説明

マイクロ流体フロー・モニタリング

本発明は、チャネルにおいて、特にマイクロ流体チャネルにおいて、速度または流量をモニターするシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、連続フロー・マイクロ流体システムでリアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するためのシステムおよび方法において、速度または流量をモニターするシステムおよび方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、チャネルにおいて、特にマイクロ流体チャネルにおいて、速度またはフローをモニターするシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、連続フロー・マイクロ流体システムでリアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するためのシステムおよび方法において、速度または流量をモニターするシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景の解説
核酸の検出は、医学、法医学、産業用加工、作物および動物育種、ならびに多くの他の分野にとって中核をなすものである。疾患状態(たとえば癌)、感染性微生物(たとえばHIV)、遺伝系統、遺伝子マーカーなどを検出する能力は、疾患の診断および予後、マーカー利用選抜、犯罪現場の特徴の正確な識別、産業用生物を増殖させる能力、ならびに多くの他の技法にユビキタスな技術である。対象となる核酸の完全性の判定は、感染または癌の病理学に関連することがある。少量の核酸を検出するための最も強力で基本的な技術の1つは、核酸配列のいくつかまたはすべてを多数回にわたって複製し、次いで増幅産物を解析することである。PCRは、おそらく、いくつかの異なる増幅技法のうちの最もよく知られたものである。
【0003】
PCRは、DNAの短い部分を増幅するための強力な技法である。PCRにより、単一のテンプレートDNA分子から始めて、何百ものDNAのコピーを素早く生み出すことができる。PCRは、DNAの単一鎖への変性、プライマーの変性鎖へのアニール、および熱安定性DNAポリメラーゼ酵素によるプライマーの伸長の、3段階の温度サイクルを含む。検出され、解析されるべき十分なコピーが存在するように、このサイクルを繰り返す。原理的には、PCRの各サイクルが、コピー数を2倍にすることができる。実際には、各サイクルの後に達成される増殖は、常に2未満である。さらに、PCRサイクルが続くにつれ、必要とされる反応物質の濃度が低下するために、増幅されたDNA産物の増加は、最終的には停止する。PCRに関する一般的な詳細については、SambrookおよびRussell、Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(3rd Ed.)、Vols.1−3、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000)、Current Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編、Current Protocols、Green Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley&Sons,Inc.との間の合弁事業(2005まで補遺)、ならびにPCR Protocols A Guide to Methods and Applications、M.A.Innisら編、Academic Press Inc.San Diego、Calif.(1990)を参照されたい。
【0004】
リアルタイムPCRは、通常PCRサイクルごとに1回、反応の進行に従って増幅したDNA産物の増加を測定する、発展中の一連の技法を指す。産物の蓄積を経時的にモニターすることにより、反応の効率を判定すること、ならびにDNAテンプレート分子の初期濃度を推定することが可能になる。リアルタイムPCRに関する一般的な詳細については、Real−Time PCR:An Essential Guide、K.Edwardsら編、Horizon Bioscience、Norwich、U.K.(2004)を参照されたい。
【0005】
現在、増幅したDNAの存在を示すための、いくつかの異なるリアルタイム検出化学がある。これらのうち大部分が、PCRプロセスの結果として特性を変化させる蛍光指示薬に依存する。これらの検出化学の中に、2本鎖DNAとの結合時に蛍光効率を向上させるDNA結合色素(SYBR(登録商標)Greenなど)がある。他のリアルタイム検出化学は、色素の蛍光効率が別の光吸収部分または消光剤へのその接近に強く依存する現象である、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を利用する。これらの色素および消光剤は、通常、DNA配列専用プローブまたはプライマーに付加される。FRETベースの検出化学の中に、加水分解プローブおよび構造プローブがある。加水分解プローブ(TaqManプローブなど)は、ポリメラーゼ酵素を使用して、オリゴヌクレオチド・プローブに付加された消光剤色素分子からレポーター色素分子を切断する。構造プローブ(分子標識など)は、オリゴヌクレオチドに付加された色素を利用し、この色素の蛍光発光が、ターゲットDNAと交雑するオリゴヌクレオチドの構造変化時に変化する。
【0006】
リアルタイムPCRを実施する市販の器具はいくつか存在する。入手可能な器具の例には、Applied Biosystems PRISM 7500、Bio−Rad iCycler、およびRoche Diagnostics LightCycler2.0が含まれる。これらの器具用のサンプル容器は閉管であり、これは、通常、少なくとも10μl体積のサンプル溶液を必要とする。特定の分析によって検出可能なテンプレートDNAの最低濃度が、およそマイクロリットル当たり1分子であるとすると、入手可能な器具の検出限界は、サンプル管当たりおよそ数十ターゲットである。したがって、単一分子の感受性を達成するためには、1〜1000nlの範囲で、より小さなサンプル体積をテストすることが望ましい。
【0007】
より最近では、PCR、および他の増幅反応を実施するためのいくつかの高スループット手法が開発されており、それらはたとえば、マイクロ流体デバイスにおける増幅反応、ならびにデバイス中またはデバイス上で増幅核酸を検出して解析するための方法を含む。マイクロ流体システムは、流体がそこを通って流れることができる少なくとも1つのチャネルを有するシステムであり、このチャネルは、約1000マイクロメートル未満の、少なくとも1つの内部断面寸法(たとえば、深さ、幅、長さ、直径)を有する。典型的には、マイクロチャネルは、約5ミクロンから約500ミクロンの断面寸法、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する。増幅のためのサンプルの熱サイクルは、通常、2つの方法のうちの1つで実現される。第1の方法では、従来のPCR器具によく似て、サンプル溶液がデバイス中に充填され、温度は時間とともに変更が繰り返される。第2の方法では、サンプル溶液は、空間的にさまざまな温度ゾーンを通って、連続的にポンプで送られる。
【0008】
