説明

レンズクリーニング装置の制御方法およびレンズクリーニング装置

【課題】周方向に形状変化がある非対称レンズであっても、適切な拭き取りを行うことが可能なレンズクリーニング装置の制御方法等を提供する。
【解決手段】周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズLを回転させながら、あてがった払拭部材2を、非対称レンズLに対し略径方向に相対的に移動させて非対称レンズLを払拭するレンズクリーニング装置1の制御方法であって、非対称レンズLに追従する払拭部材2の刻々の変位、および払拭部材2が非対称レンズLから受ける刻々の反力を検出する変位・反力検出工程S1と、刻々の変位の検出結果および刻々の反力の検出結果に基づいて、払拭部材2の非対称レンズLに対する押圧力F´が一定になるように制御する押圧力制御工程S2と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズを払拭するレンズクリーニング装置の制御方法およびレンズクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズを外周面(コバ)で狭持し回転させる3つのローラと、レンズの表裏両面を拭き取る一対の拭き皿と、押圧シリンダ(エアーシリンダ)を駆動源とし、各拭き皿を上下方向に移動させてレンズに押し付ける平行リンク機構を有する一対のアームと、各平行リンク機構の2つの固定対偶の部分で各アームを支持すると共に、各アームを介して各拭き皿を円運動させる回転シリンダと、備えたレンズ拭き取り装置(レンズクリーニング装置)が知られている(特許文献1参照)。
このレンズクリーニング装置では、狭持されたレンズを回転させ、押圧シリンダをエアー駆動して拭き皿をレンズ面の中心部に接触させた後、レンズに対し拭き皿を押圧しながら回転シリンダによりレンズの外側に向かって円弧状に移動させることで、レンズ面に存在する研磨剤等の異物の拭き取りを行っている。
【特許文献1】特開2003−039295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなレンズクリーニング装置では、押圧シリンダ(エアーシリンダ)のエアー圧を利用して、レンズに対して拭き皿を常に押し付けておくようにしている。このため、例えば、周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズ等の払拭を行う場合、レンズの回転に伴い、拭き皿の押付け部分が上下方向に刻々と変位することになる。かかる場合、拭き皿の押し付けが追従することができずに、拭き残しが生じる等、適切な拭き取りができないという問題が想定される。
【0004】
本発明は、周方向に形状変化がある非対称レンズであっても、適切な拭き取りを行うことができるレンズクリーニング装置の制御方法およびレンズクリーニング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレンズクリーニング装置の制御方法は、周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズを回転させながら、非対称レンズにあてがった払拭部材を、非対称レンズに対し略径方向に相対的に移動させて非対称レンズを払拭するレンズクリーニング装置の制御方法であって、非対称レンズに追従する払拭部材の刻々の変位、および払拭部材が非対称レンズから受ける刻々の反力を検出する変位・反力検出工程と、刻々の変位の検出結果および刻々の反力の検出結果に基づいて、払拭部材の非対称レンズに対する押圧力が一定になるように制御する押圧力制御工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明のレンズクリーニング装置は、周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズを払拭する払拭部材と、非対称レンズを平面内において回転させるレンズ回転手段と、払拭部材を非対称レンズに対し略径方向に相対的に移動させる径方向移動手段と、非対称レンズに対して払拭部材を押圧する払拭部材変位手段と、非対称レンズに追従する払拭部材の刻々の変位、および払拭部材が非対称レンズから受ける刻々の反力を検出する変位・反力検出手段と、刻々の変位の検出結果および刻々の反力の検出結果に基づいて、払拭部材の非対称レンズに対する押圧力が一定になるように、払拭部材変位手段を制御する押圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これらの構成によれば、回転する非対称レンズに対し、これに押し当てた払拭部材の刻々の変位を補償することができるため、非対称レンズに対する押圧力も無理なく一定に維持することができる。すなわち、回転する非対称レンズの表面形状に合わせて、払拭部材の押圧力をリアルタイムで制御することができ、表面形状の変化に払拭部材を精度良く追従させることができる。これにより、一定の押圧で非対称レンズの拭き取りを行うことができ、拭き残しを生じさせることなく適切な拭き取りを行うことができる。
