説明

リチウムイオン二次電池の製造方法

【課題】ピンホール(気泡痕)のない良好なセパレータ層を、正極または負極の表面に形成することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】正極130または負極120の表面に、ポリオレフィン微粒子151を含むペースト18を塗布し、これを乾燥させて、ポリオレフィン微粒子151を含むセパレータ層150を形成するセパレータ層形成工程を備える。セパレータ層形成工程では、ペーストの固形分としてポリオレフィン微粒子151と増粘剤とを含むペースト18を用いる。また、ペースト18の固形分中の増粘剤の含有率を、0.1〜0.4wt%の範囲内とし、且つ、ペースト18の固形分率を35〜39wt%の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として注目されている。リチウムイオン二次電池では、正極と負極との間の電気的絶縁性を確保するために、正極と負極との間にセパレータを介在させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−149906号公報
【0004】
特許文献1には、正極及び/又は負極の表面に、塗布により形成されるセパレータが設けられたリチウムイオン二次電池が開示されている。このセパレータは、非電気伝導性の粉体と非電気伝導性の結合材とを含む多孔質膜である。具体的には、実施例1では、非電気伝導性の粉体と非電気伝導性の結合材とを溶剤に混合して塗料(ペースト)を調整し、この塗料(ペースト)を、正極(詳細には、正極活物質層)の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の製法により、正極または負極の表面に塗料(ペースト)を塗布したとき、ペーストの一部が電極(正極または負極)の内部に染み込むことがあった。これにより、電極(正極または負極)の空孔内から空気が押し出され、この空気が気泡となってペースト内に進入することがあった。その結果、ペーストを乾燥させてなるセパレータ層に、ピンホール(気泡痕)が発生し、セパレータ層の電気絶縁性が低下する虞があった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ピンホール(気泡痕)のない良好なセパレータ層を、正極または負極の表面に形成することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、正極及び負極を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、上記正極または上記負極の表面に、ポリオレフィン微粒子を含むペーストを塗布し、これを乾燥させて、ポリオレフィン微粒子を含むセパレータ層を形成する、セパレータ層形成工程を備え、上記セパレータ層形成工程では、上記ペーストの固形分として上記ポリオレフィン微粒子と増粘剤とを含むペーストを用い、上記ペースト固形分中の上記増粘剤の含有率を、0.1〜0.4wt%の範囲内とし、且つ、上記ペーストの固形分率を35〜39wt%の範囲内とするリチウムイオン二次電池の製造方法である。
【0008】
上述の製造方法では、セパレータ層形成工程において、正極または負極の表面(詳細には、正極合材層または負極合材層の表面)に、ポリオレフィン微粒子を含むセパレータ層を形成する。このセパレータ層形成工程では、ペーストの固形分としてポリオレフィン微粒子と増粘剤とを含むペーストを用いる。すなわち、溶媒(例えば、水)に、固形分であるポリオレフィン微粒子と増粘剤を混合してなるペーストを用いる。
【0009】
特に、ペースト固形分中の増粘剤の含有率を、0.1〜0.4wt%の範囲内の値とする。すなわち、ペーストの固形分を、99.9〜99.6wt%のポリオレフィン微粒子と、0.1〜0.4wt%の増粘剤とにより構成(ポリオレフィン微粒子と増粘剤とで100wt%の固形分になる)する。
【0010】
さらに、ペーストの固形分率を35〜39wt%の範囲内とする。すなわち、ペーストを、35〜39wt%の固形分(ポリオレフィン微粒子と増粘剤)と、65〜61wt%の溶媒とにより構成(固形分と溶媒とで100wt%のペーストとなる)する。
【0011】
このようなペーストを用いることで、正極または負極の表面(詳細には、正極合材層または負極合材層の表面)に対するペーストの接触角を70〜100°の範囲内にすることができ、その結果、ペーストの一部が電極(正極または負極)の内部に染み込むのを抑制することができる。これにより、ペーストを乾燥させてなるセパレータ層に、ピンホール(気泡痕)が発生するのを抑制することができ、その結果、セパレータ層の電気絶縁性を確保することができる。
【0012】
さらには、上述のペーストは、レベリング性が良好になるので、ペーストの塗膜表面を平滑にする(表面の凹凸を抑制する)ことができ、その結果、ペーストを乾燥させてなるセパレータ層の表面を平滑にする(表面の凹凸を抑制する)ことができる。これにより、正極または負極の表面(詳細には、正極合材層または負極合材層の表面)に、セパレータ層を適切に形成することができる。
【0013】
以上より、上述の製造方法によれば、正極または負極の表面に、ピンホール(気泡痕)のない良好なセパレータ層を、適切に形成することができる。
【0014】
なお、ポリオレフィン微粒子としては、ポリエチレン微粒子、ポリプロピレン微粒子などが好適である。また、ポリエチレンやポリプロピレンの誘導体からなる微粒子を用いることもできる。具体的には、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体などの微粒子を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】リチウムイオン二次電池の斜視図である。
【図2】同リチウムイオン二次電池の正極の斜視図である。
【図3】同リチウムイオン二次電池の負極の斜視図である。
【図4】同リチウムイオン二次電池のセパレータ層付き負極の斜視図である。
