説明

レジスト膜の形成方法及び感光性樹脂組成物

【課題】実用上問題となるような塗布ムラの発生がないレジスト膜を表示素子用大型基板上に効率的に形成することができる表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法、及び該形成方法に使用するための感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性樹脂、感光剤及び溶剤を含有してなる感光性樹脂組成物を表示素子用大型基板に塗布し、減圧乾燥してレジスト膜を形成する工程、及びレジスト膜が形成された前記大型基板を常圧で加熱する工程を有する、表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法であって、前記感光性樹脂組成物が、プロセスシミュレーターを用い、該組成物の固形分濃度が70重量%のときの22℃と25℃の蒸気圧、及び該組成物の固形分濃度が90重量%のときの25℃の蒸気圧を算出した場合に、所定の条件を満たすものである、表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法、及び前記感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜の形成方法及び感光性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法、及び該形成方法に使用するための感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、半導体集積回路素子、カラーフィルター、液晶表示素子などの製造において、微細加工を行うための材料として利用される。このような微細加工に際しては、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥してレジスト膜が形成される。次いで、このレジスト膜が、所定形状のフォトマスクを介して、紫外線、遠紫外線、電子線、X線などの各種の活性光線により露光され、さらに現像工程を経て、レジストパターンが形成される。
集積回路は年を追うごとに高集積化され、近年では0.5μm以下の微細加工を安定的に行うことができる技術が求められている。この要求に対応するために、感光性樹脂組成物には、解像度や感度などの転写特性に優れているのみならず、塗布ムラなどがなく、膜厚が高度に均一な塗膜を形成し得ることが必要とされる。これまでに、塗膜の均一性を向上させるために、感光性樹脂組成物を構成する溶媒の選択、界面活性剤の添加など、種々の方法が提案されている。
一方、液晶表示素子用の基板の製造においては、基板の寸法が大型化の一途をたどっており、すでに1,500mm×1,800mmの基板が稼動し、1,900mm×2,200mmの基板も一部稼動している。このような大型基板に感光性樹脂組成物を塗布するに当たっては、非回転型の塗布装置を用いるスピンレススリットコート法が好適に用いられる。スリットコート法によれば、使用する感光性樹脂組成物の量が減少し、タクトタイムが短縮するという利点もある。
しかし、非回転型の塗布装置を用いると、回転型の塗布装置を用いた場合に比べて、得られるレジスト膜の平坦性が低下するという問題がある。回転型の塗布装置では、感光性樹脂組成物に、基板に対して水平方向の力がはたらくため、塗膜表面が強制的に平坦化され、さらに大部分の溶媒が回転により除去されるので、残存する溶媒を加熱除去した後においてもレジスト膜の平坦性の低下が少ない。ところが、非回転型の塗布装置を用いた場合は、基板上の感光性樹脂組成物には平坦化する外力がはたらかず、感光性樹脂組成物が基板上に塗布された状態で平坦性の程度がほぼ決定される。さらに、感光性樹脂組成物には、良好な塗布性を担保するために多量の溶媒が用いられるので、乾燥後、加熱によって除去される溶媒量が多くなる。このために、得られるレジスト膜には塗布ムラが生じ、平坦性が低下する傾向が強くなる。
したがって、回転型の塗布装置を用いた場合に限らず、非回転型の塗布装置を用いた場合にも、平坦な塗膜を得ることが可能な感光性樹脂組成物の開発が進められている。例えば、スピンレスコーターなどの省液コーターを使用した際にも塗布性良好な着色感光性樹脂組成物として、着色剤、バインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤、溶剤及び界面活性剤を含んでなり、表面張力が25.5〜29.0mN/mである着色感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
また、流延塗布法を採用し、線状残痕や雲状残痕を生ずることなく、基板内部の塗布均一性に優れ、基板周辺の膜厚偏差が低いポジ型感光性樹脂組成物として、アルカリ可溶性樹脂、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル及び溶剤を含むポジ型感光性樹脂組成物であって、25℃における粘度が2.0〜5.0cpsであり、固形分の含量が6〜16重量%で、感光性樹脂組成物と液晶ディスプレー用大型基板との接触角が25度以下であるポジ型感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。
これらの感光性樹脂組成物によれば、一定の改善効果を得ることができるが、塗布ムラを十分に抑えることはできない。
【特許文献1】特開2004−126549号公報
