説明

レンズ鏡筒

【課題】アクチュエータなどの可変絞り駆動手段を用いずに、可変絞りの開閉や開口径の徐変を行うことを可能とし、レンズ鏡筒の小型化、構造の簡易化、部品点数の削減を図る。
【解決手段】第1レンズ保持枠20の外周部には、回動部材12の第1傾斜受部12bと当接させるための第1傾斜部20aが設けられている。突起部30cを、コイル状の光軸付勢バネ11b内を貫通させ、ベース部材11に形成された穴部11aに挿通することにより、第2レンズ保持枠30は可変絞り10と一体的に光軸に沿う方向へ移動することができるようになる。直進案内環40の側面には、第2レンズ保持枠30の爪部30bと嵌合させ、第2レンズ枠30を直進案内環40内の光軸に沿った方向へスライドさせるための案内溝40aが形成されている。また、直進案内環40の内周面には、回動部材12の第2傾斜受部12aに当接させるための第2傾斜部40bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可変絞り機構を備えたレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
一定絞りの沈胴式レンズにおいて、近年高倍率かつ明るさが求められるなか、広角端と望遠端とにおける解像と明るさのバランスを維持することが困難になっている。たとえば、広角端での撮影に明るさを合わせると望遠端での撮影では暗くなりすぎて解像度が低下してしまい、一方、望遠端での撮影に明るさを合わせると広角端での撮影では明るくなりすぎでやはり解像度が低下してしまうという問題があった。
【0003】
かかる問題を解決するためには、広角端から望遠端に至るまでに焦点距離にあわせ開口径の大きさを変化させることが必要になる。一般に、開口径を変化させるために、ステッピングモータなどのアクチュエータを用いて可変絞りを制御する方式が採用される。しかし、この方式によれば、可変絞りがレンズ間に配置されたことで、沈胴状態では、レンズ間の隔たりを減らすことには限界があり、レンズ鏡筒の小型化、特にレンズ鏡筒における光軸方向の薄型化が妨げられるという問題がある。そこで、レンズ鏡筒の小型化を図るべく、沈胴時には、レンズの一部を絞りの開口部に入り込ませることで、絞りが配置されたにもかかわらず、レンズ間の隔たりを減らすことができ、レンズ鏡筒における光軸方向の薄型化を実現することができる技術が提案されている(たとえば、特許文献1〜7を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3676518号公報
【特許文献2】特許第4128895号公報
【特許文献3】特開2009−122712号公報
【特許文献4】特開2008−40161号公報
【特許文献5】特開2006−98701号公報
【特許文献6】特開2006−39373号公報
【特許文献7】特開2004−252367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、特許文献1に記載の技術では、カメラ使用時に可変絞り羽根が閉じて絞りとしての役割を果たしている。一方、レンズ鏡筒の沈胴時には、可変絞り羽根が開き、レンズ駆動機構により凸レンズの凸面を可変絞りの開口部に退避させることにより、レンズ鏡筒における光軸方向の小型化を実現している。しかしながら、可変絞りの開閉を調整するアクチュエータは別途必要になるため、アクチュエータを配置するためのスペースが必要になり、部品点数の増加も避けられないという問題が残る。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、カメラ使用時に絞り羽根が開口部を塞ぎ、絞りとしての役割を果たしている。一方、レンズ鏡筒の沈胴時には、レンズ駆動機構の駆動により、絞り羽根の撮像側に配置された凸レンズを保持するレンズ枠に設けられた棒状部材を介して絞り羽根を開位置に退避させ、凸レンズの凸面を絞り羽根の開口部に退避させる。このようにすることにより、レンズ鏡筒の沈胴状態では、レンズ装置における光軸方向の小型化を実現することができる。また、新たに絞りの開閉を制御するアクチュエータを設ける必要がないため、少ない部品点数でレンズ鏡筒を構成することができるという利点がある。しかしながら、カメラ使用時中にレンズ駆動機構による可変絞り径の徐変を行うことができないという問題が残る。
【0007】
さらに、特許文献3〜7に記載の技術も、レンズ鏡筒における光軸方向の小型化は達成できても部品点数の削減が十分になされていない、または可変絞りを駆動するためのアクチュエータが必要となるためレンズ鏡筒の小型化が十分ではないといった問題を含むものである。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、アクチュエータなどの可変絞り駆動手段を用いずに、可変絞りの開閉や開口径の徐変を行うことを可能とし、小型化、構造の簡易化、部品点数の削減が図られたレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるレンズ鏡筒は、被写体側より順に配置された、第1レンズ群を保持する第1レンズ保持枠と、ベース部材に対して光軸中心に回動可能な回動部材と、前記ベース部材に対して前記回動部材を光軸を中心とする円周方向に付勢する弾性部材と、前記回動部材の回動により開閉移動する絞り羽根と、を備えた可変絞りと、少なくとも被写体側に凸面を向けた第2レンズ群を保持しつつ前記可変絞りと一体的