説明

リクライニング椅子

【課題】肘掛けの内部に、操作手段とリクライニング機構とに連係されたケーブルを、前後左右方向に移動するのを防止し、他の部材と干渉しないように、整然と配索しうるようにしたリクライニング椅子を提供する。
【解決手段】肘掛け4を、内外両側面が開口された枠状のフレーム12を有するものとし、このフレーム12の前記両開口10を、取外し可能に装着された内カバーと外カバー17により閉塞し、フレーム12における下部と前部の内面に、操作手段に連結されたケーブル24が、フレーム12の外側方に移動するのを防止する側方移動防止片20、21と、同じく、フレーム12の内側方及び後方に移動するのを防止する倒立L字状断面をなすケーブル保持片26とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肘掛けに設けた操作手段と、前後傾動可能な背凭れに設けたリクライニング機構とを、ケーブルにより連係し、操作手段を操作することにより、背凭れを傾動させうるようにしたリクライニング椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなリクライニング椅子は、例えば特許文献1〜3に記載されており、公知である。
【特許文献1】特開平6−32159号公報
【特許文献2】特開平11−225842号公報
【特許文献3】特開2006−143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1〜3に記載されているリクライニング椅子のように、操作手段とリクライニング機構とを、ケーブルにより連係してなるものにおいては、ケーブルが外部に露出しないように、単に中空状とした肘掛けの内部にケーブルを挿通して配索しているのが一般的である。
このようにすると、肘掛け内においてケーブルが保持されていないため、操作手段の操作時にケーブルが動いたりすると、肘掛けの内面や他の部材と接触する恐れがある。
【0004】
また、例えば物品載置用のテーブルを肘掛けに取付け、このテーブルを、不使用時に肘掛けの内部に格納しておけるようにした椅子においては、肘掛け内のテーブルと干渉しない位置に、ケーブルを、前後左右方向に移動するのを防止しながら、簡単な手段により整然と配索したり、ケーブルのメンテナンス等をいかに容易に行うかが、課題となっている。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、肘掛けの内部に、操作手段とリクライニング機構とに連係されたケーブルを、他の部材と干渉しないように保持し、整然と配索しうるようにするとともに、ケーブルのメンテナンス等を容易に行いうるようにしたリクライニング椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1)背凭れのリクライニング機構に連係されたケーブルを、肘掛けの内部に挿通し、その端部を、肘掛けの前上部に設けた操作手段に連結し、この操作手段を操作することにより、前記背凭れを傾動しうるようにしてなるリクライニング椅子において、前記肘掛けを、内外両側面が開口された枠状のフレームを有するものとし、このフレームの前記両開口を、取外し可能に装着された内カバーと外カバーにより閉塞し、前記フレームにおける少なくとも前部側の内面に、前記操作手段に連結されたケーブルが、フレームの一側方に移動するのを防止する側方移動防止片と、同じく、フレームの他側方及び後方に移動するのを防止する倒立L字状断面をなすケーブル保持片とを設ける。
【0007】
(2) 上記(1)項において、側方移動防止片を、ケーブルの配索方向に沿って複数設け、かつケーブル保持片を、前記複数の側方移動防止片間に位置するようにして設ける。
【0008】
(3) 上記(1)または(2)項において、ケーブル保持片の先端を、内カバーまたは外カバーの内面に近接させる。
【0009】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、側方移動防止片を、内カバーまたは外カバーをフレームにねじ止めするための取付片を兼ねるものとする。
【0010】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、フレームにおける内外両側面の開口と近接する部分に、それぞれ内カバーと外カバーの外周部が嵌合される凹入段部を設ける。
【0011】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、肘掛けに、テーブルを、肘掛けの内部に格納された不使用位置から、座体の前部上方おいて水平をなす使用位置まで移動しうるように設け、かつ前記テーブルを不使用位置に停止させるストッパを、側方移動防止片とケーブル保持片より離間するようにして、フレームの前部側の内面に設ける。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ケーブルは、側方移動防止片とケーブル保持片とにより保持されているので、肘掛け内において、前後及び左右方向に動くのが防止され、フレームの前部の内面に沿って上下方向に整然と配索することができる。従って、ケーブルが、肘掛け内の他の部材と干渉する恐れがなくなる。
