説明

レーザ溶着密封包装体及びその製造方法

【課題】結晶性ポリエステル樹脂から成る包装体をレーザ溶着によりヒートシールさせて密封した密封包装体を提供する。
【解決手段】相対する包装材料をレーザ溶着Lにより一体的に密封して成る密封包装体であって、前記相対する包装材料の少なくともレーザ溶着面が結晶性ポリエステル樹脂から成り、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材Sを介してレーザ溶着Lされて成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶着により密封される密封包装体及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、結晶性ポリエステル樹脂から成る包装体から成り、レーザ溶着により密封性に優れた密封包装体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器を蓋材で密封する方法としては、一般に容器及び蓋材の当接面に接着剤を施して接着する方法の他、容器及び蓋材の当接面をヒートシール性樹脂から形成し、一般的なヒートシールバーを用いて溶着させて密封することが行われている。この方法は簡便な方法であることから一般的に広く採用されているが、熱溶着工程、及びその後に行われる冷却工程に時間がかかるため、生産効率の向上が望まれている。
またヒートシールバーを用いるヒートシール方式においては、溶着部分にある程度の面積が必要であると共に、溶着面が平面状であることが必要である。また溶着部分の外面からシール面に熱が伝導する必要があることから、厚肉の容器では熱の伝導に時間がかかり、生産性が低下するため、肉厚に制約があり、形状の自由度が低いという問題がある。
【0003】
更にヒートシール部が冷却され、完全に密閉されるまでに所定の時間がかかるため、特に自生圧力を有する内容物を充填する場合や熱間充填する場合などでは、シール熱で熱膨張したヘッドスペースの気体が溶融状態のシール部から逃げることで、シール剥離を発生するおそれもある。
一方、容器及び蓋材等の溶着方法としては、レーザによる溶着も知られており、例えば、下記特許文献1には、容器本体に底蓋及び上蓋をレーザ溶着により溶着して一体化することが提案されている。
このようなレーザ溶着による包装体の部材の溶着においては、ヒートシールバーによりヒートシール性樹脂を溶着させる場合に比して、レーザビームを照射した後すぐ溶着されるため、溶着に要する時間が短縮されている。また、レーザ溶着による容器及び蓋材の密封方法においては、レーザビームの照射方向によって、容器側壁部の外面側、内面側、或いはフランジ部等種々の溶着箇所を選択することができ、形状に制約を受けることなく確実に溶着を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−128166号公報
【特許文献2】特公平7−80502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、今日、食品、日用品等の容器として広く利用されているポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と言うことがある)に代表されるポリエステル樹脂から成る成形品は、ポリエステル樹脂の融点が高いこと及びヒートシールに際して結晶化し十分なヒートシール強度を有することができないことから、レーザ溶着によっても密封することは困難であり、ポリエステル樹脂から成る包装体においても、レーザ溶着を用いてヒートシールすることにより、上述したレーザ溶着による利点を有する密封包装体を作成することが望まれている。
また本出願人により、ポリエステル樹脂から成る包装体のヒートシール性を向上するために、ヒートシール部分を非晶質化或いは低結晶化することも提案されているが(上記特許文献2)、部分的にヒートシール性を向上させることは困難であり、未だ十分満足するものではなかった。
【0006】
従って本発明の目的は、結晶性ポリエステル樹脂から成る包装体をレーザ溶着によりヒートシールさせて密封した密封包装体を提供することである。
本発明の他の目的は、結晶性ポリエステル樹脂から成る包装体を、レーザ溶着を用いてヒートシールにより密封する密封包装体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、相対する包装材料をレーザ溶着により一体的に密封して成る密封包装体であって、前記相対する包装材料の少なくともレーザ溶着面が結晶性ポリエステル樹脂から成り、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を介してレーザ溶着されていることを特徴とするレーザ溶着密封包装体が提供される。
