説明

マイクロカプセル及びそれを含有する組成物

【課題】 水中では不溶であり電解質水溶液中では溶解又は膨潤する塩溶性マイクロカプセルの提供、また、この特徴に基づく放出機能を利用して、化粧料、衛生用品、芳香剤、外用剤、繊維処理剤、毛髪処理剤等の様々な用途に好適に使用することができる組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のマイクロカプセルは、塩溶性高分子を膜材とすることを特徴とする。用いる塩溶性高分子としては、水に不溶であり、0.01〜10%以上の塩濃度で溶解するスルホベタイン系高分子であるものが好ましい。
また、本発明の組成物は、上記マイクロカプセルを含有することを特徴とするものであり、組成物としては、例えば、化粧品組成物、衛生用品組成物、芳香剤組成物、繊維処理剤組成物などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中での微少な電解質濃度の変化で溶解状態が変化する高分子化合物を膜材とするマイクロカプセルに関し、更に詳しくは、水中では不溶であり電解質水溶液中では溶解又は膨潤する塩溶性マイクロカプセルであり、この特徴に基づく放出機能を利用して、化粧料、衛生用品、芳香剤、外用剤、繊維処理剤、毛髪処理剤等の様々な組成物の用途に好適に使用することができるマイクロカプセル及びそれを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロカプセルは、有効成分や機能成分の保護、放出を目的とし、化粧料、衛生用品、芳香剤、外用剤、繊維処理剤、毛髪処理剤等様々な分野で応用展開されている。
【0003】
マイクロカプセルから芯物質となる有効成分や機能成分を放出するには、マイクロカプセルを破壊により放出、マイクロカプセルの細孔から放出といった手段が殆どで、膜材を溶解させて放出させる手段はあまりないものである。
【0004】
マイクロカプセルを破壊して芯物質を放出させるものとしては、例えば、ゲル形成剤、アニオン性ポリマーおよび活性成分からマトリックスを調製し、該マトリックスを、キトサン水溶液に滴下導入することによって得られる、膜と活性成分が少なくとも1種を含有するマトリックスからなる平均直径0.1〜5mmのマイクロカプセル(例えば、特許文献1参照)が知られている。
しかしながら、このマイクロカプセルでは、完全に破壊されず有効成分が全て放出されない場合があるなどの課題がある。
【0005】
また、マイクロカプセルの細孔から芯物質を放出させるものとしては、例えば、芳香剤を含有させてなるセラミック微多孔体をセルロース微粉体に担持させ、前記セラミック微多孔体をセルロース微粉体を媒体として布帛に固着してなる芳香性布帛(例えば、特許文献2参照)が知られ、更に、マイクロカプセルを溶解し香料を放出させるものとしては、サイクロデキストリンを使用して香料を包接したもの(例えば、特許文献3及び4参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載のセラミック微多孔体を用いたマイクロカプセルは、常に香料が放出され、製造してから実際に使用するまでに香気が弱くなる場合があるなどの課題があり、上記特許文献3及び4記載のマイクロカプセルでは、サイクロデキストリンを用いているため、効果を出すために配合量が増えると使用時にべたつきが生じたり、また、解消するため包接した香料としない香料を分けて配合する必要があるなどの課題がある。
【特許文献1】特表2003−506323号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平5−163676号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2001−316219号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平10−120541号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等について、これを解消しようとするものであり、使用時の電解質の濃度変化、具体的には、例えば、0.5質量%以上の塩が含まれている汗、涙、尿等の人体液等の塩水との接触や、電解質水溶液の濃縮により発現する、生理活性物質、有効成分、香料、薬剤、色素といった成分を放出することが可能な、塩感応放出性を有する塩溶性高分子化合物を膜材とするマイクロカプセルを提供することを目的とする。更に、本マイクロカプセルを用いた化粧品、衛生用品、芳香剤等の組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、特定物性の高分子を膜材として用いることによって達成でき、該高分子を相分離法、スプレークーリング法、液中乾燥法、界面重合法等のマイクロカプセル化法によってマイクロカプセルを調製可能となることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 塩溶性高分子を膜材とすることを特徴とするマイクロカプセル。
(2) 塩溶性高分子が水には不溶で、0.01〜10%の塩濃度で溶解する上記(1)記載のマイクロカプセル。
(3) 塩溶性高分子がスルホベタイン系高分子である上記(1)又は(2)記載のマイクロカプセル。
(4) 上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のマイクロカプセルを含有することを特徴とする組成物。
