説明

レンズ駆動装置

【課題】光軸方向へ移動する可動体のがたつきを抑制しつつ、光軸方向へ可動体を適切に移動させることが可能なレンズ駆動装置を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置1は、レンズの光軸方向へ移動可能な可動体3と、可動体3を光軸方向へ移動可能に保持する固定体4と、可動体3を光軸方向へ駆動するための駆動機構5とを備えている。駆動機構5は、可動体3に固定される駆動用磁石17と、固定体4に固定される駆動用コイル15とを備え、固定体4は、可動体3を光軸方向へ案内するガイド部材12と、磁性材料で形成され可動体3の外周側を覆うカバー部材10とを備えている。可動体3は、カバー部材10との間に生じる磁気的吸引力によって光軸方向に略直交する一方向へ可動体3を付勢する付勢用磁石9を備え、一方向へ付勢された状態でガイド部材12に沿って光軸方向へ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置は、レンズを内周側で保持するレンズホルダを備えている。レンズホルダは、ベースに固定される2本のシャフトに沿って光軸方向へ移動可能となっている。レンズホルダの外周面を構成する4つの側面のそれぞれには、駆動用磁石が固定されている。ベースには、4つのガイド体が突設されており、4つのガイド体の外周には、駆動用コイルが巻回されている。駆動用コイルは、駆動用磁石に対向するように駆動用磁石の外周側に配置されている。駆動用コイルの外周側には、磁性材料からなる枠部材が配置されており、枠部材の側面は、駆動用磁石および駆動用コイルを外周側から覆っている。
【0003】
また、特許文献1では、シャフトに沿って光軸方向へ移動するレンズホルダのがたつきを抑制するための構成が提案されている。具体的には、枠部材の4つの側面のうちの1つを切り欠いて、レンズホルダの側面に固定される4個の駆動用磁石のうちの3個の駆動用磁石を枠部材の3つの側面で外周側から覆うとともに、残りの1個の駆動用磁石を枠部材の側面で覆わないようにすることで、光軸方向に略直交する所定の方向へレンズホルダを付勢する付勢力を発生させている。光軸方向に略直交する所定の方向へレンズホルダが付勢されるため、光軸方向へ移動するレンズホルダのがたつきが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4642053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、光軸方向へ移動するレンズホルダのがたつきを抑制するために、4個の駆動用磁石のうちの1個の駆動用磁石が磁性材料で形成される枠部材の側面に覆われていない。そのため、このレンズ駆動装置では、枠部材の側面に覆われた3個の駆動用磁石に対向する駆動用コイルを通過する磁束の密度と、枠部材の側面に覆われていない駆動用磁石に対向する駆動用コイルを通過する磁束の密度とのバランスが崩れるおそれがある。したがって、このレンズ駆動装置では、枠部材の側面に覆われた3個の駆動用磁石と駆動用コイルとの間に生じる駆動力と、枠部材の側面に覆われていない駆動用磁石と駆動用コイルとの間に生じる駆動力とのバランスが崩れて、レンズホルダを光軸方向へ適切に移動させることが困難になるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、光軸方向へ移動する可動体のがたつきを抑制しつつ、光軸方向へ可動体を適切に移動させることが可能なレンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ駆動装置は、レンズを保持しレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体を光軸方向へ駆動するための駆動機構とを備え、駆動機構は、可動体に固定される駆動用磁石と、固定体に固定される駆動用コイルとを備え、固定体は、可動体を光軸方向へ案内するガイド部材と、磁性材料で形成され可動体の外周側を覆うカバー部材とを備え、可動体は、カバー部材との間に生じる磁気的吸引力によって光軸方向に略直交する一方向へ可動体を付勢する付勢用磁石を備え、一方向へ付勢された状態でガイド部材に沿って光軸方向へ移動することを特徴とする。
【0008】
本発明のレンズ駆動装置では、可動体は、カバー部材との間に生じる磁気的吸引力によって光軸方向に略直交する一方向へ可動体を付勢する付勢用磁石を備えており、一方向へ付勢された状態でガイド部材に沿って光軸方向へ移動する。そのため、本発明では、光軸方向へ移動する可動体のがたつきを抑制することが可能になる。また、本発明では、可動体に付勢用磁石が設けられているため、磁性材料で形成されたカバー部材が駆動用磁石の全体を外周側から覆っていても、可動体を一方向へ付勢する付勢力が生じる。そのため、全ての駆動用磁石のそれぞれと駆動用コイルとの間に生じる駆動力のバランスを取ることが可能になり、その結果、光軸方向へ可動体を適切に移動させることが可能になる。
