説明

モータのリサイクル方法

【課題】回収した単一種類または複数種類のモータをロータとステータとに分離した後に、各々を各種の素材ごとに分離するとともに、当該ロータに使用されている磁石を種類ごとに回収するモータのリサイクル方法を提案する。
【解決手段】単一種類の磁石素材6’からなる磁石6または磁石素材6’が異なる複数種類の磁石6を含んだ複数のモータ1のロータコア2aを、磁石6の種類に応じたキュリー温度まで段階的に昇温し、各段階において、一定時間保持して、当該キュリー温度に対応した磁石6を選択的に脱磁することにより、順次上記種類ごとに磁石素材6’を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのモータから各種の素材を個別に回収するためのモータのリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネやエコロジーの観点から、ハイブリッド車や電気自動車などの次世代環境対応車が持て囃され、自動車業界は各社が次々と次世代環境対応車の開発および販売を行っている。その進歩は目覚ましいものがあり、特にハイブリッド車や電気自動車の心臓部とも言えるモータやバッテリーにおいては、小型化および高性能化が図られ、今後更なる進化が問われている。またそれに伴い、レアメタルやレアアースなどの原材料は、モータに使用される希土類磁石に使用され、その調達を危惧する声も聞こえてきている。
【0003】
ところで、上記レアアース(希土類元素)を含有する希土類磁石は、ハイブリッド車など次世代環境対応車のモータだけでなく、先端技術を駆使するOA機器、家電製品にも使用されている。特に家電製品では、2000年以降に製造された比較的新しい形式のエアコンや冷蔵庫のコンプレッサ、または洗濯機のモータに希土類磁石が使用されている。
【0004】
また、家電製品の使用年数が、概ね10年程度であることを踏まえると、既存の家電リサイクルルートにおいて、既に希土類磁石を使用した家電製品、特にエアコンや洗濯機が回収されていると推測される。そこで、この家電リサイクルルートから希土類磁石を使用したエアコンや洗濯機などの家電製品を回収することにより、レアメタルやレアアースなどの再生資源を回収することが可能であると考えられる。
【0005】
しかしながら、現在使用済みの家電製品を回収し、リサイクルする過程において、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサ、または洗濯機のモータから希土類磁石を取り出して回収することは、殆ど実施されていないのが現状である。
【0006】
なお、エアコンなどに使用されるコンプレッサのリサイクルは、複数業者によって事業化され、鉄、銅、珪素鋼板などの素材に分離して再資源化が行われているものの、ドラム式洗濯機に代表されるような樹脂モールドモータは、金属部分が樹脂により覆われているため、この樹脂部分を加熱するなどして除去する以外に、鉄および非鉄金属を回収することは困難であり、鉄系の素材として再利用されるのが一般的である。
【0007】
そこで、樹脂モールドモータをロータ部とステータ部とに分離し、各々を加熱炉に投入して、樹脂を灰化させる方法が考えられる。この方法は、磁石が組み込まれたロータ部に対して、樹脂の灰化とともに、磁石を脱磁させることができるため効率的である。しかし、ステータ部に対しては、樹脂を灰化させただけでは、鉄系の素材と銅とに単体分離させることが難しく、通常の破砕機などを使用して破砕した場合には、鉄系の素材と銅とが絡み合ってしまうため、単体分離が難しく、手作業による分離が不可欠であるとともに、省エネルギーの観点からも効率的ではないという問題がある。
【0008】
ところで、ロータ部に関しては、使用済みの洗濯機などから回収したモータごとに、ロータ部に組み込まれている磁石がモータに求められる特性により、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石など種類が異なっている。また、最近のドラム式洗濯機の中には、可変磁力モータが使用されているものがあり、異なる種類の磁石、例えば、ネオジム磁石とサマリウムコバルト磁石が混在して使用されている。また、ネオジム磁石およびサマリウムコバルト磁石は、希土類磁石の再生資源として回収する場合に、使用されている磁石の種類ごとに分けて回収する必要がある。
