説明

ロータリ耕耘装置用の整地部材

【課題】コスト的に有利で作業性も良いロータリ耕耘装置用の整地部材を提供する。
【解決手段】中部材又は支持板に第1貫通孔45と第2貫通孔40とを設け、支持板を第1の軸27を中心として第2貫通孔40に沿って回動させることにより、支持板を横向き姿勢及び縦向き姿勢に姿勢変更自在に構成し、第2貫通孔40の一端に、支持板が縦向き姿勢にあるときに第1の軸27を中心とした半径方向での第2の軸の移動を規制する第1位置決め部41を設けると共に、第2貫通孔40の他端に、支持板が横向き姿勢にあるときに第1の軸27を中心とした半径方向での第2の軸の移動を規制する第2位置決め部42を設け、第1の軸27を中心とした半径方向での第2貫通孔40の中間部の幅L1を、第1の軸27を中心とした半径方向での第1位置決め部41の幅L2及び第2位置決め部42の幅L3よりも大きく形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型作業機や乗用型のトラクタに装備されるロータリ耕耘装置に使用される整地部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、歩行型作業機においてロータリ耕耘装置を備えた場合、特許文献1及び2に開示されているように、ロータリ耕耘装置のカバーの後端部に、正面視で横長の長方形状の整地部材を連結することがある。
これにより、ロータリ耕耘装置によって耕起された土が、整地部材により受け止められて、整地部材の下辺部によって均平面が形成される(均平作業)。
【0003】
前述のように、ロータリ耕耘装置によって耕起された土を平面状に形成する均平作業に対して、ロータリ耕耘装置によって耕起された土を右及び左の横側に押し分けて、ロータリ耕耘装置の右及び左の横側に畝を形成する畝立て作業がある。畝立て作業を行う場合には、特許文献1及び2のような整地部材をロータリ耕耘装置から取り外し、特許文献3に開示されているような整地部材を、ロータリ耕耘装置の後部に連結する。
これにより、ロータリ耕耘装置によって耕起された土が、整地部材により右及び左の横側に押し分けられて、右及び左の横側に畝(右及び左の横側の畝の壁部、畝の底部)が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−153604号公報
【特許文献2】特開平6−153602号公報
【特許文献3】特開2003−52202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の歩行型作業機においては、均平作業及び畝立て作業のそれぞれに対応する2種類の整地部材を用意する必要があると共に、各作業に応じてそれらの整地部材を付け替える必要があるので、コストと作業性の面で改善の余地がある。
本発明の目的は、コスト的に有利であり、尚且つ作業性も良いロータリ耕耘装置用の整地部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1特徴構成は、可撓性を有し、且つその上端部がロータリ耕耘装置のカバーの後端部に連結されている横長状の平板と、前記平板の下端部の横方向中央部に設けた中部材と、前記平板の下辺部に沿った横向き姿勢で横方向に並設されて取り付けられた状態、及び前記平板の横方向の中央部に縦向き姿勢で取り付けられた状態に姿勢変更自在な2枚の支持板とを備え、前記中部材は前記カバーの後端部の下方に位置するようにロータリ耕耘装置に備えられた固定部に着脱自在に構成されており、前記中部材及び前記支持板の一方に第1の軸及び第2の軸を設け、前記中部材及び前記支持板の他方に前記第1の軸を挿通する第1貫通孔と、前記第2の軸を挿通する円弧長孔の第2貫通孔とを設け、前記支持板を前記第1の軸を中心として前記第2貫通孔に沿って回動させることにより、前記支持板を前記横向き姿勢及び縦向き姿勢に姿勢変更自在に構成し、前記第2貫通孔の一端に、前記支持板が縦向き姿勢にあるときに前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第2の軸の移動を規制する第1位置決め部を設けると共に、前記第2貫通孔の他端に、前記支持板が横向き姿