本発明のレーザ溶着密封包装体においては、
1.シール材が、非晶性ポリエステル樹脂100重量部に対してレーザ光吸収剤を1乃至30重量部の量で含有すること、
2.レーザ光吸収剤が、食用竹炭であること、
3.包装材料が、結晶性ポリエステル樹脂から成るプリフォーム或いはシートから形成されたものであること、
4.相対する包装材料が、容器及び該容器の開口部を被う蓋であること、
5.蓋にシール材が施されていること、
が好適である。
【0008】
本発明によればまた、相対する包装材料をレーザ溶着により一体的に密封して成る密封包装体の製造方法であって、前記相対する包装材料の少なくともレーザ溶着面が結晶性ポリエステル樹脂から成り、該レーザ溶着面の少なくとも一方の面に、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を介在させて、相対する包装材料をレーザ溶着により一体的に密封することを特徴とするレーザ溶着密封包装体の製造方法が提供される。
本発明のレーザ溶着密封包装体の製造方法においては、
1.シール材が、非晶性ポリエステル樹脂100重量部に対してレーザ光吸収剤を1乃至30重量部配合したものであること、
2.レーザ光吸収剤が、食用竹炭であること、
3.包装材料が、結晶性ポリエステル樹脂から成るプリフォーム或いはシートから形成されたものであること、
4.相対する包装材料が、容器及び該容器の開口部を被う蓋であること、
5.蓋にシール材を施すこと、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の密封包装体においては、ポリエステル樹脂から成る成形品同士をレーザ溶着により密封することが可能となり、透明性、機械的強度等のポリエステル樹脂が有する優れた特性を具備した密封包装体を提供することが可能になる。
また本発明の密封包装体においては、レーザ溶着によりポリエステル樹脂からなる成形品同士がヒートシールされているため、従来なかった形状の密封容器を提供することが可能になる。
またシール材に含有されるレーザ光吸収剤として食用竹炭を用いることにより、優れたヒートシール性を発現しつつ、安全性及び衛生性をも確保することが可能になる。
【0010】
本発明の密封包装体の製造方法においては、ヒートシール性を有する非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を用いることによって、レーザ照射によって結晶性ポリエステル樹脂から成る成形体同士の溶着が可能になる。
また本発明の密封包装体の製造方法においては、ポリエステル樹脂からなる成形体同士をレーザ照射により溶着できるため、成形体の形状やヒートシール面積等の制約を受けることなく確実に溶着を行うことが可能であり、密封性に優れた包装体を提供することができる。
またレーザ溶着を用いることにより、成形体の形状やヒートシール面積などの制限がないため、新規な形態の密封包装体や、厚みのある成形品同士から成る密封包装体を成形することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の密封包装体の一例の斜視図である。
【図2】図1に示す密封包装体の溶着部の一部拡大断面図である。
【図3】本発明の密封包装体の溶着部の他の一例を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の密封包装体は、ポリエステル樹脂から成る容器と蓋の組み合わせのように、相対する包装材料をレーザ溶着により一体的に密封した密封包装体であり、レーザ溶着面に非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を介在させることにより、従来、ヒートシールにより密封することが困難であったポリエステル樹脂からなる密封包装体を提供することが可能になった。
すなわち、ポリエステル製容器においては、成形の際に配向結晶化や熱結晶化することによって、透明性や機械的強度、或いは耐熱性を付与することが行われていることから、前述した通り、一般的に使用されるポリエステル樹脂は結晶性のものがほとんどであり、ヒートシール性に劣っている。
本発明においては、このような結晶化されたポリエステル樹脂からなる成形体同士であっても、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸着剤を含有するシール材をレーザ照射して溶着させるべき部分に施すことにより、かかるシール材が発熱、溶融して、容器及び蓋の組み合わせのような、相対する包装材料同士をヒートシールすることが可能になるのである。
しかもシール材は包装材料と同種のポリエステル樹脂からなることから包装材料とのシール性にも優れ、密封性に優れた密封包装体を提供することが可能になるのである。
【0013】
