説明

ワーク位置決め装置及び、ワーク位置決め方法

【課題】位置決めピンが軸線方向の押圧力でシリンダ内に退避した時に、該シリンダの軸線と位置決めピンの軸線が一致するように位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段を設けて、ワークの位置決め精度を向上させると共に、装置の簡素化と耐久信頼性を向上させることを目的とする。
【解決手段】エンジン1を搭載するパレット2と、先端ガイド72部が車体5側の位置決め孔55に嵌入する位置決めピン7と、パレット2に固定され、位置決めピン7を位置決めピン7の第1軸線CL1に沿って進退可能に支持するシリンダ8と、位置決めピン7を進出方向へ付勢する付勢手段10と、位置決めピン7がシリンダ8内に退避した時に、第2軸線CL2と第1軸線CL1が一致するように、位置決めピン7をガイドするガイド手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成した位置決め孔に位置決めピンを嵌入して位置決めを行うワーク位置決め装置及び、ワーク位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の組立工程において、車体などに車体部品を組付ける組付け作業を行う時に、車体部品と車体との位置決めを行う必要があり、このとき車体に形成した位置決め孔に位置決めピンを挿入して位置決めを行っている。
【0003】
図6(A),(B)に基づいて、パレット01に搭載されたワークを被取付部材05に取付ける際のパレット01と被取付部材05との間における位置決めに関する従来技術の一例を説明する。
パレット01に固定されたシリンダ02に位置決めピン03が、該位置決めピン03の軸心方向に進退可能に嵌入されている。
位置決めピン03の先端部は円錐形の突起部031が形成され、位置決めピン03の基端部にはシリンダ02の内周面と摺動する受圧部032が形成されている。
シリンダ02の底部には、圧縮エアーを供給するエアー供給管07が配管されている。
パレット01の下部には、該パレット01を上下させるパレット変位装置08が配設されている。
【0004】
ワークを正規位置に搭載したパレット01を被取付部材05と対向した位置に設置し、エアー供給管07から圧縮エアーをシリンダ内に供給して、位置決めピン03をシリンダ02から進出させる。
パレット01をパレット変位装置08によって上昇させる。パレット01の上昇に伴い、位置決めピン03の突起部031は被取付部材05に設けられた位置決め孔051に嵌入する。このとき、突起部031の先端中心と位置決め孔051の軸心は一致しない場合が多い。
パレット01の上昇に伴い、突起部031は位置決め孔051の周縁を倣うようにして該位置決め孔051を貫通していく。
突起部031が被取付部材05のストッパ部材052に当接すると、位置決めピン03は相対的にシリンダ02内に退避する状態になる。更に、位置決めピン03の受圧部032がシリンダ02の底部に到達すると、パレット変位装置08の作動流体の圧力が上昇して、
パレット変位装置08の上昇を停止させて位置決め終了となる。
【0005】
また、特開2005−230877号公報(特許文献1)には、ワークに形成した位置決め孔に挿入する位置決めピンを揺動回転支持部に支持させ、この揺動回転支持部は、位置決めピンの先端側が所定角度揺動回転可能となる中間保持状態と、位置決めピンを位置決め孔に挿入完了した時点で、位置決めピンの揺動回転動作を規制する固定保持状態とに変位するワーク位置決め装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−230877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来技術の一例では、図5(B)に示すように、被取付部材05の位置決め孔051を位置決めピン03の円錐状の突起部031が、位置決め孔051の周縁を倣うようにして位置決め孔051を貫通するので、位置決めピン03の第1軸線CL1がシリンダ02の第2軸線CL2に対して傾斜した状態で位置決めが行われ、位置決めの精度が低く、且つシリンダ02の内周面021と受圧部032との間に当接部P(図6(B))が生じて、該当接部Pの磨耗による位置決め精度の低下や位置決め装置の劣化が生じる不具合を有している。
【0008】