勢にあるときに前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第2の軸の移動を規制する第2位置決め部を設け、前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第2貫通孔の中間部の幅を、前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第1及び第2位置決め部の幅よりも大きく形成してある点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
本発明により均平作業を行う場合、平板の下端部の横方向中央部に設けた中部材をロータリ耕耘装置の固定部から取り外しておくと共に、2枚の支持板を回動させて平板の下辺部に沿う横向き姿勢で横方向に並設した状態としておく。このとき、第2の軸と第2位置決め部により支持板の横向き姿勢の位置決めが行われる。
これにより、平板の下辺部がロータリ耕耘装置のカバーの後端部から垂れ下がる格好となり、ロータリ耕耘装置によって耕起された土が平板により受け止められて、平板の全体が後方(上方)に移動する状態になると共に、圃場に接地する平板の下辺部によって均平面が形成される。このとき、平板の下辺部に沿う2枚の支持板が重しのような役割を果たして平板の下辺部のばたつきが抑えられるので、均平面が安定して形成される。
【0008】
本発明により畝立て作業を行う場合、中部材をロータリ耕耘装置の固定部に連結しておくと共に、2枚の支持板を回動させて平板の横方向の中央部に縦向き姿勢としておく。このとき、第2の軸と第1位置決め部により支持板の縦向き姿勢の位置決めが行われる。
これにより、ロータリ耕耘装置によって耕起された土が、平板により受け止められる際、平板の横方向の中央部(下辺部)は、平板の中部材がロータリ耕耘装置の固定部に連結されているため後方に移動せず、平板の一方及び他方の横側部が後方に移動することになり、平板の一方及び他方の横側部が斜めに後方に折れ曲がるような状態となる(例えば図8参照)。この状態において、平板の中央部(下辺部)と中部材によって畝の底部が形成され、平板の折れ曲がった一方及び他方の横側部によって右及び左の横側の畝の壁部が形成される。
【0009】
従って、本発明によれば一つのロータリ耕耘装置用の整地部材により均平作業及び畝立て作業が行えるようになる。即ち、従来のように各作業に応じて2種類の整地部材を用意する必要がなく、付け替える必要もなくなるので、コスト的に有利であると共に作業性も向上する。
【0010】
さらに本発明によれば、第1の軸を中心とした半径方向での第2貫通孔の中間部の幅を、第1の軸を中心とした半径方向での第1及び第2位置決め部の幅よりも大きく形成してあるため、たとえ第2貫通孔に土や砂粒などが入り込んでいたとしても、支持板の姿勢を切換える際、第2の軸の外周部と第2貫通孔の縁部との間に土や砂粒などが挟み込まれ難く、第2の軸が、第2貫通孔の第1位置決め部と第2位置決め部との間をスムーズに移動することができる。
【0011】
本発明に係る第2特徴構成は、前記第1位置決め部に、前記支持板を縦向き姿勢に保持する保持部を連設し、前記第1貫通孔を長孔に形成して、前記第1貫通孔の一端に、前記支持板が縦向き姿勢にあるときに前記第1の軸を配置させる第3位置決め部を設けると共に、前記第1貫通孔の他端に、前記支持板が横向き姿勢にあるときに前記第1の軸を配置させる第4位置決め部を設けてある点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本発明では、支持板が横向き姿勢にある場合、第1の軸が第4位置決め部に位置して、第2の軸が第2位置決め部に位置することで支持板が位置決めされる。
そして、支持板が縦向き姿勢にある場合、第1の軸が第3位置決め部に位置して、第2の軸が保持部に位置する。この状態において、保持部の作用により支持板が縦向き姿勢を保持されるため、振動等により支持板が縦向き姿勢から横向き姿勢に動くようなことが少なくなるので、畝立て作業を安定して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】歩行型作業機の全体側面図である。