【0008】
この場合、払拭部材の非対称レンズへ押圧は、払拭部材に連結されたサーボモータで行われ、押圧力制御工程は、サーボモータの回転トルクを制御することが好ましい。
【0009】
また、この場合、払拭部材とサーボモータとは、サーボモータのモータ軸に取り付けられ払拭部材を回動させる回動アームを介して連結され、変位・反力検出工程では、モータ軸の回転角度を検出するエンコーダにより刻々の変位が検出され、払拭部材を支持する回動アームの先端部に設けた圧力センサにより刻々の反力が検出されることが好ましい。
【0010】
この場合、払拭部材変位手段は、サーボモータと、サーボモータのモータ軸に取り付けられ払拭部材を回動させる回動アームと、から成り、押圧力制御手段は、サーボモータの回転トルクを制御することが好ましい。
【0011】
また、この場合、変位・反力検出手段は、モータ軸の回転角度を検出することで刻々の変位を検出するエンコーダと、払拭部材を支持する回動アームの先端部に設けられ、刻々の反力を検出する圧力センサと、を有していることが好ましい。
【0012】
これらの構成によれば、回動アームとサーボモータとの組み合わせにより、精密且つ高速な制御を行うことができ、払拭部材を非対称レンズの刻々と変化する変位に対しても的確に追従させることができる。
また、エンコーダおよび圧力センサを用いて、払拭部材の刻々と変化する変位および反力を検出し、これらの検出した情報を用いてより精密な制御を行うことができる。これにより、非対称レンズの表面形状変化に対する払拭部材の追従性能を向上させることができる。
【0013】
この場合、非対称レンズに対する払拭部材の略径方向への相対的な移動は、非対称レンズの中心から移動方向の反対側に僅かにずれた位置から開始されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、非対称レンズの払拭すべき領域の全てを、拭き残しを生じさせることなく拭き取ることができる。
【0015】
この場合、払拭部材の一対により、非対称レンズの表裏両面が同時に払拭されるようになっており、各払拭部材について、変位・反力検出工程および押圧力制御工程が同時進行で実施されることが好ましい。
【0016】
また、他のレンズクリーニング装置は、周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズの表裏両面を同時に払拭する一対の払拭部材と、非対称レンズを平面内において回転させるレンズ回転手段と、各払拭部材を非対称レンズに対し略径方向に相対的に移動させる径方向移動手段と、非対称レンズの表裏両面に対して、それぞれ払拭部材を押圧する一対の払拭部材変位手段と、非対称レンズに追従する各払拭部材の刻々の変位、および各払拭部材が非対称レンズから受ける刻々の反力を検出する一対の変位・反力検出手段と、刻々の変位の検出結果および刻々の反力の検出結果に基づいて、各払拭部材の非対称レンズに対する押圧力が一定になるように、一対の払拭部材変位手段を個別に制御する押圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
これらの構成によれば、一対の払拭部材により非対称レンズの両面を同時に払拭することができるため、拭き取り作業に係る時間を大幅に短縮することができる。また、非対称レンズの両面に対する一対の払拭部材の押圧を、所望の値に制御することができるため、非対称レンズを高速回転した場合であっても、各払拭部材の追従性を維持することができると共に、クリーニング中の非対称レンズの姿勢を安定させることができる。
【0018】
この場合、押圧力制御工程は、一対の払拭部材の非対称レンズに対する各押圧力の垂直成分を制御することが好ましい。
【0019】
この場合、押圧力制御手段は、一対の払拭部材の非対称レンズに対する各押圧力の垂直成分を制御することが好ましい。
【0020】
これらの構成によれば、非対称レンズの表裏両面に作用する押圧力の垂直成分を同一にすることで、非対称レンズに作用する力を相殺することができるため、高い安定性をもって非対称レンズの回転姿勢を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るレンズクリーニング装置およびその制御方法(押圧制御方法)について説明する。このレンズクリーニング装置は、周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズ表面を研磨加工した後に、その表面に付着している研磨剤等の異物を拭き取るためのものである。
