説明

ポリエステルフィルム

【課題】特別な原料、工程が必要なく、加熱処理によるヘイズの上昇が小さく、かつ寸法安定性に優れたポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】
少なくともポリエステル層A、ポリエステル層Bおよびポリエステル層Cを有してなる積層ポリエステルフィルムであって、最外層がポリエステル層Aとポリエステル層Bであり、層Aと層Bが下記条件を満たしてなる二軸配向積層ポリエステルフィルム。
層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して5%以上45%以下であり、シクロヘキサンジメタノール成分の含有量が2mol%以上5mol%以下であり、エチレングリコール成分の含有量が95mol%以上98mol%以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関するものである。詳しくは優れた透明性を有し、かつ加熱処理によるヘイズ上昇が小さいポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表される芳香族ポリエステル樹脂は、耐熱性や透明性を兼ね備えた安価な樹脂であり、さらに延伸しフィルム化することにより、高い機械強度を発現させることができる。そのため、写真用、太陽電池用、離型用、工程用、電気絶縁性用、電子材料用、ラミネート用などの各種の工業用材料、各種包装材料、磁気テープ用などの各種磁気材料の他、優れた透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性、耐薬品性を有すること等から各種ディスプレイ用光学フィルム等の分野で使用され、厚さも薄いものから厚いものまで幅広く利用されている。例えばプリズムレンズシート用のベースフィルム、拡散板用ベースフィルム、タッチパネル用ベースフィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム用のベースフィルムとしては、優れた強度、寸法安定性が要求されるため、厚さ50μmあるいは100μm以上のフィルムが好適に用いられている。また、工程用などについては厚さ50μm以下のフィルムが好適に用いられている。
【0003】
これら各種用途においてポリエステルフィルムを用いる場合、その表面に、易接着層、ガスバリア層、離型層、難燃層、光拡散層などの各種機能層が形成されたものを使用するのが殆どである。これら機能層形成方法としては、コーティング、蒸着、スパッタ、プラズマCVD、イオンプレーティング、等のなどの手法が用いられるが、その大半の加工方法では、加工時にポリエステルフィルムが高温下に曝されることになる。そのため、ポリエステルフィルムには加工時の優れた取扱い性、耐熱性、寸法安定性が必要となる。さらに光学用途に使用されるフィルムは、特に加工後にも優れた透明性を維持すること、使用時に高温に曝されても優れた透明性が維持することが要求される。
【0004】
しかしながら一般的に、ポリエステルフィルムが高温下に曝されると、ポリエステルフィルム中に元来より含まれるオリゴマーや、熱劣化により発生したオリゴマー等が、フィルム表面に析出してしまう。その結果、工程汚染、透明性の低下(ヘイズの上昇)、機能層の形成時に欠点が発生し機能層の機能低下、長期使用時の特性が低下する等の問題があった。
【0005】
それに対し、ポリエステルフィルムにオリゴマー析出防止性を付与するために、表面にオリゴマーブロック性を有する層を形成し、オリゴマーをその層にてブロックし表面を抑える方法(特許文献1)、ポリエステルにシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステルを添加させる方法(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−267540号公報
【特許文献2】特開2005−60449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、高価な原料を用いる必要があったり、製造工程が増え、生産性が低いといった問題がある。また、特許文献2の技術ではポリエステルにシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエステルを極めて多量に添加しないと十分な効果が発現できず、その結果オリゴマーの発生は抑えられるものの、耐熱性が十分ではなく、寸法安定性に劣るといった問題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、特別な原料、工程が必要なく、かつ加熱処理によるオリゴマー析出が少なく、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成をとる。すなわち、本発明のポリエステルフィルムは、少なくともポリエステル層A、ポリエステル層Bおよびポリエステル層Cを有してなる積層ポリエステルフィルムであって、
最外層がポリエステル層Aとポリエステル層Bであり、
かつポリエステル層Aが下記(1)の条件を、ポリエステル層Bが下記(2)の条件を、ポリエステル層Cが下記(3)の条件をそれぞれ満たしてなる二軸配向積層ポリエステルフィルムである。
