説明

レーザ接合装置

【課題】入射側部材と出射側部材との間に生じる隙間を減少させることにより、積層部材を確実に密着し、接合不良が起き難く且つ安定したレーザ接合をすることができるレーザ接合装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、複数の透明部材102,104からなる積層部材100の接合領域101にレーザ光110を照射し、積層部材を接合するレーザ接合装置1であって、積層部材を載置する載置部2と、積層部材にレーザ光を出射するレーザ光源ユニット5と、載置された積層部材の一方の面に接する第1の押え部材81であって、レーザ接合時において、積層部材の少なくとも2つの透明部材の合わせ面103とレーザ光とが交わる領域に対して、合わせ面の法線方向に位置する第1押え部材と、載置された積層部材の一方の面と対向する他方の面に接する第2の押え部材80とを備え、第1及び第2の押え部材の少なくとも一方は、積層部材を押圧する、構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された透明部材からなる積層部材の接合領域にレーザ光を照射して、該積層部材を接合するレーザ接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多光子吸収現象を利用して2つの物質を接合する方法として、重ね合わせたシリカガラス等の接合領域に超短パルスレーザを照射する接合方法があった(特許文献1)。この接合方法においては、重ね合わせたシリカガラスの上側の両端部分と下側の中央部分に押圧力が加えられている。そのため、重ね合わせたシリカガラスが、上側プレートと下側の固定プレートとによって挟まれている。また、下側の固定プレートの中央には、シリカガラスからなる半球状の突起が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/035770号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この接合方法では、下側の押え部材である半球状の突起と接合領域とが、シリカガラスの平面方向において遠く離れている。そのため、接合領域において上側のシリカガラスと下側のシリカガラスとの間に僅かな隙間が生じてしまい、確実に密着することができない。従って、非常に高い密着性を必要とする透明部材同士の内部接合において、接合不良が起きやすく且つ安定して接合することができなってしまう。
【0005】
また、シリカガラス等からなる積層部材を押圧して密着させる場合、透明部材が撓んで変形してしまうことがある。そして、押え部材による押圧箇所と接合領域とが遠く離れている場合は、接合領域での撓みが大きくなる。そのため、押圧箇所から離れた接合領域においてレーザ光の焦点が接合部分から大きくずれてしまう。これにより、確実に密着することができないので、接合不良が起きやすいと共に、安定して接合することができなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ接合装置は、積層された複数の透明部材からなる積層部材の接合領域にレーザ光を照射し、前記積層部材を接合するレーザ接合装置であって、前記積層部材を載置するための載置部と、前記載置部上の前記積層部材に前記レーザ光を出射するレーザ光源ユニットと、前記載置部に載置された前記積層部材の一方の面に接する第1の押え部材であって、前記レーザ接合時において、前記積層部材の少なくとも2つの前記透明部材の合わせ面と前記レーザ光とが交わる領域に対して、前記合わせ面の法線方向に位置する第1押え部材と、前記載置部に載置された前記積層部材の一方の面と対向する他方の面に接する第2の押え部材とを備え、前記第1の押え部材及び前記第2の押え部材の少なくとも一方は、前記積層部材を押圧することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、レーザ接合時において、積層部材の一方の面に接する第1の押え部材と、積層部材の一方の面と対向する他方の面に接する第2の押え部材とによって積層部材を挟んで密着させた状態でレーザ接合することができる。そして、積層部材の少なくとも2つの透明部材の合わせ面における接合領域に、該合わせ面の法線方向から応力を加えた状態でレーザ接合することができる。そのため、レーザ光が照射される接合領域において、合わせ面に生じる隙間を減少させることができる。これにより、積層部材を確実に密着することができるので、接合不良が起き難く且つ安定したレーザ接合をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態のレーザ接合装置を示す概略正面図である。
