ボールジョイント装置
【課題】弾性リフトを増大させずに揺摺動トルクを減少させること。
【解決手段】凹球面31及び外周面33とを有する樹脂材製のボールシート30と、凹球面31に回転自在に嵌合する球状頭部41を有するスタッドボール40と、ボールシート30を開口部23から底面21側に向けて挿入して収容し、内周面22とボールシート30の外周面33が嵌合するボールシート挿入部20を有するハウジング12とを備え、外周面33の外径は、底面21側から開口部23側に向けて拡がっており、また、内周面22の内径Nは、底面21側から開口部23側に向けて拡がっている。
【解決手段】凹球面31及び外周面33とを有する樹脂材製のボールシート30と、凹球面31に回転自在に嵌合する球状頭部41を有するスタッドボール40と、ボールシート30を開口部23から底面21側に向けて挿入して収容し、内周面22とボールシート30の外周面33が嵌合するボールシート挿入部20を有するハウジング12とを備え、外周面33の外径は、底面21側から開口部23側に向けて拡がっており、また、内周面22の内径Nは、底面21側から開口部23側に向けて拡がっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械の機構要素接続部分などに用いられるボールジョイント装置に関し、特に揺摺動トルク及び弾性リフトを軽減することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用スタビライザは、スタビライザバーを車両の懸架装置に連結し、スタビライザバーのねじり反力を利用して車両の姿勢を安定させる機能を有している。例えば車両用スタビライザは、U字状に形成されたスタビライザバーの両端を懸架装置の作動部分に連結させ、スタビライザバーのトーション部を車体フレームに固定部材で固定させ、ねじり反力を受けるように構成されている。
【0003】
車両スタビライザを構成する装置として、スタビライザとストラットやアーム類を連結するボールジョイント装置が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
図7は、ボールジョイント装置の一例を示す断面図である。図7に示すように、ボールジョイント装置310は、ロッド部材311とこのロッド部材311の端部に一体に設けられたハウジング312を備えている。ロッド部材311の左右両側部にそれぞれ折曲げ縁部314が設けられている。
【0005】
ハウジング312は、図8に示すように、円筒状に絞り加工されたボールシート挿入部320と、ボールシート挿入部320の端部に位置する底面321とを有している。ボールシート挿入部320の開口部にフランジ部323が設けられている。また、底面321に複数の孔324が打抜かれている。
【0006】
ボールシート挿入部320にボールシート330が収容される。このボールシート330は、熱可塑性の合成樹脂からなり、凹球面331及び外周面332を有している。
【0007】
ボールシート330の凹球面331にスタッドボール340の球状頭部341が回転自在に嵌合させられている。スタッドボール340は、球状頭部341以外に、ねじ部342と大径部343を備えており、ボールシート330の鍔部344と大径部343との間にダストカバー345が設けられている。
【0008】
このように構成されたボールジョイント装置では、車両のサスペンションがストロークするに伴い、スタッドボール340とボールシート330とが揺摺動される。なお、揺摺動される際の特性は、揺摺動トルク、あるいは、揺動トルク及び回転トルクと定義づけられている。
【0009】
ハウジング312の内周面の内径は、ボールシート330の外周面の外径より小さく形成されることで、ボールシート330がハウジング312内に弾性力によって十分に固定されるようにしていた。なお、ハウジング312の内周面の内径と、ボールシート330の外周面の外径との差を締め代と称している。
【0010】
近年、車両の乗り心地を向上を目的としてサスペンションフリクションを低減する要求が高まり、サスペンション部品の一つであるボールジョイント装置の揺摺動トルクの低減が求められている。締め代が大きいと、ハウジング312によりボールシート330が内側へ押圧されるため、ボールシートとスタッドとの隙間が減り、揺摺動トルクが高まり(例えば、1.6Nm以上)、乗り心地が悪化する。このため、締め代を小さくすることで、乗り心地を改善する低トルク型のボールシート(例えば、1.0Nm以下)が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許3168229号公報
【特許文献2】特許3369659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した低トルク型のボールシートを用いたボールジョイント装置にあっては、次のような問題があった。すなわち、ボールシートは射出成形にて製造される樹脂部品であるため、成形時の熱収縮の影響によりボールシートの外周面の外径は一定にならず、開口側に向けて広がるテーパ形状になっている。これに対し、ハウジングの凹部の内周面は図8に示すように、ストレート形状(内径一定)である。
【0013】