【特許文献2】特開2004−233981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、実用上問題となるような塗布ムラの発生がないレジスト膜を表示素子用大型基板上に効率的に形成することができる表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法、及び該形成方法に使用するための感光性樹脂組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、表示素子用大型基板上へレジスト膜を形成するに際し、所定の固形分濃度との関係で所定の蒸気圧を有する感放射線性樹脂組成物を用いれば、実用上問題となるような塗布ムラの発生がないレジスト膜を効率的に形成できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕アルカリ可溶性樹脂、感光剤及び溶剤を含有してなる感光性樹脂組成物を表示素子用大型基板に塗布し、減圧乾燥してレジスト膜を形成する工程、及びレジスト膜が形成された前記大型基板を常圧で加熱する工程を有する、表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法であって、前記感光性樹脂組成物が、プロセスシミュレーターを用い、該組成物の固形分濃度が70重量%のときの22℃と25℃の蒸気圧、及び該組成物の固形分濃度が90重量%のときの25℃の蒸気圧を算出した場合に、以下の条件:
(1)固形分濃度が70重量%であるときの、22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)が13.3Pa(0.1Torr)以下であり、かつ
(2)固形分濃度が90重量%であるときの、25℃における蒸気圧が6.6Pa(0.05Torr)以上である、
を満たすものである、表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法、
〔2〕前記大型基板上のレジスト膜に活性光線を照射して該膜に潜像パターンを形成する工程、及び潜像パターンを現像し、パターン化されたレジスト膜を得る工程をさらに有する〔1〕記載のレジスト膜の形成方法、
〔3〕感光性樹脂組成物の溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、乳酸エチル又はγ−ブチロラクトンとの混合溶剤である〔1〕又は〔2〕記載のレジスト膜の形成方法、
〔4〕減圧乾燥を、到達圧力10〜4,000Paの条件で行う〔1〕〜〔3〕いずれか記載のレジスト膜の形成方法、
〔5〕前記大型基板への感光性樹脂組成物の塗布を非回転塗布法により行う〔1〕〜〔4〕いずれか記載のレジスト膜の形成方法、
〔6〕前記大型基板が少なくとも一辺の長さが800mm以上の基板である〔1〕〜〔5〕いずれか記載のレジスト膜の形成方法、並びに
〔7〕アルカリ可溶性樹脂、感光剤及び溶剤を含有してなる感光性樹脂組成物であって、プロセスシミュレーターを用い、該組成物の固形分濃度が70重量%のときの22℃と25℃の蒸気圧、及び該組成物の固形分濃度が90重量%のときの25℃の蒸気圧を算出した場合に、以下の条件:
(1)固形分濃度が70重量%であるときの、22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)が13.3Pa(0.1Torr)以下であり、かつ
(2)固形分濃度が90重量%であるときの、25℃における蒸気圧が6.6Pa(0.05Torr)以上である、
を満たす、〔1〕〜〔6〕いずれかに記載のレジスト膜の形成方法に使用するための感光性樹脂組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、実用上問題となるようなピン跡やウロコ状ムラなどの塗布ムラの発生がなく、膜表面の均一性に優れたレジスト膜を表示素子用大型基板上に効率的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法は、アルカリ可溶性樹脂、感光剤及び溶剤を含有してなる感光性樹脂組成物を表示素子用大型基板に塗布し、減圧乾燥してレジスト膜を形成する工程、及びレジスト膜が形成された前記大型基板を常圧で加熱(プリベイク)する工程を有する。前記感光性樹脂組成物としては、プロセスシミュレーターを用い、該組成物の固形分濃度が70重量%のときの22℃と25℃の蒸気圧、及び該組成物の固形分濃度が90重量%のときの25℃の蒸気圧を算出した場合に、以下の条件(以下、組成物条件という):
(1)固形分濃度が70重量%であるときの、22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)が13.3Pa(0.1Torr)以下であり、かつ
(2)固形分濃度が90重量%であるときの、25℃における蒸気圧が6.6Pa(0.05Torr)以上である、
を満たすポジ型の感光性樹脂組成物が使用される。
【0007】
大型液晶表示素子などの製造工程では、大型基板に感光性樹脂組成物を塗布するのに、通常、スリットコートなどの非回転塗布法が採用されるが、かかる塗布法では、前記の通り、ピン跡やウロコ状ムラなどの塗布ムラが発生しやすい。
ピン跡とは、基板に感光性樹脂組成物を塗布する際に基板を支持するピンの位置に現れる、レジスト膜に生ずる直径10mm程度の局所的な塗布ムラである。大型液晶表示素子などの作製においては、基板上にレジスト膜を形成する際、加熱(プリベイク)する前に、減圧乾燥工程が一般に併用される。減圧乾燥の際に溶剤の蒸発熱により基板温度が低下するが、ピンと接した部分だけはピンからの熱の供給により温度の低下が少ないために温度差が生じて、ピンと接した部分だけが溶剤の蒸発速度が速くなり、そのためにピン跡の塗布ムラが発生すると考えられる。