【0009】
また、本発明では、駆動用磁石と付勢用磁石とが別個に設けられているため、駆動機構による可動体の駆動力の調整、および、付勢用磁石による可動体の付勢力の調整が容易になる。また、本発明では、付勢用磁石の付勢力によって光軸方向に略直交する一方向へ可動体が付勢されているため、可動体とガイド部材との間に生じる摩擦力によって、可動体を保持することが可能になる。したがって、本発明では、可動体を保持するための板バネ等の保持用の部材が不要になる。
【0010】
本発明において、レンズ駆動装置は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成され、駆動用磁石は、光軸方向から見たときのレンズ駆動装置の一方の対角線上の2個の角部である第1角部のそれぞれに配置され、付勢用磁石は、可動体の、互いに略直交する2つの側面であって、かつ、第1角部の一方を挟んで配置される2つの側面のそれぞれに取り付けられていることが好ましい。この場合には、駆動用磁石は、たとえば、略三角柱状に形成されている。
【0011】
このように構成すると、デッドスペースとなりやすいレンズ駆動装置の第1角部に駆動用磁石が配置される。そのため、レンズの径方向へレンズ駆動装置を小型化することが可能になる。あるいは、レンズの径方向でレンズ駆動装置を大型化させることなく、レンズの径を大きくすることが可能になる。また、このように構成すると、第1角部の一方に配置される駆動用磁石とカバー部材との間に生じる磁気的吸引力によって、光軸方向に略直交する一方向への可動体の付勢力を高めることが可能になる。したがって、光軸方向へ移動する可動体のがたつきを効果的に抑制することが可能になる。また、可動体とガイド部材との間に生じる摩擦力を高めて、可動体を安定した状態で保持することが可能になる。
【0012】
本発明において、ガイド部材は、レンズ駆動装置の他方の対角線上の2個の角部である第2角部のそれぞれに配置され、付勢用磁石は、第1角部よりも第2角部に近い位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、第1角部に配置される駆動用磁石と付勢用磁石との距離を遠くすることが可能になる。したがって、駆動用磁石が発生させる磁力と付勢用磁石が発生させる磁力とが干渉しにくくなる。その結果、駆動機構による可動体の駆動力を適切に設定しつつ、付勢用磁石による可動体の付勢力を適切に設定することが可能になる。
【0013】
本発明において、ガイド部材は、円柱状に形成されるガイド軸であり、可動体には、ガイド軸が挿通される2個のガイド孔が形成され、一方のガイド孔は、光軸方向から見たときの形状が円形状となる丸孔状に形成され、他方のガイド孔は、光軸方向から見たときの形状が他方の対角線の方向に長い長円形状となる長孔状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、2本のガイド軸の取付位置がばらついても、ガイド軸に対する可動体の引っ掛かりを防止して、光軸方向へ可動体を円滑に移動させることが可能になる。また、このように構成すると、光軸方向から見たときの他方のガイド孔の形状は、他方の対角線の方向に長い長円形状となっているため、他方のガイド孔が長孔状に形成されていても、付勢用磁石によって可動体が付勢される方向において、他方のガイド孔とガイド軸との隙間を小さくすることが可能になる。
【0014】
本発明において、レンズ駆動装置は、光軸方向における可動体の位置を検出するための位置センサを備え、位置センサでの検出結果に基づいて駆動用コイルに供給される電流がフィードバック制御されることが好ましい。このように構成すると、可動体とガイド部材との間に生じる摩擦力で停止している可動体の光軸方向における位置が、振動や衝撃等の影響で目標停止位置からずれても可動体を目標停止位置へ自動的に戻すことが可能になる。したがって、可動体とガイド部材との間に生じる摩擦力で可動体が停止していても、可動体の目標停止位置を維持することが可能になる。
【0015】
本発明では、可動体の可動範囲において、付勢用磁石とカバー部材との対向面積、および、駆動用磁石とカバー部材との対向面積が一定であることが好ましい。このように構成すると、可動体の可動範囲において、可動体の付勢力を一定に保つことが可能になる。また、このように構成すると、可動体の可動範囲において、駆動用磁石とカバー部材との間に生じる磁束の量を一定に保つことが可能になる。
【0016】