本発明の密封包装体の一例を示す図1において、この密封包装体は、容器本体1及び蓋体10から成っている。容器本体1はフランジ付きカップ形状を有し、胴部2、底部3、及びフランジ部4から成っている。また蓋体10は、落とし蓋形状の成形蓋であり、底面11の周縁から上方に延びる側壁部12、及び側壁部12の上端から容器1のフランジ部4を覆うフランジ部13から成っている。また図に示す具体例では、蓋体10の底面11には開口(図示せず)が形成され、易開封性蓋14が施されている。
図2は、図1に示す容器本体1及び蓋体10をレーザ溶着によりヒートシールして成る密封包装体のヒートシール部を拡大して示す図である。図に示す具体例においては容器本体のフランジ部4の上面と蓋体10のフランジ部13の下面との間にシール材Sが設けられ、このシール材Sの箇所にレーザ照射(L)することにより、シール材S中に含有されるレーザ光吸収剤が発熱し、非晶性ポリエステル樹脂を溶融して容器本体のフランジ部4上面及び蓋体10のフランジ部13下面がヒートシールされて、密封が行われる。
【0014】
(包装材料)
本発明の密封包装体を構成する包装材料は、溶着面において結晶性のポリエステル樹脂から成っているものであることが重要であるが、この結晶性ポリエステル樹脂は、レーザ溶着によるヒートシール性を向上するために必要な要件という意味ではなく、本発明ではヒートシール性に劣る結晶性ポリエステル樹脂を用いた場合にも、効果的にレーザ溶着によるヒートシール性を得ることができることに由来する。従って、溶着面を構成するポリエステル樹脂の結晶化の程度は特に問題にならない。
また本発明においては、後述するシール材が非晶性ポリエステル樹脂を含有するものであることから、シール性の点で溶着面がポリエステル樹脂であることが、レーザ溶着によりヒートシールする上で重要であるが、溶着面以外の他の部分まで結晶性ポリエステル樹脂であることは必ずしも必要でなく、後述するように、ガスバリア性樹脂やアルミ箔等の他の材料との積層材料から成っていても勿論よい。尚、積層材料からなる場合には、レーザ照射に際して、レーザ照射側にレーザを透過可能な層を形成しておくことは言うまでもない。
【0015】
本発明の密封包装体を構成する包装材料の溶着面を構成するポリエステル樹脂としては、従来包装材料に使用される公知のポリエステル樹脂を使用することができ、ホモポリエステルでも共重合ポリエステルでも、或いはこれらの2種以上のブレンド樹脂であってもよい。
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトロカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、一方、アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,6−へキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等を挙げることができる。
【0016】
本発明の密封包装体においては、用いるポリエステルは、一般に0.4乃至1.8dL/g、特に0.5乃至1.5dL/gの固有粘度を有するのが好ましい。本発明の目的には、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
また樹脂の改質の目的で、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、結晶化用核剤、着色剤、充填剤、粉末乃至繊維状補強剤、滑剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤を、公知の処方で配合し得る。
ポリエステル樹脂との組み合わせで積層体の製造に用いることができる他の材料としては、アルミニウム箔、鉄箔、鋼箔、ブリキ箔やアルミニウム板、前記箔と同様な表面処理鋼板等の金属箔や金属シート、ガスバリア性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン共重合体、バリア性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、或いは酸化性有機成分及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性バリア性樹脂等を挙げることができる。これらの材料は押出ラミネート法、ドライラミネーション等公知の手法によりポリエステル樹脂と積層することができる。
【0017】
前記ポリエステル樹脂或いは積層体から包装材料の成形は、例えば溶融樹脂からの押出成形、射出成形、圧縮成形、ダイレクトブロー成形、二軸延伸ブロー成形、シート乃至フィルムからの圧空成形、プラグアシスト成形、張出成形、プレス成形、絞り成形、真空成形等のそれ自体公知の任意の成形手段で行われる。