一方、ウロコ状ムラとは、レジスト膜の表面の不特定の位置に生ずるウロコ状に観察される塗布ムラである。減圧乾燥により感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥することで常温付近では塗膜の流動性は抑制されるが、未だ溶剤が残留していることから、プリベイクの際にレジスト膜が加熱されると残留溶剤が蒸発して乾燥が一層進行するのと並行して該膜の流動性が高くなり、そのためウロコ状ムラが発生すると考えられる。
感光性樹脂組成物の塗膜を減圧乾燥することにより、溶剤が蒸発し、流動性が低下して、溶剤以外のアルカリ可溶性樹脂や感光剤などの固形分が移動しにくくなるが、減圧乾燥後のレジスト膜では感光性樹脂組成物の固形分濃度は70重量%程度となる。また、プリベイクによりレジスト膜の乾燥が一層進み、該膜の流動性が実質的に消失する段階においては、感光性樹脂組成物の固形分濃度は90重量%程度となる。
本発明に使用する感光性樹脂組成物は、プロセスシミュレーターを用いて算出した、減圧乾燥後の感光性樹脂組成物の固形分濃度に相当する固形分濃度70重量%であるときの、該組成物の22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧の差が13.3Pa(0.1Torr)以下であるので、ピンと接した部分とそれ以外の部分に温度差が生じても、溶剤の蒸発速度の差は大きくはなく、ピン跡の塗布ムラの発生を抑制することができる。前記蒸気圧の差としては、好ましくは12Pa(0.09Torr)以下である。また、該感光性樹脂組成物は、プロセスシミュレーターを用いて算出した、プリベイクによりレジスト膜の乾燥が一層進んだ段階における感光性樹脂組成物の固形分濃度に相当する固形分濃度90重量%であるときの、該組成物の25℃における蒸気圧が6.6Pa(0.05Torr)以上であるので、ウロコ状ムラを実質的に生じさせることなく効果的に溶剤を蒸発させてレジスト膜を形成することができる。当該蒸気圧としては、通常、上限は20Pa(0.15Torr)である。
【0008】
プロセスシミュレーターとは、物性(物質の性質)データと現象の数学モデルを利用して、計算機上で対象プロセスを模擬すること(プロセスシミュレーション)により、その設計や運転方法についての検討を効果的に実施するためのソフトウェアである。プロセスシミュレーターは、物性データベースと反応や分離など各種単位操作を行う装置の数学モデルをユニットとして備える。プロセスシミュレーターによれば、従来、感光性樹脂組成物の構成成分として知られる任意の固形分に対し、任意の溶剤を単独で又は2種以上を組み合わせて感光性樹脂組成物を設計し、当該組成物の配合をプロセスシミュレーターに入力することで前記組成物条件に係る該組成物の蒸気圧を計算することができる。従って、前記組成物条件を満たした、本発明の感光性樹脂組成物の配合組成を容易に知ることができる。
市販のプロセスシミュレーターとしては、例えば、アスペンプラス(登録商標)[(株)アスペンテック ジャパン製]などを挙げることができる。アスペンプラスは、物性データを内蔵した化学・石油化学向けのプロセスシミュレーターで、定常状態計算や物性・パラメータ推算が可能なプロセスシミュレーターであり、化学工学分野では、実用的プロセスシミュレーターとして汎用されている。本発明の感光性樹脂組成物の組成物条件に係る蒸気圧の算出にはアスペンプラスが好適に使用される。本発明の感光性樹脂組成物の組成物条件に係る蒸気圧は、後述の実施例に従って算出することができる。なお、算出においては、感光性樹脂組成物をアルカリ可溶性樹脂と溶剤とからなる混合溶液と仮定して計算を実行する。
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物に用いるアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ性水溶液からなる現像液に可溶性の樹脂であれば特に制限はなく、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン−アクリル酸共重合体、ヒドロキシスチレン重合体、ポリビニルヒドロキシベンゾエートなどを挙げることができる。これらの中で、ノボラック樹脂を好適に用いることができる。これらのアルカリ可溶性樹脂は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ノボラック樹脂は、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを、酸性触媒を用いて脱水縮合することにより得られる樹脂である。ノボラック樹脂を製造するために用いるフェノール化合物は、一価のフェノール類であってもよく、レゾルシノールなどの二価以上の多価フェノールであってもよい。
【0010】
一価のフェノール化合物としては、例えば、フェノール;o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール;2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール;2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、3,5−ジエチルフェノール、2−t−ブチル−3−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノールなどのアルキルフェノール;2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2,3−ジメトキシフェノール、2,5−ジメトキシフェノールなどのアルコキシフェノール;2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノールなどのアリールフェノール;2−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノールなどのアルケニルフェノール;などを挙げることができる。
