説明

ロールベーラ用ロールベール運搬装置

【課題】外部油圧供給系統を持たないロールベーラに対しても簡易に装備可能であって、特別な駆動動力を必要としない簡素な構造と軽量化によって安価な装備を可能にする。
【解決手段】主フレーム10と、荷台フレーム20と、荷受けガイド30とを備え、荷台フレーム20は、自身の重心位置が軸支部分21より前方側にあり、後方フレーム部23でロールベールRを受け止めた状態ではロールベールRの自重を加えた重心位置が軸支部分21より後方側に位置するように軸支され、主フレーム10に、主フレーム10と前方フレーム部22とが同一平面になる位置で荷台フレーム20の前端部を自動保持する保持機構40を設けると共に、保持機構40の保持を解除する保持解除手段50を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料作物の収穫作業体系の中で用いられるロールベーラに装着されるロールベーラ用ロールベール運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飼料作物の収穫作業体系は,刈り取り(又は刈り倒した後に拾い上げ)・梱包・運搬・密封の作業の組み合わせとなるため必要な作業機の種類は多岐に渡り、作業機相互の連携が難しく作業能率の低下の原因となっている。そのため、作業機の構造改善や多機能化等の方法による作業能率の向上が必要である。
【0003】
従来技術としては、モア等により刈り倒した後にロールベーラにより拾い上げ・梱包(刈り取り機能を有するロールベーラでは刈り取り・梱包)されたロールベールは、梱包されたその場で圃場に放出・放置され、その後、ロールクラブ付きトラクタやロールベール運搬機(例えば、下記特許文献1参照)等の専用運搬車、或いは拾い上げ機能を有する自走式ラッピングマシン(例えば、下記特許文献2参照)等により運搬され、ラッピングの処理がなされていた。
【0004】
これに対して、このような専用運搬車を用いないものとして、下記特許文献3に記載されるものが提案されている。
【0005】
図1は、この従来技術を示した説明図である。この従来技術は、自走ベーラ又はトラクタが牽引するベーラJ1が巻き上げた麦、牧草等のロールを受け取り、一定の場所まで運搬して排出することができるトレーラであって、ベーラJ1に連結される本体J4と、牧草等のロールJ3を乗せるロール受けJ5とからトレーラJ2を形成し、ロール受けJ5は本体J4の両側の車輪J6を備えたフレームJ7に油圧シリンダJ8を介して前後に揺動可能に支持され、油圧シリンダJ8を伸長操作することで、ロール受けJ5を後方に揺動させてロールJ3を後方に排出し、油圧シリンダJ8を伸縮操作することで、ロール受けJ5を元の状態に戻すものである。
【0006】
【特許文献1】特開平10−75637号公報
【特許文献2】特開2004−147577号公報
【特許文献3】特開2003−143927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来技術によると、ロールベーラの後方に接続したトレーラによって、ロールベーラから排出されたロールベール1個を受け止め、任意の位置まで搬送した後荷下ろしすることができるので、専用の運搬車を用いることなく、しかも、ロールベーラでの刈り取り又は拾い上げ作業を中断することなく能率的にロールベールの運搬を行うことができる。
【0008】
しかしながら、前述した従来技術によると、油圧シリンダJ8の作動によってロール受けJ5の揺動動作を行うので、外部油圧供給系統を持たない飼料イネ専用収穫機等には装備することができない問題があり、また、油圧によって大重量ロールベールを取り扱う大型機であるため、装備自体も大型・大重量になって高価な装備にならざるを得ない問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものであって、外部油圧供給系統を持たない飼料イネ専用収穫機等に対しても簡易に装備可能であって、特別な駆動動力を必要としない簡素な構造と軽量化によって安価な装備を可能にし、しかも、ロールベーラでの刈り取り又は拾い上げ作業を中断することなく能率的にロールベールの運搬を行うことができるロールベーラ用ロールベール運搬装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、ロールベーラに装着され、ロールベーラから排出されるロールベールを受け止めてロールベーラの移動に応じて運搬するロールベーラ用ロールベール運搬装置であって、ロールベーラの後方排出口下方に設けられる水平軸に前端が軸支されて後方に延設される平行フレームを備え、後端側に垂直軸廻りに方向変更可能な接地輪を備えた主フレームと、前記平行フレーム間に設けた水平軸廻りに揺動自在に軸支され、この軸支部分