(1)ポリエステル層Aの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して5%以上45%以下であり、
かつ層Aがジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール成分を2mol%以上5mol%以下およびエチレングリコール成分を95mol%以上98mol%以下、それぞれ含有し、
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分を98mol%以上含有すること。
(2)ポリエステル層Bの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して5%以上45%以下であり、
かつ層Bがジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール成分を2mol%以上5mol%以下およびエチレングリコール成分を95mol%以上98mol%以下、それぞれ含有し、
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分を98mol%以上含有すること。
(3)ポリエステル層Cの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して50%以上90%以下であり、
かつ層Cがジオール成分としてエチレングリコール成分を98mol%を超える量を含有し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を98mol%以上含有すること。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステルフィルムは、特別な原料、工程が必要なく、かつ加熱処理によるヘイズ上昇が小さく、寸法安定性などに優れたポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくともポリエステル層A、ポリエステル層Bおよびポリエステル層Cを有してなる積層ポリエステルフィルムである。
【0012】
また、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステル樹脂は、通常ジカルボン酸成分とジオール成分を重縮合反応させることによって得るところ、重合後のポリエステルはジカルボン酸構成成分とグリコール構成成分から構成される。本発明において「構成成分」とは、かかる構成成分をいう。また、重合に際しては、ジカルボン酸に代えてジカルボン酸エステルを用いることがあるところ、本発明において「ジカルボン酸」とはジカルボン酸エステルをも含む概念で用いられるものである。それに伴い、ジカルボン酸構成成分とはジカルボン酸エステル構成成分をも含む概念で用いられるものである。なお、本明細書では、「構成成分」を単に「成分」と言うこともある。
【0013】
また、本発明のフィルムは、一方の最外層が下記(1)を満たすポリエステル層Aであり、もう一方の最外層が下記(2)を満たすポリエステル層Bである。
(1)ポリエステル層Aの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して5%以上45%以下であり、層Aがシクロヘキサンジメタノール成分、エチレングリコール成分およびテレフタル酸成分を含有し、かつシクロヘキサンジメタノール成分の含有量が、層Aのジオール成分に対して、2mol%以上5mol%以下であり、エチレングリコール成分の含有量が、層Aのジオール成分に対して、95mol%以上98mol%以下であり、テレフタル酸の含有量が、層Aのジカルボン酸成分に対して、98mol%以上であること。
(2)ポリエステル層Bの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して5%以上45%以下であり、層Bがシクロヘキサンジメタノール成分、エチレングリコール成分およびテレフタル酸成分を含有し、かつシクロヘキサンジメタノール成分の含有量が、層Bのジオール成分に対して、2mol%以上5mol%以下であり、エチレングリコール成分の含有量が、層Bのジオール成分に対して、95mol%以上98mol%以下であり、テレフタル酸の含有量が、層Bのジカルボン酸成分に対して、98mol%以上であること。
【0014】
このような構成にすることによって、加熱処理によるヘイズ上昇が小さく、かつ寸法安定性に優れたポリエステルフィルムを得ることができるが、そのメカニズムについて説明する。
【0015】
ポリエステルフィルムにおいては、加熱によるヘイズ上昇の主要因は主にフィルム中に含まれるオリゴマー(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの場合は、主に環状三量体オリゴマー)に起因し、加熱によってオリゴマーが表面に析出し白色状欠点となるためである。一般的なポリエステルフィルムは結晶性ポリエステル樹脂から構成されることが多く、かかる結晶性ポリエステル樹脂を二軸延伸して得られるポリエステルフィルム中には、配向によりポリエステル樹脂が結晶化した部分(以下、配向結晶化部とする)と非晶部が存在する。ここで、環状三量体を中心としたオリゴマーは非晶部と親和性が高く、非晶部に多く存在する。この非晶部は配向結晶化部と比べて、熱的に不安定な状態にあり、熱を受けると、分子運動性が高まり、エネルギー的に安定となる方向に系が転移する。すなわち、熱により、非晶部が結晶化部へと転移するのである。このような系の転移が生じると、それまで非晶部の内部に存在していた環状三量体を中心とするオリゴマーが外部に排除される。その結果、環状三量体を中心としたオリゴマー成分はフィルム表面に析出し、ヘイズを上昇させる白色欠点となる。