【図5】実施形態にかかるグラビア塗工装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態にかかるリチウムイオン二次電池について説明する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、電極体110と、これを収容する電池ケース180とを備える、リチウムイオン二次電池である。
【0017】
電池ケース180は、アルミニウムからなり、直方体形状をなしている。この電池ケース180は、電池ケース本体181と封口蓋182を有する。このうち、電池ケース本体181は、有底矩形箱形状をなしている。なお、電池ケース本体181と電極体110との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)を介在させている。
【0018】
また、封口蓋182は、矩形板状であり、電池ケース本体181の開口を閉塞して、この電池ケース本体181に溶接されている。この封口蓋182には、矩形板状の安全弁197が封着されている。
【0019】
電極体110は、帯状の正極130及び帯状の負極120を扁平形状に捲回した捲回電極体である(図1参照)。詳細には、長手方向DAに延びる帯状の正極130及び負極120を、長手方向DAに捲回して、捲回型の電極体110を形成している(図1〜図3参照)。電極体110内には、非水電解液160が含浸している。
【0020】
正極130は、図2に示すように、長手方向DAに延びる帯状で、アルミニウム箔からなる正極集電部材138と、この正極集電部材138の両面に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの正極合材層131,131とを有している。正極合材層131は、正極活物質137と、アセチレンブラックからなる導電材と、PTFE(結着剤)と、CMC(増粘剤)とを含んでいる。なお、図2では、正極130の幅方向をDBとして表している。
【0021】
本実施形態では、正極活物質137として、LiNi1/3Mn1/3Co1/32を用いている。また、正極130のうち正極合材層131が塗工されていない部位(すなわち、正極集電部材138のみからなる部位)を、正極未塗工部130bという。この正極未塗工部130bは、正極130の幅方向DBの一端部に位置し、長手方向DAに帯状に延びている。
【0022】
また、負極120は、図3に示すように、長手方向DAに延びる帯状で銅箔からなる負極集電部材128と、この負極集電部材128の両面上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの負極合材層121,121とを有している。負極合材層121は、負極活物質127とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMC(カルボキシメチルセルロース)を含んでいる。なお、図3では、負極120の幅方向をDBとして表している。
【0023】
本実施形態では、負極活物質127として、黒鉛を用いている。また、負極120のうち負極合材層121が塗工されていない部位(すなわち、負極集電部材128のみからなる部位)を、負極未塗工部120bという。この負極未塗工部120bは、負極120の幅方向DBの一端部に位置し、長手方向DAに帯状に延びている。
【0024】
ところで、本実施形態では、負極120(詳細には、負極合材層121)の表面に、セパレータ層150が形成されている(図4参照)。このセパレータ層150は、ポリオレフィン微粒子151(粉末)を、負極120(詳細には、負極合材層121)の表面に固定(固着)したものである。なお、本実施形態では、ポリオレフィン微粒子151として、ポリエチレン微粒子を用いている。具体的には、ポリエチレン微粒子の水分散体である、三井化学製のケミパール(商品名)を用いている。
【0025】
従って、本実施形態では、図4に示すように、負極120とセパレータ層150とが一体となって、セパレータ層付き負極140を形成している。従って、本実施形態では、正極130とセパレータ層付き負極140とを重ねて、長手方向DAに捲回して、扁平捲回型の電極体110を形成している(図1〜図4参照)。正極130とセパレータ層付き負極140とを重ねて捲回することで、正極130と負極120との間を、セパレータ層150により電気的に絶縁することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、セパレータ層150は、ポリオレフィン微粒子151と増粘剤とを含んでいる。なお、増粘剤として、CMC(カルボキシメチルセルロース)を用いている。具体的には、CMCとして、第1工業製薬製のセロゲン(商品名)を用いている。また、ポリオレフィン微粒子151(ポリエチレン微粒子)と増粘剤(CMC)との割合を、99.9〜99.6:0.1〜0.4(wt%)としている。従って、セパレータ層150中の増粘剤(CMC)の含有率を、0.1〜0.4wt%の範囲内としている。また、セパレータ層150の厚みを、30μmとしている。
【0027】
また、ポリオレフィン微粒子151(ポリエチレン微粒子)の平均粒径を、2.5μmとしている。なお、ポリエチレン微粒子151の平均粒径の値は、レーザー回折・散乱式粒径粒度分布測定法によるD50の値を採用している。測定装置として、日機装株式会社製のマイクロトラックを用いている。
【0028】
また、電極体110の正極130(詳細には、正極未塗工部130b)には、クランク状に屈曲した板状の正極接続部材191が溶接されている(図1参照)。さらに、負極120(詳細には、負極未塗工部120b)には、クランク状に屈曲した板状の負極接続部材192が溶接されている。正極接続部材191及び負極接続部材192のうち、それぞれの先端に位置する正極端子部191A及び負極端子部192Aは、封口蓋182を貫通して蓋表面182Aから突出している。なお、正極端子部191Aと封口蓋182との間、及び、負極端子部192Aと封口蓋182との間には、それぞれ、電気絶縁性の樹脂からなる絶縁部材195を介在させている。