(5) 組成物が化粧品組成物、衛生用品組成物、芳香剤組成物、繊維処理剤組成物の何れか一つである上記(4)記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用時の電解質の濃度変化、具体的には、例えば、0.5質量%以上の塩が含まれている汗、涙、尿等の人体液等の塩水との接触や、電解質水溶液の濃縮により発現する、生理活性物質、有効成分、香料、薬剤、色素といった成分を放出することが可能な、塩感応放出性を有する塩溶性高分子を膜材とするマイクロカプセルが調製でき、化粧品、衛生用品、芳香剤、外用剤、繊維処理剤、毛髪処理剤等の各種用途へ安定に含有することができるマイクロカプセル及びそれを含有した組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のマイクロカプセルは、塩溶性高分子を膜材とすることを特徴とするものであり、また、本発明の組成物は、上記マイクロカプセルを含有することを特徴とするものである。
具体的には、本発明のマイクロカプセルは、例えば、芯物質として生理活性物質、有効成分、香料、薬剤、色素といった成分と、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物などの塩溶性高分子とを主体とした壁膜から構成されるものであり、また、本発明の組成物は、そのマイクロカプセルを安定に化粧品、衛生用品、芳香剤等の組成物に含有したものである。
【0012】
本発明において、用いる塩溶性高分子としては、塩溶性の高分子であれば、特に限定されないが、好ましくは、易塩溶性、使用性、易製造性の点から、水には不溶で、0.01〜10%の塩濃度で溶解する塩溶性の高分子が望ましく、更に好ましくは、これらの特性(水に不溶で、0.01〜10%の塩濃度で溶解する特性)を有するスルホベタイン系塩感応性高分子化合物が望ましい。
用いるスルホベタイン系塩感応性高分子化合物としては、後述するカプセル調製において、芯物質との親和性、及び、該高分子化合物の水溶性を望ましく制御する点から、スルホベタイン基含有ビニル単量体(A)、及び、疎水性基含有ビニル単量体(B)を構成単位とする共重合体であって、塩感応性を有する高分子化合物が望ましい。
【0013】
用いるスルホベタイン基含有ビニル単量体(A)とは、単量体中にアニオン性であるスルホン酸基又はその塩とカチオン性基の両者を有するものであり、カチオン性基としてはアミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基等を例示することができ、これらは1種以上の単量体を選択し使用することができる。
【0014】
用いる上記単量体(A)としては、例えば、下記一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
【化1】

【0015】
上記一般式化(I)の化合物は、3級アミノ基含有ビニル単量体のスルホベタイン化により合成することができる。スルホベタイン化は、該3級アミノ基含有単量体と、2−ブロモエタンスルホン酸塩等のハロスルホン酸塩、あるいは1,3−プロパンサルトン、1,4−ブタンサルトン等のサルトン類、等との反応によって得ることができるが、本発明において、好ましくは、反応が速やかに進行し、また、塩を副生しない点からサルトン類との反応が望ましい。
【0016】
また、上記3級アミノ基含有単量体としては、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0017】
用いる疎水性基含有ビニル単量体(B)としては、特に限定されないが、下記一般式(II)に示されるもの、または、シリコーンマクロモノマー等の疎水性重合体を含有するマクロモノマーが好適であり、これらは単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【化2】

【0018】
上記一般式(II)で示される化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0019】
本発明において、好ましく用いるスルホベタイン系塩感応性高分子化合物は、上記スルホベタイン基含有ビニル単量体(A)と疎水性基含有ビニル単量体(B)を後述する製法等で共重合することにより得られるものであり、上記スルホベタイン基含有ビニル単量体(A)、上記疎水性基含有ビニル単量体(B)の各成分の共重合比は、本発明の目的に適用しうる塩感応性を発現させる点から、好ましくは、上記単量体(B)と上記単量体(A)との質量比〔B〕/〔A〕が0.01〜5、更に好ましくは、0.03〜3とすることが望ましい。
この〔B〕/〔A〕の比が上記0.01〜5の範囲外になると、塩水溶液に溶解できないか、または溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。
【0020】
本発明では、塩感応性の機能を更に発揮せしめる点から、更に、共重合可能なビニル単量体(C)を構成成分とすることが好ましい。
上記スルホベタイン基含有ビニル単量体(A)及び疎水性基含有ビニル単量体(B)と共重合可能なビニル単量体(C)としては、特に限定されるものではないが、合成される共重合体の溶解性のコントロールやカプセル膜形成能、塩感応放出機能の調整等の目的に応じて使用することができ、例えば、親水性官能基を有するビニル単量体や架橋性単量体等を使用することができる。
【0021】