【0016】
そこで、本発明は、フィルム最外層に、加熱により結晶化しない非晶部を設けることによって、加熱時にオリゴマーのフィルム表面への析出を防止した。
【0017】
さらに、本発明のフィルムは、下記(3)の条件を満たすポリエステル層Cを有することが必要である。
(3)ポリエステル層Cの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して50%以上90%以下であり、エチレングリコール成分およびテレフタル成分を含有し、
かつ、エチレングリコール成分の含有量が、層Cのジオール成分に対して、98mol%を超える量であり、テレフタル成分の含有量が、層Cのジカルボン酸成分に対して、98mol%以上であること。
【0018】
従来は、オリゴマー析出防止性を向上させるために、低結晶性のポリエステル樹脂をフィルムの全層に用いる方法が用いられてきた。この方法は、フィルムを構成するポリエステル樹脂に低結晶性のポリエステル樹脂を用いることによって、非晶部の熱結晶化を抑制する方法である。しかし、一方で、延伸等による配向結晶化も阻害されるため、オリゴマー析出防止性を向上させようとすればするほど、熱寸法安定性に劣ることは避けられなかった。
【0019】
本発明においては、シクロヘキサンジメタノール成分を上記の割合で含むポリエステル樹脂を層A、Bのみに用いることで、オリゴマーと親和性の高い非晶部をフィルム最外層のみに設けている。フィルム内部からフィルム表面へ移動するオリゴマーを最外層でトラップすることによって、オリゴマーがフィルム表面に析出することを防止できる。
【0020】
また、フィルム内層である層Cに上記(3)に記載の組成のポリエステル樹脂を用いることでフィルムを二軸配向させたときの結晶性を維持して熱寸法安定性を保つことができる。さらに積層比を上記(1)〜(3)に記載の範囲内とすることで、非晶部を設けたことによって熱寸法安定性に劣る最表層を支持させ、フィルム全体としての熱寸法安定性を向上させることができる。
【0021】
層AおよびBにおけるシクロヘキサンジメタノール成分の含有量が2mol%より少ないとオリゴマーのトラップ能力が充分でなく、オリゴマー析出防止性に劣る。また、5mol%よりも多いと、最外層の熱寸法安定性が悪くなり、フィルム全体の熱寸法安定性が悪くなる。
【0022】
層Aおよび層Bにおけるエチレングリコール含有量が95mol%より少ないと、層Aおよび層Bにおける二軸配向性が悪くなり、熱寸法安定性が悪くなるため好ましくない。
【0023】
また、層Cにおけるエチレングリコール含有量が98mol%以下、またはテレフタル酸含有量が98mol%より少ないと、層Cの結晶性が低下し、二軸配向させることが困難となり、フィルム全体の熱寸法安定性が低下するため好ましくない。
【0024】
また、層A、Bの厚み割合がフィルム層厚みの5%より少ないとオリゴマーのトラップ能力が充分でなく、オリゴマー析出防止性に劣る。また、層A、Bの厚み割合が45%を超えたり、層Cの厚み割合が50%未満となると、最外層の熱寸法安定性が悪くなると同時に層Cのフィルム全体の熱寸法安定に対する支持能力が充分ではなくなり、フィルム全体の熱寸法安定性が悪くなる。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、層A、層Bおよび層Cは、本発明の特性を損なわない限り、ジカルボン酸成分としてマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などを用いてもよく、また、ジオール成分として、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオールなどを用いても構わない。
【0026】
また、本発明のポリエステルフィルムの層Aの固有粘度〔IVa〕、層Bの固有粘度〔IVb〕および層Cの固有粘度〔IVc〕は、下記の式(A)〜(D)を満たすことが好ましい。
(A)0 <〔IVa〕−〔IVc〕≦0.15
(B)0 <〔IVb〕−〔IVc〕≦0.15
(C)〔IVa〕≧0.7
(D)〔IVb〕≧0.7
〔IVa〕−〔IVc〕や、〔IVb〕−〔IVc〕が0.15より大きいと、層A〜層Cを積層共押出したときに積層界面が乱れ、その乱れを起点に延伸工程で破れやすくなり、安定製膜が難しくなり好ましくない。
【0027】
〔IVa〕−〔IVc〕および〔IVb〕−〔IVc〕が0以下となった場合、最外層の固有粘度が内層の固有粘度よりも小さくなり、最外層における分子鎖の絡み合いが内層よりも小さくなる。そのため、最外層に非晶部を設けた際に最外層の熱寸法安定性が大きく低下するため、内層で外層を支持することが困難となり、フィルム全体の熱寸法安定性が悪くなることがある。
【0028】
また、〔IVa〕および〔IVb〕は0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.7以上0.8以下である。〔IVa〕および〔IVb〕が0.7以上であれば、最外層中にオリゴマーと親和性の高い非晶部を設けた場合でも、分子鎖の絡み合いによって熱寸法安定性が維持される。一方、〔IVa〕や〔IVb〕が0.8を超えると、樹脂を押し出すさいの濾圧が高くなり、安定に製膜することが難しくなる。
