説明

レンズ鏡胴

【課題】アクチュエータの配置空間が大きくならず、簡易な構成で鏡筒外部からの駆動力を鏡筒内部に確実に伝達することができるレンズ鏡胴を提供する。
【解決手段】光軸方向に沿った直進溝を備えた固定筒と、前記固定筒と嵌合し、前記固定筒に対して相対的に光軸周りに回転し、カム溝を備えたカム筒と、前記カム溝と前記直進溝とに係合し、可動レンズ群を支持する移動枠と、を有し、前記カム筒の回転に連動して、前記移動枠を光軸方向に移動させるレンズ鏡胴において、前記レンズ鏡胴の外部から前記移動枠がある内部に駆動力を伝達するための光軸に平行な軸に軸支される伝達歯車を有し、前記軸は、前記伝達歯車が前記固定筒に形成された歯車孔に収まるように、前記固定筒に取り付けられ、前記カム筒には、前記伝達歯車による駆動力の伝達が常に可能なように前記歯車孔に連通し、光軸に直交する方向に長い歯車長孔が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡胴に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル・マイクロミラー・デバイス等の反射型画像表示素子を備え、該画像表示素子に表示された画像を投影光学系によりスクリーン上に拡大投影する画像投影装置(以下、プロジェクタとも称す)が従来知られている。
【0003】
家庭用プロジェクタにおいては、投影像の明るさやコントラストを使用する環境に合わせて変更できるよう、投影光学系には電動の可変絞り機構が内蔵され、スクリーン上の照射光量を変化させるものがある。また、近年では、シネマ用などの大型の高輝度プロジェクタにおいても可変絞りを内蔵し、照射光量を変化させるようにしたものがある。
【0004】
可変絞りの駆動に用いられる電動アクチュエータは、その耐熱性の点から、投影光学系の鏡筒外部に配置されることが望まれ、鏡筒内部の可変絞りに対し、簡易であって確実に駆動力を伝達する機構が常に期待されている。
【0005】
特許文献1においては、カム案内ピンに形成された貫通穴を介して可変絞りを動作させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−53410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の可変絞りを動作させる構成は、貫通穴を通り直進運動する駆動軸により、光軸に平行な軸周りの回転により開閉する絞りを作動させるものである。このため、駆動軸の運動を直進から回転に変換する複雑な機構が必要であり、また、可変絞り用アクチュエータは、その駆動軸の方向が、フォーカス及びズーム用アクチュエータの駆動軸の光軸方向と異なるため、アクチュエータの配置に要する空間が大きくなって、レンズ鏡胴、ひいては、プロジェクタの小型化を妨げる要因となっている。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、アクチュエータの配置空間が大きくならず、簡易な構成で鏡筒外部からの駆動力を鏡筒内部に確実に伝達することができるレンズ鏡胴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、以下の構成により解決される。
【0010】
1.光軸方向に沿った直進溝を備えた固定筒と、
前記固定筒と嵌合し、前記固定筒に対して相対的に光軸周りに回転し、カム溝を備えたカム筒と、
前記カム溝と前記直進溝とに係合し、可動レンズ群を支持する移動枠と、を有し、
前記カム筒の回転に連動して、前記移動枠を光軸方向に移動させるレンズ鏡胴において、
前記レンズ鏡胴の外部から前記移動枠がある内部に駆動力を伝達するための光軸に平行な軸に軸支される伝達歯車を有し、
前記軸は、前記伝達歯車が前記固定筒に形成された歯車孔に収まるように、前記固定筒に取り付けられ、
前記カム筒には、前記伝達歯車による駆動力の伝達が常に可能なように前記歯車孔に連通し、光軸に直交する方向に長い歯車長孔が形成されていることを特徴とするレンズ鏡胴。
【0011】
2.前記固定筒には、前記伝達歯車を軸支する軸が収納される軸溝が設けられ、
前記軸は、前記固定筒の壁面に対向する前記カム筒の壁面により前記軸溝から抜け止めされていることを特徴とする前記1に記載のレンズ鏡胴。
【0012】
3.前記軸は、前記伝達歯車を回転自在に軸支し、該軸が回転しないように前記軸溝に取り付けられていることを特徴とする前記2に記載のレンズ鏡胴。
