説明

ワークプレス間搬送ロボット

【課題】 比較的狭いピッチのプレス間においても周囲との干渉を避けてワークを搬送可能とする。
【解決手段】 上下揺動アーム27の先端部に手首28を介してアーム状ハンド29の基端部を連結する。手首28に、アーム27の長さ方向にのびかつアーム27に回転自在に支持されたR軸32と、R軸32と直交する方向にのびたB軸33と、R軸32およびB軸33とそれぞれ直交する方向にのびかつハンド29の基端部に貫通させられたT軸34とを設ける。ハンド29の先端部に、T軸34と平行にのびかつワーク保持部材31を固定したH軸51を設ける。T軸34に駆動スプロケット53を、H軸51に従動スプロケット54をそれぞれ固定する。駆動スプロケット53および従動スプロケット54にベルト55を巻き掛ける。T軸34と同心状にのびかつハンド29の基端部を回転自在に支持しているA軸36を手首28に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、タンデムプレスラインにおいてワークをプレス間で搬送するために用いられるワークプレス間搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワークプレス間搬送ロボットとしては、上下揺動アームの先端部に手首を介してアーム状ハンドの基端部が連結されており、手首が、アームの長さ方向にのびかつアームに回転自在に支持されたR軸と、R軸と直交する方向にのびたB軸と、R軸およびB軸とそれぞれ直交する方向にのびかつハンドの基端部に貫通させられたT軸とを有しており、ハンドの先端部に、T軸と平行にのびかつワーク保持部材を固定したH軸が設けられ、T軸に駆動スプロケットが、H軸に従動スプロケットがそれぞれ固定され、駆動スプロケットおよび従動スプロケットにベルトが巻き掛けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記ワークプレス間搬送ロボットでは、手首のR軸を中心として、ハンドがその軸線まわりに揺動させられるとともに、手首のB軸を中心として、ハンドが上下方向に揺動させられるようになっているが、ハンドは水平方向には揺動させられるようになっていない。そのため、アームの基部を中心とするハンドの回転半径はその上下揺動範囲を除いて不変であり、特定条件下(周囲に干渉する)ではワーク搬送に制限を生じた。
【特許文献1】特開平07−299774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、周囲との干渉が生じる等の比較的狭いピッチのプレス間や金型突起物と干渉し易い条件下でもそれを避けてワークを搬送することができるワークプレス間搬送ロボットを提供することにある。
【0005】
加えて、特許文献1の特徴(T軸駆動をH軸に移行して軸数を増やすことなくワークをH軸中心に自在旋回を可能とする)をそのまま残し、さらに機能を付加することをさらなる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるワークプレス間搬送ロボットは、上下揺動アームの先端部に手首を介してアーム状ハンドの基端部が連結されており、手首が、アームの長さ方向にのびかつアームに回転自在に支持されたR軸と、R軸と直交する方向にのびたB軸と、R軸およびB軸とそれぞれ直交する方向にのびかつハンドの基端部に貫通させられたT軸とを有しており、ハンドの先端部に、T軸と平行にのびかつワーク保持部材を固定した従動H軸が設けられ、T軸に駆動スプロケットが、H軸に従動スプロケットがそれぞれ固定され、駆動スプロケットおよび従動スプロケットにベルトが巻き掛けられているワークプレス間搬送ロボットにおいて、手首に、T軸と同心状にのびかつハンドの基端部を回転自在に支持しているA軸が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
この発明によるワークプレス間搬送ロボットでは、手首のR軸およびB軸を中心として、ハンドが揺動させられることに加えて、A軸を中心として、ハンドが水平方向に揺動させられる。そのため、ハンドを中折れすることができ、プレスに対するワークの搬出・搬入時にハンドの揺動角度が変わるようにハンドを揺動させると、比較的狭いピッチのプレス間においても周囲との干渉なくワークを搬送することができる。
【0008】
さらに、ハンドの基端部またはA軸に、A軸と同心状に従動歯車が固定され、従動歯車とかみ合わされた駆動歯車を駆動するモータが手首側に装備されていると、シンプルな機構でもって、A軸を中心として、ハンドを揺動させることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、比較的狭いピッチのプレス間で周囲との干渉が考えられる場合においても干渉物を避けてワークを搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
【0011】
図1を参照すると、前工程プレスP1および後工程プレスP2間にロボット11が配置されている。
【0012】
