説明

レンズ鏡筒および撮像装置

【課題】構造を簡素化して収納状態における筒長を短くすることができるレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】シャッタユニット201と絞りユニット301の距離は、撮影状態では、回転筒402に形成されたカム溝403、404により一定の間隔406に保たれる。撮影状態から収納状態へ移行する際、カム溝403とカム溝404の間隔が変化し、その距離は短くなる。収納時、絞りアクチュエータ309を駆動し、センサ311により絞りユニット301が超開放状態になったことを確認する。絞り羽根308は、レンズ群208との干渉を防止するため、絞りベース305に収納される。レンズ群208は絞りユニット301の口径内320に入り込み、かつレンズ群208はレンズ群102の一部と光軸方向にオーバーラップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離を変更し、撮影状態から収納状態に移行自在なレンズ鏡筒および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影時に繰出し、収納時に沈胴するズームレンズ鏡筒に関し、収納状態の筒長を短くするための技術が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、沈胴および繰出しが自在なレンズ鏡筒と比べ、光軸方向の寸法(筒長)をさらに縮めることのできるレンズ鏡筒、およびそのようなレンズ鏡筒を備えたカメラを提供する技術が開示されている。図17は従来のレンズ鏡筒の構造を示す断面図である。このレンズ鏡筒800は、筒長の短い収納状態と筒長の長い撮影状態との間で筒長の変更が自在である。レンズ鏡筒800は、収納状態にあるとき、レンズシャッタ900の開口を開き、その開口内にレンズ群852を入り込ませることで、光軸方向の寸法を縮小する。
【0004】
また、特許文献2には、収納時の光軸方向の寸法を短くすることが可能なシャッタを備えたズームレンズ鏡筒を提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−347615号公報
【特許文献2】特開平10−111444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のレンズ鏡筒には、つぎのような課題があった。すなわち、収納時に筒長を更に短くすることができるレンズ鏡筒が要望された。
【0007】
また、特許文献1のレンズ鏡筒は、鏡筒が撮影状態から収納状態に移行するとき、あるいは撮影状態で衝撃など外力が加わったとき、レンズと光量調整部材が接触することを防ぐため、光量調整部材が棒状部材により強制的に退避させられる構造となっている。このため、光量調整部材に機能上、不必要な力が加わることにより、光量調整部材が破損したり、沈胴時に光量調整部材に余分な負荷がかかるといった懸念があった。
【0008】
そこで、本発明は、構造を簡素化して収納状態における筒長を短くすることができるレンズ鏡筒および撮像装置を提供することを目的とする。また、本発明は、光量調整部材が破損することを防ぐことができるレンズ鏡筒および撮像装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のレンズ鏡筒は、第1のレンズ群および第2のレンズ群の少なくとも一方を光軸方向に移動させることで、焦点距離を変更し、また、撮影状態から収納状態に移行自在であるレンズ鏡筒において、回転が規制された第1の保持枠と、前記第2のレンズ群を保持し、前記第1の保持枠に対して回転自在かつ前記光軸方向に移動自在である第2の保持枠と、前記第2の保持枠に保持され、当該第2の保持枠を前記第1の保持枠に対して回転させることで、前記光軸方向に移動する光量調整部材と、前記第1のレンズ群を保持し、前記第2の保持枠に対して前記光軸方向に移動自在である第3の保持枠とを有し、前記撮影状態から前記収納状態に移行した際、前記第2のレンズ群を構成する部材が、前記光量調整部材の口径内に入り込み、かつ、前記第2のレンズ群を構成する部材と前記第1のレンズ群を構成する部材が、前記光軸方向に重複した状態で保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係るレンズ鏡筒では、撮影状態から収納状態に移行した際、第2のレンズ群を構成する部材が光量調整部材の口径内に入り込み、かつ、第2のレンズ群を構成する部材と第1のレンズ群を構成する部材が、光軸方向に重複した状態で保持される。これにより、構造を簡素化して収納状態における筒長を短くすることができる。