【0009】
しかしながら、ロータ部を加熱炉に投入して樹脂を灰化させる上記方法では、予めロータ部に組み込まれた磁石の種類を特定して回収することが困難であるとともに、上記可変磁力モータなどの異なる磁石が使用されているロータ部においては、異なる種類の磁石を個別に回収することができない。また、回収した複数のモータを一度に処理しなければならず、使用されている磁石ごとに選別して処理することは、効率が悪いだけでなく、コストが嵩むという問題がある。
【0010】
そこで、下記特許文献1において、第1のキュリー温度を有する希土類磁石と上記第1のキュリー温度より高い第2のキュリー温度を有する強磁性材とを含む構造物を、上記第1と第2のキュリー温度の中間温度に加熱する工程と、上記加熱された構造物の中から上記強磁性材を磁気吸引により選別し第1のシューターへ搬送する工程とを備え、上記第1のキュリー温度より高い第2のキュリー温度を有する強磁性材を第1のシューターに、第1のキュリー温度を有する希土類磁石を含む構造物を第2のシューターに収集する希土類磁石と強磁性材とを含む構造物の分別方法が提案されている。
【0011】
この従来の方法は、希土類磁石と、希土類磁石よりもキュリー温度の高い鉄屑などの強磁性材との構造物を、希土類磁石のキュリー温度以上にすることにより、希土類磁石のみ強磁性を失わせて、その間に鉄屑などの強磁性材を磁気吸引し、各々を分別する方法である。
【0012】
しかしながら、この従来の方法では、希土類磁石のキュリー温度以上の温度条件下でなければ分別することができないため、分別を行っている間は常に希土類磁石のキュリー温度、例えば400℃程度の高温条件を保たねばならず、エネルギー効率が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−219093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、回収した単一種類または複数種類のモータをロータとステータとに分離した後に、各々を各種の素材ごとに分離するとともに、当該ロータに使用されている磁石を種類ごとに回収するモータのリサイクル方法を提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、単一種類の磁石素材からなる磁石または磁石素材が異なる複数種類の磁石を含んだ複数のモータのロータコアを、当該磁石の種類に応じたキュリー温度まで段階的に昇温し、各段階において、一定時間保持して、当該キュリー温度に対応した上記磁石を選択的に脱磁することにより、順次上記種類ごとに上記磁石素材を回収することを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ロータコアに組み込まれた上記磁石は、ネオジム磁石および/またはフェライト磁石および/またはサマリウムコバルト磁石を含むことを特徴とするものである。
【0017】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記モータを上記ロータと鉄系金属からなるヨーク材にコイルが巻回されたステータとに分離した後に、上記ステータを、回転軸とこの回転軸に一端部が固定された可撓性を有する線材とが筒体内を上記回転軸回りに回転する破砕機の上記筒体に投入して破砕し、少なくとも上記鉄系金属と上記コイルとを分離させて回収することを特徴とするものである。
【0018】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記ステータは、樹脂およびその他金属を含むとともに、上記ステータを上記破砕機に投入して破砕した際に、鉄系金属とコイルと樹脂とその他金属とを分離させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜4に記載の本発明によれば、磁石の種類に応じたキュリー温度まで段階的に昇温し、各段階において、上記キュリー温度に対応した磁石を選択的に脱磁することにより、順次上記種類ごとに磁石素材を回収するため、複数種類のモータのロータコアに組み込まれた異なる上記磁石素材からなる上記磁石を予め特定する必要がなく、大気雰囲気炉などの加熱炉に投入して段階的に昇温することにより、容易に上記磁石を種類ごとに脱磁し、上記磁石素材を種類ごとに回収することができる。これにより、リサイクル工場などにおいて回収されるあらゆる種類のモータのロータコアをリサイクルすることができる。