【図2】第1実施形態のレーザ接合装置を説明する概略平面図である。
【図3】第2実施形態のレーザ接合装置を説明する概略側面図である。
【図4】第2実施形態のレーザ接合装置を説明する概略平面図である。
【図5】第2実施形態のレーザ接合装置のガイド部を説明する概略拡大図である。
【図6】第2実施形態のレーザ接合装置のガイド部を説明する概略断面図である。
【図7】第3実施形態のレーザ接合装置を示す概略断面図である。
【図8】第3実施形態のレーザ接合装置を説明する概略平面図である。
【図9】変形形態のレーザ接合装置を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に説明される実施形態で具体的に記載された形態に限定されるものではない。
【0010】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係るレーザ接合装置1は、積層された複数の透明部材102,104からなる積層部材100の接合領域101にレーザ光110を照射し、積層部材100を接合する。また、レーザ接合装置1は、積層部材100を載置するための載置部2と、載置部2上の積層部材100にレーザ光110を出射するレーザ光源ユニット5とを備える。なお、本実施形態の説明においては、積層部材100に対してレーザ光110が入射する側、すなわち、レーザ光源ユニット5の集光レンズ51側を入射側という。そして、積層部材100からレーザ光110が出射する側、すなわち、積層部材100に対して集光レンズ51とは反対側を出射側という。
【0011】
図1に示すように積層部材100は、レーザ光110の入射側に位置する第1の透明部材102(以下、入射側部材という)と、レーザ光110の出射側に位置する第2の透明部材104(以下、出射側部材という)とを重ねて構成されている。すなわち、出射側部材104は、入射側部材102と出射側部材104の合わせ面103に対して入射側部材102とは反対側に位置する部材である。ここで、透明部材とは、例えば、ガラス又はサファイア等から形成された部材であり、レーザ光の波長に対して透明であり且つバンドギャップが大きな部材である。
【0012】
レーザ光源ユニット5は、超短パルスレーザ(フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザ又はナノ秒レーザ等)、又は炭酸ガスレーザ等のレーザ光110を出射する。このレーザ光110は、パルス幅が30ps以下のフェムト秒レーザであることが好ましく、パルス幅が20ps以下のフェムト秒レーザであるよりことがより好ましく、パルス幅が10fs以上且つ20ps以下のフェムト秒レーザであることがさらに好ましい。このようなフェムト秒レーザを使用すれば、後述する出射側押え部材81にレーザ光110が与える熱の影響を抑制することができる。また、レーザ光源ユニット5は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光を集光する集光レンズ51とを有する。このレーザ光源は、集光レンズ51の近傍に配置することができ、集光レンズ51から離れた位置に配置することもできる。そして、レーザ光源ユニット5は、レーザ接合装置1の制御装置(不図示)によって、所望のタイミングでレーザ光110を出射するように制御される。レーザ光110は、入射側部材102と出射側部材104との合わせ面103上の接合領域101に照射される。これにより、接合領域101に多光子吸収現象を発生させ、少なくとも入射側部材102と出射側部材104のいずれか一方を溶融させて両部材を溶接することができる。
【0013】
また、レーザ光源ユニット5からレーザ光110が照射されている状態で、積層部材100は、矢印Aで示す搬送方向Aに載置部2によって搬送される。その結果、レーザ光源ユニット5が積層部材100に対して相対的に移動する。これにより、レーザ光110が積層部材100の接合領域101を相対的に走査して、積層部材100の所望の領域を接合することができる。
【0014】
レーザ接合装置1は、載置部2に載置された積層部材100の一方の面(出射側部材104の出射側面)に接する第1の押え部材81と、載置部2に載置された積層部材100の一方の面と対向する他方の面(入射側部材102の入射側面)に接する第2の押え部材80とを備える。第1の押え部材81(以下、出射側押え部材81という)は、接合領域101に対してレーザ光110の出射側に位置し、積層部材100をレーザ光110の出射側から押える。そして、第2の押え部材80(以下、入射側押え部材80という)は、接合領域101に対してレーザ光110の入射側に位置し、積層部材100をレーザ光110の入射側から押える。また、入射側押え部材80は集光レンズ51側に位置しており、出射側押え部材81は集光レンズ51側とは反対側に位置している。
