説明

ロボット及びロボットの外力検出機構

【課題】ロボットに対する外力の大きさや入力方向を正確に検出することが可能なロボットの外力検出機構を提供する。
【解決手段】ロボット1は、上部上体241と下部上体242とが連結軸701を介して揺動可能に連結された関節を有する。6軸力覚センサ38は、その外力入力部382の軸心が連結軸701と同軸となるように配置され、上部上体241から下部上体242に作用する外力を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びロボットの外力検出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータにより駆動される関節を有するロボットが知られている。例えば、特許文献1には、複数箇所の外装表面に接触検知部が配置された2脚歩行式人型ロボットが開示されている。接触検知部は、外装表面を構成する外装部と、この外装部に作用する圧力を検知する圧力センサと、外装部に作用する衝撃を緩和する衝撃吸収材とから構成されている。そして、圧力センサの検知信号から判別した転倒した状態に対する動作パターンに基づいて転倒後の起き上がり動作を行うように、関節駆動用モータ(アクチュエータ)が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3682525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたロボットにおいては、圧力センサの検知信号から転倒した状態を判別すればよいので、外装部に作用する外力の有無を検知すれば十分であり、ロボットに対する外力の大きさや入力方向を正確に検出する必要はない。
【0005】
しかしながら、ロボットに予期しない外力が作用されたとき転倒回避動作を行うためには、外力の大きさや入力方向を正確に検出する必要が生じる。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、ロボットに対する外力の大きさや入力方向を正確に検出することが可能なロボット及びロボットの外力検出機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロボットは、2つの部材が連結軸を介して揺動可能に連結された関節を有するロボットであって、前記関節を駆動するアクチュエータと、軸心が前記連結軸と同軸となるように配置された外力入力部を有し、前記2つの部材の一方から他方に作用する外力を検出する第1の力覚センサと、前記ロボットの外装に形成された隆起部の内部に配置され、該隆起部の表面に作用する外力を検出する第2の力覚センサと、前記第1及び第2の力覚センサの検出値に基づいて前記関節の動作を決定する動作決定部と、前記動作決定部が決定した前記関節の動作に基づいて、前記アクチュエータへの駆動指令を生成する駆動指令生成部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のロボットによれば、第1の力覚センサは、その外力入力部の軸心が関節の連結軸と同軸となるように配置され、関節を介して連結された一方の部材から他方の部材に作用する外力を検出する。これら部材は連結軸を介して揺動可能に連結されており、一方の部材から他方の部材に作用する外力は連結軸を介して作用される。そのため、第1の力覚センサの検出値から、一方の部材から他方の部材に作用する外力を正確に検出することができる。よって、第1の力覚センサの検出値に基づき、予期しない外力によりロボットがバランスを崩すことを回避させるように動作決定部が関節の動作を決定することにより、ロボットがバランスを崩すことを回避させることが可能となる。
【0009】
さらに、前記一方の部材に直接作用される外力に限らず、当該部材に直接的及び間接的に連結された部材に作用される外力も、第1の力覚センサを用いて検出することができる。そのため、前記他の部材をロボットの上体(胴体)等の基体とすることにより、基体に影響を及ぼす外力を検出することができ、ロボットがバランスを崩すことをより効果的に回避させることが可能となる。なお、第1の力覚センサは、3軸力覚センサや6軸力覚センサ等の多軸力覚センサであることが好ましいが、1軸力覚センサであってもよい。
【0010】
