説明

ロータリ耕耘機のカバー装置

【課題】 保形しながら先端柔軟性を有して、代掻き作業だけでなく畝崩し作業にも取り付け姿勢を変えることなく使用できるようにしたロータリ耕耘機のカバー装置を提供する。
【解決手段】 耕耘部5の上方を覆う主カバー34の前縁部34aに前方突出状に前カバー39が取り付けられたロータリ耕耘機のカバー装置において、前カバー39は主カバー34に取り付けられる取付基部51と、この取付基部51の前方に位置する先端部52と、取付基部51と先端部52とを繋ぐ中間部53とを有し、少なくとも先端部52が取付基部51よりも柔軟に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主カバーの前縁部に前カバーが取り付けられたロータリ耕耘機のカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタの後部に連結されるロータリ耕耘機のカバー装置には耕耘部の上方を覆う主カバーの前縁部に前方突出状に前カバーが取り付けられたものがある。この種の従来のロータリ耕耘機のカバー装置では、前カバーは弾性変形自在なゴムで形成して、その前辺部に沿ってパイプ形のフレームを取付けてあり、ロータリに対するフレームの係合位置を変更することにより、前カバーを、前下がりに前方突出した使用姿勢と、上方へ折り返した非使用姿勢とに係合保持できるように構成されていた(例えば特許文献1)。
【0003】
この構成の場合、代掻き作業時にはトラクタの座席後部への泥飛散を防止するために、前カバーを使用姿勢に保持し、畝崩し作業の際には前カバー前部のフレームと畝との干渉を防止するために前カバーを非使用姿勢に保持するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の場合、フレームによってゴム製の前カバーを使用姿勢で保形(カバーとしての形状及び取付け姿勢を保持する)できるが、フレームが障害となって畝崩し作業には使用困難になっている。
本発明は上記問題点に鑑み、保形しながら先端柔軟性を有して、代掻き作業だけでなく畝崩し作業にも取り付け姿勢を変えることなく使用できるようにしたロータリ耕耘機のカバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における上記目的を達成するために、請求項1においては、ロータリ耕耘部5の上方を覆う主カバー34の前縁部34aに前方突出状に前カバー39が取り付けられたロータリ耕耘機のカバー装置において、
前カバー39は主カバー34に取り付けられる取付基部51と、この取付基部51の前方に位置する先端部52と、取付基部51と先端部52とを繋ぐ中間部53とを有し、少なくとも先端部52が取付基部51よりも柔軟に形成されている点にある。
【0007】
請求項2においては、請求項1の発明において、前カバー39は合成樹脂により形成され、前カバー39の先端部52は、取付基部51よりも低硬度の樹脂材料で形成され、又は取付基部51よりも厚みが薄く形成されているものである。
請求項3においては、請求項1又は2の発明において、前カバー39の中間部53は側面視中高山形状に屈曲されているものである。
【0008】
請求項4においては、請求項1〜3の発明において、前記前カバー39は、取付基部51が前下向き傾斜して配置され、この取付基部51の前縁から側面視くの字状に屈曲して前記中間部53が前方へ延設され、取付基部51の後縁から側面視くの字状に屈曲して上方へ延びる尾部60が形成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によれば、代掻き作業時には前カバー(特に先端部)でトラクタの座席後部への泥飛散を防止することができる。また、畝崩し作業時には、畝に前カバーの先端側が当たっても、前カバーは取付基部の保形を維持しながら先端部が後方に撓んで変形し、変形しながらも土石の前上方飛散を防止することができる。しかも、前カバーはその取付基部で同一姿勢に保ちながら、代掻き作業時と畝崩し作業時との両方で使用できる。
【0010】
請求項2によれば、前カバーを合成樹脂の押出成形等により簡単かつ安上がりに製造することができる。
請求項3によれば、中間部の側面視中高山形状の屈曲により、前カバーの取付基部及び中間部の剛性を高めることができ、前カバーの保形性を高めながら先端部をより薄く形成してより安価に製造することができる。