本発明において、可動体の側面には、付勢用磁石を固定するための固定用溝が形成され、光軸方向における固定用溝の長さは、光軸方向における付勢用磁石の長さよりも長いことが好ましい。このように構成すると、固定用溝に固定される付勢用磁石の長さを変えることが可能になり、その結果、可動体の付勢力を変えることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のレンズ駆動装置では、光軸方向へ移動する可動体のがたつきを抑制しつつ、光軸方向へ可動体を適切に移動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の平面図である。
【図2】図1のE−E断面の断面図である。
【図3】図1に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(レンズ駆動装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置1の平面図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示すレンズ駆動装置1の分解斜視図である。なお、以下の説明では、図1〜図3に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0021】
本形態のレンズ駆動装置1は、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるものであり、全体として扁平な略四角柱状に形成されている。具体的には、レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0022】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態では、レンズ駆動装置1の下端側に撮像素子2が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0023】
レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体3と、可動体3を光軸方向へ移動可能に保持する固定体4と、可動体3を光軸方向へ駆動するための駆動機構5とを備えている。可動体3は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8と、上下方向に略直交する一方向へ可動体3を付勢するための2個の付勢用磁石9とを備えている。固定体4は、レンズ駆動装置1の前後左右の側面を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の下端面を構成するベース部材11と、可動体3を光軸方向へ案内するガイド部材としての2本のガイド軸12とを備えている。
【0024】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されている。このレンズホルダ7の内周側には、上下方向から見たときの形状が略円形状となる複数のレンズが固定されている。
【0025】
スリーブ8は、略筒状に形成されている。スリーブ8の内周面は、上下方向から見たときの形状が略円形状となるように形成されている。スリーブ8の内周面には、レンズホルダ7が固定されている。スリーブ8の外周面は、上下方向から見たときの形状が略六角形状となるように形成されている。具体的には、上下方向から見たときのスリーブ8の外周面は、上下方向から見たときに、右前端の角部と左前端の角部と右後端の角部と左後端の角部とを有する略四角形から、レンズ駆動装置1の一方の対角線上に配置される右前端の角部と左後端の角部とが面取りされて形成された略六角形状に形成されている。スリーブ8の右前端の角部および左後端の角部に形成される側面は、スリーブ8の前後左右に形成される側面に対して約45°傾いている。
【0026】
スリーブ8には、ガイド軸12が挿通される2個のガイド孔8a、8bが形成されている。ガイド孔8a、8bは、上下方向から見たときのレンズ駆動装置1の他方の対角線上に配置される左前端の角部および右後端の角部の近傍に形成されている。本形態では、ガイド孔8aがスリーブ8の左前端の角部の近傍に形成され、ガイド孔8bがスリーブ8の右後端の角部の近傍に形成されている。また、ガイド孔8a、8bは、上下方向でスリーブ8を貫通するように形成されている。
【0027】
ガイド孔8aは、上下方向から見たときの形状が円形状となる丸孔状に形成されている。ガイド孔8bは、上下方向から見たときの形状が長円形状となる長孔状に形成されている。上下方向から見たときのガイド孔8bの形状は、スリーブ8の左前端と右後端とを結ぶ他方の対角線の方向に長い長円形状に形成されている。
【0028】