【0029】
非水電解液160は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを混合した有機溶媒に、溶質としてLiPF6を添加した非水電解液である。なお、非水電解液160中のLiPF6の濃度は、1mol/Lとしている。
【0030】
次に、実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
まず、電極体110を形成する。具体的には、正極活物質137とアセチレンブラック(導電材)とPTFE(結着剤)とCMC(増粘剤)とを混合し、これに溶媒を混合して、正極スラリを作製する。次いで、この正極スラリを、正極集電部材138の表面(両面)に塗工し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、正極集電部材138の表面(両面)に正極合材層131が形成された正極130を得た(図2参照)。
【0031】
また、負極活物質127(黒鉛)とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを水中で混合して、負極スラリを作製した。次いで、この負極スラリを、銅箔からなる負極集電部材128の表面(両面)に塗工し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、負極集電部材128の表面(両面)に負極合材層121が形成された負極120を得た(図3参照)。
【0032】
また、固形分であるポリオレフィン微粒子151(ポリエチレン微粒子)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを、99.9〜99.6:0.1〜0.4(wt%)の割合で混合し、これを溶媒(水)に混合して、ペースト18を作製する。このように、本実施形態では、ペースト固形分中の増粘剤の含有率を、0.1〜0.4wt%の範囲内の値としている。すなわち、ペースト18の固形分を、99.9〜99.6wt%のポリオレフィン微粒子151と、0.1〜0.4wt%の増粘剤(CMC)とにより構成(ポリオレフィン微粒子151とCMCとで100wt%の固形分になる)する。
【0033】
さらに、本実施形態では、ペースト18の固形分率を35〜39wt%の範囲内としている。すなわち、ペースト18を、35〜39wt%の固形分(ポリオレフィン微粒子151とCMC)と、65〜61wt%の溶媒(水)とにより構成(固形分と溶媒とで100wt%のペースト18となる)している。
【0034】
次いで、セパレータ層形成工程において、上述のペースト18を、負極120の負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させる。本実施形態では、図5に示すように、グラビア塗工装置10を用いて、上述のペースト18を、負極120の負極合材層121の表面に塗布した。
【0035】
ここで、グラビア塗工装置10について説明する。グラビア塗工装置10の塗工機構部20に備えられるグラビアロール21は、その一部(具体的には、略半分)が、塗工液供給機25に設けられた収容部25aの内側に配置される。塗工液供給機25の収容部25a内に、ペースト18が、流路25bを通じて連続的に供給される。
【0036】
グラビアロール21の外周面21aは、ペースト18を保持するため、凹凸形状(彫刻版目)になっている。グラビアロール21の外周面21aに付着したペースト18は、塗工位置Pにおいて、負極120の表面に塗布される。なお、図5に示す矢印は、グラビアロール21の回転方向を示している。負極120は、図5において、左から右に向かって、一定のスピードで搬送される。
【0037】
上述の構成を有するグラビア塗工装置10では、グラビアロール21が、中心軸の回りに回転することにより、収容部25a内のペースト18を、グラビアロール21の外周面21aに順次付着させてゆく。そして、グラビアロール21の外周面21aに付着した過剰なペースト18を、ドクターブレード22によって掻き取った後、グラビアロール21の外周面21aに付着している適量のペースト18を、グラビアロール21の回転動作により、塗工位置Pにおいて、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に順次塗布してゆく。
【0038】
その後、負極120の表面に塗布したペースト18を乾燥させることにより、負極120(詳細には、負極合材層121)の表面に、厚み30μmのセパレータ層150を形成した。このようにして、負極120とセパレータ層150とが一体となった(負極120の表面にセパレータ層150が固定された)、セパレータ層付き負極140が形成される。
【0039】
本実施形態では、前述のようなペースト18を用いることで、上述のようにグラビア塗工装置10を用いて負極120の表面にペースト18を塗布する際、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対するペースト18の接触角を70〜100°の範囲内にすることができる。その結果、ペースト18の一部が負極120(詳細には、負極合材層121)の内部に染み込むのを抑制することができる。
【0040】
これにより、ペースト18を乾燥させてなるセパレータ層150に、ピンホール(気泡痕)が発生するのを抑制することができ、その結果、セパレータ層150の電気絶縁性を十分に確保することができる。
【0041】
さらには、上述のペースト18は、レベリング性が良好になるので、ペースト18の塗膜表面を平滑にする(表面の凹凸を抑制する)ことができ、その結果、ペースト18を乾燥させてなるセパレータ層150の表面を平滑にする(表面の凹凸を抑制する)ことができる。これにより、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に、良好なセパレータ層150を適切に形成することができる。
【0042】
