説明

ロボット、及び、ロボット用のアタッチメント

【課題】被搬送物の振動を抑制するとともに、軽量かつ保守が容易で高い防塵性及び高い防滴性を有するロボット及びロボット用のアタッチメントを提供する。
【解決手段】第2のアーム15の回動中心軸と平行に設けられた主軸16と、主軸16の上端部に連結した上側連結部材21と、主軸16の下端部に連結した下側連結部材22と、上側連結部材21と下側連結部材22とを連結した2本の補助軸23と、第2のアーム15に固着され、2本の補助軸23と係合する嵌合溝を有する補助軸係合部材とを備え、2本の補助軸23は、第2のアーム15の外郭面から外側に離れた位置に配置され、主軸16の軸方向から見て、2本の補助軸23は、主軸16と第2のアーム15の回動中心軸とを結ぶ線に対して、対称に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びロボット用のアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、産業用ロボットは、速い動作速度と、高い処理精度と、生産現場に応じた外環境下での確実な動作と、を要求される。近年、こうした産業用ロボットは、それぞれの作業現場における外環境下、例えば粉塵や飛沫の有る外環境下でも少ない保守作業で確実に動作することが要求されている。例えば、スカラ型ロボットの上下軸機構として、上下軸にボールネジを使用するアーム機構の場合は、外環境の粉塵や飛散した油等が上下軸を通じて産業用ロボットの内部に進入することを防ぐために、上下軸に保護部材としてジャバラを備えるようにしている。そして、上下軸機構は、ジャバラが収縮することによって、動作速度と処理精度を維持しながら、高い防塵性や高い防滴性を確保することができるようになっている。
【0003】
また、スカラ型ロボットの上下軸機構は、その先端に備えた把持部により部品等を把持して該ロボットの水平アームの旋回によって目標位置まで旋回移動させられる。しかしながら、上下軸は先端部の質量が増すことによって旋回移動にともなう先端部及び部品の振動が増大し、速い動作速度(旋回移動)では位置決め精度等が低下するようになる。
【0004】
そこで、上下軸機構(主軸)の振動を抑制するロボットが提案されている(特許文献1)。特許文献1のロボットは、図6に示すように、基台41を備え、基台41に対して回動可能な第1の軸42に固着されて水平方向に延びる第1のアーム43の先端に第2の軸44が固着されている。第2の軸44には、第2のアーム45が回動可能に連結され、第2のアーム45の先端部には、上記第1及び第2の軸42,44と同一方向に延びるとともに、水平方向において第2のアーム45の回動とは独立して回転可能な主軸46が主軸筒45Aに支持されている。第2のアーム45の先端下部には、第2のアーム45の両側部に突出している上部支持プレート50を備え、該上部支持プレート50の先端部には、主軸46に平行な一対の補助アーム軸51を昇降自在に挿通された各軸受け52が備えられている。また、主軸46の下端には回動可能に挿通されて、補助アーム軸51の下端には固着されて主軸46と補助アーム軸51とを接続する下部支持プレート53が備えられている。すなわち、主軸46の剛性を補助アーム軸51により向上させることで、第2のアーム45の旋回移動によって主軸46の先端に生じる振動を抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−170184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のロボットに高い防塵性や高い防滴性を与えるには、主軸46に外環境の粉塵や飛散した油等が付着することを防ぐジャバラを備える必要がある。さらに、特許文献1のロボットには、図7に示すように、補助アーム軸51に外環境の粉塵や飛散した油等が付着することを防いで、軸受け52の摺動部材52aに異物などを入り込ませないための、補助アーム軸51を覆う上側ジャバラ54と下側ジャバラ55とを設ける必要がある。すなわち、特許文献1のロボットは、補助アーム軸51に上側及び下側ジャバラ54,55を設けなければ、高い防塵性や高い防滴性を確保することができなかった

【0007】
ジャバラを用いることによりロボットには高い防塵性や高い防滴性が確保できるものの、ジャバラの保守性や機械的耐久性の観点からはロボットに用いるジャバラの数は必要最小限にすることが望まれていた。
【0008】