【0011】
請求項4によれば、前カバーが取付基部の前縁から側面視くの字状に屈曲していることと、取付基部の後縁から側面視くの字状に屈曲して上方へ延びる尾部が形成されていることによって、取付基部が撓まないないように保形性、剛性を効果的に高めることができ、前カバーが不測にガタ付いたりしないように取付基部で主カバーの前縁部に強固に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態を示す前カバー部分の側面図である。
【図2】同前カバーの平面図である。
【図3】同ロータリ耕耘機の側面図である。
【図4】同第2実施形態を示す前カバー部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は本発明の第1実施形態を示し、図3において、1はトラクタ車体の後部に連結装置(オートヒッチ)3を介して着脱自在に連結されるロータリ耕耘機である。
このロータリ耕耘機1は、本実施の形態ではサイドドライブ式ロータリが採用されており、該ロータリ耕耘機1は、ロータリ機枠4と、このロータリ機枠4の下部に設けられたロータリ耕耘部5と、このロータリ耕耘部5を覆うロータリカバー(カバー装置)6とを備えている。
【0014】
ロータリ機枠4は、左右方向中央のギヤケース7と、このギヤケース7の左右両側から左右方向外方に突出する左右一対のサポートアーム8と、左側のサポートアーム8の外端側に上部が固定された伝動ケース9と、右側のサポートアーム8の外端側に上部が固定されたサイドフレーム(図示省略)とを備えてなる。
前記ロータリ耕耘部5は、伝動ケース9とサイドフレームとの下部間に左右方向の軸心回りに回転自在に支持された爪軸11と、この爪軸11上に取付固定された多数の耕耘爪12とを有し、爪軸11を、左右方向の軸心回りに、矢印A方向に回転駆動することにより、耕耘爪12が爪軸11回りに回転しながら土中に突入して、土が耕起されると共に砕土されて後方に放てきされるように構成されている。
【0015】
前記ギヤケース7には、トラクタ車体の後部から後方に突出するPTO軸にジョイント装置を介して連動連結されるPIC軸14が設けられ、PTO軸からPIC軸14に伝達された動力はギヤケース7内の伝動機構に伝達され、このギヤケース7に入力された動力は左側のサポートアーム内に設けられた伝動軸から伝動ケース9内の伝動機構を経て爪軸11に伝達され、該動力により該爪軸11が矢示A方向に回転駆動されてダウンカット耕耘される。
【0016】
なお、ロータリ耕耘機1としては、センタードライブ式ロータリであってもよく、また、耕耘方法としては、爪軸11が矢示A方向とは逆に回転するアップカット耕耘であってもよい。
前記ギヤケース7にはトップマスト18が上方突出状に設けられていると共に、このトップマスト18の前側上部に、左右方向に配置されたピンによって構成された上連結部20が固定されている。
【0017】
前記左右各サポートアーム8には連結ブラケット21が固定され、この左右各連結ブラケット21の前端側には、左右方向外方に突出状に設けられたピンによって構成された下連結部22が設けられている。
前記連結装置3は、上部のトップリンク23と、下部の左右一対のロワーリンク24と、これらトップリンク23と左右ロワーリンク24との後端側に連結されていてこれらトップリンク23及び左右ロワーリンク24に定形を与えるヒッチフレーム25とを有する。
【0018】
トップリンク23の前端側及び左右ロワーリンク24の前端側は、それぞれトラクタ車
体の後部に枢支連結されている。
ヒッチフレーム25は、角パイプ材を正面視山形状に折曲して形成されたメインフレーム27と、このメインフレーム27の頂部に設けられた上部材28と、メインフレーム27の左右両側下部に設けられた下部材29と、メインフレーム27の左右両端部間を連結する連結フレーム27Aとを備えてなる。
【0019】
上部材28の前部側にはトップリンク23の後端側が枢支連結されていると共に、該上部材28の後部側には前記上連結部20に下側から係合(嵌合)可能な上方に開放状の凹部からなる上被連結部30が形成されている。
左右各下部材29には、左右方向で同じ側にあるロワーリンク24の後端側が枢支連結されていると共に、左右方向で同じ側にある前記下連結部22が後方から係合(嵌合)可能な後方開放状の下係合部31が形成されている。