【0011】
請求項2に係るレンズ鏡筒によれば、第2のレンズ群を構成する部材は、超開放状態において、光量調整部材の口径内に入り込んだ状態で保持されるので、光量調整部材が破損することを防ぐことができる。
【0012】
請求項3に係るレンズ鏡筒によれば、複数枚の羽根が超開放状態にあることが確認されてから収納状態に移行可能となるので、羽根とレンズの接触を回避することができる。
【0013】
請求項4に係るレンズ鏡筒によれば、収納状態における筒長をさらに短くすることができる。また、撮影状態で衝撃などの外力が加わったとき、光量調整部材と光量可変部材が接近し、レンズと羽根が接触して光量調整部材が破損することを防ぐことができる。
【0014】
請求項5に係るレンズ鏡筒によれば、収納状態で光量可変部材が全閉となるので、撮像素子の劣化を防止することができる。
【0015】
請求項6に係るレンズ鏡筒によれば、第2のレンズ群を挟んで光量調整部材とは反対側に光量可変部材が配置されたので、光量可変部材を撮像素子の近傍に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態におけるレンズ鏡筒71を搭載したデジタルカメラ12の外観を示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラ12の制御部およびその周辺回路の構成を示すブロック図である。
【図3】収納状態にある場合のレンズ鏡筒71の構造を示す断面図である。
【図4】撮影状態にある場合のレンズ鏡筒71の構造を示す断面図である。
【図5】絞りユニット301の構成を示す分解斜視図である。
【図6】光軸方向から見た絞りユニット301の構成を示す図である。
【図7】光軸方向から見た絞りユニット301の構成を示す図である。
【図8】光軸方向から見た絞りユニット301の構成を示す図である。
【図9】直進筒401、回転筒402、絞りユニット301およびシャッタユニット201の構成を示す図である。
【図10】回転筒402に形成されたカム溝403、404を示す展開図である。
【図11】光軸方向から見た、撮影状態における絞りユニット301とシャッタユニット201の外観を示す図である。
【図12】図11の矢印A−A線方向から見た、絞りユニット301とシャッタユニット201の構造を示す断面図である。
【図13】光軸方向から見た、収納状態における絞りユニット301とシャッタユニット201の外観を示す図である。
【図14】図13の矢印B−B線方向から見た、絞りユニット301とシャッタユニット201の構造を示す断面図である。
【図15】メイン電源OFF時にレンズ鏡筒71を撮影状態から収納状態に移行させる動作手順を示すフローチャートである。
【図16】撮影状態でエラーが発生した場合にレンズ鏡筒71を撮影状態から収納状態に移行させる動作手順を示すフローチャートである。
【図17】従来のレンズ鏡筒の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のレンズ鏡筒および撮像装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態のレンズ鏡筒は、撮像装置としてのデジタルカメラに搭載される。このレンズ鏡筒は、撮影倍率を任意に変更可能な沈胴式のズーム機構を有し、撮影状態から収納状態に移行自在である。
【0018】
図1は実施の形態におけるレンズ鏡筒71を搭載したデジタルカメラ12の外観を示す斜視図である。デジタルカメラ12の正面には、被写体の構図を決めるためのファインダ17、測光・測距を行う際の光源の補助を行う補助光源16、ストロボ18およびレンズ鏡筒71が設けられている。なお、図1においては、デジタルカメラ12のメイン電源がOFFであり、レンズ鏡筒(撮影レンズ鏡筒)71は収納状態にある。
【0019】
また、デジタルカメラ12の上面には、レリーズボタン13、電源切換えボタン15およびズームスイッチ14が配置されている。また、デジタルカメラ12の底面には、三脚取付部(図示せず)およびカードバッテリカバー(図示せず)が配置されている。カードバッテリカバーの内部には、後述するメモリカードドライブ42およびバッテリ挿入部(図示せず)が設けられている。
【0020】