【0029】
〔IVa〕および〔IVb〕が0.7未満であった場合、最外層中の分子鎖の絡み合いが少なく熱寸法安定性が維持されないことがある。
【0030】
また、本発明のポリエステルフィルムの全体厚みは、特に限定されず、用途により適当なフィルム厚みを選択することができるものであるが、一般的には1μm以上500μm以下であることが好ましい。フィルム厚みが1μm未満であると、ハンドリング性が悪化するため好ましくない。また、フィルム厚みが500μmを超えると、フィルムをロール状に巻き取ることが困難となり、生産性が悪化するため好ましくない。
【0031】
また本発明のポリエステルフィルムのヘイズは、2%以下が好ましい。ここでいうヘイズとは、JIS−K7136(2000年版)に基づいて測定された値である。ヘイズを2%以下とすることにより、光学用途に適用可能なポリエステルフィルムとすることができる。ヘイズの下限は限定されるものではないが、0%が理論的な下限となる。また、ヘイズを2%以下とするためには、フィルムを上述した構成にすることによって達成することができる。
【0032】
また、本発明のポリエステルフィルムは、150℃で30分熱処理したあとの熱収縮率が、フィルム長手方向および幅方向において、それぞれ1.5%以下であることが好ましい。熱収縮率を上記範囲とすることによって、高温条件下に曝された状態で使用された場合に加工性、平面性に優れたポリエステルフィルムとすることができる。熱収縮率は0%以上であることが好ましい。熱収縮率が0%である場合、熱による寸法変化がいっさい起こらないためである。
【0033】
本発明のポリエステルフィルムには、各種加工工程で使用される塗布剤、蒸着物質等との接着性を向上させるための易接着層や、フィルムの易滑性を向上させるための易滑層、耐衝撃性を高めるためにハードコート層、耐紫外線性を有するための耐紫外線層、難燃性付与のための難燃層、帯電防止性付与のための帯電防止層など、更に別の機能を有する層(機能層)を設けても良い。
【0034】
この機能層を構成する成分としては、ベース層であるポリエステルフィルムに対し接着性を有するものであれば無機系材料、有機系材料、特に限定されないが、たとえば機能層を構成する成分が有機系材料を主たる成分とする場合、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、尿素系樹脂、ウレタン系樹脂などを好適に用いることができる。また、異なる2種以上の樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂とアクリル系樹脂、あるいはウレタン系樹脂とアクリル系樹脂等を組み合わせて用いてもよい。好ましくはポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂であり、特に好ましくはポリエステル系樹脂である。
【0035】
かかる機能層が樹脂を主たる成分とする場合は、上記の樹脂に各種の架橋剤を併用することが好ましく行われる。架橋剤を併用することにより、耐熱接着性の向上と同時に、耐湿接着性を飛躍的に向上させることができる。機能層に用いる架橋剤として、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂に架橋性官能基が共重合されている場合、架橋剤を併用することが特に好ましい。機能層を構成する樹脂と架橋剤は任意の比率で混合して用いることができるが、架橋剤は、樹脂100重量部に対し0.2〜20重量部が接着性向上の点で好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。架橋剤の添加量が、0.2重量部未満の場合、その添加効果が小さく、また、20重量部を越える場合は、機能層としての機能(例えば接着性など)が低下する傾向がある。
【0036】
また、機能層中には、易滑性や耐ブロッキング性の付与のために、無機および有機微粒子を添加することが好ましく行われる。この場合、添加する無機微粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、レニウム、バナジウム、オスミウム、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、プラセオジウム、クロム、ニッケル、アルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、タンタル、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、イットリウム、ランタニウム等の金属、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セシウム、酸化アンチモン、酸化スズ 、インジウム・スズ酸化物、酸化イットリウム 、酸化ランタニウム 、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム 、酸化ケイ素等の金属酸化物、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム 、フッ化アルミニウム 、氷晶石等の金属フッ化物、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、その他タルクおよびカオリンなどを用いることができる。