また、補助アーム軸51と軸受け52は、摺動部材52aを介して摺動しているので、補助アーム軸51は剛性を必要とするため重くなりロボットの動作を抑える欠点もあった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、被搬送物の振動を抑制するとともに、軽量かつ保守が容易で高い防塵性及び高い防滴性を有するロボット及びロボット用のアタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のロボットは、基台に対して軸中心に回動可能に設けられた回動アームと、前記回動アームの回動中心軸と平行に設けられた主軸と、前記主軸の一方の端部に連結した第1の連結部材と、前記主軸の他方の端部に連結した第2の連結部材と、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材とを連結した2本の補助軸と、前記回動アームに固着され、前記2本の補助軸と係合する嵌合溝を有する補助軸係合部材と、を備え、前記2本の補助軸は、前記回動アームの外郭面から外側に離れた位置に配置され、前記主軸の軸方向から見て、前記2本の補助軸は、前記主軸と前記回動アームの前記回動中心軸とを結ぶ線に対して、対称に配置されている。
【0011】
本発明のロボットによれば、主軸は、その一方の端部及び他方の端部を第1及び第2の連結部材と2本の補助軸とによって連結され、2本の補助軸は、補助軸係合部材の嵌合溝と係合する。従って、補助軸係合部材に形成された単なる溝である嵌合溝によって、補助軸は、主軸の回動に伴う連れ回りを規制されるとともに、軸線方向には主軸とともに移動することができる。
【0012】
また、補助軸係合部材に形成した嵌合溝と、回動アームの外郭面から外側に離れた位置に配置された2本の補助軸とが係合しただけの簡単な構造なので、補助軸に付着した粉塵や液滴が嵌合溝に侵入しても嵌合溝によって補助軸の上下動が妨害されてロックされるようなことが無い。つまり、嵌合溝と補助軸とが回動アームの外郭面から外側に離れた位置で係合しているだけなので摺接する個所に粉塵等が介在しても補助軸は嵌合溝の開口位置側に逃げることができ上下動することができる。その結果、搬送物の振動を抑制するとともに、簡単な構造で保守が容易かつ、高い防塵性及び高い防滴性を有するロボットを提供することができる。
【0013】
このロボットは、前記補助軸が、前記主軸よりも前記回動アームの先端方向に備えられ、前記主軸を補助し前記主軸の振動を抑制することが望ましい。
このロボットによれば、補助軸等がアーム等と干渉するおそれを低減することができる。補助軸等がアーム等と干渉しないので、補助軸等の主軸への取り付けや保守等を容易にすることができる。
【0014】
このロボットは、前記主軸が、前記回動アームを貫通するとともに、前記一方の端部と前記他方の端部とが前記回動アームの外郭面の外側に配置され、前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の各々が、前記回動アームの外郭面の外側に配置されていることが望ましい。
【0015】
このロボットによれば、第1の連結部材及び第2の連結部材の各々が回動アームの外郭面の外側に配置されるため、これらの連結部材が回動アームの内側に配置される構成と比較して、保守が容易となる。
【0016】
このロボットは、前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の各々が、前記主軸から前記回動アームの先端方向に向かって開く形状に形成されるとともに、前記回動アームの先端方向における両端には前記2本の補助軸が連結され、前記主軸の軸方向から見て、前記主軸と前記回動アームの前記回動中心軸とを結ぶ線に対して、対称に形成されているkとが望ましい。
【0017】
このロボットによれば、主軸からアーム先端方向に開いた第1及び第2の連結部材のそれぞれ先端部において対応する先端部同士を相互に補助軸で接続する。従って、アームの先端方向に所定の間隔で2本備えられた各補助軸は、それぞれの補助軸が主軸の振動をそれぞれ抑制し、両補助軸の協同によっていずれの方向の振動も好適に抑制することができるようになる。
【0018】
このロボットは、前記2本の補助軸が、前記主軸と平行に設けられ、前記主軸の軸方向から見て、一方の前記補助軸と前記主軸とを結ぶ線と、他方の前記補助軸と前記主軸とを結ぶ線とのなす角度が90°であることが望ましい。
【0019】
このロボットによれば、補助軸とアームとの間の相対距離が主軸の上下動によっては変動しないため、補助軸と係合する嵌合溝の構成を容易にすることができて、それらのロボットへの取り付けを容易にすることができる。
【0020】