【0020】
仮に、磁石の種類の分からない単一種類の磁石素材からなる磁石を含んだモータのロータコアを、大気雰囲気炉などの上記加熱炉に投入して、段階的に昇温することにより、上記磁石の種類に応じたキュリー温度の段階において、脱磁されて上記単一種類の磁石素材を回収することができるとともに、上記単一種類の磁石素材の種類を知ることができる。
【0021】
また、樹脂によりモールドされたモータのロータコアの場合には、キュリー温度まで段階的に昇温し、各段階において、一定時間保持することにより、金属部分をモールドしている樹脂を灰化させて除去することができる。この結果、ロータコアにモールドされている樹脂を予め除去する手間が省け、効率的に磁石素材を種類ごとに選別して回収することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、上記磁石の種類が、ネオジム磁石および/またはフェライト磁石および/またはサマリウムコバルト磁石を含むため、上記モータの上記ロータコアを上記大気雰囲気炉などの加熱炉に投入して、ネオジム磁石のキュリー温度に昇温し、脱磁した磁石素材を回収した後に、フェライト磁石のキュリー温度に昇温し、脱磁した磁石素材を回収した後に、さらにサマリウムコバルト磁石のキュリー温度に昇温し、脱磁した磁石素材を回収することにより、ネオジム素材および/またはフェライト素材および/またはサマリウムコバルト素材とに選別して回収することができる。これにより、貴重なレアアース資源の再資源化を図ることができる。
【0023】
また、上記大気雰囲気炉などの加熱炉に投入する複数種類の上記ロータコアの中に、可変磁力モータのロータコアのように、上記ネオジム磁石と上記サマリウムコバルト磁石とが混在していた場合でも、上記ネオジム磁石のキュリー温度および上記サマリウムコバルト磁石のキュリー温度に段階的に昇温することにより、上記ネオジム磁石と上記サマリウムコバルト磁石が各々のキュリー温度において脱磁され、上記ロータコアより同一種類ごとの磁石素材として回収することができる。これにより、上記モータの上記ロータに組み込まれている上記磁石の種類を気にすることなく、上記大気雰囲気炉などの加熱炉に投入することができる。この結果、今後上記ロータの仕様変更などにより、他種類の上記磁石が混在した場合でも、対応することができる。
【0024】
そして、上記ネオジム磁石および/または上記フェライト磁石および/または上記サマリウムコバルト磁石を上記大気雰囲気炉などの加熱炉内において脱磁させるため、上記ロータコアを上記大気雰囲気炉などの加熱炉から取り出した際に、脱磁された上記ネオジム素材および/または上記フェライト素材および/またはサマリウムコバルト素材を、各々が組み込まれた上記ロータコアから容易に取り外すことができる。この結果、上記ロータコアを上記磁石素材と鉄系金属とに容易に単体分離させて、各種の素材ごとに回収することができ、各々の再資源化を図ることができる。
【0025】
請求項3に記載の本発明によれば、ステータを、回転軸とこの回転軸に一端部が固定された可撓性を有する線材とが筒体内を上記回転軸回りに回転する破砕機の上記筒体に投入し、上記線材の打撃による衝撃力によって破砕し、少なくとも鉄系金属とコイルとを各々分離させて回収するため、珪素鋼板からなるステータコアなどの鉄系金属が、概ね変形することなく破砕されることにより、銅製のコイルを巻き込むことなく素材ごとに単体分離させることができる。これにより、単体分離された各々の素材の特性を利用して物理的に選別をすることにより、容易に各種の素材ごとに回収することができ、再資源化を容易に図ることができる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、上記ステータが、樹脂およびその他金属を含むとともに、上記ステータを上記破砕機に投入して破砕した際に、鉄系金属とコイルと樹脂とその他金属とを分離させるため、樹脂で覆われたモータのステータを加熱処理することなく、物理的に選別して単体分離させることができ、省エネルギーに貢献することができる。また、その他金属としてアルミニウムなどが含まれていた場合でも、物理的に選別して単体分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のモータのリサイクル方法の一実施形態の一連の工程のフロー図である。