図2を参照すると、ロボット11は、固定基台21と、基台21に垂直S軸22によって水平揺動自在に支持されている旋回台23と、旋回台23に水平L軸24によって上下揺動自在に支持されている第1アーム25と、第1アーム25の先端部にU軸26によって上下揺動自在に支持されている円筒状第2アーム27と、第2アーム27の先端に手首28を介して連結されているアーム状ハンド29と、ハンド29の先端部に取付られているワーク保持部材31とよりなる。
【0013】
図3に詳細に示すように、手首28は、第2アーム27に回転自在にはめ入れられているR軸32と、R軸32の突出端部にこれと直交させられるように連結されているB軸33と、R軸32およびB軸33とそれぞれ直交させられるようにのびかつハンド29の基端部に貫通させられたT軸34と、B軸33およびT軸34を収容しているハウジング35とを備えている。
【0014】
ハウジング35には筒状A軸36がT軸34と同心状にこれにはめ被せられるように固定されている。A軸36にハンド29の基部がベアリング37を介して支持されている。
【0015】
ハンド29の基部には従動歯車41がA軸36と同心状に固定されている。従動歯車41には駆動歯車42が噛み合わされている。駆動歯車42は、減速機43付モータ44によって駆動されるようになっている。減速機43付モータ44は、ブラケット45によってハウジング35またはA軸36に固定されている。
【0016】
ハンド29の先端部にはH軸51がT軸34と平行にベアリング52を介して支持されている。T軸34には駆動スプロケット53が、H軸51には従動スプロケット54がそれぞれ固定されている。駆動スプロケット53および従動スプロケット54には歯付きベルト55が巻き掛けられている。
【0017】
ワーク保持部材31は、従動スプロケット54とともに回転させられるように従動スプロケット54に連結されている。
【0018】
ロボット11の駆動源により、旋回台23の水平揺動、第1および第2アーム25、27の上下揺動、R軸32の回転、B軸33の回転およびT軸34の回転がそれぞれ行われるようになっている。
【0019】
T軸34が回転駆動されると、駆動スプロケット53、従動スプロケット54およびベルト55によってH軸51が回転駆動され、H軸51とともにワーク保持部材31が回転させられる。
【0020】
減速機43付モータ44によって駆動歯車42が回転駆動されると、従動歯車41とともにハンド29がA軸36の回りに揺動させられる。
【0021】
図1に実線で示すように、前工程プレスP1からワークを搬出する場合、第2アーム27に対してハンド29を、ワーク搬送経路上流側に向かって平面視略への字状に屈曲させる。図1に鎖線で示すように、後工程プレスP2にワークを搬入する場合、今度は、ワーク搬送経路下流側に向かって平面視略逆への字状に屈曲させる。このようにすると、第2アーム27およびハンド29が一直線状となされている場合と比較して、ハンド29のL軸34を中心とした中折れが可能となる。この動作により、前工程および後工程のプレスP1、P2間ピッチを狭めても周囲との干渉を避けてワークを搬送することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明によるロボット11の平面図である。
【図2】同ロボット11の斜視図である。
【図3】同ロボット11の要部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
27 アーム
28 手首
29 ハンド
31 ワーク保持部材
32 R軸
33 B軸
34 T軸
36 A軸
51 H軸
53 駆動スプロケット
54 従動スプロケット
55 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下揺動アーム27の先端部に手首28を介してアーム状ハンド29の基端部が連結されており、手首28が、アーム27の長さ方向にのびかつアーム27に回転自在に支持されたR軸32と、R軸32と直交する方向にのびたB軸33と、R軸32およびB軸33とそれぞれ直交する方向にのびかつハンド29の基端部に貫通させられたT軸34とを有しており、ハンド29の先端部に、T軸34と平行にのびかつワーク保持部材31を固定したH軸51が設けられ、T軸34に駆動スプロケット53が、H軸51に従動スプロケット54がそれぞれ固定され、駆動スプロケット53および従動スプロケット54にベルト55が巻き掛けられているプレス間搬送ロボットにおいて、
手首28に、T軸34と同心状にのびかつハンド29の基端部を回転自在に支持しているA軸36が設けられていることを特徴とするワークプレス間搬送ロボット。
【請求項2】
ハンド29の基端部またはA軸36に、A軸36と同心状に従動歯車41が固定され、従動歯車41とかみ合わされた駆動歯車42を駆動するモータ44が手首側に装備されている請求項1に記載のワークプレス間搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−123009(P2006−123009A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310308(P2004−310308)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000238946)株式会社エイチアンドエフ (57)
【Fターム(参考)】