その後、セパレータ層付き負極140と正極130とを重ねて、長手方向DAに捲回して、電極体110を形成する。このようにして、捲回型の電極体110を形成した(図1参照)。
【0043】
次に、負極120(負極未塗工部120b)に負極接続部材192を溶接し、正極130(正極未塗工部130b)に正極接続部材191を溶接する。次いで、負極接続部材192及び正極接続部材191を溶接した電極体110を、電池ケース本体181内に挿入した後、非水電解液160を注入する。その後、封口蓋182で電池ケース本体181の開口を閉塞した状態で、封口蓋182と電池ケース本体181とを溶接する。これにより、本実施形態のリチウムイオン二次電池100が完成する。
【0044】
(実施例1)
実施例1では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、0.1wt%とした。すなわち、ペースト18の固形分を、99.9wt%のポリオレフィン微粒子151(ポリエチレン微粒子)と、0.1wt%の増粘剤(CMC)とにより構成した。
【0045】
さらに、本実施例1では、ペースト18の固形分率を39wt%とした。すなわち、ペースト18を、39wt%の固形分(ポリオレフィン微粒子151とCMC)と、61wt%の溶媒(水)とにより構成した。具体的には、固形分(ポリオレフィン微粒子151とCMC)と溶媒(水)との割合を39:61(重量比)として、固形分(ポリオレフィン微粒子151とCMC)と溶媒(水)とを混合して、ペースト18を作製した。
【0046】
実施例1のペースト18について、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。具体的には、25℃の温度環境下の空気中で、負極合材層121の表面に、1μLのペースト18を滴下して、ペースト18の液滴の接触角を測定した。その結果、接触角は80°であった。その結果を表1に示す。
【0047】
なお、本実施例1では、測定装置として、協和界面化学株式会社製の接触角計(CA−Sミクロ2型)を用いている。他の実施例及び比較例でも、実施例1と同じ条件で、接触角を測定している。
【0048】
【表1】

【0049】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、実施例1のペースト18を負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層150を形成した。実施例1のセパレータ層150について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、ピンホール(気泡痕)は見あたらなかった(表1参照)。これは、負極合材層121の表面に対する実施例1のペースト18の接触角が80°であるため、ペースト18が負極合材層121の内部に染み込むのを抑制することができたからである。これにより、実施例1のペースト18を乾燥させてなるセパレータ層150に、ピンホール(気泡痕)が発生するのを抑制することができたといえる。
【0050】
また、セパレータ層150の表面は、凹凸がなく平滑であった。これは、実施例1のペースト18のレベリング性が良好であるため、グラビアロール21の外周面21aの凹凸模様(彫刻版目)が、セパレータ層150(ペースト18の塗膜)の表面に残らなかったためである。
以上のように、本実施例1では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層150を形成することができた。
【0051】
(実施例2)
実施例2では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例1と同様に0.1wt%とした。すなわち、ペースト18の固形分を、99.9wt%のポリオレフィン微粒子151(ポリエチレン微粒子)と、0.1wt%の増粘剤(CMC)とにより構成した。
【0052】
また、本実施例2では、実施例1と異なり、ペースト18の固形分率を38wt%とした。すなわち、ペースト18を、38wt%の固形分(ポリオレフィン微粒子151とCMC)と、62wt%の溶媒(水)とにより構成した。具体的には、固形分(ポリオレフィン微粒子151とCMC)と溶媒(水)との割合を38:62(重量比)として、固形分(ポリオレフィン微粒子151とCMC)と溶媒(水)とを混合して、ペースト18を作製した。
【0053】
実施例2のペースト18について、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は78°であった(表1参照)。
【0054】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、実施例2のペースト18を負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層150を形成した。実施例2のセパレータ層150について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、ピンホール(気泡痕)は見あたらなかった(表1参照)。これは、負極合材層121の表面に対する実施例2のペースト18の接触角が78°であるため、ペースト18が負極合材層121の内部に染み込むのを抑制することができたからである。これにより、実施例2のペースト18を乾燥させてなるセパレータ層150に、ピンホール(気泡痕)が発生するのを抑制することができたといえる。
【0055】
また、実施例2のセパレータ層150の表面は、凹凸がなく平滑であった。これは、実施例2のペースト18のレベリング性が良好であるため、グラビアロール21の外周面21aの凹凸模様(彫刻版目)が、セパレータ層150(ペースト18の塗膜)の表面に残らなかったためである。
以上のように、本実施例2では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層150を形成することができた。
【0056】
(実施例3)
