説明

レーザ光源装置

【課題】組み付け後の波長変換素子の角度調整を不要にして、構造の簡素化により製造コストの削減を図ることができるようにする。
【解決手段】波長変換素子35を支持する基台38に設けられた素子保持部55に、波長変換素子を位置決めする取付基準面62を、光軸に対して平行に形成する。そして、波長変換素子を、略平行六面体に形成し、その入射面35aおよび出射面35bに隣接する4つの面の1つである底面35fを取付基準面に当接させて、分極反転領域の深さ方向が光軸と略直交し、且つ入射面および出射面が光軸方向に直交する平面に対して所定の傾斜角度θで傾斜するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを用いたレーザ光源装置に関し、特に画像表示装置の光源に用いられるレーザ光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、ならびに小型化が容易である点など、種々の利点を有している。
【0003】
このような画像表示装置に用いられるレーザ光源装置においては、緑色レーザ光を直接出力する半導体レーザに高出力のものがないため、半導体レーザから励起用レーザ光を出力させ、この励起用レーザ光で固体レーザ素子を励起させて赤外レーザ光を出力させ、この赤外レーザ光の波長を波長変換素子で変換して緑色レーザ光を出力するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−16833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような構成の緑色レーザ光源装置においては、レーザ光の光軸に対する波長変換素子の角度に応じてレーザ光の出力が変化するため、出力が最大となる角度に波長変換素子を配置することが望ましい。これには、組み付け後に、出力を監視しながら波長変換素子の角度を調整することができる構成とするとよいが、この場合、構造が複雑化して製造コストが嵩むという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、組み付け後の波長変換素子の角度調整を不要にして、構造の簡素化により製造コストの削減を図ることができるように構成されたレーザ光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザ光源装置は、分極反転領域が周期的に形成された波長変換素子と、この波長変換素子を保持する素子保持部を介して前記波長変換素子を支持する基台と、を有し、前記素子保持部には、前記波長変換素子を位置決めする取付基準面が、光軸に対して平行に形成され、前記波長変換素子は、略平行六面体に形成され、その入射面および出射面に隣接する4つの面の1つを前記取付基準面に当接させて、分極反転領域の深さ方向が光軸と略直交し、且つ前記入射面および前記出射面が光軸方向に直交する平面に対して所定の傾斜角度で傾斜するように配置された構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、波長変換素子が、取付基準面に当接して、その入射面および出射面が光軸方向に直交する平面に対して所定の傾斜角度で傾斜した状態に配置されるため、組み付け後に波長変換素子の角度を調整する必要がなくなる。このため、構造の簡素化により製造コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置1の概略構成図
【図2】緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図
【図3】緑色レーザ光源装置2の斜視図
【図4】緑色レーザ光源装置2の模式的な断面図
【図5】波長変換素子35の斜視図
【図6】波長変換素子35の製造工程を示す模式図
【図7】光軸方向に直交する平面に対する入射面35aおよび出射面35bの傾斜角度θに応じた波長変換効率ηの変化状況を示す図
【図8】素子保持部55の斜視図
【図9】本発明の第1の実施形態の変形例に係る素子保持部91を示す斜視図
【図10】素子保持部91の断面図
【図11】本発明の第2の実施形態に係る緑色レーザ光源装置101の斜視図
【図12】波長変換素子35の製造工程を示す模式図
【図13】本発明の第2の実施形態の変形例に係る素子アセンブリ121を示す斜視図
【図14】本発明の第3の実施形態に係る緑色レーザ光源装置131の斜視図
【図15】素子アセンブリ134の製造工程を示す模式図
【図16】本発明の第3の実施形態の変形例に係る、素子アセンブリ151を示す斜視図
【図17】本画像表示装置1をノート型の情報処理装置161に内蔵した例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、分極反転領域が周期的に形成された波長変換素子と、この波長変換素子を保持する素子保持部を介して前記波長変換素子を支持する基台と、を有し、前記素子保持部には、前記波長変換素子を位置決めする取付基準面が、光軸に対して平行に形成され、前記波長変換素子は、略平行六面体に形成され、その入射面および出射面に隣接する4つの面の1つを前記取付基準面に当接させて、分極反転領域の深さ方向が光軸と略直交し、且つ前記入射面および前記出射面が光軸方向に直交する平面に対して所定の傾斜角度で傾斜するように配置された構成とする。
【0011】
これによると、波長変換素子が、取付基準面に当接して、その入射面および出射面が光軸方向に直交する平面に対して所定の傾斜角度で傾斜した状態に配置されるため、組み付け後に波長変換素子の角度を調整する必要がなくなる。このため、構造の簡素化により製造コストの削減を図ることができる。
【0012】
なお、波長変換素子の入射面および出射面を、光軸方向に直交する平面に対して傾斜させることで、入射面および出射面でのレーザ光の屈折により、レーザ光の進路をずらして、レーザ光の干渉による出力の低下を避けることができ、レーザ光の出力が最大となるように、光軸方向に直交する平面に対する入射面および出射面の傾斜角度が設定される。
【0013】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記波長変換素子は、分極反転領域の深さ方向に対して略平行となる2つの面の一方を前記取付基準面に当接させて位置決めされるようにした構成とする。
【0014】
また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記波長変換素子は、分極反転領域の深さ方向に対して略直交する2つの面の一方を前記取付基準面に当接させて位置決めされるようにした構成とする。
【0015】
また、第4の発明は、前記第3の発明において、前記波長変換素子において前記素子保持部と相反する側の面に当接するカバー部を有し、前記素子保持部および前記カバー部が、導電性を有する材料にて形成されるとともに導体で互いに電気的に接続された構成とする。
【0016】
これによると、波長変換素子において分極反転領域の深さ方向に相対する2つの面が電気的に接続されるため、その2つの面を同一の電位に維持して、分極反転のチャージアップによる屈折率の変化を抑えることができる。
【0017】