【0022】
図1に示すように、レンズクリーニング装置1は、非対称レンズLの表裏両面を同時に払拭する一対の払拭部材2と、各払拭部材2を非対称レンズLに対し略径方向に相対的に移動させる径方向移動機構3(径方向移動手段)と、非対称レンズLを平面内において回転させるレンズ回転機構4(レンズ回転手段)と、非対称レンズLの表裏両面に一対の回動アーム51を回動させて各払拭部材2を押圧する一対の払拭部材変位機構5(払拭部材変位手段)と、装置全体を統括制御する制御装置6と、これらの機構3,4,5を支持する機台7と、を備えている。このレンズクリーニング装置1は、非対称レンズLを回転させながら、非対称レンズLにあてがった払拭部材2を、略径方向に相対的に移動させて非対称レンズLの表裏両面を拭き取ることができるようになっている。
【0023】
払拭部材2は、ゴムやポリウレタン等の弾性材を不織布で覆って構成されており、非対称レンズLの表面に傷を生じさせることなく、且つ付着している研磨材粒子等の異物を除去することができるようになっている。
【0024】
径方向移動機構3は、レンズ回転機構4を搭載したレンズ直動テーブル31と、レンズ直動テーブル31をスライド自在に支持するガイドレール32と、ガイドレール32を介してレンズ直動テーブル31を直動させるモータユニット33と、を備えている。モータユニット33は、モータハウジング内にボールねじ機構等の直動機構と、動力源となるステッピングモータを内蔵して、構成されている。径方向移動機構3は、レンズ回転機構4を、非対称レンズLの給材位置A1(図3(a)参照)と払拭開始位置A2(図3(b)参照)との間で往復移動させる他、詳細は後述するが、非対称レンズLに押圧した払拭部材2を略径方向に相対的に移動させる。なお、モータユニット33に代えて、リニアモータを用いるようにしてもよい。
【0025】
レンズ回転機構4は、水平姿勢の非対称レンズLを狭持するようにして回転自在に支持する従動側ユニット40および駆動側ユニット41と、駆動側ユニット41を駆動して非対称レンズLを回転させる回転駆動モータ42と、を備えている。
【0026】
従動側ユニット40は、鉛直姿勢で従動回転する2つの従動ローラ43(図1では1つのみ図示)と、2つの従動ローラ43を回転自在に支持する従動側軸受けブロック44と、従動側軸受けブロック44を上記のレンズ直動テーブル31上に支持する複数本の支柱45とで構成されている。駆動側ユニット41の駆動により非対称レンズLが回転すると、非対称レンズLのコバに転接する2つの従動ローラ43が従動回転し、非対称レンズLを回転自在に支持する。
【0027】
駆動側ユニット41は、鉛直姿勢で回転する2つの駆動ローラ46(図1では1つのみ図示)と、2つの駆動ローラ46を回転自在に支持する駆動側軸受けブロック47と、駆動側軸受けブロック47を介して2つの駆動ローラ46を従動側ユニット40に向って進退自在に支持するスライダ付のエアーシリンダ48と、エアーシリンダ48を上記のレンズ直動テーブル31上に支持する架台49と、で構成されている。2つの駆動ローラ46は、タイミングベルト等の動力伝達機構(図示省略)を介して回転駆動モータ42に連結されており、回転駆動モータ42の回転に伴って回転し、非対称レンズLのコバに転接してこれを回転させる。エアーシリンダ48は、非対称レンズLの着脱時に、2つの従動ローラ43に対し2つの駆動ローラ46を進退させる。
【0028】
各従動ローラ43および各駆動ローラ46は、略同一の高さに位置するように、それぞれ支持されており、非対称レンズLのコバに4点で転接して、非対称レンズLを確実に挟持しつつ、これを安定して回転させる。また、各従動ローラ43および各駆動ローラ46は、非対称レンズLのコバの欠けや傷を防止するため、ゴムやポリウレタン等で構成されている。なお、各ローラ43,46の数は、任意である。より具体的には、駆動ローラ46を1つ以上有し、合計3つ以上のローラで構成されていればよい。
【0029】
払拭部材変位機構5は、2つのサーボモータ50と、各サーボモータ50のモータ軸54に取り付けられ、各払拭部材2を回動させる上下一対の回動アーム51と、2つのサーボモータ50を上下に配置した状態で支持する装置フレーム52と、を備えている。
【0030】
サーボモータ50は、モータ軸54を回転させる駆動源となる駆動モータ53と、モータ軸54の回転角度を検出するエンコーダ55と、制御装置6の演算結果による信号を駆動モータ53の駆動に必要な電力に変換する電力変換装置56(ドライバ)と、から構成されている(いずれも図4参照)。そして、エンコーダ55から出力信号に基づいて、駆動モータ53が制御されるようになっている(詳細は、後述する)。
