説明

レンズ鏡筒及び撮像装置

【課題】駆動手段に接続して通電する配線板を短くすることができるレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】第一レンズ保持部材2と、駆動手段と、第一のカム筒7と、直進規制部材8と、配線板16とを備える撮影レンズ鏡筒を設ける。第一のカム筒7は、第一レンズ保持部材2の外周に設けられ、回転して第一レンズ保持部材2と駆動手段とを光軸方向に移動させる。また、直進規制部材8は、第一レンズ保持部材2の内周に設けられ、第一レンズ保持部材2を直進規制する。また、配線板16は、駆動手段に接続する。そして、配線板は、直進規制部材8の内周から外周に対して縦断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ズーム動作が可能なデジタルカメラ等の撮像装置について、ズームの高倍率化の要望が強くなっている。このような要望を受けて、撮影レンズ群の移動ストロークを大きくする構成を有する撮像装置が提案されている。
【0003】
一般に、撮像装置が備えるレンズ鏡筒には、撮影レンズ群の一部として、シャッタや絞り、振れ補正レンズ等の機能部材が配置されている。これらの機能部材に対応する駆動手段(アクチュエータ)に対して電気を供給するフレキシブル基板を備える撮像装置が提案されている。
【0004】
シャッタや虹彩絞り、防振機構の移動ストロークが長くなると、これらに対応するアクチュエータに接続するフレキシブル基板も長くする必要がある。しかし、フレキシブル基板が長くなると、撮像装置が鏡筒を収納状態にした場合に、フレキシブル基板を断線することなく適切に納めることが困難となる。
【0005】
フレキシブル基板を断線することなく適切に納める技術として、特許文献1は、フレキシブル基板をロール状に巻き取る機構部を備え、レンズ保持枠の進退に応じて、フレキシブル基板の引き出しと巻き込みとを行う撮像装置を開示する。また、特許文献2は、沈胴時にフレキシブル基板の弛んだ部分を、撮影時に、第1、第2レンズ群間の有効光路内に収納する鏡胴を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−185095号公報
【特許文献2】特開平09−211284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する撮像装置では、フレキシブル基板をロール状に巻き取ると、その直径分のスペースが必要になる。また、この撮像装置では、フレキシブル基板を巻き取るためにスプリング等の部品が必要となり、その結果、鏡筒が大型化し、部品点数が増加するという問題がある。また、特許文献2が開示する鏡胴では、レンズ群同士の間にフレキシブル基板を畳みながら挿入するので、レンズ表面とフレキシブル基板とが接触し、レンズ表面に汚れや傷がつくという問題がある。上述した問題を解決するために、撮像装置が備える駆動手段に接続して通電する配線板を短くすることが必要である。
【0008】
本発明は、駆動手段に接続して通電する配線板を短くすることができるレンズ鏡筒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態のレンズ鏡筒は、鏡筒部材と、駆動手段と、前記鏡筒部材の外周に設けられ、回転して前記鏡筒部材と前記駆動手段とを光軸方向に移動させるカム筒と、前記鏡筒部材の内周に設けられ、前記鏡筒部材を直進規制する直進規制部材と、前記駆動手段に接続する配線板とを備える。前記配線板は、前記直進規制部材の内周から外周に対して縦断する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鏡筒内部の駆動手段へ通電するための配線板を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の撮像装置の外観構成の例を示す図である。
【図2】本実施形態の撮像装置の要部構成例である。
【図3】本実施形態のレンズ鏡筒の構成例を示す図である。
【図4】第1レンズ保持部材の斜視図である。
【図5】直進規制部材の正面図である。
【図6】直進規制部材の斜視図である。
【図7】防振レンズの斜視図である。