さらに、ロボットの外装に形成された隆起部は、ロボットが移動動作等をするとき障害物等の外環境に接触しやすく、人間等の外物がロボットに接触等するとき外物に接触しやすい。そして、第2の力覚センサは、この隆起部の内部に配置され、隆起部の表面に作用する外力を検出するので、外環境や外物から作用される外力を検出しやすい。よって、第2の力覚センサの検出値に基づき、予期しない外力によりロボットがバランスを崩すことを回避させるように動作決定部が関節の動作を決定することにより、ロボットがバランスを崩すことを回避させることが可能となる。なお、第2の力覚センサは、1軸力覚センサ(圧力センサ)で十分であるが、3軸力覚センサや6軸力覚センサ等の多軸力覚センサであってもよい。
【0011】
本発明の第1の外力検出機構は、2つの部材が連結軸を介して揺動可能に連結された関節を有するロボットの外力検出機構であって、前記関節を駆動するアクチュエータと、軸心が前記連結軸と同軸となるように配置された外力入力部を有し、前記2つの部材の一方から他方に作用する外力を検出する多軸力覚センサとを備えることを特徴とする。
【0012】
この外力検出機構によれば、多軸力覚センサは、その外力入力部の軸心が関節の連結軸と同軸となるように配置され、関節を介して連結された一方の部材から他方の部材に作用する外力を検出する。そのため、多軸力覚センサの検出値から、一方の部材から他方の部材に作用する外力を正確に検出することができる。また、前記一方の部材に直接作用される外力に限らず、当該部材に直接的及び間接的に連結された部材に作用される外力も、多軸力覚センサを用いて検出することができる。
【0013】
本発明の第2の外力検出機構は、前記ロボットの外装に形成された隆起部の内部に、該隆起部の表面に作用する外力を検出する力覚センサを備えることを特徴とする。
【0014】
この外力検出機構によれば、力覚センサは、ロボットの外装に形成された隆起部の内部に配置され、隆起部の表面に作用する外力を検出するので、外環境や外物から作用される外力を検出しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットの概略構成を示す斜視図。
【図2】上部上体と下部上体とを連結する関節の概略構成を示す部分側断面図。
【図3】上部上体の胸部の概略構成を示す部分縦断面図。
【図4】肩部の概略構成を示す部分側断面図。
【図5】制御ユニットの構成を示すブロック図
【図6】制御ユニットの機能的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
まず、図1を参照して、本発明のロボットの実施形態であるロボット1の全体構成について説明する。
【0018】
ロボット1は、2足歩行人型移動ロボットであり、上体24から下方に延設された左右一対の脚体(脚部リンク)2R,2Lを備える。上体24は、上部上体241と、下部上体242とからなる。上部上体241と、下部上体242とは、関節70によりZ軸まわりに相対的に回動可能に連結されている。また、上部上体241は、関節72,74によりX軸まわり、Y軸まわりにそれぞれ下部上体242に対して傾動可能とされている。
【0019】
なお、本実施形態の説明では、符号R,Lはそれぞれ右側、左側の構成部材であることを意味する。また、X軸方向、Y軸方向は、水平面上で互いに直交する2軸方向であり、X軸方向はロボット1の前後方向(ロール軸方向)、Y軸方向はロボット1の左右方向(ピッチ軸方向)に相当する。また、Z軸方向は鉛直方向(重力方向)であり、ロボット1の上下方向(ヨー軸方向)に相当する。
【0020】
両脚体2R,2Lは同一構造であり、それぞれ6個の関節を備える。その6個の関節は上体24側から順に、股(腰部)の回旋(回転)用(上体24に対するヨー方向の回転用)の関節10R,10Lと、股(腰部)のロール方向(X軸まわり)の回転用の関節12R,12Lと、股(腰部)のピッチ方向(Y軸まわり)の回転用の関節14R,14Lと、膝部のピッチ方向の回転用の関節16R,16Lと、足首のピッチ方向の回転用の関節18R,18Lと、足首のロール方向の回転用の関節20R,20Lとから構成される。
【0021】
各脚体2R(L)の足首の2つの関節18R(L),20R(L)の下部には、各脚体2R(L)の先端部を構成する足平22R(L)が取着されるとともに、両脚体2R,2Lの最上位には、各脚体2R(L)の股の3つの関節10R(L),12R(L),14R(L)を介して上体24が取り付けられている。上体24の内部には、制御ユニット26(図5参照)などが格納されている。
【0022】
