説明

ポンプ場設備

【課題】ポンプ場への急激な流入水増加に対して、流入予測に頼ることなく容易に対応可能なポンプ場設備を提供する。
【解決手段】流入渠11からポンプます14に流入した流入水13をポンプ15により外部に排水するポンプ場設備であって、ポンプます14に設けられ、ポンプます14に貯留された水13の内外に出入可能に構成された容積体18を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、下水道などから流入渠を経てポンプますに流入した流入水をポンプにより外部に排水するポンプ場設備に関する。
【背景技術】
【0002】
下水ポンプ場は、下水道から流入渠を経てポンプますに流入した流入水をポンプにより外部の河川などに排水するように構成されている。この場合、変動する流入雨水を、河川に排水し続ける必要があるため、特に大雨の時には急激な雨水などの流入水増加に対応すべく、流入予測による流入時刻の予測システムの導入が考えられている(例えば、特許文献1参照)。そして、天候情報を人間系で分析した結果により、先行待機型のポンプを組み合わせてポンプの起動時間の短縮を図ったり、予測された流入時刻に合わせて、流入水を貯留するポンプます水位を予め減らしておく方法が導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−81851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、流入予測システムは広域にわたるデータの収集が必要で設備が大掛かりになる。また、予測モデルの構築や調整に多くの時間が必要となる。さらに、予測結果が思うように出ないこともある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ポンプ場への急激な流入水の増加に対して、流入予測に頼ることなく容易に対応可能なポンプ場設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態によるポンプ場設備は、 流入渠からポンプますに流入した流入水をポンプにより外部に排水するポンプ場設備であって、前記ポンプます内に、このポンプますに貯留された水の内外に出入可能に構成された容積体を設けたことを特徴とする。
【0007】
上記実施の形態によれば、ポンプ場への急激な流入水の増加を検知した時点で容積体を水外に取り出すことで、ポンプますの容量を増加させ、流入水の増加分を一時的に吸収した上で排水を行えるようにしている。このため、予測に頼ることのない直感的な設備運転または制御を行え、安全に流入水を排水でき、無駄なポンプ運転の削減が行える。また、副次的にポンプます水位を調節でき、設備設計上のポンプモータ容量の小型化や消費電力の低減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポンプ場設備の平常時の状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るポンプ場設備の流入水増加時の状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るポンプ場設備の容積体解放時の状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るポンプ場設備の排水時の容積体戻し入れ状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態における流入水増加時の動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態における排水時の容積体戻し入れ動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明によるポンプ場設備の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1乃至図4は、下水ポンプ場の構成を示している。この下水ポンプ場には、流入渠11が形成されており、その入り口部分(図示左端)には流入ゲート12が設けられ、図示しない下水道管路と接続している。このため、この下水ポンプ場の周辺及び上流域で降った雨水13などが、下水道管路を経てこの流入ゲート12から流入渠11内に流入する。この流入渠11の終端部(図示右端)にはポンプます14が設けられている。このポンプます14は、ポンプ場への流入水を、流入渠11を通して受け入れ、一旦貯留する。このポンプます14には排水用のポンプ15が設けられており、このポンプ15は、ポンプます14内に貯留された水13を外部の河川16などに排水する。
【0011】
