説明

レンズ鏡筒及びカメラシステム

【課題】好適な焦点調節を行うことが可能なレンズ鏡筒及びカメラシステムを提供する。
【解決手段】カメラボディを取付け可能な取付部と、フォーカシングレンズを有する結像光学系と、フォーカシングレンズの至近側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する至近限界位置と、フォーカシングレンズの無限遠側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する無限限界位置との間でフォーカシングレンズを駆動可能な駆動部と、カメラボディとの間で信号の送受信が可能な送受信部と、結像光学系が像面に合焦可能な最も至近側の位置に対応する至近合焦位置及び結像光学系が像面に合焦可能な最も無限遠側の位置に対応する無限合焦位置のうち何れか一方と、至近限界位置と、無限限界位置とを送受信部がカメラボディに送信するように送受信部を制御する制御部とを有するレンズ鏡筒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及びカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば一眼レフレックスカメラのような交換レンズ式のカメラシステムにおいては、交換レンズ毎にフォーカシングレンズの駆動可能範囲が異なる可能性がある。従って、自動焦点調節を行うカメラボディは、交換レンズからフォーカシングレンズの駆動可能範囲に関する情報を受信する必要がある。例えば特許文献1には、フォーカシングレンズの無限側駆動リミット位置および至近側駆動リミット位置を交換レンズからカメラボディに送信するレンズ交換式デジタルカメラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−275890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレンズ交換式デジタルカメラは、最短撮影距離に対応するフォーカシングレンズの位置に関する情報の授受を行わないので、自動焦点調節においてフォーカシングレンズの駆動に無駄が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の一実施例を示す図面に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、カメラボディ(100)を取付け可能な取付部(201)と、フォーカシングレンズ(210d)を有する結像光学系(210)と、フォーカシングレンズ(210d)の至近側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する至近限界位置と、フォーカシングレンズ(210d)の無限遠側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する無限限界位置との間でフォーカシングレンズ(210d)を駆動可能な駆動部(212)と、カメラボディ(100)との間で信号の送受信が可能な送受信部(204)と、結像光学系(210)が像面に合焦可能な最も至近側の位置に対応する至近合焦位置及び結像光学系(210)が像面に合焦可能な最も無限遠側の位置に対応する無限合焦位置のうち何れか一方と、至近限界位置と、無限限界位置とを送受信部(204)がカメラボディ(100)に送信するように送受信部(204)を制御する制御部(203)とを有することを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、結像光学系(210)の焦点距離を検出し、焦点距離信号を出力する焦点距離検出部(214)と、至近合焦位置と結像光学系(210)の焦点距離とを関連付けたテーブルが記憶される第1記憶部(215)と、至近合焦位置を記憶可能な第2記憶部(216)とを有し、制御部(203)は、焦点距離検出部(214)から出力された焦点距離信号を用いて第1記憶部(215)から至近合焦位置を取得して第2記憶部(216)に記憶させ、送受信部(204)がカメラボディ(100)から受信した信号に応じて、第2記憶部(216)に記憶されている至近合焦位置と、至近限界位置と、無限限界位置とを送受信部(204)がカメラボディ(100)に送信するように送受信部(204)を制御することを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、結像光学系(210)の焦点距離を検出し、焦点距離信号を出力する焦点距離検出部(214)と、焦点距離検出部(214)から出力された焦点距離信号を用いて、至近合焦位置を演算する演算部(203)と、至近合焦位置を記憶可能な記憶部(216)とを有し、制御部(203)は、演算部(203)により演算された至近合焦位