上記構成の各脚体2R(L)においては、股関節(又は腰関節)は関節10R(L),12R(L),14R(L)から構成され、膝関節は関節16R(L)から構成され、足関節(足首関節)は関節18R(L),20R(L)から構成される。また股関節と膝関節とは大腿リンク28R(L)で連結され、膝関節と足関節とは下腿リンク30R(L)で連結される。
【0023】
各脚体2R(L)の上記構成により、各脚体2の足平22R(L)は、上体24に対して6つの自由度を与えられている。そして、ロボット1の移動に際して両脚体2R,2Lを合わせて12個の関節を適宜な角度で駆動することで、両足平22R,22Lの所望の運動を行うことができる。これによりロボット1は任意に3次元空間を移動することができる。
【0024】
上体24の上部の両側部には左右一対の腕体80R,80Lが取り付けられる。各腕体80R(L)は、それに備える複数の関節によって、該腕体80R(L)を上体24に対して前後に振る等の運動を行うことが可能となっている。
【0025】
両腕体80R,80Lは同一構造であり、それぞれ4個の関節を備える。その4個の関節は上体24側から順に、肩部のロール方向(X軸まわり)の回転用の関節82R,82Lと、肩部のピッチ方向(Y軸まわり)の回転用の関節84R,84Lと、肘部のピッチ方向の回転用の関節86R,86Lと、手首のピッチ方向の回転用の関節88R,88Lとから構成される。各腕体80R(L)の手首の関節88R(L)の下部には、手部89R(L)が設けられている。
【0026】
各腕体80R(L)において、肩関節は関節82R(L),84R(L)から構成され、肘関節は関節86R(L)から構成され、手根関節は関節88R(L)から構成される。また肩関節と肘関節とは上部腕体85R(L)で連結され、肘関節と手根関節とは下部腕体87R(L)で連結されている。
【0027】
上体24の上端部には頭部90が配置される。頭部90は、上体24に対して関節(図示略)のまわりに回動可能とされている。頭部90には、ロボット1の周囲を撮像するカメラ92が設けられている。
【0028】
そして、各脚体2の足首関節18R(L),20R(L)の下方には足平22R(L)との間に公知の6軸力覚センサ34が介装されている。この6軸力覚センサ34は、各脚体2の足平22R(L)の着地の有無、及び各脚体2に作用する床反力(接地荷重)などを検出するためのものであり、床反力の並進力の3方向成分Fx,Fy,Fz並びにモーメントの3方向成分Mx,My,Mzの検出信号を制御ユニット26に出力する。
【0029】
また、上体24には、Z軸(鉛直方向)に対する上体24の傾き(姿勢角)とその角速度とを検出するための傾斜センサ36が設置され、その検出信号が該傾斜センサ36から制御ユニット26に出力される。
【0030】
図2を参照して、上体24には、本発明の第1の力覚センサに相当する6軸力覚センサ38が配置されている。この6軸力覚センサ38は、静電容量素子又は歪み抵抗素子等を利用した図示しないセンサチップが支持される固定台座部381と、外力が入力される円柱状の外力入力部382と、外力入力部382に入力された外力をセンサチップに伝達する図示しない伝達部とから構成され、伝達部から伝達された外力に応じてセンサチップが当該外力を検出する。尚、6軸力覚センサ34は、起歪体に歪ゲージが貼付されたロードセルタイプのものであってもよい。
【0031】
6軸力覚センサ38は、外力入力部382の軸心が関節70の連結軸701と同軸となるように配置され、連結軸701を介して連結される2つの部材のうちの一方の部材である上部上体241から他方の部材である下部上体242に作用する外力を検出する。連結軸701は、減速機付きの電動モータ(アクチュエータ)702の回転駆動がベルト703を介して伝達されZ軸まわり(ヨー方向)に回転する駆動軸(出力軸)であり、上部上体241を下部上体242に対してZ軸まわりに揺動可能に連結している。そして、固定台座381は下部上体242を構成するフレーム242aに固定され、連結軸701はフレーム242aに固定された軸受704に支持されている。一方、外力入力部382は、上部上体241の下部外殻を構成するフレーム241aに固定されている。
【0032】
6軸力覚センサ38は、上部上体241を介して下部上体242に作用する外力を検出し、当該外力の並進力の3方向成分Fx,Fy,Fz並びにモーメントの3方向成分Mx,My,Mzの検出信号を制御ユニット26(図5参照)に出力する。
【0033】
また、図3を参照して、上部上体241の胸中央前面部には、本発明の第2の力覚センサに相当する力覚センサ40が配置されている。力覚センサ40は、公知の静電容量素子又は歪み抵抗素子等を利用した圧力センサ(1軸力覚センサ)である。