また、有機微粒子としては、シリコーン系化合物、架橋スチレンや架橋アクリル、架橋メラミンなどの架橋微粒子の他、塗布層を構成する熱可塑性樹脂に対して非相溶だが、微分散して海島構造を形成する熱可塑性樹脂も微粒子として用いることもできる。用いられる微粒子の平均粒径は0.001〜5μmが好ましく、より好ましくは0.005〜3μm、特に好ましくは0.01〜2μm、最も好ましくは0.02〜2μmである。機能層中の樹脂100重量部に対する微粒子の混合比は特に限定されないが、固形分重量比で0.05〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0037】
次に、本発明のポリエステルフィルム製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
【0038】
本発明のポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムであることが必要である。二軸に配向させることによってフィルム中の分子が配向結晶化し、高い機械強度、高い寸法安定性を有するフィルムとすることができる。その好ましい製造方法として、まず、押出機(積層構造の場合は複数台の押出機)に原料を投入し、溶融して口金から押出し(積層構造の場合は共押出し)し、冷却した表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸(未配向)フィルムを作製する。
【0039】
この未延伸フィルムを70〜140℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に3〜4倍延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却し、一軸延伸(一軸配向)フィルムを得る。
【0040】
続いて、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80〜150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(「幅方向」または、「横方向」ということもある)に3〜4倍に延伸する。
【0041】
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3〜5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9〜15倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると、得られる二軸延伸フィルムの強度が不十分となり、逆に面積倍率が15倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
【0042】
二軸延伸する方法としては、上述の様に長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
【0043】
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて好ましくは原料となる樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点未満の温度で1〜30秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却する。
【0044】
また、上記熱処理工程中では、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0045】
本発明のポリエステルフィルムに用いるポリエステル樹脂は、例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸成分またはその誘導体とエチレングリコール等のジオール成分とを周知の方法でエステル交換反応させることによって得ることができる。
【0046】
また、本発明では、層Aおよび層Bを構成するポリエステルとして、シクロヘキサンジメタノールを共重合せしめたポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
シクロヘキサンジメタノールを共重合成分として含有させる方法としては、重合時にジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール成分、エチレングリコール成分を、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分を添加し、周知の方法で重合することにより得ることができる。また、イーストマンケミカル社製“PET−G DN011”(ジオール成分の全量に対して1,4シクロへキサンジメタノールが66モル%共重合されたPET)なども好ましく用いることができる。
【0047】