置を記憶部(216)に記憶させ、送受信部(204)がカメラボディ(100)から受信した信号に応じて、記憶部(216)に記憶されている至近合焦位置と、至近限界位置と、無限限界位置とを送受信部(204)がカメラボディ(100)に送信するように送受信部(204)を制御することを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載されたレンズ鏡筒において、フォーカシングレンズ(210d)の位置を検出しレンズ位置信号を出力するレンズ位置検出部(213)を備え、送受信部(204)は、第1伝送路(310)を介してレンズ位置信号をカメラボディ(100)に繰り返し送信し、第1伝送路(310)とは異なる第2伝送路(320)を介して至近合焦位置、至近限界位置及び無限限界位置をカメラボディ(100)に送信することを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のレンズ鏡筒において、レンズ位置信号は、結像光学系(210)の無限合焦位置を基準にして表されていることを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のレンズ鏡筒において、送受信部(204)は、至近合焦位置の送信頻度よりも高い頻度でレンズ位置信号を繰り返し送信することを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項7に記載の発明は、カメラボディ(100)を取付け可能な取付部(201)と、フォーカシングレンズ(210d)を有する結像光学系(210)と、フォーカシングレンズ(210d)の至近側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する至近限界位置と、フォーカシングレンズ(210d)の無限遠側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する無限限界位置との間でフォーカシングレンズ(210d)を駆動可能な駆動部(212)と、カメラボディ(100)との間で信号の送受信が可能な送受信部(204)と、各々がフォーカシングレンズ(210d)の異なる位置を表す第1位置と第2位置と第3位置とを送受信部(204)がカメラボディ(100)に送信するように送受信部(204)を制御する制御部(203)とを有し、第1位置は、結像光学系(210)が像面に合焦可能な最も至近側の位置に対応する至近合焦位置及び結像光学系(210)が像面に合焦可能な最も無限遠側の位置に対応する無限合焦位置のうち何れか一方であり、第2位置は、至近限界位置と至近合焦位置との間の中間位置及び至近限界位置のうち何れか一方であり、第3位置は、無限限界位置と無限合焦位置との間の中間位置及び無限限界位置のうち何れか一方であることを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載されたレンズ鏡筒において、至近合焦位置と第2位置との間の距離は、無限合焦位置と第3位置との間の距離よりも大きいことを特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒と、取付部(201)に取付可能なカメラボディとを有することを特徴とするカメラシステムである。
なお、符号を付して説明した構成は適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、好適な焦点調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
【図2】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。
【図3】接続部102,202の詳細を示す模式図である。
【図4】フォーカシングレンズ210dの駆動範囲を示す模式図である。
【図5】ROM215に記憶されている位置情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。なお、図1では本発明に係わる機器および装置のみを示し、それ以外の機器および装置については図示と説明を省略する。カメラ1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能なレンズ鏡筒200とから構成される。レンズ鏡筒200は、不図示のズーム環に対する操作により焦点距離を変更可能な、いわゆるズームレンズである。
【0009】