多価フェノール化合物としては、例えば、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、2−メトキシレゾルシノール、4−メトキシレゾルシノール;ヒドロキノン;カテコール、4−t−ブチルカテコール、3−メトキシカテコール;4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;ピロガロール;フロログリシノール;などを挙げることができる。
これらのフェノール化合物の中で、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノールを好適に用いることができる。フェノール化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0011】
フェノール化合物と脱水縮合させるアルデヒド化合物としては、脂肪族アルデヒド、脂環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドのいずれをも用いることができる。脂肪族アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどを挙げることができる。
脂環式アルデヒドとしては、例えば、シクロペンタンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレインなどを挙げることができる。
芳香族アルデヒドとしては、例えば、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,5−ジメチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−アニスアルデヒド、m−アニスアルデヒド、p−アニスアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピオンアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド、桂皮アルデヒドなどを挙げることができる。
これらのアルデヒド化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0012】
本発明においては、ノボラック樹脂の製造は、フェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合反応を、酸性触媒の存在下に行うことができる。酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸などを挙げることができる。かかる反応により得られる縮合反応生成物は、そのままノボラック樹脂として使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂は、低分子量成分を分別除去して用いることができる。低分子量成分を除去する方法としては、例えば、異なる溶解性を有する2種の溶媒中で樹脂を分別する液−液分別法、低分子量成分を遠心分離により除去する方法、薄膜蒸留法などを挙げることができる。前記のノボラック樹脂の場合、得られた縮合反応生成物を良溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコール溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒;などに溶解し、次いで水中に注いで沈殿させることにより、低分子量成分が除去されたノボラック樹脂を得ることができる。
本発明において使用するアルカリ可溶性のノボラック樹脂は、重量平均分子量が、2,000〜20,000であることが好ましく、2,500〜12,000であることがより好ましく、3,000〜8,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、単分散のポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物に使用する感光剤は、活性光線の照射により反応し、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性を変化させる機能を有する化合物であれば特に制限はないが、キノンジアジト基を有する化合物を好適に用いることができる。キノンジアジド基を有する化合物としては、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロリドなどの酸ハライドと、これと縮合反応し得るヒドロキシル基やアミノ基などの官能基、好ましくはヒドロキシル基を有する化合物とを反応させることによって得られるキノンジアジドスルホン酸エステルなどを挙げることができる。
酸ハライドとしては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−6−スルホニルクロリドなどを挙げることができる。これらの酸ハライドは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0014】
ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4,4'−ペンタヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノン;没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピルなどの没食子酸エステル;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパンなどのポリヒドロキシビスフェニルアルカン;トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニルメタン、4,4'−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールなどのポリヒドロキシトリスフェニルアルカン;1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのポリヒドロキシテトラキスフェニルアルカン;α,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、α,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α',α'−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレンなどのポリヒドロキシテトラキスフェニルキシレン;2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−p−クレゾール、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンジル)−p−クレゾール、4,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)レゾルシン、4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)レゾルシン、4,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−2−メチルレゾルシン、4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物とホルムアルデヒドとのトリマー;前記フェノール化合物とホルムアルデヒドとのテトラマー;ノボラック樹脂;などを挙げることができる。これらのヒドロキシル基を有する化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
酸ハライドとヒドロキシル基を有する化合物の反応は、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒中、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリなどの塩基性縮合剤の存在下で行うことができる。得られるキノンジアジドスルホン酸エステルのエステル化率は、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。エステル化率は、酸ハライドとヒドロキシル基を有する化合物との配合比により決定される。
本発明の感光性樹脂組成物において、感光剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、10〜30重量部であることがより好ましい。感光剤の配合量が、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、5〜40重量部であると、実効感度と残膜率、解像性などのレジスト特性のバランスに優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
本発明に用いる溶剤としては、例えば、アルキレングリコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤などを挙げることができる。
アルキレングリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエチレングリコールアルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;などを挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを挙げることができる。ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどを挙げることができる。
これらの公知の溶剤から、前記プロセスシミュレーター(アスペンプラス)を用い、使用するアルカリ可溶性樹脂との関係において、前記組成物条件を満たし得る溶剤を適宜選択すればよい。一般に2種以上の溶剤を特定の比率で併用するのが好ましい。具体的には、感光性樹脂組成物の溶剤としては、PGMEAと、乳酸エチル又はγ−ブチロラクトンとの混合溶剤が好適である。PGMEAと乳酸エチルとの混合溶剤では、重量基準の両成分比(PGMEA/乳酸エチル)が70/30〜40/60であるのが好ましく、60/40〜40/60であるのがより好ましく、一方、PGMEAとγ−ブチロラクトンとの混合溶剤では、重量基準の両成分比(PGMEA/γ−ブチロラクトン)が90/10〜80/20であるのが好ましく、90/10〜85/15であるのがより好ましい。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物には紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アゾ化合物系紫外線吸収剤などを挙げることができる。本発明において、紫外線吸収剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.05〜8重量部であることがより好ましい。
【0018】
また、本発明においては、感光性樹脂組成物に、密着促進剤を配合することができる。密着促進剤としては、例えば、メラミン系密着促進剤やシラン系密着促進剤などを挙げることができる。メラミン系密着促進剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、通常0.1〜20重量部である。シラン系密着促進剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、通常0.0001〜2重量部である。