また、デジタルカメラ12の背面には、様々な機能の切換えを行う操作ボタン21、22、23、24、25、26、LCDからなるディスプレイ20(図2参照)、およびファインダ接眼部(図示せず)が配置されている。操作ボタン21〜26の押下により、デジタルカメラ12の動作モード、例えば撮影モード、再生モード、動画撮影モード等の選択が行われる。ディスプレイ20は、メモリ40に保存された画像データやメモリカードから読み込んだ画像データを画面に表示する。また、再生モードが選択されると、ディスプレイ20は、複数の撮影データを縮小して画面に表示する。
【0021】
図2はデジタルカメラ12の制御部およびその周辺回路の構成を示すブロック図である。制御部50は、CPU46、ROM45およびRAM47から主に構成されている。制御部50には、バス44を介して、レリーズボタン13、操作ボタン21〜26、ディスプレイ20、メモリ40、メモリカードドライブ42等の各種の構成要素が接続されている。
【0022】
また、バス44を介して制御部50と接続される駆動回路43には、ズームモータ駆動部29、フォーカスモータ駆動部31、シャッタ駆動部32、絞り駆動部35、CCDやCMOS等の撮像素子105およびストロボ18が接続されている。ズームモータ駆動部29は鏡筒駆動モータ29aを駆動する。フォーカスモータ駆動部31はフォーカスモータ31aを駆動する。これら各部の駆動は、制御部50からの信号により制御される。ROM45には、上記各種の構成要素を制御する制御プログラムが記憶されている。RAM47には、各制御プログラムに必要なデータが記憶される。
【0023】
上記構成を有するデジタルカメラ12では、使用者が電源切換えボタン15を操作して電源をOFFからONにすると、CPU46はROM45から必要な制御プログラムを読み出して初期動作を開始する。つまり、制御部50は、レンズ鏡筒71を所定の撮影可能領域に移動させ、撮影機能を立ち上げて撮影スタンバイ状態になる。
【0024】
使用者が撮影を行うためにレリーズボタン13を押すと、制御部50は、撮像素子105により被写体の明るさを検知し、その測光値に基づいて絞り値やシャッタスピードを設定するとともに、ストロボ18を発光するか否かを判断する。また、使用者は、あらかじめ操作ボタン21を操作することによってストロボ18を強制的に発光させるか、発光させないかを選択することもできる。
【0025】
つづいて、制御部50は、測距を行い、被写体との距離を測定してフォーカスモータ駆動部31を制御し、フォーカスレンズ部30を所定のフォーカス位置に移動させる。これにより、焦点距離が変更される。なお、フォーカスレンズ部30には、後述するレンズ群102、208等が用いられる。
【0026】
そして、制御部50は、シャッタ駆動部32を制御してシャッタ(シャッタユニット)201の開閉を行い、所望の画像を撮像素子105に取り込ませる。撮像素子105には、露光制御値に基づいて入射した光の光量に応じた電荷が蓄積され、その電荷が画像信号となり、アナログ信号処理部36に出力される。
【0027】
アナログ信号処理部36は、取り込まれた画像信号にアナログ信号処理を施し、A/D変換部38に出力する。A/D変換部38は、取り込まれたアナログデータをデジタルデータに変換する。このデジタルデータはデジタル信号処理部39に出力され、デジタルデータの処理が行われる。最終的にデジタルデータはメモリ40に記憶される。
【0028】
メモリ40に記憶されたデジタルデータは、操作ボタン22の操作によって圧縮伸張部41によりJPEGやTIFF等の圧縮加工等が施された後、メモリカードドライブ42に出力され、メモリカードに記憶される。なお、メモリ40を持たないデジタルカメラ12の場合、デジタル信号処理部39で処理されたデジタルデータは、圧縮伸張部41に出力され、メモリカードドライブ42でメモリカードに記憶される。
【0029】
制御部50は、メモリ40に記憶された画像データやメモリカードドライブ42でメモリカードに記憶されている画像データに対し、圧縮伸張部41によって伸張処理を行い、処理後の画像データを、バス44を介してディスプレイ20に表示させる。使用者は、ディスプレイ20に表示されたデータを見てその画像が不必要であると判断した場合、操作ボタン23の操作によって消去することができる。
【0030】
使用者がデジタルカメラ12の上面に配置されたズームスイッチ14を操作することにより、ズームモータ駆動部29は、駆動回路43を介して制御部50によって制御され、レンズ鏡筒71をレンズの光軸方向(レンズの中心を通る光軸の方向)に移動させる。また、使用者は、ズームスイッチ14を操作することにより、ディスプレイ20に表示されている記憶画像を拡大あるいは縮小する、いわゆるデジタルズームを行うことができる。