【図8】絞り機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態の撮像装置の外観構成の例を示す図である。デジタルカメラ21が、本実施形態の撮像装置である。デジタルカメラ21は、撮影倍率を変更できるズーム機構を有する。図1(A)は、デジタルカメラ21の正面斜視図である。図1(B)は、デジタルカメラ21の背面図である。デジタルカメラ21が備える撮像レンズ鏡筒24が、本実施形態のレンズ鏡筒である。また、図2は、本実施形態の撮像装置の要部構成例である。
【0013】
本形態のデジタルカメラ21の正面には、被写体の構図を決めるファインダ22、測光測距を行う場合の光源の補助を行う補助光20、ストロボ23、撮影レンズ鏡筒24が設けられている。デジタルカメラ21の上面には、レリーズボタン17、電源切換えボタン19、ズーム切換えスイッチ18が設けられている。
【0014】
また、デジタルカメラ21の背面には、操作ボタン27乃至32が配置され、様々な機能切換えを行うことができる。また、当該背面には、LCD(Liquid Crystal Display)を有するディスプレイ26、ファインダ接眼部25が設けられている。
【0015】
ディスプレイ26は、メモリ38に保存された画像データやメモリーカードから読み込んだ画像データを画面上に表示する画像表示手段である。制御部は、CPU44、ROM43、RAM45を備える。制御部は、バス42を介して、レリーズボタン17、操作ボタン27乃至32、ディスプレイ26、メモリ38、メモリーカードドライブ40等の各種構成要素に接続されている。
【0016】
駆動回路41は、制御部からの制御信号に従って、各々の駆動を制御する。駆動回路41は、ズーム機構33、撮像素子15、ストロボ23に接続されている。また、駆動回路41は、フォーカス駆動機構34、シャッタ駆動機構5a、絞り駆動機構6aといった駆動手段に接続されている。なお、撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等である。
【0017】
ROM43には、上述の各機能構成要素を制御する制御プログラムが記憶されている。RAM45には、各制御プログラムに必要なデータが記憶されている。アナログ信号処理部35は、取り込まれた画像データにアナログ処理を施し、A(Analog)/D(Digital)変換部36に出力する。A/D変換部36は、取り込まれたアナログデータをデジタルデータに変換する。そして、A/D変換部36は、変換によって得られたデジタルデータをデジタル信号処理部37に出力する。デジタル信号処理部37は、A/D変換部36が出力したデジタルデータの処理を行う。デジタル信号処理部37は、処理したデジタルデータをメモリ38に記憶する。
【0018】
圧縮伸張部39は、メモリ38に記憶された画像データやメモリーカードドライブ40に記憶されている画像データの伸張処理を行う。圧縮伸張部39は、伸長処理によって得られる画像データを、バス42を介してディスプレイ26に表示させる。ユーザは、ディスプレイ26上のデータを参照して、その画像が不必要であると判断した場合、ユーザは、操作ボタン32を操作することによって、その画像を消去することができる。
【0019】
図3は、本実施形態のレンズ鏡筒の構成例を示す図である。図3(A)は、撮影レンズ鏡筒の使用時即ち撮影時の状態を示す。また、図3(B)は、撮影レンズ鏡筒の収納時の状態を示す。第一レンズ1は、鏡筒部材である第一レンズ保持部材2によって保持される。第一レンズ保持部材2の背後に虹彩絞りユニット6が配置されており、さらに背後に防振レンズ3を保持する防振レンズ保持部材4が配置されている。
【0020】
防振レンズ保持部材4は、防振地板5の上に配置されている。防振レンズ保持部材4は、防振地板5に対して、光軸と直交方向に移動可能である。防振地板5の背面側にシャッタ5dが設けられている。第一レンズ保持部材2の外周には、第一のカム筒7が配置され、内周には、カム溝が形成されている。
【0021】
第一レンズ保持部材2の内周には直進規制部材8が設けられている。直進規制部材8は、第一のカム筒7と略一体で光軸方向に動作できるように配置されている。第一のカム筒7の外周には、第二のカム筒9が配置されている。第二のカム筒9の内周には、カム溝が形成されている。このカム溝は、第一のカム筒7が追従できるように構成されている。
【0022】
