説明

マイクロレンズの製造方法

【課題】個々のレンズの頂点部より高さの高い突起部を有するマイクロレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】基板の上にポジ型レジストを塗布し、一方、図に示すようなグレースケールマスク1を製造した。図は平面図であり、その中にレンズ対応部分2と突起部対応部分3とが形成されている。レンズ対応部分2の光透過率は15〜47%、突起部対応部分3の光透過率は0%、レンズとレンズの間の平坦部分に対応する部分の光透過率は47%(レンズ部分の最大透過率と一致)である。即ち、レンズ頂点部は透過率が15%で露光され、突起部は未露光となる。このグレースケールマスクを使用して前述のレジストを露光して現像したところ、レジストに形成されたレンズ頂点高さはレジストに形成された突起部高さより約5μm低くなった。これでも、レンズ保護の面からは十分実用になるGAPである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々のレンズの頂点部高さよりも高い突起部を有するマイクロレンズ(本明細書及び特許請求の範囲でいうマイクロレンズには、マイクロレンズアレイを含むものとする。又、マイクロレンズとしては、非球面レンズ、シリンドリカルレンズ等、通常レンズとして認められているものは勿論、フレネルレンズや回折格子等レリーフパターン等により光学的パワーを持つもの、その他、表面の形状に起因して光を透過する際に光学的パワーを有するもの一切を含むものである。)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロレンズは、ディジタルカメラ、光通信、MEMS分野を中心に実用化され、益々使用範囲が拡大している。
【0003】
このようなマイクロレンズの製造方法として、例えば特開平7−191209号公報(特許文献1)、特開平8−187781号公報(特許文献2)に記載されるような方法が公知となっている。これらの方法は、曲面からなるレンズ形状を、階段状の面からなる形状に近似し、基板の上にレジストを塗布し、複数枚のマスクを用いて、各階段状の面に対応した露光量でレジストを露光させ、レジストを現像することにより階段状の面からなるフォトレジストマイクロレンズを製造する方法、及びこのようにして形成されたレジストの形状を、レジストと基板とを同時にエッチングすることにより、基板に転写して、基板からなるマイクロレンズを製造する方法である。
【0004】
また、この状態から、レジストと基板をドライエッチングしてレジストを除去すると、レジスト形状が基板に転写され、基板からなる階段状の形状を有するマイクロレンズが形成される。
【0005】
このようなマイクロレンズと全く異なるグレースケールマスクを使用したマイクロレンズの製造方法が、特開2005−158818号公報(特許文献3)に開示されている。これは、グレースケールマスク(アナログ的とみなせる光透過率の変化を有するマスク)を使用して基板の表面に形成されたレジストを感光させ、レジストを現像することによって、グレースケールに応じた形状の、立体的なレジストパターンを形成し、それをマイクロレンズとするか、あるいは前述のように、さらにレンズ形状となったレジストを基板と共にエッチングすることにより、レンズ形状のレジストのパターンを基板に転写し、基板からなるマイクロレンズを形成するものである。
【特許文献1】特開平7−191209号公報
【特許文献2】特開平8−187781号公報
【特許文献3】特開2005−158818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらのマイクロレンズを他の光学基材等と組み合わせて使用する場合に、個々のマイクロレンズの頂点部が、他の光学基材等に当たり、場合によっては破損する場合がある。これを防止するためには、図3に示すように、レジスト又は基板からなる個々のマイクロレンズを保護する突起部を、レジスト又は基板で形成することが望ましい。図3において、(a)は平面図、(b)は正面図である。図3に示すマイクロレンズアレイにおいては、基板11の上に、個々のレンズ12がレジストにより形成されているが、この個々のレンズ12の頂点部より高さの高い突起部13をレジストで形成して、個々のレンズ12の頂点部とのあいだにGAPを設けることにより、このマイクロレンズアレイを光学基材等と組み合わせて使用する場合等においても、突起部13がこれらの光学基材等と接触することになるので、個々のレンズ12の頂点部がこれらの光学基材等と接触することを防止できる。なお、図3において、14は、レンズ12間の平坦部である。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、個々のレンズの頂点部より高さの高い突起部を有するマイクロレンズの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段は、以下の工程を有し、個々のレンズの頂点部高さよりも高い突起部を有するマイクロレンズの製造方法であって、使用するグレースケールマスクが、それを使用してレジストを露光・現像したときに、レジストが所定のマイクロレンズ形状となるような開口率分布を持つパターンを有するグレースケールマスクであって、かつ、前記突起部を露光する部分の当該グレースケールマスクの開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が前記マイクロレンズの頂点部高さよりも高くなるような開口率を有するものであることを特徴とするマイクロレンズの製造方法である。
【0009】
(1)基板の上にレジストを塗布する工程
(2)前記グレースケールマスクを用意する工程
(3)前記グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光し、その後、前記レジストを現像する工程
【0010】