また、重合に際して従来公知の反応触媒(重合触媒)(アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物など)を用いても良い。さらに色調調整剤としてリン化合物などを添加してもよい。より好ましくは、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階に置いて、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
【0048】
次に、上記ポリエステル樹脂から本発明のシートを得るための方法について述べる。
本発明のポリエステルフィルムは、各層の原料をそれぞれ別個の押出機に投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出しし(共押出法)、二軸に延伸する方法を用いて製造されることが好ましい。
【0049】
また、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、積層するポリエステル層をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して張り合わせる方法(接着法)、その他、積層する材料の形成用材料を溶媒に溶解させ、その溶液をあらかじめ作製していたポリエステル層上に塗布する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等を用いても良い。
【0050】
本発明のポリエステルフィルムは、上述の工程により形成することができ、得られたフィルムは、従来のフィルムと比べて、優れた透明性を有し、加工工程後もオリゴマーの析出が少なく、ヘイズ上昇が小さいという特徴を有する。本発明のポリエステルフィルムはこの特長を生かした各種用途に適用可能であるが、例えば、プリズムレンズシート用、拡散板用、タッチパネル用、AR(アンチリフレクション)用など各種光学用シートのベースフィルム、写真用、太陽電池用、離型用、工程用、電気絶縁性用、電子材料用、ラミネート用などの各種の工業用フィルム、各種包装材料用フィルム、磁気テープ用フィルムなどの各種フィルム材料として好適に使用できる。
【0051】
[特性の評価方法]
特性の測定方法を以下に示す。特に指定がない限り23℃、湿度65%の条件下で評価を行った。
【0052】
(1)ポリエステル層の固有粘度(〔IV〕)
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度より次式から計算される値を用いた。すなわち
ηsp/C=〔IV〕+K〔IV〕・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml)、Kはハギンス定数(0.343)。溶液粘度、溶媒粘度測定にはオストワルド粘度計を用い、積層フィルムのそれぞれの層の採取はミクロトームを用いて行った。
【0053】
(2)フィルムのヘイズ
JIS−K7136(2000年版)に基づいて、ヘイズメーターNDH−5000(日本電色(株)製)を用いて測定した。測定は製膜後に50℃を超える熱処理を受けていないフィルムの面内5ヶ所以上場所を変えて測定したヘイズの平均値である。
【0054】
(3)150℃で30分熱処理したときの熱収縮率
ポリエステルフィルムを幅1cm、長さ15cmの短冊状に切りだし、長さ方向の両端からそれぞれ2.5cm内側に幅方向と平行な線を引き、2本の平行線間の距離L0を正確に測定した。次いでその短冊状サンプルを150℃の熱風オーブン中にて30分間熱処理し、冷却後、2本の平行線間の距離L1を測定した。測定には万能投影機(V−16A(Nikon製))を用い、1μmの単位まで測定した。処理前の寸法と処理後の寸法から下記式にて熱収縮率(%)を求めた。
熱収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100
なお、測定は短冊の長さ方向がフィルム長手(MD)方向に平行な場合、フィルム幅(TD)方向に平行な場合、それぞれについて各10サンプル測定を実施し、それぞれの平均値でもって長手方向の熱収縮率、幅方向の熱収縮率とした。
【0055】
(4)耐オリゴマー性
熱風オーブン中180℃(±3℃)で、フィルムMD方向に30kg/m(±3kg/m)の張力をかけながら60分間耐熱試験を行った後、室温まで戻ったフィルム両表面を微分干渉顕微鏡(DMLB HC(Leica(株)製))で200倍に拡大して観察し、直径1μm以上のサイズを持つオリゴマーによるフィルム表面の被覆率を調べた。評価面積は0.5mm四方を5箇所測定し、それぞれの平均値を被覆率とした。両表面の被覆率を評価し、被覆率が高い面の被覆率が1.0%未満のものをS、被覆率が1.0%以上2.0%未満であるものをA、被覆率が2.0%以上4.0%未満であるものをB、被覆率が4.0%以上のものをCとして評価した。S、A、B、Cの順で良い。
【0056】
(5)層A、層B、層Cの積層比率
積層ポリエステルフィルムを最外層の表面から、0.5μmずつ研磨していき、サンプルを得る。得られたサンプルについて下記(6)の方法でジオール成分の構造を同定する。ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール(CHDM)の検出量が2mol%よりも少なくなるまで研磨した厚みを層Aの厚みとした。また、層Aと反対側の最外層の表面から同様にして求めた厚みを層Bの厚みとし、残りを層Cの厚みとして積層比率を求めた。
【0057】
(6)フィルムに含まれるジオール成分およびジカルボン酸成分の分析