包装材料の具体的な形態は、これに限定されないが、カップ、トレイ、ボトル、シート、フィルム、シート状蓋、成形蓋等、従来公知の種々の成形体を例示することができ、カップ、トレイ、ボトル等の容器と蓋の組み合わせ、フィルム又はシート同士の組み合わせからパウチ等を挙げることができる。
本発明においてはレーザ溶着を用いることから、比較的厚肉の二軸延伸ブロー成形、射出成形等による容器であっても、効率よくヒートシールにより密封することができる。また本発明においてはレーザ照射によるため、必ずしも溶着面は平面である必要がなく、種々の形態のものを確実に密封することができる。
本発明においては、結晶性ポリエステル樹脂からなる溶融樹脂を射出成形、圧縮成形してプリフォームとし、このプリフォームをプラグアシスト成形、二軸延伸ブロー成形、或いはシートを熱成形(圧空成形、真空成形、プラグアシスト成形)してなる容器と、シートを前記熱成形した蓋を好適に用いることができる。
【0018】
(シール材)
本発明において、上述した包装材料の相対する溶着面に施されるシール材は、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有することが重要な特徴である。
非晶性ポリエステル樹脂は、実質的に結晶性を示さないポリエステル樹脂を意味するものであるが、本発明においては、示差走査熱量計(DSC)で明確な融解ピークを示さないポリエステル樹脂を非晶性ポリエステル樹脂として使用する。
このような非晶性ポリエステル樹脂としては、包装材料を構成するとして例示したポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートを酸変性或いはジオール変性した非晶性共重合ポリエステルを用いることが好ましい。
【0019】
共重合に用いられる酸変性成分及びジオール変性成分としては、前述したカルボン酸成分及びアルコール成分の中から適宜選択することができ、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
このような非晶性ポリエステル樹脂の中でも、特にテレフタル酸を主体とするジカルボン酸成分と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを10〜70モル%含むジオール成分とからなるポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
また本発明において、非晶性ポリエステル樹脂は、40℃以上100℃未満、特に45乃至80℃の範囲のガラス転移温度を有することが、レーザ溶着によるヒートシール性の点で望ましく、また数平均分子量が3000乃至30000、特に10000乃至20000の範囲にあることが、塗工性や作業性の点から望ましい。
【0020】
上記非晶性ポリエステル樹脂と共に配合されるレーザ光吸収剤としては、レーザを吸収し発熱し得る限り従来公知のレーザ光吸収剤を使用でき、これに限定されないが、食用竹炭、食用備長炭、カーボンブラック、鉄粉やアルミニウム粉等の金属粉、或いは顔料等を挙げることができるが、十分な発熱量が得られると共に、分散性や衛生性等にも優れている点で食用竹炭を好適に使用することができる。
本発明に好適に用いることができる食用竹炭は、一般に平均粒径が30μm以下、特に0.5乃至20μmの範囲にあることが分散性、取扱性の点から望ましい。
本発明においては、かかるレーザ光吸収剤を非晶性ポリエステル樹脂100重量部当り、1乃至30重量部、特に5乃至20重量部の量で配合することが好適である。上記範囲よりもレーザ光吸収剤の量が多い場合には、塗工性に劣るようになり、一方上記範囲より少ない場合には、十分に非晶性ポリエステル樹脂を溶融することができずシール性に劣るおそれがある。
【0021】
本発明のシール材は、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を、溶剤に溶解した溶解液の状態で結晶性ポリエステル樹脂の溶着面に施すことが、非晶性ポリエステル樹脂の非晶性を保持する上で好ましく、また作業性の点でも好ましいことから、生産性を向上することも可能になる。
上記溶解液中には、シール材が固形分として10乃至40重量%、特に20乃至30重量%の量で含有されていることが好ましい。
シール材を溶解する溶剤としては、シール材を溶解可能なものであれば、それ自体公知の任意のものを用いることができ、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等を例示することができる。
本発明においては、上記溶媒のうち沸点の異なる2種以上の溶媒の組み合わせを用いることが望ましく、特にメチルエチルケトンとトルエンの組み合わせが好ましく、メチルエチルケトン:トルエン=70:30〜30:70(重量比)で用いることが特に望ましい。
【0022】
(製造方法)