【図2】本発明のモータのリサイクル方法に用いられるロータの概略図を示し、(a)はフェライト磁石が組み込まれたロータ、(b)はネオジム磁石が組み込まれたロータ、(c)はネオジム磁石とサマリウムコバルト磁石とが混在したロータである。
【図3】本発明のモータのリサイクル方法のうち、ロータを大気雰囲気炉に投入して段階的に脱磁する一連の工程を模した概略図である。
【図4】本発明のモータのリサイクル方法のうち、ステータをチェーン式破砕機に投入して破砕および選別する一連の工程を模した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、本発明のモータのリサイクル方法の一実施形態は、リサイクル工場において回収したモータ1をロータ2とステータ3とに分離した後に、ステータ3をチェーン式破砕機(破砕機)5に投入して破砕し、破砕した銅製のコイルおよび珪素鋼板もしくはアルミニウムなどのその他金属または樹脂を、各々の素材の特性を利用して各種の素材ごとに物理選別して回収するとともに、磁石素材6’が異なる複数種類の磁石6を含んだ複数のモータ1のロータ2を大気雰囲気炉4に投入し、段階的に昇温して一定時間保持し、樹脂を灰化させ、かつ脱磁された磁石6を同一種類ごとにロータコア2aから分離させて、各々を各種の素材ごとに回収するように概略構成されている。
【0029】
ここで、ロータ2を投入する大気雰囲気炉4は、段階的に昇温および設定した温度に一定時間保持することが可能な電気炉などが用いられている。また、大気雰囲気炉4に投入するロータ2は、例えば、図2(a)に示すように、フェライト磁石6aがロータコア2aに組み込まれ、樹脂によりモールドされたロータ2A、および図2(b)に示すように、ネオジム磁石6bがロータコア2aに組み込まれ、樹脂によりモールドされたロータ2B、または図2(c)に示すように、ネオジム磁石6bとサマリウムコバルト磁石6cとが混在してロータコア2aに組み込まれたロータ2Cなどである。
【0030】
また、チェーン式破砕機5は、図4に示すように、有底筒状の筒体5bと、この筒体5bの底部の中心部に立設するとともに、モータ5dの駆動により回転する円柱状の回転軸5cと、この回転軸5cの外周面に一端部が接続され、他端部が自由端となっているとともに、回転軸5cの円周方向の180℃離反した位置に、もう一方の一端部が接続され、他端部が自由端となっているチェーン(線材)5aを備えている。また、チェーン5aは、回転軸5cの外周面の一方側に、2本接続されている。
【0031】
以上の構成からなるモータのリサイクル方法を用いることにより、リサイクル工場において回収した樹脂モールドモータ1を、各種の素材ごとに分離して回収し、再資源化を図る方法について、図1〜図4により説明する。
【0032】
まず、回収した樹脂モールドモータ1をハンマーなどにより打撃し、衝撃を与えることによりロータ2とステータ3とに分離する。この際に、モータ1のロータ2とステータ3は、モータ1に衝撃を与えることにより、容易に分離させることができる。
【0033】
(実施例1)
先ず、分離したロータ2の再資源化の方法について説明する。
図1および図3に示すように、モータ1から分離した3種類のロータ2を大気雰囲気炉4に投入する。このときに、大気雰囲気炉4に投入される3種類のロータ2は、図2(a)のフェライト磁石6aがロータコア2aに組み込まれたロータ2A、図2(b)のネオジム磁石6bがロータコア2aに組み込まれたロータ2B、図2(c)のネオジム磁石6bとサマリウムコバルト磁石6cとが混在してロータコア2aに組み込まれたロータ2Cである。
【0034】
そして、大気雰囲気炉4にロータ2Aとロータ2Bとロータ2Cとを投入後に、大気雰囲気炉4の炉内温度を380℃まで昇温させて、30分間保持する。このときに、大気雰囲気炉4内では、金属部分に被覆されていた樹脂が灰化して除去されるとともに、ロータ2Bおよびロータ2Cの各々のロータコア2aに組み込まれているネオジム磁石6bが脱磁される。
【0035】
なお、ネオジム磁石6bのキュリー温度は、380℃を超えないため、大気雰囲気炉4の炉内温度を380℃に昇温し、30分間保持することにより、ネオジム磁石6bのみが脱磁されることになる。また、フェライト磁石6aおよびサマリウムコバルト磁石6cは、キュリー温度が400℃を超えているため、脱磁されない。