【0015】
第1実施形態において、入射側押え部材80及び出射側押え部材81は回転体である。より具体的には、入射側押え部材80及び出射側押え部材81はボールローラである。そして、入射側押え部材80は入射側部材102に当接し、出射側押え部材81は出射側部材104に当接する。そのため、積層部材100が移動すると、入射側押え部材80が入射側部材102との摩擦力によって回転し、出射側押え部材81が出射側部材104との摩擦力によって回転する。これにより、弱い押圧力であっても、積層部材100を密着させた状態で移動させてレーザ接合することができる。このような入射側押え部材80及び出射側押え部材81は、高い耐摩耗性を有する軟性材料、例えば、ポリアセタール等の樹脂によって形成することができる。このような軟性材料から形成することにより、積層部材100に傷等が発生することを防止できると共に、弱い押圧力で必要な密着範囲を確保することができる。
【0016】
出射側押え部材81は、レーザ光110の出射側に位置する出射側アーム72に固定されている。また、出射側押え部材81は、光軸120に平行な方向(以下、光軸方向という)に移動可能である。そして、出射側押え部材81は、押圧手段83によって押圧力が印加され、矢印Bで示す押圧方向において積層部材100を押圧する。第1実施形態の押圧手段83はエアシリンダであり、所定のエア圧を供給することによって出射側押え部材81が取り付けられた出射側アーム72を押圧している。従って、出射側押え部材81は、出射側アーム72を介して押圧方向Bに押圧されている。なお、この押圧手段83は、エアシリンダに限定されず、コイルバネ、ゴム等の付勢部材を使用することもできる。
【0017】
一方、入射側押え部材80は、レーザ光110の入射側に位置する入射側アーム71に固定されている。また、入射側アーム71には、レーザ光源ユニット5が固定され、レーザ光源ユニット5の集光レンズ51は、入射側アーム71に対する相対位置が固定されている。つまり、入射側押え部材80と集光レンズ51との相対位置が固定されている構成となっている。
【0018】
これらの入射側押え部材80と出射側押え部81との間に積層部材100を挟んだ状態で、集光レンズ51に対する接合領域101の位置決めをする場合、出射側押え部材81が積層部材100を押圧方向Bに押圧して行われる。つまり、集光レンズ51と相対位置が固定されている入射側押え部材80を基準として、出射側押え部材81が光軸方向に移動して、積層部材100を押圧することになる。
【0019】
よって、積層部材100が載置されている載置部2に僅かなうねりが生じている場合であっても、載置部2のうねりに影響されることなく、集光レンズ51と相対位置が固定されている入射側押え部材80を基準として接合領域101の位置決めをすることができる。つまり、このような構成によれば、レーザ光110の焦点と接合領域101との光軸方向における位置ずれを抑制することができる。
【0020】
さらに、出射側押え部材81と、入射側押え部材80及びレーザ光源ユニット5とは、入射側アーム71と出射側アーム72との間に位置する接続部7を介して一体的に保持されている。従って、載置部2によって積層部材100が搬送方向Aに移動すると、入射側押え部材80、レーザ光源ユニット5及び出射側押え部材81は、積層部材100に対して相対的に移動する。よって、レーザ接合装置1は、積層部材100がレーザ光源ユニット5に対して相対移動した場合においても、積層部材100の合わせ面103でレーザ光110が集光される部分を常に密着させることができる。そのため、積層部材100が大きい場合でも、積層部材100の周縁部に精度良く連続した接合領域101を形成することができる。
【0021】
図2に示すように、積層部材100は載置部2上に載置されており、積層部材100の端部は載置部2の縁からはみ出している。そして、レーザ光源ユニット5は、積層部材100のはみ出した部分における接合領域101にレーザ光110を照射する。また、入射側部材102には、入射側押え部材80の周面の一部が当接しており、図中では当接部80Aとして示している。そして、出射側部材104には、出射側押え部材81の周面の一部が当接しており、図中では当接部81Aとして示している。なお、第1実施形態では、入射側押え部材80のサイズが出射側押え部材81のサイズとほぼ同じである。ただし、入射側押え部材80のサイズを、出射側押え部材81のサイズよりも大きくすることもできる。
