説明

ロボットの防塵構造およびそれを備えたロボット

【課題】産業用ロボットの内部で発生する粉塵の拡散を防止する。
【解決手段】ロボットのハンドを有する作業軸30およびその周辺から発生する塵の拡散を防止する防塵構造60であって、蛇腹部65と前記蛇腹部65の両端にストレート部66a,66bとを有し、前記蛇腹部65で前記作業軸30を覆う蛇腹ホース62と、前記ストレート部66a,66bが嵌合する接続部を有し、前記作業軸30の軸線に沿って所定の間隔を空けて配置された2つのホース固定部61,63とを備え、前記ホース固定部61,63では、弾性部材68,69を介してクランプ材70,71で前記蛇腹ホース62の前記ストレート部66a,66bを前記接続部に締め付けることによって固定する。前記ストレート部66a,66bは、前記クランプ材70,71による締め付けに対して浮きを低減させるため、ストレート部の円周方向に沿って複数形成された薄肉部からなる緩衝部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの防塵構造およびそれを有するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
各種生産現場において、作業の自動化や省力化のため産業用ロボットが多用されている。産業用ロボットとしては、複数の回動式アームを有し、その終端の回動式アームの回動端部に作業軸を設けたスカラー型ロボットが知られている。この種のスカラー型ロボットは、例えば、基台に、水平方向へ延びる第1のアームを回動自在に設けるとともに、この第1のアームの回動端部の上部に水平方向へ延びる第2のアームを回動自在に設け、この第2のアームの回動端部に作業軸を設けている。この作業軸は、軸線が上下方向を指向し、第2のアームに上下方向へ移動自在に支持されるとともに、回転自在に支持されている。第1のアームを駆動するモーターは基台内に設けられ、第2のアームを駆動するモーターは、第2のアームの基端部に設けられている。また、第2のアームには、作業軸を回転駆動するための回転駆動装置と、作業軸を昇降させる昇降装置とが設けられている。この作業軸の下端部には、作業対象物に作業を実施するロボットハンド等のエンドエフェクターが取り付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−170184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業用ロボットはさまざまな分野で用いられている。半導体製造等のクリーン環境下では、人による発塵を低減するために産業用ロボットに置き換え、発塵を減少させるとともに、生産性向上、安定生産を図っている。ところが、産業用ロボットの内部は、ベルト等の可動部や配線部を有し、可動することによって粉塵が発生する可能性がある。作業軸等の産業用ロボットの先端部は、作業対象物に最も近づく場所であり、かつ回転や上下運動を行うため、発生した粉塵が作業対象物に悪影響を与えてしまう危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)ロボットのエンドエフェクターを保持するとともに上下動させる作業軸およびその周辺から発生する塵の拡散を防止するロボットの防塵構造であって、蛇腹部と前記蛇腹部の両端に円柱形状のストレート部とを有し、少なくとも、前記蛇腹部で前記作業軸を覆う蛇腹ホースと、前記ストレート部が嵌合する接続部を有し、前記作業軸の軸線に沿って所定の間隔を空けて配置された2つのホース固定部と、を備え、前記ホース固定部では、弾性部材を介してクランプ材で前記蛇腹ホースの前記ストレート部を前記接続部に締め付けることによって固定し、前記ストレート部は、前記クランプ材による締め付けに対して変形を低減させる緩衝部を有していることを特徴とするロボットの防塵構造。
【0007】
この構成によれば、上下動するとともに発塵の可能性のある作業軸およびその周辺を蛇腹ホースで覆うことができる。また、ホース固定部で蛇腹ホースの両端を固定するとき、弾性部材を介してクランプ材で蛇腹ホースのストレート部をホース固定部の接続部に締め付け、密着性を確保することができる。さらに、ストレート部は緩衝部を有しているため、クランプ材による締め付けに対して浮きを低減させることができる。そのため、蛇腹ホースと2つのホース固定部とを密着した状態、換言すると密閉状態で取り付けることができる。その結果、ロボットの内部で発生する塵等が外部へ拡散することを低減させることができる。従って、作業対象物に対する塵の影響を低減させることができ、安定生産、品質向上に寄与することができる。
