説明

レーザ発振装置及びワーク移動装置

【課題】 レーザ発振装置の製造原価上昇を招くことを抑制しつつ、反射鏡と出力鏡との平行度を微調整可能とする。
【解決手段】 ボルト109によって出力鏡サポート107が複数箇所にて第1ホルダ106側に押圧し、このボルト109による押圧力の大きさに応じてスペーサ108が圧縮変形させることにより、ベースプレート106と出力鏡サポート107との間の距離が変化する。これにより、スペーサ108の圧縮変形量は、押圧力の大きさに比べて非常に小さくなるので、反射鏡101と出力鏡104との平行度を容易に微調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振装置に関するものであり、内燃機関の点火装置に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
入力した光を増幅してレーザ光を出力するレーザ共振器は、周知のごとく、反射鏡、レーザ媒質、可飽和吸収体及び出力鏡等から構成されているとともに、これらの素子は、入力側から、反射鏡、レーザ媒質、可飽和吸収体、出力鏡の順に光軸方向に直列に配設されている。
【0003】
そして、レーザ共振器では、レーザ媒質を挟んで入力側に配設された反射鏡と出力側に配設された出力鏡との間で光の反射を繰り返すことにより、レーザ媒質での誘導放出を連鎖的に発生し、入力した光を増幅してレーザ光として出力するので、レーザ共振器では、反射鏡と出力鏡との平行度を非常に高い精度(例えば、3秒以下)とする必要がある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1に記載の発明では、出力鏡に相当する平行平面板が接着された球面状の球座ホルダを、球面状に形成された凹部内に摺動可能に設置し、ネジを用いて球座ホルダを回転変位させることで、平行度を調整可能としている。
【特許文献1】特開2001−196674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明では、調整用のネジの先端を球座ホルダに直接的に接触させて球座ホルダを回転変位させるので、例えば平行度が3秒以下となるような微調整をすることは極めて困難である。
【0006】
すなわち、例えば平行度が3秒以下となるように出力鏡の角度を微調整するには、例えば0.1〜0.5秒程度の単位で出力鏡を変位させる必要があるが、特許文献1に記載の発明と同様な構成にて出力鏡を0.1〜0.5秒程度の単位で変位可能とするには、ネジのピッチを非常に小さく(例えば、出力鏡の直径が5mmの場合には、0.07μm程度)する必要があるので、レーザ発振装置の製造原価上昇を招いてしまう。
【0007】
なお、上記のような問題は、ワークを移動させるワーク移動装置にも生じる問題である。
そこで、本発明は、上記点に鑑み、レーザ発振装置の製造原価上昇を招くことを抑制しつつ、反射鏡と出力鏡との平行度を微調整可能とすることを第1の目的とし、極微少にワークを移動させることが可能なワーク移動装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、レーザを出力するレーザ発振装置であって、反射鏡(101)、レーザ媒質(102)、可飽和吸収体(103)及び出力鏡(104)が光軸方向に直列に配設されたレーザ共振器(100)と、反射鏡(101)の位置を決めるための第1ホルダ(106)と、出力鏡(104)の位置を決めるための第2ホルダ(107)と、第1ホルダ(106)と第2ホルダ(107)との間に配設され、第1ホルダ(106)及び第2ホルダ(107)のうちいずれか一方のホルダ(106)に対する他方のホルダ(107)の位置を決定するスペーサ(108)と、複数箇所にて他方のホルダ(107)を一方のホルダ(106)側に押圧する押圧手段(109)とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、請求項1に記載の発明では、押圧手段(109)による押圧力の大きさに応じてスペーサ(108)が圧縮変形することにより、第1ホルダ(106)と第2ホルダ(107)との間の距離が変化する。
【0010】
そして、押圧手段(109)は、複数箇所にて他方のホルダ(107)を一方のホルダ(106)側に押圧するので、各押圧箇所の押圧力を調整することにより、一方のホルダ(106)に対する他方のホルダ(107)の角度、つまり、反射鏡(101)と出力鏡(104)との平行度を調整することができる。