【図2】歩行型作業機の全体平面図である。
【図3】ロータリ耕耘装置及び整地部材の縦断側面図である。
【図4】均平作業時のロータリ耕耘装置及び整地部材の背面図である。
【図5】平板、中部材、及び支持板の要部拡大図(a)と縦断側面図(b)である。
【図6】均平作業時のロータリ耕耘装置及び整地部材の斜視図である。
【図7】畝立て作業時のロータリ耕耘装置及び整地部材の縦断側面図である。
【図8】畝立て作業時のロータリ耕耘装置及び整地部材の背面図である。
【図9】第1及び第2貫通孔の形状を模式的に示した図である。
【図10】別実施形態に係る第1及び第2貫通孔の形状を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態〕
以下に、本発明の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
(歩行型作業機の構成)
図1及び図2に示すように、ミッションケース1の下部の右及び左側部に車軸2が備えられて、右及び左の車軸2に走行用の車輪3が連結されており、ミッションケース1の前部に連結された支持フレーム4にエンジン5が支持されて、歩行型作業機が構成されている。ミッションケース1の上部から斜め後方下方に伝動ケース6が延出されて、伝動ケース6から斜め後方上方に操縦ハンドル7が延出されており、伝動ケース6にロータリ耕耘装置8が備えられている。
【0015】
(ロータリ耕耘装置)
図1及び図2に示すように、伝動ケース6の下部から右及び左側に駆動軸9が延出されて、右及び左の駆動軸9に複数の正逆転爪10が固定されており、正逆転爪10の上方を覆うカバー11、及び抵抗棒12等を備えて、ロータリ耕耘装置8が構成されている。右及び左の駆動軸9及び正逆転爪10は、通常は正転方向(図3の矢印A1の方向)に回転駆動されるのであり、逆転方向(図3の矢印A2の方向)にも回転駆動することが可能である。
【0016】
(カバー)
図3及び図4に示すように、カバー11は、半円筒状の天井部11aの右及び左側部に、扇形状の横壁部11bが連結されて構成され、伝動ケース6の上方、右及び左の駆動軸9及び正逆転爪10の上方を覆っており、伝動ケース6のブラケット(図示せず)にカバー11(天井部11a)が連結されている。
【0017】
(抵抗棒)
図3及び図4に示すように、伝動ケース6に固定されたブラケット13が後方に延出され、幅狭の角パイプ状のブラケット14がブラケット13に固定されて、ブラケット14がカバー11(天井部11a)の開口部から上方に突出している。ブラケット14の右側面の開口部(図示せず)には、抵抗棒12をブラケット14に固定するためのロックボルト16が設けられており、ブラケット14の上部の後方側面には、図3の仮想線に示すように正逆転爪10のメンテナンス等を行う際に平板18の中部材21を掛止することによって平板18を捲り上げた状態に保持し得る第1フック部14aが設けられている。
【0018】
図3及び図4に示すように、抵抗棒12は細長い棒状に構成されており、その下部が後方側に屈曲した状態で延出されている。
抵抗棒12の下部の下側には、断面くの字型で平板状の接地部12aが固定されており、抵抗棒12の下端部には、畝立て作業時に平板18の中部材21を掛止するための第2フック部12c(カバー11の後端部の下方に位置するようにロータリ耕耘装置8に備え
られた固定部に相当)が設けられている。
【0019】
抵抗棒12の上部には、その長手方向に沿って、複数個の固定孔12bが開口されている。図3及び図4に示す状態は、抵抗棒12がブラケット14に挿入されて、ロックボルト16が抵抗棒12の固定孔12bの一つに挿入された状態であり、抵抗棒12がブラケット14に固定された状態である。この状態で、伝動ケース6の真後ろに抵抗棒12が位置しており、カバー11(天井部11a)の後端部の左右方向中央部の下方に、抵抗棒12の接地部12aが位置している。
【0020】
図3及び図4に示す状態において、右及び左の駆動軸9及び正逆転爪10を正転方向(図3の矢印A1の方向)に回転駆動しながら前進することにより、圃場の耕耘(耕起)が行われる。抵抗棒12の接地部12aが圃場に接地することにより、圃場に対するロータリ耕耘装置8の高さが決められて、ロータリ耕耘装置8の耕耘深さが決められる。