図9は、ハウジングの内周面の内径(R)とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図である。従来のボールシート(Qa)であれば締め代が十分にあることから、ボールシートとハウジングが密着している領域が広くなり、支持が安定することになる。しかしながら、締め代を小さくした低トルク型のボールシート(Qb)の場合は、ボールシートとハウジングとの間に生じる隙間が過大になる部分が生じ(弾性リフト)、スタッドボールとボールシートとの接触が局部的になる(X)。これはガタとして生じ、不快な騒音や振動が発生する要因となる場合がある。なお、弾性リフトとは、荷重をかけたときの撓みである。
【0014】
図10,図11は、ボールジョイント装置の耐久試験を施した場合、試験前後における荷重とたわみとの関係を通常のボールシートと低トルク型のボールシートの場合を比較して示す説明図である。ハウジングの内周面が一定の場合、低トルク型のボールシートを用いて締め代を下げると弾性リフト量が増大し、試験後においては、ボールシートが変形し、ガタが発生する。
【0015】
図12は、ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と揺摺動トルクとの関係を示す説明図である。締め代を小さくすると揺摺動トルクが少なくなることが判る。また、図13は、ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と弾性リフトとの関係を示す説明図である。締め代を小さくすると、弾性リフト量が増大することが判る。
【0016】
そこで本発明は、弾性リフトを増大させずに揺摺動トルクを減少させることができるボールジョイント装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の車両用スタビリンクは次のように構成されている。
【0018】
凹球面及び外周面とを有する樹脂材製のボールシートと、上記凹球面に回転自在に嵌合する球状頭部を有するスタッドボールと、上記ボールシートを開口部から底面側に向けて挿入して収容し、その内周面と上記ボールシートの外周面が嵌合する凹部を有するハウジングとを備え、上記外周面の外径は、上記底面側から上記開口部側に向けて拡がっており、また、上記内周面の内径は、上記底面から上記開口部側に向けて少なくとも拡がる領域を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、弾性リフトを増大させずに揺摺動トルクを減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るボールジョイント装置が組み込まれた車両用スタビライザ及び車両前輪の懸架装置を示す斜視図。
【図2】同ボールジョイント装置を分解して示す断面図。
【図3】同ボールジョイント装置に組み込まれたハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図4】同ボールジョイント装置に組み込まれた第1変形例に係るハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図5】同ボールジョイント装置に組み込まれた第2変形例に係るハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図6】同ボールジョイント装置に組み込まれた第3変形例に係るハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図7】ボールジョイント装置の一例を示す断面図。
【図8】同ボールジョイント装置に組み込まれたハウジングを示す断面図。
【図9】同ボールジョイント装置に組み込まれたハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図10】同ボールジョイント装置における試験前における荷重とたわみとの関係を通常のボールシートと低トルク型のボールシートの場合を比較して示す説明図。
【図11】同ボールジョイント装置における試験後における荷重とたわみとの関係を通常のボールシートと低トルク型のボールシートの場合を比較して示す説明図。
【図12】同ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と揺摺動トルクとの関係を示す説明図。
【図13】同ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と弾性リフトとの関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の一実施の形態に係るボールジョイント装置10が組み込まれた車両用スタビライザ100及び車両前輪の懸架装置200を示す斜視図、図2はボールジョイント装置10を分解して示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、車両用スタビライザ100は、中空部材から構成されたスタビライザバー101と、スタビライザバー101を車体のフレーム部(不図示)に固定する固定部材102と、スタビライザバー101の先端101aを懸架装置200の作動部分に連結させるスタビライザリンク110とを備えている。ボールジョイント装置10は、スタビライザリンク110の一部を構成している。
【0023】
図2に示すように、ボールジョイント装置10は、金属製のハウジング12を備えている。ハウジング12は鋼板等の1枚の金属板からなるプレス成形品であり、絞り加工して形成されている。
【0024】
ハウジング12は、円筒状に絞り加工されたボールシート挿入部(凹部)20と、ボールシート挿入部20の端部に位置する底面21と、内周面22とを有している。ボールシート挿入部20の開口部23にフランジ部24が設けられている。また、底面21に複数の孔25が打抜かれている。内周面22の内径Nは、底面21から中途部22aまで一定であり、その中途部22aから開口部23側に向けて拡がっている。