【0011】
このとき、スペーサ(108)の圧縮変形量はスペーサ(108)の剛性によって決定され、例えばスペーサ(108)を金属製とすると、通常、スペーサ(108)の圧縮変形量は、押圧力の大きさに比べて非常に小さくなるので、特許文献1に記載の発明に比べて、反射鏡(101)と出力鏡(104)との平行度を容易に微調整することができる。
【0012】
つまり、特許文献1に記載の発明では、反射鏡(101)と出力鏡(104)との平行度を調整する際の最小変位量(以下、調整単位という。)は、前述したように調整用のネジのピッチ寸法により決定されるのに対して、請求項1に記載に発明では、スペーサ(108)の剛性によって調整単位が決定され、かつ、この調整単位は剛性が大きくなるほど小さくなる。
【0013】
したがって、請求項1に記載に発明では、ピッチ寸法の小さいネジを製作する場合に比べて、格段に容易に調整単位を小さくすることができるので、レーザ発振装置の製造原価上昇を招くことを抑制しつつ、反射鏡と出力鏡との平行度を微調整することができる。
【0014】
ところで、反射鏡(101)の位置は第1ホルダ(106)によって決定され、出力鏡(104)の位置は第2ホルダ(107)によって決定されるので、第1ホルダ(106)及び第2ホルダ(107)が押圧手段(109)の押圧力により歪むと、反射鏡(101)と出力鏡(104)との平行度を高い精度とすることができなくなるおそれがある。
【0015】
そこで、請求項2に記載の発明では、スペーサ(108)の剛性を、第1ホルダ(106)の剛性及び第2ホルダ(107)の剛性より小さくすることにより、第1ホルダ(106)又は第2ホルダ(107)よりスペーサ(108)を歪み易くして第1ホルダ(106)及び第2ホルダ(107)が押圧手段(109)の押圧力により歪むことを抑制し、反射鏡(101)と出力鏡(104)との平行度を高い精度とすることを可能としている。
【0016】
なお、請求項3に記載の発明では、反射鏡(101)と出力鏡(104)との間に配設され、反射鏡(101)を第1ホルダ(106)に押し付けるとともに、出力鏡(104)を第2ホルダ(107)に押し付ける第1弾性手段(110)を備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項4に記載の発明では、スペーサ(108)は円筒状に形成された金属にて構成されており、さらに、押圧手段は、スペーサ(108)を貫通して第1ホルダ(106)と第2ホルダ(107)とを締結する複数本のボルト(109)にて構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項5に記載の発明では、押圧手段を構成する複数本のボルト(109)は、多角形の頂点に相当する部位に位置するように、互いに同間隔で配設されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6に記載の発明では、ボルト(109)による締結力の向きと反対向きの弾性力をボルト(109)に作用させる第2弾性手段(109A)を備えることを特徴とするものである。
【0020】
請求項7に記載の発明では、レーザ共振器(100)の外周を囲むようにしてレーザ共振器(100)が光軸方向と直交する方向にずれることを防止する共振器サポート(111)と、共振器サポート(111)を第1ホルダ(106)及び第2ホルダ(107)のうちいずれか一方のホルダ(106)に押し付けて固定する第3弾性手段(111A)とを備えることを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項8に記載の発明では、ワークが載置されるとともに、その載置されたワークを移動させるワーク移動装置であって、ベース部材(201)に対して変位可能に設けられ、ワークが載置される移動テーブル(202)と、ベース部材(201)と移動テーブル(202)とにより挟まれ、ベース部材(201)に対する移動テーブル(202)の位置を決定するスペーサ(204)と、移動テーブル(202)をベース部材(201)側に押圧する押圧手段(205)とを備えることを特徴とする。
【0022】
これにより、請求項8に記載の発明では、押圧手段(205)によって移動テーブル(202)がベース部材(201)側に押圧されているので、請求項1に記載の発明と同様に、押圧手段(205)による押圧力の大きさに応じてスペーサ(204)が圧縮変形することにより、ベース部材(201)と移動テーブル(202)との間の距離が変化する。