カメラボディ100にはレンズ鏡筒200が取り付け可能なレンズマウント101が設けられている。またレンズ鏡筒200には、ボディ側のレンズマウント101に対応し、カメラボディ100が取り付け可能なレンズマウント201が設けられている。レンズ鏡筒200が装着されると、レンズマウント101上に設けられた複数の接点から成る接続部102が、レンズ鏡筒200のレンズマウント201上に設けられた複数の接点から成る接続部202に接続される。接続部102,202は、カメラボディ100からレンズ鏡筒200への電力供給、および、カメラボディ100とレンズ鏡筒200との信号の送受信に利用される。
【0010】
カメラボディ100内のレンズマウント101後方には撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たるボタン17a,17bが設けられている。ユーザはこれらのボタン17a,17bを用いてカメラボディ100に撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。
【0011】
図2は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。レンズ鏡筒200は、被写体像を結像させる結像光学系210を備える。結像光学系210は複数のレンズ210a〜210eにより構成されている。これら複数のレンズ210a〜210eには、被写体像のピント位置を制御するためのフォーカシングレンズ210dが含まれている。この結像光学系210は、不図示のズーム環により焦点距離を変更可能に構成されている。
【0012】
レンズ鏡筒200内部には、レンズ鏡筒200の各部の制御を司るレンズ側制御部203が設けられている。レンズ側制御部203は不図示のマイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ側制御部203には、レンズ側送受信部217、レンズ駆動部212、レンズ位置検出部213、焦点距離検出部214、ROM215、およびRAM216が接続されている。
【0013】
レンズ側送受信部217は、接続部102、202を介してカメラボディ100との信号の送受信が可能である。レンズ駆動部212は例えばステッピングモータ等のアクチュエータを有し、レンズ駆動部212に入力された信号に応じて、フォーカシングレンズ210dを後述する範囲で駆動する。レンズ位置検出部213は、例えばレンズ駆動部212が有するステッピングモータに入力された信号のパルス数を計数して、フォーカシングレンズ210dの位置を検出し、レンズ位置信号を出力する。あるいは、レンズ鏡筒200に設けられた周知の距離エンコーダ等を用いてフォーカシングレンズ210dの位置を検出してもよい。焦点距離検出部214は、例えばズームエンコーダ等を用いて結像光学系210の焦点距離を検出し、焦点距離信号を出力する。
【0014】
ROM215は不揮発性の記憶媒体であり、レンズ側制御部203が実行する所定の制御プログラムや、後述する位置情報テーブル等が予め記憶される。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズ側制御部203により各種データの記憶領域として利用される。
【0015】
撮像素子104の前面には、シャッター115およびフィルター116が設けられている。結像光学系210を透過した被写体光は、シャッター115およびフィルター116を介して撮像素子104に入射する。シャッター115は、撮像素子104の露光状態を制御する。フィルター116は、光学的ローパスフィルターと赤外線カットフィルターを組み合わせた光学フィルターである。
【0016】
カメラボディ100内部には、カメラボディ100の各部の制御を司るボディ側制御部103が設けられている。ボディ側制御部103は不図示のマイクロコンピュータ、RAMおよびその周辺回路等から構成される。ボディ側制御部103にはボディ側送受信部117が接続されている。ボディ側送受信部117は接続部102に接続されており、レンズ側送受信部217と信号の送受信を行うことができる。
【0017】
カメラボディ100の背面には、LCDパネル等により構成される表示装置111が配置される。ボディ側制御部103はこの表示装置111に対し、撮像素子104の出力に基づく被写体の画像(いわゆるスルー画)や、撮影条件等を設定するための各種のメニュー画面を表示する。
【0018】
(自動焦点調節の説明)
ボディ側制御部103は、周知の自動焦点調節処理を実行可能に構成されている。自動焦点調節処理は、現在の焦点調節状態を検出する焦点検出処理と、この検出結果に応じてフォーカシングレンズを駆動し焦点調節を行う焦点調節処理とを含む。自動焦点調節処理において、ボディ側制御部103は2種類の焦点検出処理を使い分けることが可能に構成されている。具体的には、ボディ側制御部103はいわゆる撮像面位相差検出方式の焦点検出処理と、いわゆるコントラスト検出方式の焦点検出処理とを使い分けることが可能である。ボディ側制御部103は、撮影状況や被写体の特性等に応じてこれら2種類の焦点検出処理を使い分ける。
【0019】
