説明

ポリエステルイミドの製造方法および該化合物をハードセグメントとするブロックポリマー。

【課題】 本発明の課題は、ポリエステルイミドの簡便な製造方法を提供することである。特にブロックポリマーのハードセグメントとして用いた場合に、取り扱い性や重合性に優れたポリエステルイミドを提供する。また耐熱性、屈曲性、耐久性に優れたブロックポリマーを提供する。
【解決手段】
グリコール中で(A)テトラカルボン酸二無水物、(B)芳香族ジアミン、(C)無水トリメリット酸を限定された比率で、まず(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンを反応させた後(C)無水トリメリット酸を反応させ、続けてイミド化反応を起こさせることを特徴とするポリエステルイミドの製造方法、および該ポリエステルイミドをハードセグメントとするブロックポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ポリエステルイミドの製造方法およびそれを用いた耐熱性、耐久性、屈曲性の良好なブロックポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐熱性や電気特性にきわめて優れているポリイミドはフィルム、成型材料、ワニス等に用いられ、代表的な高性能高分子として知られている。無水ピロメリット酸やベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテルやフェニレンジアミン等の芳香族ジアミンとを等モルで反応させることにより、ポリアミック酸と呼ばれる高分子量のポリイミド前駆体を得て、該前駆体をイミド化することにより芳香族ポリイミドが得られることは知られている。しかし、ポリイミドは加工性が悪い。また、不安定なポリアミック酸の状態で成型加工し、続けて熱処理を行うことによりイミド化反応を完結することが必要である。
【0003】
耐熱性を幾分犠牲にしても、加工性が優れる材料が開発されている。ポリアミドイミド、ポリエステルイミドも多種類のものが合成されている。ポリエステルイミドは1960年代から研究開発されており、特にエナメル線用の耐熱絶縁ワニスとして使用されている。これらは線状ポリマーというよりも、分岐構造であり、最終的に架橋構造を形成し耐熱性を高めている。これらはブロックポリマーの一成分としては、分岐構造によりブロックポリマー重合時にゲル化を起こすため使えない。
【0004】
ポリエステルイミドを合成する場合、高分子化する際にイミド化反応を利用する方法とエステル化反応を利用する方法に大別できる(非特許文献1)。イミド化反応を利用する場合には原料として使われるジアミン化合物、二酸無水物化合物、あるいはジイソシアネート化合物にエステル結合を含有する。一方、高分子化反応にエステル化反応を利用する場合には、原料のジカルボン酸、ジオールあるいはオキシカルボン酸にイミド結合を含む化合物を使用する。
【0005】
ジカルボン酸、グリコールあるいはオキシカルボン酸に芳香族イミド基を含有する化合物を用いてポリエステルを重合した場合、イミド基濃度の増加により溶融粘度が高くなり、汎用的な溶融重合法では高分子量化できにくい。溶融粘度を低くするために、イミド基濃度を小さくすると、耐熱性の向上が不十分になる。また、芳香族イミド基を含有するエステル原料はアミド系溶剤やフェノール系溶剤等の高沸点溶剤中で合成されている。
【0006】
イミド基を含有するエステル原料、たとえば芳香族イミド基含有ジカルボン酸をポリエステルの重合前に同一の反応容器で合成する方法も知られている。特許文献1では無水トリメリット酸と4,4’-ジアミノジフェニールメタンをクレゾール中で反応させジイミドジカルボン酸を得て、これにさらに無水トリメリット酸とエチレングリコールを追加し、ポリエステルイミド絶縁塗料を得ている。特許文献2,3ではグリセリンやトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの3官能成分を共重合した電線用の絶縁塗料について開示されている。特許文献4では3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ブタンジオールおよび3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物を3−メトキシプロピオン酸メチル中で130℃で反応させて、ポリエステルアミド酸溶液を得ている。この溶液にエポキシ樹脂等を配合し、熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0007】
イミド基を含有するエステル原料をポリエステルの重合前に同一の反応容器で合成する方法では、クレゾールや3−メトキシプロピオン酸メチルを溶剤として用いること、あるいは3官能ポリオールを併用することがなされている。
【非特許文献1】高分子化工Vol.37,74(1988)
【特許文献1】特許公開平成6−111627号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許公開平成7−141917号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特許公開平成10−168388号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特許公開2005−105264号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリエステルイミドの簡便な製造方法を提供することである。特にブロックポリマーのハードセグメントとして用いた場合に、取り扱い性や重合性に優れたポリエステルイミドを提供する。
