説明

モニタ用ハウジング

【課題】従来よりもモニタ用ハウジングの小型化を図り、モニタや保護用窓の点検や清掃を簡単に行えるモニタ用ハウジングを提供する。
【解決手段】モニタ用ハウジングは、ハウジング本体、昇降台、液晶モニタを収容するモニタケースを備える。ハウジング本体は、箱型形状をなし、ハウジング本体の前面板は、所定の前傾角度を有して前傾姿勢をとる。昇降台は、ハウジング本体内に収納されている第1の位置と、該第1の位置から垂直方向下方の第2の位置の間を移動可能に形成される。モニタケースは、液晶モニタを収容し得るように、箱型形状に形成される。モニタケースの前面板には、液晶モニタの表示画面を保護する保護用窓が取り付けられるとともに、モニタケースは、また、昇降台の前方において、昇降台に対して回動可能に連結される。モニタケースは、昇降台が第1の位置にあるとき、前傾位置にあり、昇降台が第2の位置にあるとき、直立位置にあるように回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタ用ハウジング内に収納されているTVモニタのメンテナンスを行う時に、TVモニタをモニタ用ハウジングから取り出すための昇降機構を備えるモニタ用ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
駅の舎屋、階段、およびホームなどにおける乗降客の安全を図るために、TVモニタとしてのCCTVがこれら舎屋や階段あるいはホームなどに設置されている。TVモニタとしてのCCTVは、特に、ホームなどに設置される場合、ホーム上に約2.5mの高さの高い位置に設置される。このように高い位置に設置されるCCTVのメンテナンスを安全且つ効率的に行うために、モニタ用ハウジング内に収容されているTVモニタを所定の位置まで下降させることが可能な昇降機構を備えるモニタ用ハウジングが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−359020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例としての特許文献1のTVモニタ昇降機構は、TVモニタとしての液晶モニタを前傾姿勢に固定したままで昇降(上下動)させている。それにより、モニタ用ハウジングの奥行方向に無駄なスペースが生じてしまい、CRTに代えて薄型の液晶モニタを採用しているメリットが十分に生かされていない。
【0005】
具体的には、モニタ用ハウジングを高い位置に設置するので、液晶モニタの視野角特性に配慮してモニタ表示面を前傾させる必要がある。特許文献1のモニタ用ハウジングにおいては、液晶モニタを移動ベース上に前傾姿勢のまま固定して昇降動作を行わせているので、移動ベースの奥行方向のサイズは、液晶モニタの厚さに加えて前傾により生じる奥行方向のスペースも確保しなければならない。結果として、液晶モニタを収容するモニタ用ハウジングを大型化させてしまうという問題が生じる。
【0006】
また、特許文献1のTVモニタ昇降機構は、液晶モニタだけを下降させるので、保護用窓は、モニタ用ハウジング側に取り残されたままとなる。したがって、保護用窓を清掃するような場合には、例えば脚立を用意して作業しなければならず、メンテナンス性に改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、液晶モニタの薄さを生かして従来よりもモニタ用ハウジングの小型化を図るとともに、液晶モニタや保護用窓の点検や清掃も簡単に行えるモニタ用ハウジングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るモニタ用ハウジングは、ハウジング本体、昇降台および液晶モニタを収容するモニタケースを備えることを特徴とする。ハウジング本体は、天面板、底面板、前面板、後面板、および左右一対の側面板から形成される箱型形状をなし、ハウジング本体の前面板は、所定の前傾角度θを有して前方方向下方に向って傾斜している。言い換えると、ハウジング本体の前面板は、所定の前傾角度θを有して前傾姿勢をとっている。ハウジング本体は、前面板に形成されている前面開口部および底面板に形成されている底面開口部を介して前方および下方に向って開放されている。昇降台は、ハウジング本体の底面板に設けられている底面開口部に嵌合することで前記ハウジング本体内に収納される。昇降台は、また、ハウジング本体内に収納されている第1の位置と、該第1の位置から垂直方向下方であって、ハウジング本体から取り出された第2の位置の間を移動可能に形成されている。モニタケースは、液晶モニタを収容し得るように、底面板、前面板、後面板、および左右一対の側面板から形成される箱型形状に形成される。モニタケースの前面板には、液晶モニタの表示画面を保護する保護用窓が取り付けられているとともに、モニタケースは、また、昇降台の前方において、昇降台に対して回動可能に連結されている。モニタケースは、昇降台が第1の位置にあるとき、保護用窓がハウジング本体の前面開口部に接触する前傾位置にあり、昇降台が第2の位置にあるとき、昇降台に対して直交する直立位置にあるように回動する。
