説明

ロータリー作業機

【課題】耕耘ムラを解消して平坦な耕耘地を形成するロータリー作業機を提供する。
【解決手段】土を耕耘する複数のロータリー爪(耕耘爪)45と、ロータリー爪45を外周に突出して設けた爪軸45aと、耕耘した土の飛散を抑制するためのロータリーカバー(耕耘カバー)46とを備え、トラクタ(自走式作業機)の後部に連結してトラクタからの駆動力で駆動するロータリー作業機50において、耕耘土をトラクタの轍T上に導くための誘導部58をロータリーカバー46の前部の一部を外側に張り出して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土を耕耘する複数の耕耘爪と、耕耘爪を外周に突出して設けた爪軸と、耕耘した土の飛散を抑制してするための耕耘カバーとを備え、自走式作業機の後部に連結して使用するロータリー作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場で、トラクタがロータリー作業機を牽引して耕耘作業をする際の課題の一つとして耕耘ムラがあった。たとえば、耕耘作業中に、同一圃場内において生じる土質(硬さ、含水率など)の不均一によって耕耘爪への負荷が増加した場合には、ロータリー作業機を適宜上昇させて耕深を浅くし、耕耘爪への負荷の増加(すなわち、エンジンへの負荷の増加)を回避してきた。しかし、このような対処方法では、耕耘深さが不均一になり耕耘ムラが生じてしまうという問題があった。
【0003】
これに対して、特許文献1には、土質に応じてロータリー作業機の耕耘カバーを前後に回動させる負荷制御機構を設け、エンジンへの負荷の一定化と耕耘深さの一定化という2つの課題を同時に解決する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−228508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような技術は、圃場の土質の不均一性に焦点を当てた対策であり、トラクタの轍によって形成された地面の凹凸を平坦化するには至っていない。耕耘作業をする際に圃場をトラクタが走行することによって形成される轍には、(1)自重の重いトラクタのタイヤによって地面が硬く踏み固められてしまうこと、(2)それ以外の部分に比べて地面が大きく窪んでしまうこと、という耕作地としての2つの問題がある。特に後者の問題に対して、特許文献1は解決策を提示していない。
そこで、この発明の目的は、耕耘ムラを解消して平坦な耕作地を形成するロータリー作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため請求項1に記載の発明は、土を耕耘する複数の耕耘爪と、該耕耘爪を外周に突出して設けた爪軸と、耕耘した土の飛散を抑制するための耕耘カバーとを備え、自走式作業機の後部に連結して使用するロータリー作業機において、
前記耕耘土を前記自走式作業機の轍上に導くための誘導部を前記耕耘カバーの前部の一部を外側に張り出して形成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータリー作業機において、前記誘導部が前記耕耘カバーの両側にそれぞれ設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロータリー作業機において、前記誘導部が、前記耕耘カバーの幅方向に伸縮可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、土を耕耘する複数の耕耘爪と、耕耘爪を外周に突出して設けた爪軸と、耕耘した土の飛散を抑制するための耕耘カバーとを備え、自走式作業機の後部に連結して使用するロータリー作業機において、耕耘土を自走式作業機の轍上に導くための誘導部を耕耘カバーの前部の一部を外側に張り出して形成するので、自走式作業機の轍の窪みを適切に埋めることができる。したがって、これまで問題となってきた轍の窪みに起因する耕作地の耕耘ムラ(耕作面の凹凸)を解消して、平坦な耕作地を形成するロータリー作業機を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、誘導部が耕耘カバーの両側にそれぞれ設けられるので、自走式作業機の轍に耕耘土をより適切に誘導することができ、いっそう、平坦な耕作地を形成するロータリー作業機を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、耕耘カバーの幅方向に伸縮可能に構成されるので、自走式作業機の前輪と後輪の幅が異なる場合でも、その両方の轍に盛土できるように誘導部を広く設定することができ、いっそう、平坦な耕作地を形成することができる。また、自走式作業機の車輪の幅が車種によって異なるような場合であっても、轍の幅に合わせて誘導部を伸縮させることでさまざまな車輪幅の自走式作業機に対応可能はロータリー作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明のロータリー作業機を取り付ける自走式作業機としてのトラクタの概略側面図である。