また耐熱性、屈曲性、耐久性に優れたブロックポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、ポリエステルイミドの製造方法を得るべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下のポリエステルイミドの製造方法と該ポリエステルイミドを一成分とするブロックポリマーである。
【0010】
(1)グリコール中で、まず(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンを反応させた後(C)無水トリメリット酸を反応させ、イミド化反応を起こさせることを特徴とする数平均分子量が600〜10000のポリエステルイミドの製造方法。
【0011】
(2)グリコール中で(A)テトラカルボン酸二無水物、(B)芳香族ジアミン、(C)無水トリメリット酸を式(1)および式(2)の範囲で、まず(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンを反応させた後(C)無水トリメリット酸を反応させ、続けてイミド化反応を起こさせることを特徴とする(1)記載の数平均分子量が600〜10000のポリエステルイミドの製造方法。
1.5 < b/a < 2.2 (式 1)
0.9c < 2(b − a) < 1.1c (式 2)
(a、b、cはそれぞれテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンおよび無水トリメリット酸のモル数を表す)
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載の製造方法により製造されたポリエステルイミドであって、アミド系溶剤及び/又はフェノール系溶剤を含有しないことを特徴とする数平均分子量が600〜10000のポリエステルイミド。
【0013】
(4)(1)又は(2)に記載した製造方法により製造されたポリエステルイミドをハードセグメントとし、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートの群から選ばれる少なくとも一種をソフトセグメントとし、ハードセグメントとソフトセグメントがエステル結合あるいはウレタン結合で連結されたブロックポリマー。
【発明の効果】
【0014】
本発明によりポリエステルイミドを簡便な方法で製造できる。また、線状性が高く、末端基が水酸基であり、ブロックポリマーのハードセグメントとして適性が大きい。また耐熱性、屈曲性、耐久性に優れたブロックポリマーも得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のポリエステルイミドはグリコール中で(A)テトラカルボン酸二無水物、(B)芳香族ジアミン、(C)無水トリメリット酸を式(1)および式(2)の範囲で反応させる。
1.5 < b/a < 2.2 (式 1)
0.9c < 2(b − a) < 1.1c (式 2)
(a、b、cはそれぞれテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンおよび無水トリメリット酸のモル数を表す)
【0016】
反応手順はまず(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンをグリコール中で反応させる。(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンの反応温度は100℃以下、好ましくは60℃以下で行う。反応時間は原料の種類、反応温度、溶媒としてのグリコール量等により異なるが、60℃では30分間以上を目安とする。(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンの反応が終了後、(C)無水トリメリット酸を仕込み反応させる。(C)無水トリメリット酸投入時には(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンの反応は少なくとも酸無水物基75%が反応しアミック酸を形成していることが望ましい。(C)無水トリメリット酸投入後の反応温度は100℃以下、好ましくは60℃以下で行う。(A)テトラカルボン酸二無水物、(B)芳香族ジアミンおよび(C)無水トリメリット酸の反応は、100℃を超えると酸無水物基とグリコールの反応が起こり、分岐構造が形成される。
【0017】
(A)テトラカルボン酸二無水物、(B)芳香族ジアミンおよび(C)無水トリメリット酸の比率は(式1)と(式2)の範囲で用いる。(B)芳香族ジアミンと(A)テトラカルボン酸二無水物の比率、b/aが1.5よりも小さくなると芳香族イミド含有セグメントの分子量が大きくなり、反応中での樹脂の析出が起こり後の反応が円滑に進まない。b/aが2.2を越えると、後から仕込む無水トリメリット酸の量にも依存するが、未反応アミンが残りブロックポリマーの原料樹脂としての適性が低下する。
【0018】
(式2)の2(b−a)は(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンの反応が終了後のアミノ基量を表す。このアミノ基量のほぼ当量の無水物基を(C)無水トリメリット酸から供給する。
【0019】
(A)テトラカルボン酸二無水物、(B)芳香族ジアミンおよび(C)無水トリメリット酸の反応がほぼ終了後、イミド化反応とエステル化反応のために昇温する。通常、150℃からイミド化による水の発生が見られる。これ以降の反応は、分解の防止のため窒素等の不活性ガス化での反応が望ましい。
【0020】
イミド化反応後、さらに昇温すると200℃付近でエステル化反応が起こる。エステル化反応温度を下げることや重縮合反応の推進のために、ポリエステル重合反応で使用されるチタン、錫、亜鉛、コバルト、ゲルマニウム、アンチモン等の金属触媒を添加しても良い。
【0021】
