説明

レンズ及び灯具

【課題】光源にLEDを用いた場合であっても、長尺な配光パターンを形成することができる。
【解決手段】レンズ3は、後面に設けられた入射面311と、前面に設けられた出射面32とを備える。入射面311は、前後方向Z及び左右方向Xに平行な各断面では、前後方向Zに沿った基準軸Ax0を含んで左右方向Xに直交する面と当該断面との交線を中心として後方に向かって所定角度θで広がるように左右方向Xの両側に傾斜した2直線L1,L1と、上記交線上での当該2直線L1,L1の交点をR付けする円弧線L2とからなる形状に形成されており、左右方向Xに直交する各断面では、基準軸Ax0を含んで左右方向Xに平行な面と当該断面との交線上の点が頂点となるように後方へ膨出する凸状に形成されている。出射面32は、前後方向Zに直交する平面状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ及び当該レンズを備える灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用信号灯や一般照明灯などに用いられる灯具として、例えば特許文献1に記載のように、長尺な配光パターンを形成可能なものが知られている。
【0003】
上記特許文献1に記載の灯具は、光源として、発光面がふたこぶ状に隆起した透明の封止部材で発光チップを封止したものを備えている。この光源では、発光チップから出射された光が、封止部材を透過する過程でふたこぶ状の発光面に倣った輝度分布とされる。つまり、上記特許文献1に記載の灯具では、光源からの出射光をふたこぶが並設された方向に長尺なものとし、これを利用することで長尺な配光パターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−48470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の灯具では、光源からの出射光を予め長尺なものとすることによって長尺な配光パターンを形成しているため、ランバーシャンの指向特性を有する一般的なLED(発光ダイオード)を光源に用いた場合には、長尺な配光パターンを形成することができない。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、光源にLEDを用いた場合であっても、長尺な配光パターンを形成することができるレンズ及び当該レンズを備える灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
LEDから出射された光を配光制御して、長尺な配光パターンを形成するレンズにおいて、
当該レンズの後面に設けられ、前記LEDから出射された光を入射させる入射面と、
当該レンズの前面に設けられ、前記入射面から入射した光を出射させる出射面と、
を備え、
前記入射面は、
前後方向及び左右方向に平行な各断面では、前後方向に沿った基準軸を含んで左右方向に直交する面と当該断面との交線を中心として後方に向かって所定角度で広がるように左右方向の両側に傾斜した2直線と、前記交線上での当該2直線の交点をR付けする円弧線と、からなる形状に形成され、
左右方向に直交する各断面では、前記基準軸を含んで左右方向に平行な面と当該断面との交線上の点が頂点となるように後方へ膨出する凸状に形成され、
前記出射面は、前記入射面から入射した光を、左右方向では前記基準軸から離間するように出射させ、前後方向及び左右方向に直交する方向では前後方向に沿った略平行光として出射させることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレンズにおいて、
前記出射面は、前後方向及び左右方向に平行な各断面では、前記基準軸を含んで左右方向に直交する面と当該断面との交線から左右方向に離れるに連れて前方に高くなる凹状か、又は前後方向に直交する平坦状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、灯具において、
請求項1又は2に記載のレンズと、
前記基準軸に光軸を一致させて前記入射面に対向するように配置されたLEDと、
前記レンズの前方に配置され、前記出射面から出射された光を前方へ屈折させる第二のレンズと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンズの後面に設けられた入射面が、前後方向及び左右方向に平行な各断面では、前後方向に沿った基準軸を含んで左右方向に直交する面と当該断面との交線を中心として後方に向かって所定角度で広がるように左右方向の両側に傾斜した2直線と、前記交線上での当該2直線の交点をR付けする円弧線と、からなる形状に形成され、左右方向に直交する各断面では、基準軸を含んで左右方向に平行な面と当該断面との交線上の点が頂点となるように後方へ膨出する凸状に形成されているので、LEDからランバーシャンな指向特性で出射された光は、入射面を通じ、前後方向及び左右方向に平行な断面では左右方向の両側へ広がるように屈折され、左右方向に直交する断面では前方へ屈折されながらレンズ内に入射する。つまり、LEDからの光は、入射面によって全体的に左右方向へ長尺になるように屈折されつつレンズ内に入射する。
【0011】
また、レンズの前面に設けられた出射面が、入射面から入射した光を、左右方向では基準軸から離間するように出射させ、前後方向及び左右方向に直交する方向では前後方向に沿った略平行光として出射させるので、入射面からレンズ内に入射した光は、出射面によって少なくとも左右方向に短尺にされることなく、左右方向に広がるようにして当該出射面から出射される。