また、特許文献1は、揺動回転支持部、位置決めピンの先端側が所定角度揺動回転可能となる中間保持状態と、位置決めピンを位置決め孔に挿入完了した時点で、位置決めピンの揺動回転動作を規制する固定保持状態とに変位するワーク位置決め装置等が必要であるため、装置が複雑大型化し、コスト高となる問題を含んでいる。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、位置決めピンが軸線方向の押圧力でシリンダ内に退避した時に、該シリンダの軸線と位置決めピンの軸線が一致するように位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段を設けて、ワークの位置決め精度を向上させると共に、装置の簡素化と耐久信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明は、ワークを搭載するパレットと、
先端部が前記ワークの取付けられる被取付部材の位置決め孔に嵌入する位置決めピンと、
前記パレットに固定され、前記位置決めピンを内嵌して、前記位置決めピンを進退可能に支持するシリンダと、
該シリンダ内に前記位置決めピンを進出方向へ付勢する付勢手段と、
前記位置決めピンが前記シリンダ内に退避した時に、該シリンダの軸線に前記位置決めピンの軸線が一致するように、前記位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成にすることにより、位置決めピンの先端部がワークの位置決め孔に嵌入して、位置決めピンの軸線方向の押圧力でシリンダ内に退避した時に、該シリンダの軸線と位置決めピンの軸線が一致するように位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段を設けたので、位置決めピンの大部分がシリンダ内部に退避した状態の時に、ガイド手段によって最終位置決めが行われるので、位置決めピンの基端とシリンダ内周面とのコジリの発生を抑制できる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記ガイド手段は、前記位置決めピンの基端部に形成された円錐形状の突起部と、該突起部と対向した円錐形状の凹部とで構成されているとよい。
【0013】
このように位置決めピンの基端部を円錐形状の突起部とし、ガイド部の形状を円錐形の凹部とするとしたので、位置決めピンの軸線方向の押圧力により、シリンダの軸線と位置決めピンの軸線とを容易に調心可能になると共に、構造が簡単で耐久信頼性が向上する。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記付勢手段は、前記位置決めピンの軸線方向中間部に配設された鍔部と、前記ガイド手段との間に介装されたコイルスプリングとで構成するとよい。
【0015】
このように付勢手段としての付勢力をコイルスプリングとしたので、構造が簡素化され、設備の製造コストが軽減できる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記付勢手段は、前記位置決めピンの軸線方向中間部に配設された鍔部と、前記ガイド手段との間に供給する圧縮空気によって行われるようにするとよい。
【0017】
このように位置決めピンを圧縮空気にて移動させるので、ワークと被取付部材との高さ方向の変化に対応でき、すなわち、高さが小さい場合であっても大きい場合であっても位置決めピンを確実に移動できる。このため、汎用性が大きくなる。
【0018】
また、ワーク位置決め方法にかかる発明においては、パレットに搭載されたワークを該ワークが取付けられる被取付部材との間で位置決めを行うワーク位置決め方法において、ワークを搭載したパレットを被取付部材位置に設置する工程と、該パレットを上方向に変位する工程と、該パレットに固定されたシリンダ内に進退可能にかつ進出方向に付勢されて配設された位置決めピンの先端部を前記被取付部材に設けられた位置決め孔に嵌入する工程と、前記位置決めピンの上昇が停止し、該位置決めピンが前記付勢に抗して前記シリンダ内を相対的に退避して、前記位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段の受部に保持して、前記シリンダの軸線に前記位置決めピンの軸線を一致させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