【0020】
ロータリ耕耘機1のロータリカバー6は、ロータリ耕耘部5の上方を覆う主カバー34と、ロータリ耕耘部5の後方を覆う後カバー35と、ロータリ耕耘部5の後部の左右両側を覆う側カバー(図示省略)と、主カバー34の前縁部34aに前方突出状に取り付けられた前カバー39とを備えている。
後カバー35は、上端側が主カバー34の後端側に、左右方向の軸心を有する支軸43の軸心回りに回動自在に枢支されていて、上下揺動自在に支持された上部側の本体カバー44と、該本体カバー44の下端側に着脱自在に取り付けられるサブカバー45とを有して構成されている。
【0021】
また、後カバー35を下方側(接地方向)に付勢する弾下装置47がロータリ機枠4と後カバー35に亘って且つ左右一対設けられている。
図1〜図3において、主カバー34は、その左右方向の端部が、伝動ケース9とサイドフレームとに固定された側板41に取付固定されている。主カバー34は板金により形成した上板37と下板38とを有し、上板37の前部側は大きく前下がりに傾斜され、上板37の前縁部37aと下板38の前縁部38aとが互いに重合されて溶接等により固着され、主カバー34の前縁部34aが前下向きに傾斜されている。
【0022】
前カバー39は合成樹脂により形成され、主カバー34に取り付けられる取付基部51と、この取付基部51の前方に位置する先端部52と、取付基部51と先端部52とを繋ぐ中間部53とを有している。前カバー39の取付基部51側が伝動ケース9とサイドフレームとに固定された側板41間に配置されている。
主カバー34の前縁部34aにナット55が左右方向に間隔をおいて複数個溶接等により固着されている。複数のナット55上に左右方向に長い保形板56が配置され、取付基部51にナット55に対応してボルト57が挿通される取付孔58が形成されると共に、保形板56にも同様な取付孔が形成されている。
【0023】
前カバー39の取付基部51は、保形板56上に載せられて、各ナット55に螺合するボルト57により保形板56を介してナット55に締め付け固定されている。これにより、前カバー39が主カバー34の前縁部34aに取り付けられている。
前カバー39は合成樹脂の押出成形により硬度違いの樹脂材料を複合させて製作され、前カバー39の先端部52は取付基部51よりも低硬度の樹脂材料で形成され、先端部52を柔らかいゴム状にし、取付基部51を硬くしており、先端部52が取付基部51よりも柔軟に形成されている。また、本実施形態の場合、中間部53は取付基部51と同一の硬度の樹脂材料で形成されて、中間部53が取付基部51と同様に硬く形成されている。
【0024】
前カバー39の取付基部51は平坦な帯板形状であり、前下向き傾斜して配置されている。前カバー39の中間部53は、取付基部51の前縁から側面視くの字状に屈曲して前方へ延設され、前後方向中間が高い側面視中高山形状に屈曲されている。先端部52は、中間部53の前端から前下がり方向にまっすぐ延出されて、平坦な帯板状に形成されている。
【0025】
取付基部51の後方には後縁から側面視くの字状に屈曲して上方へ延びる尾部60が形成されている。
上記実施形態によれば、代掻き作業をする場合は、側面視におけるサポートアーム8の
軸心と爪軸11の軸心を結ぶ線分が図3に鎖線S1で示す如く傾斜するように、ロータリ耕耘機1を大きく前傾姿勢に傾斜させてさせて代掻き作業を行う。この代掻き作業時には前カバー39は図1に2点鎖線で示す如く傾斜し、トラクタの座席後部への泥飛散を防止する。
【0026】
また、畝崩し作業をする場合は、側面視におけるサポートアーム8の軸心と爪軸11の軸心を結ぶ線分が図3に鎖線S2で示す如く傾斜するように、ロータリ耕耘機1を小さく前傾姿勢に傾斜させて畝崩し作業を行う。この畝崩しのとき、前カバー39は図1に実線で示す如く傾斜し、図1に示すように畝崩し高さBは柔軟な先端部52上端よりも低い位置になり、畝に前カバー39の先端側が当たっても先端部52が後方に撓んで変形し、前カバー39が破損するのを防止することができる。
【0027】
前カバー39は少なくとも取付基部51が先端部52より剛性が高いので、別途保形部材を設けなくとも、カバー形状としての保形ができ、代掻き作業と畝崩し作業両方で、かつ主カバー34に対して同一姿勢で前カバー39を使用できる。