【0031】
つぎに、デジタルカメラ12のレンズ鏡筒71の構造について説明する。図3は収納状態にある場合のレンズ鏡筒71の構造を示す断面図である。図4は撮影状態にある場合のレンズ鏡筒71の構造を示す断面図である。
【0032】
レンズ群208(第2のレンズ群)は、複数のレンズ群209およびシャッタベース202から構成される。複数のレンズ群209はシャッタベース202に固定されている。シャッタベース202には、その周方向に3本の直進ガイド部206が略等間隔に配置されており、その先端にカムピン207を有する。
【0033】
絞りベース305には、その周方向に3本の直進ガイド部314が略等間隔に配置されており、その先端にカムピン315を有する。
【0034】
レンズ群104は、レンズ群208に対して撮像素子105側に位置する。レンズ群104と撮像素子105の間には、光学部品106が配置されている。
【0035】
また、レンズ群208に対して、撮像素子105とは反対側に、レンズ群102(第1のレンズ群)が配置されている。このレンズ群102は、回転筒402に対して光軸方向に移動自在な円筒150(第3の保持枠)に保持されている。円筒150は、回転筒402に形成されたカム溝(図示せず)に追従するフォロワ部(図示せず)を有し、回転筒402の回転に従って光軸方向に移動する。
【0036】
つぎに、絞りユニットの構成を示す。図5は絞りユニット301の構成を示す分解斜視図である。図6、図7および図8は光軸方向から見た絞りユニット301の構成を示す図である。
【0037】
絞りユニット301(光量調整部材)は、絞りベース305、絞りカバー306、絞りリング307、絞り羽根308、絞りアクチュエータ309、ギヤ310、およびセンサ311から構成されている。
【0038】
絞りベース305には、絞り羽根308の回転軸312が挿入される穴313が光軸101を中心として周方向に略等間隔に複数個設けられている。絞りアクチュエータ309の駆動軸には、ギヤ310が取り付けられている。また、絞りアクチュエータ309は絞りベース305に固定されている。
【0039】
絞りリング307には、絞り羽根308のボス317と嵌合するカム溝316が光軸101を中心として周方向に略等間隔に複数個設けられている。また、絞りリング307には、ギヤ310と噛み合うギヤ部318、およびセンサ311によって検出される被検出部322が設けられている。なお、センサ311および被検出部322は位置検出手段の一例である。
【0040】
絞り羽根308には、回転軸312およびボス317が設けられている。回転軸312は、絞りベース305に形成された穴313に挿入される。また、ボス317は、絞りリング307に形成されたカム溝316に挿入される。
【0041】
絞り羽根308は、光軸101を中心として略等間隔に複数枚配置されている。複数枚の絞り羽根308は、それらの重なり具合によって大きさ(口径)が変更自在な開口319を形成する。
【0042】
絞りリング307が絞りアクチュエータ309の動力により駆動されると、絞り羽根308は回転軸312を中心に絞りリング307のカム溝316に沿って回転するように移動し、絞りユニット301の開口319を意図した大きさに開閉する。
【0043】
本実施形態の絞りユニット301は、撮影状態において、複数枚の絞り羽根308が開口319を形成することで、光量を調整する。一方、収納状態において、複数枚の絞り羽根308は、レンズ群208との干渉を防止するため、絞りベース305の外径内であって最大口径dの外側部分に収納される。すなわち、複数枚の絞り羽根308は、撮影状態における最大口径よりもさらに大きく開いた超開放状態に移行する。ここで、超開放状態における最大口径dの内側を口径内320とする。
【0044】
絞りベース305には、センサ311が固定されており、絞りリング307に設けられた被検出部322の位置を検出することで、絞り羽根308の状態が把握される。また、本実施形態では、絞り羽根308が絞りベース305内に収納され、撮影状態の最大口径よりもさらに大きく開いた超開放状態になったとき、センサ311は、被検出部322を検知するように配置されている。
【0045】
図9は直進筒401、回転筒402、絞りユニット301およびシャッタユニット201の構成を示す図である。図10は回転筒402に形成されたカム溝403、404を示す展開図である。
【0046】