【0031】
一対の回動アーム51は、払拭開始位置A2に臨んだ非対称レンズLを上下から挟むようにして上下対称に配設されている。各回動アーム51は、基端部をサーボモータ50のモータ軸54に固定したアーム本体57と、アーム本体57の先端部において、アーム本体57に直交するように連結された押圧ヘッド部58と、アーム本体57の先端部から「L」字状に延びるセンサフレーム59とを有している。押圧ヘッド部58は、アーム本体57にスライド自在に取り付けられており、その先端側に払拭部材2が固定されている。
【0032】
また、センサフレーム59には、内側に圧力センサ60が取り付けられており、圧力センサ60には押圧ヘッド部58の尾端が連接されている。圧力センサ60は、例えばロードセルであり、これによりに、非対称レンズL対する払拭部材2の押圧力(反力)が検出される。すなわち、アーム本体57を回動させて、押圧ヘッド部58に取り付けた払拭部材2を非対称レンズLに押し当てると、上記のエンコーダ55によりアーム本体57の回動角度が検出されると共に、圧力センサ60により、非対称レンズL対する払拭部材2の押圧力(反力)が検出される。なお、請求項にいう「変位・反力検出手段」とは、上記した圧力センサ60およびエンコーダ55を指す。
【0033】
図2に示すように、制御装置6は、パーソナルコンピュータ(PC)で構成されており(図1参照)、レンズクリーニング装置1全体を統括制御している。なお、請求項にいう「押圧力制御手段」とは、制御装置6による制御機能の一部を指す。
【0034】
制御装置6は、キーボード等の入力デバイス61を用いてユーザからの各種パラメータの入力を受けると共に、ディスプレイ62やスピーカ63等の出力手段によりレンズクリーニング装置1の状態をユーザに提示(報知)する。
制御装置6には、各機構3,4,5を接続するためのインタフェース64と、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用されるRAM65と、各種記憶領域を有し、制御プログラムや制御データを記憶するROM66と、各手段からの各種データ等を記憶すると共に、各種データを処理するためのプログラム等を記憶するHDD67と、ROM66やHDD67に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理するCPU68と、これらを互いに接続するバス69と、が備えられている。
【0035】
ここで、図3を参照して、制御装置6による払拭作業(クリーニング作業)の流れについて簡単に説明する。先ず、払拭作業を行う前段階として、ユーザは、給材位置A1に存するレンズ回転機構4に、払拭対象となる非対称レンズLをセットする(図3(a)参照)。その後、ユーザは、キーボード等の入力デバイス61を用いて、非対称レンズLに対する払拭部材2の理想的な押圧力である目標押圧力Fを入力する。この目標押圧力Fは、予め実験的に求めておくことが望ましい。
【0036】
次に、制御装置6は、径方向移動機構3を駆動し、払拭開始位置A2にまでレンズ回転機構4(レンズ直動テーブル31)を移動させる(図3(b)参照)。なお、払拭開始位置A2は、一対の払拭部材2を非対称レンズLに接触させた際に、各払拭部材2が非対称レンズLの平面内中心から給材位置方向に僅かにずれた位置であり(図3(c)参照)、この払拭開始位置A2から払拭作業を開始することで、各払拭部材2が非対称レンズLの払拭すべき領域の全てを通過することとなる。
【0037】
その後、払拭部材変位機構5の一対の回動アーム51を回動させ、各回動アーム51(押圧ヘッド部58)の先端に固定された払拭部材2を、非対称レンズLの上下両面から挟み込むようにして接触させる(図3(c)参照)。実際の払拭作業は、非対称レンズLの上下両面に払拭部材2を押圧した状態で、非対称レンズLを平面内で回転させつつ、径方向移動機構3により払拭部材2(レンズ回転機構4)を給材位置方向に移動させることで行われる(図3(d)参照)。
【0038】
次に、図4および図5を参照して、払拭作業時の制御装置6による非対称レンズLに対する払拭部材2の押圧制御方法について説明する。図4に示すように、本実施形態の制御装置6は、エンコーダ55の出力から回動アーム51の角度θを算出するカウンタ回路81と、カウンタ回路81により算出された角度θから、予め設定された目標押圧力Fの垂直成分を算出する第1角度補償器82と、カウンタ回路81により算出された角度θから、各圧力センサ60の出力より得られた、現時点での各払拭部材2の非対称レンズLに対する押圧力F´の垂直成分を算出する第2角度補償器83と、各サーボモータ50の回転トルクTを制御するためのPID制御器84と、をプログラム(ソフトウェア)として備えている。