また、前カバー39は合成樹脂により形成され、前カバー39の先端部52は、取付基部51よりも低硬度の樹脂材料で形成されているので、前カバー39を合成樹脂の押出成形等により簡単かつ安上がりに製造することができる。
【0028】
また、前カバー39の中間部53は側面視中高山形状に屈曲されているので、この屈曲により前カバー39の取付基部51及び中間部53の保形性を高めることができ、前カバー39を一定の保形性を維持したままで極力薄く形成してより安価に製造することができる。
また、前カバー39が取付基部51の前縁から側面視くの字状に屈曲していることと、取付基部51の後縁から側面視くの字状に屈曲して上方へ延びる尾部60が形成されていることによって、取付基部51及びその前後部分によるカバーの保形性を効果的に高めることができ、前カバー39が不測にガタ付いたりしないように取付基部51で主カバー34の前縁部34aに強固に取り付けることができる。
【0029】
なお、前記第1実施形態の場合、先端部52と同様に中間部53も柔軟な低硬度の樹脂材料で形成するようにしてもよい。
図4は第2実施形態を示し、前カバー39は合成樹脂の押出成形により全体が同一の樹脂材料で製作され、前カバー39の先端部52は取付基部51及び中間部53よりも厚みが薄く形成され、これにより、取付基部51の剛性が高く、先端部52が取付基部51及び中間部53よりも柔軟に形成されている。その他の点は前記実施形態の場合と同様の構成であり、代掻き作業時には前カバー39(特に先端部52)でトラクタの座席後部への泥飛散を防止することができるし、畝崩し作業時には、畝に前カバー39の先端側が当たっても先端部52が後方に撓んで変形し、前カバー39が破損するのを防止することができる。
【0030】
なお、前記第2実施形態の場合、先端部52と同様に中間部53も厚みを薄く形成してもよい。
なお、前記実施形態では、前カバー39は合成樹脂により形成されているが、これに代え、前カバー39の取付基部51、尾部60及び中間部53を金属板により形成し、先端部52のみを柔軟な低硬度の合成樹脂又はゴムにより形成してもよいし、前カバー39の取付基部51及び尾部60を金属板により構成し、中間部53を高硬度の合成樹脂又はゴムにより形成し、更に先端部52を柔軟な低硬度の合成樹脂又はゴムにより形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ロータリ耕耘機
5 ロータリ耕耘部
34 主カバー
34a 前縁部
39 前カバー
51 取付基部
52 先端部
53 中間部
60 尾部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ耕耘部(5)の上方を覆う主カバー(34)の前縁部(34a)に前方突出状に前カバー(39)が取り付けられたロータリ耕耘機のカバー装置において、
前カバー(39)は主カバー(34)に取り付けられる取付基部(51)と、この取付基部(51)の前方に位置する先端部(52)と、取付基部(51)と先端部(52)とを繋ぐ中間部(53)とを有し、少なくとも先端部(52)が取付基部(51)よりも柔軟に形成されていることを特徴とするロータリ耕耘機のカバー装置。
【請求項2】
前カバー(39)は合成樹脂により形成され、前カバー(39)の先端部(52)は、取付基部(51)よりも低硬度の樹脂材料で形成され、又は取付基部(51)よりも厚みが薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘機のカバー装置。
【請求項3】
前カバー(39)の中間部(53)は側面視中高山形状に屈曲されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリ耕耘機のカバー装置。
【請求項4】
前記前カバー(39)は、取付基部(51)が前下向き傾斜して配置され、この取付基部(51)の前縁から側面視くの字状に屈曲して前記中間部(53)が前方へ延設され、取付基部(51)の後縁から側面視くの字状に屈曲して上方へ延びる尾部(60)が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータリ耕耘機のカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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