また、第5の発明は、前記第1乃至第4の発明において、励起用レーザ光により励起されて基本波長レーザ光を出力する固体レーザ素子を有し、前記取付基準面は、前記波長変換素子とともに前記固体レーザ素子を位置決めし、前記固体レーザ素子は、略直方体に形成され、その入射面および出射面に隣接する4つの面の1つを前記取付基準面に当接させて、前記入射面および前記出射面が光軸方向に対して直交するように配置された構成とする。
【0018】
これによると、波長変換素子と固体レーザ素子とが同一の取付基準面で位置決めされて一体化されるため、組み付け後に波長変換素子および固体レーザ素子の相対位置を調整する手間を省いて工数を削減することができる。
【0019】
また、第6の発明は、前記第5の発明において、前記波長変換素子と前記固体レーザ素子と前記素子保持部とが互いに固着されて一体化された素子アセンブリを有し、この素子アセンブリは、前記波長変換素子の素材と前記固体レーザ素子の素材と前記素子保持部の素材とを互いに固着した上で同時に切断して得られる構成とする。
【0020】
これによると、素子保持部に波長変換素子および固体レーザ素子を個別に取り付ける手間を省いて工数を削減することができる。また、波長変換素子および固体レーザ素子が比較的大きな寸法を有する素材の状態で素子保持部の素材に取り付けられるため、波長変換素子および固体レーザ素子の取付精度を高めることができる。
【0021】
また、第7の発明は、前記第6の発明において、前記素子保持部は、その素材を切断した際の切断面を前記基台に当接させて固定された構成とする。
【0022】
これによると、素子保持部の素材の厚さを大きくすることで、切断面の寸法を大きくして、接合面積を大きく確保することができ、これにより素子アセンブリの取付精度を高めることができる。
【0023】
また、第8の発明は、前記第1乃至第7の発明において、前記波長変換素子において前記素子保持部と相反する側の面に当接するカバー部を有し、前記素子保持部および前記カバー部が、熱抵抗の小さな材料にて形成された構成とする。
【0024】
これによると、波長変換素子の発熱を外部に逃がす放熱性を高めることができる。特にカバー部が波長変換素子とともに固体レーザ素子に接するものであれば、固体レーザ素子の発熱を外部に逃がす放熱性も高めることができる。
【0025】
また、第9の発明は、前記第1乃至第8の発明において、前記素子保持部は、前記波長変換素子が当接する面と相反する側に放熱フィンを備えた構成とする。
【0026】
これによると、波長変換素子の発熱を外部に逃がす放熱性を高めることができる。特に素子保持部が波長変換素子とともに固体レーザ素子に接するものであれば、固体レーザ素子の発熱を外部に逃がす放熱性も高めることができる。
【0027】
また、第10の発明は、前記第1乃至第9の発明において、前記波長変換素子における光軸方向に直交する平面に対する前記入射面および出射面の傾斜角度が0.6±0.4度の範囲に設定された構成とする。
【0028】
これによると、波長変換素子の波長変換効率が高くなり、レーザ光の出力を高めることができる。
【0029】
また、第11の発明は、前記第1乃至第10の発明において、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、この半導体レーザから出力される励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と、を有し、前記波長変換素子は、前記固体レーザ素子から出力される赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力するものである構成とする。
【0030】
これによると、高出力の緑色レーザ光を出力することができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置1の概略構成図である。この画像表示装置1は、所要の画像をスクリーンに投影表示するものであり、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置2と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置3と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置4と、映像信号に応じて各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の空間光変調器5と、各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光を反射させて空間光変調器5に照射させるとともに空間光変調器5から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ6と、各レーザ光源装置2〜4から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ6に導くリレー光学系7と、偏光ビームスプリッタ6を透過した変調レーザ光をスクリーンに投射する投射光学系8と、を備えている。
【0033】
この画像表示装置1は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置2〜4から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0034】
リレー光学系7は、各レーザ光源装置2〜4から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ11〜13と、コリメータレンズ11〜13を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー14,15と、ダイクロイックミラー14,15により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板16と、拡散板16を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ17と、を備えている。
【0035】
投射光学系8からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置4から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置2および赤色レーザ光源装置3から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー14,15で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー14で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー15で同一の光路に導かれる。
【0036】
第1および第2のダイクロイックミラー14,15は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー14は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー15は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0037】
これらの各光学部材は、筐体21に支持されている。この筐体21は、各レーザ光源装置2〜4で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0038】
緑色レーザ光源装置2は、側方に向けて突出した状態で筐体21に形成された取付部22に取り付けられている。この取付部22は、リレー光学系7の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部23と側壁部24とが交わる角部から側壁部24に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置3は、ホルダ25に保持された状態で側壁部24の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置4は、ホルダ26に保持された状態で前壁部23の外面側に取り付けられている。
【0039】
赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、ホルダ25,26に開設された取付孔27,28に圧入するなどしてホルダ25,26に対して固定される。青色レーザ光源装置4および赤色レーザ光源装置3のレーザチップの発熱は、ホルダ25,26を介して筐体21に伝達されて放熱され、各ホルダ25,26は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0040】
緑色レーザ光源装置2は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ31と、半導体レーザ31から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ32およびロッドレンズ33と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子34と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子35と、固体レーザ素子34とともに共振器を構成する凹面ミラー36と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー37と、各部を支持する基台38と、各部を覆うカバー体39と、を備えている。
【0041】
この緑色レーザ光源装置2は、基台38を筐体21の取付部22に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置2と筐体21の側壁部24との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置2の熱が赤色レーザ光源装置3に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置3の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置3を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置3の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置2と赤色レーザ光源装置3との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0042】
図2は、緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ31のレーザチップ41は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ32は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ33は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0043】
固体レーザ素子34は、ロッドレンズ33を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子34は、Y(イットリウム)VO(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVOのYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0044】
固体レーザ素子34におけるロッドレンズ33に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜42が形成されている。固体レーザ素子34における波長変換素子35に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜43が形成されている。
【0045】
波長変換素子35は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子34から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。
【0046】
波長変換素子35における固体レーザ素子34に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜44が形成されている。波長変換素子35における凹面ミラー36に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜45が形成されている。
【0047】
凹面ミラー36は、波長変換素子35に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜46が形成されている。これにより、固体レーザ素子34の膜42と凹面ミラー36の膜46との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0048】
波長変換素子35では、固体レーザ素子34から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子35を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー36で反射されて波長変換素子35に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子35の膜44で反射されて波長変換素子35から出射される。
【0049】
ここで、固体レーザ素子34から波長変換素子35に入射して波長変換素子35で波長変換されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー36で一旦反射されて波長変換素子35に入射して膜44で反射されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0050】
そこでここでは、波長変換素子35の入射面35aおよび出射面35bを、光軸方向に直交する平面に対して傾斜させて、入射面35aおよび出射面35bでの屈折作用により、レーザ光のビームB1,B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0051】
なお、図1に示したガラスカバー37には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0052】
図3は、緑色レーザ光源装置2の斜視図である。図4は、緑色レーザ光源装置2の模式的な断面図である。
【0053】
図3および図4に示すように、半導体レーザ31、FACレンズ32、ロッドレンズ33、固体レーザ素子34、波長変換素子35、および凹面ミラー36は、基台38に一体的に支持されている。基台38の底面51は光軸方向に対して平行となる。なおここでは、基台38の底面51に対して直交する方向を高さ方向とし、この高さ方向および光軸方向に対して直交する方向を幅方向とする。また、基台38の底面51に近接する側を下、底面51と相反する側を上として説明するが、これは実際の装置の上下方向と必ずしも一致するものではない。
【0054】
半導体レーザ31は、レーザ光を出力するレーザチップ41をマウント部材52に実装したものである。レーザチップ41は、光軸方向に長い帯板状をなし、光出射面をFACレンズ32側に向けた状態で、板状をなすマウント部材52の一面の幅方向の略中心位置に固着されている。この半導体レーザ31は、取付部材53を介して基台38に固定される。この取付部材53は、銅あるいはアルミ等の熱伝導性の高い金属で形成されており、これによりレーザチップ41の発熱が基台38に伝達されて放熱することができる。
【0055】
FACレンズ32およびロッドレンズ33は、集光レンズホルダ54に保持される。この集光レンズホルダ54は、光軸方向に移動可能に基台38に支持されており、集光レンズホルダ54、すなわちFACレンズ32およびロッドレンズ33の位置が、光軸方向に調整される。FACレンズ32およびロッドレンズ33は位置調整作業の前に集光レンズホルダ54に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、集光レンズホルダ54と基台38とが接着剤で互いに固定される。
【0056】
固体レーザ素子34および波長変換素子35は、基台38に一体的に形成された素子保持部55に保持される。素子保持部55には、固体レーザ素子34および波長変換素子35を収容する素子収容部56が溝状に形成されており、素子収容部56の内面と固体レーザ素子34および波長変換素子35との間に接着剤を装填して、固体レーザ素子34および波長変換素子35が素子保持部55に固定される。この素子保持部55については後に詳しく説明する。なお、素子保持部55は、基台38と別体に形成された上で基台38に固定される構成としてもよい。
【0057】
凹面ミラー36は、基台38に一体的に形成された凹面ミラー支持部59に支持される。
【0058】
なお、前記の各部材、例えば固体レーザ素子34および波長変換素子35と素子保持部55との固定に用いる接着剤は、例えばUV硬化型接着剤が好適である。
【0059】
図5は、波長変換素子35の斜視図である。図6は、波長変換素子35の製造工程を示す模式図である。
【0060】
図5に示すように、波長変換素子35は、略直方体状をなし、強誘電体結晶に分極反転領域71と非分極反転領域72とが交互に形成された、周期的な分極反転構造を備えたものであり、分極反転周期方向(分極反転領域71の配列方向)に基本波長レーザ光を入射させる。これにより、擬似位相整合による入射光の第2次高調波発生で2倍の周波数、すなわち1/2の波長のレーザ光を得ることができる。強誘電体結晶には、例えばLN(ニオブ酸リチウム)にMgOを添加したものが用いられる。
【0061】
周期的な分極反転構造を形成するには、周期電極73と対向電極74を用いて、単分極した強誘電体結晶に分極方向と逆方向の電界を印加する。すると、周期電極73に対応する部分の分極方向が反転し、分極反転領域71が周期電極73から対向電極74に向けて楔形状に形成される。
【0062】
実際には、図6に示すプロセスで波長変換素子35が製作される。まず、強誘電体結晶からなるウエハー75に電極薄膜を積層し、ついでフォトリソグラフィおよびエッチングにより電極パターンを形成する。次に、電極パターンが形成されたウエハー75から基板76を切り出し、さらに適当な大きさに切断する。これにより得られた短冊状のスタック77に対して、電極を用いて電圧を印加する分極反転処理を実施して、スタック77に分極反転構造を形成する。また、波長変換素子35の入射面35aおよび出射面35bとなるスタック77の端面78,79を光学研磨する。そして、スタック77から1つの波長変換素子35となるチップを切り出す。
【0063】
このように比較的大きな寸法であるスタック77の段階で光学研磨を行うため、スタック77を確実に位置決めして光学研磨を行うことができ、これにより入射面35aおよび出射面35bの平面度および平行度を高精度に確保することができる。
【0064】
またここでは、基板76からスタック77を切り出す際に、電極パターン80の延在方向に対して切り出し線を所定の傾斜角度αで傾斜させている。一方、スタック77から波長変換素子35を切り出す際には、電極パターン80の延在方向に対して切り出し線を直交させている。これにより、入射面35aおよび出射面35bが、切断面である頂面35eおよび底面35fに直交する平面に対して傾斜角度αで傾斜した状態となり、また分極反転領域の延在方向が頂面35eおよび底面35fに直交する向きとなる。なお、精度が不足する場合には、研磨を行うようにしてもよい。
【0065】
このようにして製作された波長変換素子35は、3組の平行平面のうち、1組の平行平面のみが平行四辺形(長方形を除く)をなし、残る2組の平行平面が長方形をなす平行六面体となる。具体的には、分極反転領域の深さ方向に相対する2つの側面35c,35dが平行四辺形をなし、他の面、すなわち入射面35aおよび出射面35bと、分極反転領域の延在方向に相対する頂面35eおよび底面35fは、長方形をなす。なお、入射面35aと出射面35bとは精密に平行となるが、2つの側面35c,35d同士、および頂面35eと底面35fとは必ずしも精密に平行とはなっていない。
【0066】
なお、図5では、説明の便宜上、波長変換素子35の側面35c,35dに周期電極73および対向電極74を図示したが、この周期電極73および対向電極74は、スタックの段階で研磨により削除される。
【0067】
図7は、光軸方向に直交する平面に対する入射面35aおよび出射面35bの傾斜角度θに応じた波長変換効率ηの変化状況を示す図である。波長変換素子35の波長変換効率ηは、光軸方向に直交する平面に対する入射面35aおよび出射面35bの傾斜角度θに応じて変化し、入射面35aおよび出射面35bが傾斜していない状態(θ=0)では波長変換効率ηが低く、入射面35aおよび出射面35bを傾斜させることで波長変換効率ηを高めることができる。
【0068】
これは、傾斜角度θが0の場合、図2に示したように、レーザ光のビームB1,B2が互いに重なり合うことで、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こすことによるためであり、入射面35aおよび出射面35bを傾斜させることで、入射面35aおよび出射面35bでの屈折作用により、レーザ光のビームB1,B2がずれるため、干渉による出力低下を傾けることができる。
【0069】
特にここでは、図4に示したように、波長変換素子35の入射面35aおよび出射面35bが光軸方向に直交する平面に対して傾斜するように形成され、この入射面35aおよび出射面35bの傾斜角度θが、図7に示した波長変換効率のピーク点(ここではθ=±0.6度)を中心にした所要の範囲(例えば±0.4度)の高効率領域に入るように、波長変換素子35の製作精度および取付精度を確保する。
【0070】
また、図5に示したように、分極反転領域71は、深さ方向に沿って厚さが次第に小さくなる楔形状をなし、入射するレーザ光に対する、分極反転領域71の深さ方向に関する波長変換素子35の位置が変化すると、レーザ光の光路上に位置する分極反転領域71と非分極反転領域72との割合が変化し、これに応じて波長変換効率が変化する。そこで、波長変換効率が最高となる、すなわちレーザ光の出力が最大となるように、分極反転領域71の深さ方向に関する波長変換素子35の位置が設定される。
【0071】
ここで、図示する例とは逆に、分極反転領域の延在方向に相対する2つの面35e,35fを平行四辺形とする構成も考えられるが、図示する例のように、分極反転領域の深さ方向に相対する2つの面35c,35dを平行四辺形とすると、図2に示したレーザ光のビームB1,B2が、分極反転領域の深さ方向に関して同一位置で、分極反転領域の延在方向にずれた位置を通過するようになる。このため、分極反転領域の深さ方向に関する波長変換素子35の位置を適切に設定することで、レーザ光のビームB1,B2がともに波長変換効率が最高となる位置を通過するようになり、レーザ光の出力を高めることができる。
【0072】
図8は、素子保持部55の斜視図である。固体レーザ素子34および波長変換素子35を保持する素子保持部55の素子収容部56内には、固体レーザ素子34および波長変換素子35を位置決めする取付基準面62が、光軸に対して平行となる平面に形成されている。
【0073】
固体レーザ素子34は、略直方体に形成され、入射面34aおよび出射面34bに隣接する4つの面34c,34d,34e,34fのうちの底面34fを取付基準面62に当接させて位置決めされる。波長変換素子35は、略平行六面体に形成され、入射面35aおよび出射面35bに隣接する4つの面35c,35d,35e,35fのうち、分極反転領域の深さ方向に対して平行となる2つの面35e,35fの一方の底面35fを取付基準面62に当接させて位置決めされる。
【0074】
組み立てる際には、固体レーザ素子34および波長変換素子35を、底面34f,35fと相反する側から治具で押圧して、底面34f,35fを取付基準面62に密着させ、この状態で素子収容部56の内面と固体レーザ素子34および波長変換素子35との間に接着剤を装填し、接着剤を硬化させることで、固体レーザ素子34および波長変換素子35が素子保持部55に固定される。
【0075】
特に波長変換素子35の側面35c,35dに装填される接着剤には導電性接着剤が用いられ、また、素子保持部55は金属材料などの導電性材料で形成されている。これにより、波長変換素子35の側面35c,35d同士が電気的に接続され、側面35c,35dを同一の電位に維持して、チャージアップによる屈折率の変化を抑えることができる。
【0076】
このように構成された素子保持部55では、固体レーザ素子34および波長変換素子35が、同一の取付基準面62で位置決めされて一体化される。このため、組み付け後に固体レーザ素子34および波長変換素子35の相対位置を調整する手間が不要となり、工数を削減することができる。
【0077】
なお、波長変換素子35の側面35c,35dは、図6に示したように、電極パターン80が形成されたウエハー75の表裏両面であり、分極反転領域の深さ方向に相対し、この側面35c,35dが光軸に対して略平行となるように波長変換素子35を配置することで、分極反転領域の深さ方向が光軸と略直交する状態となり、波長変換が適切に行われる。
【0078】
(第1の実施形態の変形例)
図9は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る素子保持部91を示す斜視図である。図10は、素子保持部91の断面図である。なお、特に言及しない部分の構成は第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0079】
ここでは、図9に示すように、固体レーザ素子34および波長変換素子35を保持する素子保持部91の素子収容部92内に、固体レーザ素子34および波長変換素子35を位置決めする取付基準面93が、光軸に対して平行となるように形成されている。図4および図8に示した例では、基台38の底面51に対して平行となる向きの内面が取付基準面62となっていたが、ここでは基台38の底面51に対して直交する向きの内面が取付基準面93となっている。
【0080】
固体レーザ素子34は、略直方体に形成され、入射面34aおよび出射面34bに隣接する4つの面34c,34d,34e,34fのうちの側面34dを取付基準面93に当接させて位置決めされる。波長変換素子35は、略平行六面体に形成され、入射面35aおよび出射面35bに隣接する4つの面35c,35d,35e,35fのうち、分極反転領域の深さ方向に対して略直交する2つの面35c,35dの一方の側面35dを取付基準面93に当接させて位置決めされる。
【0081】
組み立てる際には、固体レーザ素子34および波長変換素子35を、側面34d,35dと相反する側から治具で押圧して、側面34d,35dを取付基準面93に密着させ、この状態で素子収容部92の内面と固体レーザ素子34および波長変換素子35との間に接着剤を装填し、接着剤を硬化させることで、固体レーザ素子34および波長変換素子35が素子保持部91に固定される。
【0082】
図10に示すように、素子保持部91には、波長変換素子35の側面35c,35dに対向する位置に接着剤装填用の凹部95が形成されており、この凹部95に導電性接着剤96が装填される。また、素子保持部91は金属材料などの導電性材料にて形成されている。これにより、波長変換素子35の側面35c,35d同士が電気的に接続され、側面35c,35dを同一の電位に維持して、分極反転のチャージアップによる屈折率の変化を抑えることができる。なお、取付基準面93と相反する側において素子収容部92の内面と波長変換素子35との間に形成される隙間には、素子保持部91と波長変換素子35とを固定する接着剤97が装填される。
【0083】
なお、図8に示した第1の実施形態と図9に示した変形例とを組み合わせる、すなわち基台38の底面51に対して平行となる向きの取付基準面62と、基台38の底面51に対して直交する向きの取付基準面93との双方を有する構成も可能である。この場合、固体レーザ素子34および波長変換素子35の底面34f,35fを取付基準面62に当接させると同時に、固体レーザ素子34および波長変換素子35の側面34d,35dを取付基準面93に当接させることで、固体レーザ素子34および波長変換素子35が2方向で位置決めされる。
【0084】
この構成では、固体レーザ素子34の製作工程で、入射面34aおよび出射面34bに隣接する2つの面の角度を管理し、また波長変換素子35の製作工程で、入射面35aおよび出射面35bに隣接する2つの面の角度を管理する必要があるが、固体レーザ素子34および波長変換素子35の組付工程では、固体レーザ素子34および波長変換素子35が2方向で位置決めされるため、治具による固体レーザ素子34および波長変換素子35の取付角度の精度を管理する手間を省くことができる。
【0085】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態に係る緑色レーザ光源装置101の斜視図である。図12は、波長変換素子35の製造工程を示す模式図である。なお、特に言及しない部分の構成は第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0086】
ここでは、図11に示すように、固体レーザ素子34および波長変換素子35が、これを保持する平板状をなす素子保持部102で一体化されて、素子アセンブリ103を構成している。素子保持部102は、横置き配置された基台104上に立設状態で固定されている。
【0087】
FACレンズ32およびロッドレンズ33は、集光レンズ保持体105に保持され、この集光レンズ保持体105は基台104に支持されている。半導体レーザ31は、取付部材53を介して基台104に支持されている。
【0088】
素子保持部102においては、その一方の面が、固体レーザ素子34および波長変換素子35を同時に位置決めする取付基準面106となる。固体レーザ素子34は、略直方体に形成され、入射面34aおよび出射面34bに隣接する4つの面34c,34d,34e,34fのうちの側面34dを取付基準面106に当接させて位置決めされる。波長変換素子35は、略平行六面体に形成され、入射面35aおよび出射面35bに隣接する4つの面35c,35d,35e,35fのうち、分極反転領域の深さ方向に対して略直交する2つの側面35c,35dの一方の側面35dを取付基準面106に当接させて位置決めされる。
【0089】
固体レーザ素子34および波長変換素子35は接着剤107で素子保持部102に固着されて一体化される。組み立てる際には、固体レーザ素子34および波長変換素子35を、各々の側面34d,35dと相反する側から治具で押圧して、側面34d,35dを取付基準面106に密着させ、この状態で接着剤107を硬化させることで、素子保持部102に固体レーザ素子34および波長変換素子35が固定される。
【0090】
特にここでは、固体レーザ素子34および波長変換素子35における素子保持部102と相反する側の面に当接するカバー部108が設けられている。このカバー部108は、接着剤107で固体レーザ素子34および波長変換素子35と固着される。なお、組み立て時には、固体レーザ素子34および波長変換素子35を、素子保持部102とカバー部108とで挟み込んだ状態で接着剤107を硬化させて、固体レーザ素子34と波長変換素子35と素子保持部102とカバー部108とを同時に固定するようにしてもよい。
【0091】
素子保持部102およびカバー部108は、熱抵抗が小さい金属材料、例えば銅やアルミニウムあるいはこれらを主体とした合金などで形成されている。これにより、固体レーザ素子34および波長変換素子35の発熱を基台104に逃して放熱する際の放熱性を高めることができる。固体レーザ素子34および波長変換素子35は、温度の上昇に伴って効率が低下するため、放熱性を高めることで、温度の上昇に伴う効率低下を抑えることができる。
【0092】
また、素子保持部102およびカバー部108は導電性を有し、接着剤107には導電性接着剤が用いられ、素子保持部102およびカバー部108が連結される基台104は、金属材料などの導電性材料で形成され、素子保持部102とカバー部108とを電気的に接続する導体として機能する。これにより、波長変換素子35の側面35c,35d同士が電気的に接続され、側面35c,35dを同一の電位に維持して、分極反転のチャージアップによる屈折率の変化を抑えることができる。
【0093】
固体レーザ素子34および波長変換素子35を素子保持部102に組み付けるにあたっては、ボンディング装置(ダイボンダー)を用いるとよい。これにより、固体レーザ素子34および波長変換素子35を素子保持部102上に高精度に実装することができる。
【0094】
なお、前記のように、分極反転領域の深さ方向に関する波長変換素子35の位置に応じて波長変換効率が変化するため、レーザ光の出力を高めるために、分極反転領域の深さ方向に関する波長変換素子35の位置を調整することができるようにするとよいが、このような要望に対しては、素子アセンブリ103を基台104に対して幅方向に移動可能に構成すればよい。
【0095】
また、図8に示した第1の実施形態では、波長変換素子35において、分極反転領域の延在方向が、入射面35aおよび出射面35bに対して傾斜し、頂面35eおよび底面35fに対して直交する、すなわち光軸方向に対して直交していたが、図11に示す第2の実施形態では、分極反転領域の延在方向が、入射面35aおよび出射面35bと平行となり、光軸方向に直交する平面に対して傾斜した形態となっている。このような形態の波長変換素子35は、図12に示すプロセスで製作することができる。
【0096】
ここでは、スタック77から波長変換素子35を切り出す際に、電極パターン80の延在方向に直交する向きに対して切り出し線を所定の傾斜角度βで傾斜させている。この傾斜角度βは、光軸方向に直交する平面に対する入射面35aおよび出射面35bの傾斜角度θ(例えば0.6±0.4度)と同一である。一方、基板76からスタック77を切り出す際には、電極パターン80の延在方向に対して切り出し線を直交させている。これにより、入射面35aおよび出射面35bが、切断面である頂面35eおよび底面35fに直交する平面に対して傾斜した状態となり、また電極パターン80に沿って形成される分極反転領域71の延在方向が、頂面35eおよび底面35fに直交せず、入射面35aおよび出射面35bと平行となる。
【0097】
(第2の実施形態の変形例)
図13は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る素子アセンブリ121を示す斜視図である。なお、特に言及しない部分の構成は第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0098】
ここでは、図11に示した第2の実施形態と同様に、固体レーザ素子34および波長変換素子35を保持する素子保持部122が、横置き配置された基台104上に立設状態で固定されているが、特にここでは、素子保持部122の裏面側、すなわち固体レーザ素子34および波長変換素子35と相反する側に、放熱フィン123が設けられている。これにより、素子保持部122からの放熱が促進され、放熱性を高めることができる。
【0099】
(第3の実施形態)
図14は、本発明の第3の実施形態に係る緑色レーザ光源装置131の斜視図である。図15は、素子アセンブリ134の製造工程を示す模式図である。なお、特に言及しない部分の構成は第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0100】
図14に示すように、この緑色レーザ光源装置131では、第2の実施形態と同様に、固体レーザ素子34および波長変換素子35を素子保持部132に接着剤133で固着して一体化した素子アセンブリ134を有しているが、この素子アセンブリ134は、図15に示すように、固体レーザ素子34のスタック141と波長変換素子35のスタック142とを素子保持部132の元になる1枚の基板143に固着して、固体レーザ素子34のスタック141と波長変換素子35のスタック142と基板143とを同時に切断することで得られる。
【0101】
固体レーザ素子34のスタック141は、入射面34aおよび出射面34bとなる端面144,145が互いに平行となるように研磨されており、波長変換素子35のスタック142も、入射面35aおよび出射面35bとなる端面146,147が互いに平行となるように研磨されている。なお、波長変換素子35のスタック142は、図12に示した例と同様に、端面146,147が電極パターン80の延在方向に平行となるように切り出されたものである。
【0102】
基板143は、銅やアルミニウムなどからなる平板材であり、この基板143上に、固体レーザ素子34のスタック141および波長変換素子35のスタック142がボンディング実装される。このとき、固体レーザ素子34のスタック141の端面144,145に対して、波長変換素子35のスタック142の端面146,147が、所定の傾斜角度γで傾斜するように取り付けられる。そして、固体レーザ素子34のスタック141の端面144,145に直交する切断線で切断される。
【0103】
波長変換素子35のスタック142の傾斜角度γは、光軸方向に直交する平面に対する入射面35aおよび出射面35bの傾斜角度θ(例えば0.6±0.4度)と同一であり、図14に示したように、素子保持部132の切断面132a,132b、固体レーザ素子34の頂面34eおよび底面34f、および波長変換素子35の頂面35eおよび底面35fが、光軸方向に対して平行となるように、素子アセンブリ134を基台135に配置すると、波長変換素子35の入射面34aおよび出射面34bが光軸方向に対して直交し、波長変換素子35の入射面35aおよび出射面35bが光軸方向に直交する平面に対して所定の傾斜角度θで傾斜した状態となる。
【0104】
このように固体レーザ素子34のスタック141と波長変換素子35のスタック142とを素子保持部132の元になる基板143で一体化した上で切断するため、素子保持部132に固体レーザ素子34および波長変換素子35を個別に取り付ける手間がなくなり、工数を削減することができる。また、固体レーザ素子34および波長変換素子35は、比較的大きな寸法のスタック141,142の状態で基板143に取り付けられるため、素子保持部132に対する固体レーザ素子34および波長変換素子35の取付精度を高めることができる。
【0105】
なお、図14に示した例では、図11に示した第2の実施形態と同様に、固体レーザ素子34および波長変換素子35における素子保持部132と相反する側の面に当接するカバー部136が設けられているが、この場合、カバー部136の元になる基板を、図15に示したように、素子保持部132の元になる基板143とともに、固体レーザ素子34のスタック141および波長変換素子35のスタック142に固着して、まとめて切断するようにすると、工数を削減することができる。
【0106】
また、図14に示したように、この第3の実施形態は、素子アセンブリ134と基台135との位置関係が、図11に示した第2の実施形態と異なっている。すなわち、図11に示した第2の実施形態では、基台104が横置き配置されて、この基台104に対して素子保持部102が立設状態で固定されていたが、図14に示した第3の実施形態では、基台135が縦置き配置されて、この基台135に対して、固体レーザ素子34および波長変換素子35と相反する側の素子保持部132の面132cを基台135の面135aに当接させて、素子アセンブリ134が基台135に固定されている。
【0107】
FACレンズ32およびロッドレンズ33は、基台135に支持される集光レンズ保持体137に保持されて、固体レーザ素子34および波長変換素子35とともに基台135に一体的に支持されている。半導体レーザ31は基台135に支持させてもよいが、別にあるベース部材に基台135とともに支持させてもよい。
【0108】
ここで、半導体レーザ31に対して基台135を幅方向に移動可能に構成することで、分極反転領域の深さ方向に関する波長変換素子35の位置を波長変換効率が最高となるように調整することができる。また、FACレンズ32およびロッドレンズ33の集光レンズ保持体137を基台135に対して光軸方向および高さ方向に移動可能に構成することで、半導体レーザ31に対するFACレンズ32の離間距離および高さ位置を調整することができる。
【0109】
(第3の実施形態の変形例)
図16は、本発明の第3の実施形態の変形例に係る、素子アセンブリ151を示す斜視図である。なお、特に言及しない部分の構成は第1の実施形態と同様であり、その説明は省略する。
【0110】
図15に示したように、固体レーザ素子34のスタック141と波長変換素子35のスタック142と基板143とを同時に切断して素子アセンブリ134を得る場合、固体レーザ素子34および波長変換素子35の高さ方向の寸法に合わせて、素子保持部132の高さ方向の寸法が小さくなる。このため、図14に示したように、縦置き配置された基台135に対して、固体レーザ素子34および波長変換素子35が当接する取付基準面138と相反する側の素子保持部132の面132cを当接させて固定すると、接合面積を十分に大きく確保することができないため、素子アセンブリ134の取付精度が低下するおそれがある。
【0111】
そこで、図16に示すように、素子保持部152の幅方向の寸法を大きくする。これには、素子保持部152の元になる基板の厚さを大きくすればよい。そして、素子保持部152の元になる基板を切断した際の切断面である下面152aを、基台153の上面153aに当接させて、素子保持部152を基台153に固定する。これにより接合面積を大きく確保することができるため、素子アセンブリ151の取付精度を高めることができる。
【0112】
また、素子保持部152の下面152aおよび基台153の上面153aは、波長変換素子35の分極反転領域の深さ方向に平行となり、素子保持部152の下面152aを基台153の上面153a上で摺動させることで、波長変換素子35を分極反転領域の深さ方向に移動させることができ、これにより波長変換効率が最高となるように波長変換素子35の位置を調整することができる。なお、位置調整時に、波長変換素子35の光軸方向の位置がずれないように、素子保持部152および基台153に、ガイド溝などの適宜な規制手段を設けるとよい。
【0113】
図17は、本画像表示装置1をノート型の情報処理装置161に内蔵した例を示す斜視図である。情報処理装置161の筐体162には、画像表示装置1が出没自在に格納される収容スペースが、キーボードの裏面側に形成されており、不使用時には画像表示装置1が筐体162内に収容され、使用時には画像表示装置1が筐体162から引き出されて、画像表示装置1を回動自在に支持するベース部163に対して画像表示装置1を所要の角度に回動させることで、画像表示装置1からのレーザ光をスクリーンに投射させることができる。
【0114】
なお、前記の例では、緑色レーザ光源装置2のレーザチップ41、固体レーザ素子34、および波長変換素子35がそれぞれ、波長808nmの励起用レーザ光、波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)、および波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。最終的に緑色レーザ光源装置2から出力されるレーザ光が緑色と認識できるものであればよく、例えばピーク波長が500nm〜560nmの範囲となる波長領域のレーザ光を出力するようにするとよい。
【0115】
また、前記の各例では、図8,図9,図11,図14に示したように、波長変換素子35を位置決めする取付基準面62、93、106、138を1つの平面として、これに固体レーザ素子34および波長変換素子35の1面が全面に渡って当接する構成としたが、この取付基準面が設けられている位置に、同一の高さを有する3つの凸部を設けて、この凸部の頂面を、固体レーザ素子34および波長変換素子35を位置決めする取付基準面としてもよい。この構成では、固体レーザ素子34および波長変換素子35を3点で支持する状態となる。
【0116】
前記の各例のように、取付基準面を1つの平面とした場合、取付基準面の平面度の精度を上げるのに限界があるため、固体レーザ素子34および波長変換素子35に僅かなガタツキが発生することが避けられず、この場合、固体レーザ素子34および波長変換素子35の取付角度が1つに定まらない。この固体レーザ素子34および波長変換素子35のガタツキによる角度変化は予測が難しく、固体レーザ素子34および波長変換素子35の取付角度にバラツキが発生する。さらに、接着剤の硬化時の収縮にもバラツキがあり、これが固体レーザ素子34および波長変換素子35の取付角度のバラツキを拡大させる。
【0117】
これに対して、3つの凸部により固体レーザ素子34および波長変換素子35を3点で支持する構成では、固体レーザ素子34および波長変換素子35にガタツキが発生しなくなり、固体レーザ素子34および波長変換素子35が安定して支持される。さらに、打痕や異物の噛み込み、部品変形といったバラツキ要因の影響を受けにくくなるため、固体レーザ素子34および波長変換素子35の取付角度のバラツキが低減される。このため、歩留まりを向上させることができる。
【0118】
また、各実施形態で種々の特徴ある構成を例示したが、これらの構成は例示した実施形態にのみ適用されるものではなく、特に支障がなければ、適宜に他の実施形態に係る構成と組み合わせることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明にかかるレーザ光源装置は、組み付け後の波長変換素子の角度調整を不要にして、構造の簡素化により製造コストの削減を図ることができる効果を有し、画像表示装置の光源に用いられるレーザ光源装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0120】
1 画像表示装置
2、101、131 緑色レーザ光源装置
3 赤色レーザ光源装置
4 青色レーザ光源装置
34 固体レーザ素子
34a 入射面、34b 出射面、34c,34d 側面、34e 頂面、34f 底面
35 波長変換素子
35a 入射面、35b 出射面、35c,35d 側面、35e 頂面、35f 底面
38、104、135、153 基台
55、91、102、122、132、152 素子保持部
152a 下面(切断面)
62、93、106、138 取付基準面
71 分極反転領域
103、121、134、151 素子アセンブリ
108、136 カバー部
123 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分極反転領域が周期的に形成された波長変換素子と、
この波長変換素子を保持する素子保持部を介して前記波長変換素子を支持する基台と、を有し、
前記素子保持部には、前記波長変換素子を位置決めする取付基準面が、光軸に対して平行に形成され、
前記波長変換素子は、略平行六面体に形成され、その入射面および出射面に隣接する4つの面の1つを前記取付基準面に当接させて、分極反転領域の深さ方向が光軸と略直交し、且つ前記入射面および前記出射面が光軸方向に直交する平面に対して所定の傾斜角度で傾斜するように配置されたことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記波長変換素子は、分極反転領域の深さ方向に対して略平行となる2つの面の一方を前記取付基準面に当接させて位置決めされるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記波長変換素子は、分極反転領域の深さ方向に対して略直交する2つの面の一方を前記取付基準面に当接させて位置決めされるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記波長変換素子において前記素子保持部と相反する側の面に当接するカバー部を有し、前記素子保持部および前記カバー部が、導電性を有する材料にて形成されるとともに導体で互いに電気的に接続されたことを特徴とする請求項3に記載のレーザ光源装置。
【請求項5】
励起用レーザ光により励起されて基本波長レーザ光を出力する固体レーザ素子を有し、
前記取付基準面は、前記波長変換素子とともに前記固体レーザ素子を位置決めし、
前記固体レーザ素子は、略直方体に形成され、その入射面および出射面に隣接する4つの面の1つを前記取付基準面に当接させて、前記入射面および前記出射面が光軸方向に対して直交するように配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレーザ光源装置。
【請求項6】
前記波長変換素子と前記固体レーザ素子と前記素子保持部とが互いに固着されて一体化された素子アセンブリを有し、この素子アセンブリは、前記波長変換素子の素材と前記固体レーザ素子の素材と前記素子保持部の素材とを互いに固着した上で同時に切断して得られることを特徴とする請求項5に記載のレーザ光源装置。
【請求項7】
前記素子保持部は、その素材を切断した際の切断面を前記基台に当接させて固定されたことを特徴とする請求項6に記載のレーザ光源装置。
【請求項8】
前記波長変換素子において前記素子保持部と相反する側の面に当接するカバー部を有し、前記素子保持部および前記カバー部が、熱抵抗の小さな材料にて形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のレーザ光源装置。
【請求項9】
前記素子保持部は、前記波長変換素子が当接する面と相反する側に放熱フィンを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のレーザ光源装置。
【請求項10】
前記波長変換素子における光軸方向に直交する平面に対する前記入射面および出射面の傾斜角度が0.6±0.4度の範囲に設定されたことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のレーザ光源装置。
【請求項11】
励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、
この半導体レーザから出力される励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と、を有し、
前記波長変換素子は、前記固体レーザ素子から出力される赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のレーザ光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−58578(P2012−58578A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203049(P2010−203049)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】