【0021】
本実施形態においては、必要に応じてロータリ耕耘装置8の耕耘深さを変更することができる。例えば、ロータリ耕耘装置8の耕耘深さをより深く設定したいとするなら、ロックボルト16を回して取り外した後、抵抗棒12を上方向に移動させ、ロックボルト16を、抵抗棒12のより下方に位置する別の固定孔12bに再び螺入して抵抗棒12を固定すれば良い。これにより、ロータリ耕耘装置8に対する抵抗棒12(接地部12a)の高さがより高い位置に変更されるため、ロータリ耕耘装置8の耕耘深さもより深く設定される。一方、ロータリ耕耘装置8の耕耘深さをより浅く設定したいとするなら、ロックボルト16を回して取り外した後、抵抗棒12を下方向に移動させ、ロックボルト16を、抵抗棒12のより上方に位置する別の固定孔12bに再び螺入して抵抗棒12を固定すれば良い。
【0022】
(整地部材)
図2、図3、図4に示すように、整地部材17は、可撓性を有するゴム板等により構成される横長状(長方形状)の平板18と、金属製の中部材21と、金属製で長板状の2枚の支持板25とを備えて構成されている。尚、中部材21及び支持板25の材質としては金属製に限らず、例えば、硬質の樹脂板(透明板、着色板等)等を採用しても良い。
【0023】
平板18の上辺部18a(平板18の上端部)が、カバー11(天井部11a)の後端部11cと略同じ長さ(幅)に設定されており、カバー11(天井部11a)の後端部11cの上面(後面)に沿って、平板18の上辺部18aが載せ付けられており、平板18の上辺部18aと略同じ長さ(幅)を備えた固定部材19(金属製の細長い平板)が載せ付けられている。
【0024】
カバー11(天井部11a)の後端部11cと、平板18の上辺部18aと、固定部材19とに亘って貫通させた4つのボルト20のそれぞれを、平板18の裏面側からナット22で締結することによって、平板18の上辺部18aがカバー11(天井部11a)の後端部11cに横方向に沿って連結される。尚、本明細書中、平板18の表面を歩行型作業機の後方に面する側とし、裏面をロータリ耕耘装置8に面する側とする。
【0025】
図4に示すように、中部材21は、平板18の表面側の下端部の横方向中央部に設けられている。図4及び図5(a)に示すように、中部材21は、その中央部と、平板18の下端部の横方向中央部とに亘って貫通させた2つのボルト23のそれぞれを、平板18の裏面側からナット(図示せず)で締結することで固定される。
【0026】
図4及び図5(a)に示すように、中部材21の左右両側には、第1頭付きピン27(第1の軸に相当)と第2頭付きピン28(第2の軸に相当)が、図4の紙面の上下方向(支持板25の縦向き姿勢に沿う方向に相当)に並設されており、中部材21の下端部には、鋸歯状の整地部21aが設けられている。
【0027】
図5(b)に示すように、第1頭付きピン27の先端部の側面に、軸径方向に貫通する第1ピン貫通孔27aを設けており、第2頭付きピン28の先端部の側面にも同様に、軸径方向に貫通する第2ピン貫通孔28aを設けている。
【0028】
図4及び図5(a)に示すように、整地部21aの横方向中央には正方形の貫通孔21bが設けられており、図3及び図7に示すように、この中部材21の貫通孔21bを、ブラケット14の第1フック部14a及び抵抗棒12の第2フック部12cのそれぞれに着脱自在に掛止させることができるように構成されている。
【0029】
図4及び図5(a),(b)に示すように、支持板25には、第1頭付きピン27を挿通させる長孔45(第1貫通孔に相当)と、第2頭付きピン28を挿通させる円弧長孔40(第2貫通孔に相当)と、均平作業時の土圧を受けて中部材21と当接したときの反力受けとなる受け部25bと、鋸歯状の整地部25aとを設けている。
【0030】
円弧長孔40は、図5(a)の第1頭付きピン27の位置に相当する仮想点P1を中心として長孔45の周りに円弧状に開口された長孔であって、支持板25を中部材21に取り付けたときに長孔45の上側に位置するように設けられている。
【0031】