スリーブ8の前側面および右側面には、付勢用磁石9を固定するための固定用溝8c、8dが形成されている。固定用溝8cは、スリーブ8の前側面の左端側に形成されている。具体的には、左右方向においてガイド孔8aよりもわずかに右側に形成されている。固定用溝8dは、スリーブ8の右側面の後端側に形成されている。具体的には、前後方向においてガイド孔8bよりもわずかに前側に形成されている。固定用溝8c、8dは、上下方向から見たときの形状が長方形状となる角溝状に形成されている。また、固定用溝8c、8dは、スリーブ8の上端面から下端面までの間に形成されている。すなわち、固定用溝8c、8dは、上下方向におけるスリーブ8の全域に形成されている。また、固定用溝8cと固定用溝8dとは、上下方向から見たときに、レンズ駆動装置1の右前端の角部と左後端の角部とを結ぶ対角線に対して略線対称に形成されている。
【0029】
付勢用磁石9は、扁平な直方体状に形成されている。付勢用磁石9の上下方向の長さは、固定用溝8c、8dの上下方向の長さよりも短くなっている。すなわち、付勢用磁石9の上下方向の長さは、スリーブ8の上下方向の長さよりも短くなっている。付勢用磁石9は、上下方向における固定用溝8c、8dの中心と付勢用磁石9の中心とが略一致するように、固定用溝8c、8dに固定されている。また、付勢用磁石9は、付勢用磁石9の側面がスリーブ8の前側面および右側面よりも突出しないように、固定用溝8c、8dに固定されている。
【0030】
付勢用磁石9は、外周側に配置される側面の磁極と内周側に配置される側面の磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。また、付勢用磁石9は、外周側に配置される側面の全体がN極またはS極となるように単極着磁されている。
【0031】
上述のように、固定用溝8cは、スリーブ8の前側面に形成され、固定用溝8dは、スリーブ8の右側面に形成されているため、付勢用磁石9は、スリーブ8の、互いに略直交する2つの側面であって、右前端の角部を挟んで配置される2つの側面のそれぞれに取り付けられている。また、固定用溝8cは、スリーブ8の前側面の左端側に形成され、固定用溝8dは、スリーブ8の右側面の後端側に形成されているため、付勢用磁石9は、スリーブ8の左前端の角部の近く、および、スリーブ8の右後端の角部の近くに配置されている。
【0032】
カバー部材10は、磁性材料で形成されている。また、カバー部材10は、上下方向から見たときの形状が略正方形の枠状となる略四角筒状に形成されている。カバー部材10の上下方向の長さは、スリーブ8の上下方向の長さよりも長くなっている。カバー部材10は、可動体3および駆動機構5の外周側の全体を覆っている。
【0033】
ベース部材11は、非磁性材料で形成されている。また、ベース部材11は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となる平板状に形成されている。このベース部材11は、カバー部材10の下端側に取り付けられている。ベース部材11の中心には、撮像素子2が取り付けられる取付孔11aが形成されている。取付孔11aは、上下方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。
【0034】
ガイド軸12は、円柱状に形成されており、上下方向を軸方向として配置されている。ガイド軸12の下端は、ベース部材11に圧入等によって固定されている。また、ガイド軸12は、ベース部材11の左前端の角部と、ベース部材11の右後端の角部とに固定されており、レンズ駆動装置1の左前端の角部と右後端の角部とに配置されている。本形態では、ガイド軸12の上端とカバー部材10の上端とが略一致するように、ガイド軸12の長さが設定されている。
【0035】
駆動機構5は、カバー部材10の内周面に固定される駆動用コイル15と、スリーブ8の外周面に固定される2個の駆動用磁石17とを備えている。駆動用コイル15は、上下方向から見たときの形状が略正方形の枠状となる略四角筒状に導線が巻回されることで形成されている。駆動用コイル15の上下方向の長さは、スリーブ8の上下方向の長さと略等しくなっている。
【0036】
駆動用磁石17は、上下方向から見たときの形状が略二等辺三角形となる略三角柱状に形成されており、互いに略直交する2個の平面状の第1側面部17aと、2個の第1側面部17aを繋ぐ平面状の第2側面部17bと、平面状の上端面および下端面とを備えている。この駆動用磁石17は、第1側面部17aの磁極と第2側面部17bの磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。また、駆動用磁石17は、第1側面部17aの全体がN極またはS極となるように単極着磁されている。本形態では、付勢用磁石9の外周側に配置される側面の磁極と、第1側面部17aの磁極とが一致し、付勢用磁石9の内周側に配置される側面の磁極と、第2側面部17bの磁極とが一致している。
【0037】
駆動用磁石17は、スリーブ8の右前端の角部および左後端の角部に形成される側面に固定されている。具体的には、第2側面部17bがスリーブ8の右前端の角部と左後端の角部に形成される側面に固定されている。駆動用磁石17の上下方向の長さは、スリーブ8の上下方向の長さと略等しくなっており、駆動用磁石17付きの可動体3は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となる扁平な略四角柱状に形成されている。駆動用磁石17の第1側面部17aは、所定の隙間を介して、駆動用コイル15の右前端の角部の内周面または左後端の角部の内周面に対向している。また、第1側面部17aは、駆動用コイル15を介して、カバー部材10の内周面と対向しており、第1側面部17aの全体は、カバー部材10によって覆われている。本形態のカバー部材10は、駆動機構5の磁気回路を形成するためのヨークの機能を果たしている。
【0038】
ベース部材11の上面の左後端の角部の近傍には、上下方向における可動体3の位置を検出するための位置センサ20が固定されている。位置センサ20は、たとえば、発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサである。位置センサ20の上面は、スリーブ8の左後端の角部の側面に固定される駆動用磁石17の下面に対向している。
【0039】
上述のように、付勢用磁石9は、スリーブ8の前側面および右側面に固定されており、駆動用コイル15を介してカバー部材10の内周面と対向している。スリーブ8の前側面に固定される付勢用磁石9とカバー部材10の前側面との間には、磁気的吸引力が生じており、この磁気的吸引力によって、可動体3は、図1の矢印V1で示す前方向へ付勢されている。また、スリーブ8の右側面に固定される付勢用磁石9とカバー部材10の右側面との間にも、磁気的吸引力が生じており、この磁気的吸引力によって、可動体3は、図1の矢印V2で示す右方向へ付勢されている。
【0040】
スリーブ8の前側面に固定される付勢用磁石9とカバー部材10の前側面との間に生じる磁気的吸引力の大きさと、スリーブ8の右側面に固定される付勢用磁石9とカバー部材10の右側面との間に生じる磁気的吸引力の大きさとはほぼ等しくなっている。また、上述のように、固定用溝8cと固定用溝8dとは、上下方向から見たときに、レンズ駆動装置1の右前端の角部と左後端の角部とを結ぶ対角線に対して略線対称に形成されており、矢印V1の方向と矢印V2の方向とは、上下方向から見たときに、レンズ駆動装置1の右前端の角部と左後端の角部とを結ぶ対角線に対して略線対称となっている。そのため、本形態では、スリーブ8の前側面に固定される付勢用磁石9とカバー部材10の前側面との間に生じる磁気的吸引力と、スリーブ8の右側面に固定される付勢用磁石9とカバー部材10の右側面との間に生じる磁気的吸引力との合力によって、可動体3は、図1の矢印V3で示す右前方向へ付勢されている。また、この合力によって、可動体3は、2本のガイド軸12のそれぞれに略均等に押し付けられている。
【0041】
なお、スリーブ8の右前端の角部の側面に固定される駆動用磁石17の第1側面部17aとカバー部材10との間にも、磁気的吸引力が発生しており、この磁気的吸引力によって、可動体3は、右前方向へ付勢されている。また、スリーブ8の左後端の角部の側面に固定される駆動用磁石17の第1側面部17aとカバー部材10との間にも、磁気的吸引力が発生しており、この磁気的吸引力によって、可動体3は、左後ろ方向へ付勢されている。
【0042】
上述のように、上下方向において、カバー部材10の長さは、スリーブ8の長さよりも長くなっており、駆動用磁石17の長さは、スリーブ8の長さと略等しくなっている。また、上下方向において、スリーブ8の長さは、付勢用磁石9の磁石の長さよりも長くなっている。本形態では、可動体3の可動範囲(上下方向の可動範囲)において、付勢用磁石9とカバー部材10との対向面積は一定であり、また、駆動用磁石17の第1側面部17aとカバー部材10との対向面積は一定である。
【0043】
以上のように構成されたレンズ駆動装置1では、駆動用コイル15に電流が供給されると、可動体3が上下方向へ移動する。上述のように、付勢用磁石9の付勢力によって、可動体3に右前方向への付勢力が生じているため、可動体3は、右前方向へ付勢された状態でガイド軸12に沿って上下方向へ移動する。また、可動体3が目標停止位置まで移動して停止すると、駆動用コイル15への電流の供給が停止される。本形態では、駆動用コイル15への電流の供給が停止されたときには、付勢用磁石9の付勢力でスリーブ8のガイド孔8a、8bとガイド軸12との間に生じる摩擦力によって、可動体3が目標停止位置で停止している状態が維持される。
【0044】
ここで、駆動用コイル15への電流の供給が停止されているときの振動や衝撃等の影響で、可動体3が目標停止位置から上下方向へずれることがある。本形態では、可動体3が目標停止位置から上下方向へずれると、目標停止位置からのずれ量が位置センサ20によって検出され、位置センサ20での検出結果に基づいて、駆動用コイル15に電流が供給されて、可動体3が目標停止位置へ戻される。すなわち、本形態では、位置センサ20での検出結果に基づいて、駆動用コイル15に供給される電流がフィードバック制御される。このフィードバック制御は、図示を省略する制御部によって実行される。制御部は、たとえば、ベース部材11の下面に固定される回路基板(図示省略)に実装されている。
【0045】
なお、本形態では、レンズ駆動装置1の右前端の角部および左後端の角部は、第1角部であり、レンズ駆動装置1の左前端の角部および右後端の角部は、第2角部である。また、本形態では、右前方向は、光軸方向に略直交する一方向である。
【0046】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、可動体3は、付勢用磁石9の付勢力によって右前方向へ付勢された状態で、レンズ駆動装置1の左前端の角部と右後端の角部とに配置されるガイド軸12に沿って上下方向へ移動する。そのため、本形態では、上下方向へ移動する可動体3のがたつきを抑制することが可能になり、また、可動体3が上下方向へ移動する際の上下方向に対するレンズの光軸Lの傾き(チルト)の発生を抑制することが可能になる。また、上下方向を軸方向とする可動体3のモーメントの発生を抑制することが可能になる。
【0047】
また、本形態では、可動体3に付勢用磁石9が設けられているため、駆動用磁石17の第1側面部17aの全体をカバー部材10が覆っていても、可動体3を右前方向へ付勢する付勢力が生じる。そのため、本形態では、2個の駆動用磁石17の第1側面部17aのそれぞれと駆動用コイル15との間に生じる駆動力のバランスを取ることが可能になり、その結果、上下方向へ可動体3を適切に移動させることが可能になる。
【0048】
本形態では、駆動用磁石17と付勢用磁石9とが別個に設けられている。そのため、本形態では、駆動機構5による可動体3の駆動力の調整、および、付勢用磁石9による可動体3の付勢力の調整が容易になる。特に本形態では、駆動用磁石17は、レンズ駆動装置1の右前端の角部と左後端の角部とに配置され、付勢用磁石9は、スリーブ8の左前端の角部の近くと右後端の角部の近くとに配置されている。すなわち、本形態では、駆動用磁石17と付勢用磁石9とが比較的離れた位置に配置されている。そのため、駆動用磁石17が発生させる磁力と付勢用磁石9が発生させる磁力とが干渉しにくくなる。その結果、本形態では、駆動機構5による可動体3の駆動力の調整、および、付勢用磁石9による可動体3の付勢力の調整がより容易になり、駆動機構5による可動体3の駆動力を適切に設定しつつ、付勢用磁石9による可動体3の付勢力を適切に設定することが可能になる。
【0049】
本形態では、付勢用磁石9の付勢力によって右前方向へ可動体3が付勢されており、付勢用磁石9の付勢力でスリーブ8のガイド孔8a、8bとガイド軸12との間に生じる摩擦力によって、可動体3が目標停止位置で停止している状態が維持される。そのため、本形態では、可動体3を保持するための板バネ等の保持用の部材が不要になる。なお、板バネによって可動体3が保持される場合、板バネの付勢力に釣り合うだけの駆動機構5の駆動力が生じるように駆動用コイル15に電流を供給して、可動体3を目標停止位置に停止させる必要があるが、本形態では、その必要がない。そのため、本形態では、レンズ駆動装置1の消費電力を低減することが可能になる。
【0050】
本形態では、略三角柱状に形成される駆動用磁石17が、上下方向から見たときの形状が略正方形状となるレンズ駆動装置1の右前端の角部と左後端の角部とに配置されている。そのため、デッドスペースとなりやすいレンズ駆動装置1の角部に駆動用磁石17を配置することが可能になる。したがって、本形態では、レンズの径方向へレンズ駆動装置1を小型化することが可能になる。あるいは、レンズの径方向でレンズ駆動装置1を大型化させることなく、レンズの径を大きくすることが可能になる。
【0051】