【0023】
したがって、請求項8に記載の発明では、ピッチ寸法の小さいネジを製作する場合に比べて、格段に容易に調整単位を小さくすることができるので、極微少にワークを移動させることが可能なワーク移動装置を得ることができる。
【0024】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本実施形態は、本発明に係るレーザ発振装置を内燃機関の点火装置に適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.図面の説明
図1は本実施形態に係る点火装置1の概略構成図であり、図2はレーザ発振装置10の構造を示す断面図であり、図3はレーザ発振装置10の構造を示す斜視図である。
【0026】
2.点火装置の構造
本実施形態に係る点火装置1は、内燃機関の燃焼室内にレーザ光を集光・照射することにより、燃焼室内の混合気を着火・燃焼させるもので、現状のスパークプラグに相当するものである。
【0027】
なお、点火装置1は、図1に示すように、従来のスパークプラグと同様な外観形状を有するとともに、燃焼室が形成されるシリンダヘッド等に装着される。
そして、点火装置1は、レーザ光を誘導放出するレーザ発振装置10、レーザ発振装置10に励起光を導入する光ファイバ200、レーザ発振装置10から出力されたレーザ光を集光レンズ301に導くライトガイド300、及びこれらを保護するように収納するハウジング401〜403等から構成されている。
【0028】
また、レーザ発振装置10は、図2に示すように、反射鏡101、レーザ媒質102、可飽和吸収体103及び出力鏡104等が光軸方向(図2の左右方向)に直列に配設されたレーザ共振器100等を有して構成されている。
【0029】
ここで、反射鏡101は、光ファイバ200を介して導かれた励起光(本実施形態では、半導体レーザから出射されたレーザ光)を透過させてレーザ媒質102に入射させるとともに、レーザ媒質102にて誘導放出されたレーザ光を全反射させるものである。
【0030】
因みに、本実施形態に係る反射鏡101は、レーザ媒質102のうち光ファイバ200側の端面にTiO2又はSiO2を蒸着させることにより形成されている。
なお、集光レンズ201は、光ファイバ200を介して導かれた励起光を、レーザ媒質102に集光させる石英製のレンズであり、集光レンズサポート202は、集光レンズ201を保持する銅製の保持手段であり、励起光学系ホルダ203は、集光レンズ201及び集光レンズサポート202等を、後述するベースプレート106に固定するためのステンレス製の固定手段である。
【0031】
また、レーザ媒質102は、レーザ光の誘導放出を行うNd:YAG製の発光素子であり、出力鏡104は、レーザ媒質102にて誘導放出されたレーザ光の一部をライトガイド300側に出射させ、他のレーザ光を反射鏡101に向けて反射させるものである。因みに、出力鏡104は、石英にTiO2又はSiO2を蒸着させることにより形成されている。
【0032】
そして、レーザ共振器100では、反射鏡101と出力鏡104との間でレーザ光の反射を繰り返して共振させることにより、レーザ媒質102での誘導放出を爆発連鎖的に誘導し、入力された励起光を増幅してレーザ光として出力する。
【0033】
また、可飽和吸収体103は、レーザ媒質102から誘導放出されるレーザ光のエネルギ(出力レベル)が所定値を超えたときにのみレーザ光を出力鏡104側に出射するCr:YAG製のスイッチング素子である。
【0034】
アパーチャ105は、可飽和吸収体103から出射されたレーザ光の面積を制限することによりレーザ光の輪郭を補正するものであり、このアパーチャ105は、不透明ガラス又は金属板にレーザ光が通過可能な透光部又は孔を設けることにより構成されている。
【0035】
また、ベースプレート106は、反射鏡101の位置を決めるための第1ホルダであり、出力鏡サポート107は、出力鏡104の位置を決めるため第2ホルダである。なお、反射鏡101は、ベースプレート106の基準面106Aに接触することにより、その位置が決定され、同様に、出力鏡104は、出力鏡サポート107の基準面107Aに接触することにより、その位置が決定される。
【0036】