実施例3では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例1と同様に0.1wt%とした。しかしながら、本実施例2では、実施例1と異なり、ペースト18の固形分率を37wt%とした。
【0057】
実施例3のペースト18について、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は75°であった(表1参照)。
【0058】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、実施例3のペースト18を負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層150を形成した。実施例2のセパレータ層150について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、ピンホール(気泡痕)は見あたらなかった(表1参照)。これは、負極合材層121の表面に対する実施例2のペースト18の接触角が75°であるため、ペースト18が負極合材層121の内部に染み込むのを抑制することができたからである。
【0059】
また、実施例3のセパレータ層150の表面は、凹凸がなく平滑であった。これは、実施例3のペースト18のレベリング性が良好であるため、グラビアロール21の外周面21aの凹凸模様(彫刻版目)が、セパレータ層150(ペースト18の塗膜)の表面に残らなかったためである。
以上のように、本実施例3では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層150を形成することができた。
【0060】
(実施例4,5)
実施例4,5でも、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例1と同様に0.1wt%とした。しかしながら、本実施例4,5では、実施例1と異なり、ペースト18の固形分率を、それぞれ、36wt%、35wt%とした(表1参照)。
【0061】
実施例4,5のペースト18について、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は、それぞれ、72°、70°であった(表1参照)。
【0062】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、実施例4,5のペースト18を負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層150を形成した。実施例4,5のセパレータ層150について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、ピンホール(気泡痕)は見あたらなかった(表1参照)。これは、負極合材層121の表面に対する実施例4,5のペースト18の接触角が72°と70°であるため、ペースト18が負極合材層121の内部に染み込むのを抑制することができたからである。
【0063】
また、実施例4,5のセパレータ層150の表面は、凹凸がなく平滑であった。これは、実施例4,5のペースト18のレベリング性が良好であるため、グラビアロール21の外周面21aの凹凸模様(彫刻版目)が、セパレータ層150(ペースト18の塗膜)の表面に残らなかったためである。
以上のように、本実施例4,5では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層150を形成することができた。
【0064】
(比較例1)
比較例1では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例1と同様に0.1wt%とした。しかしながら、比較例1では、実施例1と異なり、ペーストの固形分率を、34wt%とした(表1参照)。
【0065】
比較例1のペーストについて、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は58°であった(表1参照)。
【0066】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例1のペーストを負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層を形成した。比較例1のセパレータ層について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、多数のピンホール(気泡痕)が見つかった(表1参照)。これは、負極合材層121の表面に対する比較例1のペーストの接触角が58°と小さいため、ペーストの一部が負極合材層121の内部に染み込んでしまったからである。これにより、比較例1のペーストを乾燥させてなるセパレータ層に、多数のピンホール(気泡痕)が発生したと考えられる。
以上のように、本比較例1では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層を形成することができなかった。
【0067】
(比較例2)
比較例2では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例1と同様に0.1wt%とした。しかしながら、比較例2では、実施例1と異なり、ペーストの固形分率を、40wt%とした(表1参照)。
【0068】
前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例2のペーストを負極合材層121の表面に塗布したところ、塗工中にペーストが凝集し、塗工不能となり、セパレータ層を形成することができなかった。これは、ペーストの固形分率が40wt%と高いためであると考えられる。この結果より、ペーストの固形分率を40wt%以上とした場合は、塗工中にペーストが凝集し、塗工不能になるといえる。
【0069】
(実施例6〜10)