上記のように、本発明はグリコールを反応溶媒として、またエステル化時のジオール成分として二つの役割を負わせて使用する。グリコール中でカルボン酸末端ポリイミド樹脂を合成し、さらに当該溶媒をそのまま利用して末端のカルボン酸をグリコールでエステル化させる。
【0022】
グリコールを溶媒として使用することによるメリットは、同一の反応容器で合成できるというメリットだけにとどまらない。すなわち、まずクレゾール等のフェノール系溶媒やNMP等のアミド系溶媒に代表される高沸点溶剤を使用しなくて良いため、工業上簡便なポリエステルイミドの製造方法を提供することができる。また、従来であれば、エステル化の際に、ジオール成分の添加が必要だったが、本発明では反応溶媒がグリコールであるため、後添加を行う工程を省くことができる。
【0023】
また、グリコール中で反応させて得られる本願発明のポリエステルイミドは分岐構造が少なく、線形性の高いものが得られるという特徴も有し、その後の加工性、例えば、ブッロクポリマー重合時にゲル化しにくい等の優れた特徴を有する。
【0024】
エステル化反応後、高分子量化するため、通常のポリエステル重合で行われる高温高真空での脱グリコールによる重縮合を行っても、重縮合をすることなく取り出し、冷却すると析出する樹脂を濾別しても良い。
【0025】
本発明のポリエステルイミドは数平均分子量が600〜10000の範囲にある。600未満では樹脂が脆くなりすぎ取り扱いが困難になる。10000を越えると溶融粘度が高すぎ、定常的に製造が困難になる。
【0026】
本発明で使用する(A)テトラカルボン酸二無水物の具体的な化合物としては以下の物が挙げられる。ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、1,8,4,5−ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニールテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ジフェニールテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニールテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ジフェニールエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ジフェニールエーテルテトラカルボン酸二無水物2,3,3’,4’−ジフェニールエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ジフェニールメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニールメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニールメタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ジフェニールスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ジフェニールスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニールスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物、およびエタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボンサン二無水物を挙げることができる。
【0027】
これらのうち、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニールスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルテトラカルボン酸二無水物が得られるポリエステルアミドの物性から望ましい。特に非対称構造のテトラカルボン酸二無水物は耐熱性を低下させずに汎用溶剤溶解性を改善できるので好ましい。
【0028】
本発明で用いる芳香族ジアミンとしては次の物が挙げられる。ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニル、ジアミノナフタレン、フェニレンジアミン等が挙げられる。これらのうち、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビスフェニルジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルが得られた樹脂の物性から望ましい。
【0029】
本発明はグリコールを溶媒として用いる点で特徴的であり、グリコール中でカルボン酸末端ポリイミド樹脂を合成し、さらに当該溶媒をそのまま利用して末端のカルボン酸をグリコールでエステル化させる。本発明で使用されるグリコールの具体的な例としては以下の物が挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量が1000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量1000以下のポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、分子量1000以下のテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ハイドロキノンのエチレンオキサイド付加物、ハイドロキノンのプロピレンオキサイド付加物、レゾルシノールのエチレンオキサイド付加物、レゾルシノールのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのうちエチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、レゾルシノールのエチレンオキサイド付加物が得られた樹脂の物性から望ましい。