【0008】
(適用例2)前記弾性部材は、テープ状のゴム部材であり、前記クランプ材と前記ストレート部の外周との間に環状に配置されることを特徴とする上記のロボットの防塵構造。
【0009】
この構成によれば、弾性部材としてテープ状のゴム部材を用いることによって、クランプ材とストレート部の外周との密着性を向上させることができる。
【0010】
(適用例3)前記弾性部材は、Oリングであり、前記接続部と前記ストレート部の内周との間に環状に配置されることを特徴とする上記のロボットの防塵構造。
【0011】
この構成によれば、弾性部材としてOリングを用いることによって、接続部とストレート部の内周との密着性を向上させることができる。
【0012】
(適用例4)前記ストレート部の前記緩衝部は、前記ストレート部の円周方向に沿って複数形成され軸線方向の切込み構造であることを特徴とする上記のロボットの防塵構造。
【0013】
この構成によれば、蛇腹ホースのストレート部の円周方向に沿って、複数の切込みが形成されている。そのため、クランプ材によるストレート部の締め付けによる外周方向への凹凸を切込み部で吸収することができる。その結果、外周方向の浮きを低減させることができ、蛇腹ホースとホース固定部との密着性を向上させることができる。
【0014】
(適用例5)前記ストレート部の前記緩衝部は、前記ストレート部の円周方向に沿って複数形成された薄肉部であることを特徴とする上記のロボットの防塵構造。
【0015】
この構成によれば、蛇腹ホースのストレート部の円周方向に沿って、複数の薄肉部が形成されている。そのため、クランプ材によるストレート部の締め付けによる外周方向への凹凸を薄肉部で吸収することができる。その結果、外周方向の浮きを低減させることができ、蛇腹ホースとホース固定部との密着性を向上させることができる。
【0016】
(適用例6)前記蛇腹ホースは、前記作業軸が上限の位置にあるとき、前記蛇腹部が軸線方向に略密着状態で前記ホース固定部に固定されることを特徴とする上記のロボットの防塵構造。
【0017】
この構成によれば、作業軸が上限の位置にあるとき、蛇腹ホースの蛇腹部の内容積が最も小さくなっている。そして、作業軸が動作したときは蛇腹部の内容積が拡張する方向になる。また、蛇腹ホースとホース固定部とは密閉状態で結合されている。そのため、作業軸が動作したとき、蛇腹ホースとホース固定部とで形成される空間を負圧状態にすることができる。その結果、粉塵が外部に飛散することを防止することができる。
【0018】
(適用例7)作業対象物に対して作業を実施するエンドエフェクターと、前記エンドエフェクターを保持し移動させる作業軸と、前記作業軸が最終端に配設される複数のアームと、上記のロボットの防塵構造と、を備えることを特徴とするロボット。
【0019】
この構成によれば、内部で発生する塵等が外部への拡散することを低減させたロボットを提供することができる。そのため、作業対象物に対する塵の影響を低減させ、安定生産、品質向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】スカラー型ロボットの構成を示す概略図。
【図2】作業軸駆動部の構造を示す概略図。
【図3】図2の作業軸駆動部に対して防塵構造を付加した構造を示す概略図。
【図4】第1実施例の防塵構造を説明する図。
【図5】蛇腹ホースの緩衝部を説明する図。
【図6】第2実施例の防塵構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施例のロボットの防塵構造について、スカラー型ロボットを例にとり図面を参照して説明する。なお、説明を簡便にするため、図面における各部材は簡略化し、一部、縮尺を異ならせて図示している。
【0022】
(スカラー型ロボットの構造について)