に光軸に沿った方向へ移動する第2レンズ保持枠と、を備えたレンズ鏡筒であって、前記第1レンズ保持枠および前記第2レンズ保持枠を光軸に沿った方向へ案内する直進案内環と、前記第1レンズ保持枠および前記第2レンズ保持枠を光軸に沿った方向へ移動させるための駆動力を提供するレンズ駆動機構と、前記レンズ駆動機構の駆動により、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが所定距離以上近づいた場合に、前記絞り羽根を半開位置と開位置(最大絞り径)との間に移動させる第1開閉機構と、前記レンズ駆動機構の駆動により、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上離間した場合に、前記絞り羽根を閉位置(最小絞り径)と半開位置との間に移動させる第2開閉機構と、を備え、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが第2の所定距離以上近づいた場合に、前記可変絞りは、前記第1レンズ保持枠に押圧されることにより、相対的に前記第2レンズ保持枠側へ移動し、少なくとも前記第2レンズ群の凸面の一部が前記絞り羽根の開口部に入り込むことを特徴とする。
【0010】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記レンズ鏡筒は、沈胴式を成し、沈胴時には、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記第2の所定距離以上近づくことを特徴とする。
【0011】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記レンズ鏡筒が、沈胴式を成し、沈胴時および望遠端には、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記第2の所定距離以上近づくことを特徴とする。
【0012】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記第2レンズ群が、マスク絞り有し、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが第3の所定距離以上近づいた場合に、前記可変絞りは、前記第1レンズ保持枠に押圧されることにより、相対的に前記第2レンズ保持枠側へ移動し、前記第2レンズ群の凸面の全体が前記絞り羽根の開口部へ入りこむことを特徴とする。
【0013】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記第2の所定距離が前記所定距離より短く、前記第3の所定距離が前記第2の所定距離より短いことを特徴とする。
【0014】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記第1開閉機構が、前記第1レンズ保持枠および前記回動部材に設けられ、前記第2開閉機構が、前記直進案内環および前記回動部材に設けられていることを特徴とする。
【0015】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記第1開閉機構が、前記第1レンズ保持枠の外周部に設けられた第1傾斜部と、前記回動部材の外周部に設けられた、前記第1傾斜部と当接可能な第1傾斜受部とにより構成され、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上近づいた場合に、前記第1傾斜受部が前記第1傾斜部へ案内されることで前記回動部材が回動し、前記第2開閉機構は、前記直進案内環の内周面に設けられた第2傾斜部と、前記回動部材の外周部に設けられた、前記第2傾斜部と当接可能な第2傾斜受部とにより構成され、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上離間した場合に、前記第2レンズ保持枠の移動により、前記第2傾斜受部が前記第2傾斜部へ案内されることで前記回動部材が光軸に沿った方向へ移動しながら回動し、前記第1傾斜部(もしくは前記第1傾斜受部)と光軸とにより形成された第1の角度は、前記第2の傾斜部(もしくは前記第2傾斜受部)と光軸とにより形成された第2の角度より大きいことを特徴とする。
【0016】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上近づいた場合に、前記第1傾斜部と前記第1傾斜受部とが当接しながら摺動していくと同時に、前記第2傾斜部と前記第2傾斜受部とが離間していくことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるレンズ鏡筒は、ベース部材に対して光軸中心に回動可能な回動部材と、前記ベース部材に対して前記回動部材を光軸を中心とする円周方向に付勢する弾性部材と、前記回動部材の回動により開閉移動する絞り羽根と、を備えた可変絞りと、前記可変絞りと一体的に光軸に沿った方向へ移動するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を光軸に沿った方向へ案内する直進案内環と、前記レンズ保持枠の移動により前記絞り羽根の開閉を制御する開閉機構と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記開閉機構が、前記直進案内環および前記回動部材に設けられていることを特徴とする。