【0025】
ボールシート挿入部20にボールシート30が収容される。このボールシート30は、例えばポリアセタールやポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性の合成樹脂からなり、有底筒状に形成されており、内部に凹球面31、底部に突起32、及び、外周面33を有している。外周面33の外径Gは、底面21側から開口部23側に向けて拡がっている。
【0026】
図2に示すように、ボールシート30の底面には孔25と対応した位置に複数の突起32が設けられている。この突起32を孔25に挿入したのち、突起32が孔25の外側に突出する部分32aを、外部から熱を加えるかあるいは高周波誘導による発熱によって軟化させるとともに、部分32aを軸線方向に潰すことによって、ハウジング12に対してボールシート30を固定する。
【0027】
ボールシート30の凹球面31にスタッドボール40の球状頭部41が回転自在に嵌合される。スタッドボール40は、球状頭部41以外に、ねじ部42と大径部43を備えている。
【0028】
ここで、図3を用いて、ハウジング12の内周面22の内径Nとボールシート30の外周面の外径Gとの関係について説明する。
【0029】
すなわち、外周面の外径Gは、凹部の底面側で上記内周面の内径Nより小、凹部の開口部側で内周面の内径Nより大に形成されている。
【0030】
このように構成されていると、局部当たりは回避されるとともに、全体的に締め代を減少させる。弾性リフトの増加が抑えられる。結果的に、車両の乗心地(特に微振幅領域)の向上効果がある。なお、定常揺動トルク/回転トルクは、1.0Nm以下とすることが好ましい。
【0031】
このように締め代を制御することで、定常揺動/回転トルク、弾性リフトの他、スタッド抜き荷重等を所望の値にすることができる。この他、テーパ開始点、テーパ角度、テーパの数を変えるようにしてもよい。
【0032】
なお、ハウジング12はプレス成形とし、機械加工を行わないで成形できる。このため、既存の製造ラインに対し大幅な改造は必要なく、既存の製造コスト・製品コストを最小限に抑えることができる。
【0033】
図4〜図6は、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差を様々に変化させることで、乗り心地を細かく設定することができる例を示している。いずれも、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
図4に示す第1変形例においては、外周面の外径Gは、内周面の内径Nより大に形成され、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差は、底面21側から開口部23側に向けて単調増加するように設定されている。
【0035】
図5に示す第2変形例においては、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差は、底面21側から中途部まで一定、中途部から開口部側に向けて単調増加するように設定されている。
【0036】
図6に示す第3変形例においては、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差は、底面21側から開口部まで一定である。
【0037】
上述したように、本実施の形態に係る車両用スタビライザ10に組み込まれたスタビライザバー20では、軽量化のために中空部材を用いた場合であっても、中実部材と同様に主応力を均一化することが簡易な設計及び製造方法で実現できる。
【0038】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
弾性リフトを増大させずに揺摺動トルクを減少させることができるボールジョイント装置を提供できる。
【符号の説明】
【0040】
10…ボールジョイント装置、12…ハウジング、20…ボールシート挿入部(凹部)、21…底面、22…内周面、23…開口部、30…ボールシート、31…凹球面、33…外周面、車両用スタビライザ100、スタビライザバー101、スタビライザリンク110。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械の機構要素接続部分などに用いられるボールジョイント装置に関し、特に揺摺動トルク及び弾性リフトを軽減することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用スタビライザは、スタビライザバーを車両の懸架装置に連結し、スタビライザバーのねじり反力を利用して車両の姿勢を安定させる機能を有している。例えば車両用スタビライザは、U字状に形成されたスタビライザバーの両端を懸架装置の作動部分に連結させ、スタビライザバーのトーション部を車体フレームに固定部材で固定させ、ねじり反力を受けるように構成されている。
【0003】
車両スタビライザを構成する装置として、スタビライザとストラットやアーム類を連結するボールジョイント装置が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
図7は、ボールジョイント装置の一例を示す断面図である。図7に示すように、ボールジョイント装置310は、ロッド部材311とこのロッド部材311の端部に一体に設けられたハウジング312を備えている。ロッド部材311の左右両側部にそれぞれ折曲げ縁部314が設けられている。