ポリエステルフィルム各層のジオール成分およびジカルボン酸成分の分析手法を以下に示す。
【0058】
顕微鏡観察にてフィルムを観察しながら研磨し、所望の層のみを取り出す。取り出す層の厚みは(5)の方法で決定した。
【0059】
ついで、適当な溶媒をもちいて、ポリエステル成分のみを溶解させる。その溶解物のNMR(核磁気共鳴)スペクトル測定を行い、ポリエステル成分(ジオール成分およびジカルボン酸成分)の構造を同定し、そのピーク強度比からジオール成分およびジカルボン酸成分の含有量を求めた。
(7)製膜性
製膜中にフィルムが1時間に破れる回数を数え、1回未満であるものを○、1回以上3回未満であるものを△、3回以上であるものを×として評価した。
【実施例】
【0060】
以下実施例等によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
【0062】
次に、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコール34mol%、シクロヘキサンジメタノール66mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、シクロヘキサンジメタノールを66モル%共重合したポリエステル樹脂を得た。
【0063】
次いで、180℃で2時間真空乾燥したPET樹脂とシクロヘキサンジメタノールを66mol%共重合したポリエステル樹脂をブレンドし、280℃に熱した押出機Aに投入した。また、180℃で2時間真空乾燥したPET樹脂を280℃に熱した別の押出機Cに投入した。
【0064】
次いで、適した形状のピノールを用いて押出機Aの樹脂が最外層(層Aおよび層B)、押出機Cの樹脂が内層(層C)となるように、Tダイ口金よりシート状に押出して、層A/層C/層Bからなる3層積層シートとし、該シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。続いて、該未延伸積層フィルムを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、85℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3.3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。
【0065】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで240℃の温度で20秒間の熱処理を施し、更に140℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って厚さ40μmの二軸延伸(二軸配向)フィルムを得た。
【0066】
次に、得られたフィルムの積層比率、最外層のシクロヘキサンジメタノール含有量、エチレングリコール含有量、テレフタル酸含有量を、内層のエチレングリコール含有量、テレフタル酸含有量を測定し、次いで最外層と内層の固有粘度(IV)を測定した。結果を表に示す。次いで、フィルムのヘイズ、熱収縮率、耐オリゴマー性の評価を行った。結果を表に示す。このフィルムは耐オリゴマー性、熱寸法安定性に優れることがわかった。
【0067】
(実施例2〜23、比較例1〜14)
下記の点が異なる以外は、実施例1と同様にして厚さ40μmのフィルムを得た。
・押出機A、押出機Cに投入するPET樹脂として、表に示すIVを示すPET樹脂を用いた点。
・層A、層Bおよび層Cにおけるジオール成分およびジカルボン酸成分の含有量が表に記載の含有量となるように、PET樹脂とシクロヘキサンジメタノールを66mol%共重合したポリエステル樹脂との混合量を調整し、押出機に投入した点。
・押出機Aと押出機Cから吐出される樹脂の量を変化させ、フィルムの層A、層B、層Cの積層比を表に示すように変化させた点。
【0068】
また、表において、層Aと層Bの層厚み割合が異なる場合は、下記の方法にて、フィルムを得た。すなわち、下記の点が異なる以外は、実施例1と同様にして厚さ40μmのフィルムを得た。
・180℃で2時間真空乾燥したPET樹脂とシクロヘキサンジメタノールを66mol%共重合したポリエステル樹脂をブレンドし、280℃に熱した押出機Aに投入した点。また、180℃で2時間真空乾燥したPET樹脂とシクロヘキサンジメタノールを66mol%共重合したポリエステル樹脂をブレンドし、280℃に熱した押出機Bに投入した点。また、180℃で2時間真空乾燥したPET樹脂を280℃に熱した別の押出機Cに投入した点。
・押出機A、押出機B、押出機Cに投入するPET樹脂として、表に示すIVを示すPET樹脂を用いた点。
・層A、層Bおよび層Cにおけるジオール成分およびジカルボン酸成分の含有量が表に記載の含有量となるように、PET樹脂とシクロヘキサンジメタノールを66mol%共重合したポリエステル樹脂との混合量を調整し、押出機に投入した点。
・押出機A、押出機Bおよび押出機Cから吐出される樹脂の量を変化させ、フィルムの層A、層B、層Cの積層比を表に示すように変化させた点。
・適した形状のピノールを用いて押出機Aの樹脂が一方の最外層(層A)、押出機Bの樹脂がもう一方の最外層(層B)、および、押出機Cの樹脂が内層(層C)となるように、Tダイ口金よりシート状に押出して、層A/層C/層Bからなる3層積層シートとし、該シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た点。