【0022】
出射側押え部材81及び当接部81Aは、レーザ接合時において、積層部材100の2つの透明部材102,104の合わせ面103とレーザ光110とが交わる接合領域101に対して、合わせ面103の法線方向に位置する。第1実施形態においては、レーザ光110が合わせ面103に対して垂直に入射している。そのため、該法線方向は、レーザ光110の光軸方向と一致する。すなわち、出射側押え部材81及び当接部81Aは、レーザ接合時において、レーザ光110の光軸120上に位置する。そして、入射側押え部材80は、レーザ接合時において、レーザ光110の光軸120を挟むように位置する少なくとも2つの押え部材を有する。つまり、入射側押え部材80及び当接部80Aは、レーザ光110の光路を開放するように位置している。従って、光軸120上に位置する出射側押え部材81と、光路を開放するように位置する入射側押え部材80とによって、積層部材100を挟んで密着させた状態でレーザ接合することができる。そのため、レーザ光110が照射される接合領域101において、入射側部材102と出射側部材104との間に生じる隙間を減少させることができる。これにより、積層部材100を確実に密着することができるので、接合不良が起き難く且つ安定して接合することができる。
【0023】
なお、入射側押え部材80は2つの押え部材を有しているが、3つ以上の押え部材を有していてもよい。また、入射側押え部材80の押え部材は、いずれも搬送方向Aに平行であり且つ接合領域101に重なる位置に配置されている。しかし、入射側押え部材80の押え部材を、接合領域101とは重ならない位置に配置することもできる。例えば、入射側押え部材80は、積層部材100の搬送方向Aに直交する方向又は交差する方向に並ぶような2つの押え部材を有していてもよい。
【0024】
ここで、レーザ接合装置1によるレーザ接合を簡単に説明する。載置部2は、積層部材100を搬送方向Aに沿ってレーザ光110が照射される接合位置へと搬送する。また、レーザ接合装置1の制御装置は、接合位置に位置する積層部材100の接合領域101における合わせ面103から集光レンズ51までの距離を予め算出している。そして、制御装置は、当該接合領域101における算出された距離と一致するように、集光レンズ51を移動させ、この状態でレーザ光110を照射する。制御装置は、この距離の算出を逐次行いながら連続照射されたレーザによる接合を行い、それと同時にレーザ照射される前の接合予定領域における距離の算出を逐次行う。このようにして、積層部材100の接合領域101がレーザ接合される。
【0025】
制御装置はCPUやメモリ部等を有しており、CPUはメモリ部に記憶されたプログラム等に基づいて、レーザ接合装置1全体を制御する。また、メモリ部は、CPUが動作するためのシステムワークメモリであるRAM、および上記プログラムやシステムソフトウェア等を格納するROM、ハードディスクドライブ等を有する。そして、CPUは、ROM又はハードディスクドライブに記憶された制御プログラムに従って、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行することができる。また、制御装置には、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボードあるいは各種スイッチなどを含む入力操作部、及びレーザ接合装置1の入力・設定状態、各種計測結果などをはじめとする種々の表示を行う表示部が接続されている。
【0026】
以上説明した第1実施形態によれば、積層部材100の一方の面に接する出射側押え部材81と、積層部材100の他方の面に接する入射側押え部材80とによって積層部材100を挟んで密着させた状態でレーザ接合することができる。そして、出射側押え部材81は、レーザ光110が照射される接合領域101に対して、入射側部材102と出射側部材104との合わせ面103の法線方向に位置している。これにより、出射側押え部材81が出射側部材104を押圧する構成においては、該法線方向において、出射側部材104側から接合領域101に押圧力を印加することができる。また、入射側押え部材80が入射側部材102を押圧する構成においては、当該法線方向において、出射側部材104側から接合領域101に反作用力を印加することができる。
【0027】