【0019】
本発明においては、感光性樹脂組成物に、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤の配合量は、感光性樹脂組成物に対して、通常100〜5,000重量ppmである。界面活性剤は、塗膜における塗布ムラの発生抑制に寄与する。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシアルキレン系界面活性剤などを挙げることができる。
【0020】
本発明においては、感光性樹脂組成物の固形分は、6〜30重量%であることが好ましく、7〜25重量%であることがより好ましく、8〜20重量%であることがさらに好ましい。固形分を6〜30重量%とすることにより、塗布ムラの発生を抑制して、均一な塗膜を形成し易くなる。
【0021】
本発明のレジスト膜の形成方法において、前記感光性樹脂組成物の塗布対象である表示素子用大型基板(以下、大型基板という)としては、例えば、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどに用いられる、無アルカリ性ガラス、ソーダガラス及び石英ガラスなどからなるガラス基板や、かかるガラス基板に透明導電膜を付着させてなる基板;ポリエチレンテレフタレートやポリイミドなどのプラスチック基板;等が挙げられる。これらの大型基板は、通常、正方形乃至長方形を有しており、少なくとも一辺の長さが800mm以上のものであって、好ましくは、少なくとも一辺の長さが1,000mm以上である。
【0022】
本発明方法において、感光性樹脂組成物を大型基板上に塗布する方法としては、特に限定はないが、通常、非回転塗布法により行えばよい。非回転塗布法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンレススリット法などを挙げることができる。これらの中で、スピンレススリット法を好適に用いることができる。スピンレススリット法によれば、感光性樹脂組成物を供給するスリットを移動させることにより、基板にスリットが接触することなく感光性樹脂組成物を塗布することができる。スピンレススリット法による塗布には、スピンレスコーター[東京応化工業(株)]、テーブルコーター[中外炉工業(株)]、リニアコーター[大日本スクリーン製造(株)]、ヘッドコーター[平田機工(株)]、スリットダイコーター[東レエンジニアリング(株)]、東レスリットコーター[東レ(株)]などを用いることができる。
【0023】
本発明方法においては、感光性樹脂組成物を大型基板上に塗布し、減圧乾燥してレジスト膜を形成する。減圧乾燥は、室温(25℃)において、到達圧力10〜4,000Paの条件で行うことが好ましく、到達圧力10〜3,500Paの条件で行うことがより好ましい。到達圧力を10Pa未満とすると、設備費と運転費が高額になるおそれがある。到達圧力が4,000Paを超えると、良好なレジスト膜が形成されにくくなるおそれがある。減圧乾燥する時間に特に制限はなく、膜厚、基板の大きさ、感光性樹脂組成物の溶剤量、減圧ポンプの排気能力、減圧部分の容積などを考慮して適宜設定することができるが、通常は1秒間〜30分間であることが好ましく、5秒間〜10分間であることがより好ましく、10秒間〜5分間であることがさらに好ましい。
本発明方法において、減圧乾燥により形成されたレジスト膜を、さらにプリベイクして膜の乾燥を一層進め、実質的に流動性のないレジスト膜とする。プリベイクは、例えば、オーブンやホットプレートを用いて、常圧(通常、大気圧±1kPa)下、通常、60〜120℃で、10〜600秒間加熱することにより行うことができる。
以上により、大型基板上に所望のレジスト膜が形成されるが、該膜の厚さとしては、通常、0.5〜5μm、好ましくは0.8〜4μmである。
【0024】
本発明方法は、前記大型基板上のレジスト膜に活性光線を照射して該膜に潜像パターンを形成する工程、及び潜像パターンを現像し、パターン化されたレジスト膜を得る工程をさらに有していてもよい。
レジスト膜への潜像パターンの形成は、例えば、マスクパターンを介してレジスト膜に活性光線を照射して行う。本発明方法に用いる活性光線に特に制限はなく、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線などを挙げることができる。これらの中で、可視光線と紫外線を好適に用いることができる。照射する光線量に特に制限はなく、レジスト膜の使用目的、膜の厚さなどに応じて適宜選択することができる。
続く工程では、活性光線を照射したレジスト膜にアルカリ現像液を接触させて潜像パターンを現像することにより、パターン化されたレジスト膜を得る。本発明方法において、潜像パターンの現像に用いるアルカリ現像液に特に制限はなく、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液を挙げることができる。これらの現像液の濃度は、0.1〜5重量%であることが好ましい。
潜像パターンを現像したのち、大型基板上のパターン化レジスト膜を、例えば、純水で洗浄し、圧縮空気や圧縮窒素により風乾することが好ましい。また、所望により、現像されたパターンをホットプレートやオーブンなどの加熱装置を用いて、100〜250℃で、ホットプレート上では2〜60分間、オーブン中では2〜90分間程度加熱(ポストベーク)してもよい。
【0025】