【0039】
また、図5(a)に示すように、払拭部材2の押圧制御方法は、圧力センサ60およびエンコーダ55から、払拭部材2の押圧力F´(反力)およびモータ軸54の角度θを検出する変位・反力検出工程S1と、検出した押圧力F´および角度θから、サーボモータ50に入力する回転トルクTを決定する押圧力制御工程S2と、に大別される。
【0040】
変位・反力検出工程S1では、カウンタ回路81、第1角度補償器82および第2角度補償器83が用いられる。押圧力制御工程S2では、PID制御器84が用いられる。変位・反力検出工程S1では、非対称レンズLに対して各払拭部材2が押圧を加えている間は、常にエンコーダ55の出力からカウンタ回路81により回動アーム51の角度θが読み取られると共に、各圧力センサ60の出力から現時点の押圧力F´(の反力)が読み取られる。
【0041】
そして、読み取られた角度θおよび押圧力F´に基づいて、第1角度補償器82により、目標押圧力Fの垂直成分(Fcosθ)が算出されると共に、第2角度補償器83により、現時点での押圧力F´の垂直成分(F´cosθ)が算出される(図5(b)参照)。これにより、刻々と変化する非対称レンズLに押圧した払拭部材2の押圧力F´をリアルタイムで制御することになる。この際、非対称レンズLの表裏両面の払拭部材2の各押圧力F´の垂直成分(F´cosθ)が、同一になるように制御される(図5(b)参照)。この各押圧力F´の垂直成分(F´cosθ)を同一にすることで、非対称レンズLに作用する力を相殺するようにしている。
【0042】
押圧力制御工程S2では、先に求めた目標押圧力Fの垂直成分(Fcosθ)と押圧力F´の垂直成分(F´cosθ)との差分を算出し、この差分をPID制御器84に入力する。乗算器85、積分器86および微分器87から成るPID制御器84は、一般に使用されるフィードバック制御の一種であるPID制御を行う。そして、PID演算を行うことで、各サーボモータ50の回転トルクTを決定する。そして、決定した回転トルクTは、サーボモータ50の電力変換装置56に入力され、駆動モータ53を所望のトルクで駆動する。このように、各エンコーダ55および各圧力センサ60の検出結果から目的の力となるように回転トルクTのフィードバック制御を払拭作業終了まで繰り返し行う。
【0043】
以上の構成によれば、回転する非対称レンズLに対し、これに押し当てた払拭部材2の刻々の変位を補償することができるため、非対称レンズLに対する押圧力F´も無理なく一定に維持することができる。すなわち、回転する非対称レンズLの表面形状に合わせて、払拭部材2の押圧力F´をリアルタイムで制御することができ、表面形状の変化に払拭部材2を精度良く追従させることができる。これにより、一定の押圧で非対称レンズLの拭き取りを行うことができ、拭き残しを生じさせることなく適切な拭き取りを行うことができる。
【0044】
なお、本実施形態では、一対の回動アーム51(払拭部材2)で、非対称レンズLの表裏両面を同時進行で払拭作業を行っているが、片側ずつ払拭作業を行ってもよい。また、1つの回動アーム51を設け、片面を払拭した後に、非対称レンズLをひっくり返して、もう片面を払拭するように構成してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係るレンズクリーニング装置の側面図である。
【図2】本実施形態に係るレンズクリーニング装置の制御装置について説明するブロック図である。
【図3】制御装置による払拭作業の流れを示す説明図である。
【図4】制御装置の押圧制御方法について説明したブロック図である。
【図5】非対称レンズに対する払拭部材の押圧制御方法を説明するフローチャート(a)および非対称レンズへの払拭部材(回動アーム)の押圧の様子を示した拡大図(b)である。
【符号の説明】
【0046】
1:レンズクリーニング装置、2:払拭部材、3:径方向移動機構、4:レンズ回転機構、5:払拭部材変位機構、6:制御装置、50:サーボモータ、51:回動アーム、54:モータ軸、55:エンコーダ、60:圧力センサ、L:非対称レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズを回転させながら、前記非対称レンズにあてがった払拭部材を、前記非対称レンズに対し略径方向に相対的に移動させて前記非対称レンズを払拭するレンズクリーニング装置の制御方法であって、
前記非対称レンズに追従する前記払拭部材の刻々の変位、および前記払拭部材が前記非対称レンズから受ける刻々の反力を検出する変位・反力検出工程と、
前記刻々の変位の検出結果および前記刻々の反力の検出結果に基づいて、前記払拭部材の前記非対称レンズに対する押圧力が一定になるように制御する押圧力制御工程と、を備えたことを特徴とするレンズクリーニング装置の制御方法。