そのため、レーザ接合時には、積層部材100の接合領域101における少なくともレーザ光110の焦点が形成される部分に対して、入射側部材102と出射側部材104とを密着させる力を作用させることができる。これにより、合わせ面103に生じる隙間を減少させることができるので、接合不良が起き難く且つ安定したレーザ接合をすることができる。このように接合領域101に対して合わせ面103の法線方向から応力を加えるためには、積層部材100の一方の面に接する出射側押え部材81が合わせ面103の法線方向に位置すると共に、入射側押え部材80が積層部材100の他方の面に接することが重要となる。そして、出射側押え部材81及び入射側押え部材80の少なくとも一方が、積層部材100を押圧することにより、出射側押え部材81から接合領域101に応力(押圧力又は反作用力)を印加することができる。
【0028】
さらに、第1実施形態においては、出射側押え部材81がレーザ光110の光軸120上に配置されている。そして、入射側押え部材80がレーザ光110の光軸120を挟むように少なくとも二箇所に配置されている。従って、レーザ光110は、合わせ面103の法線方向から入射し、該法線方向は押圧方向Bと一致する。これにより、レーザ光110の焦点が形成される接合領域101に対してより正確に応力を作用させることができる。そのため、より接合不良が起き難く且つ安定したレーザ接合をすることができる。
【0029】
なお、第1実施形態においては、レーザ光110が積層部材100の合わせ面103に対して垂直方向から入射する。しかし、接合領域101に焦点を形成することができれば、合わせ面103に対して斜め方向から入射することもできる。この場合においても、積層部材100の一方の面に接する出射側押え部材81は、レーザ光110の光軸120と合わせ面103とが交わる接合領域101に対して、合わせ面103の法線方向に位置する。そして、入射側押え部材80は、積層部材100の他方の面に接している。
【0030】
また、出射側押え部材81は、積層部材100に対して相対的に移動可能であればよい。従って、積層部材100を移動させるのではなく、出射側押え部材81及びレーザ光源ユニット5を積層部材100に対して移動させてもよい。また、積層部材100が摺動できれば、出射側押え部材81又は入射側押え部材80は回転体でなくともよい。例えば、出射側押え部材81又は入射側押え部材80は、自己潤滑性を有した樹脂等から形成された非回転体であってもよい。この場合は、出射側押え部材81又は入射側押え部材80を回転させる必要がないため、回転軸等の部材を省略することができる。これにより、レーザ接合装置の製造コストを低減でき且つ小型化することができる。また、出射側押え部材81が接合領域101に対して合わせ面103の法線方向(光軸120上)に位置すれば、その当接部81Aが光軸120から離れた位置にあってもよい。
【0031】
[第2実施形態]
以下、図3〜6を参照して第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態に記載した構成については同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
第2実施形態においては、第1実施形態とは異なり出射側押え部材281が円盤状又は環状のローラである。そして、出射側押え部材281は、回転軸284に対して回転可能に支持されている。さらに、第2実施形態においては、出射側押え部材281がレーザ光110の光軸120に対して傾くことを規制する、ガイド部211が設けられている。具体的に、出射側押え部材281は、回転軸284を介して接続部材285に取り付けられている。そして、後述するように、接続部材285が固定された摺動部材214は、ガイド部211に摺動可能に係合している。これにより、出射側押え部材281が光軸120に対して傾くことを規制することができる。
【0033】
図3に示すように、第2実施形態の出射側押え部材281は、接続部材285を介して押圧手段283としてのコイルバネによって押圧方向Bに押圧されている。このコイルバネの一方の端部は、接続部材285の突出部分を付勢するように、その表面に当接している。そして、コイルバネの他方の端部は、出射側アーム72の一部に設けられた溝内に挿入されている。さらに、出射側押え部材281及び接続部材285は、出射側アーム72に対して移動可能に取り付けられている。すなわち、出射側押え部材281が固定された接続部材285は、摺動部材214に固定されている。そして、ガイド部211であるレールが、出射側アーム72に固定され且つ光軸方向に延在している。摺動部材214は、このガイド部211に摺動可能に取り付けられており、光軸120方向に平行移動することができる。そのため、出射側押え部材281、回転軸284及び接続部材285は、押圧手段283に押圧されることによって、積層部材100に向かって光軸方向に一体的に移動する。これにより、エアを供給する手段を設ける必要がないため、レーザ接合装置1を小型化することができる。