【0034】
力覚センサ40は、上部上体241の胸部外殻を構成する外装カバー241bに形成された隆起部241cと、上部上体241の内部骨格を構成する内部フレーム241dとの間に配置されている。そして、力覚センサ40の外力入力部401の前側には、隆起部241cの内面形状に沿って形成された部材402が当接している。なお、隆起部241cの内面と部材402との間にゴム等の弾性材からなる緩衝部材を設けてもよい。
【0035】
力覚センサ40は、隆起部241cに作用する外力を検出し、当該外力の検出信号を制御ユニット26(図5参照)に出力する。
【0036】
図4を参照して、左右各肩部には、本発明の第1の力覚センサに相当する6軸力覚センサ42が配置されている。なお、各肩部は、左右対称であり、ここでは、右側肩部について説明する。
【0037】
6軸力覚センサ42は、静電容量素子又は歪み抵抗素子等を利用した図示しないセンサチップが支持される固定台座部421と、外力が入力される円柱状の外力入力部422と、外力入力部422に入力された外力をセンサチップに伝達する図示しない伝達部とから構成され、伝達部から伝達された外力に応じてセンサチップが当該外力を検出する。
【0038】
6軸力覚センサ42は、外力入力部422の軸心が関節84Rの連結軸841と同軸となるように配置され、連結軸841を介して連結される2つの部材のうちの一方の部材である上部腕体85Rから他方の部材である上部上体241に作用する外力を検出する。連結軸841は、減速機付きの電動モータ(アクチュエータ)842の回転駆動が伝達されY軸まわり(ピッチ方向)に回転する駆動軸(出力軸)であり、上部腕体85Rを上部上体241に対してY軸まわりに揺動可能に連結している。そして、電動モータ842及び固定台座421は上部上体241の内部骨格を構成する内部フレーム241dに固定されている。一方、外力入力部422は、連結軸841に外挿され、上部腕体85Rの骨格を構成するフレーム851に固定されている。
【0039】
6軸力覚センサ42は、上部腕体85Rを介して上部上体241に作用する外力を正確に検出し、当該外力の並進力の3方向成分Fx,Fy,Fz並びにモーメントの3方向成分Mx,My,Mzの検出信号を制御ユニット26(図5参照)に出力する。
【0040】
また、上部腕体85Rの肩外側部には、本発明の第2の力覚センサに相当する力覚センサ44が配置されている。力覚センサ44は、公知の静電容量素子又は歪み抵抗素子等を利用した圧力センサ(1軸力覚センサ)である。
【0041】
力覚センサ44は、上部腕体85Rの肩部外殻を構成する外装カバー852に形成された隆起部852aと、上部腕体85Rの内部骨格を構成する内部フレーム851との間に配置されている。そして、力覚センサ44の入力部441の外側には、隆起部852aの内面形状に沿って形成された部材442が当接している。なお、隆起部852aの内面と部材442との間にゴム等の弾性材からなる緩衝部材を設けてもよい。
【0042】
力覚センサ44は、隆起部852aに作用する外力を検出し、当該外力の検出信号を制御ユニット26に出力する。なお、電動モータ842にかかる負荷を低減するために、重量物である力覚センサ44は連結軸421と同軸に配置されている。
【0043】
さらに、図4を参照して、ロボット1の他の各関節には、それを駆動するために電動モータ32が設けられている。そして、電動モータ32,702,842の回転量(各関節の回転角)を検出するためのエンコーダ(ロータリエンコーダ)33とが設けられ、エンコーダ33の検出信号は制御ユニット26(図5参照)に出力される。
【0044】
さらに、図5を参照して、ロボット1の外部には、ロボット1の操縦用のジョイスティック(操作器)46が設けられている。ジョイスティック46を操作することにより、直進移動しているロボット1を旋回させるなど、ロボット1の歩容に対する要求を必要に応じて制御ユニット26に入力できる。入力できる要求は、例えばロボット1の移動時の歩容形態(歩行、走行等)、遊脚の着地位置姿勢や着地時刻、又はこれらの着地位置姿勢や着地時刻を規定する指令データ(例えばロボット1の移動方向、移動速度等)である。
【0045】