直進筒401(第1の保持枠)には、シャッタユニット201(光量可変部材)に設けられた直進ガイド部206、および絞りユニット301に設けられた直進ガイド部314が嵌合する切り欠き405が形成されている。なお、直進筒401の回転は直進規制部材(図示せず)によって規制されている。
【0047】
回転筒402(第2の保持枠)は、直進筒401に対して回転自在かつ光軸方向に移動自在である。回転筒402には、直進ガイド部206の先端に設けられたカムピン207と係合するカム溝403(第2のカム部)、および直進ガイド部314の先端に設けられたカムピン315と係合するカム溝404(第1のカム部)が形成されている。
【0048】
直進ガイド部314、206を、直進筒401の切り欠き405に挿入し、それぞれの先端に設けられたカムピン207、315を回転筒402に形成されたカム溝403、404に位置させる。これにより、直進筒401と回転筒402は、絞りユニット301およびシャッタユニット201を保持する。
【0049】
ここで、直進筒401に対して回転筒402を相対的に回転させることで、シャッタユニット201と絞りユニット301は光軸101の方向に移動する。シャッタユニット201と絞りユニット301の距離は、撮影状態では、回転筒402に形成されたカム溝403、404により一定の間隔406に保たれている。しかし、撮影状態から収納状態へ移行する際、カム溝403とカム溝404の間隔が間隔407に変化して短くなるので、シャッタユニット201と絞りユニット301は接近する。これにより、収納状態における筒長を短くすることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、撮影状態において、シャッタユニット201と絞りユニット301の距離を一定に保って光軸101の方向に移動させているが、この距離を可変させながら移動させてもよく、そのようにすることで、光学系の自由度が増す。また、シャッタユニット201と絞りユニット301は、直進筒401および回転筒402によって保持・駆動されることで、レンズ鏡筒の構造は簡略化される。
【0051】
つぎに、撮影状態と収納状態における、絞りユニット301とシャッタユニット201を示す。図11は光軸方向から見た、撮影状態における絞りユニット301とシャッタユニット201の外観を示す図である。図12は図11の矢印A−A線方向から見た、絞りユニット301とシャッタユニット201の構造を示す断面図である。
【0052】
また、図13は光軸方向から見た、収納状態における絞りユニット301とシャッタユニット201の外観を示す図である。図14は図13の矢印B−B線方向から見た、絞りユニット301とシャッタユニット201の構造を示す断面図である。
【0053】
シャッタユニット201と絞りユニット301は、光軸101の方向に、レンズ群208を挟むように各々独立に配置されている。シャッタユニット201は、絞りユニット301よりも撮像素子105の近傍に配置されている。
【0054】
また、シャッタユニット201は、シャッタベース202の一部、シャッタ羽根203、シャッタカバー204(図12参照)およびシャッタアクチュエータ(図示せず)から構成される。シャッタ羽根203は、そのスペースに応じて1枚から複数枚で構成されており、シャッタアクチュエータの動力を利用して開閉自在であり、無通電状態で全開状態あるいは全閉状態に保持される。
【0055】
図15はメイン電源OFF時にレンズ鏡筒71を撮影状態から収納状態に移行させる動作手順を示すフローチャートである。この処理プログラムは、制御部50内のROM45に格納されており、メイン電源がOFFになったときにCPU46によって実行される。
【0056】
レンズ鏡筒71が撮影状態から収納状態に移行する際、制御部50は、まずセンサ311が絞りリング307に設けられた被検出部322の位置を検出したか否かを判別する(ステップS1)。制御部50は、被検出部322の位置を検出しなかった場合、絞り羽根308の開口319の状態を確認し、その状態に合わせて、絞りアクチュエータ309を駆動する(ステップS2)。そして、制御部50はステップS1の処理に戻る。
【0057】
一方、制御部50は、センサ311により、絞りユニット301が意図した超開放状態になったことを確認すると、レンズ鏡筒71を撮影状態から収納状態に移行させ(ステップS53)、本処理を終了する。
【0058】
このとき、絞り羽根308は、レンズ群208との干渉を防止するため、絞りユニット301の口径内320に収納され、撮影状態の最大口径よりもさらに大きく開いた超開放状態に移行し、保持されている。
【0059】