【0009】
本発明に係るモニタ用ハウジングの1つの実施形態においては、モニタケースの左右一対の側面板の少なくとも一方の側面板には、モニタケースの少なくとも一方の側面板に隣接するハウジング本体の左右の側面板のいずれか一方の側面板に向って突出するように形成されているピンが、モニタケースの少なくとも一方の側面板に対して直交するように設けられることが好ましい。また、ピンを案内するガイド機構として、ハウジング本体の左右一対の側面板の前記いずれか一方の側面板には、ハウジング本体の前面板の前記傾斜角度θよりも大きい角度を有して前傾する第1のガイド板が、いずれか一方の側面板に対して直交するように設けられる。昇降台が第1の位置と第2の位置との間で移動するとき、モニタケースに設けられたピンがハウジング本体に設けられている第1のガイド板に沿って移動することにより、モニタケースを前傾位置と直立位置との間で回動させる。
【0010】
本発明に係るモニタ用ハウジングの1つの実施形態においては、さらに、昇降台の左右両端部に、一対の支持部材が設けられることが好ましい。そして、該一対の支持部材の少なくとも一方の支持部材と、この少なくとも一方の支持部材に対応するモニタケースの左右一対の側面板のいずれか一方の側面板と、の間には、モニタケースが前傾位置と直立位置との間でのみ回動することを規制する姿勢規制部材、およびモニタケースを常に直立位置に向って回動する方向に付勢する弾性部材、が設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るモニタ用ハウジングは、液晶モニタを収容するモニタケースがハウジング本体内に収納された第1の位置としての収納位置において前傾位置にある。それにより、下から見上げる利用者にとって、液晶モニタの表示画面に映し出される画像が見やすくなる。本発明に係るモニタ用ハウジングは、また、点検時等において、昇降台を第2の位置としての下降位置に下降させるとき、液晶モニタを収容するモニタケースが直立位置にあるように構成される。それにより、昇降台の前後寸法が小さくでき、昇降台に移動を容易にするばかりでなく、モニタ用ハウジング全体の寸法も小さくすることができる。また、モニタケースが昇降台に対して回動(揺動)可能であるので、点検や清掃なども容易に行うことができる。
【0012】
さらに、本発明に係るモニタ用ハウジングは、保護用窓をモニタケースに取り付けるようにしているので、昇降台の下降時、保護用窓も一緒に第2の位置まで下降するので、保護用窓の交換や清掃も危険のない状態で容易にできる。また、保護用窓もモニタケースの前傾に伴い前傾するので、該保護用窓に埃などが付着し難くなるという作用効果も期待できる。
【0013】
さらに、保護用窓が設けられたモニタケースは、姿勢規制部材、弾性部材、およびガイド機構の協同により、容易に且つ確実に前傾位置と直立位置との間を移動し得るとともに、モニタケースの保護用窓は、ハウジング本体の前面板またはそれに取り付けられている窓枠に損傷することなく確実に接触し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るモニタ用ハウジングの概略分解斜視図である。
【図2】TVモニタの昇降の態様を示す図1のモニタ用ハウジングの側部断面図であって、(a)は、モニタ用ハウジングのハウジング本体内にTVモニタが収納されている状態を示し、(b)は、TVモニタがハウジング本体内から下降した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および2に示されるように、本発明に係るモニタ用ハウジング10は、概略、ハウジング本体20、昇降台40およびTVモニタとしての液晶モニタ70を収容するモニタケース50を備えている。
【0016】