まず、スカラー型ロボットの構造について、図1を参照して説明する。図1は、スカラー型ロボットの構成を示す概略図であり、(a)はスカラー型ロボットの概略斜視図、(b)は、スカラー型ロボットの模式断面図である。なお、スカラー型ロボットは、水平面に設置される。図面において、その水平面上の1方向をX方向とし、水平面上でX方向と直交する方向をY方向とし、X方向およびY方向と直交する方向(重力方向)をZ方向としている。
【0023】
図1(a),(b)に示すように、スカラー型ロボット(以下、ロボット100という)は、基台10と、支持台11と、支持台11に対して水平方向に延びる第1アーム部16と、第1アーム部16に接合され同じく水平方向に延びる第2アーム部18と、この第2アーム部18の他方の端部を貫通して上下方向に延びる作業軸30と、作業軸30を昇降および回転させる作業軸駆動部40と、作業軸30の下端に取り付けられたエンドエフェクターとしてのロボットハンド50と、制御部20とを備えている。
【0024】
基台10は、矩形の板状に形成されロボット100の設置面に配置されており、基台10上には支持台11が配置されている。図1(b)に示すように、支持台11の内部には空間が形成され、この空間は支持板12により上下に分割されている。支持板12の下側には駆動部としての第1モーター13が配置されている。支持板12の上側には第1減速機14が配置されている。また、支持台11の底面側にはロボット100の動作を制御する制御部20が設けられている。
【0025】
第1減速機14の入力軸には第1モーター13の回転軸13aが接続されている。第1減速機14の上側には出力軸14aが配置されている。そのため、第1減速機14は、第1モーター13の回転軸13aの回転を減速し出力軸14aに伝えることができる。なお、第1減速機14には各種の減速機構を採用することができる。本実施形態では、例えば、ハーモニックドライブ(登録商標)を採用している。支持台11の上面には孔部11aが形成され、孔部11aから出力軸14aが突出して配置されている。
第1アーム部16は、略直方体部を有する形状に形成され、一端が出力軸14aに接続され、出力軸14aを支点として水平方向に回転可能に設けられている。すなわち、第1モーター13が回転駆動することにより、第1アーム部16は水平方向に回動することができる。
【0026】
図1(b)に示すように、第1アーム部16の第1モーター13と反対側の他端には第2減速機15、駆動部としての第2モーター17がこの順にZ方向に重ねて配置されている。そして、第2減速機15の出力軸15aが図中Z方向下側に配置されている。第1アーム部16には第2減速機15と対向する場所に孔部16aが形成され、孔部16aから出力軸15aが突出して配置されている。第2モーター17の回転軸(図示しない)は第2減速機15の入力軸と接続されている。そのため、第2減速機15は、第2モーター17の回転軸の回転を減速し第2減速機15の出力軸15aに伝えることができる。
【0027】
第2アーム部18は、略直方体部を有する形状に形成され、一端が出力軸15aに接続され、出力軸15aを支点として水平方向に回転可能に設けられている。すなわち、第2モーター17が回転駆動することにより、第2アーム部18は水平方向に回動することができる。なお、第1モーター13及び第2モーター17は、電気信号によって回転方向を制御可能であればよく、直流モーター、パルスモーター、交流モーター等の各種類のモーターを用いることができる。本実施形態では、例えば、直流モーターを採用している。
【0028】
図1(a),(b)に示すように、第2アーム部18上において出力軸15aに接続された側と反対側の端部には、第2アーム部18の端部を貫通して上下方向に延びる作業軸30と、作業軸30を昇降および回転させる作業軸駆動部40とが設けられている。作業軸駆動部40は、作業軸30を上下方向に移動させる昇降装置35と、作業軸30を回転させる回転駆動装置45と、これらの装置を覆う第1カバー49とが設けられている。この第1カバー49は、第2アーム部18の側縁に沿う形状であって、第2アーム部18の第2モーター17と反対側の端部の全域を覆う形状に形成されている。作業軸30は、作業軸駆動部40によって昇降および回転駆動させられる。この作業軸駆動部40の詳細については後述する。
【0029】