本発明のロボット用のアタッチメントは、基台に対して軸中心に回動可能に設けられた回動アームに用いられ、前記回動アームの回動中心軸と平行に設けられた主軸と、前記主軸の一方の端部に連結した第1の連結部材と、前記主軸の他方の端部に連結した第2の連結部材と、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材とを連結した2本の補助軸と、前記回動アームに固着され、前記2本の補助軸と係合する嵌合溝を有する補助軸係合部材と、を備えるロボット用のアタッチメントであって、前記2本の補助軸は、前記回動アームの外郭面から外側に離れた位置に配置され、前記主軸の軸方向から見て、前記2本の補助軸は、前記主軸と前記回動アームの前記回動中心軸とを結ぶ線に対して、対称に配置されている。
【0021】
本発明ロボット用のアタッチメントによれば、主軸は、その一方の端部及び他方の端部を第1及び第2の連結部材と2本の補助軸とによって連結され、2本の補助軸は、補助軸係合部材の嵌合溝と係合する。従って、補助軸係合部材に形成された単なる溝である嵌合溝によって、補助軸は、主軸の回動に伴う連れ回りを規制されるとともに、軸線方向には主軸とともに移動することができる。
【0022】
また、補助軸係合部材に形成した嵌合溝と、回動アームの外郭面から外側に離れた位置に配置された2本の補助軸とが係合しただけの簡単な構造なので、補助軸に付着した粉塵や液滴が嵌合溝に侵入しても嵌合溝によって補助軸の上下動が妨害されてロックされるようなことが無い。つまり、嵌合溝と補助軸とが回動アームの外郭面から外側に離れた位置で係合しているだけなので摺接する個所に粉塵等が介在しても補助軸は嵌合溝の開口位置側に逃げることができ上下動することができる。その結果、搬送物の振動を抑制するとともに、簡単な構造で保守が容易かつ、高い防塵性及び高い防滴性を有するロボット用のアタッチメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかるロボットの斜視構造を示す斜視図。
【図2】同実施形態のロボットの側面構造を示す側面図。
【図3】同実施形態のロボット用のアタッチメントの構造を示す図であって、(a)は正面構造を示す正面図、(b)は(a)の3−3線断面図。
【図4】同実施形態のロボット用のアタッチメントの底面構造を示す底面図。
【図5】同実施形態における補助軸係合部材である回転防止部材の平面構造を示す平面図。
【図6】従来のロボットの側面構造を示す側面図。
【図7】従来のジャバラにより保護された軸受けと補助軸を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかるロボットのアーム構造を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、スカラ型ロボット(ロボット)10の全体の斜視構造を示す斜視図である。また、図2は、スカラ型ロボット10の側面構造を示す側面図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、ロボット10は、床面等に設置された基台11を有し、その上端部に回動可能に設けた回転軸12に、第1のアーム13の基端部が連結固定されている。基台11内には、第1モータM1が設けられ、回転軸12を正逆回転するようになっている。従って、第1のアーム13は、回転軸12が回動することによって、回転軸12の軸心C1を回動中心として基台11に対して水平方向に回動する。なお、第1モータM1には第1エンコーダEm1が設けられ、回転軸12の回転角度、すなわち第1のアーム13の回動角度を検出するようになっている。
【0026】
第1のアーム13の先端部である支持部14は、第2のアーム15の基端部を回動可能に支持している。従って、第2のアーム15は、軸心C2を回動中心として第1のアーム13に対して水平方向に回動する。
【0027】
第2のアーム15の基端部には、第2モータM2が固設されている。第2モータM2はその出力軸が前記支持部14とギアを介して駆動連結されている。そして、第2モータM2が正逆回転すると、該モータM2の回転力が第2のアーム15を、軸心C2を回動中心として第1のアーム13に対して水平方向に回動させるようになっている。なお、第2モータM2には第2エンコーダEm2が設けられ、支持部14に対する回転角度、すなわち第2のアーム15の回動角度を検出するようになっている。
【0028】
第2のアーム15の先端部には、主軸筒15Aが固設されている。主軸筒15Aは、主軸16を回転可能に、かつ、上下方向に移動可能に支持している。主軸16は、第2のアーム15内の先端部に備えられた第3モータM3の正逆回転によって自らの軸心C3を回動中心として正逆回転するとともに、第2のアーム15内の先端部に備えられた昇降モータM4の正逆回転によって、主軸16を上下方向に昇降移動するようになっている。