【0034】
出射側押え部材281の周面の一部は出射側部材104と当接し、図4では当接部281Aとして示されている。そのため、出射側押え部材281は、積層部材100が移動すると、出射側部材104との摩擦力によって回転軸284を中心に回転する。また、入射側押え部材80は出射側押え部材281と比較して小さいサイズを有している。このように、入射側押え部材80のサイズが小さいので、入射側押え部材80をよりレーザ光源ユニット5に近づけて配置することができる。そのため、レーザ接合装置1を小型化することができる。
【0035】
また、入射側押え部材80から出射側押え部材281までの距離が長くなると、積層部材100に作用する曲げモーメントが大きくなる。そして、曲げモーメントが大きくなると、積層部材100に大きな撓みが発生してしまう。これに対して、入射側押え部材80のサイズが小さいと、入射側押え部材80を出射側押え部材281により近づけて配置することができる。そのため、積層部材100に発生する撓みを抑制することができる。
【0036】
図6は、図5におけるVI−VI断面を示す概略断面図である。図6に示すように、第2実施形態のレーザ接合装置1は、回転軸284に対して両側に設けられたガイド部211を備える。そして、ガイド部211は、出射側押え部材281がレーザ光110の光軸120に対して傾くことを規制する。より具体的には、出射側押え部材281の回転軸284は、接続部材285に固定されている。そして、接続部材285は、摺動部材214であるリニアガイドに固定されている。この摺動部材214はレール溝を有し、このレール溝はガイド部211であるレールに係合している。よって、摺動部材214は、ガイド部211に係合することにより、出射側押え部材281がレーザ光110の光軸120に対して傾くことを規制している。
【0037】
このように、ガイド部211は、接続部材285の回転軸284を中心とする回転移動を規制する。すなわち、ガイド部211は、図5に矢印Cで示されている回転方向への接続部材285の移動を規制する。これにより、出射側押え部材281が、光軸120に対して搬送方向Aに向かって傾くように倒れることを防止できる。そのため、出射側押え部材281の当接部281Aが光軸120上から離れてしまうことを防止できる。従って、当接部281Aは、常に接合領域101と重なる位置で積層部材100を押圧することになる。これにより、接合領域101に作用する荷重が変動することがなく、常に一定の荷重で積層部材100を押圧することができる。
【0038】
以上説明した第2実施形態によれば、入射側押え部材80のサイズが小さいので、レーザ接合装置1を小型化できると共に、積層部材100の撓みを抑制できる。また、押圧手段283としてコイルバネを採用しているため、エアを供給する手段を設ける必要がなく、レーザ接合装置1を小型化することができる。さらに、ガイド部211によって、出射側押え部材281が光軸120に対して傾くように倒れることを防止できる。そのため、接合領域101に作用する荷重が変動することがなく、常に一定の荷重で積層部材100を押圧できる。これにより、積層部材を確実に密着することができるので、接合不良が起き難く且つ安定したレーザ接合をすることができる。
【0039】
[第3実施形態]
以下、図7〜8を参照して第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態に記載した構成については同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0040】
図7は、図8におけるVII−VII断面を示す概略断面図である。図7に示すように、第3実施形態のレーザ接合装置1は、第1実施形態とは異なり中空の載置部302を備える。すなわち、載置部302は積層部材100に面する開口322を有する。また、第3実施形態の入射側押え部材380は、載置部302に着脱可能に取り付けられ且つ積層部材100に当接し、積層部材100を載置部302に対して固定する固定部材である。さらに、第3実施形態においては、出射側押え部材381が開口322内で移動可能である。そして、レーザ光源ユニット5及び入射側押え部材380と、出射側押え部材381とは、互いから独立している。また、レーザ光源ユニット5及び入射側押え部材380と、出射側押え部材381とは、同期して移動するように構成されている。そして、出射側押え部材381は、レーザ光源ユニット5が移動する際に、レーザ光110の光軸120上に位置するように移動する。