ボディ側制御部103による撮像面位相差検出方式の焦点検出処理について説明する。本実施形態の撮像素子104は、フォーカス検出用の画素(焦点検出用画素と呼ぶ)を有する。フォーカス検出用画素は、特開2007−317951号公報に記載されているものと同様のものである。ボディ側制御部103は、焦点検出用画素からの画素出力データを用いて周知の位相差検出演算を行うことにより、焦点検出処理を行う。なお、この位相差検出演算については、例えば特開2007−317951号公報に記載されているものと同様のものであるため、説明を省略する。ボディ側制御部103は、この焦点検出処理により得られたデフォーカス量に基づいてフォーカシングレンズ210dを駆動させることにより、自動焦点調節を行う。
【0020】
ボディ側制御部103によるコントラスト検出方式の焦点検出処理について説明する。ボディ側制御部103は、撮像素子104が有する撮像用画素からの画素出力データを用いて、いわゆる山登り法に基づく周知のコントラスト検出演算を行い、焦点評価値(コントラスト値)を算出する。ボディ側制御部103はこのコントラスト検出演算を、フォーカシングレンズ210dを後述する範囲で駆動させながら行い、焦点評価値がピークとなるフォーカシングレンズ210dの位置を検出することにより、自動焦点調節を行う。
【0021】
(データ通信の説明)
図3は接続部102,202の詳細を示す模式図である。図3に示すように、接続部102および202にはそれぞれ、信号の送受信を行うための8つの接点が存在する。すなわち、カメラボディ100とレンズ鏡筒200との間には、各々の接点に対応する8つの信号線が存在する。なお、これらの接点以外にも、例えばカメラボディ100からレンズ鏡筒200に電源供給を行うための接点等が存在するが、ここでは図示および説明を省略する。以下、これら8つの信号線を、図3に示すように、HCLK,HREQ,HANS,HDAT,CLK,RDY,BDAT,LDATと呼ぶ。
【0022】
上述した8つの信号線のうち、HCLK,HREQ,HANS,HDATは第1伝送路310を構成する。同様に、CLK,RDY,BDAT,LDATは第2伝送路320を構成する。以下、これら2種類の伝送路のについて説明する。
【0023】
第1伝送路310は、レンズ側送受信部217がフォーカシングレンズ210dの位置を表すレンズ位置信号をカメラボディ100に送信するために利用される。ボディ側送受信部117は、所定周期(例えば1ミリ秒)ごとに、HREQの信号レベルを変化させる。レンズ側制御部203はHREQの信号レベルの変化に応じて通信準備処理を開始する。この通信準備処理とは具体的には、レンズ位置検出部213にフォーカシングレンズ210dの位置を検出させ、カメラボディ100に送信するレンズ位置信号を出力させる処理である。
【0024】
通信準備処理が完了すると、レンズ側送受信部217はHANSの信号レベルを変化させる。ボディ側送受信部117はHANSの信号レベルの変化に応じて、HCLKにクロック信号を出力する。レンズ側送受信部217はこのクロック信号に同期してHDATにレンズ位置信号を出力する。
【0025】
第2伝送路320は、カメラボディ100からレンズ鏡筒200への制御指示データの送信や、レンズ鏡筒200からカメラボディ100への各種データの送信に利用される。第2伝送路320は全二重の伝送路である。すなわち、カメラボディ100からレンズ鏡筒200に対するデータの送信と同時に、レンズ鏡筒200からカメラボディ100に対するデータの送信が行われる。
【0026】
ボディ側制御部103は、第2伝送路320を用いて通信を行う必要が生じると、ボディ側送受信部117を制御し、CLKへクロック信号を出力させる。このときボディ側送受信部117は、クロック信号に同期してBDATに送信対象のデータを出力する。他方、レンズ側送受信部217は、クロック信号に同期してLDATに送信対象のデータを出力する。なおレンズ側送受信部217は、データの送受信が可能な場合とそうでない場合とで、RDYの信号レベルを変化させる。例えば、レンズ側送受信部217がデータの送受信のできない状態である場合にはRDYの信号レベルをHに、データの送受信が可能な状態である場合にはLにする。ボディ側送受信部117は通信の開始前にRDYの信号レベルを確認し、レンズ側送受信部217がデータの送受信のできない状態であった場合には通信を行わない。
【0027】
ボディ側送受信部117は以上で説明した第2伝送路320を用いて、レンズ鏡筒200に各種の制御信号を送信する。制御信号の例としては、フォーカシングレンズ210dを無限遠方向に特定のパルス数分(例えば10パルス分)移動させる制御信号や、絞り(不図示)を特定の段数分(例えば2段分)絞る制御信号などがある。
【0028】
