説明

レーザ光源装置

【課題】波長変換素子を精度よく組み付けて、波長変換素子の角度の調整を簡略化することができるようにする。
【解決手段】波長変換素子ホルダ58に、略直方体状をなす波長変換素子35の出射面35bが当接してその波長変換素子を位置決めする取付基準面84を設け、波長変換素子を、取付基準面に当接した状態で接着剤106により波長変換素子ホルダに対して固定するようにし、接着剤は、出射面に隣接する頂面35eおよび底面35fと、波長変換素子ホルダにおいて取付基準面に隣接してこれに略平行に形成された凹部89の底面107とに付着するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを用いたレーザ光源装置に関し、特に画像表示装置の光源に用いられるレーザ光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、ならびに小型化が容易である点など、種々の利点を有している。
【0003】
このような画像表示装置に用いられるレーザ光源装置においては、緑色レーザ光を直接出力する半導体レーザに高出力のものがないため、半導体レーザから励起用レーザ光を出力させ、この励起用レーザ光で固体レーザ素子を励起させて赤外レーザ光を出力させ、この赤外レーザ光の波長を波長変換素子で変換して緑色レーザ光を出力するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−16833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような構成の緑色レーザ光源装置においては、レーザ光の光軸に対する波長変換素子の位置および角度に応じてレーザ光の出力が変化するため、出力が最大となる位置および角度に波長変換素子を配置することが望ましい。そこで、組み付け後に、出力を監視しながら波長変換素子の位置および角度を調整することができる構成が考えられるが、必要な位置および角度の調整を全ての方向で実施することができるように構成すると、調整機構の構造が複雑化して製造コストが嵩む難点がある。一方、波長変換素子を精度よく組み付けることができると、角度の調整を一部の方向で実施するだけで済み、調整機構の構造を簡略化して製造コストを削減することができる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、波長変換素子を精度よく組み付けて、波長変換素子の角度調整を簡略化することができるように構成されたレーザ光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザ光源装置は、略直方体状をなす光学素子と、この光学素子を保持する素子保持部を介して前記光学素子を支持する基台と、を有し、前記素子保持部は、前記光学素子の入射面および出射面のいずれかが当接してその光学素子を位置決めする取付基準面を備え、前記光学素子は、前記取付基準面に当接した状態で接着剤により前記素子保持部に対して固定され、前記接着剤は、前記光学素子において前記取付基準面に対する当接面に隣接する面と、前記素子保持部において前記取付基準面に隣接してこれに略平行に形成された面とに付着するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接着剤の硬化に伴う収縮力が、光学素子の当接面を取付基準面に押し付ける向きに作用し、光学素子の当接面が取付基準面に緊密に当接した状態に保持されるため、素子保持部に対する光学素子の取付精度を高めることができ、これにより光学素子の角度調整を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による画像表示装置1の概略構成図
【図2】緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図
【図3】緑色レーザ光源装置2の斜視図
【図4】緑色レーザ光源装置2の断面図
【図5】波長変換素子35の斜視図
【図6】波長変換素子35の製造工程を示す模式図
【図7】波長変換素子ホルダ58の分解斜視図
【図8】緑色レーザ光源装置2を一部分解して示す斜視図
【図9】波長変換素子ホルダ58における波長変換素子35の固定構造を示す斜視図
【図10】接着剤106による波長変換素子35の付勢状況を模式的に示す断面図
【図11】光軸方向に対する波長変換素子35の傾斜角度θに応じた波長変換効率ηの変化状況を示す図
【図12】調整治具111〜114を用いた波長変換素子ホルダ58の位置角度調整作業の状況を示す斜視図
【図13】調整治具111〜114を用いた波長変換素子ホルダ58の位置角度調整作業の状況を示す上面図
【図14】レーザ光の光軸に対する波長変換素子35の位置角度調整の状況を示す斜視図
【図15】本画像表示装置1をノート型の情報処理装置151に内蔵した例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、略直方体状をなす光学素子と、この光学素子を保持する素子保持部を介して前記光学素子を支持する基台と、を有し、前記素子保持部は、前記光学素子の入射面および出射面のいずれかが当接してその光学素子を位置決めする取付基準面を備え、前記光学素子は、前記取付基準面に当接した状態で接着剤により前記素子保持部に対して固定され、前記接着剤は、前記光学素子において前記取付基準面に対する当接面に隣接する面と、前記素子保持部において前記取付基準面に隣接してこれに略平行に形成された面とに付着するようにした構成とする。
【0011】
これによると、接着剤の硬化に伴う収縮力が、光学素子の当接面を取付基準面に押し付ける向きに作用し、光学素子の当接面が取付基準面に緊密に当接した状態に保持されるため、素子保持部に対する光学素子の取付精度を高めることができ、これにより光学素子の角度調整を簡略化することができる。
【0012】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記光学素子は、分極反転領域が周期的に形成された波長変換素子であり、前記素子保持部は、前記基台に対して、光軸方向に対して略直交する軸周りに回動可能に設けられた構成とする。
【0013】
これによると、波長変換素子の光軸方向に対する傾斜角度を最適化することができ、これによりレーザ光の出力を高めることができる。
【0014】