【0019】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒では、前記開閉機構が、前記直進案内環の内周面に設けられた傾斜部と、前記回動部材の外周部に設けられた、前記傾斜部と当接する傾斜受部とにより構成され、前記レンズ保持枠の光軸に沿った方向への移動により、前記傾斜部が前記傾斜受部へ案内され、前記回動部材が光軸に沿って移動しながら光軸中心に回動することにより前記絞り羽根の開閉を制御することを特徴とする。
【0020】
さらに、この発明にかかるレンズ鏡筒は、光軸方向において前記可変絞りを挟んで、前記レンズ保持枠の反対側に配置された第1レンズ群を保持する第1レンズ保持枠を備え、前記レンズ保持枠は、少なくとも前記第1レンズ保持枠側に凸面を向けた第2レンズ群を保持し、前記第1レンズ保持枠と前記レンズ保持枠とが所定距離以上近づいた場合に、前記可変絞りは、前記第1レンズ保持枠に押圧されることにより、相対的に前記レンズ保持枠側に移動し、少なくとも前記第2レンズ群の凸面の一部が前記絞り羽根の開口部に入りこむことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、アクチュエータなどの可変絞り駆動手段を用いずに、可変絞りの開閉や開口径の徐変を行うことを可能とし、レンズ鏡筒の小型化、構造の簡易化、部品点数の削減を図ることができるという効果を奏する。また、レンズ鏡筒の沈胴状態および望遠端状態において、第2レンズ群の凸面を可変絞りの開口部へ入りこませることで、レンズ鏡筒における光軸方向のより一層の小型化が促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明にかかるレンズ鏡筒を構成する可変絞りの構成の一例を示す斜視図である。
【図2】この発明にかかるレンズ鏡筒の構成を説明するための分解斜視図である。
【図3】この発明にかかるレンズ鏡筒の構成を説明するための分解斜視図である。
【図4】この発明にかかるレンズ鏡筒の構成を示す部分断面図である。
【図5】この発明にかかるレンズ鏡筒の望遠端における状態を説明するための図である。
【図6】この発明にかかるレンズ鏡筒の望遠端における状態を説明するための図である。
【図7】望遠端における可変絞りの開口の状態を示す被写体側から見た図である。
【図8】この発明にかかるレンズ鏡筒の中間における状態を説明するための図である。
【図9】中間における可変絞りの開口の状態を示す被写体側から見た図である。
【図10】この発明にかかるレンズ鏡筒の広角端における状態を説明するための図である。
【図11】この発明にかかるレンズ鏡筒の沈胴時における状態を説明するための図である。
【図12】この発明にかかるレンズ鏡筒の沈胴時における状態を説明するための図である。
【図13】沈胴時における可変絞りの開口の状態を示す被写体側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、この発明にかかるレンズ鏡筒の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、この発明にかかるレンズ鏡筒を構成する可変絞りの構成の一例を示す斜視図である。この可変絞り10は、ベース部材11と、回動部材12と、バネ(弾性部材)13と、絞り羽根14と、により構成される。ベース部材11の外周部には、後述する第2レンズ枠に設けられた突起部を挿通させるための穴部11aが形成されている。そして、穴部11aの像側には、コイル状の光軸付勢バネ11bが設けられている。この光軸付勢バネ11bは、可変絞り10が後述する第2レンズ枠に対する押し込みから戻るためのものである。回動部材12は、ベース部材11に対して光軸を中心に回動可能になっており、バネ13がベース部材11に対して回動部材12を光軸を中心とする円周方向に付勢している。回動部材12がベース部材11に対して反時計回りに回転すると絞り羽根14が開き、時計回りに回転すると絞り羽根14が閉じるようになっている。なお、回動部材12に付加力が加わっていない状態では、回動部材12はバネ13により時計回りの方向に付勢されている。また、回動部材12の外周部には、後述する直進案内環の内周側に設けられた第2傾斜部と当接させるための第2傾斜受部12aが設けられている。この第2傾斜受部12aは、像側へ向かって徐々に細くなり、先端が尖った形状になっている。さらに、回動部材12の外周部には後述する第1レンズ保持枠の第1傾斜部と当接させるための第1傾斜受部12bが設けられている。この第1傾斜受部12bは、被写体側へ向かって徐々に細くなり、先端が尖った形状になっている。また、第1傾斜受部12bと第2傾斜受部12aとは、それぞれ回動部材12において光軸中心に対し点対称な位置に設けられている。
【0025】
図2および図3は、この発明にかかるレンズ鏡筒の構成を説明するための分解斜視図である。図3は、図2に示した状態を、光軸を中心としてほぼ180°回転させた状態を示している。また、図4は、この発明にかかるレンズ鏡筒の構成を示す部分断面図である。このレンズ鏡筒100は、図示しない被写体側から順に、第1レンズ保持枠20、可変絞り10、第2レンズ保持枠30が配置されている。そして、これらが直進案内環40に収容される。さらに、直進案内環40が鏡筒50に収容されるようになっている。なお、第1レンズ保持枠20、第2レンズ保持枠30の直進案内環40に対する移動、および直進案内環40の鏡筒50内への収容は、図示しないレンズ駆動機構の駆動により行われる。