【0029】
すなわち、主軸16は、図2に実線で示す、最上位置から図2中に破線にて示す距離L1だけ下降した最下位置の間で上下動するようになっている。なお、第3モータM3には第3エンコーダEm3が設けられ、主軸筒15Aに対する回転角度、すなわち主軸16の回動角度を検出するようになっている。また、昇降モータM4には昇降エンコーダEm4が設けられ、主軸筒15Aに対する上下方向の相対位置、すなわち主軸16先端部の第2のアーム15からの延出距離を検出するようになっている。
【0030】
主軸16の下端部17には、ツール、例えば被搬送物を把持するハンド等の取付が可能になっている。すなわち、下端部17に取り付けられたツールは、主軸16の「最上位置
」と「最下位置」の間での移動とともに一体となって上下動する。
【0031】
なお、第2のアーム15内に設けられているこれらモータM2〜M4やエンコーダEm2〜Em4の制御信号あるいはモニタ信号の各信号線はフレキシブルな配線チューブ13tを介して基台11内にまとめられ、上記第1モータM1や第1エンコーダEm1の信号線と共に、制御装置(図示略)の各対応する端子に接続されている。
【0032】
次に、上下動する主軸16を支持するアタッチメントについて説明する。
図3(a)は、第2のアーム15に取着されたアタッチメントの正面構造を示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)の3−3線断面図である。
【0033】
主軸16の上端部には、主軸16に対して回転可能かつ軸線方向に移動不能に上部軸受け21aが取着されている。また、主軸16の下端部17には、主軸16に対して回転可能かつ軸線方向に移動不能に下部軸受け22aが取着されている。上部軸受け21aには、図1に示すように、第2のアーム15の先端方向に開く形状の第1の連結部材としての上部連結部材21が固着され、上部連結部材21は上部軸受け21aを介して主軸16に対して回転可能に支持されている。また、下部軸受け22aには、図1及び図4に示すように、上部連結部材21と同一形状の第2の連結部材としての下部連結部材22が固着され、下部連結部材22は下部軸受け22aを介して主軸16に対して回転可能に支持されている。
【0034】
上部及び下部連結部材21,22の先端部間には、一対の補助軸23が連結固定されている。
補助軸23は、アルミニウムやカーボン、鉄、ステンレス等から形成されていて、外径L3で示した円筒形状に形成されている。また、一対の補助軸23の間隔をL2とする。
【0035】
第2のアーム15の先端方向の下面には、第2のアーム15の先端方向に突出すように、金属や樹脂等から形成された補助軸係合部材としての回転防止部材24が設けられている。回転防止部材24は、図5に示すように、横長の部材であって、その両端には前記補助軸23がそれぞれ軸線方向に摺動かつ回転可能に摺動する嵌合溝24aが形成されている。本実施形態では、嵌合溝24aは、例えば、回転防止部材24から嵌合溝24aに対応する部分を削って形成される非常に簡単な構造となっている。
【0036】
そして、回転防止部材24の嵌合溝24aに、それぞれ補助軸23を嵌合させると、主軸16が回動しても、上部及び下部連結部材21,22(補助軸23)は連れ回りしない。しかも、主軸16が上下動したとき、それとともに上下動する補助軸23を上下動可能にする。
【0037】
従って、回転防止部材24は、補助軸23を摺動支持することによって、補助軸23、上部及び下部連結部材21,22を介して、主軸16の振動を抑制する。
以上説明したように、本発明のロボットによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
【0038】
(1)本実施形態では、主軸16に上部及び下部連結部材21,22を介して補助軸23を設けた。従って、補助軸23によって主軸16の剛性が向上し、主軸16の振動が抑制される。その結果、主軸16を最下位置まで下降した状態で質量の大きい物を搬送する際の振動を抑え、安定した高速な搬送ができるようになる。また、補助軸23によって主軸16の剛性が向上するので、主軸16自体の軽量化を行うことができるようになる。
【0039】
(2)本実施形態では、補助軸23は、アルミニウムやカーボン、鉄、ステンレス等か
ら形成されていて、その径を主軸16より小さい径とする円筒形状に形成した。さらにパイプ形状とすることで補助軸23を軽量化して、第2のアーム15の先端部の質量の増加を抑制することができる。その結果、第2のアーム15の慣性モーメントの増加が抑制されて、主軸16の位置合わせなどへの影響を抑制することができる。