また、ベースプレート106と出力鏡サポート107との間には、ベースプレート106に対する出力鏡サポート107の位置を決定するスペーサ108が設けられており、出力鏡サポート107は、複数本(本実施形態では、3本)のボルト109にてベースプレート106側に押圧されている。
【0037】
そして、スペーサ108の剛性をベースプレート106の剛性及び出力鏡サポート107の剛性より小さくすべく、本実施形態では、ベースプレート106及び出力鏡サポート107をステンレス等の金属製とし、スペーサ108をアルミニウム等の金属製としている。
【0038】
また、ボルト109は、円筒状に形成されたスペーサ108内を出力鏡サポート107側から貫通してベースプレート106に締結されているとともに、図3に示すように、正三角形の頂点に3本のボルト109が位置するように、互いに同間隔に配設された状態で出力鏡サポート107をベースプレート106側に押圧している。
【0039】
なお、バネ109Aは、ボルト109による締結力の向き(本実施形態では、出力鏡サポート107側からベースプレート106側に向かう向き)と反対向きの弾性力をボルト109に作用させる弾性手段であり、このバネ109Aによりボルト109のガタツキ等が防止される。
【0040】
また、反射鏡101側のアパーチャ105と出力鏡104側のアパーチャ105との間には、図2に示すように、反射鏡101をベースプレート106の基準面106Aに押し付けるとともに、出力鏡104を出力鏡サポート107の基準面107Aに押し付けるバネ110が配設されている。
【0041】
そして、レーザ共振器100の外周側には、レーザ共振器100を外周側から囲むようにしてレーザ共振器100が光軸方向と直交する方向にずれることを防止する共振器サポート111が設けられており、この共振器サポート111は、バネ111Aにより第1ホルダ106側に押し付けられて固定されている。
【0042】
3.本実施形態に係る点火装置(特に、レーザ発振装置)の特徴
本実施形態では、押圧手段をなすボルト109によって出力鏡サポート107が複数箇所にて第1ホルダ106側に押圧されているので、ボルト109による押圧力の大きさに応じてスペーサ108が圧縮変形することにより、ベースプレート106と出力鏡サポート107との間の距離が変化する。
【0043】
そして、ボルト109は、複数箇所にて出力鏡サポート107をベースプレート106側に押圧するので、各押圧箇所の押圧力を調整することにより、ベースプレート106に対する出力鏡サポート107の角度、つまり、反射鏡101と出力鏡104との平行度を調整することができる。
【0044】
このとき、スペーサ108の圧縮変形量はスペーサ108の剛性によって決定され、アルミニウム製のスペーサ108では、その圧縮変形量は、通常、押圧力の大きさに比べて非常に小さくなるので、特許文献1に記載の発明に比べて、反射鏡101と出力鏡104との平行度を容易に微調整することができる。
【0045】
つまり、特許文献1に記載の発明では、反射鏡101と出力鏡104との平行度を調整する際の最小変位量(調整単位)は、前述したように調整用のネジのピッチ寸法により決定されるのに対して、本実施形態では、スペーサ108の剛性によって調整単位が決定され、かつ、この調整単位は、スペーサ108の剛性が大きくなるほど小さくなる。
【0046】
したがって、本実施形態では、ピッチ寸法の小さいネジを製作する場合に比べて、格段に容易に調整単位を小さくすることができるので、レーザ発振装置の製造原価上昇を招くことを抑制しつつ、反射鏡と出力鏡との平行度を微調整することができる。
【0047】
ところで、反射鏡101の位置はベースプレート106によって決定され、出力鏡104の位置は出力鏡サポート107によって決定されるので、ベースプレート106及び出力鏡サポート107がボルト109の押圧力により歪むと、反射鏡101と出力鏡104との平行度を高い精度とすることができなくなるおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態では、スペーサ108の剛性を、ベースプレート106の剛性及び出力鏡サポート107の剛性より小さくすることにより、スペーサ108がベースプレート106又は出力鏡サポート107より歪み易くし、ベースプレート106及び出力鏡サポート107がボルト109の押圧力により歪むことを抑制して反射鏡101と出力鏡104との平行度を高い精度とすることを可能としている。
【0049】