ボディ側送受信部117が第2伝送路320を用いて送信する信号には他に、レンズ鏡筒200の各種情報を要求する要求信号がある。要求信号の例としては、結像光学系210の現在の焦点距離を表す信号の要求信号や、絞り(不図示)の現在の絞り値を表す信号の要求信号などがある。レンズ側送受信部217は上記の要求信号を受信すると、対応する信号を第2伝送路320を介してボディ側送受信部117に送信する。
【0029】
なお、ボディ側送受信部117が上記の第2伝送路320を利用してレンズ側送受信部217から何らかの信号を受信するために必要な時間は、第1伝送路310を利用してレンズ位置信号を受信するために必要な時間と比べて大きくなる。これは、第1伝送路310ではHREQの信号レベルを変化させるだけでレンズ側送受信部217にデータを要求していることを伝えられていたのに対し、第2伝送路320ではまずCLKおよびBDATを用いて特定の情報の要求をレンズ側送受信部217に送信する必要があるためである。従って、レンズ側送受信部217は、至近合焦位置の送信頻度よりも高い頻度でレンズ位置信号を繰り返し送信することが可能である。
【0030】
(レンズ駆動部212による駆動範囲の説明)
図4はフォーカシングレンズ210dの駆動範囲を示す模式図である。フォーカシングレンズ210dは、図4に一点鎖線で示す光軸400上を、無限遠方向410および至近方向420に向けて移動可能に構成されている。無限遠方向410の端部430および至近方向420の端部440には不図示のストッパーが設けられ、フォーカシングレンズ210dの移動を制限する。つまり、フォーカシングレンズ210dは無限遠方向410の端部430から、至近方向420の端部440まで移動可能に構成されている。
【0031】
ただし、レンズ駆動部212が実際にフォーカシングレンズ210dを移動させる範囲は、上述の端部430から端部440までの範囲より小さい。この移動範囲について具体的に述べると、レンズ駆動部212は無限遠方向410の端部430より内側に設けられた無限限界位置450から、至近方向420の端部440より内側に設けられた至近限界位置460までの範囲でフォーカシングレンズ210dを駆動する。すなわちレンズ駆動部212は、フォーカシングレンズ210dを至近側の駆動限界の位置に対応する至近限界位置460と無限遠側の駆動限界の位置に対応する無限限界位置450との間で駆動する。
【0032】
無限限界位置450は、無限合焦位置470より外側に設けられる。なお無限合焦位置470とは、無限遠の被写体に合焦するフォーカシングレンズ210dの位置、すなわち結像光学系210が合焦可能な最も無限遠側の位置に対応するフォーカシングレンズ210dの位置である。無限限界位置450をこのような位置に設ける理由は、いわゆる山登り法による自動焦点調節を行う場合に、無限合焦位置470に焦点評価値のピークが存在することがあるためである。無限合焦位置470を無限限界位置450に一致させてしまうと、無限合焦位置470に存在する焦点評価値のピークをピークとして認識することができないという問題があるので望ましくない。同様に、至近限界位置460は、至近合焦位置480より外側に設けられる。ここで至近合焦位置480とは、至近の被写体に合焦するフォーカシングレンズ210dの位置、すなわち結像光学系210が合焦可能な最も至近側の位置に対応するフォーカシングレンズ210dの位置である。
【0033】
本実施形態では、フォーカシングレンズ210dの位置はレンズ駆動部212に与える信号のパルス数により表される。また、パルス数は無限合焦位置470を原点(基準)とする。例えば図4に示すように、無限限界位置450は−100パルスの位置、至近合焦位置480は9800パルスの位置、至近限界位置460は9900パルスの位置である。この場合、フォーカシングレンズ210dを無限限界位置450から至近限界位置460まで移動させるためには、レンズ駆動部212に10000パルスの信号を与えればよい。
【0034】
なお、無限限界位置450、至近限界位置460、および至近合焦位置480が上記の数値と異なっていてもよいことは勿論であり、更にレンズ鏡筒の種別や個体により異なっていてもよい。
【0035】
(位置情報テーブルの説明)
ボディ側制御部103は、例えば自動焦点調節を行う際に、上述の無限限界位置450、至近限界位置460、および至近合焦位置480を知る必要がある。しかしながら、前述の通り結像光学系210の焦点距離は可変であり、至近合焦位置480は焦点距離に応じて変動する。
【0036】
そこで本実施形態では、各焦点距離に応じた至近合焦位置480を位置情報テーブルという形で予めROM215に記憶しておき、現在の焦点距離に応じた至近合焦位置480をレンズ側送受信部217から第2伝送路によりボディ側送受信部117に定期的に送信する。
【0037】