ロボットハンド50は、上述の作業軸30の下端に取り付けられている。ロボットハンド50は、作業軸30の昇降および回転動作に伴って、昇降および回転することができる。また、ロボットハンド50は、作業対象物としてのワークに対して各種作業を実施する。そのため、例えば、ワークを挟んで保持し移動させる作業を例にとると、ロボットハンド50は、ワークの位置を確認するためのカメラを含む各種センサー(図示せず)、ワークを挟んで保持するための指部51、その指部51を動作させる機構部(図示せず)、電磁バルブ、エアーシリンダーおよび各種モーター等の機構部の駆動源(図示せず)、およびこれらを制御するコントローラー(図示せず)を備えている。
【0030】
制御部20は、図示しない中央演算部、記憶部、ドライバー回路、インターフェース等を備えている。ドライバー回路は、第1モーター13、第2モーター17、作業軸駆動部40およびロボットハンド50の駆動源を駆動する回路である。そして、ドライバー回路およびロボットハンド50に設けられた各種センサー、コントローラー等が中央演算部と接続されている。また、中央演算部は、インターフェースを介して外部コンピューターに接続されている。記憶部は、ロボット100を制御する動作手順を示したプログラムソフトや制御に用いるデータ等を記憶している。中央演算部はプログラムソフトに従ってロボット100を総合的に制御する。
【0031】
上述の構成を備えるロボット100は、制御部20からの制御信号に従って、第1アーム部16、第2アーム部18および作業軸30の動作を制御して、ロボットハンド50をワークの位置(所定の位置)に移動させ、さらにロボットハンド50の動作を制御してワークに対して所定の作業を実施することができる。
【0032】
(作業軸駆動部の構造について)
ここで、作業軸駆動部の構造について、図2を参照して説明する。図2は、作業軸駆動部の構造を示す概略図である。図2に示すX方向およびZ方向は、図1に示すX方向およびZ方向と同一な方向を示す。
【0033】
図2に示すように、作業軸駆動部40は、作業軸30を上下方向に移動させる昇降装置35と、作業軸30を所望の角度だけ回転させる回転駆動装置45とを備えている。昇降装置35は、図示しない第3モーターから駆動力を受けて回転することができるボールねじ軸32と、このボールねじ軸32に螺合されたボールねじナット33と、このボールねじナット33に一端部を固定されるとともに他端部に作業軸30が連結された上部連結部材34とによって構成されている。この昇降装置35の各回転部材は、軸線が上下方向を指向するように形成されている。
【0034】
ボールねじ軸32は、下端部を第2アーム部18に図示しない軸受によって回転自在に支持されるとともに、第2アーム部18に立設したフレーム25に上端部を図示しない軸受によって回転自在に支持されている。上部連結部材34と作業軸30との接続部分には、作業軸30が回転することができるように図示しない軸受が介装されている。なお、この軸受は、上面側にストッパー部を有し、作業軸30の上下方向への移動を規制している。
【0035】
回転駆動装置45は、作業軸30の外周部に回転自在に支持され、図示しない第4モーターから回転力を受けるハーモニックドライブ(登録商標)からなる第3減速機42と、この第3減速機42の出力部材であるフレクスプライン42aに固着されたボールスプラインナット44とによって構成されている。ボールスプラインナット44は、従来からよく知られているものと同等の構造のもので、作業軸30に下端部から上端部まで延びるように形成した縦溝(図示せず)に係入する多数のボール(図示せず)を循環移動できるように内蔵し、作業軸30の上下方向への移動を許容しながら、作業軸30の回転を規制する構造のものである。
【0036】
すなわち、ボールスプラインナット44が第3減速機42のフレクスプライン42aと一体的に回転することによって、作業軸30がボールスプラインナット44と一体的に同一回転で回転する。また、上述した昇降装置35のボールねじ軸32が回転してボールねじナット33が上昇または下降することにより、作業軸30がボールスプラインナット44に支えられながら上下方向に移動する。なお、作業軸30は、ボールスプラインナット44に嵌合されることによって第2アーム部18を貫通するとともに支持されている。
【0037】