なお、波長変換素子を光軸に対して傾斜させることで、波長変換素子の入射面および出射面でのレーザ光の屈折によりレーザ光の進路をずらして、レーザ光の干渉による出力の低下を避けることができ、レーザ光の出力が最大となるように光軸方向に対する波長変換素子の傾斜角度が調整される。
【0015】
ここで、光軸方向に直交する平面に対する入射面および出射面の傾斜角度が重要となり、波長変換素子を、光軸方向に対して略直交するとともに互いに直交する2軸周りに回動可能に設けると、製作誤差および取付誤差を解消して、光軸方向に対する入射面および出射面の傾斜角度を最適化することができるが、一方の軸周りの波長変換素子の傾斜角度が0に近似するように波長変換素子を精度よく組み付けることで、この方向での波長変換素子の傾斜角度の調整を不要とすることができる。
【0016】
また、第3の発明は、前記第1若しくは第2の発明において、前記接着剤は、前記光学素子における互いに相反する2つの面に付着するようにした構成とする。
【0017】
これによると、接着剤の硬化に伴う収縮力が、光学素子の互いに相反する面に沿ってバランスよく作用するため、素子保持部に対する光学素子の取付精度をより一層高めることができる。
【0018】
特に、第2の発明に第3の発明を適用し、接着剤が、波長変換素子における回動軸方向に相対する2つの面に付着するようにすると、硬化した接着剤により波長変換素子が回動軸方向から支持されるため、回動軸方向に対して直交する軸周りの波長変換素子の取付角度を高精度に確保することができ、この方向での波長変換素子の傾斜角度の調整が不要となる。
【0019】
また、第4の発明は、前記第2の発明において、前記波長変換素子は、前記取付基準面に対する当接面を略長方形状に形成され、その長辺方向が回動軸方向に対して平行となるように配置された構成とする。
【0020】
これによると、当接面の短辺を中心にして傾く方向に波長変換素子が倒れにくくなる。このため、回動軸方向に対して直交する軸周りの波長変換素子の取付角度を高精度に確保することができ、この方向での波長変換素子の傾斜角度の調整が不要となる。
【0021】
また、第5の発明は、前記第1乃至第4の発明において、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、この半導体レーザから出力される励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と、を備え、前記光学素子は、前記固体レーザ素子から出力される赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力する波長変換素子であり、前記半導体レーザと、前記固体レーザ素子と、前記波長変換素子とが、前記基台に一体的に支持された構成とする。
【0022】
これによると、高出力の緑色レーザ光を出力することができる。この場合、基台に半導体レーザを固定した後、レーザチップから出力されるレーザ光の光軸に対して、集光レンズ、固体レーザ素子および波長変換素子の位置調整が行われる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明による画像表示装置1の概略構成図である。この画像表示装置1は、所要の画像をスクリーンに投影表示するものであり、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置2と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置3と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置4と、映像信号に応じて各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の空間光変調器5と、各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光を反射させて空間光変調器5に照射させるとともに空間光変調器5から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ6と、各レーザ光源装置2〜4から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ6に導くリレー光学系7と、偏光ビームスプリッタ6を透過した変調レーザ光をスクリーンに投射する投射光学系8と、を備えている。
【0025】
この画像表示装置1は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置2〜4から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0026】
リレー光学系7は、各レーザ光源装置2〜4から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ11〜13と、コリメータレンズ11〜13を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー14,15と、ダイクロイックミラー14,15により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板16と、拡散板16を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ17と、を備えている。
【0027】
投射光学系8からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置4から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置2および赤色レーザ光源装置3から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー14,15で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー14で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー15で同一の光路に導かれる。
【0028】
第1および第2のダイクロイックミラー14,15は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー14は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー15は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0029】