【請求項2】
前記払拭部材の前記非対称レンズへ押圧は、前記払拭部材に連結されたサーボモータで行われ、
前記押圧力制御工程は、前記サーボモータの回転トルクを制御することを特徴とする請求項1に記載のレンズクリーニング装置の制御方法。
【請求項3】
前記払拭部材と前記サーボモータとは、前記サーボモータのモータ軸に取り付けられ前記払拭部材を回動させる回動アームを介して連結され、
前記変位・反力検出工程では、前記モータ軸の回転角度を検出するエンコーダにより前記刻々の変位が検出され、前記払拭部材を支持する前記回動アームの先端部に設けた圧力センサにより前記刻々の反力が検出されることを特徴とする請求項2に記載のレンズクリーニング装置の制御方法。
【請求項4】
前記非対称レンズに対する前記払拭部材の略径方向への相対的な移動は、前記非対称レンズの中心から移動方向の反対側に僅かにずれた位置から開始されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のレンズクリーニング装置の制御方法。
【請求項5】
前記払拭部材の一対により、前記非対称レンズの表裏両面が同時に払拭されるようになっており、
前記各払拭部材について、前記変位・反力検出工程および前記押圧力制御工程が同時進行で実施されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズクリーニング装置の制御方法。
【請求項6】
前記押圧力制御工程は、前記一対の払拭部材の前記非対称レンズに対する各押圧力の垂直成分を制御することを特徴とする請求項5に記載のレンズクリーニング装置の制御方法。
【請求項7】
周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズを払拭する払拭部材と、
前記非対称レンズを平面内において回転させるレンズ回転手段と、
前記払拭部材を前記非対称レンズに対し略径方向に相対的に移動させる径方向移動手段と、
前記非対称レンズに対して前記払拭部材を押圧する払拭部材変位手段と、
前記非対称レンズに追従する前記払拭部材の刻々の変位、および前記払拭部材が前記非対称レンズから受ける刻々の反力を検出する変位・反力検出手段と、
前記刻々の変位の検出結果および前記刻々の反力の検出結果に基づいて、前記払拭部材の前記非対称レンズに対する押圧力が一定になるように、前記払拭部材変位手段を制御する押圧力制御手段と、を備えたことを特徴とするレンズクリーニング装置。
【請求項8】
周方向においてコバ厚が変化する非対称レンズの表裏両面を同時に払拭する一対の払拭部材と、
前記非対称レンズを平面内において回転させるレンズ回転手段と、
前記各払拭部材を前記非対称レンズに対し略径方向に相対的に移動させる径方向移動手段と、
前記非対称レンズの表裏両面に対して、それぞれ前記払拭部材を押圧する一対の払拭部材変位手段と、
前記非対称レンズに追従する前記各払拭部材の刻々の変位、および前記各払拭部材が前記非対称レンズから受ける刻々の反力を検出する一対の変位・反力検出手段と、
前記刻々の変位の検出結果および前記刻々の反力の検出結果に基づいて、前記各払拭部材の前記非対称レンズに対する押圧力が一定になるように、前記一対の払拭部材変位手段を個別に制御する押圧力制御手段と、を備えたことを特徴とするレンズクリーニング装置。
【請求項9】
前記押圧力制御手段は、前記一対の払拭部材の前記非対称レンズに対する各押圧力の垂直成分を制御することを特徴とする請求項8に記載のレンズクリーニング装置。
【請求項10】
前記払拭部材変位手段は、サーボモータと、前記サーボモータのモータ軸に取り付けられ前記払拭部材を回動させる回動アームと、から成り、
前記押圧力制御手段は、前記サーボモータの回転トルクを制御することを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載のレンズクリーニング装置。
【請求項11】
前記変位・反力検出手段は、前記モータ軸の回転角度を検出することで前記刻々の変位を検出するエンコーダと、
前記払拭部材を支持する前記回動アームの先端部に設けられ、前記刻々の反力を検出する圧力センサと、を有していることを特徴とする請求項10に記載のレンズクリーニング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−125536(P2010−125536A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300400(P2008−300400)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】