【0005】
ハウジング312は、図8に示すように、円筒状に絞り加工されたボールシート挿入部320と、ボールシート挿入部320の端部に位置する底面321とを有している。ボールシート挿入部320の開口部にフランジ部323が設けられている。また、底面321に複数の孔324が打抜かれている。
【0006】
ボールシート挿入部320にボールシート330が収容される。このボールシート330は、熱可塑性の合成樹脂からなり、凹球面331及び外周面332を有している。
【0007】
ボールシート330の凹球面331にスタッドボール340の球状頭部341が回転自在に嵌合させられている。スタッドボール340は、球状頭部341以外に、ねじ部342と大径部343を備えており、ボールシート330の鍔部344と大径部343との間にダストカバー345が設けられている。
【0008】
このように構成されたボールジョイント装置では、車両のサスペンションがストロークするに伴い、スタッドボール340とボールシート330とが揺摺動される。なお、揺摺動される際の特性は、揺摺動トルク、あるいは、揺動トルク及び回転トルクと定義づけられている。
【0009】
ハウジング312の内周面の内径は、ボールシート330の外周面の外径より小さく形成されることで、ボールシート330がハウジング312内に弾性力によって十分に固定されるようにしていた。なお、ハウジング312の内周面の内径と、ボールシート330の外周面の外径との差を締め代と称している。
【0010】
近年、車両の乗り心地を向上を目的としてサスペンションフリクションを低減する要求が高まり、サスペンション部品の一つであるボールジョイント装置の揺摺動トルクの低減が求められている。締め代が大きいと、ハウジング312によりボールシート330が内側へ押圧されるため、ボールシートとスタッドとの隙間が減り、揺摺動トルクが高まり(例えば、1.6Nm以上)、乗り心地が悪化する。このため、締め代を小さくすることで、乗り心地を改善する低トルク型のボールシート(例えば、1.0Nm以下)が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許3168229号公報
【特許文献2】特許3369659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した低トルク型のボールシートを用いたボールジョイント装置にあっては、次のような問題があった。すなわち、ボールシートは射出成形にて製造される樹脂部品であるため、成形時の熱収縮の影響によりボールシートの外周面の外径は一定にならず、開口側に向けて広がるテーパ形状になっている。これに対し、ハウジングの凹部の内周面は図8に示すように、ストレート形状(内径一定)である。
【0013】
図9は、ハウジングの内周面の内径(R)とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図である。従来のボールシート(Qa)であれば締め代が十分にあることから、ボールシートとハウジングが密着している領域が広くなり、支持が安定することになる。しかしながら、締め代を小さくした低トルク型のボールシート(Qb)の場合は、ボールシートとハウジングとの間に生じる隙間が過大になる部分が生じ(弾性リフト)、スタッドボールとボールシートとの接触が局部的になる(X)。これはガタとして生じ、不快な騒音や振動が発生する要因となる場合がある。なお、弾性リフトとは、荷重をかけたときの撓みである。
【0014】
図10,図11は、ボールジョイント装置の耐久試験を施した場合、試験前後における荷重とたわみとの関係を通常のボールシートと低トルク型のボールシートの場合を比較して示す説明図である。ハウジングの内周面が一定の場合、低トルク型のボールシートを用いて締め代を下げると弾性リフト量が増大し、試験後においては、ボールシートが変形し、ガタが発生する。
【0015】
図12は、ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と揺摺動トルクとの関係を示す説明図である。締め代を小さくすると揺摺動トルクが少なくなることが判る。また、図13は、ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と弾性リフトとの関係を示す説明図である。締め代を小さくすると、弾性リフト量が増大することが判る。
【0016】
そこで本発明は、弾性リフトを増大させずに揺摺動トルクを減少させることができるボールジョイント装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の車両用スタビリンクは次のように構成されている。
【0018】
凹球面及び外周面とを有する樹脂材製のボールシートと、上記凹球面に回転自在に嵌合する球状頭部を有するスタッドボールと、上記ボールシートを開口部から底面側に向けて挿入して収容し、その内周面と上記ボールシートの外周面が嵌合する凹部を有するハウジングとを備え、上記外周面の外径は、上記底面側から上記開口部側に向けて拡がっており、また、上記内周面の内径は、上記底面から上記開口部側に向けて少なくとも拡がる領域を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、弾性リフトを増大させずに揺摺動トルクを減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るボールジョイント装置が組み込まれた車両用スタビライザ及び車両前輪の懸架装置を示す斜視図。