したがって、ランバーシャンな指向特性を有するLEDを用いた場合であっても、左右方向に長尺な配光パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における灯具の斜視図である。
【図2】実施形態における灯具の幅方向に直交する断面図である。
【図3】実施形態における灯具の左右方向に直交する断面図である。
【図4】実施形態における灯具での光路を説明するための図である。
【図5】実施形態における灯具での光路を説明するための図である。
【図6】実施形態におけるレンズによる配光パターン例を示す図である。
【図7】実施形態におけるレンズの別例を示す断面図である。
【図8】実施形態におけるレンズの他の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態における灯具1の斜視図であり、図2は、灯具1の幅方向の中央を通り且つ幅方向に直交する面での断面図であり、図3は、灯具1の左右方向の中央を通り且つ左右方向に直交する面での断面図である。
なお、以下の説明では、灯具1の前後方向を「前後方向Z」と、前後方向Zに直交する灯具1の左右方向を「左右方向X」と、前後方向Z及び左右方向Xの何れにも直交する灯具1の幅方向を「幅方向Y」と、それぞれ記載することとする。
【0015】
図1〜図3に示すように、灯具1は、LED(発光ダイオード)2と、LED2の前方に配置されたレンズ3と、レンズ3の前方に配置された第二のレンズ4とを備えている。
このうち、LED2は、光軸Axを前方に向けた状態に配置されており、当該光軸Axを中心にランバーシャンな指向特性を有する光を前方へ出射する。
【0016】
レンズ3は、LED2から出射された光を配光制御するためのものであり、左右方向Xに沿って長尺に形成されている。レンズ3の後面には、左右方向Xの中央から後方へ突設された入射部31が設けられている。なお、本実施形態においては、レンズ3の幅方向Yに沿った長さが10mmであり、入射部31の前後方向Zに沿った長さ(後方への突出長)が7.2mmであり、入射部31の左右方向Xに沿った長さが13.1mmである。
この入射部31には、後方へ開口した入射面311が形成されている。
【0017】
入射面311は、LED2に対向して当該LED2を覆うように配設されており、LED2から出射された光をレンズ3内に入射させる。この入射面311は、LED2の光軸Axと一致する軸を基準軸Ax0としたときに、前後方向Z及び左右方向Xに平行な各断面では、基準軸Ax0を含んで左右方向Xに直交する面と当該断面との交線(基準軸Ax0を含む断面では基準軸Ax0)を中心として、後方に向かって所定角度θで広がるように左右方向Xの両側に傾斜した2直線L1,L1と、上記交線上での2直線L1,L1の交点をR付けする円弧線L2と、からなる形状に形成されている。また、入射面311は、左右方向Xに直交する各断面では、基準軸Ax0を含んで左右方向Xに平行な面と当該断面との交線上の点が頂点となるように後方へ膨出する凸状に形成されている。
なお、本実施形態においては、所定角度θが80°であり、LED2の出射面(前面)から円弧線L2までの前後方向Zに沿った長さが2.8mmである。
【0018】
また、レンズ3の前面は、前後方向Zに直交する平面状に形成されており、当該前面が入射面311からレンズ3内に入射した光を出射させる出射面32となっている。
【0019】
第二のレンズ4は、前後方向Zに直交する略平板状に形成されている。この第二のレンズ4は、左右方向Xに沿って鋸刃状に形成された入射面41を後面に有しており、レンズ3の出射面32から出射されてきた光を当該入射面41によって前方へ屈折させる。また、第二のレンズ4の前面は、前後方向Zに直交する平面状の出射面42となっている。
【0020】
続いて、灯具1の発光態様について説明する。
図4及び図5は、灯具1内での光路を説明するための図である。
【0021】
これらの図に示すように、灯具1では、LED2が発光すると、当該LED2から前方へ出射された光が入射面311を通じてレンズ3内に入射した後、出射面32からレンズ3外へ出射される。
【0022】
このとき、幅方向Yに直交する断面では、LED2からランバーシャンな指向特性で出射された光が、所定角度θで後方へ開口する入射面311を通じて左右方向Xの両側へ広がるように屈折されつつレンズ3内に入射した後、前後方向Zに直交する平面状の出射面32を通じて更に左右方向Xの両側へ広がるように屈折されつつレンズ3外へ出射される。
【0023】
ここで、入射面311による光の屈折度合いは、当該入射面311の開口角度である所定角度θによって決まっている。したがって、所定角度θを変更することで入射面311での光の屈折度合いを調整することができる。具体的には、所定角度θを小さくすることで、レンズ3に入射する光を左右方向Xの両側へより大きく屈折させることができる。
【0024】
一方、左右方向Xに直交する断面では、LED2からランバーシャンな指向特性で出射された光が、光軸Ax(基準軸Ax0)上の点を頂点として後方へ膨出する入射面311を通じて前方へ屈折されつつレンズ3内に入射した後、前後方向Zに直交する平面状の出射面32を通じて殆ど屈折されることなくレンズ3外へ出射される。
【0025】
こうして、LED2からランバーシャンな指向特性で出射された光は、レンズ3によって左右方向Xへ広げられるとともに幅方向Yへ狭められて前方へ照射される。より詳しくは、LED2からの光は、入射面311によって全体的に左右方向Xへ長尺になるように屈折されつつレンズ3内に入射した後、出射面32によって更に左右方向Xに広がるように屈折されつつ当該出射面32から前方へ出射される。これにより、図6に示すように、左右方向Xに長尺な配光パターンを形成することができる。