また、レンズ群208を構成する部材の少なくとも一部が、絞りユニット301の口径内320に入り込み、かつレンズ群208を構成する部材の少なくとも一部が、レンズ群102を構成する部材の少なくとも一部と光軸方向にオーバーラップする。これにより、レンズ鏡筒の全長を短縮することができる(図1参照)。
【0060】
図16は撮影状態でエラーが発生した場合にレンズ鏡筒71を撮影状態から収納状態に移行させる動作手順を示すフローチャートである。この処理プログラムは、制御部50内のROM45に格納されており、CPU46によって所定の周期ごとに実行される。
【0061】
制御部50は、撮影状態で、デジタルカメラ12に異常が起きたり、レンズ鏡筒71が誤作動を起こしたりして、エラーが発生しているか否かを判別する(ステップS11)。
【0062】
撮影状態で、デジタルカメラ12に異常が起きた場合やレンズ鏡筒71が誤作動を起こした場合、制御部50は、センサ311により、絞りユニット301の状態を確認する(ステップS12)。つまり、制御部50は、センサ311が絞りリング307に設けられた被検出部322の位置を検出したか否かを判別する。
【0063】
制御部50は、絞り羽根308の開口319の状態を確認した結果、絞り羽根308が超開放状態になかった場合、絞りアクチュエータ309を駆動する(ステップS13)。そして、制御部50はステップS12の処理に戻る。一方、制御部50は、センサ311により、絞りユニット301が意図した超開放状態になったことを確認すると、レンズ鏡筒71を撮影状態から収納状態に移行させ(ステップS14)、本処理を終了する。
【0064】
このように、制御部50は、センサ311を用いて絞りユニット301の状態を確認することで、絞り羽根308を超開放状態に移行させ、絞り羽根308が撮影状態のまま、沈胴してレンズ群208と干渉し、レンズ鏡筒71が破損してしまうことを防止する。
【0065】
ここで、レンズ鏡筒71が収納状態にある場合でも、シャッタ羽根203は、状態に関係なく開閉可能である。従って、収納状態でシャッタ羽根203を閉じることで、撮像素子105および撮像素子105に設けられた光学部品106の性能劣化を防ぐことができる。
【0066】
本実施形態では、レンズ群102のレンズ群209に最も近いレンズ面107が凹面形状を有し、レンズ群208のレンズ群102に最も近いレンズ面321が凸面形状を有する。そして、収納状態では、これらのレンズ面同士が光軸101に対して垂直方向にオーバーラップ(重複)した状態にある。これにより、筒長を短くすることができる。なお、レンズ構成によって面形状の組み合わせは、任意であり、特に限定されない。
【0067】
さらに、撮影状態から収納状態に移行する場合、あるいは撮影状態で衝撃など外力が加わった場合、シャッタユニット201と絞りユニット301で互いの距離が近づくことを抑制するので、シャッタユニット201と絞りユニット301の破損を防ぐことができる。
【0068】
本実施形態のレンズ鏡筒では、撮影状態から収納状態に移行した際、レンズ群208を構成する部材が絞りユニット301の口径内320に入り込み、かつ、レンズ群208を構成する部材とレンズ群102を構成する部材が、光軸方向に重複した状態で保持される。これにより、構造を簡素化して収納状態における筒長を短くすることができる。
【0069】
また、レンズ群208を構成する部材は、超開放状態において、絞りユニット301の口径内320に入り込んだ状態で保持されるので、絞りユニット301が破損することを防ぐことができる。
【0070】
また、複数枚の羽根308が超開放状態にあることが確認されてから収納状態に移行可能となるので、羽根とレンズの接触を回避することができる。
【0071】
また、収納状態でシャッタユニット201が全閉となるので、撮像素子105の劣化を防止することができる。
【0072】
また、撮影状態で衝撃などの外力が加わったとき、絞りユニット301とシャッタユニット201が接近し、レンズと羽根が接触して絞りユニット301が破損することを防ぐことができる。
【0073】
また、レンズ群208を挟んで絞りユニット301とは反対側にシャッタユニット201が配置されたので、シャッタユニット201を撮像素子105の近傍に配置することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0075】