これらの各光学部材は、筐体21に支持されている。この筐体21は、各レーザ光源装置2〜4で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0030】
緑色レーザ光源装置2は、側方に向けて突出した状態で筐体21に形成された取付部22に取り付けられている。この取付部22は、リレー光学系7の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部23と側壁部24とが交わる角部から側壁部24に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置3は、ホルダ25に保持された状態で側壁部24の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置4は、ホルダ26に保持された状態で前壁部23の外面側に取り付けられている。
【0031】
赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、ホルダ25,26に開設された取付孔27,28に圧入するなどしてホルダ25,26に対して固定される。青色レーザ光源装置4および赤色レーザ光源装置3のレーザチップの発熱は、ホルダ25,26を介して筐体21に伝達されて放熱され、各ホルダ25,26は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0032】
緑色レーザ光源装置2は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ31と、半導体レーザ31から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ32およびロッドレンズ33と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子34と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子(光学素子)35と、固体レーザ素子34とともに共振器を構成する凹面ミラー36と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー37と、各部を支持する基台38と、各部を覆うカバー体39と、を備えている。
【0033】
この緑色レーザ光源装置2は、基台38を筐体21の取付部22に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置2と筐体21の側壁部24との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置2の熱が赤色レーザ光源装置3に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置3の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置3を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置3の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置2と赤色レーザ光源装置3との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0034】
図2は、緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ31のレーザチップ41は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ32は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ33は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0035】
固体レーザ素子34は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ33を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子34は、Y(イットリウム)VO(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVOのYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0036】
固体レーザ素子34におけるロッドレンズ33に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜42が形成されている。固体レーザ素子34における波長変換素子35に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜43が形成されている。
【0037】
波長変換素子35は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子34から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。
【0038】
波長変換素子35における固体レーザ素子34に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜44が形成されている。波長変換素子35における凹面ミラー36に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜45が形成されている。
【0039】
凹面ミラー36は、波長変換素子35に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜46が形成されている。これにより、固体レーザ素子34の膜42と凹面ミラー36の膜46との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0040】
波長変換素子35では、固体レーザ素子34から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子35を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー36で反射されて波長変換素子35に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子35の膜44で反射されて波長変換素子35から出射される。
【0041】
ここで、固体レーザ素子34から波長変換素子35に入射して波長変換素子35で波長変換されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー36で一旦反射されて波長変換素子35に入射して膜44で反射されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0042】
そこでここでは、波長変換素子35を光軸方向に対して傾斜させて、入射面35aおよび出射面35bでの屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0043】
なお、図1に示したガラスカバー37には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0044】
図3は、緑色レーザ光源装置2の斜視図である。図4は、緑色レーザ光源装置2の断面図である。
【0045】
図3に示すように、半導体レーザ31、FACレンズ32、ロッドレンズ33、固体レーザ素子34、波長変換素子35、および凹面ミラー36は、基台38に一体的に支持されている。基台38の底面51は光軸方向に対して平行となる。なおここでは、基台38の底面51に対して直交する方向を高さ方向とし、この高さ方向および光軸方向に対して直交する方向を幅方向とする。また、基台38の底面51に近接する側を下、底面51と相反する側を上として説明するが、これは実際の装置の上下方向と必ずしも一致するものではない。
【0046】
半導体レーザ31は、レーザ光を出力するレーザチップ41をマウント部材52に実装したものである。レーザチップ41は、光軸方向に長い帯板状をなし、光出射面をFACレンズ32側に向けた状態で、板状をなすマウント部材52の一面の幅方向の略中心位置に固着されている。この半導体レーザ31は、取付部材53を介して基台38に固定される。この取付部材53は、銅あるいはアルミ等の熱伝導性の高い金属で形成されており、これによりレーザチップ41の発熱が基台38に伝達されて放熱することができる。
【0047】
FACレンズ32およびロッドレンズ33は、集光レンズホルダ54に保持される。この集光レンズホルダ54は、基台38に一体的に形成された支持部55に支持される。集光レンズホルダ54は、光軸方向に移動可能に支持部55に連結されており、これにより集光レンズホルダ54、すなわちFACレンズ32およびロッドレンズ33の位置が、光軸方向に調整される。FACレンズ32およびロッドレンズ33は位置調整作業の前に集光レンズホルダ54に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、集光レンズホルダ54と支持部55とが接着剤で互いに固定される。
【0048】
固体レーザ素子34は、基台38に一体的に形成された固体レーザ素子支持部56に支持される。固体レーザ素子支持部56は、図4に示すように、基台38に隔壁状に立設され、固体レーザ素子34を保持する固体レーザ素子保持部57が側方に突出するように設けられている。固体レーザ素子支持部56には、ロッドレンズ33から出射されたレーザ光を固体レーザ素子34に導く光路孔63が形成されている。固体レーザ素子34と固体レーザ素子保持部57とは接着剤で互いに固定される。
【0049】
再び図3に戻って、波長変換素子35は、波長変換素子ホルダ58に保持される。この波長変換素子ホルダ58は、波長変換素子35の幅方向の位置および光軸方向に対する傾斜角度を調整することができるように、基台38に対して、幅方向に移動可能に、且つ光軸方向に対して略直交する軸周りに回動可能に設けられている。この波長変換素子ホルダ58については後に詳しく説明する。波長変換素子35は位置調整作業の前に波長変換素子ホルダ58に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、波長変換素子ホルダ58と基台38とが接着剤で互いに固定される。
【0050】
凹面ミラー36は、基台38に一体的に形成された凹面ミラー支持部61に支持される。
【0051】
図4に示すように、基台38には、凹面ミラー支持部61の上端と固体レーザ素子支持部56の上端とを相互に連結するように架設部64が設けられており、この架設部64には、後に詳述する調整治具が挿入される開放部65が形成されている。また、凹面ミラー36の下側にも調整治具が挿入される開放部66が形成されている(開放部65,66の構造については、図7も併せて参照されたい)。
【0052】
なお、前記の各部材、例えば波長変換素子ホルダ58と基台38との固定に用いる接着剤は、例えばUV硬化型接着剤が好適である。
【0053】
図5は、波長変換素子35の斜視図である。図6は、波長変換素子35の製造工程を示す模式図である。
【0054】
図5に示すように、波長変換素子35は、略直方体状をなし、強誘電体結晶に分極反転領域71と非分極反転領域72とが交互に形成された、周期的な分極反転構造を備えたものであり、分極反転周期方向(分極反転領域71の配列方向)に基本波長レーザ光を入射させる。これにより、擬似位相整合による入射光の第2次高調波発生で2倍の周波数、すなわち1/2の波長のレーザ光を得ることができる。強誘電体結晶には、例えばLN(ニオブ酸リチウム)にMgOを添加したものが用いられる。
【0055】
周期的な分極反転構造を形成するには、周期電極73と対向電極74を用いて、単分極した強誘電体結晶に分極方向と逆方向の電界を印加する。これにより周期電極73に対応する部分の分極方向が反転し、分極反転領域71が周期電極73から対向電極74に向けて楔形状に形成される。
【0056】
実際には、図6に示すプロセスで波長変換素子35が製作される。まず、強誘電体結晶からなるウエハー75に電極薄膜を積層し、ついでフォトリソグラフィおよびエッチングにより周期電極と対向電極の電極パターンを形成する。次に、電極パターンが形成されたウエハー75から基板76を切り出し、さらに適当な大きさに切断する。これにより得られた短冊状のスタック77に対して、電極を用いて電圧を印加する分極反転処理を実施して、スタック77に分極反転構造を形成する。また、波長変換素子35の入射面35aおよび出射面35bとなるスタック77の端面78,79を光学研磨する。そして、スタック77から1つの波長変換素子35となるチップを切り出す。
【0057】
このように比較的大きな寸法であるスタック77の段階で光学研磨を行うため、スタック77を確実に位置決めして光学研磨を行うことができ、これにより入射面35aおよび出射面35bの平面度および平行度を高精度に確保することができる。
【0058】
また、このようにして製作された波長変換素子35では、入射面35aおよび出射面35bのみ、精密な研磨により高い精度で平面度および平行度が確保されているが、頂面35eおよび底面35fはスタック77から切り出す際の切断面であり、また、側面35c,35dはウエハー75の表裏両面となり、製造誤差が残ったままである。このため、側面35c,35dと頂面35eおよび底面35fに関しては、入射面35aおよび出射面35bに対する直角度や、互いに相対するもの同士の平行度は確保されていない。
【0059】
図5に示したように、分極反転領域71は、深さ方向に沿って厚さが次第に小さくなる楔形状をなし、入射するレーザ光に対して、分極反転領域71の深さ方向に波長変換素子35を移動させることで、レーザ光の光路上に位置する分極反転領域71と非分極反転領域72との割合が変化し、これに応じて波長変換効率が変化する。そこで、波長変換効率が最大となる、すなわちレーザ光の出力が最大となるように、レーザ光の光軸に対する波長変換素子35の位置が調整される。この波長変換素子35の位置調整については後に詳しく説明する。
【0060】
なお、図5では、説明の便宜上、波長変換素子35の側面35c,35dに周期電極73および対向電極74を図示したが、この周期電極73および対向電極74は、スタックの段階で研磨により削除される。
【0061】
図7は、波長変換素子ホルダ58の分解斜視図である。図8は、緑色レーザ光源装置2を一部分解して示す斜視図である。
【0062】
図7に示すように、波長変換素子ホルダ58は、ホルダ本体81と、これとは別体に形成された1対の狭持部材82とで構成される。ホルダ本体81には、波長変換素子35から出射されたレーザ光を凹面ミラー36に導く光路孔83が形成されている。この光路孔83の出射側は漏斗状に広がっている(図4を併せて参照されたい)。
【0063】
前記のように、波長変換素子35では、入射面35aおよび出射面35bのみ、精密な研磨により高い精度で平面度および平行度が確保されている。このため、精度が確保されている出射面35bを、光路孔83が開口する取付基準面84に当接させて、波長変換素子35の位置決めが行われる。
【0064】
狭持部材82は、波長変換素子35における分極反転領域71の深さ方向に相対する2つの側面35c,35dに当接し、波長変換素子35を左右から挟み込むように取り付けられる。ホルダ本体81には、狭持部材82が嵌合するガイド溝85が形成されており、このガイド溝85により狭持部材82の高さ方向の位置が規定される。ホルダ本体81と狭持部材82とは接着剤で固定され、狭持部材82には接着剤が装填される孔86が形成されている。
【0065】
狭持部材82において、波長変換素子35の側面35c,35dに当接する当接面87には導電性接着剤が塗布される。また、ホルダ本体81および狭持部材82は金属材料などの導電性材料からなる。これにより、波長変換素子35の側面35c,35d同士が電気的に接続され、側面35c,35dを同一の電位に維持して、チャージアップによる屈折率の変化を抑えることができる。
【0066】
ホルダ本体81には、取付基準面84の上下に突出部88が形成され、その中心には、接着剤が装填される凹部89が形成されている。これにより、波長変換素子35の頂面35eおよび底面35fに接着剤が付着し、この接着剤を介して波長変換素子35とホルダ本体81とが互いに固定される。
【0067】
なお、ここでは、ホルダ本体81と別体に形成された1対の狭持部材82で波長変換素子35を左右から挟み込むものとしたが、波長変換素子35を左右から挟み込む狭持部を波長変換素子ホルダに予め一体的に形成した構成も可能である。この場合、狭持部において波長変換素子35の側面35c,35dに当接する面に、導電性接着剤が装填される凹部を形成するとよい。
【0068】
図4に示したように、基台38には、光軸方向に対して直交する平面をなす第1の基準面91,92が設けられている。この第1の基準面91,92は、基台38に一体的に形成された上下のホルダ支持部59,60の凹面ミラー36側に形成されている。上側のホルダ支持部59は、固体レーザ素子支持部56と凹面ミラー支持部61とを相互に連結する架設部64に設けられている。
【0069】
一方、波長変換素子ホルダ58には、第1の基準面91,92に当接する1対の軸部93,94が設けられている。この1対の軸部93,94は、同一径の円柱状をなし、互いに同軸的に配置され、ホルダ本体81に互いに相反する向きに突出した状態で設けられている(図7を併せて参照されたい)。第1の基準面91,92は、光軸方向に対して直交する同一の平面上に配置されており、軸部93,94が第1の基準面91,92で規制されることで、波長変換素子ホルダ58の光軸方向の位置が規定される。
【0070】
軸部93,94は、第1の基準面91,92に沿って幅方向に摺動させることができ、これにより波長変換素子ホルダ58の光軸方向の位置を変化させない状態で、波長変換素子ホルダ58を基台38に対して幅方向に(分極反転領域の深さ方向)に移動させることができる。また、第1の基準面91,92に当接した状態で軸部93,94を回動させることができ、これにより波長変換素子ホルダ58を光軸方向に対して略直交する軸周りに回動させることができる。
【0071】
波長変換素子35は、波長変換素子ホルダ58において光路孔83が開口する取付基準面84で位置決めされ、この取付基準面84は軸部93,94の円筒面を形成する母線と平行に配置されている。固体レーザ素子34は、光路孔63が開口する取付基準面95に入射面34aを当接させて位置決めされる。したがって、波長変換素子ホルダ58において波長変換素子35の取付基準面84と軸部93,94の中心線との平行度を管理するとともに、基台38において固体レーザ素子34の取付基準面95と第1の基準面91,92との平行度を管理することで、波長変換素子35の入射面35aおよび出射面35bと、固体レーザ素子34の入射面34aおよび出射面34bとの平行度を確保することができる。
【0072】
下側のホルダ支持部60には、第1の基準面91,92に対して直交する平面をなす第2の基準面96が形成されている。この第2の基準面92は、光軸方向および波長変換素子35の分極反転領域の深さ方向に対して平行に配置されている。
【0073】
一方、波長変換素子ホルダ58には、第2の基準面96に当接する脚部97が設けられている。この脚部97は、板状部98と、その下面に形成された2つのボス99および段部100で構成されている(図7参照)。板状部98は、波長変換素子35の取付基準面84が形成された基部101からL字形の断面形状をなすように延出され、波長変換素子35および固体レーザ素子34の下側に配置される。これにより、波長変換素子35および固体レーザ素子34の下側のスペースを有効利用して、装置の小型化を図ることができる。下側の軸部94は、段部100から突出した状態で設けられている。
【0074】
2つのボス99は、分極反転領域の深さ方向に離間し、段部100は、2つのボス99に対して、分極反転領域の深さ方向の中間に位置するとともに光軸方向にずれた位置に配置され、2つのボス99および段部100の端面は、同一の高さに設定されている。これにより、波長変換素子ホルダ58の軸部93,94が、高さ方向、すなわち光軸方向および分極反転領域の深さ方向に対して直交する正規の方向から傾くことを避けることができる。
【0075】
波長変換素子ホルダ58の脚部97を第2の基準面96に当接した状態に保持するばね102が設けられている。このばね102は、コ字形状の断面をなす板ばねで構成され、波長変換素子ホルダ58の脚部97と第2の基準面96を備えたホルダ支持部60とを挟み込む態様で取り付けられている。これにより、波長変換素子ホルダ58を傾かせることなく幅方向に移動させることができ、位置角度調整作業が容易になる。ばね102の付勢力は、位置角度調整時の仮止めに用いられ、位置角度調整作業後に接着剤で波長変換素子ホルダ58とホルダ支持部60とが固定される。
【0076】
図8に示すように、ばね102においてホルダ支持部60の下面側に当接する部分には、ホルダ支持部60の下面に形成された突起103に嵌り合う切り欠き104が形成されており、これによりばね102がホルダ支持部60に対して光軸方向および幅方向に移動することが規制される。ばね102において波長変換素子ホルダ58の脚部97の上面側に当接する部分には、球面状の当接部105が形成されており、これによりホルダ支持部60に固定されたばね102に対して、波長変換素子ホルダ58の脚部97を円滑に摺動させることができる。
【0077】
図9は、波長変換素子ホルダ58における波長変換素子35の固定構造を示す斜視図である。図10は、接着剤106による波長変換素子35の付勢状況を模式的に示す断面図である。
【0078】
図9に示すように、波長変換素子35は、凹部89内に装填される接着剤106で波長変換素子ホルダ58に固定される。凹部89は、波長変換素子35側と、手前側、すなわち入射面35a側とが開放されており、波長変換素子35を入射面35a側から押圧して出射面35bを取付基準面84に密着させた状態で、凹部89内に接着剤106を装填して、その接着剤106を硬化させると、接着剤106を介して波長変換素子35とホルダ本体81とが互いに固定される。接着剤106を凹部89内に装填するにはディスペンサを用いるとよく、また接着剤106にはUV硬化型のものを用いるとよい。
【0079】
図10に示すように、接着剤106は、波長変換素子35において出射面35bに隣接する頂面35eおよび底面35fに付着する。また接着剤106は、波長変換素子ホルダ58において取付基準面84に隣接してこれに略平行に形成された凹部89の底面107とこれに略直交する側面108とに付着する。
【0080】
このように波長変換素子35の頂面35eおよび底面35fと、取付基準面84に略平行となる底面107とで形成される角隅部に接着剤106が付着すると、波長変換素子35の頂面35eおよび底面35fにおいて接着剤106が接触する接着面では、接着剤106の硬化に伴う収縮力により、波長変換素子35の出射面35bを取付基準面84に押し付ける向きの付勢力Fが発生し、波長変換素子35の出射面35bが取付基準面84に緊密に当接した状態に保持される。これにより波長変換素子35の取付精度を高めることができる。
【0081】
特にここでは、接着剤106が、波長変換素子35における互いに相反する頂面35eおよび底面35fに付着するようにしたため、接着剤106の硬化に伴う収縮力が、波長変換素子35の互いに相反する頂面35eおよび底面35fに沿ってバランスよく作用するため、波長変換素子ホルダ58に対する波長変換素子35の取付精度をより一層高めることができる。
【0082】
さらに、接着剤106が、波長変換素子35における回動軸方向に相対する頂面35eおよび底面35fに付着するようにしたため、硬化した接着剤106により波長変換素子35が回動軸方向から支持される。これにより、図9の矢印Cで示す方向での波長変換素子35の取付角度を高精度に確保することができる。
【0083】
さらに、図9に示したように、取付基準面84に当接する出射面35bは略長方形状をなし、その長辺方向が、軸部93,94の中心線(回動軸)に平行となるように波長変換素子35が配置されている。このため、出射面35bの短辺を中心にして傾く方向には波長変換素子35が倒れにくくなる。これにより、図9の矢印Cで示す方向での波長変換素子35の取付角度を高精度に確保することができる。
【0084】
このように図9の矢印Cで示す方向、すなわち取付基準面84に平行で且つ回動軸方向に対して直交する方向の軸周りに傾く方向での波長変換素子35の取付角度を高精度に確保することができるため、この方向での波長変換素子35の傾斜角度の調整が不要となる。
【0085】
一方、図9の矢印Bで示す方向、すなわち出射面35bの長辺を中心にして傾く方向には波長変換素子35が倒れやすくなるが、この矢印Bで示す方向は、波長変換素子ホルダ58の角度調整が行われるため、波長変換素子ホルダ58に対する波長変換素子35の取付角度が多少変化しても、その取付角度のずれは波長変換素子ホルダ58の角度調整で解消されるため、特に支障はない。
【0086】
なおここでは、図10に示したように、凹部89において接着剤106が付着する底面107を、波長変換素子35の頂面35eおよび底面35fに対して略直交する角度に配置する、すなわち接着剤106が付着する底面107と取付基準面84とを略平行に配置することで、接着剤106の硬化に伴う収縮力による付勢力Fを大きくことができるが、図示する例のように、接着剤106が付着する底面107と取付基準面84とが同一の平面上に位置する構成に限定されるものではなく、接着剤が付着する面と取付基準面との間に段差を有する構成も可能である。
【0087】
図11は、光軸方向に対する波長変換素子35の傾斜角度θに応じた波長変換効率ηの変化状況を示す図である。波長変換素子35の波長変換効率ηは、光軸方向に対する波長変換素子35の傾斜角度θに応じて変化し、光軸方向に対して傾斜していない状態(θ=0)では波長変換効率ηが低く、光軸方向に対して傾斜させることで波長変換効率ηを高めることができる。
【0088】
これは、傾斜角度θが0の場合、図2に示したように、レーザ光のビームB1,B2が互いに重なり合うことで、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こすことによるためであり、波長変換素子35を光軸方向に対して傾斜させることで、入射面35aおよび出射面35bでの屈折作用により、レーザ光のビームB1,B2がずれるため、干渉による出力低下を傾けることができる。
【0089】
特にここでは、波長変換効率のピーク点(ここではθ=±0.6度)を中心にした所要の範囲(例えば±0.4度)の高効率領域に入るように波長変換素子35の傾斜角度θを調整し、この調整代に相当する角度範囲で波長変換素子ホルダ58を基台38に対して傾動させることができるように各部の寸法が設定される。
【0090】
図12は、調整治具111〜114を用いた波長変換素子ホルダ58の位置角度調整作業の状況を示す斜視図である。図13は、調整治具111〜114を用いた波長変換素子ホルダ58の位置角度調整作業の状況を示す上面図である。図14は、レーザ光の光軸に対する波長変換素子35の位置角度調整の状況を示す斜視図である。
【0091】
図12および図13に示すように、波長変換素子ホルダ58の位置角度調整作業では、波長変換素子ホルダ58の1対の軸部93,94に当接する第1の調整治具111,112と、波長変換素子ホルダ58の脚部97に当接する第2の調整治具113,114とが用いられる。
【0092】
第1の調整治具111,112は、光軸方向に延在する腕部115,116を備えており、上側の第1の調整治具111は、凹面ミラー36の上側の開放部65から挿入され、下側の第1の調整治具112は、凹面ミラー36の下側の開放部66から挿入され(図4および図8参照)、凹面ミラー36側から反光軸方向に軸部93,94を押圧して、軸部93,94を第1の基準面91,92に当接した状態に保持する。軸部93,94に対する当接部117,118は、V字形状の断面をなしており、軸部93,94を第1の基準面91,92に当接させた状態で軸部93,94の回動を許容し、かつ幅方向の移動に追随して軸部93,94が幅方向に移動するようになっている。
【0093】
第2の調整治具113,114は、幅方向に延在する腕部121,122を備えており、幅方向の両側から波長変換素子ホルダ58の脚部97を押圧する。脚部97に対する当接部は、半球状に形成され、脚部97における軸部93,94からオフセットされた部分に当接する。
【0094】
図12(A)に示すように、第1の調整治具111,112および第2の調整治具113,114をともに幅方向に移動させると、図13の矢印Aで示すように、波長変換素子ホルダ58が幅方向に移動する。これにより、図14の矢印Aで示すように、レーザ光の光軸に対して分極反転領域71の深さ方向に波長変換素子35を移動させることができる。
【0095】
また、図12(B)に示すように、第1の調整治具111,112を静止させた状態で第2の調整治具113,114を幅方向に移動させると、図13の矢印Bで示すように、波長変換素子ホルダ58が軸部93,94を中心にして幅方向に傾動する。これにより、図14の矢印Bで示すように、レーザ光の光軸に対して幅方向に波長変換素子35を傾動させることができる。
【0096】
次に、波長変換素子35の位置角度調整の手順について説明する。まず、最初に、幅方向(分極反転領域71の深さ方向)に関する波長変換素子35の位置調整を行う。この位置調整は、パワーメータで出力を監視しながら行われ、図13の矢印Aで示すように、波長変換素子ホルダ58を幅方向に移動させて出力が最大となるように調整する。
【0097】
ついで、光軸方向に対する波長変換素子35の傾斜角度θが0度となるように波長変換素子ホルダ58の角度を調整する(図11参照)。この角度調整は、レーザ光のビームの形状を監視しながら行われ、図13の矢印Bで示すように、波長変換素子ホルダ58を幅方向に傾動させて、レーザ光のビームが1本となるように調整する。これにより、波長変換素子35の傾斜角度θが0度となる。
【0098】
最後に、波長変換素子35の傾斜角度θが所定の高効率領域に入るように波長変換素子ホルダ58の角度を調整する(図11参照)。この角度調整は、パワーメータで出力を監視しながら行われ、図13の矢印Bで示すように、波長変換素子ホルダ58を幅方向に傾動させて、出力が最大となる角度に調整する。これにより、波長変換素子35の傾斜角度θが所定の高効率領域に入り、図2に示したように、レーザ光の2本のビームB1,B2の重なり合いによる干渉を防ぐことができる。
【0099】
なお、前記の例では、図4に示したように、波長変換素子ホルダ58に対して第2の基準面96を下側に配置したが、これとは逆に、波長変換素子ホルダに対して第2の基準面を上側に配置するようにしてもよい。この場合、波長変換素子ホルダは、上下を逆にした形態となり、脚部が上側に配置される。
【0100】
図15は、本画像表示装置1をノート型の情報処理装置151に内蔵した例を示す斜視図である。情報処理装置151の筐体152には、画像表示装置1が出没自在に格納される収容スペースが、キーボードの裏面側に形成されており、不使用時には画像表示装置1が筐体152内に収容され、使用時には画像表示装置1が筐体152から引き出されて、画像表示装置1を回動自在に支持するベース部153に対して画像表示装置1を所要の角度に回動させることで、画像表示装置1からのレーザ光をスクリーンに投射させることができる。
【0101】
なお、前記の例では、緑色レーザ光源装置2のレーザチップ41、固体レーザ素子34、および波長変換素子35がそれぞれ、波長808nmの励起用レーザ光、波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)、および波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。最終的に緑色レーザ光源装置2から出力されるレーザ光が緑色と認識できるものであればよく、例えばピーク波長が500nm〜560nmの範囲となる波長領域のレーザ光を出力するようにするとよい。