図5は、ROM215に記憶されている位置情報を示す図である。ROM215には、図5(a)に示す位置情報テーブル510が予め記憶されている。位置情報テーブル510は、至近合焦位置と結像光学系210の焦点距離とを関連付けたテーブルである。図5(a)に示す位置情報テーブル510によれば、例えば結像光学系210の焦点距離が20mmのとき、至近合焦位置は9800パルスの位置である。また、焦点距離が30mmのときには、至近合焦位置は9750パルスの位置である。
【0038】
レンズ側制御部203は、結像光学系210の焦点距離の変化に応じて、焦点距離検出部214から出力された焦点距離信号を用いて、現在の焦点距離に対応する至近合焦位置を位置情報テーブル510から取得し、RAM216に記憶させる。そして、レンズ側送受信部217がカメラボディ100から第2伝送路320を介して至近合焦位置の要求信号を受信すると、これに応じてレンズ側送受信部217を制御し、RAM216に記憶されている至近合焦位置をボディ側送受信部117に送信させる。
【0039】
ROM215には更に、図5(b)に示す限界位置情報テーブル520が記憶されている。限界位置情報テーブル520は、至近限界位置460と無限限界位置450とを含むテーブルである。
【0040】
レンズ側制御部203は、RAM216に至近合焦位置を記憶させる際、上記の限界位置情報テーブル520が含む至近限界位置460と無限限界位置450とを合わせてRAM216に記憶させる。そして、レンズ側送受信部217がカメラボディ100から要求信号を受信すると、RAM216に記憶されているこれら3つの情報を合わせてボディ側送受信部117に送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。ボディ側制御部103は、ボディ側送受信部117が受信したこれらの情報に基づいて、フォーカシングレンズ210dを目的の位置へ移動させるためのパルス数の決定や、コントラスト方式の焦点検出処理におけるフォーカシングレンズ210dのスキャン範囲の決定を行う。
【0041】
なお、位置情報テーブル510は、結像光学系210に設定可能な全ての焦点距離に対応する至近合焦位置を含んでいる必要はない。位置情報テーブル510に含まれていない焦点距離が設定された場合には、レンズ側制御部203は前後の焦点距離に対応する至近合焦位置から、実際の焦点距離に対応する至近合焦位置を補間演算により算出する。
【0042】
上述した第1の実施の形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
(1)レンズ側制御部203が、結像光学系210が合焦可能な最も至近側の位置に対応する至近合焦位置と、至近側の駆動限界の位置に対応する至近限界位置と、無限遠側の駆動限界の位置に対応する無限限界位置とを取得する。そしてレンズ側制御部203が、至近合焦位置と、至近限界位置と、無限限界位置とをレンズ側送受信部217がカメラボディ100に送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。このようにしたので、自動焦点調節におけるフォーカシングレンズの駆動量を低減させることができる。
【0043】
(2)結像光学系210は焦点距離を変更可能であり、焦点距離検出部214は結像光学系210の焦点距離を検出して焦点距離信号を出力する。ROM215には結像光学系210の焦点距離と至近合焦位置とを関連付けた位置情報テーブルが記憶されている。レンズ側制御部203は、結像光学系210の焦点距離の変化に応じて、焦点距離検出部214から出力された焦点距離信号を用いて至近合焦位置をROM215から取得してRAM216に記憶させる。レンズ側制御部203はその後、カメラボディ100から受信した要求信号に応じて、RAM216に記憶されている至近合焦位置をレンズ側送受信部217がカメラボディ100に送信するようにレンズ側送受信部217を制御する。このようにしたので、最新の至近合焦位置が適切なタイミングでカメラボディ100に送信される。
【0044】
(3)レンズ位置検出部213はフォーカシングレンズ210dの位置を検出してレンズ位置信号を出力する。レンズ側送受信部217は、レンズ位置検出部213により出力されたレンズ位置信号を、第1伝送路310を介してカメラボディ100に繰り返し送信する。他方、至近合焦位置と、至近限界位置と、無限限界位置とは、第1伝送路310とは異なる第2伝送路320を介してカメラボディ100に送信される。このようにしたので、レンズ位置信号の送信が至近合焦位置等の送信により妨げられることがない。
【0045】
(4)レンズ位置信号は、結像光学系210の無限合焦位置を基準にしてフォーカシングレンズ210dの位置を表す。このようにしたので、無限合焦位置をカメラボディ100に送信する必要がない。
【0046】