4.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、ベースプレート106が特許請求の範囲に記載された第1ホルダに相当し、出力鏡サポート107が特許請求の範囲に記載された第2ホルダに相当し、ボルト109が特許請求の範囲に記載された押圧手段に相当し、バネ110が特許請求の範囲に記載された第1弾性手段に相当し、バネ109Aが特許請求の範囲に記載された第2弾性手段に相当し、バネ111Aが特許請求の範囲に記載された第3弾性手段に相当する。
【0050】
(第2実施形態)
本実施形態は、ワークを移動させるワーク移動装置に関するものであり、図4は、本実施形態に係るワーク移動装置200の概念図である。
【0051】
1.ワーク移動装置の構成(図4参照)
ベース部材201は、光学部品、電子部品等に直接的又は間接的に固定されるホルダであり、移動テーブル202は、ワークが上面部に載置されるとともに、ベース部材201に対して変位可能に設けられたものである。
【0052】
なお、本実形態では、変位方向に移動テーブル202を貫通するガイドピン203により、移動テーブル202の変位(移動)が案内されており、移動テーブル202はガイドピン203の長手方向にのみ変位することができる。
【0053】
また、ベース部材201は、ガイドピン203の長手方向一端側を保持する第1保持部201A、ガイドピン203の長手方向他端側を保持する第2保持部201B、及び両保持部201A、201Bが一体化されたベースプレート部201C等から構成されている。
【0054】
そして、移動テーブル202の下端側に設けられたスペーサ係合部202Aと第1保持部201Aとの間には、ベース部材201に対する移動テーブル202の位置を決定するスペーサ204がスペーサ係合部202Aと第1保持部201Aとにより挟持されている。
【0055】
また、ボルト205は、移動テーブル202をベース部材201側に押圧する押圧手段であり、このボルト205は、バネ205Aを介して間接的に移動テーブル202をベース部材201側に押圧する。
【0056】
因みに、バネガイド205Bは、バネ205Aが座屈することなく圧縮変形するように、バネ205Aの変形を案内するものであり、ハンドル205Cは、ボルト205を回すための手動操作部である。
【0057】
2.本実施形態に係るワーク移動装置の特徴
本実施形態では、押圧手段をなすボルト205によって移動テーブル202が第1保持部201A側に押圧されているので、ボルト205による押圧力の大きさに応じてスペーサ204が圧縮変形することにより、第1保持部201Aと移動テーブル202との間の距離が変化する。
【0058】
このとき、スペーサ204の圧縮変形量はスペーサ204の剛性によって決定され、例えばスペーサ204を金属製(本実施形態では、アルミニウム製)とすると、通常、スペーサ204の圧縮変形量は、押圧力の大きさに比べて非常に小さくなる。
【0059】
したがって、移動テーブル202を非常に微少に移動させながら移動テーブル202を位置決めすることができるので、極微少にワークを移動させることが可能なワーク移動装置200を得ることができる。
【0060】
なお、上記効果を確実に得るには、第1実施形態と同様な趣旨から、ベース部材201及び移動テーブル202の剛性をスペーサ204に比べて大きくすることが望ましい。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、スペーサ108、204を、ベースプレート106及び出力鏡サポート107やベース部材201及び移動テーブル202等に比べてヤング率の小さい材料とすることで、スペーサ108、204の剛性を、ベースプレート106等の剛性より小さくしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば同一材料として、厚みや形状を最適化することにより、スペーサ108、204の剛性を、ベースプレート106等の剛性より小さくしてもよい。
【0061】
また、第1実施形態では、3箇所にて出力鏡サポート107をベースプレート106側に押圧したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2箇所又は4箇所以上にて出力鏡サポート107をベースプレート106側に押圧する、又はベースプレート106を出力鏡サポート107側に押圧する等してもよい。
【0062】