【0026】
第1レンズ保持枠20は、第1レンズ群21を保持する。第1レンズ保持枠20の外周部には、回動部材12の第1傾斜受部12bと当接させるための第1傾斜部20aが設けられている。この第1傾斜部20aは、像側へ向かって徐々に細くなり、先端が尖った形状になっている。したがって、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが所定の距離(第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとが当接した際に、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが離れている距離)より近接した場合、第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとが徐々に深くかみ合って行くことにより、回動部材12がベース部材11に対し光軸中心に反時計回りの方向へ徐々に回転し、絞り羽根14が半開位置から開位置(最大絞り径)へ移動する。このように、第1傾斜部20aおよび第1傾斜受部12bは、可変絞り10の開口を半開位置と開位置(最大絞り径)との間に開閉する動作を制御する第1開閉機構を構成している。なお、第1傾斜部20aの根元付近には、第1傾斜受部12bの先端と当接し、第1レンズ群21と可変絞り10との最小間隔を適切に保持するためのストッパ20bが設けられている。第1傾斜受部12bとストッパ20bとが当接した際に、可変絞り10の開口部は、最大絞り径となる。
【0027】
第2レンズ保持枠30は、第2レンズ群31を保持する。第2レンズ群31は所定の開口を規定するマスク絞り30aを有している。マスク絞り30aは、その有効径が可変絞り10の開位置(最大絞り径)より小さく形成されている。また、第2レンズ保持枠30の外周部には、直進案内環40の形成された案内溝(後述)に嵌合させるための爪部30bが設けられている。さらに、第2レンズ保持枠30の被写体側面には、突起部30cが設けられている。この突起部30cを、コイル状の光軸付勢バネ11b内を貫通させ、ベース部材11に形成された穴部11aに挿通することにより、第2レンズ保持枠30は可変絞り10と一体的に光軸に沿う方向へ移動することができるようになる。また、第1傾斜受部12bとストッパ20bとが当接した際に、第1レンズ群21と可変絞り10との間隔が一定となる。さらに、第1レンズ群21と第2レンズ群31とが近づくにつれ、第1レンズ保持枠20により可変絞り10が押圧されることで、可変絞り10が光軸付勢バネ11bの付勢に抗して、相対的に第2レンズ保持枠30側へ移動する(詳細は後述)。
【0028】
直進案内環40の側面には、第2レンズ保持枠30の爪部30bと嵌合させ、第2レンズ保持枠30を直進案内環40内の光軸に沿った方向へスライドさせるための案内溝40aが形成されている。また、直進案内環40の内周面には、回動部材12の第2傾斜受部12aに当接させるための第2傾斜部40bが形成されている。第2傾斜部40bは、被写体側へ向かって徐々に細くなり、先端が尖った形状になっている。また、第2傾斜部40bは第2傾斜受部12aよりも長く形成されている。そして、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが所定の距離(第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとが当接した際に、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが離れている距離)より離間していく場合、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとが徐々に深くかみ合っていくことにより、回動部材12がベース部材11に対し光軸中心に時計回りの方向へ徐々に回転し、絞り羽根14が半開位置からから閉位置(最小絞り径)へ移動する。このように、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとは、可変絞り10の開口を徐々に半開位置と閉位置(最小絞り径)との間に開閉する動作を制御する第2開閉機構を構成している。
【0029】
なお、第1傾斜部20a(もしくは第1傾斜受部12b)と光軸とにより形成される第1の角度は、第2傾斜部40b(もしくは第2傾斜受部12a)と光軸とにより形成される第2の角度より大きくなっている。
【0030】
次に、この発明にかかるレンズ鏡筒の動作を説明する。図5および図6は、この発明にかかるレンズ鏡筒の望遠端における状態を説明するための図である。図7は、望遠端における可変絞りの開口の状態を示す被写体側から見た図である。なお、図6は、図5に示した状態を、光軸を中心にほぼ180°回転させた状態を示した図である。
【0031】