(5)レンズ側送受信部217は、至近合焦位置の送信頻度よりも高い頻度でレンズ位置信号を繰り返し送信する。このようにしたので、自動焦点調節のレスポンスが向上する。
【0047】
以上、着脱可能なレンズ鏡筒とカメラボディから成るカメラシステムであるレンズ交換式カメラシステムの実施形態について説明してきたが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0048】
(変形例1)
レンズ側制御部203が位置情報テーブル510を参照する以外の方法により焦点距離に応じた至近合焦位置を取得するようにしてもよい。例えば、焦点距離から結像光学系210の至近合焦位置を演算する演算部をレンズ側制御部203に設け、この演算部に至近合焦位置を演算させるようにしてもよい。
【0049】
(変形例2)
上述の実施形態では、焦点距離の変化が検出されると、これに応じて対応する至近合焦位置がRAM216に記憶されるようになっていた。しかしながら、至近合焦位置をカメラボディ100に送信するのは、カメラボディ100からの要求信号を受信したときであった。本発明は、このようにRAM216を介して至近合焦位置を送信するのではなく、焦点距離の変化に応じてカメラボディ100に至近合焦位置を送信するようにした実施形態についても適用することが可能である。
【0050】
(変形例3)
レンズ側送受信部217によるレンズ位置信号と、至近合焦位置と、至近限界位置と、無限限界位置との送信は、ボディ側制御部103が自動焦点調節処理を実行している間にのみ行われるようにしてもよい。あるいは、自動焦点調節処理の実行中とそれ以外の場合とで、送信頻度が変化するようにしてもよい。
【0051】
(変形例4)
上述の実施形態では、レンズ側制御部203が、至近合焦位置と、至近限界位置と、無限限界位置とをレンズ側送受信部217がカメラボディ100に送信するようにレンズ側送受信部217を制御していた。カメラボディ100に送信されるこれら3つの位置のうち、至近限界位置の代わりに、実際の至近側の駆動限界の位置より内側(無限遠側)寄りの位置を送信するようにレンズ側制御部203を構成してもよい。ただしこの位置は、至近合焦位置よりも至近限界位置に近い位置でなければならない。換言すれば、至近限界位置の代わりに、至近限界位置と至近合焦位置との間の中間位置を送信してもよい。このようにした場合、ボディ側制御部103は、上記の中間位置を至近限界位置と認識してフォーカシングレンズ210dを目的の位置へ移動させるためのパルス数の決定や、コントラスト方式の焦点検出処理におけるフォーカシングレンズ210dのスキャン範囲の決定を行う。無限限界位置についても同様に、実際の無限側の駆動限界の位置より内側(至近側)寄りの位置を代わりに送信するようにしてよい。すなわち、無限限界位置の代わりに、無限限界位置と無限合焦位置との間の中間位置を送信してもよい。
【0052】
なお、カメラボディ100に至近限界位置の代わりに送信される位置(または至近限界位置そのもの)と至近合焦位置との間の距離は、カメラボディ100に無限限界位置の代わりに送信される位置(または無限限界位置そのもの)と無限合焦位置との間の距離よりも大きいことが望ましい。これは、至近合焦位置近傍の方が、無限合焦位置近傍よりも合焦が困難であることに拠る。このように構成することで、至近合焦位置近傍における偽合焦を抑止することができる。
【0053】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…カメラ、100…カメラボディ、103…ボディ側制御部、117…ボディ側送受信部、200…レンズ鏡筒、201…レンズマウント、202…接続部、203…レンズ側制御部、210…結像光学系、210d…フォーカシングレンズ、212…レンズ駆動部、213…レンズ位置検出部、214…焦点距離検出部、215…ROM、216…RAM、217…レンズ側送受信部、310…第1伝送路、320…第2伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディを取付け可能な取付部と、
フォーカシングレンズを有する結像光学系と、
前記フォーカシングレンズの至近側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する至近限界位置と、前記フォーカシングレンズの無限遠側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する無限限界位置との間で前記フォーカシングレンズを駆動可能な駆動部と、
前記カメラボディとの間で信号の送受信が可能な送受信部と、