本発明によれば、実用上問題となるようなピン跡やウロコ状ムラなどの塗布ムラの発生がなく、膜表面の均一性に優れたレジスト膜を備えた大型基板を効率的に作製することができる。当該大型基板は、液晶表示素子や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の製造に有用である。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
アルカリ可溶性樹脂として、m−クレゾールとp−クレゾールの重量比5/5の混合クレゾールとホルムアルデヒドとを、シュウ酸の存在下に縮重合させて得られた重量平均分子量5,500のノボラック樹脂9.8g、感光剤として、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとから得られたキノンジアジド基を有する化合物(以下、キノンジアジド化合物という)(エステル化率70モル%)2.4g、溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)43.9gと乳酸エチル43.9g、及び、界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン[東レ・ダウコーニング(株)、SH29PA]0.04gを混合して、感光性樹脂組成物(レジスト溶液)を調製した。
定常プロセスシミュレーター[(株)アスペンテック ジャパン製、アスペンプラス(登録商標)、PolymerPlus2004]を用い、以下のようにして、この感光性樹脂組成物の前記組成物条件に係る蒸気圧を算出した。
初期設定として、常温(25℃)、常圧(101.3kPa)で、気相は窒素が充満しており、液相はPGMEAと乳酸エチルの混合溶剤に対して、固形分濃度12.2重量%でノボラック樹脂が溶解しているものとした(初期のレジスト溶液の蒸気圧は0kPaとした)。物性モデルにはPOLYNRTLを指定し、溶剤の純物質物性はデータバンクの値を用いた。また、溶剤間及び溶剤とポリマーの間のバイナリパラメータは、UNIFACにより推算したものを用いた。窒素はヘンリー成分として指定し、レジスト溶液には溶解しないものとした。Flash2ブロックを用い、温度22℃及び25℃に固定して圧力を下げながら、固形分濃度70重量%及び90重量%となる圧力をそれぞれ求めた。固形分濃度70重量%のとき、22℃における蒸気圧は58.7Pa、25℃における蒸気圧は70.6Paであり、その差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)は11.9Paであった。また、固形分濃度90重量%のとき、25℃における蒸気圧は6.7Paであった。
感光性樹脂組成物を、リニアコーター[大日本スクリーン製造(株)]を用いて、1,100mm×1,200mmのガラス基板に塗布し、23℃、26Paで、1分間減圧乾燥し、ホットプレート上で、115℃、3分間プリベークして、厚さ1.5μmのレジスト膜を得た。
得られたレジスト膜の塗布ムラを、干渉縞検査灯[東芝ライテック(株)]を用いて、目視により観察した。ピン跡、ウロコ状ムラともに認められなかった。
実施例2
溶剤として、PGMEA79.0gとγ−ブチロラクトン8.8gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、蒸気圧の算出、レジスト膜の形成及び塗布ムラの観察を行った。
固形分濃度70重量%のとき、22℃における蒸気圧は41.3Pa、25℃における蒸気圧は52.0Paであり、その差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)は10.7Paであった。また、固形分濃度90重量%のとき、25℃における蒸気圧は6.7Paであった。
形成されたレジスト膜には、ピン跡、ウロコ状ムラともに認められなかった。
【0027】
比較例1
溶剤として、PGMEAのみ87.8gを用いた以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、蒸気圧の算出、レジスト膜の形成及び塗布ムラの観察を行った。
固形分濃度70重量%のとき、22℃における蒸気圧は70.6Pa、25℃における蒸気圧は88.0Paであり、その差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)は17.4Paであった。また、固形分濃度90重量%のとき、25℃における蒸気圧は9.3Paであった。
形成されたレジスト膜には、ピン跡が認められた。
比較例2
溶剤として、乳酸エチル87.8gを用いた以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、蒸気圧の算出、レジスト膜の形成及び塗布ムラの観察を行った。
固形分濃度70重量%のとき、22℃における蒸気圧は50.7Pa、25℃における蒸気圧は61.3Paであり、その差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)は10.6Paであった。また、固形分濃度90重量%のとき、25℃における蒸気圧は5.3Paであった。
形成されたレジスト膜には、ウロコ状ムラが認められた。
比較例3
溶剤として、PGMEA61.5gとγ−ブチロラクトン26.3gとを用いた以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、蒸気圧の算出、レジスト膜の形成及び塗布ムラの観察を行った。
固形分濃度70重量%のとき、22℃における蒸気圧は25.3Pa、25℃における蒸気圧は32.0Paであり、その差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)は6.7Paであった。また、固形分濃度90重量%のとき、25℃における蒸気圧は5.3Paであった。