かかる発明によれば、位置決めピンの先端部がワークの位置決め孔に嵌入して、位置決めピンの軸線方向の押圧力でシリンダ内に退避した時に、位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段の受部に保持することによって、シリンダの軸線に位置決めピンの軸線を一致させることができ、パレットの上昇時の変位力を利用して位置決め作用を行わせるので、精度のよい位置決めが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、位置決めピンの先端部がワークの位置決め孔に嵌入して、位置決めピン軸線方向の押圧力でシリンダ内に退避した時に、該シリンダの軸線と位置決めピンの軸線が一致するように位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段を設けたので、位置決めピンがシリンダ内部に退避した状態の時に、ガイド手段によって最終位置決めが行われるので、位置決めピンの基端とシリンダ内周面とのコジリの発生を抑制できる。
更に、ガイド部の形状を円錐形としたので、位置決めピンの軸線方向の押圧力により、位置決めピンの軸線とシリンダの軸線とを容易に調心可能になると共に、構造が簡単で耐久信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態におけるワークの位置決め装置の概略図を示す。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態における位置決め装置の作動前の状態図、(B)は位置決めが完了した状態図を示す。
【図3】(A)は本発明の第2実施形態における位置決め装置の作動前の状態図、(B)は位置決めが完了した状態図を示す。
【図4】本発明の第1実施形態における装置の作動工程を示すフロー図を示す。
【図5】本発明の第2実施形態における装置の作動工程を示すフロー図を示す。
【図6】従来技術の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0023】
(第1実施形態)
図1に基づいて、本発明を適用したワークの位置決め装置について説明する。
エンジン1は、パレット2のエンジン固定装置21に規定された姿勢で搭載されている。パレット2には、エンジン固定装置21と、該エンジン固定装置21と相対位置関係を維持した位置に詳細を後述する複数の位置決め装置3と、パレット2を上下に変位させるパレット昇降装置とが備えられている。
エンジン1が組付けられる被取付部材である車体5は、エンジンルームを構成する一部材であるフェンダパネル52とエンジンルーム側のエンジンルームパネル51とが前輪(図示省略)の配置領域(図1のフェンダパネル52の左側領域)と仕切るようにして、閉断面部56,57を形成しつつ、下端部で水平面部53を形成し、該水平面部53に連続して形成された下方折曲げ部54で結合した構造となっている。閉断面部56,57と折曲げ部54とで車体側の剛性を確保している。
水平面部53には車体側の位置決め孔55が配設されている。
該閉断面部56、57に隣接してサイドメンバ59が車両の前後方向に延在して配設されている。サイドメンバ59の上側にエンジンマウント6が装着されている。
エンジンマウント6にはエンジン1側のマウント取付部11に形成された雌ねじ12と締結するための貫通孔61が配設されている。63はエンジンマウント6にエンジン1側のマウント取付部11を締結するボルトである。
【0024】
位置決め装置3は、位置決め孔55に嵌入する位置決めピン7と、該位置決めピン7を進退可能に支持するシリンダ8と、該シリンダ8の底部に設けられたガイド手段9と、位置決めピン7をシリンダ8の軸線である第2軸線CL2方向に進出付勢する付勢手段10とで構成されている。
付勢手段10は、ガイド手段9の受部91と、位置決めピン7の軸線方向中間部に配設された鍔部74と、受部91と鍔部74との間に介装されたコイルスプリング75とで構成されている。
【0025】
位置決めピン7は、ピン71の先端部に円錐状の傾斜面を有し、車体側の位置決め孔55に該傾斜面をガイドとして嵌入する先端ガイド部72と、該先端ガイド部72が位置決め孔55に挿入されるとピン71の嵌入代を規制するための当接部材76と、ピン71の先端ガイド部72と反対側の端部である基端部に同様の円錐状の傾斜面を有し、該円錐状の先端頂点をピン71の軸線である第1軸線CL1と一致させた基端ガイド部73と、鍔部74とを備えている。