用いることができる親水性官能基を有するビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸(塩)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、メタンスルホン酸(メタ)アクリレート、等のアニオン性基を有するもの、塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、塩化トリエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、塩化トリメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、塩化トリメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、塩化トリエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、等の4級アンモニウム基を有するもの、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、等の3級アミノ基を有するもの、または、下記一般式(III)で示される、ポリオキシアルキレン鎖を有するもの、更には、(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するもの、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するもの、若しくは、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等を挙げることができる。
【化3】

【0022】
また、用いることができる架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、等が挙げられる。これらのビニル単量体(C)としては、1種の化合物を用いることもできるし、また、2種以上の化合物を組み合わせて用いることもできる。
好ましいビニル単量体(C)としては、塩感応性の機能を損なうことなく、共重合体の溶解性コントロールが容易である点から、上記一般式(III)で示される、ポリオキシアルキレン鎖を有するものが望ましい。
【0023】
本発明において、上記ビニル単量体(C)を好ましく用いる場合にも、上記スルホベタイン基含有ビニル単量体(A)と疎水性基含有ビニル単量体(B)と上記ビニル単量体(C)とを後述する製法等で共重合することにより得られるものであり、これらの各成分の共重合比は、本発明の目的に適用しうる塩感応性を更に発現させる点から、該単量体(B)と該単量体(A)との質量比〔B〕/〔A〕が0.01〜5であり、該単量体(C)と該単量体(A)との質量比〔C〕/〔A〕が0.01〜2、更に好ましくは〔B〕/〔A〕が0.03〜3、〔C〕/〔A〕が0.01〜1であることが望ましい。
これらの〔B〕/〔A〕及び〔C〕/〔A〕が上記各範囲(0.01〜5、0.01〜2)外となると、塩水溶液に溶解できないか、または溶解したとしても本発明の目的に適用し得るだけの塩感応性が得られない場合がある。
【0024】
本発明において、得られるスルホベタイン系塩感応性高分子化合物(共重合体)の分子量は、特に限定されないが、通常、質量平均分子量で1000〜100万、好ましくは、マイクロカプセルの調製のし易さの点から、1万〜50万の範囲にあるものが望ましい。
【0025】
本発明において、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物〔構成成分(A)及び(B)、構成成分(A)〜(C)〕の製造方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、沈殿重合等の各種の方法を用いることにより製造することができる。
溶液重合を行う場合は、性質の異なる複数のモノマーを溶解するための重合溶媒が用いられるが、このようなものとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が使用される。また、重合開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸カリウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物を用いることができる。更に、開始剤の使用量も特に限定されず、通常、全モノマー量に対して、0.1〜10モル%である。重合温度は、重合方法や用いる開始剤の種類等により異なるが、通常、50〜100℃である。重合時間は、2〜10時間である。
【0026】
本発明において、好ましく用いるスルホベタイン系塩感応性高分子化合物は、上述の如く、構成単量体(A)及び(B)、好ましくは更に共重合可能なビニル単量体(C)を上記重合方法等に従って重合することにより製造することができるが、単量体(A)のうち上記一般式(I)で示される単量体に関しては、前駆体である3級アミノ基含有ビニル単量体を単量体(B)、更に(C)と共重合したのち、共重合体中3級アミノ基部をスルホベタイン化することで製造することが可能である。
とりわけ、単量体(C)の一部又は全部として3級アミノ基を有するビニル単量体を選択し、かつ単量体(A)が該3級アミノ基含有単量体のスルホベタイン化反応により得られるものである場合には、最終的に得られる高分子化合物中におけるそれらの構成比が所望となるように、共重合体中該3級アミノ基を部分的にスルホベタイン化反応をすることで、所望の構成比からなる目的のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物を得ることができる。
【0027】
本発明に使用される芯物質としては、生理活性物質、有効成分、香料、薬剤、色素などといった化粧料、衛生用品、芳香剤、外用剤、繊維処理剤、毛髪処理剤等の各用途に用いられるマイクロカプセルに含有される成分であれば、いずれも使用することができる。
本発明のマイクロカプセルには、上記の各成分が合計量で、マイクロカプセル全量中に、0.1〜70質量%(以下、単に、「%」という)含有されるが、好ましくは、0.5〜50%、更に好ましくは、1.0〜30%含有されることが望ましい。