【0013】
4.光軸に直交する方向の前記歯車長孔の長さは、前記カム筒の光軸周りの回転角度範囲に相当する長さよりも長いことを特徴とする前記2又は3に記載のレンズ鏡胴。
【0014】
5.前記内部に可変光学絞りを有し、
前記可変光学絞りは、前記伝達歯車の回転により絞りが開閉駆動されるように構成されていることを特徴とする前記1から4の何れか一項に記載のレンズ鏡胴。
【0015】
6.前記内部に、光軸周りの回転により光軸方向に移動可能に螺合され、可動レンズ群を支持する螺合移動枠を有し、
前記螺合移動枠は、前記伝達歯車の回転により移動されるように構成されていることを特徴とする前記1から4の何れか一項に記載のレンズ鏡胴。
【0016】
7.前記カム筒は、前記固定筒の内側にあり、
前記カム筒は、前記伝達歯車の回転により光軸周りに回転されるように構成されていることを特徴とする前記1から4の何れか一項に記載のレンズ鏡胴。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アクチュエータの配置空間が大きくならず、簡易な構成で鏡筒外部からの駆動力を鏡筒内部に確実に伝達することができるレンズ鏡胴を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、プロジェクタの構成全体図であり、(b)は、(a)の矢印A側から見た色分解プリズム部の周辺を示す上面図である。
【図2】ズーム光学系を示す図であって、(a)はテレ端時、及び、ワイド端時のレンズ位置を示す図であり、(b)は移動レンズ群のズーム時の移動線図である。
【図3】ズーム光学系100Aの断面図である。
【図4】ズーム光学系100Aの(a)は左側面図、(b)は正面図である。
【図5】ズーム光学系100Aの(a)は右側面図、(b)は下面図である。
【図6】ズーム光学系100Aの外観の斜視図である。
【図7】ズーム光学系100Aにおける、(a)は、テレ端における固定筒と、これを内包するカム筒を外側から見た展開図であり、(b)はワイド端における同様の展開図である。
【図8】(a)は、ギア142周辺部の拡大図、(b)は、図8(a)のB−B’位置での矢印方向の断面図、(c)は、図8(a)のB−B’矢印方向の断面であって、ギア142、回転止めリング143を除き、ギア軸141がギア軸溝131fに配置されている様子を示す図である。
【図9】光学絞り200において、(a)はテレ端における絞りが最も閉じた状態、(b)は開放状態を示し、(c)はワイド端の最も閉じた状態を示す。
【図10】光学絞り300において、(a)はテレ端で絞りが最も閉じた状態、(b)は開放状態を示す。
【図11】光学絞り300において、(a)は絞りが最も閉じた状態、(b)は開放状態の絞り羽根301の配置の様子を示す図である。
【図12】ズーム光学系100Bにおいて、光学絞り400の絞り羽根駆動に係わる周辺であって、(a)はテレ端、(b)はワイド端での様子を示す図である。
【図13】光学絞り400において、(a)は絞りが最も閉じた状態、(b)は開放状態の様子を示す図である。
【図14】ズーム光学系100Cの断面図である。
【図15】ズーム光学系100Cにおいて、(a)は第4鏡胴504の繰込み端、(b)は繰出し端での様子を示す図である。
【図16】ズーム光学系100Dの断面図である。
【図17】ズーム光学系100Dにおける、テレ端におけるカム筒と、これを内包する固定筒を外側から見た展開図である。
【図18】(a)及び(b)は、それぞれテレ端・ワイド端における図16のC−C’位置での矢印側から見た断面の一部を省略した概略図である。
【図19】(a)は、図17における伝達歯車であるギア142の周辺の拡大図、(b)は、(a)のD−D’位置での矢印方向の断面図、また、(c)は、(a)のD−D’矢印方向の断面であって、ギア142、回転止めリング143を除き、ギア軸141がギア軸溝631fに配置されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。
(第1の実施の形態)
図1(a)、(b)は、本実施の形態に係る画像投影装置(プロジェクタ)の一例の全体構成を示す概略図である。図1(a)は、3つの光学変調素子を用いたプロジェクタ1を構成する光源から投影レンズを経てスクリーンまでの全体を示すものある。図1(b)は、色分解プリズム部の周辺を示す図1(a)の矢印A側から見た上面図である。