より前方側に前記主フレームの内側で前記主フレームと同一平面を形成可能な前方フレーム部を有すると共に、前記軸支部分より後方側に前記ロールベーラの後方排出口から排出されたロールベールを受け止めるべく湾曲状に立ち上がった後方フレーム部とを有する荷台フレームと、前記後方排出口の下方位置に支持されて当該後方排出口から排出されるロールベールを前記荷台フレーム上に案内する荷受けガイドとを備え、前記荷台フレームは、自身の重心位置が前記軸支部分より前方側にあり、前記後方フレーム部でロールベールを受け止めた状態ではロールベールの自重を加えた重心位置が前記軸支部分より後方側に位置するように軸支され、前記主フレームに、当該主フレームと前記前方フレーム部とが同一平面になる位置で前記荷台フレームの前端部を自動保持する保持機構を設けると共に、当該保持機構の保持を解除する保持解除手段を設けることを特徴とする。
【0011】
また、前述の特徴に加えて、前記保持解除手段を、前記ロールベーラ又は前記ロールベーラを牽引する走行車の運転席から遠隔操作可能にしたことを特徴とする。
【0012】
このような特徴によると、ロールベーラの後方排出口から排出されたロールベールは、荷受けガイドに案内されて荷台フレーム上に転送されることになり、荷台フレームの後方フレーム部に受け止められることになるので、この状態でロールベーラを移動させて任意の位置にロールベールを運搬することでき、また、この運搬をロールベーラの刈り取り又は拾い上げ作業を継続しながら行うことができる。
【0013】
ロールベーラが所定の位置に到達した時点で保持解除手段を操作して主フレームに対する荷台フレームの保持を解除すると、ロールベールと荷台フレームとの自重によって、ロールベールを載置している後方フレーム部が後方に倒れるように揺動回転するので、後方フレーム部の後端からロールベールが落下して地上に荷下ろしされることになる。
【0014】
そして、荷台フレーム上のロールベールが荷下ろしされると、荷台フレームは、自重によって前方フレーム部が下がり、前方フレーム部が主フレームと同一平面を形成する位置で、保持機構によって主フレームに保持されることになって、再びロールベールの受け取り待ち状態になる。
【0015】
このような構成のロールベール運搬装置によると、特別な駆動力を必要とすることなく、ロールベーラから排出されたロールベールの受け止めと荷下ろしを行うことができ、荷下ろし後には自動でロールベールの受け取り待ち状態に戻すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、このような特徴を有することで、外部油圧供給系統を持たない飼料イネ専用収穫機等に対しても簡易に装備可能であって、特別な駆動動力を必要としない簡素な構造と軽量化によって安価な装備を可能にし、しかも、ロールベーラでの刈り取り又は拾い上げ作業を中断することなく能率的にロールベールの運搬を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2及び図3は、本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置の全体構成を示した説明図である(図2は全体斜視図、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図)。
【0018】
本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置2は、ロールベーラ1に装着され、ロールベーラ1から排出されるロールベールRを受け止めてロールベーラ1の移動に応じて運搬するものであって、主要な構成要素は、主フレーム10、荷台フレーム20、荷受けガイド30、保持機構40、保持解除手段50からなる。
【0019】
主フレーム10は、ロールベーラ1の後方排出口1A下方に設けられる水平軸3に前端が軸支されて後方に延設される平行フレーム11を備え、後端側に垂直軸13廻りに方向変更可能な接地輪12を備えたものである。
【0020】
荷台フレーム20は、平行フレーム11間に設けた水平軸14廻りに揺動自在に軸支され、この軸支部分21より前方側に主フレーム10の内側で主フレーム10と同一平面を形成可能な前方フレーム部22を有すると共に、軸支部分21より後方側にロールベーラ1の後方排出口1Aから排出されたロールベールRを受け止めるべく湾曲状に立ち上がった後方フレーム部23とを有する。
【0021】
荷受けガイド30は、ロールベーラ1における後方排出口1Aの下方位置に支持されて後方排出口1Aから排出されるロールベールRを荷台フレーム20上に案内するものであって、取り付けフレーム31に対して自転可能に並べられた案内ローラ32を水平に軸支した構造を有するものである。
【0022】