長孔45の一端に、支持板25が縦向き姿勢にあるときに第1頭付きピン27を配置させる第3位置決め部46を設けると共に、長孔45の他端に、支持板25が横向き姿勢にあるときに第1頭付きピン27を配置させる第4位置決め部47を設けてある。
【0032】
図9(a)〜(c)に示すように、円弧長孔40の一端に、支持板25が縦向き姿勢にあるときに第1頭付きピン27(第4位置決め部47)を中心とした半径方向での第2頭付きピン28の移動(支持板25の上方への移動)を規制する第1位置決め部41を設けてある。円弧長孔40の他端に、支持板25が横向き姿勢にあるときに第1頭付きピン27(第4位置決め部47)を中心とした半径方向での第2頭付きピン28の移動(支持板25の上方及び下方への移動)を規制する第2位置決め部42を設けてある。
【0033】
第1頭付きピン27(第4位置決め部47)を中心とした半径方向での円弧長孔40の中間部の幅L1は、第1頭付きピン27(第4位置決め部47)を中心とした半径方向での第1位置決め部41の幅L2、及び第2位置決め部42の幅L3よりも大きく形成してある(L1>L2=L3)。
【0034】
円弧長孔40の形状としては、例えば、図9(a)に示すように第1及び第2位置決め部41,42を両端とする破線で描かれた円弧領域40aの内側に円弧長孔40の内縁部40bが張り出した形状や、図9(b)に示すように円弧領域40aの外側に円弧長孔40の外縁部40cが張り出した形状、あるいは、図9(c)に示すように円弧領域40aの内縁部40b及び外縁部40cのそれぞれが内側及び外側に張り出した形状としてよい。尚、円弧領域40aを形成する内側及び外側のそれぞれの円弧の中心(第1頭付きピン27(第4位置決め部47))は一致する。
【0035】
円弧長孔40の一端には、支持板25の長辺方向に長い長孔部43(保持部に相当)を連設してある。
【0036】
2枚の支持板25は、以下に示すようにして、中部材21に取り付けられる。
図4に示すように、先ず2枚の支持板25の端部のそれぞれを中部材21の左右両側に配置し、各支持板25の長孔45及び円弧長孔40のそれぞれに、第1頭付きピン27及び第2頭付きピン28を挿通させる。
【0037】
図5に示すように、長孔45から出ている第1頭付きピン27の先端部に、長孔45の幅よりも大きな外径を有する第1平座金29を取り付けて第1頭付きピン27の第1ピン貫通孔27aに第1ベータピン31の一端を差し込むと共に、円弧長孔40から出ている第2頭付きピン28の先端部にも同様に、円弧長孔40の幅よりも大きな外径を有する第2平座金30を取り付けて、第2頭付きピン28の第2ピン貫通孔28aに、第2ベータピン32の一端を差し込む。このとき、第1平座金29は、第1ベータピン31と支持板25との間に位置し、第2平座金30は第2ベータピン32と支持板25との間に位置する。
【0038】
第1頭付きピン27は、第1ベータピン31と第1平座金29から構成される第1抜け止め部によって、長孔45から抜けないように抜け止めされており、第2頭付きピン28についても同様に、第2ベータピン32と第2平座金30から構成される第2抜け止め部によって、円弧長孔40から抜けないように抜け止めされている。
【0039】
上記構成によって、2枚の支持板25は、第1及び第2頭付きピン27,28の軸方向に抜け止めされた状態で中部材21に支持されており、第1頭付きピン27の軸を回動支点として、支持板25を円弧長孔40に沿って回動させることによって、第2頭付きピン28の軸が円弧長孔40に沿って案内される。その結果、2枚の支持板25は、図4及び図6に示すように平板18の下辺部に沿った横向き姿勢で横方向に並設した状態、及び図8に示すように平板18の横方向の中央部に縦向き姿勢とした状態にスムーズに姿勢変更することができるように構成される。
【0040】
(均平作業)
次に、均平作業について説明する。
図4,図5,図6に示すように、均平作業を行う場合、縦向き姿勢にある2枚の支持板25を、第1頭付きピン27の軸を回動支点として、円弧長孔40に沿って下方向に回動させる。このとき、第1頭付きピン27が長孔45の第4位置決め部47に配置され、第2頭付きピン28が円弧長孔40の第2位置決め部42に配置される(図9参照)。これにより2枚の支持板25が、平板18の下辺部18bに沿った横向き姿勢で横方向に並設されて位置決めされる。このとき、図4に示すように中部材21の整地部21aと2枚の支持板25の整地部25aとが直線状に連設される。尚、均平作業においては、中部材21の貫通孔21bを、抵抗棒12の第2フック部12cには掛止させずに取り外した状態としておく。