【0040】
(3)本実施形態では、上部及び下部連結部材21,22は、第2のアーム15の先端方向に開くように設けられ、つまり補助軸23は第2のアーム15の先端方向に配設され、また、回転防止部材24も、第2のアーム15の先端方向に配設された。従って、補助軸23及び回転防止部材24は、第2のアーム15の先端方向に備えられる形になり、補助軸23等が第2のアーム15に対して干渉しないようにすることができる。
【0041】
また、補助軸23等が第2のアーム15に干渉しなければ、上部及び下部連結部材21,22、補助軸23及び回転防止部材24を既存のロボットにもロボット用のアタッチメントとして容易に取り付け、取り外しをすることができるようになる。
【0042】
(4)本実施形態では、回転防止部材24は、その両端に補助軸23を嵌合支持する嵌合溝24aがそれぞれ形成された。従って、回転防止部材24に形成した嵌合溝24aに補助軸23を上下動可能に嵌合支持しただけの簡単な構造なので、嵌合溝24aに補助軸23に付着した粉塵や液滴が侵入しても嵌合溝24aによって補助軸23の上下動が妨害されてロックされるようなことが無い。つまり、嵌合溝24aに補助軸23が嵌合されているだけなので摺接する個所に粉塵等が介在しても補助軸23は嵌合溝24aの開口位置側に逃げることができ上下動することができる。その結果、搬送物の振動を抑制するとともに、簡単な構造で保守が容易な高い防塵性及び高い防滴性を有するロボット10を提供することができる。
【0043】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、補助軸23は、アルミニウムやカーボン等から形成したが、補助軸23を形成する材料はどのようなものでもよい。
【0044】
・上記実施形態では、補助軸23は、その径を主軸16の外径より小さい径とする円筒形状に形成した。しかし、補助軸23の径はこれに限られない。また、補助軸23の形状は、円筒形には限られない。ロボット10の仕様に合わせてそれぞれ好適な値や形状に選択してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、上部及び下部連結部材21,22は、第2のアーム15の先端方向に開くように設けられた。しかし、これに限らず、上部及び下部連結部材21,22は、第2のアーム15の基端方向に開くように設けてもよい。その場合は、回転防止部材24は、第2のアーム15の主軸16よりも基端側に備えればよい。そうすれば、補助軸23の主軸16に対する配置位置をより第2のアーム15の旋回方向に近くすることができて主軸16の先端の振動を抑制することができる。また、補助軸23などが第2のアーム15の基軸側に寄るので、第2のアーム15の慣性モーメントを減少させることができる。
【0046】
・上記実施形態では、上部及び下部連結部材21,22は、第2のアーム15の先端方向に開く形状に形成したが、開く角度は90度が望ましい。開く角度が90度であれば、主軸16の下端部17に生じる振動がどちらの方向に向いた振動であっても補助軸23を通じて好適に抑制することができる。
【0047】
・上記実施形態では、補助軸23は嵌合溝24aに嵌合させた。しかし、これに限らず
、嵌合溝24aの内径L4を補助軸23の外径L3よりも大きく形成して、補助軸23との間に多少の遊びを設けるようにして緩やかに嵌め合わせてもよい。そうすれば、アタッチメントには高い組立精度を不要とし、また、補助軸23に生じた撓みや曲がり等を補助軸23と嵌合溝24aとの遊びの分だけ吸収することができて、アタッチメントの保守を容易にすることができる。
【0048】
・上記実施形態では、補助軸23は、上部及び下部連結部材21,22を介して主軸16に回動可能に接続された。しかし、これに限らず、補助軸23のそれぞれの端部に軸受けを設けて、主軸16に回動可能に接続してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、上部及び下部連結部材21,22は、同様の「V字」形状に形成されたが、上部及び下部連結部材21,22は、それぞれ異なる形状であってもよく、主軸16と補助軸23は平行に配設されなくてもよい。例えば、より下端部17の振動を抑制するために、両補助軸23の間隔を下端部17近傍では狭くし、主軸16の上部では広くして、補助軸23が主軸16に対して斜めになるようにしてもよい。その場合には、回転防止部材24は、嵌合溝を長くするなどすればよい。
【0050】
・上記実施形態では、補助軸23は、円筒形状、すなわち中空に形成された。従って、中空である補助軸23の内部を通じて、下端部17に取り付けられたツールに必要な配管や配線をすることができる。