【0041】
第3実施形態の入射側押え部材380は、積層部材100と当接する部分に、ゴム等の弾性部材を設けても良い。この場合、入射側押え部材380による積層部材100の傷付きを防止することができる。また、図8に示すように、入射側押え部材380は開口を有する矩形状の枠体であると共に、載置部302に固定するように取り付けることができる。そのため、積層部材100は、入射側押え部材380と載置部2とによって挟まれた状態で固定することができる。また、入射側押え部材380は、載置部302に対して着脱可能であり、積層部材100を載置する場合には載置部302から分離することができる。すなわち、入射側押え部材380及び載置部302は、それぞれ不図示の係合部を有する。そして、入射側押え部材380の係合部を載置部302の係合部に係合させることによって、入射側押え部材380が載置部302に固定することができる。また、入射側押え部材380の係合部と載置部302の係合部との係合を解除することによって、入射側押え部材380が載置部302から分離することができる。
【0042】
一方、第3実施形態の出射側押え部材381は、第1実施形態と同様に回転体である。また、出射側押え部材381は、押圧手段383によって積層部材100に向かって押圧方向Bに押圧されている。ここで、押圧手段383は、エアシリンダ、コイルバネ等によって構成することができる。また、出射側押え部材381及び押圧手段383は、不図示の移動手段に接続されている。そして、レーザ光源ユニット5が移動する際には、出射側押え部材381が、光軸120上に位置するように該移動手段によって移動される。
【0043】
図8に示すように、第3実施形態の入射側押え部材380及び載置部302は、積層部材100の全周に渡ってその端部を挟んでいる。そして、出射側押え部材381は、レーザ光源ユニット5の移動と同期して、載置部302の開口322内の所望の位置に移動することができる。これにより、積層部材100の端部以外の部分をレーザ接合することも可能となる。例えば、図8においては、積層部材100の中央部分をレーザ接合する様子を示している。
【0044】
以上説明した第3実施形態によれば、出射側押え部材381は、レーザ光源ユニット5の移動と同期させて、載置部302の開口322内の所望の位置に移動させることができる。そのため、積層部材100の所望の部分を容易に接合することができる。すなわち、第1実施形態においては、載置部2からはみ出した領域のみをレーザ接合していた。これに対して、第3実施形態においては、レーザ光源ユニット5と出射側押え部材381とが独立しているので、それぞれの移動の自由度が高い。これにより、レーザ接合装置1は、積層部材100の端部以外の所望の部分を容易にレーザ接合することができる。第3実施形態のレーザ接合装置1は、撓みが生じにくい部材、特に小さい積層部材又は剛性の強い部材を接合する場合に好適に適用することができる。
【0045】
なお、第3実施形態の入射側押え部材380及び載置部302は、積層部材100の一部の端部のみを挟むように構成することもできる。例えば、入射側押え部材380及び載置部302は、積層部材100の長辺側端部又は短辺側端部のみを挟むように構成してもよい。この場合、入射側押え部材380は、枠状の形状を有するのではなく、長辺側端部又は短辺側端部を挟むように互いから分離した一対の押え部材を有する。
【0046】
また、第3実施形態では、載置部302が矩形状の開口322を有していた。しかし、載置部の開口の形状は矩形には限られない。例えば、図9に示すように、環状の形状を有する開口422であってもよい。この場合、載置部は、積層部材100の端部が載置される端部402と、積層部材100の中央部分が載置される中央部分403とを備える。この環状の開口422は、矩形状の開口と比較して、出射側押え部材381を移動させることができる領域が狭い。しかし、積層部材100を載置部の端部402と中央部分403とによって支持することができる。そのため、積層部材100の自重に起因する撓みを抑制することができる。
【0047】
以上、実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0048】