第2レンズ保持枠30と一体的に可変絞り10が直進案内環40の最浅部(最も被写体側)へ移動した状態が望遠端である。第2レンズ保持枠30と一体的に可変絞り10が直進案内環40の内周面に沿って被写体側(図の左側)へ移動していく過程で、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが所定の距離(第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとが当接した際に、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが離れている距離)より近接していくと、第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとが徐々に深くかみ合って行くことにより、回動部材12がベース部材11に対し光軸中心に反時計回りの方向へ徐々に回転し、絞り羽根14が半開位置から開位置(最大絞り径)へ移動する(図7参照)。そして、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが第2の所定距離(ストッパ20bと第1傾斜受部12bとが当接した際に、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが離れている距離より若干短い距離)以上近づいていく場合、可変絞り10は、第1レンズ保持枠20に押圧されることにより、相対的に第2レンズ保持枠30側へ移動し、少なくとも第2レンズ群31の凸面の一部が絞り羽根14の開口部に入り込む。さらに、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが第3の所定距離(第2の所定距離より若干短い距離)以上近づいていく場合、可変絞り10は、第1レンズ保持枠20に押圧されることにより、より第2レンズ保持枠30側へ移動し、第2レンズ群31の凸面の全部が絞り羽根14の開口部に入り込む。なお、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが前記所定距離以上近づいていく場合に、第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとが当接しながら摺動していくと同時に、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとは離間していく。このため第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bにより構成される第1開閉機構と、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとにより構成される第2開閉機構とは、それぞれの駆動時に他の機構の駆動に干渉することはない。
【0032】
図8は、この発明にかかるレンズ鏡筒の中間における状態を説明するための図である。また、図9は、中間における可変絞りの開口の状態を示す被写体側から見た図である。マスク絞り30aは、その有効径が中間における可変絞り10の開口径より大きく形成されている。第2レンズ保持枠30と一体的に可変絞り10が直進案内環40の中間部へ移動した状態が中間である。第2レンズ保持枠30と一体的に可変絞り10が被写体側から徐々に像側(図の右側)へ移動していくに従い、第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとは離間していき、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとが当接しながら摺動していく。この過程で回動部材12がベース部材11に対し光軸中心に時計回りの方向へ徐々に回転し、絞り羽根14が半開位置から閉位置(最小絞り径)へ徐々に移動する(図9参照)。なお、このとき、可変絞り10は、第1レンズ保持枠20による押圧から開放され、光軸付勢バネ11bのはたらきにより望遠端における場合より相対的に第1レンズ保持枠20側へ移動し、第2レンズ群31の凸面も絞り羽根14の開口部から脱出する。
【0033】
図10は、この発明にかかるレンズ鏡筒の広角端における状態を説明するための図である。なお、広角端における可変絞りの開口の状態は、図9に示した状態より小さくなっている。第2レンズ保持枠30と一体的に可変絞り10が直進案内環40の最深部(最も像側)へ移動した状態が広角端である。図8に示した状態より、第2レンズ保持枠30と一体的に可変絞り10が直進案内環40の像側(図の右側)へ移動することにより、回動部材12に設けられた第2傾斜受部12aは、直進案内環40に形成された第2傾斜部40bとより深い位置で当接することになる。この過程で回動部材12がベース部材11に対し光軸中心に時計回りの方向へさらに回転していくことになる。可変絞り10の開口径は図9に示した状態よりさらに絞られる。
【0034】
以上のように、このレンズ鏡筒100では、アクチュエータなどの可変絞り駆動手段を用いずに、可変絞り10の開閉や開口径の徐変を行うことが可能である。アクチュエータなどの可変絞り駆動手段を設けることは、大型化を招きやすく、構造も複雑で部品点数も増加する。したがって、可変絞り駆動手段が不要なレンズ鏡筒100は、小型化、構造の簡易化、部品点数の削減が望まれるレンズ鏡筒として最適なものとなる。また、このレンズ鏡筒100は、望遠端状態において、第2レンズ群31の凸面を可変絞り10の開口部へ入り込ませることができるため、光軸方向のより一層の小型化を図ることができる。
【0035】
次に、この発明にかかるレンズ鏡筒の沈胴時の状態を説明する。図11および図12は、この発明にかかるレンズ鏡筒の沈胴時における状態を説明するための図である。図13は、沈胴時における可変絞りの開口の状態を示す被写体側から見た図である。なお、図12は、図11に示した状態を、光軸を中心にほぼ180°回転させた状態を示した図である。
【0036】