【0102】
また、前記の例では、図9に示したように、波長変換素子35の出射面35bを波長変換素子ホルダ58の取付基準面84に当接させる構成としたが、これとは逆に、入射面35aを取付基準面に当接させる構成としてもよい。
【0103】
また、前記の例では、図7に示したように、波長変換素子35を位置決めする取付基準面84を1つの平面として、これに波長変換素子35の出射面35bが全面に渡って当接する構成としたが、この取付基準面84が設けられている位置に、同一の高さを有する3つの凸部を、光路孔83を囲むように設けて、この凸部の頂面を、波長変換素子35を位置決めする取付基準面としてもよい。この構成では、波長変換素子35を3点で支持する状態となる。
【0104】
図7に示した例のように、取付基準面84を1つの平面とした場合、取付基準面84の平面度の精度を上げるのに限界があるため、波長変換素子35に僅かなガタツキが発生することが避けられず、この場合、波長変換素子35の取付角度が1つに定まらない。この波長変換素子35のガタツキによる角度変化は予測が難しく、波長変換素子35の取付角度にバラツキが発生する。さらに、接着剤の硬化時の収縮にもバラツキがあり、これが波長変換素子35の取付角度のバラツキを拡大させる。
【0105】
これに対して、3つの凸部により波長変換素子35を3点で支持する構成では、波長変換素子35にガタツキが発生しなくなり、波長変換素子35が安定して支持される。さらに、打痕や異物の噛み込み、部品変形といったバラツキ要因の影響を受けにくくなるため、波長変換素子35の取付角度のバラツキが低減される。このため、波長変換素子35の角度調整の範囲を狭く設定することができ、また歩留まりを向上させることができ、さらに波長変換素子35の角度調整の作業を簡略化することが可能になる。
【0106】
また、前記の例では、図3に示したように、波長変換素子35を保持する素子保持部である波長変換素子ホルダ58を基台38に対して回動可能に設けたが、本発明における素子保持部は、基台に対して回動不能に固定された構成も可能である。この場合、波長変換素子35の角度調整ができないため、波長変換素子35の製作精度および取付精度を高める必要があるが、この波長変換素子35の取付精度を高める上で本発明が有効である。
【0107】
またここでは、本発明における光学素子として波長変換素子の例について説明したが、本発明が適用される光学素子は波長変換素子に限定されるものではなく、例えば固体レーザ素子に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明にかかるレーザ光源装置は、波長変換素子を精度よく組み付けて、波長変換素子の角度の調整を簡略化することができる効果を有し、画像表示装置の光源に用いられるレーザ光源装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 画像表示装置
2 緑色レーザ光源装置
3 赤色レーザ光源装置
4 青色レーザ光源装置
31 半導体レーザ
34 固体レーザ素子
35 波長変換素子(光学素子)、35a 入射面、35b 出射面、35c,35d 側面、35f 底面、35e 頂面
38 基台
58 波長変換素子ホルダ(素子保持部)
71 分極反転領域
72 非分極反転領域
84 取付基準面
88 突出部
89 凹部
106 接着剤
107 底面
108 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体状をなす光学素子と、
この光学素子を保持する素子保持部を介して前記光学素子を支持する基台と、を有し、
前記素子保持部は、前記光学素子の入射面および出射面のいずれかが当接してその光学素子を位置決めする取付基準面を備え、
前記光学素子は、前記取付基準面に当接した状態で接着剤により前記素子保持部に対して固定され、
前記接着剤は、前記光学素子において前記取付基準面に対する当接面に隣接する面と、前記素子保持部において前記取付基準面に隣接してこれに略平行に形成された面とに付着するようにしたことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記光学素子は、分極反転領域が周期的に形成された波長変換素子であり、
前記素子保持部は、前記基台に対して、光軸方向に対して略直交する軸周りに回動可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記接着剤は、前記光学素子における互いに相反する2つの面に付着するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記波長変換素子は、前記取付基準面に対する当接面を略長方形状に形成され、その長辺方向が回動軸方向に対して平行となるように配置されたことを特徴とする請求項2に記載のレーザ光源装置。
【請求項5】
励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、この半導体レーザから出力される励起用レーザ光により励起されて赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と、を備え、
前記光学素子は、前記固体レーザ素子から出力される赤外レーザ光の波長を変換して緑色レーザ光を出力する波長変換素子であり、
前記半導体レーザと、前記固体レーザ素子と、前記波長変換素子とが、前記基台に一体的に支持されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレーザ光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−60001(P2012−60001A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203043(P2010−203043)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【特許番号】特許第4827983号(P4827983)
【特許公報発行日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】