上述の構成を備える作業軸駆動部40は、第2アーム部18を貫通する作業軸30を所望の距離だけ上下方向に移動させることができるとともに、所望の角度だけ回転させることができる。なお、ロボットハンド50は、この作業軸30の下端部に固着されているため、所望の距離だけ上下方向に移動することができるとともに、所望の角度だけ回転することができる。
【0038】
なお、作業軸30は、円筒状に形成され、外周部には、ボールスプラインナット44に内蔵された多数のボールが係入する下端部から上端部まで延びるように形成した縦溝(図示しない)が形成されており、内周部は中空となり中空部30aを構成している。本実施例では、スペース効率向上のために、この作業軸30の内周部の中空部分には、ロボットハンド50を動作させる各種モーターの電源線やワークの位置を確認するためのカメラを含む各種センサーからの信号線等からなる電気配線が内蔵される。
【0039】
(第1実施例)
(防塵構造について)
ここで、第1実施例の防塵構造について、図3および図4を参照して説明する。図3は、図2の作業軸駆動部に対して防塵構造を付加した構造を示す概略図である。図4は、防塵構造を説明する図であり、(a)は、作業軸が上限に位置するときの防塵構造の概略断面図、(b)は、作業軸が昇降装置によって下方向に移動したときの防塵構造の概略断面図である。なお、図3および図4に示すX方向およびZ方向は、図1に示すX方向およびZ方向と同一な方向を示す。
【0040】
図3および図4(a),(b)に示すように、防塵構造60は、ホース固定部としての第2カバー61と、蛇腹ホース62と、同じくホース固定部を兼ねるベアリング63とを有している。第2カバー61は、大きさの異なる2つの円筒形状を有するように形成され、大きい第1円筒部61aは上端を第2アーム部18のZ方向下部に固着され、作業軸駆動部40の回転駆動装置45を覆っている。第2カバー61の接続部としての小さい第2円筒部61bは、第1円筒部61aのZ方向下部に位置し作業軸30を覆っている。ベアリング63は、作業軸30に対して、Z方向の位置が規制されるとともに回転自在に取り付けられている。Z方向の位置規制は、可能な限りロボットハンド50に近いことが好ましい。Z方向の位置規制の方法は特に限定しないが、作業軸30の縦溝(図示しない)が無い位置で横溝を切り、その横溝とベアリング63に設けられた突起部とを係合させて位置規制としても良い。
【0041】
蛇腹ホース62は、例えば、ナイロンや合成ゴム等の材料で形成され、蛇腹部65と蛇腹部65の両端にストレート部66a,66bとを有する。蛇腹部65は、円筒構造であり、いわゆる山折と谷折の繰り返し構造を呈している。そのため、蛇腹部65は、軸線方向に伸縮自在となっている。ストレート部66aは、円筒状を呈し、その内径は第2カバー61の第2円筒部61bの外周部よりわずかに大きく形成されている。また、ストレート部66aは、図5に示すように、端部に近い位置に軸線方向(縦)の緩衝部としての切込み74が円周方向に沿って複数設けられている。ストレート部66bは、円筒状を呈し、その内径は接続部としてのベアリング63の外周部よりわずかに大きく形成されている。また、ストレート部66bは、図5に示すように、端部に近い位置に軸線方向(縦)の緩衝部としての切込み74が円周方向に沿って複数設けられている。
【0042】
ストレート部66aは、第2カバー61の第2円筒部61bの外周部に嵌め込まれる。また、他方のストレート部66bは、ベアリング63の外周部に嵌め込まれる。そして、ストレート部66aの外周部に、例えば、弾性部材としてのウレタン製等の帯状のゴムシート68を切込み74にかかるように巻きつけ、ゴムシート68の外周部をホースクランプ70を用いて締め付ける。同様に、ストレート部66bの外周部に、例えば、弾性部材としてのウレタン製等の帯状のゴムシート69を切込み74にかかるように巻きつけ、ゴムシート69の外周部をホースクランプ71を用いて締め付ける。なお、ホースクランプ70,71は、特に限定しないが、例えば、ねじ式による金属バンド形式であっても良いし、バネ式のクランプであっても良い。
【0043】