そして、荷台フレーム20は、自身(荷台フレーム20単独)の重心位置が軸支部分21より前方側(ロールベーラ1側)にあり、後方フレーム部23でロールベールRを受け止めた状態ではロールベールRの自重を加えた重心位置が軸支部分21より後方側に位置するように軸支されている。また、主フレーム10に、主フレーム10と前方フレーム部22とが同一平面になる位置で荷台フレーム20の前端部を自動保持する保持機構40を設けると共に、保持機構40の保持を解除する保持解除手段50を設けている。
【0023】
このような構造を有するロールベール運搬装置2では、主フレーム10は、ロールベーラ1の幅方向に延びる水平軸3に前端が軸支されて、図3(a)に示すように水平軸3を中心に上下方向に揺動可能であるが、左右方向には固定されている。また、主フレーム10の後端側に垂直軸13廻りに方向変更可能な接地輪12を設けているので、ロールベーラ1の進行に従って、走行面の凹凸には上下の揺動で追従しながら移動することができる。また、ロールベーラ1の旋回時にはロールベーラ1に固定された状態で接地輪12が方向を変えて移動することができる。
【0024】
また、荷台フレーム20は、自重によって前方フレーム部22が下がる方向に回転するように軸支されており、前方フレーム部22が主フレーム10と同一平面になる位置で前端部が保持機構40によって保持されているので、何も載置されていない状態では、前方フレーム部22が主フレーム10と同一平面になる位置で保持されている。
【0025】
そして、荷台フレーム20の後方フレーム部23上にロールベールRが載置されると、ロールベールRの自重を加えた重心位置が軸支部分21より後方に移動するので、荷台フレーム20は後方フレーム部23が下がる方向に付勢されることになるが、この付勢に抗して保持機構40が荷台フレーム20の前端部を保持し、主フレーム10に対して前方フレーム22が同一平面になる位置で荷台フレーム20を保持している。したがって、この状態で保持機構40による保持が保持解除手段50によって解除されると、特段の動力を用いることなく、後方フレーム部23が下がる方向に回転され、後方フレーム部23の後端から載置されているロールベールRが転がり落ちることになる。
【0026】
図4は、本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置の動作を説明する説明図である。
【0027】
同図(a)に示すように、ロールベーラ1の後方排出口1AからロールベールRが排出されると、ロールベールRは荷受けガイド30の案内ローラ32上を転動して主フレーム10に軸支された荷台フレーム20上に移動し、湾曲状に立ち上がった荷台フレーム20の後方フレーム部23で受け止められる。この状態でロールベーラ1を移動させることによって、ロールベール運搬装置2はロールベールRを載置して所望の場所に運搬することができる。
【0028】
ロールベールRを所望の場所に運搬すると、保持機構40を解除する。これによって、同図(b)に示すように、ロールベールRの自重が加わった荷台フレーム20は後方に転倒するように回転し、後方フレーム部23の後端が地面に近接した状態になって、ロールベールRが転がり落ちて荷下ろしがなされる。
【0029】
ロールベールRが荷台フレーム20から荷下ろしされると、同図(c)に示すように、荷台フレーム20単独の自重によって、前方フレーム部22が下がる(後方フレーム部23が上がる)方向に回転し、前方フレーム部22が主フレーム10と同一平面状になったとことで、再び保持機構40が自動で作用して荷台フレーム20を主フレーム10に保持する。
【0030】
図5及び図6は、保持機構40の具体例を示したものである(各図(a)が背面図、(b)が側面図を示している)。
【0031】
図5に示した例では、主フレーム10に支持部10Aが形成され、その支持部10Aに支持軸43が回転可能に軸支されている。支持軸43には保持爪41が取り付けられ、バネ42によって主フレーム10側に向けて回転するようにバネ付勢されている。また、荷台フレーム20には前方フレーム部22の端部内側に保持部20Aが設けられており、この保持部20Aが保持爪41に係止されることで、主フレーム10に荷台フレーム20が保持されている。
【0032】
そして、保持機構40を解除するには、支持軸43の端部に設けられた解除ハンドル50A(保持解除手段50)を矢印a1方向に回動させることで、支持軸43に取り付けられた保持爪41がバネ42の付勢力に抗して矢印b方向に回転して保持爪41による保持部20Aの係止が解除される。これによって、荷台フレーム20の後方フレーム部23にロールベールRが載置されている場合には、ロールベールRの自重を加えた荷台フレーム20の自重によって、荷台フレーム20の前方フレーム部22が矢印cで示した上方に跳ね上がることになる。
【0033】