付勢手段10は、先端ガイド部72が位置決め孔55に挿入される際に、位置決め孔55の内周縁と先端ガイド部72の円錐状の傾斜面との摩擦(ガイドによる摩擦)に抗して位置決め孔55に嵌入させるものである。
【0026】
シリンダ8は、該シリンダ8の頂部に設けられたピン貫通孔81を介して位置決めピン7を該シリンダ8の第2軸線CL2に沿って、進退可能に支持している。
尚、ピン貫通孔81とピン71との嵌合隙間は、ピン71の第1軸線CL1がシリンダ8の第2軸線CL2とほぼ一致して進退する程度の隙間に形成されている。
ガイド手段9は、前記基端ガイド部73と、該基端ガイド部73の円錐状の傾斜面と対向した傾斜面を有する凹状のガイド凹部92を有した受部91とを備えている。
ガイド凹部92の円錐状の頂部先端はシリンダ8の第2軸線CL2上に位置させてある。
また、ガイド手段9の基端ガイド部73及び、ガイド凹部92の円錐状傾斜面の断面は、直線状又は、二次曲線状に湾曲(湾曲は凸又は凹でもよい)した円錐状の傾斜面どちらでも、同様の効果を得ることができる。
【0027】
図4に沿って位置決め装置を用いた位置決め方法の手順について説明する。
ステップS1で、まずパレット2のエンジン固定装置21にエンジン1を規定とおり正規位置に搭載する。
ステップS2で、パレット2を被取付部材である車体5の位置に設置する。
ステップS3で、パレット2を上方へ変位させる。
ステップS4で、先端ガイド部72を該先端ガイド部72の傾斜面により車体5側の位置決め孔55の周縁に倣って嵌入させる。この時、位置決めピン7はコイルスプリング75の押圧力によってシリンダ8内に退避しないように押圧する。
ステップS5で、パレット2をさらに上方へ変位させることにより、当接部材76が位置決め孔55に当接して、位置決めピン7の位置決め孔55との嵌入代が規制される。
ステップS6で、位置決めピン7の嵌入代が規制されることにより、位置決めピン7を付勢手段10のコイルスプリング75の付勢力に抗してシリンダ8内に相対的に退避させる(パレット2は上方へ変位を続けている)。
ステップS7で、位置決めピン7とシリンダ8との相対変異がなくなったときに、パレット2の上昇を停止させる。
【0028】
ステップS7において、ガイド手段の基端ガイド部73が、受部91のガイド凹部92に保持固定されると位置決めピン7とシリンダ8との相対変異がなくなる。
このとき、位置決めピン7の基端ガイド部73はシリンダ8の第2軸線CL2に略一致する。
一方、位置決めピン7のシリンダ8のピン貫通孔81部は既述のとおり、ピン貫通孔81とピン71との嵌合隙間は、ピン71の第1軸線CL1がシリンダ8の第2軸線CL2と略一致する位置で、該第2軸線CL2に沿って進退する程度の隙間に形成されている。
【0029】
従って、図2(B)に示すように、位置決めピン7の第1軸線CL1の方向の押圧力(パレット2の上昇変位の反力)が基端ガイド部73を介して受部91に作用することにより、基端ガイド部73とガイド凹部92とが密接するため、位置決めピン7のピン貫通孔81を支点にして第1軸線CL1が修正移動して、第1軸線CL1と第2軸線CL2が略一致し、それに伴い先端ガイド部72が移動して位置決め孔55の中心線CL3とも略一致することで精度の高い位置決めが可能になる。
【0030】
また、図2(B)に示すように、シリンダ8のピン貫通孔81と受部91の上面との距離L1と、シリンダ8のピン貫通孔81と位置決め孔55との距離L2は、L2に対しL1を大きくすることにより、位置決め修正(第1軸線CL1,CL2及び中心線CL3を一致させる)
時に受部91と基端ガイド部73との摩擦抵抗が小さくなり、当該部の磨耗の軽減及び、位置決め修正の容易化が図れる。すなわち、ピン貫通孔81を支点にしての修正移動力を基端ガイド部73の方が小さくてよいからである。
【0031】
このような構成にすることにより、位置決めピン7の先端ガイド部72が車体5の位置決め孔55に嵌入して、第1軸線CL1方向の押圧力でシリンダ内に退避した時に、該シリンダ8の第2軸線CL2と位置決めピン7の第1軸線CL1が一致するように位置決めピン7の基端ガイド部73をガイドする受部91を設けたので、位置決めピン7の大部分がシリンダ内部に退避した状態の時に、ガイド手段9によって高精度の位置決め修正が行われる。
付勢手段10として、受部91と位置決めピン7の中間部に設けられた鍔部74との間に介装されたコイルスプリング75とで構成したので、構造が簡素化され、設備の製造コストが軽減できる。