【0030】
本発明で得られるポリエステルイミドはハードセグメントとソフトセグメントから成るブロックポリマーのハードセグメントとして優れた適性がある。本発明のポリエステルイミドをハードセグメントするブロックポリマーは耐熱性、耐久性、屈曲性等が優れフレキシフ゛ルフ゜リント基板等の回路基板で用いられるソルダーレジストのベース樹脂としても優れる。
【0031】
本発明のポリエステルイミドを用いるブロックポリマーのソフトセグメント成分はポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートから選ばれる少なくとも一種を用いる。ソフトセグメントはガラス転移温度が0℃以下で末端基が水酸基であるものを選ぶ。具体的な化合物とポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ポリエーテルあるいはこれらのポリエーテルの共重合品、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリカプロラクトン、ポリ3−メチル−1,5−ペンタンアジペート等の脂肪族ポリエステル、ポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等のカーボネートジオールが挙げられる。
【0032】
ハードセグメントとソフトセグメントはエステル結合かウレタン結合により連結する。
ハードセグメントとソフトセグメントは水酸基末端であるため、鎖延長剤にテトラカルボン酸二無水物や二塩基酸塩化物を用いるとエステル結合が形成でき、鎖延長剤としてジイソシアネートを用いるとウレタン結合が形成できる。
【0033】
本発明のポリエステルイミドを用いるブロックポリマーの数平均分子量は3000〜50000の範囲が望ましい。3000未満では樹脂の強靭性や耐久性が不足し、50000を越えると、有機溶剤に溶解した場合、高粘度になり実用上の問題が起こる。
【実施例】
【0034】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
【0035】
組成:ポリエステルイミド樹脂の組成は樹脂を重ジメチルホルムアミドに溶解し、H−NMRにより定量した。
数平均分子量:テトラヒドロフランを溶媒として用いてゲル浸透クロマトグラフィによりポリスチレン換算値として求めた。
硬化塗膜の作成:硬化剤を配合した組成物をポリプロピレンフィルムに乾燥後の厚みで30μmになるように塗布し、100℃で30分間乾燥した後、塗膜をはがしテフロン(登録商標)フィルム状に置き所定の熱処理を行った。
はんだ耐熱性:硬化塗膜を300℃はんだ浴に30秒間浸漬し外観変化を見た。
○:変化認められない。
△:膨れがあるが20%以下。
×:20%を越える膨れがある。
PCTテスト:硬化塗膜を2気圧での飽和加圧蒸気試験を10時間実施した。外観変化を見た。
○:変化認められない。
△:膨れ、消失があるが20%以下。
×:20%を越える膨れ、消失がある。
以下、実施例により本発明を具体的に例示する。実施例中に単に部とあるのは重量部を示す。
【0036】
<実施例 1>
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶に、エチレングリコール200部、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32部、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン49部を仕込み、45℃で90分間反応させたのち、無水トリメリット酸38部を一括で系内に投入した。さらに1時間45℃で反応させた後、系内に窒素ガスを流しながら、200℃まで昇温した。150℃を越えると水が発生した。200℃で2時間加熱を続けた。
反応液を取り出し、室温まで冷却すると、樹脂が析出した。ろ過とエタノールによる洗浄後、乾燥させた。得られた樹脂の特性を表―1に示す。また、得られたポリエステルイミドをテトラヒドロフランに溶解し、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL)を硬化剤として使用し硬化塗膜を作成した。硬化処理は150℃で1時間行った。
【0037】
<実施例 2>
実施例1と同様の原料と操作により得たポリエステルイミドのエチレングリコール溶液を系外に取り出すことなく、減圧と加熱により脱グリコールをおこない、高分子化を行った。系内の温度は最終的に280℃まで達した。なお、減圧する前にエステル重合触媒として、テトラブチルチタネート0.03部を加えた。得られた樹脂の特性を表―1に示す。
【0038】
<実施例 3>
実施例1と同様にしてポリエステルイミドを得た。ただし、グリコールとしてエチレングリコールの代わりにビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(日本乳化剤(株)社製「BA6グリコール」)を用いた。得られた樹脂の特性を表−1に示す。硬化塗膜を得るために、レゾールタイプのフェノール樹脂と触媒として0.1PHRのP-トルエンスルフォン酸を硬化剤と触媒として使用した。
【0039】
<実施例 4〜6>
実施例1と同様にして、表―1に記載した原料を用いてポリエステルイミドを得た、得られた樹脂の特性を表−1に示す。グリコール成分として用いたネオペンチルグリコールは室温では固体であるためエチレングリコールを全グリコールの15重量%添加した。また固化した未反応のグリコールは水洗することにより除いた。
【0040】
<実施例 7>
ポリウレタンブロックポリマー樹脂の合成