このようにすることにより、蛇腹ホース62は、第2カバー61とベアリング63との間で密閉状態に結合される。なお、図4(a)に示すように、作業軸30が昇降装置35(図2参照)によって上限の位置にあるとき、蛇腹ホース62の蛇腹部65は山折と谷折の繰り返し構造部分がほぼ密着状態になっている。すなわち、作業軸30が上限の位置にあるとき、蛇腹ホース62の蛇腹部65は最も短い長さに設定されている。換言すると、蛇腹部65の内容積が最も小さくなっている。そのため、図4(b)に示すように、作業軸30が昇降装置35(図2参照)によって動作、すなわち伸長したときは蛇腹ホース62の蛇腹部65は山折と谷折の繰り返し構造部分が伸び、蛇腹部65の内容積が拡張する。
【0044】
以下、実施形態の効果を記載する。
(1)上述の防塵構造60は、回転および上下運動をする作業軸30を第2カバー61、蛇腹ホース62、およびベアリング63で密閉状態で覆っている。そのため、産業用ロボットの内部、特に産業用ロボットの先端部で発生する粉塵が外部に飛散することを防止することができる。その結果、作業環境をクリーンに保ち、作業対象物が粉塵の影響を受けることを低減することができる。
【0045】
(2)上述の防塵構造60は、蛇腹ホース62の両端のストレート部66a,66bに、緩衝部としての軸線方向の切込み74が複数設けられている。そして、切込み74にかかるように帯状のゴムシート68,69を巻きつけ、ゴムシート68,69の外周部をホースクランプ70,71を用いて締め付ける。そのため、第2カバー61の第2円筒部61bの外周部やベアリング63の外周部にストレート部66a,66bが挿入され、ホースクランプ70,71によって締め付けられたとき、ストレート部66a,66bの変形を切込み74で吸収して外周方向の浮き等を低減させることができる。また、弾性部材としてのゴムシート68,69で隙間を覆うことができる。その結果、蛇腹ホース62を、第2カバー61とベアリング63との間で密閉状態で結合することができる。
【0046】
(3)上述の防塵構造60は、作業軸30が昇降装置35によって上限の位置にあるとき、蛇腹ホース62の蛇腹部65の内容積が最も小さくなっている。そして、作業軸30が昇降装置35によって動作したときは蛇腹部65の内容積が拡張する。また、蛇腹ホース62は、第2カバー61とベアリング63との間で密閉状態で結合されている。そのため、作業軸30が動作したとき、産業用ロボット100の先端部、少なくとも蛇腹ホース62、第2カバー61およびベアリング63で形成される空間を負圧状態にすることができる。その結果、ロボットの先端部で発生する粉塵が外部に飛散することを防止することができる。
【0047】
(第2実施例)
ここで、第2実施例の防塵構造について図6を参照して説明する。図6は第2実施例における防塵構造を説明する図である。なお、第1実施例と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0048】
図6に示すように、第2実施例の防塵構造60aは、第2カバー61の第2円筒部61bおよび/もしくはベアリング63の外周部にラジアル方向の溝部80を形成し、Oリング82を溝部80に取り付けている。そして、蛇腹ホース62のストレート部66a,66bを、第2カバー61の第2円筒部61bの外周部および/もしくはベアリング63の外周部に嵌め込む。
【0049】
そして、ストレート部66aの外周部に、ゴムシート68を切込み74にかかるように巻きつけ、ゴムシート68の外周部をホースクランプ70を用いて締め付ける。同様に、ストレート部66bの外周部に、ゴムシート69を切込み74にかかるように巻きつけ、ゴムシート69の外周部をホースクランプ71を用いて締め付ける。
【0050】
すなわち、第2カバー61の第2円筒部61bおよびベアリング63の外周部と、蛇腹ホース62のストレート部66a,66bとの間にOリング82を設けることによって、蛇腹ホース62は、第2カバー61とベアリング63との間で密閉状態を向上させ結合されることができる。
【0051】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0052】
(第1変形例)上述の実施例では、蛇腹ホース62のストレート部66a,66bの端部に近い位置に軸線方向の切込み74が複数設けられている場合を例に説明したが、これに限定されない。図5(b)に示すように、例えば、蛇腹ホース62のストレート部66a,66bの端部に近い位置に円周方向に沿って、肉厚の薄い部分(薄肉部86)を複数設けてもよい。このようにすることによっても、第2カバー61の第2円筒部61bの外周部やベアリング63の外周部にストレート部66a,66bが挿入され、ホースクランプ70,71によって締め付けられたとき、ストレート部66a,66bの変形を薄肉部86で吸収して外周方向の浮き等を低減させることができる。