【0020】
図1(a)において、光源は、例えばキセノンランプである発光管2a及び回転楕円面である反射面を有するリフレクタ2bを備え、白色光を発生させる。光源は回転楕円面の一方の焦点位置に配置されており、ここから出た光は他方の焦点位置に集光されて、ロッドインテグレータ3の一方の端の入射面3aより入射する。ロッドインテグレータ3に入射した光はここで内面反射を繰り返し、均一な光量分布となって他方の端の射出面3bより射出され、後方に配置されたリレー光学系4、反射ミラー5にてプリズム6a、6bで構成されるTIRプリズムに導かれる。
【0021】
図1(a)、(b)において、TIRプリズムに導かれた光は、TIRプリズムの2つのプリズム6a、6bの境界面6cに存在するエアーギャップで全反射され、色分解プリズム7を経て各色DMD8r、8g、8bを略テレセントリックで均一に照明する。個々のDMD8r、8g、8bで変調された画像光は色分解プリズム7、TIRプリズム及びズーム光学系100を経てスクリーン10に投影される。
【0022】
色分解プリズム7は略三角柱状の第1プリズム7b、第2プリズム7r、第3プリズム7gから成り、各プリズム斜面間のエアーギャップ層に隣接したダイクロイック面7B、7Rにより光源から導かれた光を3色(赤・緑・青)に分解して各DMD8r、8g、8bに導くと共に、各DMD8r、8g、8bにより変調された画像光をズーム光学系100、スクリーン10へと導く。
【0023】
図2(a)は、ズーム光学系100のレンズ、絞りの配置を示す図であって、図2(a)は光軸Oの上側にテレ端(長焦点端)時、下側にワイド端(短焦点端)時のレンズ位置を示してあり、図2(b)は移動レンズ群のズーム時の移動線図である。
【0024】
ズーム光学系100はスクリーン側より、負のパワーの固定レンズ群である第1レンズ群181、正のパワーの移動レンズ群である第2レンズ群182、正のパワーの移動レンズ群である第3レンズ群183、負のパワーの固定レンズ群である第4レンズ群184、正のパワーの移動レンズ群である第5レンズ群185、正のパワーの固定レンズ群である第6レンズ群186で構成されている。
【0025】
第1レンズ群181はレンズL1〜L3で構成され、第2レンズ群182はレンズL4及びL5で構成され、第3レンズ群183はレンズL6で構成され、第4レンズ群184はレンズL7で構成され、第5レンズ群185はレンズL8〜L10で構成され、第6レンズ群186はレンズL11〜L12で構成されている。
【0026】
第3レンズ群183と第4レンズ群184の間には光学系絞り200が配置されている。第2レンズ群182、第3レンズ群183、第5レンズ群185は図2(b)に示すように移動して変倍を行う。
【0027】
上記のズーム光学系100を基本構成する、以下のズーム光学系100A、100B、100C及び100Dを具体例として、本発明に係るレンズ鏡胴に関して適宜図を参照しながら説明する。具体例のレンズ鏡胴において、相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複の説明を適宜省略する。
【0028】
図3、図4(a)、(b)、図5(a)、(b)及び図6は、図2に示すズーム光学系100であって、具体的な鏡胴部品やアクチュエータを含むズーム光学系100Aの概略図を示す。図3は断面図、図4(a)、(b)はそれぞれ左側面図、正面図、図5(a)、(b)はそれぞれ右側面図、下面図である。図4(a)の左側面図は光軸方向であってスクリーン側から見た図である。図6はスクリーン側の左下から見上げたズーム光学系100A外観の斜視図である。尚、外観を示す図4(a)、(b)、図5(a)、(b)及び図6は、ズーム光学系100Aに限らず、ズーム光学系100B、100C及び100Dの場合も同様である。
【0029】
図3のズーム光学系100Aにおいて、第1鏡胴101は、第1レンズ群181を保持し、雄ヘリコイド部101aにて固定筒131の雌ヘリコイド部131aと螺合して固定筒131に保持されている。第1鏡胴101にはフォーカス環121がネジで締結され、フォーカス環121が有するフォーカスギア部121aとフォーカスモータ151の出力ギア151aとが噛合されている。従って、フォーカスモータ151の駆動によりフォーカス環121及び第1鏡胴101が固定筒131に対して回転し、雄ヘリコイド部101aと雌ヘリコイド部131aによりフォーカス機構が構成されている。