【図2】同ボールジョイント装置を分解して示す断面図。
【図3】同ボールジョイント装置に組み込まれたハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図4】同ボールジョイント装置に組み込まれた第1変形例に係るハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図5】同ボールジョイント装置に組み込まれた第2変形例に係るハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図6】同ボールジョイント装置に組み込まれた第3変形例に係るハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図7】ボールジョイント装置の一例を示す断面図。
【図8】同ボールジョイント装置に組み込まれたハウジングを示す断面図。
【図9】同ボールジョイント装置に組み込まれたハウジングの内周面の内径とボールシートの外周面の外径との関係を示す説明図。
【図10】同ボールジョイント装置における試験前における荷重とたわみとの関係を通常のボールシートと低トルク型のボールシートの場合を比較して示す説明図。
【図11】同ボールジョイント装置における試験後における荷重とたわみとの関係を通常のボールシートと低トルク型のボールシートの場合を比較して示す説明図。
【図12】同ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と揺摺動トルクとの関係を示す説明図。
【図13】同ボールジョイント装置に組み込まれたボールシートとハウジングとの締め代と弾性リフトとの関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の一実施の形態に係るボールジョイント装置10が組み込まれた車両用スタビライザ100及び車両前輪の懸架装置200を示す斜視図、図2はボールジョイント装置10を分解して示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、車両用スタビライザ100は、中空部材から構成されたスタビライザバー101と、スタビライザバー101を車体のフレーム部(不図示)に固定する固定部材102と、スタビライザバー101の先端101aを懸架装置200の作動部分に連結させるスタビライザリンク110とを備えている。ボールジョイント装置10は、スタビライザリンク110の一部を構成している。
【0023】
図2に示すように、ボールジョイント装置10は、金属製のハウジング12を備えている。ハウジング12は鋼板等の1枚の金属板からなるプレス成形品であり、絞り加工して形成されている。
【0024】
ハウジング12は、円筒状に絞り加工されたボールシート挿入部(凹部)20と、ボールシート挿入部20の端部に位置する底面21と、内周面22とを有している。ボールシート挿入部20の開口部23にフランジ部24が設けられている。また、底面21に複数の孔25が打抜かれている。内周面22の内径Nは、底面21から中途部22aまで一定であり、その中途部22aから開口部23側に向けて拡がっている。
【0025】
ボールシート挿入部20にボールシート30が収容される。このボールシート30は、例えばポリアセタールやポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性の合成樹脂からなり、有底筒状に形成されており、内部に凹球面31、底部に突起32、及び、外周面33を有している。外周面33の外径Gは、底面21側から開口部23側に向けて拡がっている。
【0026】
図2に示すように、ボールシート30の底面には孔25と対応した位置に複数の突起32が設けられている。この突起32を孔25に挿入したのち、突起32が孔25の外側に突出する部分32aを、外部から熱を加えるかあるいは高周波誘導による発熱によって軟化させるとともに、部分32aを軸線方向に潰すことによって、ハウジング12に対してボールシート30を固定する。
【0027】
ボールシート30の凹球面31にスタッドボール40の球状頭部41が回転自在に嵌合される。スタッドボール40は、球状頭部41以外に、ねじ部42と大径部43を備えている。
【0028】
ここで、図3を用いて、ハウジング12の内周面22の内径Nとボールシート30の外周面の外径Gとの関係について説明する。
【0029】
すなわち、外周面の外径Gは、凹部の底面側で上記内周面の内径Nより小、凹部の開口部側で内周面の内径Nより大に形成されている。
【0030】
このように構成されていると、局部当たりは回避されるとともに、全体的に締め代を減少させる。弾性リフトの増加が抑えられる。結果的に、車両の乗心地(特に微振幅領域)の向上効果がある。なお、定常揺動トルク/回転トルクは、1.0Nm以下とすることが好ましい。
【0031】
このように締め代を制御することで、定常揺動/回転トルク、弾性リフトの他、スタッド抜き荷重等を所望の値にすることができる。この他、テーパ開始点、テーパ角度、テーパの数を変えるようにしてもよい。
【0032】
なお、ハウジング12はプレス成形とし、機械加工を行わないで成形できる。このため、既存の製造ラインに対し大幅な改造は必要なく、既存の製造コスト・製品コストを最小限に抑えることができる。
【0033】