なお、2箇所にて押圧する場合には、例えば第1実施形態にて示された3箇所の押圧部位のうち、2箇所をボルト109等の押圧手段で押圧するといった構成とすることが望ましい。
【0063】
また、第1実施形態では、本発明に係るレーザ発振装置を内燃機関の点火装置に適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではない。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る点火装置1の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレーザ共振器100の構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレーザ共振器100の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るワーク移動装置200の概念図である。
【符号の説明】
【0065】
1…点火装置、10…レーザ発振装置、100…レーザ共振器、
101…反射鏡、102…レーザ媒質、103…可飽和吸収体、104…出力鏡、
105…アパーチャ、106…ベースプレート、106A…基準面、
107…出力鏡サポート、107A…基準面、108…スペーサ、109…ボルト、
109A…バネ、110…バネ、111…共振器サポート、111A…バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザを出力するレーザ発振装置であって、
反射鏡、レーザ媒質、可飽和吸収体及び出力鏡が光軸方向に直列に配設されたレーザ共振器と、
前記反射鏡の位置を決めるための第1ホルダと、
前記出力鏡の位置を決めるための第2ホルダと、
前記第1ホルダと前記第2ホルダとの間に配設され、前記第1ホルダ及び前記第2ホルダのうちいずれか一方のホルダに対する他方のホルダの位置を決定するスペーサと、
複数箇所にて前記他方のホルダを前記一方のホルダ側に押圧する押圧手段と
を備えることを特徴とするレーザ発振装置。
【請求項2】
前記スペーサの剛性は、前記第1ホルダの剛性及び前記第2ホルダの剛性より小さいことを特徴とする請求項1に記載のレーザ発振装置。
【請求項3】
前記反射鏡と前記出力鏡との間に配設され、前記反射鏡を前記第1ホルダに押し付けるとともに、前記出力鏡を前記第2ホルダに押し付ける第1弾性手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ発振装置。
【請求項4】
前記スペーサは円筒状に形成された金属にて構成されており、
さらに、前記押圧手段は、前記スペーサを貫通して前記第1ホルダと前記第2ホルダとを締結する複数本のボルトにて構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のレーザ発振装置。
【請求項5】
前記押圧手段を構成する複数本のボルトは、多角形の頂点に相当する部位に位置するように、互いに同間隔で配設されていることを特徴とする請求項4に記載のレーザ発振装置。
【請求項6】
前記ボルトによる締結力の向きと反対向きの弾性力を前記ボルトに作用させる第2弾性手段を備えることを特徴とする請求項5に記載のレーザ発振装置。
【請求項7】
前記レーザ共振器の外周を囲むようにして前記レーザ共振器が光軸方向と直交する方向にずれることを防止する共振器サポートと、
前記共振器サポートを前記第1ホルダ及び前記第2ホルダのうちいずれか一方のホルダに押し付けて固定する第3弾性手段とを備えることを特徴とする請求項6に記載のレーザ発振装置。
【請求項8】
ワークが載置されるとともに、その載置されたワークを移動させるワーク移動装置であって、
ベース部材に対して変位可能に設けられ、ワークが載置される移動テーブルと、
前記ベース部材と前記移動テーブルとにより挟まれ、前記ベース部材に対する前記移動テーブルの位置を決定するスペーサと、
前記移動テーブルを前記ベース部材側に押圧する押圧手段と
を備えることを特徴とするワーク移動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−21284(P2010−21284A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179395(P2008−179395)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】