【0041】
この状態において、図4,図5,図6に示すように、平板18の下辺部18bが、2枚の支持板25により支持された状態でカバー11(天井部11a)の後端部11cから垂れ下がる状態となる。
【0042】
図6に示すように、機体の前進に伴い、ロータリ耕耘装置8において、右及び左の駆動軸9及び正逆転爪10を正転方向(図3の矢印A1の方向)に回転駆動することにより、耕起された土が平板18の裏面により受け止められて、平板18の全体が後方(上方)に
移動する状態となるのであり、平板18の下辺部18bに設けられている中部材21(整地部21a)と2枚の支持板25(整地部25a)によって均平面が形成される。
【0043】
(畝立て作業)
次に、畝立て作業について説明する。
図7,図8に示すように、畝立て作業を行う場合、横向き姿勢にある2枚の支持板25を、第1頭付きピン27の軸を回動支点として、円弧長孔40に沿って上方向に回動させることによって、平板18の横方向の中央部に縦向き姿勢として、中部材21の第2頭付きピン28を円弧長孔40の長孔部43に掛止させることで、2枚の支持板25が縦向き姿勢に保持されるように構成されている。このとき、第1頭付きピン27は、長孔45の第3位置決め部46に配置される。
本構成によれば、円弧長孔40の長孔部43によって支持板25の縦向き姿勢を保持することができ、振動等により支持板25が縦向き姿勢から横向き姿勢に動くようなことが少なくなるので、畝立て作業を安定して実施することができる。
尚、畝立て作業においては、抵抗棒12の第2フック部12cを、中部材21の貫通孔21bに挿入して掛止させることによって、中部材21と抵抗棒とを連結状態にしておく。
【0044】
この状態において、図7及び図8に示すように、機体の前進に伴い、ロータリ耕耘装置8において、右及び左の駆動軸9及び正逆転爪10を正転方向(図7の矢印A1の方向)に回転駆動することにより、耕起された土が平板18により受け止められる際、平板18の中央部(下辺部18b)は後方に移動せず(中部材21が抵抗棒12に連結されていることによる)、平板18の一方及び他方の横側部が後方に移動することになる。
【0045】
これにより、図4に示すように、中部材21の左右両端部を起点とし、平板18における一点鎖線B1の付近を折り曲げ線として、図8に示すように、平板18の一方及び他方の横側部が斜めに後方に折れ曲がるような状態となる。
この状態において、図8に示すように、平板18の下辺部18bの左右中央部と中部材21によって畝Cの底部C1が形成され、平板18の折れ曲がった一方及び他方の横側部によって、右及び左の横側の畝Cの壁部C2が形成される。
【0046】
この場合、中部材21が抵抗棒12に連結されていることにより、畝Cの底部C1が安定して形成されるのであり、右及び左の横側の畝Cの壁部C2と底部C1との間の部分も、中部材21及び支持板25によって角部状に明確に形成される。平板18の一方及び他方の横側部が斜めに後方に折れ曲がるような状態となることにより、右及び左の横側の畝Cの壁部C2が安定して形成される。
【0047】
尚、図4及び図8に示すように、縦向き姿勢にある支持板25の整地部25aに連設する傾斜部分25cと、中部材21の整地部21aの端の部分21cとは、平板18の折り曲げ線(一点鎖線B1)と一致するように構成されている。このため、畝立て作業の際、平板18の一方及び他方の横側部が折り曲げ線(一点鎖線B1)に沿って確実に折れ曲がり易くなるので、底部C1からの壁部C2の立ち上り角度を一定に維持し易い。
【0048】
以上より、本実施形態のロータリ耕耘装置用の整地部材17によれば、1つのロータリ耕耘装置用の整地部材17により均平作業及び畝立て作業が行えるようになる。即ち、従来のように各作業に応じて2種類の整地部材を用意する必要がなく、付け替える必要もなくなるので、コスト的に有利であると共に作業性も向上する。