また、保持解除手段50は解除ハンドル50A以外に、リリースワイヤ51の引張によることもでき、リリースワイヤ51を矢印a2方向に引っ張ることで保持爪41が矢印b方向に回転して、同様に保持爪41による保持部20Aの係止が解除される。このリリースワイヤ51をロールベーラ1の運転席まで延長配備することで、運転席から保持機構40の解除を遠隔操作することができる。なお、ロールベーラ1がトラクタ等の走行車に牽引される場合には、その走行車の運転席にリリースワイヤ51が延長配備されることになる。
【0034】
図6に示す例は、図5に示す例と同様の機構を有するものであるが(同一の機能部には同一符号を付して重複説明を省略する)、この例では、解除ハンドル50Aを下方に下げることで支持部10に支持された支持軸43が支持部10Aを中心に下方(矢印a1方向)に回動して、支持軸43に取り付けられた保持爪41がバネ42の付勢力に抗して矢印b方向に回転して保持爪41による保持部20Aの係止が解除されるものである。
【0035】
このような実施形態によると、外部油圧供給系統を持たない飼料イネ専用収穫機等に対しても簡易に装備可能であって、特別な駆動動力を必要としない簡素な構造と軽量化によって安価な装備を可能にし、しかも、ロールベーラ1での刈り取り又は拾い上げ作業を中断することなく能率的にロールベールRの運搬を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置の全体構成を示した説明図(全体斜視図)である。
【図3】本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置の全体構成を示した説明図(側面図及び平面図)である。
【図4】本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置の動作を示した説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置の保持機構の具体例を示した説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るロールベール運搬装置の保持機構の具体例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ロールベーラ
1A 後方排出口
2 ロールベール運搬装置
3 水平軸
10 主フレーム
11 平行フレーム
12 接地輪
13 垂直軸
14 水平軸
20 荷台フレーム
21 軸支部分
22 前方フレーム部
23 後方フレーム部
30 荷受けガイド
40 保持機構
50 保持解除手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールベーラに装着され、ロールベーラから排出されるロールベールを受け止めてロールベーラの移動に応じて運搬するロールベーラ用ロールベール運搬装置であって、
ロールベーラの後方排出口下方に設けられる水平軸に前端が軸支されて後方に延設される平行フレームを備え、後端側に垂直軸廻りに方向変更可能な接地輪を備えた主フレームと、
前記平行フレーム間に設けた水平軸廻りに揺動自在に軸支され、この軸支部分より前方側に前記主フレームの内側で前記主フレームと同一平面を形成可能な前方フレーム部を有すると共に、前記軸支部分より後方側に前記ロールベーラの後方排出口から排出されたロールベールを受け止めるべく湾曲状に立ち上がった後方フレーム部とを有する荷台フレームと、
前記後方排出口の下方位置に支持されて当該後方排出口から排出されるロールベールを前記荷台フレーム上に案内する荷受けガイドとを備え、
前記荷台フレームは、自身の重心位置が前記軸支部分より前方側にあり、前記後方フレーム部でロールベールを受け止めた状態ではロールベールの自重を加えた重心位置が前記軸支部分より後方側に位置するように軸支され、
前記主フレームに、当該主フレームと前記前方フレーム部とが同一平面になる位置で前記荷台フレームの前端部を自動保持する保持機構を設けると共に、当該保持機構の保持を解除する保持解除手段を設けることを特徴とするロールベーラ用ロールベール運搬装置。
【請求項2】
前記保持解除手段を、前記ロールベーラ又は前記ロールベーラを牽引する走行車の運転席から遠隔操作可能にしたことを特徴とする請求項1に記載されたロールベーラ用ロールベール運搬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−259748(P2007−259748A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88458(P2006−88458)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】