実施例6〜10では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、いずれも0.2wt%とした。しかしながら、実施例6〜10では、ペースト18の固形分率を、39〜35wt%とした(表2参照)。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例6〜10のペースト18について、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は、87°〜78°であった(表2参照)。
【0072】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、実施例6〜10のペースト18を負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層150を形成した。実施例6〜10のセパレータ層150について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、ピンホール(気泡痕)は見あたらなかった(表2参照)。これは、負極合材層121の表面に対する実施例6〜10のペースト18の接触角が87°〜78°であるため、ペースト18が負極合材層121の内部に染み込むのを抑制することができたからである。
【0073】
また、実施例6〜10のセパレータ層150の表面は、凹凸がなく平滑であった。これは、実施例6〜10のペースト18のレベリング性が良好であるため、グラビアロール21の外周面21aの凹凸模様(彫刻版目)が、セパレータ層150(ペースト18の塗膜)の表面に残らなかったためである。
以上のように、本実施例6〜10では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層150を形成することができた。
【0074】
(比較例3)
比較例3では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例6〜10と同様に0.2wt%とした。しかしながら、比較例3では、実施例6〜10と異なり、ペーストの固形分率を、34wt%とした(表2参照)。
【0075】
比較例3のペーストについて、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は60°であった(表2参照)。
【0076】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例3のペーストを負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層を形成した。比較例3のセパレータ層について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、多数のピンホール(気泡痕)が見つかった(表2参照)。これは、負極合材層121の表面に対する比較例3のペーストの接触角が60°と小さいため、ペーストの一部が負極合材層121の内部に染み込んでしまったからである。これにより、比較例3のペーストを乾燥させてなるセパレータ層に、多数のピンホール(気泡痕)が発生したと考えられる。
以上のように、本比較例3では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層を形成することができなかった。
【0077】
(比較例4)
比較例4では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例6〜10と同様に0.2wt%とした。しかしながら、比較例4では、実施例6〜10と異なり、ペーストの固形分率を、40wt%とした(表2参照)。
【0078】
前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例4のペーストを負極合材層121の表面に塗布したところ、塗工中にペーストが凝集し、塗工不能となり、セパレータ層を形成することができなかった。これは、ペーストの固形分率が40wt%と高いためであると考えられる。
【0079】
(実施例11〜15)
実施例11〜15では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、いずれも0.3wt%とした。しかしながら、実施例11〜15では、ペースト18の固形分率を、39〜35wt%と異ならせた(表3参照)。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例11〜15のペースト18について、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は、96°〜85°であった(表3参照)。
【0082】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、実施例11〜15のペースト18を負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層150を形成した。実施例11〜15のセパレータ層150について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、ピンホール(気泡痕)は見あたらなかった(表3参照)。これは、負極合材層121の表面に対する実施例11〜15のペースト18の接触角が96°〜85°であるため、ペースト18が負極合材層121の内部に染み込むのを抑制することができたからである。
【0083】
また、実施例11〜15のセパレータ層150の表面は、凹凸がなく平滑であった。これは、実施例11〜15のペースト18のレベリング性が良好であるため、グラビアロール21の外周面21aの凹凸模様(彫刻版目)が、セパレータ層150(ペースト18の塗膜)の表面に残らなかったためである。
以上のように、本実施例11〜15では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層150を形成することができた。
【0084】
(比較例5)
比較例5では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例11〜15と同様に0.3wt%とした。しかしながら、比較例3では、実施例11〜15と異なり、ペーストの固形分率を、34wt%とした(表3参照)。