【図2】この発明のロータリー作業機の概略側面図である。
【図3】(a)は、この発明のロータリー作業機の要部概略平面図、(b)は、(a)の要部概略側面図である。
【図4】(a)は、この発明のロータリー作業機の別の例の要部拡大平面図、(b)は、(a)のA矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1にこの発明の農業機械としてのトラクタ(自走式作業機)21とその後部に連結するロータリー作業機の側面図を示す。トラクタ21は、車体フレーム22の前後に前輪23および後輪24を2つずつ備え、前輪23の上方にボンネット25を形成し、その内側には原動機部としてのエンジンを備える。そして、ボンネット25の後部に連続して運転ボックス26を設ける。
【0014】
運転ボックス26内には、エンジンキー、アクセルペダル,クラッチペダル,ブレーキペダルなどの操作ペダル28、シフトレバー、ハンドル29、運転席30、さらに、速度、燃料、警報などを表示する表示部(不図示)などを設ける。運転ボックス26の外周はそれぞれフロントガラス、リアガラス、ドア31などが視認性を向上させるためにガラス張りにて構成されている。また、運転ボックス26の左前部にはラジオ放送などを受信するアンテナ32を取り付けるとともに、運転ボックス26の両前部には後方確認用のミラー33を設ける。
【0015】
運転ボックス26の前方のボンネット25上にはエンジンの排気を誘導するパイプ状の排気口27を鉛直方向に設ける。また、運転ボックス26の左下方には、運転者が運転ボックス26に昇降するためのステップ34を車体フレーム22に固定して取り付ける。
運転ボックス26の後部下方には、フェンダ36が後輪24の後側上半分付近まで覆うように設けられ、反射板37がフェンダ36の後端に取り付けられる。このフェンダ36は本体フレーム22に固設されている。
【0016】
さらに、トラクタ21の後部には、トップリンク39,左右一対のロワーリンク40およびPTO軸41を延設する。トップリンク39および左右一対のロワーリンク40の先端には、三点リンク式のオートヒッチを取り付けるようにしてもよい。
そして、トラクタ21にはロータリー作業機50をトップリンク39,ロワーリンク40を介して取り付け、PTO軸41をロータリー作業機50の入力軸に取り付ける。
【0017】
図2には、ロータリー作業機50の概略側面図を示す。ロータリー作業機50は、動力を伝達するメインビーム43、メインビーム43の左端に備えるチェーンケース44、メインビーム43の中央に備える不図示のギアボックス、ギアボックスに固設されたV字状のアッパーアーム54、ギアボックスの両側方でメインビーム43に回動自在に取り付けられたデプスビーム56、爪軸45aの周りに突設された複数のロータリー爪(耕耘爪)45、複数のロータリー爪45を上方より覆うことで耕耘した土の飛散を防止するロータリーカバー(耕耘カバー)46などを備える。このロータリーカバー46前面部分の左右両側には、前面部分の一部を外側に張り出して形成した誘導部58を設ける。
【0018】
ロータリーカバー46には、これを前後に回動させるためのハンドル49が取り付けられている。ロータリーカバー46は、ハンドル49を回転させることで爪軸45aを中心にして進行方向に対して前後に回動可能に構成されている。ロータリーカバー46の回動は耕耘深さ(耕深)に合わせて調整される。また、ロータリーカバー46の後端には、リヤカバー47が回動部48を介して回動自在に連結されている。
【0019】
リヤカバー47の下部には、ハンガーロッド51の下端がピンによって回動自在に取り付けられている。一方、ロータリーカバー46の後部上には左右両側にロッドステー52が後斜め上方に向けて設けられ、そのロッドステー52の上端部にハンガーロッド51の上部が回動軸53の周りに回動自在に、かつハンガーロッド51の長さ方向に摺動自在に支持されている。また、ハンガーロッド51の外周には不図示のコイルバネが巻きつけられ、リヤカバー47を下方(本図において時計回り)に付勢している。
【0020】