【0036】
そして、大気雰囲気炉4内において、30分間保持した後に、ロータ2A、ロータ2B、ロータ2Cの3つを取り出して、磁力選別を行う。ここで、磁力選別とは、磁力が残っているか否かを確認することであり、磁力の有無により選別することを言い、以下同様とする。なお、磁力が残っているか否かの確認は、鉄が吸着されるか否かにより簡便に判断することができる。この磁力選別により、磁力を失ったロータ2Bと、ロータ2Cの脱磁されたネオジム素材(磁石素材)6b’をロータコア2aから外して回収する。そして、回収したロータ2Bとロータ2Cから取り外したネオジム素材6b’とを振動篩機などにより、ネオジム素材6b’とロータコア2aとに単体分離して、各種の素材ごとに回収する。回収したネオジム素材6b’は、レアアース資源として再資源化され、ロータコア2aは珪素鋼板として再資源化される。
【0037】
一方、上記磁力選別において、磁力が残っているロータ2Aとロータ2Cは、再び大気雰囲気炉4に投入する。そして、大気雰囲気炉4の炉内温度を500℃まで昇温して、15分間保持する。このときに、大気雰囲気炉4内では、ロータ2Aのロータコア2aに組み込まれているフェライト磁石6aが脱磁される。
【0038】
なお、フェライト磁石6aのキュリー温度は、440〜480℃であるため、大気雰囲気炉4の炉内温度を500℃に昇温し、15分間保持することにより、フェライト磁石6aのみが脱磁されることになる。また、サマリウムコバルト磁石6cは、キュリー温度が500℃を超えているため、脱磁されない。
【0039】
そして、大気雰囲気炉4内において、15分間保持した後に、ロータ2A、ロータ2Cの2つを取り出して、磁力選別を行う。この磁力選別により、磁力を失ったロータ2Aを回収する。そして、回収したロータ2Aを振動篩機などにより、フェライト素材(磁石素材)6a’とロータコア2aとに単体分離して、各種の素材ごとに回収する。回収したフェライト磁石6a’は、再資源化され、ロータコア2aは珪素鋼板として再資源化される。さらに、上記磁力選別において、磁力が残っているロータ2Cは、再び大気雰囲気炉4に投入する。
【0040】
さらに、ロータ2Cを投入した後に、大気雰囲気炉4の炉内温度を800℃まで昇温して、15分間保持する。このときに、大気雰囲気炉4内では、ロータ2Cのロータコア2aに組み込まれているサマリウムコバルト磁石6cが脱磁される。
【0041】
なお、サマリウムコバルト磁石6cのキュリー温度は、750〜800℃であるため、大気雰囲気炉4の炉内温度を800℃に昇温し、15分間保持することにより、サマリウムコバルト磁石6cが脱磁される。
【0042】
そして、大気雰囲気炉4内において、15分間保持した後に、ロータ2Cを取り出して、磁力を失ったロータ2Cを回収する。そして、回収したロータ2Cを振動篩機などにより、サマリウムコバルト素材(磁石素材)6c’とロータコア2aとに分離して、個別に回収する。回収したサマリウムコバルト素材6c’は、レアアース資源として再資源化され、ロータコア2aは珪素鋼板として再資源化される。
【0043】
このように、樹脂によりモールドされたロータ2に用いられている磁石6を予め特定することなく、磁石6の特性であるキュリー温度を利用して、段階的に温度を昇温して磁石6を加熱することにより、同一種類の磁石6ごとに回収することができる。さらに、種類ごとに脱磁させた磁石素材6’は、珪素鋼板からなるロータコア2aから容易に分離させることができ、各々の素材ごとに回収することが可能となる。
【0044】
(実施例2)
次に、分離したステータ3の再資源化の方法について説明する。
図1および図4に示すように、モータ1から分離した複数のステータ3をチェーン式破砕機5に投入する。このとき、チェーン式破砕機5は、モータ5dの駆動により、回転軸5cが回転するとともに、この回転軸5cに接続されたチェーン5aが筒体5b内を回転する。
【0045】
また、このチェーン式破砕機5に投入したステータ3は、筒体5b内を回転するチェーン5aによって、1分程度打撃させることにより、ステータコアを形成する珪素鋼板やアルミニウムなどのその他金属および銅製のコイルが破砕されるとともに、ステータ3に被覆されていた樹脂が粉砕される。ここで、アルミなどのその他金属とは、磁着されない金属を言う。さらに、珪素鋼板およびその他金属は、可撓性を有するチェーン5aの打撃の衝撃により破砕されるため、珪素鋼板自体が概ね変形することなく破砕されることにより、破砕された銅製のコイルと絡み合わない。