【0085】
比較例5のペーストについて、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は65°であった(表3参照)。
【0086】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例5のペーストを負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層を形成した。比較例5のセパレータ層について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、多数のピンホール(気泡痕)が見つかった(表3参照)。これは、負極合材層121の表面に対する比較例5のペーストの接触角が65°と小さいため、ペーストの一部が負極合材層121の内部に染み込んでしまったからである。これにより、比較例5のペーストを乾燥させてなるセパレータ層に、多数のピンホール(気泡痕)が発生したと考えられる。
以上のように、本比較例5では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層を形成することができなかった。
【0087】
(比較例6)
比較例6では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例11〜15と同様に0.3wt%とした。しかしながら、比較例6では、実施例11〜15と異なり、ペーストの固形分率を、40wt%とした(表3参照)。
【0088】
前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例6のペーストを負極合材層121の表面に塗布したところ、塗工中にペーストが凝集し、塗工不能となり、セパレータ層を形成することができなかった。これは、ペーストの固形分率が40wt%と高いためであると考えられる。
【0089】
(実施例16〜20)
実施例16〜20では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、いずれも0.4wt%とした。しかしながら、実施例16〜20では、ペースト18の固形分率を、39〜35wt%と異ならせた(表4参照)。
【0090】
【表4】

【0091】
実施例16〜20のペースト18について、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は、100°〜88°であった(表4参照)。
【0092】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、実施例16〜20のペースト18を負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層150を形成した。実施例16〜20のセパレータ層150について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、ピンホール(気泡痕)は見あたらなかった(表4参照)。これは、負極合材層121の表面に対する実施例16〜20のペースト18の接触角が100°〜88°であるため、ペースト18が負極合材層121の内部に染み込むのを抑制することができたからである。
【0093】
また、実施例16〜20のセパレータ層150の表面は、凹凸がなく平滑であった。これは、実施例16〜20のペースト18のレベリング性が良好であるため、グラビアロール21の外周面21aの凹凸模様(彫刻版目)が、セパレータ層150(ペースト18の塗膜)の表面に残らなかったためである。
以上のように、本実施例16〜20では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層150を形成することができた。
【0094】
(比較例7)
比較例7では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例16〜20と同様に0.4wt%とした。しかしながら、比較例3では、実施例16〜20と異なり、ペーストの固形分率を、34wt%とした(表4参照)。
【0095】
比較例7のペーストについて、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は68°であった(表4参照)。
【0096】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例7のペーストを負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層を形成した。比較例7のセパレータ層について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、多数のピンホール(気泡痕)が見つかった(表4参照)。これは、負極合材層121の表面に対する比較例7のペーストの接触角が68°と小さいため、ペーストの一部が負極合材層121の内部に染み込んでしまったからである。これにより、比較例7のペーストを乾燥させてなるセパレータ層に、多数のピンホール(気泡痕)が発生したと考えられる。
以上のように、本比較例7では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層を形成することができなかった。
【0097】
(比較例8)
比較例8では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、実施例16〜20と同様に0.4wt%とした。しかしながら、比較例8では、実施例16〜20と異なり、ペーストの固形分率を、40wt%とした(表4参照)。
【0098】
前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例8のペーストを負極合材層121の表面に塗布したところ、塗工中にペーストが凝集し、塗工不能となり、セパレータ層を形成することができなかった。これは、ペーストの固形分率が40wt%と高いためであると考えられる。