制御ユニット26は、マイクロコンピュータにより構成されており、CPUからなる第1の演算装置60及び第2の演算装置62、A/D変換器50、カウンタ56、D/A変換器66、RAM54、ROM64、並びにこれらの間のデータ授受を行うバスライン52を備えている。この制御ユニット26では、6軸力覚センサ34,38,42、傾斜センサ36、力覚センサ40,44、ジョイスティック46等の出力信号はA/D変換器50でデジタル値に変換された後、バスライン52を介してRAM54に入力される。また、ロボット1の各関節のエンコーダ33(ロータリエンコーダ)の出力はカウンタ56を介してRAM54に入力される。
【0046】
第1の演算装置60は後述のように、目標歩容を生成するとともに、関節角変位指令(各関節の変位角もしくは各電動モータ32の回転角の指令値)を算出し、RAM54に送出する。また、第2の演算装置62はRAM54から関節角変位指令と、エンコーダ33の出力信号に基づいて検出された関節角の実測値とを読み出し、各関節の駆動に必要な操作量を算出してD/A変換器66とサーボアンプ32aとを介して各関節を駆動する電動モータ32,702,842に出力する。
【0047】
次に、図6を参照して、本実施形態におけるロボット1の歩容生成装置及び制御装置について説明する。図6中の「実ロボット」の部分以外の部分が制御ユニット26が実行する処理機能(主として第1の演算装置60及び第2の演算装置62の機能)によって構成される。なお、歩容制御装置及び制御装置の詳細は、本出願人が先に出願した国際公開公報WO2006/064599号公報等に詳細に記載されているので、ここでは、簡易な説明に留める。
【0048】
制御ユニット26は、目標歩容を自在かつリアルタイムに生成して出力する歩容生成装置100を備えている。歩容生成装置100には、遊脚側の足平22の着地位置姿勢(着地予定位置姿勢)や着地時刻(着地予定時刻)等の目標歩容生成用の基本的な要求値(要求パラメータ)が、ジョイスティック46の所要の操作等に応じて歩容生成装置100に与えられる。そして、歩容生成装置100は、要求パラメータを用いて目標歩容を生成する。
【0049】
また、歩容生成装置100には、6軸力覚センサ38,42及び力覚センサ40,44(以下、これらを合わせて、外力覚センサ38〜44という)が検出した外力が与えられる。外力覚センサ38〜44が予期しない外力を検出したとき、ロボット1がバランスを崩すおそれがあるので、歩容生成装置100はバランスが崩れることを回避する動作を行うための目標歩容を生成する。
【0050】
具体的には、例えば、外力覚センサ38〜44の検出信号から上部上体241に前方から外力が作用されたと判断した場合には、作用された外力の大きさや方向に応じて、上部上体241を後方に移動させる、上部上体241を回旋させていなす、遊脚中の足平22を後方に着地させ踏ん張る、腕体80を前方に出しバランスをとる等の動作を行うための目標歩容を生成する。また、外力覚センサ38〜44の検出信号から腕体80に外側方から外力が作用されたと判断した場合には、上部上体241を傾斜させる、遊脚の足平22を側方に着地させる、遊脚を用いてバランスをとる等の動作を行うための目標歩容を生成する。
【0051】
歩容生成装置100は、要求パラメータ及び外力に応じて、目標歩容の目標足平位置姿勢軌道、目標床反力鉛直成分軌道等、目標歩容の一部の構成要素を規定するパラメータ(歩容パラメータという)を決定した上で、その歩容パラメータを用いて目標歩容の瞬時値を逐次決定し、該目標歩容の時系列パターンを生成する。
【0052】
歩容生成装置100が出力する目標歩容は、目標上体位置姿勢軌道(上体24の目標位置及び目標姿勢の軌道)、目標足平位置姿勢軌道(各足平22の目標位置及び目標姿勢の軌道)、目標腕姿勢軌道(各腕体80の目標姿勢の軌道)、目標全床反力中心点(目標ZMP)軌道、及び目標全床反力軌道から構成される。
【0053】
歩容生成装置100で生成された目標歩容のうち、目標上体位置姿勢(軌道)、目標腕姿勢(軌道)が、ロボット幾何学モデル(逆キネマティクス演算部)102に送出される。
【0054】
また、目標足平位置姿勢(軌道)、目標ZMP軌道(目標全床反力中心点軌道)、及び目標全床反力(軌道)(目標床反力水平成分と目標床反力鉛直成分)は、複合コンプライアンス動作決定部104に送られるとともに、目標床反力分配器106にも送られる。そして、目標床反力分配器106で、床反力は各足平22R,22Lに分配され、目標各足平床反力中心点及び目標各足平床反力が決定される。この決定された目標各足平床反力中心点及び目標各足平床反力は複合コンプライアンス動作決定部104に送られる。
【0055】