たとえば、Lagallyら(Anal Chem73:565〜570頁(2001))は、280nlのPCRチャンバ内で、単一のテンプレートDNAの増幅および検出を実証した。産物の検出は、PCR後にキャピラリ電気泳動法を使用して行われた。一方で、Koppら(Science280:1046〜1048頁(1998))は、95℃(変性)、72℃(伸長)、および60℃(アニール)の3つの一定温度ゾーンの上を通る蛇行チャネルを有するガラス基材を使用して、連続フローPCRを実証した。72℃のゾーンは中央領域に位置し、95℃から60℃に進む際に、短く通過される必要があった。検出は、PCR後にゲル電気泳動法を使用して行われた。このPCR技法は、反応槽の全表面の加熱に基づくものではないため、反応速度は、加熱速度/冷却速度ではなく、流量によって決定される。これらの参照のどちらも、PCR反応のリアルタイム・モニタリングを説明していない。
【0009】
Parkら(Anal Chem75:6029〜6033頁(2003))は、3つの温度制御されたブロックの周りに螺旋状に巻き付けられたポリイミド被覆の溶解シリカ・キャピラリを使用する、連続フローPCRデバイスを説明している。サンプル体積は2μlであった。検出は、PCR後にゲル電気泳動法を使用して行われた。不透明なポリイミドの代わりに、PTFEで被覆されたキャピラリを使用することにより、その器具をリアルタイムPCRに適応する可能性に言及している。Hahnら(国際公開第2005/075683号)も参照されたい。
【0010】
Enzelbergerら(米国特許第6,960,437号)は、3つの温度ゾーンを有する回転式チャネルを含むマイクロ流体デバイスを説明している。サンプルを導入して、これらのゾーンを通して回転式にポンプで送るために、いくつかの一体化されたバルブとポンプが使用される。
【0011】
Knappら(米国特許出願公開第2005/0042639号)は、あるマイクロ流体デバイスを説明している。いくつかの真っすぐな並列チャネルを有する平面状のガラス・チップが開示されている。ターゲットDNAとPCR試薬との混合物が、これらのチャネル中に注入される。第1の実施形態では、チャネルはこの混合物で充填され、フローが止められる。次いで、チャネルの全長が熱的に循環される。熱サイクルが完了した後、DNAが増幅されている蛍光の領域を検出するために、チャネルがイメージ化される。第2の実施形態では、温度が循環されるときに、PCR混合物が増幅ゾーンを通って連続して流れ、蛍光が増幅ゾーンの下流で検出される。サイクルに費やされる時間を変更すること、サイクルにおいて移動する距離を変化させることなどによって、異なる度合いの増幅が達成される。この方法が、個々のサンプル要素の進行を経時的にモニターするのでなく、別個の連続するサンプル要素について条件(経験されるサイクルなど)を変化させることは、注目に値する。
【0012】
参照により本明細書に組み込まれる、Hassonら(米国特許出願公開第2008/0003588号)は、マイクロ流体チャネルにおけるリアルタイムPCRのための、より詳細には、連続フロー・マイクロ流体システムにおけるリアルタイムPCRのための、システムおよび方法を説明している。この公開出願において説明されたシステムおよび方法によれば、マイクロ流体チャネルにおける流体の速度を、モニターし、調整することができる。
【0013】
Liuら(米国特許出願公開第2002/0166592号)は、流量モニタリングのためのチップ・システムおよび方法を説明している。気泡が、マイクロ流体システムの分離チャネル中に導入される。気泡の速度は、気泡が、固定した距離を隔てた分離チャネルの両側に位置する2つのLED/フォトダイオードの対を通るときに、その存在を光学的に検出することによって、決定される。環境光および他の散乱した光を遮断するために、チップ上にはクロム層が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2005/075683号
【特許文献2】米国特許第6,960,437号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0042639号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0003588号
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0166592号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】SambrookおよびRussell、Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(3rd Ed.)、Vols.1−3、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000)
【非特許文献2】Current Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編、Current Protocols、Green Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley&Sons,Inc.との間の合弁事業(2005まで補遺)
【非特許文献3】PCR Protocols A Guide to Methods and Applications、M.A.Innisら編、Academic Press Inc.San Diego、Calif.(1990)
【非特許文献4】Real−Time PCR:An Essential Guide、K.Edwardsら編、Horizon Bioscience、Norwich、U.K.(2004)
【非特許文献5】Lagallyら、Anal Chem73:565〜570頁(2001)
【非特許文献6】Koppら、Science280:1046〜1048頁(1998)
【非特許文献7】Parkら、Anal Chem75:6029〜6033頁(2003)
【非特許文献8】Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I−IV)、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献9】Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献10】Cells:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献11】PCR Primer:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献12】Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press
【非特許文献13】Stryer,L.(1995)Biochemistry(4th Ed.)Freeman、N.Y.
【非特許文献14】Gait、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach、1984、IRL Press、London、Nelson and Cox(2000)
【非特許文献15】Lehninger、Principles of Biochemistry 3rd Ed.、W.H.Freeman Pub.、New York、N.Y.
【非特許文献16】Bergら(2002)Biochemistry、5th Ed.、W.H.Freeman Pub.、New York、N.Y.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
DNA配列を検出するための、マイクロ流体のゲノム・サンプル解析システムをさらに発展させることへの関心が寄せられており、これには、反応パラメータを最大限に活用するために、マイクロ流体チャネルにおいて流速および流量をモニターするためのシステムおよび方法を発展させることへの関心が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、チャネルにおいて、詳細には、マイクロ流体チャネルにおいて、速度またはフローをモニターするシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、連続フロー・マイクロ流体システムでリアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するためのシステムおよび方法において、速度または流量をモニターするシステムおよび方法に関する。
【0018】
したがって、第1の態様において、本発明は、チャネルにおいて流速および流量をモニターするシステムを提供する。いくつかの実施形態において、システムは、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを含むチップと、マイクロ流体チャネルを通して流体を移動させるための流体移動システムと、マイクロ流体チャネル中にフロー・マーカーを導入するためのフロー・マーカー導入システムと、2つの測定ポイントを生成するための照射システムと、チャネル内の2つの測定ポイント間でフロー・マーカーの移動を測定するための検出システムと、フロー・マーカー速度を決定し、速度を流量と関係付けるためのフロー計算システムとを含む。いくつかの実施形態において、チャネルは、フロー測定領域を含む。他の実施形態において、流体移動システムは、ポンプまたは真空機器である。さらなる実施形態において、フロー・マーカー導入システムは、圧電ノズル、バブルジェット(登録商標)・ヘッド、またはシッパー(sipper)である。いくつかの実施形態において、フロー・マーカーは、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、および散乱金属粒子からなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、約5ミクロンから約500ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する。他の実施形態において、マイクロチャネルは、約20ミクロンから約400ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する。追加的な実施形態において、マイクロチャネルは、約30ミクロンから約250ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する。さらなる実施形態において、マイクロチャネルは、約150ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、チャネルのフロー測定領域は、チャネルと同じ幅である。他の実施形態において、チャネルのフロー測定領域は、チャネルの残り部分と比較してより狭い。いくつかの実施形態において、フロー測定領域におけるマイクロチャネルは、約5ミクロンから約400ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する。他の実施形態において、フロー測定領域におけるマイクロチャネルは、約10ミクロンから約200ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する。追加的な実施形態において、フロー測定領域におけるマイクロチャネルは、約20ミクロンから約100ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する。さらなる実施形態において、フロー測定領域におけるマイクロチャネルは、約40ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、照射システムは、光源を含む。いくつかの実施形態において、照射システムは、チップからの裏面反射または内部反射により、1つの光源から2つの測定ポイントを生成する。いくつかの実施形態において、光源はレーザーである。他の実施形態において、光源はLEDである。いくつかの実施形態において、検出システムは、レンズおよび検出器を含む。いくつかの実施形態において、フロー計算システムはコンピュータである。他の実施形態において、コンピュータはまた、フロー・マーカーの移動を検出するためのデータ取得速度を制御する。
【0021】
第2の態様において、本発明は、チャネルにおいて流速および流量をモニターする方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、チップ中のマイクロ流体チャネルを通して溶液を移動させること、フロー・マーカーをチャネル中に導入すること、2つの測定ポイントにおいてチャネルを照射すること、チャネル内の2つの測定ポイント間でフロー・マーカーの移動を測定すること、および光学フロー・マーカー移動速度を流量と関係付けることを含む。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、上記で説明された寸法を有する。いくつかの実施形態において、フロー・マーカーの移動は、チャネルのフロー測定領域において測定される。いくつかの実施形態において、チャネルのフロー測定領域は、チャネルと同じ幅である。他の実施形態において、チャネルのフロー測定領域は、チャネルの残り部分と比較してより狭い。いくつかの実施形態において、フロー測定領域におけるマイクロチャネルの寸法は、上記で説明された寸法を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、フロー・マーカーは、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、および散乱金属粒子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、フロー・マーカーは、注入によってチャネル中に導入されるバブルであり、バブルは、圧電ノズルによって形成される注入空気である。他の実施形態において、フロー・マーカーは、蒸気バブルを発生させるためのバブルジェット(登録商標)・ヘッドによって形成されるバブルである。
【0023】
いくつかの実施形態において、2つの測定ポイントの照射は、チップからの裏面反射または内部反射により、1つの光源から生成される。いくつかの実施形態において、光源はレーザーである。他の実施形態において、光源はLEDである。いくつかの実施形態において、照射ポイントの1つは、チップからの内部反射である。いくつかの実施形態において、反射は、チップ材料と空気との屈折率の差によって引き起こされる内部反射により、チップの裏面から自然に引き起こされる。他の実施形態において、反射は、チップの片面の反射コーティングによって、引き起こされる、または増強される。追加的な実施形態において、チップの反射コーティングは、チャネル内のフロー測定領域と相互に一体化している。いくつかの実施形態において、照射の入射の角度は、約30度から約60度である。別の実施形態において、照射の入射の角度は、好ましくは約45度である。
【0024】
いくつかの実施形態において、フロー・マーカーの測定は、蛍光を含む。他の実施形態において、照射は、励起信号である。いくつかの実施形態において、フロー・マーカーの測定は、検出システムを含む。いくつかの実施形態において、検出システムは、レンズおよび検出器を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、速度と流量との関係付けは、コンピュータによって実行される。いくつかの実施形態において、コンピュータはまた、フロー・マーカーの移動を測定するためのデータ取得速度を制御する。他の実施形態において、流量測定は、流量を調節するためのフィードバック・ループの一部である。他の実施形態において、照射は、散乱である光学信号、および/または自然なバックグラウンド信号から分離可能な反射を含む。
【0026】
本発明の上記および他の実施形態が、添付の図面を参照して、以下で説明される。
【0027】
本明細書において組み込まれ、その一部を形成する添付の図面が、本発明のさまざまな実施形態を図示する。図面において、同様の参照番号は、同一の、または機能的に類似した要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に従ったシステムを示す図である。
【図2】本発明に関連して使用されてもよい、マイクロ流体デバイスまたはチップを示す図である。
【図3】マイクロ流体チャネルに関して、本発明の実施形態に従ったシステムを示す図である。
【図4】レーザー照射の主線において気泡が見られる、マイクロ流体チャネルにおけるPCR実験中に記録された画像である。
【図5】マイクロ流体チャネルに関して、本発明の追加的な実施形態に従ったシステムを示す図である。
【図6】マイクロ流体チャネルに関して、本発明のさらなる実施形態に従ったシステムを示す図である。
【図7】本発明の実施形態に従ったプロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、いくつかの実施形態を有し、当業者に知られている詳細についての特許、特許出願、および他の参考文献に依拠する。したがって、特許、特許出願、または他の参考文献が、本明細書において引用される、または再現されるとき、それは、すべての目的のために、ならびに列挙される命題のために、その全体が参照により組み込まれることを理解されたい。
【0030】
特に指示しない限り、本発明の実施には、当技術分野の範囲内である、有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組み換え技法を含む)、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技法および説明を用いることができる。そのような従来技法には、ポリマー・アレイ合成、ハイブリダイゼーション、連結反応、および、標識を用いたハイブリダイゼーションの検出が含まれる。適切な技法の具体的な例示は、本明細書の以下の例を参照することによって得ることができる。ただし、当然のことながら、他の同等の従来手順も使用することができる。そのような従来技法および説明は、Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I−IV)、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cells:A Laboratory Manual、PCR Primer:A Laboratory Manual、およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(すべてCold Spring Harbor Laboratory Pressより)、Stryer,L.(1995)Biochemistry(4th Ed.)Freeman、N.Y.、Gait、Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach、1984、IRL Press、London、Nelson and Cox(2000)、Lehninger、Principles of Biochemistry 3rd Ed.、W.H.Freeman Pub.、New York、N.Y.、およびBergら(2002)Biochemistry、5th Ed.、W.H.Freeman Pub.、New York、N.Y.などの標準的な実験室マニュアルにおいて見出すことができ、これら全部が、すべての目的のために、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
上記で説明したとおり、本発明は、チャネルにおいて、詳細には、マイクロ流体チャネルにおいて、より詳細には、連続フロー・マイクロ流体システムでリアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するためのシステムおよび方法において、速度またはフローをモニターするシステムおよび方法を提供する。
【0032】
図1に示すように、本発明の態様は、チャネルにおいて、詳細には、マイクロ流体チャネルにおいて、流速および流量をモニターするシステムを提供する。システムは、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを含むチップ100と、マイクロ流体チャネルを通して流体を移動させるための流体移動システム104と、マイクロ流体チャネル中にフロー・マーカーを導入するためのフロー・マーカー導入システム106と、少なくとも2つの測定ポイントを生成するための照射システム112と、チャネル内の測定ポイント間でフロー・マーカーの移動を測定するための検出システム113と、フロー・マーカー速度を決定し、速度を流量と関係付けるためのフロー計算システム110とを含む。一実施形態では、流体移動システム104は、ポンプまたは真空機器である。フロー・マーカー導入システム106は、圧電ノズル、バブルジェット(登録商標)・ヘッド、またはシッパーである。フロー・マーカー導入システム106は、バルブを含む収束入口チャネルを含むことができる。フロー・マーカー導入システム106はまた、チャネルの内容物において測定可能な特性変化を誘導する指向性エネルギー源、たとえば、温度上昇を誘導するための熱源、または光化学反応を誘導するための光源を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、フロー・マーカーは、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、着色スラグ、および散乱金属粒子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、マイクロ流体チャネルは、フロー・マーカーの移動を検出するためのフロー測定領域を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、照射システム112は、レーザーである。他の実施形態において、照射システム112は、LEDである。いくつかの実施形態において、照射システム112は、ビーム分割デバイスを使用することなどによって、チャネル内の2つの測定ポイントにおいてフロー・マーカーの移動を測定するための2つの照射源を生成する。他の実施形態において、照射システム112は、レーザーまたはLEDであってよい1つの光源から2つの測定ポイントを、裏面反射によって生成し、すなわち、測定ポイントのうちの1つは、チップ100からの内部反射である。いくつかの実施形態において、反射は、チップ100の片面の反射コーティングによって、引き起こされる、または増強される。いくつかの実施形態において、チップ100の反射コーティングは、チャネル内のフロー測定領域と相互に一体化している。いくつかの実施形態において、検出システム113は、レンズおよび光検出器を含む。いくつかの実施形態において、検出システムは、たとえば、ビデオ・フレームレート・カメラなどのイメージング・システムを含む。いくつかの実施形態において、フロー計算システム110は、コンピュータである。他の実施形態において、コンピュータはまた、フロー・マーカーの移動を検出するためのデータ取得速度を制御する。
【0035】
本発明と併せて使用することができるチップの一実施形態が、図2に示されている。チップ200は、いくつかのマイクロ流体チャネル201を含む。示されている例では、32のマイクロ流体チャネルがあるが、チップ200は、32よりも多い、または少ないチャネルを有してもよいことが企図される。チップは、必要に応じて、当業者により、フロー・マーカー導入システムを含むように変更することができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体チャネル201は、約5ミクロンから約500ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する。他の実施形態において、マイクロ流体チャネル201は、約20ミクロンから約400ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する。追加的な実施形態において、マイクロ流体チャネル201は、約30ミクロンから約250ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する。さらなる実施形態において、マイクロ流体チャネル201は、約150ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する。
【0037】
図3に示すように、チップ300は、溶液の流量302を測定する/モニターするように所望される少なくとも1つのマイクロチャネル301を含む。この実施形態に示すように、マイクロチャネル301は、チャネルの残り部分と比較してより狭い、フロー測定領域314を含む。フロー測定領域314は、この領域の溶液の速度を上昇させるために、マイクロチャネル310の残り部分よりも狭く、それにより、流量/流速を計算するのに必要な測定時間を短縮することが所望されてよい。いくつかの実施形態において、マイクロ流体フローは、ある用途においては非常に遅いことがあるために、狭められたフロー測定領域314が所望される。この図に示すように、フロー測定領域314は、端部315a、315bによって、境界が定められる。
【0038】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネル301は、本明細書において説明されるような幅および深さを有する。いくつかの実施形態において、フロー測定領域314におけるマイクロチャネル301は、約5ミクロンから約400ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する。他の実施形態において、フロー測定領域314におけるマイクロチャネル301は、約10ミクロンから約200ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する。追加的な実施形態において、フロー測定領域314におけるマイクロチャネル301は、約20ミクロンから約100ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する。さらなる実施形態において、フロー測定領域314におけるマイクロチャネル301は、約40ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する。
【0039】
図3にさらに示すように、システムは、フロー・マーカーとしてのバブルを、マイクロチャネル301に注入するためのデバイス306を含む。デバイス306は、バブル発生器であってよく、バブル発生器は、蒸気バブルを形成させる強力な熱を発生させる(a)圧電空気注入ノズル、または(b)バブルジェット(登録商標)・ノズルのいずれかであってよい。バブルジェット(登録商標)・ノズルが使用される場合、知られている、かつ制御可能な大きさ/体積のバブルを発生させるために、たとえば、1Hzから1kHzの速度で繰り返し拍出してよい。
【0040】
一実施形態において、システムは、レーザー312をさらに含む。レーザーは、フロー測定領域314内のポイントAを照射する。レーザーは、チップ300の裏面から反射され、レーザー反射が、フロー測定領域314内のポイントBを照射する。マイクロ流体チップ300の裏面からの反射メカニズムは、チップ材料と空気との屈折率の差から生じる内部反射によって自然に引き起こされる。いくつかの実施形態において、反射は、たとえば、チップ300の片面の、薄い金属層または多層の誘電体コーティングなどの反射コーティングによって、引き起こされる、または増強される。いくつかの実施形態において、チップ300の反射コーティングは、チャネル内のフロー測定領域314と相互に一体化している。いくつかの実施形態において、レーザーの入射の角度(θ)は、約30度から約60度である。別の実施形態において、レーザーの入射の角度(θ)は、好ましくは約45度である。レーザーの波長は、典型的には、蛍光励起に使用される波長である。
【0041】
ポイントAおよびBを流れ過ぎるバブルによって引き起こされた光学信号が、レンズ318および検出器319を含むことができる検出システム313によって検出される。レンズ318および検出器319は、一般的に使用される蛍光イメージング・デバイスや、または、たとえば2次元のCCDまたはCMOS画像センサなどの他の知られているイメージング・デバイスであってよい。
【0042】
流速および流量は、計算システムによって計算される。流速は、ポイントAとBとの間の既知の距離を考慮して、ポイントAとBとの間の通過時間を測定することによって計算され、流量は、流速が既知になってから計算される。流速および流量を、以下の式に従って計算することができる。
流速=(AからBの距離)/通過時間
流量=(チャネル幅×チャネルの深さ)×(流速)
【0043】
動作では、フロー・バブルが、デバイス306によって、マイクロ流体チャネル301中に注入される。バブルは、チャネルに流れ下り、ポイントAにおいてレーザー312によって短く照射される。バブルは下流へと流れるので、フロー測定領域314をマイクロチャネルの残り部分の中へとバブルが出て行くポイントであるポイントBにおいて、バブルがレーザー反射によって追って照射される。レーザー照射ポイントを流れ過ぎたバブルによって引き起こされた光学信号が、外部測定機器のレンズ318および検出器319によって検出される。流速および流量は、本明細書において説明されるように計算される。
【0044】
図4は、本発明の実施形態からのデータの例を示す。この例においては、488nmの固体レーザーが使用された。使用された検出器は、Andor Technologyによって製造された、658×496ピクセルの解像度を有するEMCCD増幅イメージング検出器であった。画像2および画像3は、バブル・イメージング現象が観察されたこの実験からのデータを表す。画像2は、レーザー照射の主線に入るバブルを示し、マイクロ流体チャネル番号3において、明るいスポットとして見ることができる。画像2の底縁において目に見えるかすかなスポットは、内部反射スポットである。画像3は、画像2から遅延した時間(およそ1.5秒)に取得された画像であった。したがって、バブルは、マイクロ流体チャネルにおいてその距離を通過しており、入射レーザービームの内部反射エネルギーによって可視化されている。
【0045】
画像は、プログラムされた目的領域(範囲)(ROI)上でピクセル値を統合することができるイメージング・ソフトウェアを使用して、処理される。次いで、対時間でプロットされたROIデータが、バブルが流れ過ぎるときのピーク信号を見つけるために解析される。ピーク値は、タイミング測定を行うためのトリガ・ポイントである。通常の光揺らぎは、当技術分野でよく知られている時間バンドパス・アルゴリズムを使用して、(より速い時定数を有する)バブルから、時間フィルタにかけられる。
【0046】
本発明の別の実施形態が、図5に示されている。チップ500は、流量502を測定する/モニターするように所望される少なくとも1つのマイクロチャネル501を含む。この実施形態に示すように、マイクロチャネル501は、狭められていないフロー測定領域514を含む。この図に示すように、フロー測定領域514は、端部515a、515bによって、境界が定められる。さらに図5に示すように、システムは、フロー・マーカーとしてのバブルを、マイクロチャネル501中に注入するためのデバイス506を含む。デバイス506は、本明細書において説明されるようなバブル発生器であってよい。システムは、レーザー512をさらに含む。レーザーは、フロー測定領域514内のポイントAを照射する。レーザーは、チップ500の裏面から反射され、レーザー反射が、フロー測定領域514内のポイントBを照射する。反射メカニズムは、本明細書において説明されるように引き起こされてよい。レーザーの入射の角度(θ)は、本明細書において説明されるようであってよい。ポイントAおよびBを流れ過ぎるバブルによって引き起こされた光学信号が、レンズ518および検出器519を含むことができる検出システム513によって検出される。レンズ518および検出器519は、本明細書において説明されるようであってよい。流速および流量が、本明細書において説明されるように計算される。
【0047】
本発明の別の実施形態が、図6に示されている。チップ600は、流量602を測定する/モニターするように所望される少なくとも1つのマイクロチャネル601を含む。この実施形態に示すように、マイクロチャネル601は、チャネルの残り部分よりも狭いフロー測定領域614を含む。この図に示すように、フロー測定領域614は、端部615a、615bによって、境界が定められる。さらに図6に示すように、システムは、レーザー612をさらに含む。レーザーは、フロー測定領域614内のポイントAを照射する。レーザーは、チップ600の裏面から反射され、レーザー反射が、フロー測定領域614内のポイントBを照射する。反射メカニズムは、本明細書において説明されるように引き起こされてよい。レーザーの入射の角度(θ)は、本明細書において説明されるようであってよい。ポイントAおよびBを流れ過ぎるマーカーによって引き起こされた光学信号が、レンズ618および検出器619を含むことができる検出システム613によって検出される。レンズ618および検出器619は、本明細書において説明されるようであってよい。流速および流量が、本明細書において説明されるように計算される。この実施形態では、マーカーは、マイクロチャネル601中に導入される、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、および散乱金属粒子であってよい。マーカーは、たとえば、当技術分野で一般的であるようにチップ600の一部である、または当技術分野で一般的であるようにチップ600と組み合わせて利用される、シッパー(図示せず)によって、マイクロチャネル601中に導入されてよい。
【0048】
本発明はまた、チャネルにおいて流速および流量をモニターする方法も提供する。いくつかの実施形態において、方法は、チップ中のマイクロ流体チャネルを通して溶液を移動させること、フロー・マーカーをチャネル中に導入すること、2つの測定ポイントにおいてチャネルを照射すること、チャネル内の2つの測定ポイント間でフロー・マーカーの移動を測定すること、および光学フロー・マーカー移動速度を流量と関係付けることを含む。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、本明細書において説明された寸法を有する。いくつかの実施形態において、フロー・マーカーの移動は、チャネルのフロー測定領域において測定される。いくつかの実施形態において、チャネルのフロー測定領域は、チャネルと同じ幅である。他の実施形態において、チャネルのフロー測定領域は、チャネルの残り部分と比較してより狭い。いくつかの実施形態において、狭められたフロー測定領域におけるマイクロチャネルの寸法は、本明細書において説明された寸法を有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、フロー・マーカーは、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、および散乱金属粒子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、フロー・マーカーは、注入によってチャネル中に導入されるバブルであり、バブルは、圧電ノズルによって形成される注入空気である。他の実施形態において、フロー・マーカーは、蒸気バブルを発生させるためのバブルジェット(登録商標)・ヘッドによって形成されるバブルである。さらなる実施形態では、フロー・マーカーは、シッパーによってチャネル中に導入される、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、および散乱金属粒子である。
【0050】
いくつかの実施形態において、2つの測定ポイントの照射は、裏面反射による1つの光源から生成される。いくつかの実施形態において、光源はレーザーである。他の実施形態において、光源はLEDである。いくつかの実施形態において、照射ポイントの1つは、チップからの内部反射である。いくつかの実施形態において、反射は、チップ材料と空気との屈折率の差によって引き起こされる内部反射により、チップの裏面から自然に引き起こされる。他の実施形態において、反射は、チップの片面の反射コーティングによって、引き起こされる、または増強される。追加的な実施形態において、チップの反射コーティングは、チャネル内のフロー測定領域と相互に一体化している。いくつかの実施形態において、照射の入射の角度は、約30度から約60度である。別の実施形態において、照射の入射の角度は、好ましくは約45度である。
【0051】
いくつかの実施形態において、チャネル内のフロー・マーカーの測定は、蛍光を含む。他の実施形態において、照射は、励起信号である。いくつかの実施形態において、光学励起信号は、チャネル内のフロー測定領域内の2つのポイントにおいてフロー・マーカーの移動を測定するための、照射の2つの源を生成するレーザーである。照射の2つの源を、ビーム分割デバイスを使用することによって、作成することができる。いくつかの実施形態において、検出システムは、レンズおよび検出器を含む。いくつかの実施形態において、光学検出は、散乱である光学信号、および/または自然なバックグラウンド信号から分離可能な反射を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、速度の計算、および速度と流量との関係付けは、コンピュータによって実行される。いくつかの実施形態において、コンピュータはまた、フロー・マーカーの移動を測定するためのデータ取得速度を制御する。他の実施形態において、流量測定は、流量を調節するためのフィードバック・ループの一部である。
【0053】
図7は、本発明の実施形態に従ったプロセス700を示す流れ図である。プロセス700は、少なくとも1つのマイクロチャネルを有するチップ100における流体フローが、流体移動システム104によってアクティブな状態にされた、ステップ702で開始することができる。ステップ704で、本明細書では時にフロー測定領域と呼ばれるチャネル領域をモニターするように設定される検出システム113から、光学データが取得され、ベースライン信号が確立される。ステップ706で、気泡が、フロー・マーカー導入システム106によってチャネル中に導入される。
【0054】
ステップ708で、光学データが、検出システム113から取得される。ステップ710で、データの解析が、ロケーション1におけるバブルの特徴が検出され、第1のタイムスタンプが、この検出に関連付けられる。
【0055】
ステップ712で、光学データが、検出システム113から取得される。ステップ714で、データの解析が、ロケーション2におけるバブルの特徴が検出され、第2のタイムスタンプが、この検出に関連付けられる。
【0056】
ステップ716で、流体の流速が、フロー計算システム110によって計算され、流体の流量もまた計算されてよい。ステップ718で、次いで流速および/または流量が、チャネル内で実施されている反応の仕様内にあるかどうかを判定するために問い合わせられる。ステップ718における問い合わせの答えが肯定である場合、ステップ720で、適切な時間遅延の後に、開始ステップ706により連続して反復されるモニタリングのために、時間遅延を提供する。
【0057】
ステップ718における問い合わせの答えが否定である場合、ステップ722が開始される。ステップ722で、流速値が、フロー較正アルゴリズムと比較される。ステップ724で、必要なフロー調整が計算される。ステップ726で、流体フローは、流体移動システム104によって、必要な調整量分だけ調整される。ステップ728で、流量が、開始ステップ706によって検証される。
【0058】
本発明は、いくつかの利点を有する。たとえば、本発明のこれらの態様は、(1)マイクロ流体フロー・パス中に注入される、バブルなどの不活性物質を使用すること、(2)内部反射の特性を利用して第2の測定ゾーンを作成し、したがって、より単純な光学設計を有すること、(3)たとえば、リアルタイムPCRで蛍光をモニターするといった別の主目的を有する同じ光学システムと共有することができるフロー測定光学システムを利用すること、および(4)バブルが使用される場合に、独立した波長であるフロー測定システムを利用することを含む。
【0059】
本発明を説明するコンテキスト(特に以下の特許請求の範囲のコンテキスト)における、用語「a」および「an」、「the」、ならびに同類の指示対象の使用は、本明細書において特に指示しない限り、またはコンテキストによって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包むように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「収容する(containing)」は、特に言及しない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、限定はしない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において特に指示しない限り、その範囲内に入るそれぞれ分離した値に個別に言及する簡便な方法としての働きをすることを単に意図しており、それぞれの分離した値は、本明細書において個別に列挙されたかのように、本明細書に組み込まれる。たとえば、範囲10〜15が開示されている場合、11、12、13、および14もまた開示される。本明細書において説明されるすべての方法は、本明細書において特に指示しない限り、またはコンテキストによって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序において実施されてよい。本明細書において提供される任意のおよびすべての例の使用、または例示的な語(たとえば「など」)は、本発明をよりよく照らすことを単に意図しており、特に主張しない限り、本発明の範囲に限定を与えるものではない。本明細書におけるいかなる語も、特許請求されないあらゆる要素を、本発明の実施に必須であるとして示さないものと解釈されるべきである。
【0060】
本発明の方法および構成要素は、本明細書において開示されているのはそのうちのいくつかにすぎない、さまざまな実施形態の形で組み込まれてもよいことが理解されるであろう。それらの実施形態の変形形態は、前述の説明を読めば、当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を適切に利用することを期待しており、本明細書において詳細に説明したものとは別のやり方で、本発明が実施されることを意図している。さらに、そのすべての考え得る変形形態における、上記で説明した要素のいかなる組合せも、本明細書において特に指示しない限り、またはコンテキストによって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体チャネルにおいて溶液の速度をモニターするためのシステムであって、
(a)少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを含むチップと、
(b)前記マイクロ流体チャネルを通して流体を移動させるための流体移動システムと、
(c)前記マイクロ流体チャネル中にフロー・マーカーを導入するためのフロー・マーカー導入システムと、
(d)少なくとも2つの測定ポイントを生成するための照射システムと、
(e)前記マイクロ流体チャネル内の前記少なくとも2つの測定ポイント間で前記フロー・マーカーの移動を測定するための検出システムと、
(f)フロー・マーカー速度を決定し、前記フロー・マーカー速度を流量と関係付けるためのフロー計算システムと
を含むシステム。
【請求項2】
前記照射システムが、裏面反射によって、1つの光源から前記少なくとも2つの測定ポイントを生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光源がレーザーである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光源がLEDである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記マイクロ流体チャネルが、フロー測定領域を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記マイクロ流体チャネルの前記フロー測定領域の少なくとも一部が、前記マイクロ流体チャネルの前記フロー測定領域以外の部分と比較してより狭い、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記流体移動システムが、ポンプまたは真空機器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記フロー・マーカー導入システムが、圧電ノズル、バブルジェット(登録商標)・ヘッド、シッパー、バルブを含む収束入口チャネル、または指向性エネルギー源を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記フロー・マーカーが、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、着色スラグ、および散乱金属粒子からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記マイクロ流体チャネルが、約5ミクロンから約500ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記マイクロ流体チャネルが、約20ミクロンから約400ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記マイクロ流体チャネルが、約30ミクロンから約250ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記マイクロ流体チャネルが、約150ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約5ミクロンから約400ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約10ミクロンから約200ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約20ミクロンから約100ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約40ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記フロー・マーカー速度を決定し、前記フロー・マーカー速度を前記流量と関係付けるための前記フロー計算システムが、コンピュータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記コンピュータがまた、前記フロー・マーカーの移動を検出するためのデータ取得速度を制御する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
マイクロ流体チャネルにおいて溶液の速度をモニターする方法であって、
(a)チップ中のマイクロ流体チャネルを通して溶液を移動させること、
(b)フロー・マーカーを前記マイクロ流体チャネル中に導入すること、
(c)2つの測定ポイントにおいて前記マイクロ流体チャネルを照射すること、
(d)前記マイクロ流体チャネル内の前記2つの測定ポイント間で前記フロー・マーカーの移動を測定すること、および
(e)光学フロー・マーカー移動速度を流量と関係付けること
を含む方法。
【請求項21】
前記2つの測定ポイントが、裏面反射によって、1つの光源から生成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光源がレーザーである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光源がLEDである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記裏面反射が、前記チップの片面の反射コーティングによって引き起こされる、または増強される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記チップの前記反射コーティングが、前記マイクロ流体チャネル内のフロー測定領域と相互に一体化している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記マイクロ流体チャネルの照射の入射の角度が、約30度から約60度である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記マイクロ流体チャネルの照射の入射の角度が、約45度である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記フロー・マーカーの移動が、前記マイクロ流体チャネルのフロー測定領域において測定される、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記マイクロ流体チャネルの前記フロー測定領域が、前記マイクロ流体チャネルの前記フロー測定領域以外の部分と比較してより狭い、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記フロー・マーカーが、バブル、半導体量子ドット、ポリマー・マイクロビーズ、蛍光粒子、着色スラグ、および散乱金属粒子からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記フロー・マーカーが、注入によって前記マイクロ流体チャネル中に導入されるバブルであって、前記バブルが、圧電ノズルにより形成される注入空気である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記フロー・マーカーが、蒸気バブルを発生させるためのバブルジェット(登録商標)・ヘッドによって形成されるバブルである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記マイクロ流体チャネルが、約5ミクロンから約500ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
前記マイクロ流体チャネルが、約20ミクロンから約400ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記マイクロ流体チャネルが、約30ミクロンから約250ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記マイクロ流体チャネルが、約150ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約5ミクロンから約400ミクロンの幅、および約1ミクロンから約100ミクロンの深さを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約10ミクロンから約200ミクロンの幅、および約5ミクロンから約50ミクロンの深さを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約20ミクロンから約100ミクロンの幅、および約10ミクロンから約20ミクロンの深さを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記フロー測定領域における前記マイクロ流体チャネルが、約40ミクロンの幅、および約10ミクロンの深さを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記フロー・マーカーの移動の測定が、蛍光を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項42】
前記マイクロ流体チャネルの照射が、励起信号である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記マイクロ流体チャネルが、光学クリア・ガラス、石英、またはプラスチックから制作される、請求項20に記載の方法。
【請求項44】
前記光学フロー・マーカー移動速度と前記流量との関係付けが、コンピュータによって実行される、請求項20に記載の方法。
【請求項45】
前記コンピュータがまた、前記フロー・マーカーの移動を測定するためのデータ取得速度を制御する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記流量の測定が、前記流量を調節するためのフィードバック・ループの一部である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記流量の測定が、前記流量を調節するためのフィードバック・ループの一部である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記マイクロ流体チャネルの照射が、散乱である光学信号、および/または自然なバックグラウンド信号から分離可能な反射を含む、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−515558(P2012−515558A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548176(P2011−548176)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/021933
【国際公開番号】WO2010/085727
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(507028217)キヤノン ユー.エス. ライフ サイエンシズ, インコーポレイテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S. LIFE SCIENCES, INC.
【住所又は居所原語表記】9800 Medical Center Drive Suite A−100 Rockville,Maryland 20850 U.S.A.
【Fターム(参考)】