【0030】
第2鏡胴102、第3鏡胴103、第5鏡胴105は、それぞれ第2レンズ群182、第3レンズ群183、第5レンズ群185を保持し、各鏡胴の円周3等分に配置された3個のカム案内ピン135を有し、固定筒131の内部に配置される。第2鏡胴102、第3鏡胴103、第5鏡胴105は、各々が有するカム案内ピン135が、固定筒131に形成されている2つの直進溝131bの3組及びカム筒132に形成されている3つのカム溝132bの3組に係合することにより、各々の鏡胴の位置が決定される(図7(a)、(b)参照)。
【0031】
カム筒132にはズーム環122が連結され、ズーム環122が有するズームギア部122aとズームモータ152の出力ギア152aとが噛合されている。従って、ズームモータ152の駆動によりズーム環122及びカム筒132が固定筒131に対して回転し、第2鏡胴102、第3鏡胴103、第5鏡胴105はカム溝132bに倣い、直進溝131bに沿って所定の直進移動を行うズーム機構が形成されている。
【0032】
カム筒132は、固定筒131を内包するように嵌合し、カム筒基準面132cが固定筒131の固定筒基準面131cと接することで光軸方向の位置が決定され、また、光軸周りに回転自由であって、カム環押え133により抜け止めされている。また、カム筒132は、回転規制溝132aを有し、固定筒131に固定された回転規制ピン131dが回転規制溝132aの両端にてカム筒132の回転を規制している。このため、カム筒132は、ズームによる固定筒131に対する回転が所定の角度範囲で可能になっている。(図7(a)、(b)参照)。
【0033】
第4鏡胴104、第6鏡胴106は、それぞれ第4レンズ群184、第6レンズ群186を保持し、固定筒131に複数のネジで締結されている。光学絞り200は、可変絞りであり、第3レンズ群183と第4レンズ群184の間に配置され固定されている。マウント環123は、固定筒131に締結され、ズーム光学系100Aを図示されていないプロジェクタ本体に固定される。尚、フォーカスモータ151、ズームモータ152は、マウント環123に取り付けられている。
【0034】
図7(a)は、ズーム光学系100Aにおける、テレ端における固定筒131と、これを内包するカム筒132を外側から見た展開図、図7(b)はワイド端における同様の展開図である。
【0035】
図7(a)においてカム筒132の位置は回転規制溝132aの一方の端と回転規制ピン131dにて決定され、図7(b)においてはカム筒132の位置は図7(a)における回転規制溝132aの他方の端と回転規制ピン131dにて決定されている。
【0036】
カム筒132の外側から伝達歯車であるギア142を介して固定筒131の内側にある光学絞り200の絞りを駆動することに関して説明する。
【0037】
カム筒132の外側から見たギア142の周辺の拡大図を図8(a)に、図8(a)のB−B’位置での矢印方向の断面図を図8(b)に、また、図8(a)のB−B’矢印方向の断面であって、ギア142、回転止めリング143を除き、ギア軸141がギア軸溝131fに配置されている様子を図8(c)に示す。
【0038】
固定筒131には、直進溝131bに加えて、ギア142が収まるように取り付けられる歯車孔としてのギア孔131e、底面の形状が平面であるギア軸溝131fが形成されている。ギア軸溝131fにはギア142を回転自在に軸支するギア軸141が光軸に平行な方向に取り付けられている。
【0039】
カム筒132には、回転規制溝132a、カム溝132bに加えて歯車長孔としてのギア長孔132dが形成されている。ギア長孔132dは、光軸に対し垂直な方向に、カム筒132の回転角度範囲において、固定筒131のギア孔131eに収まるように取り付けられたギア142とカム筒132とが干渉しないように開口している。よって、ギア孔131eは、カム筒132の回転角度範囲において、常にギア長孔132dに連通した状態となり、ギア142は、カム筒132の回転に関係なく常にカム筒132の外側から回転駆動力を固定筒131の内側に伝達することができる。
【0040】