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶に、予め乾燥させた溶剤と原料、具体的には、1、3−ジオキソラン100部、γ−ブチロラクトン20部と実施例1で得たポリエステルイミド50部を仕込み溶解させた。ジフェニルメタンジイソシアネート17部を加え、70℃で3時間反応させた。さらに数平均分子量が2000の1,6−ヘキサンジオールベースのポリカーボネートジオール50部と反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.01部を追加し、さらに5時間反応させた。得られた樹脂の特性を表―2に示す。なお、硬化塗膜は硬化剤としてポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL)を使用し、150℃で1時間熱処理を行った。
【0041】
<実施例 8>
ポリエステルブロックポリマー樹脂の合成
撹拌器、温度計、流出用冷却機を装備した反応缶に、予め乾燥させた溶剤と原料、具体的には、1、3−ジオキソラン100部、γ−ブチロラクトン20部と実施例1で得たポリエステルイミド50部を仕込み溶解させた。ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物21部、4−ジメチルアミノピリジン0.2部を加え60℃で2時間加熱後、数平均分子量が2000の1,6−ヘキサンジオールベースのポリカーボネートジオール50部を追加し、さらに5時間加熱した。得られた樹脂の特性を表―2に示す。なお、硬化塗膜は硬化剤としてエポキシ樹脂(東都化成社製YD8125)を使用し、150℃で1時間熱処理を行った。
【0042】
<比較例 1>
実施例1と同様に、ただし、実施例1で用いたエチレングリコール200部の代わりにエチレングリコール180部とトリメチロールプロパン10部を用いてポリエステルイミドを得た。得られた樹脂の特性を表−1に示す。
【0043】
<比較例 2>
比較例1と同様の原料と操作により得たポリエステルイミドのグリコール溶液を系外に取り出すことなく、実施例2と同様にして脱グリコールを行い、高分子化を行った。しかし、フリーのグリコールが溜去し終わると直ぐ、ゲル化した。
【0044】
<比較例 3〜4>
表−1に記載した原料を用いて実施例1と同様に重合した。比較例3はテトラカルボン酸二無水物を使用しないもの。比較例4はテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンのの比、b/aが1.3で本発明の範囲外のもの(a、bはそれぞれテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンのモル数を表す)で、重合中に樹脂が析出し、それ以降の反応に進めなかった。
【0045】
<比較例5〜6>
比較例1と3で得られたポリエステルイミドを用いて実施例7と同様にポリウレタンブロックポリマー樹脂を重合した。比較例1のポリエステルイミドを用いたポリウレタンブロックポリマー樹脂は重合時、ゲル化を起こした。評価結果を表―2に示す。
【0046】
<比較例7〜8>
比較例1と3で得られたポリエステルイミドを用いて実施例8と同様にポリエステルブロックポリマー樹脂を重合した。比較例1のポリエステルイミドを用いたポリエステルブロックポリマー樹脂は重合時、ゲル化を起こした。評価結果を表―2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はポリエステルイミドの簡便な製造方法に関するものであり、該ポリエステルイミドを用いることにより、耐熱性や耐久性に優れたブロック共重合体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール中で、まず(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンを反応させた後(C)無水トリメリット酸を反応させ、イミド化反応を起こさせることを特徴とする数平均分子量が600〜10000のポリエステルイミドの製造方法。
【請求項2】
グリコール中で(A)テトラカルボン酸二無水物、(B)芳香族ジアミン、(C)無水トリメリット酸を式(1)および式(2)の範囲で、まず(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)芳香族ジアミンを反応させた後(C)無水トリメリット酸を反応させ、続けてイミド化反応を起こさせることを特徴とする請求項1記載の数平均分子量が600〜10000のポリエステルイミドの製造方法。
1.5 < b/a < 2.2 (式 1)
0.9c < 2(b − a) < 1.1c (式 2)
(a、b、cはそれぞれテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンおよび無水トリメリット酸のモル数を表す)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造されたポリエステルイミドであって、アミド系溶剤及び/又はフェノール系溶剤を含有しないことを特徴とする数平均分子量が600〜10000のポリエステルイミド。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した製造方法により製造されたポリエステルイミドをハードセグメントとし、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートの群から選ばれる少なくとも一種をソフトセグメントとし、ハードセグメントとソフトセグメントがエステル結合あるいはウレタン結合で連結されたブロックポリマー。


【公開番号】特開2009−155617(P2009−155617A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338903(P2007−338903)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】