このポンプます14には、その内部に貯留された水13の内外に出入可能に構成された容積体18を設けている。この容積体18としては、例えば、浮力を有するフロート状に構成されたものを用いる。このフロート状の容積体(以下、フロートとして説明する)18に対しては、このフロート18を、ポンプます14内の水13中に沈めて保持させる保持機構19を設ける。そして、この保持機構19を解除操作することで、フロート18を、その浮力により上昇させ、水13中から外部に移動させるように構成する。
【0012】
この保持機構19としては、例えば、おもり19Aと、その吊り上げ機構19Bとで構成する。なお、吊り上げ機構19Bは、モータによりワイヤを介しておもり19Aを吊り上げ、このおもり19Aをフロート18上に載置させ、かつ、フロート18上から除去する。
【0013】
以下、この実施の形態の作用を、図1乃至図4の設備図及び図5乃至図6のフローチャートを参照して説明する。
【0014】
図1は、平常時におけるポンプ場の状態を示しており、図示しない下水道からポンプ場への注入量が少ないため、ポンプます14内に貯留されている水13の量は比較的少量である。このような場合は、フロート18上におもり19Aを載置し、フロート18をポンプます14内の水13中に沈めておく。
【0015】
ここで、図の例ではNo.1〜No.3まで3個のフロート18が用いられ、これら各フロート18別にそれぞれおもり19Aが設けられているものとする。勿論、フロート18の数、及びその大きさは、ポンプます14の大きさに応じて任意に設定する。
【0016】
このように、フロート18が水13中に沈められていると、フロート18の容積分、ポンプます14内における水13の水位は上昇し、比較的少量の水量であってもポンプ15の排水可能(吸い込み可能)な高さとなる。このため、ポンプます14の容積を多くするため、ポンプます14を深く形成しても、ポンプ15の楊程をそれほど大きく採る必要はなく、ポンプモータの容量を小型化することができる。
【0017】
次に、ポンプ場への流入量が増大し、ポンプます14から排水を行う場合の動作を図5のフローチャートで説明する。周辺領域への降雨などにより、図2で示すようにポンプ場への流入量が増大し、ポンプます14の水位が、予め設定した水位Hf1を超えると(ステップ501)、フロート18に対する保持機構19は解除操作され、No.1フロート18を解放して(ステップ502)上昇させ、水13外に移動させる。すなわち、No.1フロート18上のおもり19Aを吊り上げ機構19Bで吊り上げてフロート18上から取り除く解除操作を行い、No.1フロート18を解放する。
【0018】
この操作によりNo.1フロート18が水13外に移動することにより、その容積分、ポンプます14の収容容量が増大し、水位は低下する。この状況から流入水により再度水位が上昇し、再び設定水位Hf1を超えると(ステップ503)、No.2フロート18を同様に解放操作し(ステップ504)、上昇させる。図2はNo.1、No.2フロート18がそれぞれ解放され、水13外に移動して水位が低下した状態を示している。以後、流入水の増加により同様に水位が上昇し、再び設定水位Hf1を超えると(ステップ505)、No.3フロート18を同様に解放操作し(ステップ506)、上昇させ、ポンプます14の収容容積を増大させる。
【0019】
このように、ポンプます14に複数のフロート18を設置し、通常はポンプます14の水中に沈めて、ポンプます14の水位を上昇させることで、排水ポンプ15の揚程を小さく抑えることができる。そして、急激に流入量が増加したときは、フロート14を解放することで、フロート14を水面上に上昇させて、ポンプます14の収容容積を増大させるので、その分、ポンプます14の水位が下降し、急激な流入水の増加があってもポンプ場の冠水を回避することができる。
【0020】
すなわち、ポンプ場への急激な流入水増加を検知した時点でフロート18を上昇させ、ポンプます14の容量を増加させるので、流入水の増加分を一時的に吸収した上で排水を行うことができる。このため、流入予測に頼ることのない直感的な設備運転または制御を行え、安全に流入水を排水でき、無駄なポンプの運転の削減が行える。また、副次的にポンプます水位を調節でき、設備設計上のポンプモータ容量の小型化や消費電力の低減ができる。
【0021】
次に、ポンプます14からの排水時の動作について図6のフローチャートで説明する。例えば、ポンプます14の水位上昇により、すべて(図の例では3個)のフロートを上昇させた状態でポンプ15により排水が行われているものとする。このとき、流入水が少なく、或いは流入水がない場合(ステップ601)、ポンプます14の水位は低下し始める。ポンプます14の水位が、ポンプ15による吸込み可能な下限レベルの付近の水位Hf2に低下すると(ステップ602)、まず、1つのフロート(例えば、No.3フロートとする)18を水中に沈め(ステップ603)、ポンプます14の水位を上昇させながら排水を継続する。
【0022】
排水の継続により、ポンプます14の水位が再び水位Hf2に低下すると(ステップ604)、再び1つのフロート(No.2フロートとする)18を水中に沈め(ステップ605)、ポンプます14の水位を上昇させながら排水を継続する。以後、同様に排水の継続により、ポンプます14の水位が再び水位Hf2に低下すれば(ステップ606)、残りのNo.1フロート18を水中に沈め(ステップ607)、ポンプます14の水位を上昇させながら排水を行う。
【0023】
なお、フロート18を水中に沈める操作は、保持機構19を構成するおもり19Aを吊り上げ機構19Bのモータによりワイヤを介して対応するフロート18上に載置することにより行う。図4は、No.2、No.3フロート18が水中に沈められ、No.1フロート18が水中への沈降途中である状態を示している。
【0024】
なお、フロート18に対しては、ポンプます14内に、その上下動をガイドするガイド部材(図示せず)を設け、フロート18が上下動する際、それ自身ポンプます14内で散らばらないように構成する。
【0025】
また、図の例では、ポンプます14の水中に沈んだフロート18に対しても、その上面におもり19Aを載せたままであるが、上述した図示しないガイド部材に、水中に沈んだフロート18の上面と係合する係合部材を設け、これを水中のフロート18に係合させておけば、おもり19Aは、フロート18の上面から除去してもよい。この場合、フロート18の上昇は、上記係合部材をフロート18の上面との係合を解除するように解放操作することで行われる。すなわち、上記操作により、フロート18に対する拘束力が解除されるので、フロート18は自己の浮力により一気に上昇し、水13外に瞬時に移動する。
【0026】
上記実施の形態では、容積体18として浮力を有するフロート状のものを例示したが、本発明はこれに限らず、浮力を持たない、自重により沈降可能な容積体18を用いてもよい。この場合、自力では水中から外に上昇できないため、ポンプます14内において、水13の内外に出入させるために昇降駆動する駆動機構を設ける必要がある。この駆動機構としては、例えば、前述の実施の形態で説明したモータ及びワイヤからなる引き上げ機構19Bと同様の機構を用いればよい。
【0027】
また、上記実施の形態では、容積体18を、ポンプます14内において水中に沈んだ状態と、水中から脱した状態とに移動させると説明したが、上述した駆動機構により、容積体18を、その一部が水中に没した中間高さ位置させて、水位を調整するように構成してもよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
11・・・流入渠
13・・・流入水
14・・・ポンプます
15・・・ポンプ
18・・・容積体
19・・・保持機構
19A・・・おもり
19B・・・引き上げ機構(駆動機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入渠からポンプますに流入した流入水をポンプにより外部に排水するポンプ場設備であって、
前記ポンプますに設けられ、ポンプますに貯留された水の内外に出入可能に構成された容積体を備えたことを特徴とするポンプ場設備。
【請求項2】
前記容積体は、浮力を有するフロート状に構成され、このフロート状の容積体をポンプます内の水中に沈降保持させる保持機構を設け、この保持機構を解除操作することでフロート状の容積体を、その浮力により前記水中から外部に移動させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のポンプ場設備。
【請求項3】
前記保持機構は、フロート状の容積体を前記水中に沈降させるためのおもりを有することを特徴とする請求項2に記載のポンプ場設備。
【請求項4】
前記容積体を、前記水の内外に出入させるために昇降駆動する駆動機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載のポンプ場設備。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記容積体を、その一部が水中に没した中間高さ位置させることが可能であることを特徴とする請求項4に記載のポンプ場設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60770(P2013−60770A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200904(P2011−200904)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】