図4〜図6は、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差を様々に変化させることで、乗り心地を細かく設定することができる例を示している。いずれも、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
図4に示す第1変形例においては、外周面の外径Gは、内周面の内径Nより大に形成され、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差は、底面21側から開口部23側に向けて単調増加するように設定されている。
【0035】
図5に示す第2変形例においては、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差は、底面21側から中途部まで一定、中途部から開口部側に向けて単調増加するように設定されている。
【0036】
図6に示す第3変形例においては、外周面の外径Gと内周面の内径Nとの差は、底面21側から開口部まで一定である。
【0037】
上述したように、本実施の形態に係る車両用スタビライザ10に組み込まれたスタビライザバー20では、軽量化のために中空部材を用いた場合であっても、中実部材と同様に主応力を均一化することが簡易な設計及び製造方法で実現できる。
【0038】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
弾性リフトを増大させずに揺摺動トルクを減少させることができるボールジョイント装置を提供できる。
【符号の説明】
【0040】
10…ボールジョイント装置、12…ハウジング、20…ボールシート挿入部(凹部)、21…底面、22…内周面、23…開口部、30…ボールシート、31…凹球面、33…外周面、車両用スタビライザ100、スタビライザバー101、スタビライザリンク110。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹球面及び外周面とを有する樹脂材製のボールシートと、
上記凹球面に回転自在に嵌合する球状頭部を有するスタッドボールと、
上記ボールシートを開口部から底面側に向けて挿入して収容し、その内周面と上記ボールシートの外周面が嵌合する凹部を有するハウジングとを備え、
上記外周面の外径は、上記底面側から上記開口部側に向けて拡がっており、また、上記内周面の内径は、上記底面から上記開口部側に向けて少なくとも拡がる領域を有していることを特徴とするボールジョイント装置。
【請求項2】
上記外周面の外径は、上記凹部の底面側で上記内周面の内径より小、上記凹部の開口部側で上記内周面の内径より大に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント装置。
【請求項3】
上記外周面の外径は、上記内周面の内径より大に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント装置。
【請求項4】
上記外周面の外径と上記内周面の内径との差は、上記底面側から上記開口部側に向けて単調増加することを特徴とする請求項3に記載のボールジョイント装置。
【請求項5】
上記外周面の外径と上記内周面の内径との差は、上記底面側から中途部まで一定、上記中途部から上記開口部側に向けて単調増加することを特徴とする請求項3に記載のボールジョイント装置。
【請求項6】
上記外周面の外径と上記内周面の内径との差は、上記底面側から上記開口部まで一定であることを特徴とする請求項3に記載のボールジョイント装置。
【請求項1】
凹球面及び外周面とを有する樹脂材製のボールシートと、
上記凹球面に回転自在に嵌合する球状頭部を有するスタッドボールと、
上記ボールシートを開口部から底面側に向けて挿入して収容し、その内周面と上記ボールシートの外周面が嵌合する凹部を有するハウジングとを備え、
上記外周面の外径は、上記底面側から上記開口部側に向けて拡がっており、また、上記内周面の内径は、上記底面から上記開口部側に向けて少なくとも拡がる領域を有していることを特徴とするボールジョイント装置。
【請求項2】
上記外周面の外径は、上記凹部の底面側で上記内周面の内径より小、上記凹部の開口部側で上記内周面の内径より大に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント装置。
【請求項3】
上記外周面の外径は、上記内周面の内径より大に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボールジョイント装置。
【請求項4】
上記外周面の外径と上記内周面の内径との差は、上記底面側から上記開口部側に向けて単調増加することを特徴とする請求項3に記載のボールジョイント装置。
【請求項5】
上記外周面の外径と上記内周面の内径との差は、上記底面側から中途部まで一定、上記中途部から上記開口部側に向けて単調増加することを特徴とする請求項3に記載のボールジョイント装置。
【請求項6】
上記外周面の外径と上記内周面の内径との差は、上記底面側から上記開口部まで一定であることを特徴とする請求項3に記載のボールジョイント装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−169353(P2011−169353A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31745(P2010−31745)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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