アッパーアーム54の一端には前述のトラクタ21のトップリンク39が取り付けられるとともに、アッパーアーム54の別の一端には、アジャストスクリュー55が取り付けられている。このアジャストスクリュー55は、デプスビーム56の上下傾斜角を調整ハンドル57を操作することによって調整できるようになっている。なお、ロータリーカバー46の後部にはサイドカバーを取り付けたり、リヤカバー47の下部にはサイドアンダーカバーを取り付けたりしてもよい。
【0021】
ロータリー作業機50のギアボックスには、ユニバーサルジョイント42を介してトラクタ21のPTO軸41を連結し、トラクタ21の駆動力をロータリー作業機50に伝達する。このギアボックス内にて、PTO軸41の駆動力は、メインビーム43内のシャフトに伝達される。シャフトの端部はチェーンケース44内に配置され、そのシャフトの端部にはギアが固設されている。チェーンケース44内には、爪軸45aの端部に固設された別のギアも備える。そして、2つのギアに無端チェーンを掛け回すことで、メインビーム43内のシャフトから爪軸45aへと駆動力が伝達されるようになっている。
【0022】
図3(a),(b)に、誘導部58の構成を示す。誘導部58は、耕耘土をトラクタ21の轍Tの上に導くためのものであり、ロータリーカバー46の幅方向の中心線CLから左右側に等距離に隔たった位置で、かつ、トラクタ21の轍Tの位置と重なるように形成される。誘導部58は、傾斜部58aと平坦部58bとから構成される。傾斜部58aは、ロータリー爪45によって巻き上げられ、ロータリーカバー46の前部にまで達した耕耘土の一部を轍Tへ誘導するためのものである。特に、轍Tとほぼ同一幅に形成される平坦部58bの両側周辺部に到達する耕耘土を轍Tへと誘導する(矢印M方向)ためのものである。この傾斜部58aの幅は、大きく取ればロータリーカバー46内のより広範囲の耕耘土を轍Tへと誘導することができる。
【0023】
次に、このように構成されたロータリー作業機50で圃場を耕耘する動作について説明する。トラクタ21の回転動力は、PTO軸41よりロータリー作業機50側に伝達される。そして、ギアボックスにて方向を変換されてメインビーム43内のシャフトへと伝達される。そして、シャフトの一端が格納されたチェーンケース44内にて、不図示のギアとチェーンを介して爪軸45aへと伝達される。これによって、ロータリー爪45がP方向に回転する。
【0024】
所定の耕深を設定されてロータリー作業機50が接地されると、ロータリー爪45が地面を耕耘する。耕耘された土の大部分はロータリーカバー46の後方に落下するが、一部は回転方向Pに向けて巻き上げられ、ロータリーカバー46の前方に搬送される。この耕耘土の一部は傾斜部58aに当接し、傾斜した板に沿ってM方向へと導かれ、ロータリーカバー46よりR方向に排出されて轍T上に落下する。一方、平坦部58bに当接した耕耘土はそのままR方向に排出されて轍T上に落下する。轍T上に落下した耕作土は、轍Tの窪みを盛土Fで満たす。そして、耕耘された土はロータリー作業機50の幅方向に連続して設けられたリヤカバー47によって、平坦化されて凹凸のない平坦な耕作地が形成される。
【0025】
ところで、誘導部58は、図4(a),(b)のように幅方向に伸縮自在に構成してもよい。すなわち、誘導部58´は、ロータリーカバー46とは不連続な部材である、スライド部材59と、スライド部材59のスライドをガイドする2つのスライド機構60,61と、スライド部材59をスライドさせる伸縮装置70などを備える。スライド部材59はロータリーカバー46と同一部材で形成され、スライド部材傾斜部59a、スライド部材平坦部59b、スライド部材板部59cを備える。そして、ロータリーカバー46に形成された平坦部58bの前面にスライド部材平坦部59bの後面を重ね合わせるように配置し、両者の間にスライド機構60を設ける。スライド機構60は、レール60bとそれにスライド自在に係合するガイド60aとからなる。スライド機構60のレール60bをロータリーカバー46の前面に固設する。レール60bは、ロータリー耕耘機50の幅方向(すなわち、進行方向の左右方向)に沿うように設置される。一方、ガイド60aを平坦部58bの後面に固設する。そして、ガイド60aの移動を規制するストッパー62をレール60bの左端に設ける。
【0026】
同様にして、ロータリーカバー46の板部46aの前面にスライド部材59のスライド部材板部59cの後面を重ね合わせるように配置し、両者の間にスライド機構61を設ける。なお、スライド機構61の構成はスライド機構60のそれと同一であるので説明を省略する。すなわち、ガイド61aはガイド60aと同一の機能・形状であり、レール61bはレール60bと同一の機能・形状である。ガイド61aはスライド部材板部59cの後面に固設し、レール61aは板部46aの前面に固設する。また、ガイド61aの移動を規制するストッパー62をレール61bの右端に設ける。そして、スライド部材59とロータリーカバー46との間に伸縮装置70を取り付ける。