例えば、上記実施形態では出射側押え部材81が積層部材100に向かって押圧されていた。しかし、出射側押え部材81及び入射側押え部材80の両方を、あるいは入射側押え部材80のみを、積層部材100に向かって押圧することもできる。この場合は、入射側押え部材80に押圧力を加える押圧手段を設けることもできる。また、出射側押え部材81及び入射側押え部材80を電磁石に固定することによって、電磁石が互いに引き合う力を利用して押圧することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態では二つの透明部材102,104をレーザ接合する例について説明した。しかし、三つ以上の透明部材をレーザ接合する場合にも、本発明を利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:レーザ接合装置、2:載置部、5:レーザ光源ユニット、7:接続部、51:集光レンズ、71:入射側アーム、72:出射側アーム、80:入射側押え部材、80A:当接部、81:出射側押え部材、81A:当接部、83:押圧手段、100:積層部材、101:接合領域、102:入射側部材、103:合わせ面、104:出射側部材、110:レーザ光、120:光軸、202:載置部、211:ガイド部、214:摺動部材、281:出射側押え部材、281A:当接部、283:押圧手段、284:回転軸、285:接続部材、302:載置部、322:開口、380:入射側押え部材、381:出射側押え部材、381A:当接部、383:出射側押え部材、402:端部、403:中央部分、422:開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の透明部材からなる積層部材の接合領域にレーザ光を照射し、前記積層部材を接合するレーザ接合装置であって、
前記積層部材を載置するための載置部と、
前記載置部上の前記積層部材に前記レーザ光を出射するレーザ光源ユニットと、
前記載置部に載置された前記積層部材の一方の面に接する第1の押え部材であって、前記レーザ接合時において、前記積層部材の少なくとも2つの前記透明部材の合わせ面と前記レーザ光とが交わる領域に対して、前記合わせ面の法線方向に位置する第1押え部材と、
前記載置部に載置された前記積層部材の一方の面と対向する他方の面に接する第2の押え部材とを備え、
前記第1の押え部材及び前記第2の押え部材の少なくとも一方は、前記積層部材を押圧することを特徴とする、レーザ接合装置。
【請求項2】
前記第1の押え部材は、前記レーザ接合時において、前記レーザ光の光軸上に位置することを特徴とする、請求項1に記載のレーザ接合装置。
【請求項3】
前記第1の押え部材は、前記積層部材に相対的に移動可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーザ接合装置。
【請求項4】
前記第2の押え部材は、前記レーザ接合時において、前記レーザ光の光軸を挟むように位置する少なくとも2つの押え部材を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ接合装置。
【請求項5】
前記第1の押え部材は、前記レーザ光の光軸方向に移動可能であり、
前記第2の押え部材は、前記レーザ光の光軸方向に移動不能となるように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ接合装置。
【請求項6】
前記第1の押え部材は回転体であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ接合装置。
【請求項7】
ガイド部をさらに備え、
前記ガイド部は、前記第1の押え部材が前記レーザ光の光軸に対して傾くことを規制することを特徴とする、請求項6に記載のレーザ接合装置。
【請求項8】
前記第2の押え部材は回転体であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレーザ接合装置。
【請求項9】
前記第2の押え部材は前記載置部に着脱可能であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレーザ接合装置。
【請求項10】
前記載置部は、前記積層部材に面する開口を有し、
前記第1の押え部材は、前記開口内で移動可能であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレーザ接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59786(P2013−59786A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199335(P2011−199335)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】