本実施形態では、絞りユニット301が超開放状態となり、シャッタユニット201を全閉状態としているが、特にこのような状態に限定されない。例えば、光量調整部材としてシャッタユニット201を全開にし、光量可変部材として絞りユニット301を全閉にする構成や、絞りユニット301の代わりにNDフィルタなどの光量調整部材を使用する構成であってもかまわない。
【0076】
また、ガイド部、加圧部等の構成や配置は、上記実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。
【0077】
また、本実施形態のレンズ鏡筒は、撮像装置と一体に構成されたものであったが、撮像装置に対して交換自在に装着されるものであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、撮像装置としてデジタルカメラを例に説明したが、本発明は、デジタルビデオカメラ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
50 制御部
71 レンズ鏡筒
102、208 レンズ群
150 円筒
201 シャッタユニット
301 絞りユニット
308 絞り羽根
309 絞りアクチュエータ
311 センサ
322 被検出部
401 直進筒
402 回転筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレンズ群および第2のレンズ群の少なくとも一方を光軸方向に移動させることで、焦点距離を変更し、また、撮影状態から収納状態に移行自在であるレンズ鏡筒において、
回転が規制された第1の保持枠と、
前記第2のレンズ群を保持し、前記第1の保持枠に対して回転自在かつ前記光軸方向に移動自在である第2の保持枠と、
前記第2の保持枠に保持され、当該第2の保持枠を前記第1の保持枠に対して回転させることで、前記光軸方向に移動する光量調整部材と、
前記第1のレンズ群を保持し、前記第2の保持枠に対して前記光軸方向に移動自在である第3の保持枠とを有し、
前記撮影状態から前記収納状態に移行した際、前記第2のレンズ群を構成する部材が、前記光量調整部材の口径内に入り込み、かつ、前記第2のレンズ群を構成する部材と前記第1のレンズ群を構成する部材が、前記光軸方向に重複した状態で保持されることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記光量調整部材は、絞りの口径を可変する複数枚の羽根を有し、
前記レンズ鏡筒が前記収納状態にある場合、前記複数枚の羽根は、前記撮影状態における最大口径より大きく開いた超開放状態に移行し、
前記第2のレンズ群を構成する部材は、前記超開放状態において、前記光量調整部材の口径内に入り込んだ状態で保持されることを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記光量調整部材は、前記複数枚の羽根が前記超開放状態にある位置を検出する位置検出手段を有し、
前記位置検出手段によって前記複数枚の羽根が前記超開放状態にある位置が検出された場合、前記収納状態に移行可能となることを特徴とする請求項2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2の保持枠に前記光量調整部材とは別に保持された光量可変部材を有し、
前記光量調整部材および前記光量可変部材は、前記第2の保持枠にそれぞれ設けられた第1のカム部および第2のカム部により、前記光軸方向に移動自在であり、
前記収納状態では、前記光量調整部材と前記光量可変部材の間隔は、前記撮影状態に比べて短くなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記光量可変部材は、開閉自在である複数枚の羽根を有し、前記レンズ鏡筒が前記収納状態にある場合、前記複数枚の羽根を全閉にすることを特徴とする請求項4記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記光量可変部材は、前記第2のレンズ群を挟んで前記光量調整部材とは反対側に配置されたことを特徴とする請求項4記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備えた撮像装置。
【請求項8】
請求項3に記載のレンズ鏡筒を用い、前記位置検出手段によって前記複数枚の羽根が前記超開放状態にある位置が検出された場合、前記レンズ鏡筒を収納状態に移行させる制御手段を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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