【0049】
また図9(a)〜(c)に示すように、第1頭付きピン27(第4位置決め部47)を中心とした半径方向での円弧長孔40の中間部の幅L1を、第1頭付きピン27(第4位置決め部47)を中心とした半径方向での第1位置決め部41の幅L2及び第2位置決め部42の幅L3よりも大きく形成してあるため、たとえ円弧長孔40に土や砂粒などが入り込んでいたとしても、支持板25の姿勢を切換える際、第2頭付きピン28の外周部と円弧長孔40の縁部との間に土や砂粒などが挟み込まれ難く、第2頭付きピン28が、円弧長孔40の第1位置決め部41と第2位置決め部42との間をスムーズに移動することができる。
【0050】
さらに、仮に、第1頭付きピン27が第4位置決め部47の位置から多少第3位置決め部46側にずれた位置にある状態において、作業者が支持板25を回動させてしまった場合でも、第2頭付きピン28は円弧長孔40の縁部に当たることなく、第1位置決め部41と第2位置決め部42との間をスムーズに移動することができる。
【0051】
また上記構成によれば、支持板25は長孔45に挿通された第1頭付きピン27を抜け止めする第1抜け止め部(第1ベータピン31及び第1平座金29)と、円弧長孔40に挿通された第2頭付きピン28を抜け止めする第2抜け止め部(第2ベータピン32と第2平座金30)により抜け止めされた状態で中部材21に支持されている。このため、支持板25を中部材21に1箇所で支持する場合と比べて、支持板25が中部材21に強固に支持されて、上記均平作業や畝立て作業を行う際の土圧を受けたときの支持板25のがたつきが効果的に抑えられる。
【0052】
尚、第1頭付きピン27及び第2頭付きピン28を支持板25の縦向き姿勢に沿う方向に並べるようにして中部材21に設けることで、第1抜け止め部(第1ベータピン31及び第1平座金29)と第2抜け止め部(第2ベータピン32と第2平座金30)とが縦方向に並設する状態となる。これにより、特に均平作業を行う際、図5及び図6に示すように、横向き姿勢の支持板25が土圧を受けたときに生じる、第1頭付きピン27と第2頭付きピン28との間を通る仮想軸線D1周りのがたつきをより効果的に抑えることができるので、均平作業を安定して実施することができる。
【0053】
さらに、図5及び図6に示すように、横向き姿勢の支持板25が土圧を受けたときに、支持板25は、第1頭付きピン27と第2頭付きピン28とを支点として、第1頭付きピン27と第2頭付きピン28とを通る仮想軸線D2周りに移動しようとする。しかしながら、支持板25の受け部25b、第1抜け止め部(第1ベータピン31及び第1平座金29)、及び第2抜け止め部(第2ベータピン32と第2平座金30)の作用によって、支持板25の上記動作を効果的に抑えることができるので、均平作業を安定して実施することができる。
【0054】
また、金属製の支持板25の整地部25aによって耕耘地を整地するため、可撓性を有する平板18によって耕耘地を整地する場合と比べて、均平作業を行ったときの耕耘地表面の形状がより均一な状態となり易い。
【0055】
〔別実施形態〕
〔1〕図10に示すように、前述の実施形態における円弧長孔40に長孔部43を設けない構成としても良い。このとき、第1貫通孔としては、長孔45ではなく、丸孔48として良い。尚、本別実施形態においても、図9(a),(b),(c)のいずれの構成を採用しても良い。
【0056】
〔2〕前述の実施形態における中部材21及び支持板25のそれぞれにおいて、整地部21a及び整地部25aを設けない構成としても良い。本実施形態において均平作業を行う場合、圃場に接地する平板18の下辺部18bによって均平面が形成される。このとき、平板18の下辺部18bに沿う2枚の支持板25が重しのような役割を果たして平板18の下辺部18bのばたつきが抑えられるので、均平面が安定して形成される。
【0057】
〔3〕前述の実施形態において、中部材21の左右両側に長孔45と円弧長孔40とを設け、支持板25の方に第1頭付きピン27と第2頭付きピン28とを設ける構成としても良い。
【0058】