第二のカム筒9の外周には、作動筒10が配置され、作動筒10を保持するカバー部材11がその外側に設置されている。作動筒10がズーム機構33によって回転力を与えられると、それに連動して第一のカム筒7が回転力を受ける。そして、第一のカム筒7は、第二のカム筒9内周のカム溝に追従し、回転しながら光軸方向へ移動する。
【0023】
第一のカム筒7と直進規制部材8とは、バヨネット状に略一体で保持されており、第一のカム筒7と略一体に光軸方向へ移動する。但し、直進規制部材8は、第二のカム筒9の内周に設けられた直進溝によって直進保持されており、回転できなくなっている。第一レンズ保持部材2、虹彩絞りユニット6、防振地板5は、第一のカム筒7の内周に形成されるカム溝に追従することによって、それぞれ個別に光軸方向へ移動し、さらに直進規制部材8によってそれぞれ直進規制されることによって、回転しない。後述するように、防振地板5上には、防振駆動機構5c(図7を参照)が設けられている。また、後述するように、虹彩絞りユニット6は、絞り駆動機構6a(図8を参照)によって駆動される。そして、絞り駆動機構6aは、虹彩絞りユニット6と一体的に光軸方向に移動する。すなわち、第一のカム筒7は、回転して第一レンズ保持部材2と駆動手段とを光軸方向に移動させる。
【0024】
防振地板5の背後には、フォーカスレンズ12を保持するフォーカスレンズ保持部材13が配置され、フォーカス駆動機構34によって光軸方向へ移動できる。すなわち、フォーカスレンズ保持部材13は、撮影レンズ鏡筒24のピントを合わせる機能を有する。
【0025】
撮影レンズ鏡筒24の最背面には、撮像素子15を保持する撮像素子保持部材14が配置されている。撮像素子保持部材14は、撮影レンズ鏡筒24の背面の蓋として機能する。撮影レンズ鏡筒24の撮影倍率を高倍率にするために、例えば、第二のレンズ群すなわち防振レンズ3の繰り出し量をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0026】
図4は、第一レンズ保持部材の斜視図である。第一レンズ保持部材2の内周には、被写体側端部から撮像素子側端部までの全域に亘り、直進キー2aが形成されている。直進キー2aは、図5、図6に示す直進溝8cに係合する。すなわち、第一レンズ保持部材2は、その内周において、直進キー2aを備える。直進キー2aは、光軸と平行な方向に延設されており、直進溝8cと係合する。
【0027】
図5は、直進規制部材の正面図である。また、図6は、直進規制部材の斜視図である。直進規制部材8には、壁面に開口部8bが設けられている。配線板16が、開口部8bの間を、直進規制部材8の内周から外周にまたがって縦断する。すなわち、開口部8bは、配線板16を直進規制部材8の内周から外周に対して縦断させる。直進規制部材8の後端に、配線板保持部8aが設けられ、配線板保持部8aの内面で配線板16の側面を保持するとともに、開口部8bの1端を形成している。
【0028】
レンズ鏡筒の収納時(図3(B))には、第一レンズ保持部材2が光軸撮像素子方向へ移動してくる。このレンズ鏡筒の収納時には、配線板16は、直進規制部材8の外周へ突出しない。配線板16は、撮影時すなわち第一のカム筒7の回転に伴う第一レンズ保持部材2の被写体側への繰り出し時に、第一レンズ保持部材2が退避した領域を通過する。これにより、撮影時において、配線板16を直進規制部材8の内周から外周にまたがって縦断させることができる。
【0029】
また、直進規制部材8の開口部8bは、光軸回り方向において、直進溝8cの1つと略同位相に配置されている。例えば、開口部8bは、撮影レンズ鏡筒24を正面から見たときに、3個120度等分の直進溝8cの1つと略同位相に設けられている。直進溝8cは、光軸と平行な方向に延設されており、第一レンズ保持部材2を直進規制する。開口部8bと直進溝8cは、光軸方向の位置関係で、開口部8bが撮像素子側に、直進溝8cが被写体側に配置されている。また、直進溝8cは直進規制部材8の先端まで形成されている。
【0030】
上記の構成により、鏡筒収納時に第一レンズ保持部材2を最も繰り込んだ場合は勿論、使用時に最も繰り出した場合でも、直進溝8cと直進キー2aとは3箇所とも常に係合することができる。例えば、直進溝8cと直進キー2aとが、光軸回り方向において、120度3等分で配置されている場合、金型の型割の都合上、また、レンズ鏡筒駆動のバランスの都合上、好ましい構成となる。また、この構成においては、配線板のレイアウト自由度を高めることもできる。