【0046】
このように、樹脂でモールドされたステータ3を、そのままチェーン式破砕機5に投入し、1分程度チェーン5aで打撃させることにより、被覆されていた樹脂が粉砕され、珪素鋼板からなる上記ステータコアと銅製のコイルとが絡み合うことなく破砕され、形状差が生じ、かつ素材別に単体分離できるることが判明した。
【0047】
また、これにより、チェーン式破砕機5において、1分程度破砕させた後に、チェーン式破砕機5の筒体5bから破砕されたステータ3を取り出して、振動篩機8に搬送し、この振動篩機8を作動させるとともに、吊り下げ式磁力選別機7を用いて、珪素鋼板を吊り下げ式磁力選別機7により磁着させて回収することが可能となる。
【0048】
さらに、振動篩機8に残った銅製のコイルと樹脂とその他金属との混合物を乾式比重選別機9に搬送し、この乾式比重選別機により、重量物である銅製のコイルおよびその他金属と軽量物である樹脂とを選別して、各々を各種の素材ごとに回収することも可能となる。
【0049】
また、乾式比重選別機9により選別された重量物である銅製のコイルとその他金属との混合物を渦電流非鉄選別機10に搬送し、この渦電流非鉄選別機10により、線状破砕片である銅製のコイルと、塊状または板状破砕片であるその他金属とを選別して、各々を各種の素材ごとに回収することも可能となる。
【0050】
このように、チェーン式破砕機5を用いて、樹脂でモールドされたステータ3を破砕することにより、各種の素材ごとに容易に選別して回収することができ、各々の素材の再資源化を容易にすることができる。
【0051】
上述の実施例によるモータのリサイクル方法によれば、樹脂でモールドされた複数種類のモータ1のロータ2を大気雰囲気炉4に投入し、大気雰囲気炉4の炉内温度を予め想定される磁石6の種類に応じたキュリー温度まで、段階的に昇温して一定時間保持するため、金属部分にモールドされている樹脂を灰化させて除去することができるとともに、ネオジム磁石6bおよびフェライト磁石6aまたはサマリウムコバルト磁石6cを同一種類ごとに脱磁させて回収することができ、かつ各々の種類の磁石素材6’が組み込まれたロータコア2aから容易に分離させて回収することができる。これにより、回収した複数のモータ1のロータ2に樹脂がモールドされていて、使用されている磁石6が特定できない場合でも、容易にネオジム素材6b’およびフェライト素材6a’またはサマリウムコバルト素材6c’とに選別して回収することができ、貴重なレアアース資源の再資源化を図ることができる。
【0052】
また、大気雰囲気炉4に投入する複数種類のロータ2の中に、可変磁力モータのロータ2Cなどのように、ネオジム磁石6bとサマリウムコバルト磁石6cとが混在していた場合でも、大気雰囲気炉4の温度を段階的に昇温することにより、各々の磁石6のキュリー温度において脱磁され、ロータコア2aより同一種類の磁石素材6’ごとに回収することができる。これにより、モータ1のロータ2に組み込まれている磁石6の種類を気にすることなく、大気雰囲気炉4に投入することができる。これにより、今後ロータ2の仕様変更などにより、他種類の磁石6が混在した場合でも、対応することができる。
【0053】
そして、ネオジム磁石6bおよびフェライト磁石6aまたはサマリウムコバルト磁石6cを、大気雰囲気炉4内において脱磁させるため、複数のロータ2を大気雰囲気炉4から取り出した際に、ネオジム素材6b’およびフェライト素材6a’またはサマリウムコバルト素材6c’を、ロータコア2aから容易に取り外すことができる。この結果、ロータ2を磁石素材6’と珪素鋼板とに容易に単体分離させて、各種の素材ごとに回収することができ、各々の再資源化を図ることができる。
【0054】