【0069】
上記方法にて得られたフィルムについて、各層における含有成分と含有量、固有粘度を測定した。結果を表に示す。次いで、フィルムのヘイズ、熱収縮率、耐オリゴマー性の評価を行った。結果を表に示す。実施例のフィルムは耐オリゴマー性、熱寸法安定性当に優れることがわかった。
【0070】
(比較例15)
下記の点が異なる以外は、実施例1と同様にして厚さ40μmのフィルムを得た。
・押出機Cに投入するPET樹脂として、イソフタル酸(IPA)をジカルボン酸成分に対して5モル%共重合せしめたPET樹脂を用いた点。
【0071】
次いで各層の含有成分と含有量、固有粘度を測定した。結果を表に示す。次いで、フィルムのヘイズ、熱収縮率、耐オリゴマー性等の評価を行った。結果を表に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
CHDM:シクロヘキサンジメタノール成分、EG:エチレングリコール成分、 TPA:テレフタル酸成分、 IPA:イソフタル酸成分
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のポリエステルフィルムは、従来のフィルムと比べて、優れた透明性を有し、加工工程後もオリゴマーの析出が少なく、ヘイズ上昇が小さいという特長を有する。そのため、本発明のポリエステルフィルムは、この特長を生かした各種用途に適用可能であり、例えば、プリズムレンズシート用、拡散板用、タッチパネル用、AR(アンチリフレクション)用など各種光学用シートのベースフィルム、写真用、太陽電池用、離型用、工程用、電気絶縁性用、電子材料用、ラミネート用などの各種の工業用フィルム、各種包装材料要フィルム、磁気テープ用フィルムなどの各種フィルム材料として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル層A、ポリエステル層Bおよびポリエステル層Cを有してなる積層ポリエステルフィルムであって、
最外層がポリエステル層Aとポリエステル層Bであり、
ポリエステル層Aが下記(1)の条件を、ポリエステル層Bが下記(2)の条件を、ポリエステル層Cが下記(3)の条件をそれぞれ満たしてなる二軸配向積層ポリエステルフィルム。
(1)ポリエステル層Aの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して5%以上45%以下であり、
層Aがシクロヘキサンジメタノール成分、エチレングリコール成分およびテレフタル酸成分を含有し、
かつシクロヘキサンジメタノール成分の含有量が、層Aのジオール成分に対して、2mol%以上5mol%以下であり、
エチレングリコール成分の含有量が、層Aのジオール成分に対して、95mol%以上98mol%以下であり、
テレフタル酸の含有量が、層Aのジカルボン酸成分に対して、98mol%以上であること。
(2)ポリエステル層Bの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して5%以上45%以下であり、
層Bがシクロヘキサンジメタノール成分、エチレングリコール成分およびテレフタル酸成分を含有し、
かつシクロヘキサンジメタノール成分の含有量が、層Bのジオール成分に対して、2mol%以上5mol%以下であり、
エチレングリコール成分の含有量が、層Bのジオール成分に対して、95mol%以上98mol%以下であり、
テレフタル酸の含有量が、層Bのジカルボン酸成分に対して、98mol%以上であること。
(3)ポリエステル層Cの層厚みが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの総厚みに対して50%以上90%以下であり、
エチレングリコール成分およびテレフタル成分を含有し、
かつ、エチレングリコール成分の含有量が、層Cのジオール成分に対して、98mol%を超える量であり、
テレフタル酸成分の含有量が、層Cのジカルボン酸成分に対して、98mol%以上であること。
【請求項2】
層Aの固有粘度〔IVa〕、層Bの固有粘度〔IVb〕および層Cの固有粘度〔IVc〕が下記の式(A)〜(D)を満たす請求項1に記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。
(A)0 <〔IVa〕−〔IVc〕≦0.15
(B)0 <〔IVb〕−〔IVc〕≦0.15
(C)〔IVa〕≧0.7
(D)〔IVb〕≧0.7
【請求項3】
ヘイズが2%以下である請求項1または2に記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
150℃30分間の熱処理後におけるフィルムの熱収縮率がフィルム長手方向およびフィルム幅方向ともに1.5%以下である請求項1から3の何れかに記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2010−234673(P2010−234673A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85771(P2009−85771)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】