この含有量が0.1%未満では、その効果は発揮されず、一方、70%を超える含有ではマイクロカプセル化ができなくなるなどの不都合を生じるおそれがある。
【0028】
また、マイクロカプセルの平均粒子径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、0.01μm〜1000μmが好ましく、0.1〜700μmがより好ましい。
このマイクロカプセルの平均粒子径が0.01μm未満であると、マイクロカプセルの調製が難しくなり、一方、1000μmを越えると、製剤中に均一に分散させることが困難になり、外観も悪くなることがある。
【0029】
本発明のマイクロカプセルの調製法としては、特に制限されず、公知のマイクロカプセル化方法等を採用することができる。本発明の場合、効率良くマイクロカプセル化できる点、芯物質の安定保護の点から、相分離法やオリフィス法、スプレークーリング法が好適である。以下に示す、好ましい各方法により、更に効率良く目的のマイクロカプセルを調製することができる。
【0030】
相分離法とは、膜材となるスルホベタイン系塩感応性高分子化合物等の塩溶性高分子を、塩を含む水溶液に溶解した後、芯物質となる成分を分散し所望する粒子径を調整する。その後、精製水などを滴下し系内の塩濃度を低下することにより、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物を相分離させ芯物質の周りに吸着させ、マイクロカプセルを調製する。
【0031】
オリフィス法とは、2重管ノズルの外側にスルホベタイン系塩感応性高分子化合物等の塩溶性高分子を溶解した水溶液を、内側に芯物質含む溶液を流し振動などによって液滴を形成させて、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物等の塩溶性高分子の析出が可能な水溶液に滴下させ、マイクロカプセルを調製する。
【0032】
スプレークーリング法とは、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物等の塩溶性高分子を溶解した水溶液に芯物質を分散した水相小物を噴霧し、冷却固化させた後、捕集することにより含水状態のマイクロカプセルを得る方法である。また、低温乾燥や凍結乾燥などによりマイクロカプセルを乾燥して使用することもできる。
【0033】
本発明で用いられる上記構成のスルホベタイン系塩感応性高分子化合物は、水中では不溶であり、電解質水溶液中では溶解又は膨潤するという特徴を持つと共に、疎水性単量体を共重合モノマーとして組み込んだ場合、疎水性有機物質との親和性に優れるため、電解質水溶液中で疎水性芯物質との界面に吸着しやすい結果、相分離法やオリフィス法、スプレークーリング法といった公知のマイクロカプセル化法により、効率良く該高分子を膜材とするマイクロカプセルを調製できると共に、使用時の電解質の濃度変化、具体的には、例えば、0.5質量%以上の塩が含まれている汗、涙、尿等の人体液等の塩水との接触や、電解質水溶液の濃縮により、生理活性物質、有効成分、香料、薬剤、色素といった成分を放出することが可能な、塩感応放出性を有するマイクロカプセルが得られることとなる。
【0034】
本発明のマイクロカプセルは、乳液、化粧液、化粧水、美容液、クリーム、ジェル製剤、毛髪処理剤等の化粧料組成物、医薬品、医薬部外品等の外用剤組成物、柔軟剤、あとケア剤、しわ防止スプレー等の繊維処理剤組成物、紙おむつなどの衛生用品組成物、芳香剤組成物などの各用途の組成物に好適に含有せしめることができる。
本発明のマイクロカプセルは、上記各組成物に好適に含有せしめることができるが、この場合の含有量は、各組成物の用途により、変動するものであるが、組成物全量中、0.1〜20%が好ましく、更に好ましくは、0.3〜10%が望ましい。
この含有量が0.1%未満では、本発明のマイクロカプセルの効果が十分に発揮され難く、一方、20%を超えて含有しても、顕著な効果の向上は認められないものとなる。
【0035】
このように構成される本発明では、生理活性物質、有効成分、香料、薬剤、色素といった成分を芯物質とし、膜材が塩溶性高分子からなるので、例えば、0.5質量%以上の塩が含まれている汗、涙、尿等の人体液等の塩水との接触や、電解質水溶液の濃縮により、上記生理活性物質、有効成分、香料等の成分を効率良く、容易に放出することができるマイクロカプセルが得られると共に、化粧品、衛生用品、芳香剤、外用剤、繊維処理剤、毛髪処理剤等の各種用途の組成物に安定に含有することができるものとなる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0037】
まず、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物を膜材とするマイクロカプセルの調製方法、マイクロカプセルを含有した製剤の調製方法、各評価方法等について、以下に説明する。
(1)スルホベタイン系塩感応性高分子化合物を膜材とするマイクロカプセルの調製方法
かき混ぜ機を備えた溶解槽中に、精製水及び無機塩を所定量入れた後、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物を加え、高分子が溶解する温度まで加熱・溶解することにより水相を調製した。
次いで、その水相に後述する記載の芯物質をかき混ぜながら添加し、芯物質を含有する分散物を調製した。この分散物を通常行われている相分離法やオリフィス法、スプレークーリング法によりマイクロカプセル化し、スルホベタイン系塩感応性高分子化合物を膜材とするマイクロカプセルを得た。
【0038】