また、内カバーと外カバーは、フレームに取外し可能に装着されているので、それらを取り外すことにより、ケーブルの配索作業やメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、ケーブルを、その配索方向に沿って安定よく保持されるので、肘掛け内の他の部材と干渉する恐れはより小さくなる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、ケーブルは、ケーブル保持片と、内カバーまたは外カバーの内面とにより囲まれた空間に位置することとなるので、ケーブル保持片から簡単に外れる恐れがない。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、側方移動防止片を別途設ける必要がないので、フレームや、それを製造する型等の構造が簡素化し、コスト低減が図れる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、内カバー及び外カバーを、簡単に位置決めしてフレームの内外両側面に装着しうるとともに、両カバーとフレームの側面同士を同一面に整合させうるので、見栄えが向上する。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、テーブルは、肘掛け内に配索されたケーブルと離間した位置に停止されて格納されるので、ケーブルにテーブルが干渉する恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、例えば鉄道車両の客室に設置される本発明の二人掛け用のリクライニング椅子の斜視図、図2は、同じく平面図である。
【0019】
図1および図2において、リクライニング椅子(以下、椅子と略称する)1は、図示しない車両の床面に固着された水平回動式の基台の上部に、同じく図示しない旋回機構を介して左右2列並設され、図2に示す回転中心Oを中心として、180°水平回動させることにより、車両の進行方向に合わせて、椅子1を、前向きと後向きとに180°変えられるようになっている。
【0020】
椅子1は、座体2、2と、その後部より起立する背凭れ3、3と、各座体2の外側の側部より起立する肘掛け4、4とを備え、これら全ての部材は図示しないフレームに取り付けられている。
左右の肘掛け4、4は、互いに左右対称をなし、それぞれが、上端が開口する垂直扁平箱状の肘掛け本体5と、その上端開口部を開閉する蓋体6とを備え、図5及び図6に示すように、肘掛け本体5内には、テーブル7が格納されている。
【0021】
肘掛け4の前上部には、ヒンジ機構8が取付けられ、このヒンジ機構8により、テーブル7は、肘掛け4内に格納された不使用位置と、図6の2点鎖線で示すように、不使用位置から、左右方向を向く軸回りに上方に回動したはね上げ位置と、図2に示すように、はね上げ位置から前後方向を向く軸回りに、椅子1の内側方に下向き回動して、座体2の前部上方においてほぼ水平となる使用位置とに移動可能として、肘掛け4に枢着されている。
次に、この肘掛け4の詳細について説明する。
【0022】
図3〜図6に示すように、肘掛け本体5は、内外両側面と上面とに、寸法の大きい開口9、10、11が形成された側面視倒立台形枠状のフレーム12と、このフレーム12の内側面における開口9の周囲に形成された凹入段部9aに嵌合され、止めねじ13により取付けられた、開口9を塞ぐ内カバー14と、フレーム12の外側面における開口10の周囲に形成された凹入段部10aに嵌合され、植え込みボルト15とナット16とにより取付けられた、開口10を塞ぐ外カバー17とを備えている。
【0023】
内カバー14には、フレーム12の内側の開口9を通って、フレーム12内に凹入する凹部14aが設けられている。この凹部14aは、座体2の上面から上方、かつ背凭れ3の前面から前方に設けられており、後部は浅く、前方に行くほど深くなるようにしてある。
【0024】
外カバー17の内側面には、板ばね状の弾性部材18の上下の端部が、上記と同様の植え込みボルト15とナット16とをもって固着されている。 また、内カバー14の凹部14aの外側面における上記弾性部材18と対向する位置にも、板ばね状の弾性部材(図示略)が固着されている。
【0025】
これら両弾性部材により、テーブル7を内外から挾圧把持することにより、テーブル7を、格納位置において、安定して弾圧保持することができるとともに、テーブル7の移動に適度の抵抗力を付与することができるようにしてある。
【0026】
図5および図6に示すように、フレーム12内の下部には、前上方を向くストッパ支持板19が、フレーム12の下部と前部の内面に、開口10と近接するようにして突設された、外カバー17取付用の取付片20、21に固着されており、その後部上面には、テーブル7が格納位置に達したとき、その下端部が当接するようにしたゴム等の弾性体からなるストッパ22が設けられている。なお、取付片20、21は、後記するケーブル24の外側方への移動を防止する側方移動防止片も兼ねている。
【0027】
肘掛け本体5におけるフレーム12の前端上部内面には、背凭れ3をリクライニングするための操作ボタン23が設けられている。
操作ボタン23には、例えばボーデンケーブル等のケーブル24の一端部が連結され、かつ他端部は、図8に示すように、背凭れ3のリクライニング機構におけるガススプリング25のプッシュバルブを押動するための押圧レバー(いずれも図示略)に連結されている。操作ボタン23を押すと、ガススプリング25のロックが解除され、背凭れ3を前後に自由に傾動させうるとともに、操作ボタン23から手を離すと、背凭れ3を所望の後傾位置にロックすることができる。
【0028】
ケーブル24は、肘掛け4内に、つぎのように配索されている。
図5〜図7に示すように、フレーム12の内側面における開口9及び凹入段部9aが形成されている薄肉の縁片12a の前部側の外面には、ケーブル24の浮き上がり、すなわち後方と内側方への移動を防止するケーブル保持片26が、側方移動防止片を兼ねる上述した下部及び上部の取付片20、21との間に位置するように、かつフレーム12の内面と近接して対向するとともに、先端が外カバー17の内側面と近接するようにして、外向きに突設されている。
【0029】
ケーブル24は、ケーブル保持片26の下方に挿通させるとともに、上下の取付片20、21の内側面と近接するようにして、フレーム12の前部内面に沿って上下方向に配索され、肘掛け4の下端部から座体2側に引き出されて、ガススプリング25の押圧レバーに連結されている。