本形態では、ガイド孔8bは、上下方向から見たときの形状が長円形状となる長孔状に形成されている。そのため、本形態では、2本のガイド軸12の取付位置がばらついても、ガイド軸12に対する可動体3の引っ掛かりを防止して、上下方向へ可動体3を円滑に移動させることが可能になる。また、本形態では、上下方向から見たときのガイド孔8bの形状が、スリーブ8の左前端の角部と右後端の角部とを結ぶ対角線の方向に長い長円形状に形成されているため、ガイド孔8bが長孔状に形成されていても、右前方向へ付勢される可動体3のガイド孔8bとガイド軸12との隙間を小さくして、固定体4に対する可動体3のがたつきを抑制することが可能になる。
【0052】
本形態では、可動体3が目標停止位置から上下方向へずれると、ずれ量が位置センサ20によって検出され、位置センサ20での検出結果に基づいて、駆動用コイル15に電流が供給されて、可動体3が目標停止位置へ戻される。すなわち、本形態では、可動体3が目標停止位置から上下方向へずれると、可動体3が目標停止位置へ自動的に戻される。そのため、本形態では、可動体3とガイド軸12との間に生じる摩擦力によって可動体3が停止していても、可動体3の目標停止位置を維持することが可能になる。
【0053】
本形態では、可動体3の可動範囲において、付勢用磁石9のカバー部材10との対向面積は一定である。そのため、本形態では、可動体3の可動範囲において、可動体3の付勢力を一定に保つことが可能になる。また、本形態では、可動体3の可動範囲において、駆動用磁石17の第1側面部17aとカバー部材10との対向面積が一定であるため、可動体3の可動範囲において、第1側面部17aとカバー部材10との間に生じる磁束の量を一定に保つことが可能になる。
【0054】
本形態では、固定用溝8c、8dの上下方向の長さは、付勢用磁石9の上下方向の長さよりも長くなっている。そのため、本形態では、付勢用磁石9の上下方向の長さを変えることが可能になり、その結果、可動体3の付勢力を変えることが可能になる。
【0055】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0056】
上述した形態では、駆動用磁石17は、第1側面部17aの全体がN極またはS極となるように単極着磁されている。この他にもたとえば、第1側面部17aの上下方向の一方側がN極となり、第1側面部17aの上下方向の他方側がS極となるように、第1側面部17aが二極に着磁されても良い。この場合には、たとえば、第1側面部17aの上下方向の一方側の外周面に対向する駆動用コイルと、第1側面部17aの上下方向の他方側の外周面に対向する駆動用コイルとの2個の駆動用コイルがカバー部材10の内周面に固定される。この場合の2個の駆動用コイルは、駆動用コイル15と同様に略四角筒状に導線が巻回されることで形成される。
【0057】
また、第1側面部17aが二極着磁される場合には、略長方形の平板状に導線が巻回されて形成された駆動用コイルが直角に折り曲げられた状態で、レンズ駆動装置1の右前端の角部および左後端の角部において、カバー部材10の内周面に固定されても良い。この場合には、略長方形状に巻回された駆動用コイルの長辺の一方が第1側面部17aの上下方向の一方側の外周面に対向し、かつ、駆動用コイルの長辺の他方が第1側面部17aの上下方向の他方側の外周面に対向するように、2個の駆動用コイルがカバー部材10の内周面に固定される。
【0058】
上述した形態では、駆動用コイル15は、導線が巻回されることで形成されている。この他にもたとえば、駆動用コイル15は、フレキシブルプリント基板(FPC)上に導体パターンが形成されたFPコイルであっても良い。
【0059】
上述した形態では、レンズ駆動装置1の右前端の角部および左後端の角部に略三角柱状に形成された駆動用磁石17が配置されている。この他にもたとえば、駆動用磁石17に代えて、レンズ駆動装置1の右前端の角部に、平板状に形成された2枚の駆動用磁石が互いに略直交するように配置され、かつ、レンズ駆動装置1の左後端の角部に、平板状に形成された2枚の駆動用磁石が互いに略直交するように配置されても良い。また、駆動用磁石17に代えて、レンズ駆動装置1の右前端の角部および左後端の角部のそれぞれに、略L形状に形成された駆動用磁石が配置されても良い。
【0060】
上述した形態では、ガイド孔8aは、上下方向から見たときの形状が円形状となる丸孔状に形成され、ガイド孔8bは、上下方向から見たときの形状が長円形状となる長孔状に形成されている。この他にもたとえば、ガイド孔8aが形成される部分とガイド孔8bが形成される部分とが分割されるようにスリーブ8が形成されている場合には、ガイド孔8a、8bの両者が丸孔状に形成されても良い。この場合には、レンズ駆動装置1の組立時に、2本のガイド軸12に対して可動体3が引っ掛かからないように、ガイド孔8aが形成される部分とガイド孔8bが形成される部分との固定位置を調整した状態で、ガイド孔8aが形成される部分とガイド孔8bが形成される部分とを互いに固定して一体化すれば良い。