【0051】
・上記実施形態では、ロボット10は、スカラ型ロボットであった。しかし、ロボットはスカラ型ロボットには限られず、例えば、X−Y型ロボット等であってもよい。また、主軸16は垂直方向に昇降したが、主軸16はその他の方向に進出後退するものでもよい。
【符号の説明】
【0052】
C1,C2,C3…軸心、L1…距離、L2…間隔、L3…外径、L4…内径、M1…第1モータ、M2…第2モータ、M3…第3モータ、M4…昇降モータ、Em1…第1エンコーダ、Em2…第2エンコーダ、Em3…第3エンコーダ、Em4…昇降エンコーダ、10…スカラ型ロボット、11…基台、12…回転軸、13…第1のアーム、13t…配線チューブ、14…支持部、15…第2のアーム、16…主軸、17…下端部、21…上部連結部材、21a…上部軸受け、22…下部連結部材、22a…下部軸受け、23…補助軸、24…回転防止部材、24a…嵌合溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に対して軸中心に回動可能に設けられた回動アームと、
前記回動アームの回動中心軸と平行に設けられた主軸と、
前記主軸の一方の端部に連結した第1の連結部材と、
前記主軸の他方の端部に連結した第2の連結部材と、
前記第1の連結部材と前記第2の連結部材とを連結した2本の補助軸と、
前記回動アームに固着され、前記2本の補助軸と係合する嵌合溝を有する補助軸係合部材と、を備え、
前記2本の補助軸は、前記回動アームの外郭面から外側に離れた位置に配置され、
前記主軸の軸方向から見て、前記2本の補助軸は、前記主軸と前記回動アームの前記回動中心軸とを結ぶ線に対して、対称に配置されていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記補助軸は、前記主軸よりも前記回動アームの先端方向に備えられ、前記主軸を補助し前記主軸の振動を抑制することを特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記主軸は、前記回動アームを貫通するとともに、前記一方の端部と前記他方の端部とが前記回動アームの外郭面の外側に配置され、
前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の各々は、前記回動アームの外郭面の外側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の各々は、前記主軸から前記回動アームの先端方向に向かって開く形状に形成されるとともに、前記回動アームの先端方向における両端には前記2本の補助軸が連結され、前記主軸の軸方向から見て、前記主軸と前記回動アームの前記回動中心軸とを結ぶ線に対して、対称に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
前記2本の補助軸は、前記主軸と平行に設けられ、
前記主軸の軸方向から見て、一方の前記補助軸と前記主軸とを結ぶ線と、他方の前記補助軸と前記主軸とを結ぶ線とのなす角度が90°であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項6】
基台に対して軸中心に回動可能に設けられた回動アームに用いられ、
前記回動アームの回動中心軸と平行に設けられた主軸と、
前記主軸の一方の端部に連結した第1の連結部材と、
前記主軸の他方の端部に連結した第2の連結部材と、
前記第1の連結部材と前記第2の連結部材とを連結した2本の補助軸と、
前記回動アームに固着され、前記2本の補助軸と係合する嵌合溝を有する補助軸係合部材と、を備えるロボット用のアタッチメントであって、
前記2本の補助軸は、前記回動アームの外郭面から外側に離れた位置に配置され、
前記主軸の軸方向から見て、前記2本の補助軸は、前記主軸と前記回動アームの前記回動中心軸とを結ぶ線に対して、対称に配置されている
ことを特徴とするロボット用のアタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−56662(P2011−56662A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288072(P2010−288072)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2007−119050(P2007−119050)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】