前記結像光学系が像面に合焦可能な最も至近側の位置に対応する至近合焦位置及び前記結像光学系が像面に合焦可能な最も無限遠側の位置に対応する無限合焦位置のうち何れか一方と、前記至近限界位置と、前記無限限界位置とを前記送受信部が前記カメラボディに送信するように前記送受信部を制御する制御部とを有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記結像光学系の焦点距離を検出し、焦点距離信号を出力する焦点距離検出部と、
前記至近合焦位置と前記結像光学系の焦点距離とを関連付けたテーブルが記憶される第1記憶部と、
前記至近合焦位置を記憶可能な第2記憶部とを有し、
前記制御部は、前記焦点距離検出部から出力された前記焦点距離信号を用いて前記第1記憶部から前記至近合焦位置を取得して前記第2記憶部に記憶させ、前記送受信部が前記カメラボディから受信した信号に応じて、前記第2記憶部に記憶されている前記至近合焦位置と、前記至近限界位置と、前記無限限界位置とを前記送受信部が前記カメラボディに送信するように前記送受信部を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記結像光学系の焦点距離を検出し、焦点距離信号を出力する焦点距離検出部と、
前記焦点距離検出部から出力された前記焦点距離信号を用いて、前記至近合焦位置を演算する演算部と、
前記至近合焦位置を記憶可能な記憶部とを有し、
前記制御部は、前記演算部により演算された前記至近合焦位置を前記記憶部に記憶させ、前記送受信部が前記カメラボディから受信した信号に応じて、前記記憶部に記憶されている前記至近合焦位置と、前記至近限界位置と、前記無限限界位置とを前記送受信部が前記カメラボディに送信するように前記送受信部を制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載されたレンズ鏡筒において、
前記フォーカシングレンズの位置を検出しレンズ位置信号を出力するレンズ位置検出部を備え、
前記送受信部は、第1伝送路を介して前記レンズ位置信号を前記カメラボディに繰り返し送信し、前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して前記至近合焦位置、前記至近限界位置及び前記無限限界位置を前記カメラボディに送信することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項4に記載のレンズ鏡筒において、
前記レンズ位置信号は、前記結像光学系の前記無限合焦位置を基準にして表されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項4または5に記載のレンズ鏡筒において、
前記送受信部は、前記至近合焦位置の送信頻度よりも高い頻度で前記レンズ位置信号を繰り返し送信することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
カメラボディを取付け可能な取付部と、
フォーカシングレンズを有する結像光学系と、
前記フォーカシングレンズの至近側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する至近限界位置と、前記フォーカシングレンズの無限遠側の駆動制御をするときの限界の位置に対応する無限限界位置との間で前記フォーカシングレンズを駆動可能な駆動部と、
前記カメラボディとの間で信号の送受信が可能な送受信部と、
各々が前記フォーカシングレンズの異なる位置を表す第1位置と第2位置と第3位置とを前記送受信部が前記カメラボディに送信するように前記送受信部を制御する制御部とを有し、
前記第1位置は、前記結像光学系が像面に合焦可能な最も至近側の位置に対応する至近合焦位置及び前記結像光学系が像面に合焦可能な最も無限遠側の位置に対応する無限合焦位置のうち何れか一方であり、
前記第2位置は、前記至近限界位置と前記至近合焦位置との間の中間位置及び前記至近限界位置のうち何れか一方であり、
前記第3位置は、前記無限限界位置と前記無限合焦位置との間の中間位置及び前記無限限界位置のうち何れか一方であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項7に記載のレンズ鏡筒において、
前記至近合焦位置と前記第2位置との間の距離は、前記無限合焦位置と前記第3位置との間の距離よりも大きいことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒と、前記取付部に取付可能なカメラボディとを有することを特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−215800(P2012−215800A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148360(P2011−148360)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】