ギア軸141は、カム筒132のギア長孔132dの幅より長いため、カム筒132の内周壁面132eにより抜け止めされている。この抜け止めの状態は、ズーム光学系100Aのズーミングにおいて、図7(a)のテレ端の状態から図7(b)のワイド端の状態まで維持されている。このような簡単な構成で、ギア142は、ギア軸141で回転自由に軸支され、固定筒131のギア孔131e及びカム筒132のギア長孔132dに良好に納まり、固定筒131に保持されることができる。
【0041】
ギア軸141は、一部が平面となるDカット部141aを有する円柱状で、Dカット部141aがギア軸溝131fの底面と接して取り付けられている。このようにすることにより、カム筒132の内周壁面132eにギア軸141が接触していてもギア軸141が固定筒131に対して回転しないため、ギア軸141に軸支されるギア142を回転させようとする力が生じない。
【0042】
また、ギア142とギア長孔132dとの両側の隙間には回転止めリング143がギア軸141を軸として保持されている。回転止めリング143の軸孔143aはギア軸141のDカット部141aと同形状の孔としてあり、カム筒132がズーミング時に回転しても回転止めリング143が回転しない。従って、ギア軸141の固定筒131への固定と回転止めリング143とにより、カム筒132の回転による、ギア142の回転力の発生を確実に防止することができる。
【0043】
ギア長孔132dの長手方向の長さは、図7(b)に示すように、カム筒132の回転角度範囲に相当の長さよりも長くしておくことが好ましい。長くしておくことにより、カム筒132と固定筒131との相対角度の調整を容易にすることができる。更に、ギア長孔132dを延長したギア長孔132dの一方の端に、ギア長孔132dの開口幅がギア軸141の長さ相当以上とする幅の広い広幅開口部132fを設けることが好ましい。広幅開口部132fにより、組み立て時に固定筒131にギア142を容易に取り付けることができ、上記で説明した、カム筒132の実運用上での回転角度範囲においてギア軸141がカム筒132の内周壁面132eにより抜け止めされる構造を容易に達成することができる。
【0044】
図9(a)から(c)は、図3のズーム光学系100Aの光学絞り200において、絞りモータ135の出力ギア153aの駆動力がA絞り羽根201、B絞り羽根202に伝達される機構を模式的に示している。図9(a)及び(b)は、それぞれ、テレ端における光学絞り200の絞りが最も閉じた状態と開放状態とを示し、図9(c)はワイド端における光学絞り200の絞りが最も閉じた状態を示す。
【0045】
光学絞り200は、主に、A絞り羽根201、B絞り羽根202、絞りベース203から構成される。絞りベース203には開口丸絞り203cがある。A絞り羽根201は、A絞り羽根軸穴201a、A絞り羽根軸穴201aを中心とした一体、若しくは、固定された別部品の絞り羽根Aギア201bを有している。A絞り羽根201は、絞りベース203に設けてあるA回転軸203aにA絞り羽根軸穴201aで軸支され、回転可能に保持される。
【0046】
B絞り羽根202は、B絞り羽根軸穴202a及びそれを中心とした一体、若しくは、固定された別部品のB絞り羽根ギア202bを有している。B絞り羽根202は、絞りベース203に設けてあるB回転軸203bにB絞り羽根軸穴202bで軸支され、回転可能に保持される。
【0047】
A絞り羽根ギア201bとB絞り羽根ギア202bは、互いに噛み合い、A絞り羽根201とB絞り羽根202が連動する構成となっている。B絞り羽根202は、B絞り羽根軸穴202aを中心としたB絞り羽根大ギア202cを一体、若しくは、固定された別部品として有している。
【0048】
B絞り羽根大ギア202cは、絞りベース203に回転可能に支持された中間ギア204に、中間ギア204はギア142に、更にギア142はマウント環123に保持された絞りモータ153の出力ギア153aに噛み合う簡易な構成により絞り駆動が確実に達成できる。尚、B絞り羽根大ギア202c及び中間ギア204の回転軸が光軸に平行であるのは勿論である。
【0049】
絞りモータ153は、フォーカスモータ151及びズームモータ152と同様に光軸方向に軸を持ち、これらと同様な配置、固定方法とすることができるため、絞りモータ153が占める空間は大きくなりすぎることはなく、また、駆動軸の方向を変換するといった複雑な機構を必要としない。
【0050】
絞りベース203には、開放側回転規制ピン205及び最も閉じた側回転規制ピン206が設けてあり、絞り羽根B202の開放側及び最も閉じた側の回転をそれぞれ規制している。