複合コンプライアンス動作決定部104から、機構変形補償付き修正目標足平位置姿勢(軌道)がロボット幾何学モデル102に送られる。ロボット幾何学モデル102は、目標上体位置姿勢(軌道)と機構変形補償付き修正目標足平位置姿勢(軌道)を入力されると、それらを満足する各関節の関節変位指令(値)を算出して変位コントローラ108に送る。
【0056】
変位コントローラ108は、ロボット幾何学モデル102で算出された関節変位指令(値)を目標値としてロボット1の各関節の変位を追従制御する。
【0057】
また、ロボット1に生じた姿勢傾斜偏差θerrx,θerry(詳しくは目標上体姿勢角に対する実姿勢角の偏差で、ロール方向(X軸回り)の姿勢角偏差がθerrxであり、ピッチ方向(Y軸回り)の姿勢角偏差がθerryである)が傾斜センサ36を介して検出され、その検出値は姿勢安定化制御演算部112に送られる。この姿勢安定化制御演算部112で、ロボット1の上体姿勢角を目標上体姿勢角に復元するための目標全床反力中心点(目標ZMP)まわり補償全床反力モーメントが算出されて複合コンプライアンス動作決定部104に送られる。
【0058】
ロボット1に生じた床反力(詳しくは実各足床反力)は6軸力覚センサ34によって検出される。その検出値は複合コンプライアンス動作決定部104に送られる。複合コンプライアンス動作決定部104は、入力値に基づいて目標床反力を修正する。具体的には、目標全床反力中心点(目標ZMP)回りに補償全床反力モーメントが作用するように目標床反力を修正する。
【0059】
複合コンプライアンス動作決定部104は、修正された目標床反力に、センサ検出値などから算出される実ロボットの状態及び床反力を一致させようと上記機構変形補償付き修正目標足平位置姿勢(軌道)を決定する。ただしすべての状態を目標に一致させることは事実上不可能であるので、これらの間にトレードオフ関係を与えて妥協的になるべく一致させる。すなわち、各目標に対する制御偏差に重みを与えて、制御偏差(又は制御偏差の2乗)の重み付き平均が最小になるように制御する。これにより、実際の足平位置姿勢と全床反力とが目標足平位置姿勢と目標全床反力とに概ね従うように制御される。
【0060】
なお、制御ユニット26のうち、歩容生成装置100、ロボット幾何学モデル102、複合コンプライアンス動作決定部104、目標床反力分配器106及び姿勢安定化制御演算部112は、外力覚センサ38〜44の検出値に基づいて関節の動作を決定し、本発明における動作決定部に相当する。そして、制御ユニット26のうち、変位コントローラ108は、動作決定部が決定した関節の動作に基づいて、電動モータ32,702,842への駆動指令を生成し、本発明の駆動指令生成部に相当する。
【0061】
以上のように、6軸力覚センサ38は、その外力入力部382の軸心が関節70の連結軸701と同軸となるように配置され、上部上体241から下部上体242に作用する外力を検出する。上部上体241と下部上体242とは連結軸701を介して揺動可能に連結されており、上部上体241から下部上体242に作用する外力は連結軸701を介して作用される。そのため、6軸力覚センサ38の検出値から、上部上体241から下部上体242に作用する外力を正確に検出することができる。よって、6軸力覚センサ38の検出値に基づき関節の動作を決定することにより、予期しない外力によりロボット1がバランスを崩すことを回避させることが可能となる。
【0062】
さらに、上部上体241に直接作用される外力に限らず、上部上体241に直接的及び間接的に連結された両腕体80R,80Lや頭部90に作用される外力も、6軸力覚センサ38を用いて検出することができる。そのため、上部上体241を介して下部上体242に影響を及ぼす外力を検出することができ、ロボット1がバランスを崩すことをより効果的に回避させることが可能となる。
【0063】
また、上部上体241の胸部の外装カバー241bに隆起部241cが形成されており、この隆起部241cに外環境や外物が接触しやすい。そして、力覚センサ40は、隆起部241cの内部に配置され、隆起部241cの表面に作用する外力を検出するので、外環境や外物から作用される外力を検出しやすい。よって、力覚センサ40の検出値に基づき関節の動作を決定することにより、予期しない外力によりロボット1がバランスを崩すことを回避させることが可能となる。
【0064】