(2)化粧品、衛生用品、芳香剤、柔軟剤の組成例
化粧水、乳液、ジェル、紙おむつ、芳香剤、柔軟剤の具体的な各組成を以下に示すが、これら組成に限定されるものではなく、また、製造方法は特に制限されず、一般的な調製法によって配合される。なお、配合単位は、質量%であり、全量100質量%である。
【0039】
<化粧水>
脱アシル型ジェランガム 0.03
塩化カルシウム 0.01
ジプロピレングリコール 4.0
濃グリセリン 4.0
エタノール 3.0
トリメチルグリシン 0.1
アルブチン 0.5
ローズ水 0.1
安息香酸ナトリウム 0.2
マイクロカプセル 1.0
精製水 バランス
【0040】
<乳液>
ベントナイト 0.3
モノステアリン酸ヘキサグリセリル 1.2
モノラウリン酸ジグリセリル 0.5
セスキオレイン酸ソルビタン 3.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
カンゾウフラボノイド 0.05
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0
植物性スクワラン 6.0
ホホバ油 1.5
ローズヒップ油 0.5
ステアリルアルコール 2.0
濃グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 2.0
カルボキシビニルポリマー 0.12
パラオキシ安息香酸メチル 0.3
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
酸化型コエンザイムA 0.2
トリイソプロパノールアミン 0.1
エタノール 2.0
マイクロカプセル 5.0
精製水 バランス
【0041】
<ジェル>
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO) 0.5
油溶性甘草エキス 0.1
エタノール 7.0
濃グリセリン 1.5
ジプロピレングリコール 3.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
透明溶解性キサンタンガム 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.3
トリイソプロパノールアミン 0.18
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
香料 適量
マイクロカプセル 0.5
クレアチニン 0.1
精製水 バランス
【0042】
<芳香剤>
カラギーナン 2.0
リンゴ酸 0.01
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(9EO) 5.0
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(15EO) 11.0
香料 4.0
ブチルヒドロキシトルエン 0.1
マイクロカプセル 0.5
エチレングリコール 2.0
塩化ナトリウム 0.3
精製水 バランス
【0043】
<紙おむつ用吸収剤シート>
吸収性ポリマー0.7g、及びマイクロカプセル1.0gを2枚のクラッシュパルプシート(7cm×15cm、200g/m2)の間に均一に散布した後に、全体を不織布でくるんで紙おむつを作製した。
【0044】
<柔軟剤>
N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムサルフェート 16.5
ポリオキシエチレン変性シリコーン(CF1188) 4.0
ポリオキシエチレンイソドデシルアルコール 2.0
イソチアゾロン液 微量
塩酸 微量
香料 適量
マイクロカプセル 7.0
精製水 バランス
【0045】
(3)マイクロカプセルの平均粒子径の測定方法
位相差顕微鏡により測定した。
(4)マイクロカプセルの香料保持の評価方法
調製物を、攪拌子にてマイクロカプセルを均一分散状態にして、3cm径のシャーレに2g添加した。室温下30分静置後の臭気から、以下の評価基準によりマイクロカプセルの香料保持性を評価した。
マイクロカプセルの香料保持評価基準:
◎:ほとんど感じない
○:僅かに感じる
×:マイクロカプセル中香料と同重量の香料のみと同程度の強さ
【0046】
(5)マイクロカプセルの溶解性及び香料の放出性試験
以下に示す評価方法によって調製されたマイクロカプセルの塩感応性による芯物質の放出性を目視及び顕微鏡(倍率:×10〜200倍)により評価した。
評価方法:
香料保持評価終了後、30分静置した後のシャーレに2%NaCl水溶液を添加、ゆるやかに攪拌した。1分後の臭気の強さを、2%NaCl水溶液添加直前の臭気と比較し、塩感応放出性を下記評価基準で評価した。
使用時のマイクロカプセルの溶解乃至膨潤及び香料の放出性の評価基準:
◎:容易にマイクロカプセルが溶解乃至膨潤し、香気が顕著に強まっている
○:マイクロカプセルがやや溶解乃至膨潤しにくいが香気がやや強まっている
×:マイクロカプセルが溶解乃至膨潤せず香気の変化はない
【0047】
〔実施例1〜9及び比較例1,2〕
下記に各種の塩感応高分子を膜材としたマイクロカプセル、該マイクロカプセルを用いた各組成物(化粧品、衛生用品、芳香剤)の調製例を詳述する。また、実施例1〜9で使用する塩感応高分子は、以下の製造例1に従って調製した。
【0048】