〔4〕前述の実施形態における第1抜け止め部を、第1頭付きピン27の先端部に一体的に設けられ、且つ長孔45の幅よりも大きな外径を有する大径部によって構成し、第2抜け止め部を、第2頭付きピン28の先端部に一体的に設けられ、且つ円弧長孔40の幅よりも大きな外径を有する大径部によって構成しても良い。
【0059】
〔5〕前述の実施形態において、支持板25が第1頭付きピン27と円弧長孔40とを備えると共に、中部材21が第2頭付きピン28と長孔45とを備える構成としても良いし、あるいは、支持板25が第2頭付きピン28と長孔45とを備えると共に、中部材21が第1頭付きピン27と円弧長孔40とを備える構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、走行用の車輪とロータリ耕耘装置とを別々に備えた歩行型作業機ばかりではなく、走行用の車輪を廃止し、右及び左の車軸に正逆転爪を連結してロータリ耕耘装置を構成した歩行型作業機や、乗用型のトラクタに装備されるロータリ耕耘装置に使用される整地部材に有用であり、コスト削減と作業性の向上を図る場合に適している。
【符号の説明】
【0061】
8 ロータリ耕耘装置
11 カバー
11c 後端部
12c 第2フック部(固定部)
18 平板
18b 下辺部
21 中部材
25 支持板
27 第1頭付きピン(第1の軸)
28 第2頭付きピン(第2の軸)
40 円弧長孔(第2貫通孔)
41 第1位置決め部
42 第2位置決め部
43 長孔部(保持部)
45 長孔(第1貫通孔)
46 第3位置決め部
47 第4位置決め部
L1 中間部の幅
L2 第1位置決め部の幅
L3 第2位置決め部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、且つその上端部がロータリ耕耘装置のカバーの後端部に連結されている横長状の平板と、
前記平板の下端部の横方向中央部に設けた中部材と、
前記平板の下辺部に沿った横向き姿勢で横方向に並設されて取り付けられた状態、及び前記平板の横方向の中央部に縦向き姿勢で取り付けられた状態に姿勢変更自在な2枚の支持板とを備え、
前記中部材は前記カバーの後端部の下方に位置するようにロータリ耕耘装置に備えられた固定部に着脱自在に構成されており、
前記中部材及び前記支持板の一方に第1の軸及び第2の軸を設け、
前記中部材及び前記支持板の他方に前記第1の軸を挿通する第1貫通孔と、前記第2の軸を挿通する円弧長孔の第2貫通孔とを設け、
前記支持板を前記第1の軸を中心として前記第2貫通孔に沿って回動させることにより、前記支持板を前記横向き姿勢及び縦向き姿勢に姿勢変更自在に構成し、
前記第2貫通孔の一端に、前記支持板が縦向き姿勢にあるときに前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第2の軸の移動を規制する第1位置決め部を設けると共に、前記第2貫通孔の他端に、前記支持板が横向き姿勢にあるときに前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第2の軸の移動を規制する第2位置決め部を設け、前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第2貫通孔の中間部の幅を、前記第1の軸を中心とした半径方向での前記第1及び第2位置決め部の幅よりも大きく形成してあるロータリ耕耘装置用の整地部材。
【請求項2】
前記第1位置決め部に、前記支持板を縦向き姿勢に保持する保持部を連設し、前記第1貫通孔を長孔に形成して、前記第1貫通孔の一端に、前記支持板が縦向き姿勢にあるときに前記第1の軸を配置させる第3位置決め部を設けると共に、前記第1貫通孔の他端に、前記支持板が横向き姿勢にあるときに前記第1の軸を配置させる第4位置決め部を設けてある請求項1に記載のロータリ耕耘装置用の整地部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−200129(P2011−200129A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68304(P2010−68304)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】