形成されたレジスト膜には、ウロコ状ムラが認められた。
実施例1〜2及び比較例1〜3の結果を、第1表に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
第1表に見られるように、固形分濃度が70重量%のときの22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差が11.9Pa又は10.7Paであり、固形分濃度が90重量%のときの25℃における蒸気圧が6.7Paである実施例1〜2の感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜には、ピン跡もウロコ状ムラも発生していない。
これに対して、固形分濃度が70重量%のときの22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差が17.4Paである比較例1の感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜には、ピン跡が発生している。固形分濃度が70重量%のときの22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差が13.3Pa以下であっても、固形分濃度が90重量%のときの25℃における蒸気圧が6.6Pa未満である比較例2と3の感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜には、ウロコ状ムラが発生している。
この結果から、固形分濃度が70重量%のときの22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧の差が13.3Pa以下であり、固形分濃度が90重量%のときの25℃における蒸気圧が6.6Pa以上である感光性樹脂組成物であれば、ピン跡とウロコ状ムラのないレジスト膜が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、実用上問題となるようなピン跡やウロコ状ムラなどの塗布ムラの発生がなく、膜表面の均一性に優れたレジスト膜を備えた大型基板を効率的に作製することができる。当該大型基板は、液晶表示素子や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂、感光剤及び溶剤を含有してなる感光性樹脂組成物を表示素子用大型基板に塗布し、減圧乾燥してレジスト膜を形成する工程、及びレジスト膜が形成された前記大型基板を常圧で加熱する工程を有する、表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法であって、前記感光性樹脂組成物が、プロセスシミュレーターを用い、該組成物の固形分濃度が70重量%のときの22℃と25℃の蒸気圧、及び該組成物の固形分濃度が90重量%のときの25℃の蒸気圧を算出した場合に、以下の条件:
(1)固形分濃度が70重量%であるときの、22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)が13.3Pa(0.1Torr)以下であり、かつ
(2)固形分濃度が90重量%であるときの、25℃における蒸気圧が6.6Pa(0.05Torr)以上である、
を満たすものである、表示素子用大型基板上へのレジスト膜の形成方法。
【請求項2】
前記大型基板上のレジスト膜に活性光線を照射して該膜に潜像パターンを形成する工程、及び潜像パターンを現像し、パターン化されたレジスト膜を得る工程をさらに有する請求項1記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項3】
感光性樹脂組成物の溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、乳酸エチル又はγ−ブチロラクトンとの混合溶剤である請求項1又は2記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項4】
減圧乾燥を、到達圧力10〜4,000Paの条件で行う請求項1〜3いずれか記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項5】
前記大型基板への感光性樹脂組成物の塗布を非回転塗布法により行う請求項1〜4いずれか記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項6】
前記大型基板が少なくとも一辺の長さが800mm以上の基板である請求項1〜5いずれか記載のレジスト膜の形成方法。
【請求項7】
アルカリ可溶性樹脂、感光剤及び溶剤を含有してなる感光性樹脂組成物であって、プロセスシミュレーターを用い、該組成物の固形分濃度が70重量%のときの22℃と25℃の蒸気圧、及び該組成物の固形分濃度が90重量%のときの25℃の蒸気圧を算出した場合に、以下の条件:
(1)固形分濃度が70重量%であるときの、22℃における蒸気圧と25℃における蒸気圧との差(25℃の蒸気圧−22℃の蒸気圧)が13.3Pa(0.1Torr)以下であり、かつ
(2)固形分濃度が90重量%であるときの、25℃における蒸気圧が6.6Pa(0.05Torr)以上である、
を満たす、請求項1〜6いずれかに記載のレジスト膜の形成方法に使用するための感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−271941(P2007−271941A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97593(P2006−97593)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】