このレンズ鏡筒100は、沈胴時には、図12に示すように、まず、第1レンズ保持枠20、可変絞り10、第2レンズ保持枠30の相対位置関係は、前述した望遠端の状態と同様になる。すなわち、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とを第3の所定距離(第2の所定距離より若干短い距離)以上近づかせることで、可変絞り10が第1レンズ保持枠20に押圧され、相対的に第2レンズ保持枠30側へ移動し、第2レンズ群31の凸面の全部が絞り羽根14の開口部に入り込んだ状態になる。前述のように、このレンズ鏡筒100では、第1レンズ保持枠20と第2レンズ保持枠30とが前記所定距離以上近づいた場合に、第1傾斜部20aと第1傾斜受部12bとが当接しながら摺動していくと同時に、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとは離間していく。そこで、図11に示すように、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとが離間した状態のまま、第1レンズ保持枠20、可変絞り10、第2レンズ保持枠30を直進案内環40内に収容し、さらにこの直進案内環40を鏡筒50内に収容することが可能になる。
【0037】
これは、前述のように、第1傾斜受部12bと第2傾斜受部12aとが、それぞれ回動部材12において光軸中心に対し点対称な位置に設けられ、第1傾斜部20a(もしくは第1傾斜受部12b)と光軸とにより形成される第1の角度が、第2傾斜部40b(もしくは第2傾斜受部12a)と光軸とにより形成される第2の角度より大きくなっているため、第1レンズ保持枠20と回動部材12とが前記第3の所定距離程度に近接した場合でも、第2傾斜部40bと第2傾斜受部12aとが干渉しないような位置関係を形成できることにより可能になる。
【0038】
以上のように、このレンズ鏡筒100は、第2レンズ群31の凸面を可変絞り10の開口部へ入り込ませたままで沈胴状態を形成することができるため、沈胴時における光軸方向のより一層の小型化を図ることができる。
【0039】
上述のように、本発明によれば、アクチュエータなどの可変絞り駆動手段を用いずに、可変絞りの開閉や開口径の徐変を行うことを可能とし、レンズ鏡筒の小型化、構造の簡易化、部品点数の削減を図ることができる。また、レンズ鏡筒の沈胴状態および望遠端状態において、第2レンズ群の凸面を可変絞りの開口部へ入り込ませることで、レンズ鏡筒における光軸方向のより一層の小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、この発明にかかるレンズ鏡筒は、レンズ鏡筒の小型化、構造の簡易化、部品点数の削減を図ることができ、特に小型化が望まれる撮像装置に最適である。
【符号の説明】
【0041】
10 可変絞り
11 ベース部材
11a 穴部
11b 光軸付勢バネ
12 回動部材
12a 第2傾斜受部
12b 第1傾斜受部
13 バネ(弾性部材)
14 絞り羽根
20 第1レンズ保持枠
20a 第1傾斜部
20b ストッパ
21 第1レンズ群
30 第2レンズ保持枠
30a マスク絞り
30b 爪部
30c 突起部
31 第2レンズ群
40 直進案内環
40a 案内溝
40b 第2傾斜部
50 鏡筒
100 レンズ鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体側より順に配置された、
第1レンズ群を保持する第1レンズ保持枠と、
ベース部材に対して光軸中心に回動可能な回動部材と、前記ベース部材に対して前記回動部材を光軸を中心とする円周方向に付勢する弾性部材と、前記回動部材の回動により開閉移動する絞り羽根と、を備えた可変絞りと、
少なくとも被写体側に凸面を向けた第2レンズ群を保持しつつ前記可変絞りと一体的に光軸に沿った方向へ移動する第2レンズ保持枠と、
を備えたレンズ鏡筒であって、
前記第1レンズ保持枠および前記第2レンズ保持枠を光軸に沿った方向へ案内する直進案内環と、
前記第1レンズ保持枠および前記第2レンズ保持枠を光軸に沿った方向へ移動させるための駆動力を提供するレンズ駆動機構と、
前記レンズ駆動機構の駆動により、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが所定距離以上近づいた場合に、前記絞り羽根を半開位置と開位置(最大絞り径)との間に移動させる第1開閉機構と、
前記レンズ駆動機構の駆動により、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上離間した場合に、前記絞り羽根を閉位置(最小絞り径)と半開位置との間に移動させる第2開閉機構と、
を備え、
前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが第2の所定距離以上近づいた場合に、前記可変絞りは、前記第1レンズ保持枠に押圧されることにより、相対的に前記第2レンズ保持枠側へ移動し、少なくとも前記第2レンズ群の凸面の一部が前記絞り羽根の開口部に入り込むことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記レンズ鏡筒は、沈胴式を成し、
沈胴時には、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記第2の所定距離以上近づくことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記レンズ鏡筒は、沈胴式を成し、