(製造例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、モノマー滴下口、開始剤滴下口及び窒素の導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、エタノール155.1gを加え、85℃の湯浴で加温を始めるとともに、窒素導入管より窒素の導入を開始した。一方、300mL容のビーカーに、スルホベタイン基含有ビニル単量体(A)として3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネートの前駆体としてジメチルアミノエチルメタクリレート85.3g、疎水性基含有ビニル単量体(B)としてヘキシルメタクリレート46.9g、(A)及び(B)と共重合可能なビニル単量体(C)としてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)7.8g、エタノール77.5gを秤取り、かき混ぜて均一なモノマー溶液を調製した。また、100mLのビーカーに2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1.6gを秤取り、エタノール25.8gを加えて溶解し、開始剤溶液を調製した。
次に、前記セパラブルフラスコの内温が78℃になった時点で、滴下ポンプを用いて、開始剤溶液、モノマー溶液を2時間かけて添加し、更に5時間撹拌を続け、重合を終了した。得られた共重合体溶液をエタノールで該共重合体の質量濃度が15%になるように希釈し、液温25℃で、1.3−プロパンサルトン66.3gを1時間かけて滴下し、35℃に昇温後、4時間反応を継続した。冷却後、反応溶媒を除去、乾燥することで、共重合体を得た。
【0049】
(実施例1)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びヘキシルメタクリレート(HMA)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)(M90G)の共重合体を、共重合比(mol%)65/33/2で製造例1に従い調製した。
該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.31、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.05であった。300mLのビーカーで塩感応高分子7重量部、0.5%NaCl水溶液93重量部を40℃で混合溶解した溶液に、マイクロカプセルの芯物質となるリモネン(香料)15重量部攪拌しながら添加し粒子径を調整した。
次に、精製水200重量部を1時間掛けて系内に添加することで、塩感応高分子を相分離させて芯物質の周りに吸着させた。系内温度を25℃まで冷却し、塩感応高分子を膜材とするマイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持効果、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0050】
(実施例2)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びヘキシルメタクリレート(HMA)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)(M90G)の共重合体を、共重合比(mol%)75/23/2で製造例1に従い調製した。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.19、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.04であった。300mLのビーカーで塩感応高分子5重量部、0.5%NaCl水溶液95重量部を40℃で混合溶解した溶液に、マイクロカプセルの芯物質となるリモネン(香料)20重量部攪拌しながら添加し粒子径を調整した。次に、0.1%スメクタイト水溶液200重量部を1時間掛けて系内に添加することで、塩感応高分子を相分離させて芯物質の周りに吸着させた。系内温度を25℃まで冷却し、塩感応高分子を膜材とするマイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持効果、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0051】
(実施例3)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びヘキシルメタクリレート(HMA)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)(M90G)及び塩化トリメチルアミノエチルメタクリレート(DMC)の共重合体を、共重合比(mol%)64/33/2/1で製造例1に従い調製した。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.31、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.06であった。300mLのビーカーで塩感応高分子15重量部、0.5%NaCl水溶液285重量部を40℃で混合溶解し水相を調製した。オリフィス管を用い膜材となる水相を外側に、また芯物質となるリモネン(香料)を内側にし、水相/芯物質=50/50なるように液を流した。オリフィス管に振動を与えることによって、マイクロカプセルの粒子径を調整し、精製水中に滴下させていくことで、マイクロカプセルを調製した。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の各評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0052】