【0053】
(第2変形例)上述の第2実施例では、第2カバー61の第2円筒部61bおよび/もしくはベアリング63の外周部にOリング82を取り付けている場合を例にとり説明したが、これに限定されない。蛇腹ホース62のストレート部66a,66bの内周壁にラジアル方向に沿って形成されるとともに、内方向に突出する突起部を一周設けてもよい。この場合も、第2実施例と同様に、蛇腹ホース62のストレート部66a,66bとの間にOリング82を設けることによって、蛇腹ホース62は、第2カバー61およびベアリング63の間において密閉状態を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…基台、16…第1アーム部、18…第2アーム部、20…制御部、30…作業軸、30a…中空部、34…上部連結部材、35…昇降装置、40…作業軸駆動部、45…回転駆動装置、50…ロボットハンド、60,60a…防塵構造、61…ホース固定部としての第2カバー、61b…接続部としての第2円筒部、62…蛇腹ホース、63…ホース固定部としてのベアリング、65…蛇腹部、66a,66b…ストレート部、68,69…弾性部材としてのゴムシート、70,71…クランプ材としてのホースクランプ、74…緩衝部としての切込み、80…溝部、82…弾性部材としてのOリング、86…緩衝部としての薄肉部、100…ロボット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのエンドエフェクターを保持するとともに上下動させる作業軸およびその周辺から発生する塵の拡散を防止するロボットの防塵構造であって、
蛇腹部と前記蛇腹部の両端に円柱形状のストレート部とを有し、少なくとも、前記蛇腹部で前記作業軸を覆う蛇腹ホースと、
前記ストレート部が嵌合する接続部を有し、前記作業軸の軸線に沿って所定の間隔を空けて配置された2つのホース固定部と、を備え、
前記ホース固定部では、弾性部材を介してクランプ材で前記蛇腹ホースの前記ストレート部を前記接続部に締め付けることによって固定し、
前記ストレート部は、前記クランプ材による締め付けに対して変形を低減させる緩衝部を有していることを特徴とするロボットの防塵構造。
【請求項2】
前記弾性部材は、テープ状のゴム部材であり、前記クランプ材と前記ストレート部の外周との間に環状に配置されることを特徴とする請求項1に記載のロボットの防塵構造。
【請求項3】
前記弾性部材は、Oリングであり、前記接続部と前記ストレート部の内周との間に環状に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のロボットの防塵構造。
【請求項4】
前記ストレート部の前記緩衝部は、前記ストレート部の円周方向に沿って複数形成され軸線方向の切込み構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロボットの防塵構造。
【請求項5】
前記ストレート部の前記緩衝部は、前記ストレート部の円周方向に沿って複数形成された薄肉部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロボットの防塵構造。
【請求項6】
前記蛇腹ホースは、前記作業軸が上限の位置にあるとき、前記蛇腹部が軸線方向に略密着状態で前記ホース固定部に固定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のロボットの防塵構造。
【請求項7】
作業対象物に対して作業を実施するエンドエフェクターと、
前記エンドエフェクターを保持し移動させる作業軸と、
前記作業軸が最終端に配設される複数のアームと、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のロボットの防塵構造と、を備えることを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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