さらに、樹脂によりモールドされたステータ3をチェーン式破砕機5に投入し、可撓性を有するチェーン5aの打撃による衝撃により破砕するため、樹脂は粉砕されるとともに、珪素鋼板およびその他金属からなるステータコアが、概ね変形することなく破砕されることにより、銅製のコイルを巻き込むことなく素材ごとに単体分離して破砕される。これにより、単体分離された各々の素材の特性を利用することにより、吊り下げ式磁力選別機7および振動篩機8または乾式比重選別機9、さらには渦電流非鉄選別機10などを用いて、容易に個別回収することができ、再資源化を図ることができる。この結果、樹脂でモールドされたモータ1のステータ3を加熱処理することなく、各種の素材ごとに分離して回収することができ、省エネルギーに貢献することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態において、磁石素材6’が異なる複数種類の磁石6を含んだ複数のモータ1のロータコア2aを大気雰囲気炉4に投入して、磁石6の特性であるキュリー温度を利用し、段階的に昇温して磁石6を加熱することにより、同一種類の磁石素材6’ごとに回収する場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、樹脂などでモールドされていて、磁石の種類の分からない単一種類の磁石素材6’からなる磁石6を含んだ複数のモータ1のロータコア2aを大気雰囲気炉4に投入して、磁石6の特性であるキュリー温度を利用し、段階的に昇温して磁石6を加熱することにより、上記単一種類の磁石素材6’からなる磁石6に応じたキュリー温度の段階において、磁石素材6’を回収する場合も対応可能である。
また、上記実施の形態において、ロータ2Cに混在している磁石6をネオジム磁石6bとサマリウムコバルト磁石6cとした場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、フェライト磁石6aとネオジム磁石6bとの2種類、またはフェライト磁石6aとネオジム磁石6bとサマリウムコバルト磁石6cとの3種類としても対応可能である。
さらに、破砕機5をチェーン式破砕機5を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、筒体5b内に設けられた回転軸5cに接続されたチェーン5aに変えて、可撓性を有するワイヤを用いたワイヤ式破砕機でも対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
回収したモータに利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 モータ
2 ロータ
2a ロータコア
3 ステータ
4 大気雰囲気炉
5 チェーン式破砕機
6 磁石
6’ 磁石素材
6a フェライト磁石
6a’フェライト素材
6b ネオジム磁石
6b’ネオジム素材
6c サマリウムコバルト磁石
6c’サマリウムコバルト素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一種類の磁石素材からなる磁石または磁石素材が異なる複数種類の磁石を含んだ複数のモータのロータコアを、当該磁石の種類に応じたキュリー温度まで段階的に昇温し、各段階において、一定時間保持して、当該キュリー温度に対応した上記磁石を選択的に脱磁することにより、順次上記種類ごとに上記磁石素材を回収するとを特徴とするモータのリサイクル方法。
【請求項2】
上記ロータコアに組み込まれた上記磁石は、ネオジム磁石および/またはフェライト磁石および/またはサマリウムコバルト磁石を含むことを特徴とする請求項1に記載のモータのリサイクル方法。
【請求項3】
上記モータを上記ロータと鉄系金属からなるヨーク材にコイルが巻回されたステータとに分離した後に、上記ステータを、回転軸とこの回転軸に一端部が固定された可撓性を有する線材とが筒体内を上記回転軸回りに回転する破砕機の上記筒体に投入して破砕し、少なくとも上記鉄系金属と上記コイルとを分離させて回収することを特徴とする請求項1または2に記載のモータのリサイクル方法。
【請求項4】
上記ステータは、樹脂およびその他金属を含むとともに、上記ステータを上記破砕機に投入して破砕した際に、鉄系金属とコイルと樹脂とその他金属とを分離させることを特徴とする請求項3に記載のモータのリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147608(P2012−147608A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5229(P2011−5229)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】