また、6軸力覚センサ42は、その外力入力部422の軸心が関節84R(L)の連結軸841と同軸となるように配置され、上部腕体85R(L)から上部上体241に作用する外力を検出する。上部腕体85R(L)と上部上体241とは連結軸841を介して揺動可能に連結されており、上部腕体85R(L)から上部上体241に作用する外力は連結軸841を介して作用される。そのため、6軸力覚センサ42の検出値から、上部腕体85R(L)から上部上体241に作用する外力を正確に検出することができる。よって、6軸力覚センサ42の検出値に基づき関節の動作を決定することにより、予期しない外力によりロボット1がバランスを崩すことを回避させることが可能となる。
【0065】
さらに、上部腕体85R(L)に直接作用される外力に限らず、上部腕体85R(L)に直接的及び間接的に連結された下部腕体87R(L)や手部89R(L)に作用される外力も、6軸力覚センサ42を用いて検出することができる。そのため、上部腕体85R(L)を介して上部上体241に影響を及ぼす外力を検出することができ、ロボット1がバランスを崩すことをより効果的に回避させることが可能となる。
【0066】
また、上部腕体85R(L)の肩部の外装カバー852に隆起部852aが形成されており、この隆起部852aに外環境や外物が接触しやすい。そして、力覚センサ44は、隆起部852aの内部に配置され、隆起部852aの表面に作用する外力を検出するので、外環境や外物から作用される外力を検出しやすい。よって、力覚センサ44の検出値に基づき関節の動作を決定することにより、予期しない外力によりロボット1がバランスを崩すことを回避させることが可能となる。
【0067】
なお、以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、実施形態では、6軸力覚センサ38,42は3軸力覚センサや1軸力覚センサ等であってもよく、力覚センサ40,44は3軸力覚センサや6軸力覚センサ等の多軸力覚センサであってもよい。
【0068】
さらに、6軸力覚センサを他の関節に対して設けてもよく、内部に力覚センサを配置した隆起部を他の部位、例えば、背中部、腿部、頭部等に設けてもよい。
【0069】
さらに、各関節の配置や関節や配置は、実施形態に限定されない。そして、ロボット1は、人型2足移動ロボットに限定されず、例えば、獣や昆虫等を模した4足移動ロボットや6足移動ロボットや頭部や腕体を有さないロボット等であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…ロボット、 10R,10L,12R,12L,14R,14L,16R,16L,18R,18L,20R,20L,70,72R,72L,74R,74L,82R,82L,84R,84L,86R,86L,88R,88L…関節、 26…制御ユニット(動作決定部、駆動指令生成部)、 32,702,842…電動モータ(アクチュエータ)、 38,42…6軸力覚センサ(第1の力覚センサ、力覚センサ)、 40,44…力覚センサ(第2の力覚センサ)、 382,422…外力入力部、 85R,85L…上部腕体(部材)、 241…上部上体(部材)、 241b,852…外装カバー(外装)、 241c,852a…隆起部、 242…下部上体(部材)、 701,841…連結軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部材が連結軸を介して揺動可能に連結された関節を有するロボットであって、
前記関節を駆動するアクチュエータと、
軸心が前記連結軸と同軸となるように配置された外力入力部を有し、前記2つの部材の一方から他方に作用する外力を検出する第1の力覚センサと、
前記ロボットの外装に形成された隆起部の内部に配置され、該隆起部の表面に作用する外力を検出する第2の力覚センサと、
前記第1及び第2の力覚センサの検出値に基づいて前記関節の動作を決定する動作決定部と、
前記動作決定部が決定した関節の動作に基づいて、前記アクチュエータへの駆動指令を生成する駆動指令生成部とを備えることを特徴とするロボット。
【請求項2】
2つの部材が連結軸を介して揺動可能に連結された関節を有するロボットの外力検出機構であって、
前記関節を駆動するアクチュエータと、
軸心が前記連結軸と同軸となるように配置された外力入力部を有し、前記2つの部材の一方から他方に作用する外力を検出する多軸力覚センサとを備えることを特徴とするロボットの外力検出機構。
【請求項3】
ロボットの外力検出機構であって、
前記ロボットの外装に形成された隆起部の内部に、該隆起部の表面に作用する外力を検出する力覚センサを備えることを特徴とするロボットの外力検出機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate