説明

モルタル用具及びモルタル充填箱

【課題】モルタルを充填したカーソルをコンクリート壁面のコーン除去穴に位置決めしてあてがったのち、コテを用いてモルタルを一定量押出し、コーン除去穴にモルタルを充填する方法において用いられる上記カーソルの多数にモルタルの充填を短時間で能率よく行えるようにする。
【解決手段】モルタル充填箱18は、仕切り板23によってカーソル9が納まる収納部17を多数並列した構成を有し、各収納部17はカーソル9の高さと同じ深さとなっている。カーソル9へのモルタルの充填は、各収納部17にカーソル9を装着後、モルタルを載せ、掻き板で掻き均すことにより行い、これにより多数のカーソル9にモルタルが一度に短時間で充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠内にコンクリートを打設して養生後、型枠を取外した際にコンクリート壁面に残るコーン除去穴にモルタルを充填する際に用いるモルタル用具及び該モルタル用具にモルタルを充填するのに用いるモルタル充填箱に関する。
【背景技術】
【0002】
建築或いは土木工事のコンクリート構造物の施工では、セパレータにより一定の間隔を存して連結された型枠間にコンクリートを打設するが、養生後、型枠を取外す際には、埋め殺しされたセパレータのネジ端部に取付けておいたPコンと称される型枠定着部材(コーン)も取外される。そのためコーンを取外したコンクリート壁面には載頭円錐形のコーン除去穴が残るようになる。
【0003】
コーン除去穴には通常、該穴内に突出するセパレータ端部の錆止めや美観のためモルタルが充填される。モルタルの充填は従来、コテ板上に載せたモルタルをコテで取ってはコーン除去穴に詰め込み充填していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
型枠を取外したコンクリート構造物の壁面にはコーン除去穴が無数に残っているのが常で、こうした無数のコーン除去穴の一つ一つに上述するようなモルタルの充填作業を行い、全てのコーン除去穴にモルタルを充填するのには多大な手間と時間を要していた。
【0005】
本発明は、上述するようなコーン除去穴へのモルタルの充填作業が能率よく短時間で行えるようなモルタル用具及び該モルタル用具へのモルタルの充填作業を能率よく行うことができるモルタル充填箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係わる発明は、型枠内にコンクリートを打設して養生後、型枠を取外した際にコンクリート壁面に残るコーン除去穴にモルタルを充填する際に用いる、持ち運びの容易なモルタル用具であって、数箇所ないし数十箇所のコーン除去穴に充填することができる量のモルタルが充填される長溝を有し、上記長溝は両端のうち、少なくともコーン除去穴に当てがわれる一端が開口してモルタルの押出し口となるカーソルよりなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、上記カーソルは、カーソルホルダーに着脱可能に装着され、カーソルホルダーの一端にはコーン除去穴に当てがう際、コーン除去穴に差し込んで位置決めされるセットピンが突設されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明のカーソルにモルタルを充填するためのモルタル充填箱に関するもので、カーソルが長溝上面を上向きにして装着される収納部を複数並設し、各収納部は一端が閉じられる一方、他端が開閉可能な取付板で閉じられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係わる発明によると、カーソル一端の押出し口をコーン除去穴に当てがい、長溝上方より、コテ状、好ましくは長溝断面と同一形状のコテ状充填具をモルタル内に押し込みながら充填されるモルタルの一部を押出し口より押出すか、或いは充填具をモルタル内に溝底に達するまで押し込んだのち押出し口より押出してコーン除去穴に充填する。
【0010】
以上のようにしてカーソルをコーン除去穴に当てがい、充填具によりカーソル内のモルタルの一部を適量押出すことにより、コーン除去穴へのモルタルの充填を素早く短時間で行うことができ、作業能率が向上する。モルタルを一定量ずつ押出すことができるようにするため、カーソルには目盛りを付け、目盛りごとに充填具を押し込んでモルタルを押出すようにしてもよい。
【0011】
また長溝は、その溝幅及び深さをコーン除去穴の径とほぼ等しくすると、モルタルを押し出したときのコーン除去穴よりのはみ出しを少なくすることができ、少なくとも溝底を円弧にすると、モルタルのはみ出しをより少なくすることができる。
【0012】
請求項2に係わる発明によると、カーソルに強度がなくても強度のあるカーソルホルダーを用い、該カーソルホルダーに装着することにより使用に耐えられるようになること、セットピンをコーン除去穴に差し込むことによりカーソルホルダーをコーン除去穴に当てがう際の位置決めが行えるようになること等の効果を有する。
【0013】
請求項3に係わる発明によると、カーソルを各収納部に一つずつ装着し、その上からモルタルを充填し、表面を均すことにより各カーソル全てに対しモルタルの充填が手際よく短時間で行うことができ、作業能率が向上する。
【0014】
なお、請求項2記載のモルタル充填箱は請求項1記載のモルタル用具を取り扱うものであり、発明の単一性の要件を満たしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態のモルタル用具について図面により説明する。
図1は、本発明に係わるモルタル用具としてのカーソル1を示すもので、該カーソル1は、薄い鋼板をプレスにより打ち抜き、U形状に折曲加工して長手方向に直線状に延びる、請求項1記載の溝としてのU溝2を形成している。該U溝2は、溝底が半円形で、その径、溝幅、深さがコーン除去穴3の開口端の内径より若干小さく、コーン除去穴3の容積の数倍ないし数十倍の容積を有している。そしてその一端には溝底より摘み4がU溝の延長方向に突出して一体形成され、他端の開口は充填されるモルタルの押出し口5となっている。
【0016】
図2は、持ち運びが容易で長手方向に直線状に延びるU形断面の溝6を有するカーソルホルダーを示すもので、長溝6には前記カーソル1が着脱可能に装着され、長溝6の一端は開口し、溝底にセットピン8が長溝6の延長方向に突設されている。長溝6の他端は閉じられ、前記摘み4が嵌挿される縦向きのスリット9が形成されている。
【0017】
前記カーソル1は、カーソルホルダー7の長溝6に前記摘み4がスリット9に嵌挿されるように装着される。装着状態で摘み4は図3に示すように、スリット9より突出し、カーソル1をカーソルホルダー7より取外すときには、スリット9より突出する摘み4を掴んで持ち上げることによりカーソル1がカーソルホルダー7より持ち上げられて容易に取外すことができるようになっている。
【0018】
長溝6は図示する例では、深さがカーソルの高さと同じで、カーソル1を長溝6に装着したとき、カーソル1とカーソルホルダー7の上端が面一となるようにしてあるが、長溝6の深さはカーソル1の高さより多少高いか或いは低くして同じでなくてもよい。
またカーソル1の材質は、金属製であってもよいが、好ましくは比較的軽量な樹脂又は木製とされる。
【0019】
次に図1に示すカーソル1を用いてコーン除去穴3へモルタルを充填する態様について説明する。
【0020】
先ず、カーソル1内にモルタル10をカーソル上端面に達するまで充填したのち(充填されるモルタル量は、数箇所ないし数十箇所のコーン除去穴3に充填できる程度の量になる)、モルタルが充填されるカーソル1を装着したカーソルホルダー7を持って、その一端の押出し口5をコンクリート20壁面のコーン除去穴3に当てがい、セットピン8をコーン除去穴3に挿入して穴底に当てる(図7)。これによりコーン除去穴3に当てがわれるカーソルホルダー7及びカーソル1の位置決めが行われる。図中、11はコーン除去穴3内に突出するセパレータのネジ部である。
【0021】
カーソルホルダー7をコーン除去穴3に当てがい位置決めしたのち、カーソルホルダー7を図示するように水平に支持した状態でコテを用いてモルタル10に押し込み、押出し口5よりホルダー1に充填されるモルタルの一部を押出してコーン除去穴3に押込み充填する。
【0022】
図4及び図5は使用されるコテの一例を示すもので、取手11と、該取手11の下端より側方(図4の手前側)に突設される倒L形の取付部12と、該取付部12の下側部に固着される薄板状のコテ13と、前記取手11の中間部より取付部12とは直交する向きで側方に突設されるロッド14と、ロッド14端に固定される均しゴテ15とよりなり、前記コテ13は下部が前記U溝2の断面形状と同一で、U溝2に嵌合できるように形成されている。
【0023】
このコテは次のようにして使用される。取手11及び若しくはロッド14を掴んでから、コテ13をコーン除去穴3に位置決めして当てがわれたカーソル1のU溝2に充填されるモルタル10にU溝底に達するまで押し込む(図5)。図示する例ではコテ13をモルタル10に垂直方向に押し込んでいるが、傾斜させて押し込むようにしてもよく、傾斜させて押し込む方が押し込み易い。
【0024】
コテ13を上述するようにモルタル10に押し込んだ後、側方に押し込み、モルタル10を押し出してコーン除去穴3に充填する。充填後、カーソルホルダー7をコーン除去穴3より離脱させる。コーン除去穴3の周りに付着するモルタルは、ロッド14を掴み直して直しゴテ15でコーン除去穴内に押込まれ、均される。これによりコーン除去穴3がモルタルで充填され、コンクリート壁面と面一となる。
【0025】
以上のようにしてコーン除去穴3へのモルタル10の充填が行われ、モルタルの充填が完了すると、次のコーン除去穴3へモルタルが同様にして充填される。
【0026】
本方法によると、コテ板にモルタルを取り、コテを用いてモルタルをコーン除去穴に充填していた従来法に比べ、モルタルの充填作業が短時間で行えるようになる。
図6は、コテの別の例を示すもので、図4に示すコテと異なる点は、取手11の上端にロッド14とは逆向きのL形のアーム28を突設し、アーム上端に円板状の押えゴテ29を取付けたことである。コーン除去穴3が深く、コテ13でモルタルを穴底まで充分に押し込むことができないか、或いは困難である場合、押えゴテ29を用いてモルタルをコーン除去穴3に押込む。これによりモルタルが穴底まで押込まれ、充分に充填されるようになる。
前述の実施形態では、カーソル1はカーソルホルダー7に装着されて使用されるようになっているが、カーソルホルダー7を用いないでカーソル1単独でも使用することが可能である。
【0027】
前述の実施形態ではまた、モルタルがカーソル1に充填され、カーソル1からコーン除去穴3にモルタルが充填されるようになっているが、モルタルをカーソルホルダー7に直接充填し、該カーソルホルダー7からコーン除去穴3にモルタルを充填するようにしてもよい。この場合には、カーソル1が不要となり、カーソルホルダー7がカーソル1として使用される。したがって請求項1記載のカーソルは、カーソル1のみならず、カーソルホルダー7を含むものとなる。
【0028】
図8〜図10は、前述のカーソル1が上方より装着される収納部17を並設したモルタル充填箱18を示すもので、全体が鋼製で、底面に等間隔で梁19を取付けた矩形の底板21と、底板21の三辺より立上がる側壁板22とゲタ19と直交する向きに並設され、充填箱18内を仕切って多数のカーソル収納部17を構成する仕切り板23と、三方を同じ高さの側壁板22で囲まれたモルタル充填箱18の一側面の開口側において、対向する側壁板22の側縁にそれぞれ縦向きに取付けられるアングル材24と、側壁板側端面とアングル材24との間に抜き差し可能に差込まれて取付けられる取付板25とを有し、仕切り板23はカーソル1と同じ高さで、側壁板22より低く、また取付板25は中央で段をなし、高部25aは側壁板22と同じ高さに形成されると共に、低部25bは仕切り板23及びカーソル1と同じ高さに形成されている。
【0029】
使用時には、取付板25を取外したのち各収納部17に前述のカーソル1を上面の開口を上向きに、かつ摘み4を充填箱一側面の開口側に向けて装着する。この状態でカーソル上端は仕切り板23とほぼ面一となる(図9)。カーソル装着後、取付板25を、その両側端部を側壁板側端面とアングル材24との間に差込んで取付ける(図10)。取付板25取り付け後、摘み4は取付板25より突出した状態となる。その後、各収納部17にカーソル1を装着したモルタル充填箱18上にモルタルを山盛状に載せ、掻き板(図示しない)で充填箱18の隅から隅まで掻き均して、各カーソル1の全てにモルタルを充填する。掻き板による掻き均しによってモルタルは各カーソル1の上端まで充填され、余分のモルタルは掻き板によって取付板低部25bから掻き出され排出される。
【0030】
以上のようにしてモルタル充填箱18に装着される全てのカーソル1に対し、モルタルの充填が手際よく短時間で行われ、作業能率が格段に向上する。
前述するようにカーソルホルダー7にモルタルを充填して使用する場合、モルタル充填箱18にはカーソル1に代えてカーソルホルダー7が装着され、カーソル1と同様、モルタルがカーソルホルダー7に充填される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係わるカーソルの斜視図。
【図2】カーソルホルダーの斜視図。
【図3】カーソルホルダーにカーソルを装着した状態を示す斜視図。
【図4】コテの正面図。
【図5】使用時におけるコテの側面図。
【図6】コテの別の例の正面図。
【図7】使用時におけるカーソルホルダーの正面図。
【図8】モルタル充填箱の斜視図。
【図9】カーソルを装着したモルタル充填箱の一部の断面図。
【図10】取付板を取付けたモルタル充填箱の正面図。
【符号の説明】
【0032】
1・・カーソル
2・・U溝
3・・コーン除去穴
4・・摘み
5・・押出し口
6・・長溝
7・・カーソルホルダー
8・・セットピン
9・・スリット
10・・モルタル
17・・収納部
18・・モルタル充填箱
19・・ゲタ
20・・コンクリート
21・・底板
22・・側壁板
23・・仕切り板
24・・アングル材
25・・取付板
28・・アーム
29・・押えゴテ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内にコンクリートを打設して養生後、型枠を取外した際にコンクリート壁面に残るコーン除去穴にモルタルを充填する際に用いる、持ち運びの容易なモルタル用具であって、数箇所ないし数十箇所のコーン除去穴に充填することができる量のモルタルが充填される溝を有し、該溝は両端のうち、少なくともコーン除去穴に当てがわれる一端が開口してモルタルの押出し口となるカーソルよりなることを特徴とするモルタル用具。
【請求項2】
カーソルは、カーソルホルダーに着脱可能に装着され、カーソルホルダーの一端にはコーン除去穴に当てがう際、コーン除去穴に差し込んで位置決めされるセットピンが突設されることを特徴とする請求項1記載のモルタル用具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモルタル用具にモルタルを充填するためのモルタル充填箱であって、前記カーソルが長溝上面を上向きにして装着される収納部を複数並設し、各収納部は一端が閉じられる一方、他端が開閉可能な取付板で閉じられることを特徴とするモルタル充填箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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