【0030】
このようにケーブル24を配索すると、ケーブル24は、上下の取付片20、21により、外側方に移動するのが防止され、かつ縁片12a とケーブル保持片26により倒立L字状断面に形成されて、内側方と後方への移動が防止されるので、肘掛け4内において、前後及び左右方向に動くのが防止され、フレーム12の前部の内面に沿って上下方向に整然と配索される。
従って、ケーブル24が、テーブル7や他の部材と干渉する恐れがなくなる。
【0031】
また、ケーブル24を、上下の取付片20、21に近接させるとともに、ケーブル保持片26の下方に挿通するだけで、容易に保持することができる。
さらに、フレーム12の内側面と外側面を開口9、10し、これらの開口9、10に、内カバー14と外カバー17とを取外し可能に取り付けているので、それらの一方を取り外すことにより、ケーブル24の配索作業やメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、側方移動防止片を兼ねる取付片20、21を2個、ケーブル保持片26を1個のみとしてあるが、それらを、ケーブル24の配索方向に沿って2個以上及び複数設けてもよい。この際にも、ケーブル保持片26は、互いに隣接する取付片間に位置させればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、外カバー17の取付片20、21を、ケーブル24の側方移動防止片として兼用しているが、それらの取付片20、21とは別に、専用の側方移動防止片を設けてもよい。
【0034】
フレーム12の内側面に、縁片12a を設けないときには、ケーブル保持片26を倒立L字状断面とし、フレーム12の内面に直接設けてもよい。
【0035】
上記実施形態とは反対に、取付片20、21をフレーム12の内側面側に、ケーブル保持片26を、フレーム12の外側面側に、それぞれ設けてもよい。
本発明は、上記鉄道車両用のリクライニング椅子の外、オフィス等で使用されるリクライニング椅子にも適用しうることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の二人掛け用リクライニングの椅子の斜視図である。
【図2】同じく、一方のテーブルを使用位置としたときの平面図である。
【図3】肘掛け本体より内カバーを外し、かつ蓋体を開いたときの内方より見た斜視図である。
【図4】肘掛け本体より内カバーを外し、かつ蓋体を閉じたときの内方より見た側面図である。
【図5】肘掛け本体より外カバーを外したときの外方より見た斜視図である。
【図6】肘掛け本体より外カバーを外したときの外方より見た側面図である。
【図7】図6のVII-VII線拡大縦断端面図である。
【図8】リクライニング椅子の後面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 リクライニング椅子
2 座体
3 背凭れ
4 肘掛け
5 肘掛け本体
6 蓋体
7 テーブル
8 ヒンジ機構
9 開口
9a 凹入段部
10 開口
10a 凹入段部
11 開口
12 フレーム
12a 縁片
13 止めねじ
13a 凹部
14 内カバー
15 植え込みボルト
16 ナット
17 外カバー
18 弾性部材
19 ストッパ支持板
20 取付片(側方移動防止片)
21 取付片(側方移動防止片)
22 ストッパ
23 操作ボタン(操作手段)
24 ケーブル
25 ガススプリング
26 ケーブル保持片
O 回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れのリクライニング機構に連係されたケーブルを、肘掛けの内部に挿通し、その端部を、肘掛けの前上部に設けた操作手段に連結し、この操作手段を操作することにより、前記背凭れを傾動しうるようにしてなるリクライニング椅子において、
前記肘掛けを、内外両側面が開口された枠状のフレームを有するものとし、このフレームの前記両開口を、取外し可能に装着された内カバーと外カバーにより閉塞し、前記フレームにおける少なくとも前部側の内面に、前記操作手段に連結されたケーブルが、フレームの一側方に移動するのを防止する側方移動防止片と、同じく、フレームの他側方及び後方に移動するのを防止する倒立L字状断面をなすケーブル保持片とを設けたことを特徴とするリクライニング椅子。
【請求項2】
側方移動防止片を、ケーブルの配索方向に沿って複数設け、かつケーブル保持片を、前記複数の側方移動防止片間に位置するようにして設けてなる請求項1記載のリクライニング椅子。
【請求項3】
ケーブル保持片の先端を、内カバーまたは外カバーの内面に近接させてなる請求項1または2記載のリクライニング椅子。
【請求項4】
側方移動防止片を、内カバーまたは外カバーをフレームにねじ止めするための取付片を兼ねるものとした請求項1〜3のいずれかに記載のリクライニング椅子。
【請求項5】
フレームにおける内外両側面の開口と近接する部分に、それぞれ内カバーと外カバーの外周部が嵌合される凹入段部を設けてなる請求項1〜4のいずれかに記載のリクライニング椅子。
【請求項6】
肘掛けに、テーブルを、肘掛けの内部に格納された不使用位置から、座体の前部上方おいて水平をなす使用位置まで移動しうるように設け、かつ前記テーブルを不使用位置に停止させるストッパを、側方移動防止片とケーブル保持片より離間するようにして、フレームの前部側の内面に設けてなる請求項1〜5のいずれかに記載のリクライニング椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−66100(P2009−66100A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236229(P2007−236229)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】