【0026】
レンズ3から前方へ照射された光は、左右方向Xに沿って鋸刃状に形成された入射面41を通じて前方への平行光とされつつ第二のレンズ4に入射した後、出射面42からそのまま前方へ出射される。このように、第二のレンズ4では、レンズ3から左右方向Xに長尺に出射された光を前方への平行光としているため、出射面42を左右方向Xに長尺に発光させることができる。
【0027】
以上のように、LED2からランバーシャンな指向特性で出射された光は、入射面311によって全体的に左右方向Xへ長尺になるように屈折されつつレンズ3内に入射した後、出射面32によって更に左右方向Xに広がるように屈折されつつ当該出射面32から前方へ出射される。したがって、ランバーシャンな指向特性を有するLED2を用いた場合であっても、左右方向Xに長尺な配光パターンを形成することができる。
【0028】
また、レンズ3から左右方向Xに長尺に出射された光を第二のレンズ4により前方への平行光としているので、当該第二のレンズ4の出射面42を左右方向Xに長尺に発光させることができる。
【0029】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、レンズ3の出射面32が前後方向Zに直交する平面状に形成されることとしたが、レンズ3では入射面311によって左右方向Xに長尺な配光制御がなされるため、出射面32の形状は、左右方向Xに短尺な配光パターンとならないように光を出射させるものであれば特に限定されない。したがって、出射面32は、入射面311から入射した光を、左右方向Xでは基準軸Ax0から離間するように出射させ、幅方向Yでは前後方向Zに沿った略平行光として出射させるものであればよい。
【0031】
また、出射面32は、所望する配光パターンの左右方向Xへの長さに応じて、前後方向Z及び左右方向Xに平行な各断面での形状を適宜変更してもよい。
例えば、配光パターンを左右方向Xへ更に長尺にしたい場合には、図7及び図8に示すように、前後方向Z及び左右方向Xに平行な各断面での出射面32の形状を、基準軸Ax0を含んで左右方向Xに直交する面と当該断面との交線から左右方向Xに離れるに連れて前方に高くなる凹状に形成すればよい。反対に、配光パターンを左右方向Xに少し短くしたい場合には、前後方向Z及び左右方向Xに平行な各断面での出射面32の形状を、上記とは逆に、緩やかな凸状にすればよい。
【0032】
また、出射面32は、上述の通り、幅方向Yに対しては、入射面311から入射した光を前後方向Zに沿った略平行光として出射させるものであればよい。したがって、左右方向Xに直交する各断面での出射面32の形状は、上記実施形態のように、入射面311によって幅方向Yで平行光とされた光をそのまま出射させる平坦状であってもよいし、入射面311の凸状の湾曲を緩やかにしたうえで、緩やかな凸状としてもよい。
【0033】
また、出射面32に凸状や凹状のレンズカットを形成し、当該レンズカットによって出射光を制御することとしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 灯具
2 LED
Ax 光軸
3 レンズ
311 入射面
Ax0 基準軸
L1 直線
L2 円弧線
θ 所定角度
32 出射面
4 第二のレンズ
41 入射面
42 出射面
X 左右方向
Y 幅方向
Z 前後方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDから出射された光を配光制御して、長尺な配光パターンを形成するレンズにおいて、
当該レンズの後面に設けられ、前記LEDから出射された光を入射させる入射面と、
当該レンズの前面に設けられ、前記入射面から入射した光を出射させる出射面と、
を備え、
前記入射面は、
前後方向及び左右方向に平行な各断面では、前後方向に沿った基準軸を含んで左右方向に直交する面と当該断面との交線を中心として後方に向かって所定角度で広がるように左右方向の両側に傾斜した2直線と、前記交線上での当該2直線の交点をR付けする円弧線と、からなる形状に形成され、
左右方向に直交する各断面では、前記基準軸を含んで左右方向に平行な面と当該断面との交線上の点が頂点となるように後方へ膨出する凸状に形成され、
前記出射面は、前記入射面から入射した光を、左右方向では前記基準軸から離間するように出射させ、前後方向及び左右方向に直交する方向では前後方向に沿った略平行光として出射させることを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記出射面は、前後方向及び左右方向に平行な各断面では、前記基準軸を含んで左右方向に直交する面と当該断面との交線から左右方向に離れるに連れて前方に高くなる凹状か、又は前後方向に直交する平坦状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレンズと、
前記基準軸に光軸を一致させて前記入射面に対向するように配置されたLEDと、
前記レンズの前方に配置され、前記出射面から出射された光を前方へ屈折させる第二のレンズと、
を備えることを特徴とする灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190631(P2012−190631A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52405(P2011−52405)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】