本手段においては、マイクロレンズの製造方法の基本は、従来のグレースケールマスクを使用したものと同じであるが、使用するグレースケールマスクとして、突起部を露光する部分の当該グレースケールマスクの開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が前記マイクロレンズの頂点部高さよりも高くなるような開口率を有するものを使用している。すなわち、使用するレジストがポジ型の場合は、突起部に対応する部分のグレースケールマスクの開口率は、個々のレンズの頂点部に対応するグレースケールマスクの開口率より小さく(開口率0とすることが最も簡単である)、使用するレジストがネガ型の場合は、突起部に対応する部分のグレースケールマスクの開口率は、個々のレンズの頂点部に対応するグレースケールマスクの開口率より大きくなる。これらの各部分の開口率の差は、突起部と個々のレンズの頂点部の高さのGAPの設計値に合わせて決定すればよい。
【0011】
なお、本手段のうちには、レジストでマイクロレンズパターンを形成後、ドライエッチングによりレジスト形状を基板に転写して基板からなるマイクロレンズを作る製造方法も含まれることは言うまでもない。
【0012】
前記課題を解決するための第2の手段は、以下の工程を有し、個々のレンズの頂点部高さよりも高い突起部を有するマイクロレンズの製造方法であって、使用するグレースケールマスクが、それを使用してレジストを露光・現像したときに、レジストが所定のマイクロレンズ形状となるような開口率分布を持つパターンを有するグレースケールマスクであって、かつ、前記突起部を露光する部分の当該グレースケールマスクの開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が前記マイクロレンズの頂点部高さと同じかそれよりも高くなるようなものであることを特徴とするマイクロレンズの製造方法である。
【0013】
(1)基板の上にレジストを塗布する工程
(2)前記グレースケールマスクを用意する工程
(3)前記突起部を露光する部分の開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が、他の部分の高さより高くなるようなものである補助グレースケールマスクを用意する工程
(4)前記グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光し、その後、前記補助グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光するか、前記補助グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光し、その後、前記グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光するかのいずれかの工程を実施する工程
(5)前記レジストを現像する工程
前記第1の方法では、突起部と個々のレンズの頂点部の高さのGAPが、グレースケールマスクの開口率の差の制限から余り大きくできない場合がある。これに対応するために、本手段においては、前記第1の手段の工程に加えて、補助グレースケールマスクを用いた露光工程を加えている。
【0014】
補助グレースケールマスクは、突起部を露光する部分の開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が、他の部分の高さより高くなるような開口率を有するものである。すなわち、ポジ型レジストを使用する場合には、突起部に対応する部分では、他の部分に比して開口率が低く(突起部を0%とし、他の部分を100%とすることが最も簡単である)、ネガ型レジストを使用する場合には、突起部に対応する部分では、他の部分に比して開口率が高くされている。
【0015】
このような補助グレースケールマスクを使用しての露光を加えることにより、突起部と個々のレンズの頂点部の高さのGAPを大きくすることができる。又、そのGAPの大きさも、突起部に対応する部分と他の部分の開口率の差を調整したり、露光時間を変えることにより調整することができる。
【0016】
なお、本手段のうちには、レジストでマイクロレンズパターンを形成後、ドライエッチングによりレジスト形状を基板に転写して基板からなるマイクロレンズを作る製造方法も含まれることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、個々のレンズの頂点部より高さの高い突起部を有するマイクロレンズの製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
図3に示すようなマイクロレンズアレイを製造した。個々のレンズ12のレンズサイズはφ180μm、SAGは約24μmである。このマイクロレンズアレイを製造するために、基板11の上にポジ型レジストを塗布し、一方、図1に示すようなグレースケールマスク1を製造した。図1は平面図であり、その中にレンズ対応部分2と突起部対応部分3とが形成されている。4はレンズ間の平坦部対応部分である。
【0019】
レンズ対応部分2の光透過率は15〜47%、突起部対応部分3の光透過率は0%、レンズとレンズの間の平坦部対応部分4の光透過率は47%(レンズ部分の最大透過率と一致)である。即ち、レンズ頂点部は透過率が15%で露光され、突起部は未露光となる。
【0020】
このグレースケールマスクを使用して前述のレジストを露光して現像したところ、レジストに形成されたレンズ頂点高さはレジストに形成された突起部高さより約5μm低くなった。これでも、レンズ保護の面からは十分実用になるGAPである。
【0021】
このGAPで不足な場合は、グレースケールマスク1のレンズ対応部分2の透過率範囲をプラス側にシフトすればよい。例えばレンズ対応部分2の透過率範囲を前記に対して+15%し、30〜62%にする。グレースケールマスク1の透過率とレジスト膜減り量がリニアーな関係にあれば、約10μmのGAPが得られることになる。グレースケールマスクの透過率とレジスト膜減り量は必ずしもリニアーではない(特に透過率が0%の付近)が、正確なGAPを得るためには、事前にテストを行い、グレースケールマスクの透過率とレジスト膜減り量の関係を掴んでおけばよい。
【0022】
(実施例2)
図3に示すようなマイクロレンズアレイを製造した。個々のレンズ12のレンズサイズはφ380μm、SAGは約3μmである。このマイクロレンズアレイを製造するために、基板11の上にポジ型レジストを塗布し、一方、図1に示すようなグレースケールマスク1を製造した。図1は平面図であり、その中にレンズ対応部分2と突起部対応部分3とが形成されている。