(第2の実施の形態)
ズーム光学系100Aにおける、第1の実施の形態の光学絞り200とは別の可変絞りである光学絞り300について説明する。
【0051】
図10(a)及び(b)は、絞りモータ153の出力ギア153aの駆動力が絞り羽根301に伝達される機構を模式的に示している。図10(a)及び(b)は、何れも、テレ端における光学絞り300を示し、(a)は絞りが最も閉じた状態、(b)は開放状態である。図11(a)及び(b)は、それぞれ光学絞り300において、絞りの最も閉じた状態、及び開放状態の絞り羽根301の配置を示す。
【0052】
光学絞り300は、主に、複数枚の絞り羽根301、絞りカム板302、絞りベース303から構成される。絞りベース303には開口丸絞り303cがある。絞りベース303に形成された絞り羽根軸穴(図示しない)に、絞り羽根301に設けられている絞り羽根軸301aが挿入され、絞り羽根301は回転可能に軸支される。また、絞り羽根301には絞り羽根軸301aとは反対側に絞り案内軸301bが設けてあり、絞り案内軸301bは、絞りカム板302に設けてある絞りカム溝302bに係合されている。光軸を中心とする絞りカム板302の回転により、各絞り羽根301は、絞り羽根軸301aを軸として連動して動き、可変絞り機構を成している。
【0053】
絞りカム板302には、光軸を中心とした円周上に絞りカム板ギア302a、及び、同じく光軸を中心とした円周上に2箇所以上の回転案内溝302cが設けてある。絞りカム板302の回転案内溝302cには絞りベース303に設けてある複数の回転案内ピン303bが係合し、この係合は、絞りカム板302の光軸を中心とする回転を可能にするガイドとして機能する共に、回転角度の規制としても機能する。
【0054】
絞りカム板ギア302aはギア142に、ギア142はマウント環123に保持された絞りモータ153の出力ギア153aに噛み合う簡易な構成で絞り駆動が確実に達成できる。
(第3の実施の形態)
図12(a)、(b)及び図13(a)、(b)は、ズーム光学系100Bにおける可変絞りである光学絞り400を示している。ズーム光学系100Bは、第4レンズ群184が移動するものであって、第4レンズ群184を保持する第4鏡胴104に取り付けられた光学絞り400も光軸方向に移動する以外は、ズーム光学系100Aと同様であるので、光学絞り400以外の説明は省略する。
【0055】
図12(a)及び(b)は、それぞれテレ端、ワイド端における光学絞り400の絞り羽根駆動に係わる周辺を示す。
【0056】
図13(a)、(b)は、図10(a)、(b)と同様に光学絞り400周辺であって、絞りモータ135の出力ギア153aの駆動力が絞り羽根401に伝達される機構を模式的に示し、(a)は絞りの最も閉じた状態、(b)は開放状態である。絞りの最も閉じた状態、及び開放状態の絞り羽根401の配置の様子は、図11(a)、(b)と同様である。
【0057】
光学絞り400は、主に、複数枚の絞り羽根401、回動ピン402aを備えた絞りカム板402、絞りベース403、回動板404から構成される。絞りベース403には開口丸絞り403cが設けてある。絞りベース403に形成された絞り羽根軸穴(図示しない)には絞り羽根401に設けてある絞り羽根軸(図示しない)が挿入され、絞り羽根401が回転可能に軸支される。尚、図13(a)、(b)において、回動板404は、紙面に対し絞りベース403の奥側に位置するが、説明のためその外形を実線で示している。
【0058】
絞り羽根401には絞り羽根軸とは反対側に絞り案内軸401bが設けてあり、絞りカム板402の絞りカム溝402bに係合され、絞りカム板402の回転により各絞り羽根401が連動して可変絞り機構を成している。
【0059】
絞りカム板402には回動ピン402aが設けられている。絞りカム板402の回転案内溝402cには絞りベース403に設けてある複数の回転案内ピン403bが係合し、この係合は、絞りカム板402の光軸を中心とする回転を可能にするガイドとして機能すると共に、回転角度の規制としても機能する。
【0060】
固定筒131には回動板404が光軸を中心に回転可能に支持され、光軸と同心円上に回動板ギア404aが形成され、回動板ギア404aはギア142に、ギア142はマウント環123に保持された絞りモータ153の出力ギア153aに噛み合っている。
【0061】