沈胴時および望遠端には、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記第2の所定距離以上近づくことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2レンズ群は、マスク絞り有し、
前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが第3の所定距離以上近づいた場合に、前記可変絞りは、前記第1レンズ保持枠に押圧されることにより、相対的に前記第2レンズ保持枠側へ移動し、前記第2レンズ群の凸面の全体が前記絞り羽根の開口部へ入りこむことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第2の所定距離は前記所定距離より短く、
前記第3の所定距離は前記第2の所定距離より短いことを特徴とする請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1開閉機構は、前記第1レンズ保持枠および前記回動部材に設けられ、
前記第2開閉機構は、前記直進案内環および前記回動部材に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1開閉機構は、前記第1レンズ保持枠の外周部に設けられた第1傾斜部と、前記回動部材の外周部に設けられた、前記第1傾斜部と当接可能な第1傾斜受部とにより構成され、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上近づいた場合に、前記第1傾斜受部が前記第1傾斜部へ案内されることで前記回動部材が回動し、
前記第2開閉機構は、前記直進案内環の内周面に設けられた第2傾斜部と、前記回動部材の外周部に設けられた、前記第2傾斜部と当接可能な第2傾斜受部とにより構成され、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上離間した場合に、前記第2レンズ保持枠の移動により、前記第2傾斜受部が前記第2傾斜部へ案内されることで前記回動部材が光軸に沿った方向へ移動しながら回動し、
前記第1傾斜部(もしくは前記第1傾斜受部)と光軸とにより形成された第1の角度は、前記第2の傾斜部(もしくは前記第2傾斜受部)と光軸とにより形成された第2の角度より大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とが前記所定距離以上近づいた場合に、前記第1傾斜部と前記第1傾斜受部とが当接しながら摺動していくと同時に、前記第2傾斜部と前記第2傾斜受部とが離間していくことを特徴とする請求項7に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
ベース部材に対して光軸中心に回動可能な回動部材と、
前記ベース部材に対して前記回動部材を光軸を中心とする円周方向に付勢する弾性部材と、
前記回動部材の回動により開閉移動する絞り羽根と、
を備えた可変絞りと、
前記可変絞りと一体的に光軸に沿った方向へ移動するレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠を光軸に沿った方向へ案内する直進案内環と、
前記レンズ保持枠の移動により前記絞り羽根の開閉を制御する開閉機構と、
を備えたことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記開閉機構は、前記直進案内環および前記回動部材に設けられていることを特徴とする請求項9に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記開閉機構は、前記直進案内環の内周面に設けられた傾斜部と、前記回動部材の外周部に設けられた、前記傾斜部と当接する傾斜受部とにより構成され、
前記レンズ保持枠の光軸に沿った方向への移動により、前記傾斜部が前記傾斜受部へ案内され、前記回動部材が光軸に沿って移動しながら光軸中心に回動することにより前記絞り羽根の開閉を制御することを特徴とする請求項9または10に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
光軸方向において前記可変絞りを挟んで、前記レンズ保持枠の反対側に配置された第1レンズ群を保持する第1レンズ保持枠を備え、
前記レンズ保持枠は、少なくとも前記第1レンズ保持枠側に凸面を向けた第2レンズ群を保持し、
前記第1レンズ保持枠と前記レンズ保持枠とが所定距離以上近づいた場合に、前記可変絞りは、前記第1レンズ保持枠に押圧されることにより、相対的に前記レンズ保持枠側に移動し、少なくとも前記第2レンズ群の凸面の一部が前記絞り羽根の開口部に入りこむことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一つに記載のレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−237546(P2011−237546A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107746(P2010−107746)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】