【0023】
レンズ対応部分2の光透過率は25〜40%、突起部対応部分3の光透過率は0%、レンズとレンズの間の平坦部対応部分4の光透過率は40%(レンズ部分の最大透過率と一致)である。即ち、レンズ頂点部は透過率が25%で露光され、突起部は未露光となる。
【0024】
この他に、図2に示すような補助グレースケールマスク5を用意した。この補助グレースケールマスク5においては、突起部対応部分6の光透過率は0%であり、他の部分7の光透過率はほぼ100%である。
【0025】
この補助グレースケールマスク5を用いて、前述のレジストを10sec露光し、その後、グレースケールマスク1を用いて露光を行った。そして、その後、レジストを現像した。その結果、レジストに形成されたレンズ頂点高さはレジストに形成された突起部高さより約7μm低くなった。補助グレースケールマスク5を使用した露光を行わず、グレースケールマスク1のみでの露光では、レジストに形成されたレンズ頂点高さはレジストに形成された突起部高さより約2μm低くなった。すなわち、補助グレースケールマスク5を使用することにより、レジストでのレンズ頂点高さと突起部高さのGAPを5μm大きくすることができた。
【0026】
当然ながら、補助グレースケールマスク5の露光時間を増やせば、GAPをより大きくすることが可能である。実施例2のように補助グレースケールマスク5を使用して露光を行う場合、補助グレースケールマスク5を使用しない場合より多めの露光時間をかけないと、設計値に対応するレンズ形状が得られない点には注意が必要である。本例の場合は、約1.6倍のグレースケールマスク露光時間を必要とした。
【0027】
なお、実施例2では、補助グレースケールマスク5を密着露光マスクとしたが、ステッパー用マスクとして製作し、ステッパーで均一露光してもよい。また、グレースケールマスク1の露光の前に、補助グレースケールマスク5での露光を行ったが、この逆に、グレースケールマスク1での露光の方を先に行ってもよい。
【0028】
又、言うまでもないが、本発明の方法を用いる場合、GAPを大きくする際は、それに見合ったレジスト塗布厚にしておく必要がある。
【0029】
実施例1、実施例2においては、いずれもレンズ形状、突起部形状をレジストにより形成したが、レジスト形状を形成した後、周知のように、基板とレジストをドライエッチングすることにより、レジスト形状を基板に転写し、基板からなるマイクレンズアレイを製造してもよい。その際には、レジストと基板のエッチングスピードの差を考慮して、レジストに形成されるレンズ形状を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に用いたグレースケールマスクの概要を示す図である。
【図2】本発明の実施例に用いた補助グレースケールマスクの概要を示す図である。
【図3】個々のマイクロレンズを保護する突起部を有するマイクロレンズアレイの例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1…グレースケールマスク、2…レンズ対応部分、3…突起部対応部分、4…平坦部対応部分、5…補助グレースケールマスク、6…突起部対応部分、7…他の部分、11…基板、12…レンズ、13…突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を有し、個々のレンズの頂点部高さよりも高い突起部を有するマイクロレンズの製造方法であって、使用するグレースケールマスクが、それを使用してレジストを露光・現像したときに、レジストが所定のマイクロレンズ形状となる開口率分布を持つパターンを有するグレースケールマスクであって、かつ、前記突起部を露光する部分の当該グレースケールマスクの開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が前記マイクロレンズの頂点部高さよりも高くなるような開口率を有するものであることを特徴とするマイクロレンズの製造方法。
(1)基板の上にレジストを塗布する工程
(2)前記グレースケールマスクを用意する工程
(3)前記グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光し、その後、前記レジストを現像する工程
【請求項2】
以下の工程を有し、個々のレンズの頂点部高さよりも高い突起部を有するマイクロレンズの製造方法であって、使用するグレースケールマスクが、それを使用してレジストを露光・現像したときに、レジストが所定のマイクロレンズ形状となる開口率分布を持つパターンを有するグレースケールマスクであって、かつ、前記突起部を露光する部分の当該グレースケールマスクの開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が前記マイクロレンズの頂点部高さと同じかそれよりも高くなるようなものであることを特徴とするマイクロレンズの製造方法。
(1)基板の上にレジストを塗布する工程
(2)前記グレースケールマスクを用意する工程
(3)前記突起部を露光する部分の開口率が、前記レジストを露光・現像したときに、前記突起部が、他の部分の高さより高くなるようにパターンが設けられた補助グレースケールマスクを用意する工程
(4)前記グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光し、その後、前記補助グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光するか、前記補助グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光し、その後、前記グレースケールマスクを使用して、前記レジストを露光するかのいずれかの工程を実施する工程
(5)前記レジストを現像する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−116606(P2008−116606A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298584(P2006−298584)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】