(実施例4)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及び2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)(M90G)及び2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)の共重合体を、共重合比(mol%)57/38/2/3で製造例1に従い調製した。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.47、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.10であった。掻き取りパドル及びアジホモミキサーを装備した1.5Lのガラス容器に塩感応高分子50重量部、0.2%NaCl水溶液795重量部、リモネン(香料)15重量部、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO)0.5重量部を配合し、ホモミキサー8000rpm、パドル100rpm、10分で乳化した。得られた乳化物を液体窒素中にスプレーし、凍結したマイクロカプセルを調製後、精製水中に添加することでマイクロカプセルを調製した。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0053】
(実施例5)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びベンジルメタクリレート(BzMA)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)(M90G)の共重合体を、共重合比(mol%)66/32/2で製造例1に従い調製した。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.31、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.05であった。300mLのビーカーで塩感応高分子5重量部、0.6%NaCl水溶液95重量部を40℃で混合溶解した溶液に、マイクロカプセルの芯物質となるリモネン(香料)20重量部攪拌しながら添加し粒子径を調整する。次に、精製水200重量部を1時間掛けて系内に添加することで、塩感応高分子を相分離させて芯物質の周りに吸着させた。系内温度を25℃まで冷却し、塩感応高分子を膜材とするマイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0054】
(実施例6)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びラウリルメタクリレート(LMA)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)(M90G)の共重合体を、共重合比(mol%)73/25/2で製造例1に従い調製した。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.31、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.05であった。300mLのビーカーで塩感応高分子10重量部、2%NaCl水溶液90重量部を40℃で混合溶解した溶液に、マイクロカプセルの芯物質となるリモネン(香料)15重量部攪拌しながら添加し粒子径を調整する。次に、精製水200重量部を1時間掛けて系内に添加することで、塩感応高分子を相分離させて芯物質の周りに吸着させた。系内温度を25℃まで冷却し、塩感応高分子を膜材とするマイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0055】
(実施例7)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びラウリルメタクリレート(LMA)及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(p=9)(M90G)の共重合体を、共重合比(mol%)63/35/2で製造例1に従い調製した。該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.51、〔C〕/〔A〕(質量比)は0.05であった。300mLのビーカーで塩感応高分子7重量部、2%NaCl水溶液93重量部を40℃で混合溶解した溶液に、マイクロカプセルの芯物質となるリモネン(香料)17重量部攪拌しながら添加し粒子径を調整する。次に、5%ポリビニルアルコール水溶液200重量部を1時間掛けて系内に添加することで、塩感応高分子を相分離させて芯物質の周りに吸着させた。系内温度を25℃まで冷却し、塩感応高分子を膜材とするマイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0056】
(実施例8)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びラウリルメタクリレート(LMA)の共重合体を、共重合比(mol%)85/15で製造例1に従い調製した。
該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.16であった。300mLのビーカーで塩感応高分子5重量部、2%NaCl水溶液95重量部を40℃で混合溶解した溶液に、マイクロカプセルの芯物質となるリモネン(香料)20重量部攪拌しながら添加し粒子径を調整した。
次に、精製水200重量部を1時間掛けて系内に添加することで、塩感応高分子を相分離させて芯物質の周りに吸着させた。系内温度を25℃まで冷却し、塩感応高分子を膜材とするマイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0057】
(実施例9)
3−ジメチル(メタクリロイルオキシエチル)アンモニウムプロパンスルホネート(DMAPS)及びラウリルメタクリレート(LMA)の共重合体を、共重合比(mol%)75/25で製造例1に従い調製した。
該共重合体の〔B〕/〔A〕(質量比)は0.30であった。300mLのビーカーで塩感応高分子5重量部、6%NaCl水溶液95重量部を40℃で混合溶解した溶液に、マイクロカプセルの芯物質となるリモネン(香料)15重量部攪拌しながら添加し粒子径を調整した。
次に、0.2%スメクタイト水溶液200重量部を1時間掛けて系内に添加することで、塩感応高分子を相分離させて芯物質の周りに吸着させた。系内温度を25℃まで冷却し、塩感応高分子を膜材とするマイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように良好であった。
【0058】
(実施例10)
上記実施例1で得られたマイクロカプセルを、前記組成の化粧水に配合した。製剤中ではマイクロカプセルは安定であり、塗布後人体の汗によりマイクロカプセルが溶解され、香料が放出されることを確認した。これにより、塩溶性マイクロカプセルが含有された安定性に優れた化粧水が得られることが判った。
【0059】
(実施例11)
実施例2で得られたマイクロカプセルを、前記組成の紙おむつに配合した。製剤中ではマイクロカプセルは安定であり、塗布後人体の尿によりマイクロカプセルが溶解され、香料が放出されることを確認した。これにより、塩溶性マイクロカプセルが含有された安定性に優れた紙おむつが得られることが判った。
【0060】
(実施例12)
実施例3で得られたマイクロカプセルを、前記記載した芳香剤に配合した。製剤中ではマイクロカプセルは安定であり、芳香剤を使用していくと水分が徐々に蒸発し、系内の塩濃度が高くなるにつれてマイクロカプセルが溶解され、香料が徐々に放出されることを確認した。これにより、塩溶性マイクロカプセルが含有された安定性に優れた芳香剤が得られることが判った。
【0061】
(実施例13)
実施例5で得られたマイクロカプセルを、前記記載した柔軟剤に配合した。製剤中ではマイクロカプセルは安定であり、柔軟剤により処理された衣類を着用し、汗をかくことでマイクロカプセルが破壊され、香料が徐々に放出されることを確認した。これにより、塩溶性マイクロカプセルが含有された安定性に優れた柔軟剤が得られることが判った。
【0062】
(比較例1)
マイクロカプセルの膜材として5.0重量部のゼラチン(200〜250ブルーム、牛骨アルカリ処理)、1.2重量部のペクチン(CPケルコ社LMペクチン102AS)を40℃の68.7重量部精製水に溶解した。この水溶液に攪拌下で芯物質となる15.0重量部のリモネン(香料)を分散し、芯物質の粒子径を調整した。次に、5%酢酸水溶液を加えてpH4.3に調整した後、20℃に冷却することにより、マイクロカプセルを調製した。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように香料の保持効果は良好であったが、塩濃度を変化(2〜10%、以下同様)させても香料の放出はなかった。
【0063】
(比較例2)
マイクロカプセルの膜材として4.5重量部の寒天(局方寒天PS−7)を295.5重量部の精製水に分散後、沸騰させ寒天を溶解した水相を調製した。オリフィス管の外側に膜材となる水相を、内側に芯物質となるリモネン(香料)を90/10になるように液を流した。オリフィス管に振動を与えることによって、マイクロカプセルの粒子径を調整し、ゲル化する温度領域に設定した食用油脂中に滴下しマイクロカプセルを形成した。その後、マイクロカプセルに付着した食用油脂を完全に除去することで、マイクロカプセルを得た。本マイクロカプセルの香料保持性、香料放出性(溶解乃至膨潤性)の評価を行った結果、下記表1に示すように香料の保持効果は良好であったが、塩濃度を変化させても香料の放出はなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
上記表1の結果等から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜12は、本発明の範囲外となる比較例1及び2に較べて、香料、機能性油分などを更に安定に化粧品、衛生用品、芳香剤等の組成物に含有でき、更に、塩濃度の上昇によって容易に膜材が溶解乃至膨潤し芯物質を放出させることができる優れた特性を有するマイクロカプセル及びそれを含有した組成物が得られることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩溶性高分子を膜材とすることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項2】
塩溶性高分子が水には不溶で、0.01〜10%の塩濃度で溶解する請求項1記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
塩溶性高分子がスルホベタイン系高分子である請求項1又は2記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載のマイクロカプセルを含有することを特徴とする組成物。
【請求項5】
組成物が化粧品組成物、衛生用品組成物、芳香剤組成物、繊維処理剤組成物の何れか一つである請求項4記載の組成物。

【公開番号】特開2006−8564(P2006−8564A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186589(P2004−186589)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】