本発明の密封包装体の製造方法においては、前述した包装材料、例えば、カップ、トレイ等の容器と蓋の組み合わせにおいて、レーザ溶着面の少なくとも一方の面に前述したシール材溶液を施し(シール材塗工工程)、相対する包装材料を組み合わせた(組み立て工程)後、このシール材を施した部分にレーザ照射する(密封工程)ことにより、密封することが可能となる。
シール材溶液の塗工量は、包装材料の形態等によって一概に規定できないが、一般的にはシール材の固形分が2乃至10g/m、特に4乃至6g/mとなるように塗布されることがシール性の点から望ましい。シール材の固形分が2g/mより少ないと容器の密封性を保てず、逆に10g/mを超えるとコーティングし難く、またコーティング後の乾燥に時間がかかるため、密封性、作業性の点から前記塗布量が好ましい。塗布されたシール材は、80乃至100℃の温度で2乃至6秒間加熱することにより、乾燥させておくことが望ましい。これにより、シール材が施された包装材料を次いで行う密封工程に効率よく提供できると共に、シール材の液ダレを防止できることから、図3に示したように相対する包装材料が垂直方向で当接する溶着面を有する場合にも好適にヒートシールすることが可能になる。
レーザ照射に際して、組み合わせた包装材料の溶着面、すなわち相対する包装材料の当接面がシール材を介して密着していることが必要であることから、相対する包装材料を押圧固定した後、レーザ照射することが望ましい。例えば、図3においては、蓋10の側壁部内面に半径方向外方に突出する環状突起15が形成されており、容器1の胴部側壁内面と蓋10の側壁部12は互いに押圧し合う関係にあり、溶着面は固定具を用いなくても密着した状態にある。勿論、かかる具体例に限定されず、固定具を用いて包装材料を固定してもよい。
【0023】
本発明に用いるレーザビームは、レーザ光吸収剤との組み合わせで決定することができ、ガスレーザ、固体レーザ、或いは半導体レーザ等を挙げることができるが、レーザ光吸収剤として食用竹炭を使用する場合には、波長808nmまたは940nmの半導体レーザを特に好適に使用することができる。
レーザ発振器の出力は20乃至150W、特に30乃至100Wの範囲にあることが好ましく、またレーザビームの波長は200nm乃至20μm、特に400nm乃至9μmの範囲にあることが好ましい。これは商業的には樹脂の透過性とレーザビームを吸収して発熱する物質の性質、およびレーザ発振器の出力、値段、安全性により決まる。
本発明においては、レーザビームのスポット径が0.2乃至3mm、特に0.5乃至2mmの範囲にあることが包装体の密閉性の点から好ましい。
またレーザビームの焦点距離は10乃至200mm、特に50乃至150mmの範囲にあることが好ましく、レーザビームを透過可能な層の厚み+30乃至70mmの範囲にあることが溶着による密閉性を確保しつつ、樹脂の劣化を防止する上で好ましい。
またレーザビームの掃引速度は、50乃至300mm/秒、特に100乃至200mm/秒の範囲にあることが、溶着による密閉性を確保しつつ、樹脂の劣化を防止する上で好ましい。
【0024】
また溶着についての条件は、溶着部分が融点以上になる発熱量を得られるならば、様々な条件で溶着が可能であり、例えば、溶着時間を短くしようとするならば、レーザ出力を上げて回転スピードを上げれば良く、高出力のレーザが使用できない状況ならば、溶着部分への照射時間を長くすればよく、容器の場合には、容器の回転スピードを落とせば良い。更に、充分に溶融できるレーザ出力が得られているならば、レーザ光径を大きくして、溶着幅を大きくすることもできる。
【実施例】
【0025】
以下、容器及び成形蓋を結晶性ポリエステル樹脂として、レーザ光吸収剤を用いた実施例を示す。
[容器]
結晶性ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、IV=0.75dL/g、融点252℃)から射出成形により皿状のプリフォームを作成し、次いでこのプリフォームを120乃至150℃に加熱してプラグアシスト成形し、側壁部が上方に行くに従って径が増大テーパ状(テーパ角:2.6度)で、高さ100mm、側壁部厚み:0.3mm(上部、中部、下部の平均)、開口部径62mm、底部外径53mm、底部厚み:0.5mm、フランジ部外径75mm、フランジ部厚み:2.0mm、内容量250mlの図1、2に示すカップ形状容器を成形した。
【0026】
[成形蓋]
容器と同様の結晶性ポリエステル樹脂から成る樹脂シートを圧空成形し、厚さ0.3mm、底面の周縁から上方に延びる側壁部の高さ5mm、前記側壁部の上端から前記容器のフランジを覆うフランジ部の長さ6mm、から成る図1、2に示す落とし蓋形状の成形蓋を圧空成形により成形した。