【0027】
伸縮装置70は、係合部70a、ネジ部70b、ガイド部70c、ハンドル70dなどからなる。係合部70aは、直方体に形成され、中央にネジ部70bの雄ネジが係合する雌ネジが形成されている。係合部70aの底面は、スライド部材板部59cの前面に適宜、固設される。また、ガイド部70cは、直方体に形成され、中央には丸孔が形成される。ガイド部70cの底面は、ロータリーカバー46の前面に固設される。そして、ネジ部70bを係合部70aに螺合させるように取り付け、ネジ部70bの根元は、ガイド部70cの丸孔に挿入されて回転自在に(かつ、長手方向には移動を規制された状態で)支持される。
【0028】
このように構成された伸縮装置70を用いて誘導部58´を幅方向に伸張させるには、まず、ハンドル70dを握って、時計まわりに回転させる。すると、ネジ部70bが図中左方向に進むように回転する。このとき、ネジ部70bはガイド部70cにその長手方向の移動を規制されているので、実際には係合部70aが固設されているスライド部材59が矢印N方向に移動する。なお、移動に際しては、スライド機構60,61にガイドされながら移動する。そして、スライド部材59が所望の位置までスライドしたら、ハンドル70dの回転を停止する。
【0029】
誘導部58´を短縮させるときは、ハンドル70dを半時計まわりに回転させる。すると、ネジ部70bが図中右方向に進むように回転する。前述のように、ネジ部70bはガイド部70cにその長手方向の移動を規制されているので、実際には係合部70aが固設されているスライド部材59が矢印N方向と逆に移動する。なお、移動に際しては、スライド機構60,61にガイドされながら移動する。そして、スライド部材59が所望の位置まで短縮したら、ハンドル70dの回転を停止する。
【0030】
このように、誘導部58´を伸縮自在にすることで、トラクタ21の前輪23と後輪24の幅が異なる場合には、その両方の轍に盛土できるように誘導部58´を広く設定することができ、いっそう、平坦な耕作地を形成することができる。また、トラクタの車輪の幅が車種によって異なるような場合であっても、轍の幅に合わせて誘導部58´を伸縮させることでさまざまな車輪幅のトラクタに対応することができる。
【0031】
なお、この例のスライド機構60,61、伸縮装置70はこれに限定されるものではなく、あらゆる形態を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
なお、この発明のロータリー作業機は、農業の耕耘作業に適用するのみならず、植林、園芸、建設などあらゆる目的の作業で、地面を掘り起こす際に適用しうる。
【符号の説明】
【0033】
21 トラクタ(自走式作業機)
23 前輪
24 後輪
41 PTO軸
43 メインビーム
44 チェーンケース
45 ロータリー爪(耕耘爪)
45a 爪軸
46 ロータリーカバー(耕耘カバー)
47 リヤカバー
50 ロータリー作業機
58,58´ 誘導部
58a 傾斜部
58b 平坦部
59 スライド部材
59a スライド部材傾斜部
59b スライド部材平坦部
59c スライド部材板部
60,61 スライド機構
60a,61a ガイド
60b,61b レール
62 ストッパー
70 伸縮装置
70a 係合部
70b ネジ部
70c ガイド部
70d ハンドル
CL,ML 中心線
F 盛土
T 轍

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を耕耘する複数の耕耘爪と、該耕耘爪を外周に突出して設けた爪軸と、耕耘した土の飛散を抑制するための耕耘カバーとを備え、自走式作業機の後部に連結して使用するロータリー作業機において、
前記耕耘土を前記自走式作業機の轍上に導くための誘導部を前記耕耘カバーの前部の一部を外側に張り出して形成したことを特徴とする、ロータリー作業機。
【請求項2】
前記誘導部が前記耕耘カバーの両側にそれぞれ設けられることを特徴とする、請求項1に記載のロータリー作業機。
【請求項3】
前記誘導部が、前記耕耘カバーの幅方向に伸縮可能に構成されることを特徴とする、請求項2に記載のロータリー作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−24539(P2011−24539A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176376(P2009−176376)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】