最初に、ハウジング本体20について説明する。ハウジング本体20は、金属製またはプラスチック製であって、支持ロッド11を介して、例えば、舎屋やホームの天井などに固定されている。ハウジング本体20は、概略、箱型形状をなし、天面板21、左右の側面板22、22、前面開口部23aを有する前面板23、後面板24、および底面開口部25aを有する底面板25を備えている。ハウジング本体20は、前面開口部23aおよび底面開口部25aを介して、それぞれ、前方及び下方に向けて開放している。ハウジング本体20には、さらに、液晶モニタ70への光の入射を防止するために、前面板23の外周を囲むように、フード部材29が設けられることが好ましい。
【0017】
ハウジング本体20の天面板21には、支持ロッド11との連結部を覆うカバー部材12が設けられている。天面板21の下側(内側)には、上記特許文献1と同様に、後述する昇降第40を上下動させるための昇降ストッパ機構(不図示)の一端が取り付けられるブラケット27が設けられている。ブラケット27は、支持ロッド11に対応して天面板21の内側に取り付けられることが好ましい。
【0018】
ハウジング本体20の前面板23は、天面板21に連結する部分が底面板25に連結する部分より前方に位置するように上方および前方に向って傾斜して、すなわち前傾姿勢をとってハウジング本体20に取り付けられる。前面板23には、前方に向って開放する概略矩形状の前面開口部23aが形成されている。該前面開口部23aには、後述するモニタケース50の前面板51に形成された開口部51aと略同じ大きさ(面積)を有する概略矩形状の開口部26aを備える窓枠26が設けられている。窓枠26は、前面板23の前面開口部23a後方に取り付けられる。窓枠26は、前面板23に対して平行であってもよいし、平行でなくてもよいが、前面板23と同様に前傾姿勢をとるように構成される。窓枠26には、後述するように、TVモニタとしての液晶モニタ70がハウジング本体20内に収納されたとき、モニタ用ハウジング10としての表示画面71が窓枠26と平行に配置される。窓枠26は、垂直線に対して約20°の前傾角度θを持って前傾していることが好ましい。窓枠26の前傾角度θは、本実施形態のように20°に限られるものではなく、要は、TVモニタ70の表示画面71を見上げる人の想定される平均的目線とTVモニタ70の表示画面71とのなす角度が概略直角になるように、設定される。すなわち、窓枠26(したがって、TVモニタ70表示画面71)の前傾角度θは、TVモニタ70を見上げる人の想定される平均的目線の仰角θと略同じに設定される。なお、本実施形態では、前面板23の前面開口部23aは、周囲を該前面板23に対して直角をなす板状壁で囲まれるように形成されているが、このような板状壁は省略されてもよい。この場合、前面板23は、モニタケース50の前面板51に形成された開口部51aと略同じ大きさ(面積)の前面開口部23aを有する窓枠として形成される。この場合、前面板23は、前傾角度θを有して前傾して形成されることは言うまでもない。
【0019】
ハウジング本体20の左右の側面板22、22には、後述するモニタケース50の左右の側面板52、52に設けられたピン55を案内するガイド機構30が対をなして形成される。本実施形態では、ガイド機構30は、第1のガイド板31と第2のガイド板32を含んでいる。
【0020】
第1のガイド板31は、上昇するモニタケース50のピン55が下から当接し、当接後は、第1のガイド板31に沿って上昇し得るように、所定の長さを持って側面板22に対して直角をなし且つ前傾して側面板22に固定される。第1のガイド板31の傾斜角度は、窓枠26の傾斜角度θと同じかそれより大きくなるように設定される。
【0021】
第2のガイド板32は、傾斜部32aと垂直部32bを含んでいる。第2のガイド板32の傾斜部32aは、モニタケース50のピン55がそれらの間を移動できるように、第1のガイド板31との間に間隔を有し、該第1のガイド板31と平行に且つ第1のガイド板31の下方に配置される。第2のガイド板32の垂直部32bは、傾斜部32aの下端から垂直方向下方に向って延在する。第2のガイド板32は、液晶モニタ70を収納するモニタケース50が昇降時何らかの要因で急激に倒れて、窓枠26に衝突し、保護用窓60や液晶モニタ70が損傷することを防止する。第2のガイド板32は、また、モニタケース50が収納されるとき、上昇してくるピン55が第1のガイド板31に確実に当接するように案内するように設けられている。したがって、これらの必要がなければ省略されてもよい。また、本実施形態では、ガイド機構30は、ハウジング本体20の左右の側面板22に1つずつ、対をなして設けられているが、モニタケース50の安定したガイドが期待できるのであれば、どちらか一方の側面板22に設けられることを省略してもよい。
【0022】
ハウジング本体の底面板25には、下方に向って開放する概略矩形状の底面開口部25aが形成され、該底面開口部25aには、後述する昇降台40が嵌合する。したがって、底面開口部25aの大きさは、昇降台40の大きさより若干大きい。底面板25の底面開口部25aは、昇降台40が底面開口部25a内に嵌合したとき、昇降台40の底面と底面板25の下面とが面一になるように形成されることが好ましい。
【0023】
なお、図2に示される14は、ハウジング本体20の後面板24に沿って設けられる断面概略U字形のスライドチャンネルの一方のチャネルである。該スライドチャンネル14は、後述する昇降台40に設けられている他方のスライドチャンネル44に嵌合し、入れ子式に摺動することができるように構成されている。スライドチャンネル14および44は、昇降ストッパ機構(不図示)による昇降台40の昇降を案内する(昇降ストッパ機構の詳細は、上記特許文献1参照)。
【0024】
続いて、昇降台40に付いて説明する。昇降台40は、図2(a)、(b)に示されるように、金属製またはプラスチック製であって、上面40aの形状が概略矩形状の扁平な台座である。昇降台40には、断面略逆U字形の、すなわち、下方に向って開放された凹部が形成されている。昇降台40は、ハウジング本体10内に収納されるTVモニタ70の台数分(本実施形態では、1台分)の長さより若干長く、図2(a)の紙面と垂直な方向(左右方向)に延在している。
【0025】
昇降台40の上面40a前方には、それを介して後述するモニタケース50が前後方向に揺動できるように、前傾用軸46が設けられている。前傾用軸46は、昇降台40の上面40aに若干の間隔を空け、且つ平行であって、紙面に垂直方向(左右方向)に延在し、昇降台40の左右両端部に設けられた一対の支持用ブラケット(不図示)を介して昇降台40に一体的に固定され、支持されている。昇降台40の上面後方には、ハウジング本体20に対する昇降台40の昇降(上下動)を確実にするために、ハウジング本体20の後面板24に沿って設けられたスライドチャンネル14に入れ子式に摺動し得る他方のスライドチャンネル44が取り付けられている。
【0026】
また、昇降台40の左右両側には、概略矩形状の板体からなる支持部材41が昇降台40の上面40aに対して垂直をなすように、対をなして一体的に取り付けられている。対をなす支持部材41それぞれの上端には、ブラケット(不図示)を有する連結部材(不図示)が設けられている。該連結部材のブラケットとハウジング本体20の天面板21の内側に設けられているブラケット27との間には、上記特許文献1と同様の昇降ストッパ機構(不図示)が設けられており、昇降台40の昇降すなわち垂直方向すなわち上下方向の移動を可能にしている。さらに、昇降台40の下面側凹部には、図示されていないが、例えば、特許文献1に示されるようなロック機構(不図示)が設けられている。該ロック機構は、昇降台40が底面板25の底面開口部25a内に嵌合したとき(すなわち、ハウジング本体20内に収納されたとき)、該昇降台40を底面開口部25a内に固定支持するように構成されている。
【0027】
昇降台40は、スライドチャネル14、44、昇降ストッパ機構(不図示)およびロック機構(不図示)などを介して、ハウジング本体20内に収納されている第1の位置と、ハウジング本体20から取り出された第2の位置との間で昇降可能に形成されている。第2の位置は、具体的には、図2(b)から理解されるように、第1の位置から垂直方向下方の所定の位置(例えば、ホーム上の高さ1.2mの位置)である。
【0028】
昇降台40の左右両側に設けられた一対の支持部材41と対応するモニタケース50の左右の側面板52、52との間には、その上方領域に、姿勢規制部材42が、その下方領域に、弾性部材43が、本実施形態では、それぞれ、対をなして設けられている。
【0029】
姿勢規制部材42は、案内部材421およびスライダ425を備えている。案内部材421は、これに限定されるものではないが、断面略U字形の細長い溝形状をなし、前後方向に延在し、細長い溝が内側に向って(対向する案内部材421に向って)開放するように支持部材41に固定されている。また、案内部材421の細長い溝の底面の前方には、内側に向って突出するストッパピン423が形成されている。図2(a)および(b)に示されるように、案内部材421の細長い溝内には、スリット427を有するスライダ425が該細長い溝内を前後方向に移動可能に嵌め込まれている。スライダ425のスリット427は、スライダ425を貫通するとともに、所定の長さを有して前後方向に延在している。スライダ425は、また、その前端部において、モニタケース50の第1の連結部52aに回動自在に連結されている。さらに、スライダ425のスリット427内には、案内部材421のストッパピン423がスリット427内を前後方向に移動自在に嵌め込まれ、それにより、スライダ425の前後方向の移動を規制する。
【0030】
姿勢規制部材42によるモニタケース50の移動の規制について以下に具体的に説明する。昇降台40したがってモニタケース50が、図2(b)に示される下降した第2の位置から、図2(a)に示される第1の位置まで上昇し、ハウジング本体20内に収納されるとき、スライダ425は、案内部材421の細長い溝に沿って退避位置から前進する。スライダ425の前進により、ガイド機構30に案内されるモニタケース50の前方への回動(図2(b)において、反時計回りの回動)が許容される。スライダ425がさらに前進し、該スライダ425のスリット427の後端部がストッパピン423に当接することで、スライダ425の前進動作が拘束されるとともに、モニタケース50の前方への回動も停止される。このとき、モニタケース50に取り付けられている保護用窓60が、前面開口部23aに設けられた窓枠26にちょうど接触した状態にある。逆に、図2(a)の収納位置から、図2(b)に示されるように、モニタケース50がハウジング本体20から取り出されて下降するとき、すなわち、第1の位置から第2の位置へ移動するとき、スライダ425は、案内部材421の細長い溝に沿って退避位置に向って後退する。それにより、モニタケース50の後方への回動(図2(a)において、時計回りの回動)が許容される。スライダ425がさらに後退し、スライダ425のスリット427の前端部がストッパピン423に当接することで、スライダ425の後退動作が拘束されるとともに、モニタケース50の後方への回動が停止される。このとき、モニタケース50は、昇降台に対して直交する直立位置にある。
【0031】
弾性部材43は、前端部をモニタケース50の第2の連結部52bに回動自在に連結され、後端部を支持部材41に回動自在に連結、支持される。弾性部材43は、モニタケース50が常に後方に向って(図2(a)において、時計回りに)回動する方向、すなわちモニタケース50が直立位置に向って回動する方向に付勢している。弾性部材43は、本実施形態のように圧縮コイルバネであることが好ましいが、これらに限られるものではない。
【0032】
本実施形態では、姿勢規制部材42および弾性部材43は、対をなす支持部材41の両方に設けられているが、設計上可能であれば対をなす支持部材41のいずれか一方に設けられてもよい。なお、モニタケース50内にTVモニタとしての液晶モニタ70が複数収容される場合、本実施形態のように、一対の支持板41の両方に設けられたほうが、モニタケース50の回動動作を確実に且つ安定して行うことができる。
【0033】
次に、TVモニタとしての液晶モニタ70を収容するモニタケース50について説明する。モニタケース50は、ハウジング本体20および昇降台40と同様に、金属製またはプラスチック製であって、液晶モニタ70が収容され得る収容空間を有する中空の箱型形状をなし、少なくとも、上方に向って開放している。したがって、液晶モニタ70は、組み立て時、モニタケース50の上方から挿入され、収容される。モニタケース50は、前面板51、左右の一対の側面板52、52、後面板53および底面板54を含んでいる。モニタケース50は、該モニタケース50内に1以上(本実施形態では、1つ)の液晶モニタ70が左右方向に並列して収容できるように、図2(a)または(b)が示される紙面に対して垂直方向(左右方向)に延在している。2以上、すなわち、複数の液晶モニタ70が収容される場合、モニタケース50の収容空間内には、隣接する液晶モニタ70がぶつからないように仕切り壁が設けられることが好ましい。
【0034】
モニタケース50の前面板51には、前方に向って開放する概略矩形状の開口部51aが形成されるとともに、開口部51aの大きさに対応し、該開口部51aの全面を覆うように、透明なアクリル板から形成される保護用窓60が取り付けられる。開口部51aは、液晶モニタ70の表示画面71より若干大きい面積を有することが好ましい。なお、液晶モニタ70がモニタケース50内に2以上収容される場合、該開口部51aは、各液晶モニタ70の表示画面71の面積の合計より若干大きい面積を有するように形成される。この場合、液晶モニタ70がモニタケース50の収容空間内に並列に配置されているので、開口部51aは、左右方向に長く延びた形状となる。保護用窓60は、モニタケース50の前面板51に対して着脱自在に取り付けられている。モニタケース50の前面板51の下端部は、昇降台40に設けられた前傾用軸46を中心としてモニタケース50が回動または揺動可能となるように、前傾用軸46に連結されている。したがって、モニタケース50は、昇降台40の昇降に連動して昇降するとともに、後述するように回動することが可能であるように形成されている。
【0035】
モニタケース50の左右用側面板52、52には、所定の位置に、それぞれ、外側に向って(ハウジング本体20の隣接する側面板22に向って)突出するピン55が形成される。ピン55は、モニタケース50の左右の側面板52にそれぞれに対して直交するように設けられており、ハウジング本体20の側面板22に設けられているガイド機構30と協同する。具体的には、図2(b)に示されるように、直立位置にあるモニタケース50が昇降台40とともに上昇し、ハウジング本体20内に収納されるとき、ガイド機構30の第1のガイド板31に当接する。昇降台40がさらに上昇すると、ピン55は、第1および第2のガイド板31、32の間であって、通常、第1のガイド板31に沿って案内され、それにより、モニタケース50を弾性部材43の付勢力に抗して前傾させる。結果として、モニタケース50は、該モニタケース50に設けられている保護用窓60が窓枠26に接触するまで傾斜し、収納中は、その傾斜位置を維持する。
【0036】
モニタケース50の左右用側面板52、52には、さらに、所定の位置に、姿勢規制部材42のスライダ425の前端部と連結する第1の連結部52aおよび弾性部材43の前端部と連結する第2の連結部52bが設けられている。第1の連結部52aは、スライダ425と、また、第2の連結部52bは、弾性部材43と、それぞれ、互いに対して回動自在に連結されている。
【0037】
モニタケース50は、このように、ガイド機構30、姿勢規制部材42および弾性部材43を備えることにより、モニタケース50は、その昇降動作に伴い、第1の位置としての前傾位置と第2の位置としての直立位置との間を安定して揺動し得る。また、本実施形態ではモニタケース50内に収容されるTVモニタとして薄くて軽い液晶モニタ70を採用している。モニタケース50がこのような構成を備えることで、モニタケース50を含む昇降台40の大きさも小型化が可能であるとともにその重量も軽くて済む。
【0038】
最後に、以上説明したような構造を備えるモニタ用ハウジング10の、TVモニタとしての液晶モニタ70の修理や点検および該液晶モニタや保護用窓60の清掃時における動作について、図2(a)、(b)を用いて説明する。
【0039】
修理、点検または清掃時において、モニタ用ハウジング10のハウジング本体20内に収納されている保護用窓60および液晶モニタ70は、昇降台40とともに、ハウジング本体20から取り出される。具体的には、昇降台40は、図2(a)の示される高さ約2.5mの位置にある第1の位置としての収納位置(上昇位置)から、図2(b)に示される高さ約1.2mの位置にある第2の位置としての下降位置まで下降する。
【0040】
図2(a)に示されるように、液晶モニタ70等が第1の位置としての収納位置にある状態において、先ず、昇降台40の不図示のロック機構が、例えば治具を用いて解除されるとともに、昇降台40が収納位置から下方に向かって引き出される。昇降台40は、不図示の昇降ストッパ機構およびスライドチャンネル14、44に案内され、略垂直に下方に向って第2の位置としての所定の下降位置(例えば、高さ約1.2m)まで下降し、昇降ストッパ機構のロック操作によりその第2の位置を維持する。
【0041】
昇降台40が下降すると、前傾用軸46を介して昇降台40に回動(揺動)可能に連結されているモニタケース50も下降する。モニタケース50の下降に伴い、モニタケース50の両側に設けられているピン55がガイド機構30に案内されることで、前傾していたモニタケース50は、図2(b)に示されるように、ハウジング本体20を出る直前に直立する。より具体的には、モニタケース50の下降に伴い、ピン55がガイド機構30の第1のガイド板31に沿って案内されることで、モニタケース50は、前傾用軸46を中心として後方に向って回動する。モニタケース50は、また、この回動動作とともに、上述したように、姿勢規制部材42による姿勢規制動作および弾性部材43の付勢力が協同することにより、昇降台40に対して直交する直立位置に至るまで回動し、その直立位置を保持する。モニタケース50が第2の位置としての所定の下降位置にあるとき、モニタケース50に取り付けられている保護用窓60も、図2(b)に示されるように第2の位置としての下降位置にある。
【0042】
修理、点検または清掃が終了後、昇降ストッパ機構のロック動作を解除することで、昇降台40は、下降時と同様に昇降ストッパ機構およびスライドチャンネル14、44に案内され、第2の位置からハウジング本体20に向って上昇させられる。昇降台40が上昇し、ハウジング本体20内に挿入されると、モニタケース50のピン55がガイド機構30の第2のガイド板31に当接する。ピン55が第1のガイド板31に当接する位置から昇降台40がさらに上昇すると、ピン55は第1および第2のガイド板31、32の間を第1のガイド板31に沿って上昇する。ピン55の第1のガイド板31に沿う移動により、直立位置にあるモニタケース50は、弾性部材43の付勢力に抗して、前傾用軸46を中心として前方に向って回動し、前傾する。モニタケース50は、その前面に取り付けられている保護用窓60がハウジング本体20の窓枠26に接触する前傾位置まで回動し、その後、その前傾位置を保持する。このとき、姿勢規制部材42の案内部材421に設けられたストッパピン423が、姿勢規制部材42のスライダ425に設けられたスリット425の後端部に当接し、モニタケース50のそれ以上の前傾を阻止している。液晶モニタ70や保護用窓60を含む昇降台40がハウジング本体20内に収納された第1の位置としての収納位置に収められた状態で、昇降台40に設けられたロック機構により昇降台40はハウジング本体20に固定される。これによりハウジング本体20内への収納が完了する。
【0043】
本発明に係るモニタ用ハウジング10は、上述したように、液晶モニタ70を収容するモニタケース50が、ハウジング本体20内に収納された第1の位置としての収納位置において、前傾位置にあるように構成されている。それにより、下から見上げる利用者にとって、液晶モニタ70の表示画面に映し出される画像が見やすくなる。本発明に係るモニタ用ハウジング10は、点検時等において、昇降台40を第2の位置としての下降位置に下降させるとき、液晶モニタ70を収容するモニタケース50が直立位置にあるように形成される。それにより、昇降台40の前後寸法が小さくでき、昇降台40の上下動が容易になるばかりでなく、モニタ用ハウジング10全体の寸法も小さくすることができる。また、モニタケース50が昇降台40に対して回動(揺動)可能であるので、点検や清掃なども容易に行うことができる。
【0044】
さらに、本発明に係るモニタ用ハウジング10は、保護用窓60をモニタケース50に取り付けるようにしているので、昇降台40の下降時、保護用窓60も一緒に第2の位置まで下降するので、保護用窓60の交換や清掃も危険のない状態で容易にできる。また、保護用窓60もモニタケース50の前傾に伴い前傾するので、該保護用窓60に埃などが付着し難くなるという作用効果も期待できる。
【0045】
さらに、保護用窓60が設けられたモニタケース50は、姿勢規制部材42、弾性部材43、およびガイド機構30の協同により、容易に且つ確実に前傾位置と直立位置との間を移動し得るとともに、モニタケース50の保護用窓60は、ハウジング本体20の窓枠26に損傷することなく確実に接触し得る。
【符号の説明】
【0046】
10 モニタ用ハウジング
20 ハウジング本体
21 (ハウジング本体の)天面板
22 (ハウジング本体の)左右の側面板
23 (ハウジング本体の)前面板
23a 前面開口部
24 (ハウジング本体の)後面板
25 (ハウジング本体の)底面板
25a 底面開口部
30 ガイド機構
31 第1のガイド板
32 第2のガイド板
40 昇降台
41 一対の支持部材
42 姿勢規制部材
421 案内部材
423 ストッパピン
425 スライダ
427 スリット
50 モニタケース
51 (モニタケースの)前面板
52 (モニタケースの)左右の側面板
53 (モニタケースの)後面板
54 (モニタケースの)底面板
55 ピン
60 保護用窓
70 液晶モニタ(TVモニタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング本体、昇降台および液晶モニタを収容するモニタケースを備えるモニタ用ハウジングであって、
前記ハウジング本体は、天面板、底面板、前面板、後面板、および左右一対の側面板から形成される箱型形状をなし、前記ハウジング本体の前記前面板は、所定の前傾角度θを有して前方方向下方に向って傾斜しているとともに、前記ハウジング本体は、前記前面板に形成されている前面開口部および前記底面板に形成されている底面開口部を介して前方および下方に向って開放されており、
前記昇降台は、前記ハウジング本体の前記底面板に設けられている前記底面開口部に嵌合することで前記ハウジング本体内に収納されるとともに、前記昇降台は、前記ハウジング本体内に収納されている第1の位置と、該第1の位置から垂直方向下方であって、前記ハウジング本体から取り出された第2の位置の間を移動可能に形成されており、
前記モニタケースは、前記液晶モニタを収容し得るように、底面板、前面板、後面板、および左右一対の側面板から形成される箱型形状に形成され、前記モニタケースの前記前面板には、前記液晶モニタの表示画面を保護する保護用窓が取り付けられているとともに、前記モニタケースは、前記昇降台の前方において、前記昇降台に対して回動可能に連結されており、
前記モニタケースは、前記昇降台が前記第1の位置にあるとき、前記保護用窓が前記ハウジング本体の前記前面開口部に接触する前傾位置にあり、前記昇降台が前記第2の位置にあるとき、前記昇降台に対して直交する直立位置にあるように回動することを特徴とするモニタ用ハウジング。
【請求項2】
前記モニタケースの前記左右一対の側面板の少なくとも一方の側面板には、前記モニタケースの前記少なくとも一方の側面板に隣接する前記ハウジング本体の前記左右の側面板のいずれか一方の側面板に向って突出するように形成されているピンが、前記モニタケースの前記少なくとも一方の側面板に対して直交するように設けられ、
前記ピンを案内するガイド機構として、前記ハウジング本体の前記左右一対の側面板の前記いずれか一方の側面板には、前記ハウジング本体の前記前面板の前記傾斜角度θよりも大きい角度を有して前傾する第1のガイド板が、前記いずれか一方の側面板に対して直交するように設けられ、
前記昇降台が前記第1の位置と前記第2の位置との間で移動するとき、前記モニタケースに設けられたピンが前記ハウジング本体に設けられている前記第1のガイド板に沿って移動することにより、前記モニタケースを前記前傾位置と前記直立位置との間で回動させることを特徴とする請求項1に記載のモニタ用ハウジング。
【請求項3】
前記昇降台の左右両端部には、一対の支持部材が設けられ、該一対の支持部材の少なくとも一方の支持部材と、前記少なくとも一方の支持部材に対応する前記モニタケースの前記左右一対の側面板のいずれか一方の側面板と、の間には、前記モニタケースが前記前傾位置と前記直立位置との間でのみ回動することを規制する姿勢規制部材、および前記モニタケースを常に直立位置に向って回動する方向に付勢する弾性部材、が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のモニタ用ハウジング。
【請求項4】
前記姿勢規制部材は、前記少なくとも一方の支持部材に取り付けられている、ストッパピンを有する案内部材、および前記モニタケースの前記いずれか一方の側面板にその前端部が回動自在に取り付けられている、スリットを有するスライダ、を備え、
前記スライダは、前記案内部材に沿って移動するとともに、前記スライダの前記スリット内に前記案内部材の前記ストッパピンが嵌合し、前記モニタケースの回動を規制することを特徴とする請求項3に記載のモニタ用ハウジング。
【請求項5】
前記ガイド機構は、前記ガイド機構の前記第1のガイド板の下方であって該第1のガイド板に平行に配置される傾斜部と該傾斜部下端から垂直方向下方に延在する垂直部を有する第2のガイド板を備えることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のモニタ用ハウジング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253570(P2012−253570A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124630(P2011−124630)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000209751)池上通信機株式会社 (123)
【出願人】(511135031)アイディアル工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】