また、後述する実施例1、2、3は、レーザ溶着面に非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を介在させ、比較例1、2、3は、成形蓋(樹脂シート)にレーザ光吸収剤を含有させ、比較例4は、成形蓋(樹脂シート)にレーザ光吸収剤を含有させると共に、レーザ溶着面に非晶性ポリエステル樹脂のみから成るシール材を介在させた。
さらに、前記実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、及び実施例3と比較例3、4は、それぞれの成形蓋の808nmにおけるレーザ光透過率が同一となるように、レーザ光吸収剤の添加量、シール材の有無を調整した。
【0027】
[レーザ溶着]
前記カップ形状容器に水を200g充填し、容器のスタック部を受台で支え、成形蓋を押し込み、容器のフランジ部の斜め下方向からレーザを照射して溶着を行った。
[レーザ溶着条件]
レーザ発振器:イエナオプティック社製
半導体(GaAs)レーザ
波長808±3nm
最大出力140W
レーザ照射条件:出力100W
スポット径1.5mm
照射時間1.05秒(照射線速度214mm/秒)
受け台を1.0回転/秒で回転させ、1回転+α(重なり部)分照射
した。
照射方法:容器側の外方から蓋側に、前記容器及び蓋のフランジ部に向けて斜
め下方向から照射を行った。
【0028】
[成形蓋のレーザ光透過率(%)]
前述したように、各実施例及び比較例同士のレーザ光透過率を同一として、レーザ溶着による成形蓋とカップ形状容器との密封性の評価を行うため、各成形蓋のフランジ部を2cm程度の切片にし、この切片のフランジ部位置の808nm(レーザ波長と同等)の光透過度を紫外可視近赤外分光光度計V−570(日本分光(株)製)で測定して、レーザ光透過率(%)を求めた。
尚、レーザ光は、材料に吸収されることにより前記材料を発熱させることから、レーザ光透過率が小さいと発熱量は大きく、一方、レーザ光透過率が大きいと発熱量は小さくなり、前記レーザ光透過率と発熱量は相関関係を有する。
【0029】
[評価]
(1)レーザ溶着による密封性
密封軟包装袋、容器の試験方法であるJIS Z0238に基づき破裂強さ試験を行った。また、破裂強さに関しては、前記試験方法におけるレトルト殺菌用容器等に要求される破裂強さの0.02Mpa以上を密封性の判断基準とした。
【0030】
(実施例1)
成形蓋用の結晶性ポリエステル樹脂から成る樹脂シートに、非晶性ポリエステル樹脂(テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール=100//70/30モル%の組成である樹脂)100重量部に対して、食用竹炭(平均粒径10μm)から成るレーザ光吸収剤を15重量部の量で含有するシール材を5g/mの厚みでコーティングして圧空成形により成形蓋を作成し、カップ状容器と前記成形蓋をレーザ溶着して評価した。
そして、本実施例におけるレーザ光透過率は2.4%で、評価した結果、破裂強さは0.1Mpa以上であり、十分な密封性が得られた。
【0031】
(比較例1)
実施例1において、シール材を用いず、樹脂シートにレーザ光吸収剤を0.05重量部の量で含有させて同じレーザ光透過率の成形蓋とした以外は、同様にカップ状容器と前記成形蓋をレーザ溶着して評価した結果、破裂強さは0.02Mpa未満であり、十分な密封性は得られなかった。
【0032】
(実施例2)
実施例1において、シール材中のレーザ吸収剤の量を5重量部とし、レーザ光透過率を7.5%とした以外は、同様にカップ状容器と成形蓋をレーザ溶着して評価した結果、破裂強さは0.1Mpa以上であり、十分な密封性が得られた。
【0033】
(比較例2)
実施例2において、シール材を用いず、樹脂シートにレーザ光吸収剤を0.03重量部の量で含有させて同じレーザ光透過率の成形蓋とした以外は、同様にカップ状容器と前記成形蓋をレーザ溶着して評価した結果、破裂強さは0.02Mpa未満であり、十分な密封性は得られなかった。
【0034】
(実施例3)
実施例1において、シール材中のレーザ吸収剤の量を20重量部とし、レーザ光透過率を0.3%とした以外は、同様にカップ状容器と成形蓋をレーザ溶着して評価した結果、破裂強さは0.1Mpa以上であり、十分な密封性が得られた。
【0035】
(比較例3)
実施例3において、シール材を用いず、樹脂シートにレーザ光吸収剤を0.1重量部の量で含有させて同じレーザ光透過率の成形蓋とした以外は、、同様にカップ状容器と前記成形蓋をレーザ溶着して評価した結果、破裂強さは0.02Mpa未満であり、十分な密封性は得られなかった。
【0036】
(比較例4)
比較例3において、レーザ光吸収剤を含有する樹脂シートに、さらに非晶性ポリエステル樹脂のみから成るシール材を5g/mの厚みでコーティングし、同じレーザ光透過率の成形蓋とした以外は、同様にカップ状容器と前記成形蓋をレーザ溶着して評価した結果、破裂強さは0.02Mpa未満であり、十分な密封性は得られなかった。
【0037】
