDタグから放射された電波の受信電界強度と、同一のID情報について前回取得した受信電界強度との差が、所定の判定値より大きいとき、前記ボルトの緩みを検出することを特徴とする請求項2記載のボルト緩み検出システム。
【請求項4】
前記アンテナ部は複数の素子アンテナを有し、
前記ボルト緩み検出装置は、前記アンテナ部のビーム制御を行うアンテナ制御部を備え、
前記アンテナ制御部が前記アンテナ部に第1の放射パターンを形成させたときに取得されたID情報と、前記アンテナ制御部が前記アンテナ部に第2の放射パターンを形成させたときに取得されたID情報とのうち、共通のID情報、またはどちらか一方の放射パターンでのみ取得されたID情報を、識別対象のRFIDタグのID情報として読み取ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のボルト緩み検出システム。
【請求項5】
前記ボルトは、鉄道用レールを枕木に固定するための固定具であり、
前記ボルト緩み検出装置は、前記鉄道用レール上を走行する列車に設置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のボルト緩み検出システム。
【請求項6】
スリットを有する電波遮蔽カバーにより覆われたRFIDタグから放射され前記スリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部で受信した電波を復調して、前記RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、
前記RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、前記ボルトの緩みを検出する検出部と、
を備えたボルト緩み検出装置。
【請求項7】
ボルトに固定されたRFIDタグと、
スリットが設けられ、前記ボルトと前記RFIDタグとを覆う電波遮蔽カバーと、
を備えたボルト管理具。
【請求項1】
ボルトに固定されたRFIDタグと、
スリットが設けられ、前記ボルトと前記RFIDタグとを覆う電波遮蔽カバーと、
を有するボルト管理具と、
前記RFIDタグから放射され前記スリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部で受信した電波を復調して、前記RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、
前記RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、前記ボルトの緩みを検出する検出部と、
を有するボルト緩み検出装置と、
を備えたボルト緩み検出システム。
【請求項2】
前記RFIDタグから放射された電波の受信電界強度に基づき、前記ボルトの緩みを検出することを特徴とする請求項1記載のボルト緩み検出システム。
【請求項3】
前記RFIDタグから放射された電波の受信電界強度と、同一のID情報について前回取得した受信電界強度との差が、所定の判定値より大きいとき、前記ボルトの緩みを検出することを特徴とする請求項2記載のボルト緩み検出システム。
【請求項4】
前記アンテナ部は複数の素子アンテナを有し、
前記ボルト緩み検出装置は、前記アンテナ部のビーム制御を行うアンテナ制御部を備え、
前記アンテナ制御部が前記アンテナ部に第1の放射パターンを形成させたときに取得されたID情報と、前記アンテナ制御部が前記アンテナ部に第2の放射パターンを形成させたときに取得されたID情報とのうち、共通のID情報、またはどちらか一方の放射パターンでのみ取得されたID情報を、識別対象のRFIDタグのID情報として読み取ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のボルト緩み検出システム。
【請求項5】
前記ボルトは、鉄道用レールを枕木に固定するための固定具であり、
前記ボルト緩み検出装置は、前記鉄道用レール上を走行する列車に設置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のボルト緩み検出システム。
【請求項6】
スリットを有する電波遮蔽カバーにより覆われたRFIDタグから放射され前記スリットを通過した電波を受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部で受信した電波を復調して、前記RFIDタグのID情報を読み取るRFIDリーダライタと、
前記RFIDタグのID情報の読み取り可否に基づき、前記ボルトの緩みを検出する検出部と、
を備えたボルト緩み検出装置。
【請求項7】
ボルトに固定されたRFIDタグと、
スリットが設けられ、前記ボルトと前記RFIDタグとを覆う電波遮蔽カバーと、
を備えたボルト管理具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−241567(P2011−241567A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113275(P2010−113275)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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