【0061】
上述した形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されているが、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略長方形状となるように形成されても良い。また、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略六角形状等の多角形状となるように形成されても良い。また、上述した形態では、2個の付勢用磁石9によって、可動体3が付勢されているが、3個以上または1個の付勢用磁石によって、可動体3が付勢されても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 レンズ駆動装置
3 可動体
4 固定体
5 駆動機構
8a ガイド孔(一方のガイド孔)
8b ガイド孔(他方のガイド孔)
8c、8d 固定用溝
9 付勢用磁石
10 カバー部材
12 ガイド軸(ガイド部材)
15 駆動用コイル
17 駆動用磁石
20 位置センサ
L 光軸
Z 光軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持し前記レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、前記可動体を前記光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、前記可動体を前記光軸方向へ駆動するための駆動機構とを備え、
前記駆動機構は、前記可動体に固定される駆動用磁石と、前記固定体に固定される駆動用コイルとを備え、
前記固定体は、前記可動体を前記光軸方向へ案内するガイド部材と、磁性材料で形成され前記可動体の外周側を覆うカバー部材とを備え、
前記可動体は、前記カバー部材との間に生じる磁気的吸引力によって前記光軸方向に略直交する一方向へ前記可動体を付勢する付勢用磁石を備え、前記一方向へ付勢された状態で前記ガイド部材に沿って前記光軸方向へ移動することを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成され、
前記駆動用磁石は、前記光軸方向から見たときの前記レンズ駆動装置の一方の対角線上の2個の角部である第1角部のそれぞれに配置され、
前記付勢用磁石は、前記可動体の、互いに略直交する2つの側面であって、かつ、前記第1角部の一方を挟んで配置される2つの側面のそれぞれに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記駆動用磁石は、略三角柱状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記レンズ駆動装置の他方の対角線上の2個の角部である第2角部のそれぞれに配置され、
前記付勢用磁石は、前記第1角部よりも前記第2角部に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項2または3記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は、円柱状に形成されるガイド軸であり、
前記可動体には、前記ガイド軸が挿通される2個のガイド孔が形成され、
一方の前記ガイド孔は、前記光軸方向から見たときの形状が円形状となる丸孔状に形成され、
他方の前記ガイド孔は、前記光軸方向から見たときの形状が前記他方の対角線の方向に長い長円形状となる長孔状に形成されていることを特徴とする請求項4記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記光軸方向における前記可動体の位置を検出するための位置センサを備え、
前記位置センサでの検出結果に基づいて前記駆動用コイルに供給される電流がフィードバック制御されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
前記可動体の可動範囲において、前記付勢用磁石と前記カバー部材との対向面積、および、前記駆動用磁石と前記カバー部材との対向面積が一定であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
前記可動体の側面には、前記付勢用磁石を固定するための固定用溝が形成され、
前記光軸方向における前記固定用溝の長さは、前記光軸方向における前記付勢用磁石の長さよりも長いことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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