この結果から、包装材料が結晶性ポリエステル樹脂から成る容器及び蓋から構成されるレーザ溶着密封包装体において、実施例1、2、3のように、包装材料の相対するレーザ溶着面に、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を介在させることにより、前記シール材部分が発熱してレーザ溶着が確実に行われ、優れた密封性が得られることが判る。
一方、比較例1、2、3、4では、成形蓋全体が発熱し、カップ状容器と前記成形蓋のレーザ溶着が確実に行われないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の密封包装体においては、ポリエステル樹脂から成る成形品同士をレーザ溶着により密封することが可能となるため、新規な形態の密封包装体や、厚みのある成形品同士から成る密封包装体等、従来なかった形状のポリエステル製密封容器を提供することが可能になる。
またシール材に含有されるレーザ光吸収剤として食用竹炭を用いることにより、優れたヒートシール性を発現しつつ、安全性及び衛生性をも確保することができるため、特に食品用途に使用される包装容器に利用できる。
また本発明の密封包装体の製造方法においては、ヒートシール性を有する非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を用いることによって、レーザ照射によって結晶性ポリエステル樹脂から成る成形体同士の溶着が可能であり、成形体の形状やヒートシール面積等の制約を受けることなく確実に密封することができることから、生産性に優れ、汎用容器に好適に用いることができる。
更に新規な形態の密封包装体や、厚みのある成形品同士から成る密封包装体を成形することも可能になる。
【符号の説明】
【0039】
1 容器、2、胴部、3 底部、4 フランジ部、10 落とし蓋、11 底面、12側壁部、13 フランジ部、14 易開封性蓋、15 環状突起、S シール材、L レーザ照射。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する包装材料をレーザ溶着により一体的に密封して成る密封包装体であって、前記相対する包装材料の少なくともレーザ溶着面が結晶性ポリエステル樹脂から成り、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を介してレーザ溶着されて成ることを特徴とするレーザ溶着密封包装体。
【請求項2】
前記シール材が、非晶性ポリエステル樹脂100重量部に対してレーザ光吸収剤を1乃至30重量部の量で含有する請求項1記載のレーザ溶着密封包装体。
【請求項3】
前記レーザ光吸収剤が、食用竹炭である請求項1又は2に記載のレーザ溶着密封包装体。
【請求項4】
前記包装材料が、結晶性ポリエステル樹脂から成るプリフォーム或いはシートから形成されたものである請求項1乃至3の何れかに記載のレーザ溶着密封包装体。
【請求項5】
前記相対する包装材料が、容器及び該容器の開口部を被う蓋である請求項1乃至4の何れかに記載のレーザ溶着密封包装体。
【請求項6】
前記蓋にシール材が施されている請求項5に記載のレーザ溶着密封包装体。
【請求項7】
相対する包装材料をレーザ溶着により一体的に密封して成る密封包装体の製造方法であって、前記相対する包装材料の少なくともレーザ溶着面が結晶性ポリエステル樹脂から成り、該レーザ溶着面の少なくとも一方の面に、非晶性ポリエステル樹脂及びレーザ光吸収剤を含有するシール材を介在させて、相対する包装材料をレーザ溶着により一体的に密封することを特徴とするレーザ溶着密封包装体の製造方法。
【請求項8】
前記シール材が、非晶性ポリエステル樹脂100重量部に対してレーザ光吸収剤を1乃至30重量部配合したものである請求項7に記載のレーザ溶着密封包装体の製造方法。
【請求項9】
前記レーザ光吸収剤が、食用竹炭である請求項7又は8に記載のレーザ溶着密封包装体の製造方法。
【請求項10】
前記包装材料が、結晶性ポリエステル樹脂から成るプリフォーム或いはシートから形成されたものである請求項7乃至9の何れかに記載のレーザ溶着密封包装体の製造方法。
【請求項11】
前記相対する包装材料が、容器及び該容器の開口部を被う蓋である請求項7乃至10の何れかに記載のレーザ溶着密封包装体の製造方法。
【請求項12】
前記蓋にシール材を施す請求項11に記載のレーザ溶着密封包装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171257(P2012−171257A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36402(P2011−36402)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】