【0031】
図7は、防振レンズの斜視図である。図7に示すように、防振レンズ3を防振機構として機能させるための防振駆動機構5cが、防振地板5上に設けられている。また、防振レンズ3の外周の防振地板5上には、シャッタ駆動機構5a、ND駆動機構5bが設けられている。第一のフレキシブル基板16aが、これらの駆動機構に接続して電気を供給することで、これらの駆動機構を駆動する。
【0032】
図8は、絞り機構の斜視図である。虹彩絞りユニット6は、例えばステッピングモータである絞り駆動機構6aによって駆動される。第二のフレキシブル基板16bが、絞り駆動機構6aに電力を供給する。上述した第一、第二のフレキシブル基板16a、16bを、配線板16と総称する。
【0033】
デジタルカメラ21が、内部のレンズ群をできるだけ長く繰り出そうとすると、配線板16も長くする必要がある。しかし、配線板16を長くすると、撮影レンズ鏡筒24の収納時に、配線板16の処理が困難になる。そのため、配線板16をできるだけ短くしたい。
【0034】
図3(A)に示すように、撮影レンズ鏡筒24の繰り出し時には、配線板16が直進規制部材8の断面方向において、内周から外周にかけて縦断するように構成することで、配線板16を最短接続距離で構成できる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、本発明の実施形態では、直進規制部材の外周に第一レンズ保持部材が配置される場合を例示したが、これに限定されず、直進規制部材の外周に、その他のレンズ保持部材、またはレンズを保持しない鏡筒部材が配置される場合でも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0036】
2 第一レンズ保持部材
2a 直進キー
5 防振地板
7 カム筒
8 直進規制部材
8a 配線板保持部
16 配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒部材と、
駆動手段と、
前記鏡筒部材の外周に設けられ、回転して前記鏡筒部材と前記駆動手段とを光軸方向に移動させるカム筒と、
前記鏡筒部材の内周に設けられ、前記鏡筒部材を直進規制する直進規制部材と、
前記駆動手段に接続する配線板とを備え、
前記配線板は、前記直進規制部材の内周から外周に対して縦断する
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記配線板は、前記カム筒の回転に伴う前記鏡筒部材の被写体側への繰り出し時に、該鏡筒部材が退避した領域を通過する
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記直進規制部材は、
前記光軸と平行な方向に延設され、前記鏡筒部材を直進規制する直進溝と、
前記配線板を前記直進規制部材の内周から外周に対して縦断させるための開口部とを備え、
前記鏡筒部材は、内周において、前記光軸と平行な方向に延設され、前記直進溝と係合する直進キーを備え、
前記開口部は、前記光軸回り方向において、前記直進溝の1つと同位相に配置され、
前記直進溝は、前記開口部よりも被写体側に形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記直進キーは、前記鏡筒部材の内周の、被写体側端部から撮像素子側端部に亘り形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記直進溝と前記直進キーは、前記光軸回り方向において、120度3等分で配置されている
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記鏡筒部材は、レンズを保持するレンズ保持部材であり、
前記駆動手段は、少なくともシャッタ駆動機構または絞り駆動機構を含む
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255850(P2012−255850A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127830(P2011−127830)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】