【0099】
(比較例9〜14)
比較例9〜14では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、いずれも、0.05wt%とした。しかしながら、比較例9〜14では、ペーストの固形分率を、39〜35wt%と異ならせた(表5参照)。
【0100】
【表5】

【0101】
比較例9〜14のペーストについて、実施例1と同様にして、負極120の表面(詳細には、負極合材層121の表面)に対する接触角を測定した。その結果、接触角は63°〜56°であった(表5参照)。
【0102】
また、前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例9〜14のペーストを負極合材層121の表面に塗布し、乾燥させて、セパレータ層を形成した。比較例9〜14のセパレータ層について、ピンホール(気泡痕)の有無を調査したところ、いずれにおいても多数のピンホール(気泡痕)が見つかった(表5参照)。
【0103】
これは、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を0.1wt%よりも小さくしたことにより、負極合材層121の表面に対する比較例9〜14のペーストの接触角が63°〜56°と小さくなり、その結果、ペーストの一部が負極合材層121の内部に染み込んでしまったためと考えられる。これにより、比較例9〜14のペーストを乾燥させてなるセパレータ層に、多数のピンホール(気泡痕)が発生したと考えられる。
以上のように、本比較例9〜14では、負極合材層121の表面に、良好なセパレータ層を形成することができなかった。
【0104】
(比較例15)
比較例15では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、比較例9〜14と同様に0.05wt%とした。しかしながら、比較例15では、ペーストの固形分率を、40wt%とした(表5参照)。
【0105】
前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例15のペーストを負極合材層121の表面に塗布したところ、塗工中にペーストが凝集し、塗工不能となり、セパレータ層を形成することができなかった。これは、ペーストの固形分率が40wt%と高いためであると考えられる。
【0106】
(比較例16〜22)
比較例16〜22では、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を、いずれも、0.5wt%とした。しかしながら、比較例16〜22では、ペーストの固形分率を、40〜34wt%に異ならせた。
【0107】
前述のように、グラビア塗工装置10を用いて、比較例16〜22のペーストを負極合材層121の表面に塗布しようとしたが、ペーストの粘性が高過ぎるため、塗工不能となり、セパレータ層を形成することができなかった。これは、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率が0.5wt%と高いためであると考えられる。この結果より、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を0.5wt%以上とした場合は、ペーストの粘性が高くなり過ぎて、塗工不能になるといえる。
【0108】
実施例1〜20及び比較例1〜22の結果より、ピンホール(気泡痕)のない良好なセパレータ層を形成するためには、ペースト固形分中の増粘剤(CMC)の含有率を0.1〜0.4wt%の範囲内とし、且つ、ペーストの固形分率を35〜39wt%の範囲内とするのが好ましいといえる。
【0109】
以上において、本発明を実施形態(実施例1〜20)に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0110】
例えば、実施形態では、負極120(詳細には、負極合材層121)の表面に、セパレータ層150を形成した。しかしながら、セパレータ層150を、正極130(詳細には、正極合材層131)の表面に形成するようにしても良い。すなわち、正極130とセパレータ層150とが一体となった、セパレータ層付き正極を形成するようにしても良い。
【0111】
また、実施形態では、セパレータ層150を構成するポリオレフィン微粒子151として、ポリエチレン微粒子を用いたが、ポリプロピレン微粒子など、ポリエチレンとは異なる他のポリオレフィンの微粒子を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0112】
10 グラビア塗工装置
18 ペースト
100 リチウムイオン二次電池
110 電極体
120 負極
121 負極合材層
130 正極
131 正極合材層
140 セパレータ層付き負極
150 セパレータ層
151 ポリオレフィン微粒子
160 非水電解液
180 電池ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、
上記正極または上記負極の表面に、ポリオレフィン微粒子を含むペーストを塗布し、これを乾燥させて、ポリオレフィン微粒子を含むセパレータ層を形成する、セパレータ層形成工程を備え、
上記セパレータ層形成工程では、
上記ペーストの固形分として上記ポリオレフィン微粒子と増粘剤とを含むペーストを用い、
上記ペースト固形分中の上記増粘剤の含有率を、0.1〜0.4wt%の範囲内とし、且つ、
上記ペーストの固形分率を35〜39wt%の範囲内とする
リチウムイオン二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84393(P2013−84393A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222268(P2011−222268)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】