更に、回動板404には回動案内溝404bが設けてあり、回動案内溝404bに、絞りカム板402の回動ピン402aが絞りベース403に設けられた長穴403dを通して係合することにより、回動板404の回転により、回動ピン402aを介して絞りカム板402が回転する。回動ピン402aの光軸方向長さが、ズームによる第4鏡胴104の移動量よりも長いため、任意のズーム位置において絞りを可変させることができる。従って、上記のような簡易な構成により光軸方向に移動する光学絞り400の絞り駆動が確実に達成できる。
(第4の実施の形態)
図14に示すズーム光学系100Cは、ズームポジションごとにギア142により第4レンズ群184を保持する第4鏡胴504を適宜移動させ、球面収差量あるいは像面湾曲量を補正する機構を備え、光学絞りは可変でなく固定絞りである。これら以外は、ズーム光学系100Aと同様であるので、第4鏡胴504の移動に関する以外の説明は省略する。尚、第4鏡胴504を移動させるモータは、絞りモータ153として説明する。
【0062】
図14は、ズーム光学系100Cにおいて、光軸Oの上側にテレ端時、下側にワイド端時のレンズ位置を示す。図15(a)及び(b)は、第4鏡胴504周辺であって、絞りモータ135の出力ギア153aの駆動力が絞り板501に伝達される機構を模式的に示し、(a)及び(b)それぞれは、第4鏡胴504の繰込み端、繰出し端での様子を示す。
【0063】
図14に示すように、第4レンズ群184を保持する第4鏡胴504は、第4鏡胴ヘリコイド部504a及び固定筒ヘリコイド部531aとで螺合し、固定筒531に保持されている。第4鏡胴504には絞り板501が複数のネジ502にて締結されている。
【0064】
図15(a)及び(b)に示すように、絞り板501の外周部にはギア501aが設けられ、ギア501aはギア142に、ギア142はマウント環523に保持された絞りモータ153の出力ギア153aに噛み合う構成となっている。従って、絞りモータ153の駆動力が簡易な構成で固定筒131の内側へ伝達され、絞り板501に締結されている第4鏡胴504を光軸周りに確実に回転させることができる。この回転により、絞り板501と第4鏡胴504とが共に光軸方向に前進又は後進し、球面収差量あるいは像面湾曲量を補正することができる。絞り板501は固定筒531に固定された回転規制ピン503により回転規制されるため、絞り板501と第4鏡胴504との移動量を規制することができる。
【0065】
尚、ギア142の厚みや絞り板501に設けられるギア501aを別部品として厚みを持たせることにより、適宜第4鏡胴504の移動範囲に対応することができる。この場合のギア142及びギア501aは、平歯車が好ましい。
(第5の実施の形態)
図16に示すズーム光学系100Dは、主にカム筒632が固定筒631の内側にある、いわゆる内カム構成であることが、第1から4の実施の形態と異なっている。レンズ及び絞りの配置は、第1の実施の形態同様であり、図16のズーム光学系100Dにおいて、光軸Oの上側にテレ端時、下側にワイド端時のレンズ及び絞り位置を示す。
【0066】
図17は、テレ端における固定筒631とカム筒632とを鏡胴外側から見た展開図である。固定筒631には直進溝631bが設けられ、カム筒632にはカム溝632bが設けられている。これらの溝にレンズを保持する第2鏡胴102、第3鏡胴103、第4鏡胴104及び第5鏡胴105が係合し、カム筒632の回転により各々の鏡胴の位置が決定されるが、これらに関する説明は、第1の実施の形態で説明した内容と同様であるので省略する。又、ワイド端における同様の展開図は、図7(a)のテレ端に対する図7(b)のワイド端の図と同様であるので省略する。
【0067】
固定筒631には、直進溝631bに加えて、ギア142が収まるように取り付けられるギア孔631e、底面の形状が平面であるギア軸溝631fが形成されている。ギア軸溝631fにはギア142を回転自在に軸支するギア軸141が光軸に平行な方向に取り付けられている。
【0068】
カム筒632には、回転規制溝632a、カム溝632bに加えてギア長孔632dが形成されている。カム筒632は、回転規制溝632aを有し、固定筒631に固定された回転規制ピン631dが回転規制溝632aの両端にてカム筒632の回転を規制している。ギア孔631eとギア長孔632dとの関係や、ギア142が固定筒631に固定されることに関する説明は、第1の実施の形態で説明した内容と同様であるので省略する。ギア軸141は、カム筒632の外周壁面632eにより抜け止めされている。
【0069】
図19(a)から(c)は、図8(a)から(c)と同様であって、図17における伝達歯車であるギア142の周辺の拡大図を図19(a)に、図19(a)のD−D’位置での矢印方向の断面図を図19(b)に、また、図19(a)のD−D’矢印方向の断面であって、ギア142、回転止めリング143を除き、ギア軸141がギア軸溝631fに配置されている様子を図19(c)に示す。
【0070】
図18(a)及び(b)は、それぞれテレ端・ワイド端における図16のC−C’位置での矢印側から見た断面の一部を省略した概略図である。
【0071】
カム筒632は、一体又は固定された別部品のカム筒ギア632fを有し、カム筒ギア632fはギア142と、ギア142はマウント環123に保持されたズームモータ653の出力ギア653aと噛み合う構成となっている。従って、光軸方向に軸を持つズームモータ653の駆動力が簡易な構成で固定筒631の内側のカム筒632へ確実に伝達され、カム筒632が光軸周りに回転され、ズームが達成される。
【符号の説明】
【0072】
131 固定筒
131e ギア孔
143 回転止めリング
131f ギア軸溝
132d ギア長孔
132 カム筒
132e 内周壁面
141 ギア軸
141a Dカット部
142 ギア
153a 出力ギア
204 中間ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に沿った直進溝を備えた固定筒と、
前記固定筒と嵌合し、前記固定筒に対して相対的に光軸周りに回転し、カム溝を備えたカム筒と、
前記カム溝と前記直進溝とに係合し、可動レンズ群を支持する移動枠と、を有し、
前記カム筒の回転に連動して、前記移動枠を光軸方向に移動させるレンズ鏡胴において、
前記レンズ鏡胴の外部から前記移動枠がある内部に駆動力を伝達するための光軸に平行な軸に軸支される伝達歯車を有し、
前記軸は、前記伝達歯車が前記固定筒に形成された歯車孔に収まるように、前記固定筒に取り付けられ、
前記カム筒には、前記伝達歯車による駆動力の伝達が常に可能なように前記歯車孔に連通し、光軸に直交する方向に長い歯車長孔が形成されていることを特徴とするレンズ鏡胴。
【請求項2】
前記固定筒には、前記伝達歯車を軸支する軸が収納される軸溝が設けられ、
前記軸は、前記固定筒の壁面に対向する前記カム筒の壁面により前記軸溝から抜け止めされていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡胴。
【請求項3】
前記軸は、前記伝達歯車を回転自在に軸支し、該軸が回転しないように前記軸溝に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のレンズ鏡胴。
【請求項4】
光軸に直交する方向の前記歯車長孔の長さは、前記カム筒の光軸周りの回転角度範囲に相当する長さよりも長いことを特徴とする請求項2又は3に記載のレンズ鏡胴。
【請求項5】
前記内部に可変光学絞りを有し、
前記可変光学絞りは、前記伝達歯車の回転により絞りが開閉駆動されるように構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のレンズ鏡胴。
【請求項6】
前記内部に、光軸周りの回転により光軸方向に移動可能に螺合され、可動レンズ群を支持する螺合移動枠を有し、
前記螺合移動枠は、前記伝達歯車の回転により移動されるように構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のレンズ鏡胴。
【請求項7】
前記カム筒は、前記固定筒の内側にあり、
前記カム筒は、前記伝達歯車の回転により光軸周りに回転されるように構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のレンズ鏡胴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−128332(P2011−128332A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286036(P2009−286036)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】