【0032】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図3(A)、(B)、及び図5に基づいて説明する。
尚、第2実施形態は車体側の位置決め孔部の形状と、付勢手段が異なる以外は第1実施形態と同じなので、パレット全体の詳細説明は省略し、同一部品は同一符号を付して説明は省略する。
【0033】
位置決め装置4はパレット2の規定の位置に配設されている。
65は車体側のサイドメンバで、該サイドメンバ65の内部には、サイドメンバ65の剛性を確保するための補強部材66が配設されている。
サイドメンバ65の底面には車体側の位置決めを行うための位置決め孔67が設けられている。
位置決め装置4は、位置決め孔67に嵌入する位置決めピン25と、該位置決めピン25を進退可能に支持するシリンダ8と、該シリンダ8の底部に設けられたガイド手段9と、
位置決めピン25をシリンダ8の第2軸線CL2方向に進出付勢する付勢手段15とで構成されている。
付勢手段15は、ガイド手段9の受部91と、ピン26の中間部に設けられシリンダ8の第2軸線CL2の方向に圧縮エアーを受ける鍔部29と、受部91と鍔部29との間に連結され圧縮エアーを供給するエアー供給管17に連結したコネクタ18とで構成されている。
【0034】
位置決めピン25は、ピン26の先端部に円錐状の傾斜面を有し、サイドメンバ65側位置決め孔67に該傾斜面をガイドとして嵌入する先端ガイド部27と、ピン26の先端ガイド部27と反対側の端部である基端部に同様の円錐状の傾斜面を有し、該円錐状の先端頂点をピン71の第1軸線CL1と一致させた基端ガイド部28と、エアー圧を受ける鍔部29とを備えている。
付勢手段15は、先端ガイド部27が位置決め孔67に挿入され際に、位置決め孔67の内周縁と先端ガイド部27の円錐状の傾斜面との摩擦(ガイドによる摩擦)に抗して位置決め孔67に嵌入させるものである。
【0035】
シリンダ8は、該シリンダ8の頂部に設けられたピン貫通孔81を介して位置決めピン25を該シリンダ8の第2軸線CL2に沿って、進退可能に支持している。
尚、ピン貫通孔81とピン26との嵌合隙間は、ピン26の第1軸線CL1が第2軸線CL2と略一致する位置で、該第2軸線CL2に沿って進退する程度の隙間に形成されている。
ガイド手段9は、前記基端ガイド部28と、受部91とを備えている。
ガイド凹部92の円錐状の頂部先端はシリンダ8の第2軸線CL2上に位置させてある。
【0036】
図5に沿って、第2実施形態の位置決め装置を用いた位置決め方法の手順について説明する。
ステップS11で、まずパレット2のエンジン固定装置21にエンジン1を規定とおり正規位置に搭載する。
ステップS12で、パレット2を被取付部材である車体5の位置に設置する。
ステップS13で、鍔部29と受部91との間に圧縮エアーを供給して、位置決めピン25を上方進出させる。
ステップS14で、パレット2を上方へ変位させる。
ステップS15で、先端ガイド部27を該先端ガイド部27の傾斜面によりサイドメンバ65側の位置決め孔67の内周縁に倣って嵌入させるものである。このとき、位置決めピン25は圧縮エアーの押圧力によってシリンダ8内に退避しないように押圧する。
【0037】
ステップS16で、パレット2をさらに上方へ変位させることにより、サイドメンバ65の補強部材66に先端ガイド部27を当接して、位置決めピン25の位置決め孔55との嵌入代を規制するものである。
【0038】
ステップS17で、パレット2をさらに上方へ変位させることにより、位置決めピン25を付勢手段10の圧縮エアーに抗してシリンダ8内に相対的に退避させる(パレット2は上方へ変位を続けている)ことになる。
ステップS18で、鍔部29と受部91との間の圧縮エアー圧が高くなっているので、当該部の圧縮エアーを排出する。
ステップS19で、位置決めピン25とシリンダ8との相対変異がなくなったときに、パレット2の上昇を停止させる。
【0039】
ステップS19において、基端ガイド部28が、受部91のガイド凹部92に保持固定されると位置決めピン25とシリンダ8との相対変異がなくなる。
このとき、位置決めピン25の基端ガイド部28の頂部先端は第2軸線CL2に略一致する。
一方、ピン26とピン貫通孔81部は既述のとおり、ピン貫通孔81とピン26との嵌合隙間は、ピン26の第1軸線CL1が第2軸線CL2と近い位置で、該第2軸線CL2に沿って進退する程度の隙間に形成されている。
【0040】
従って、図3(B)に示すように、第1軸線CL1、第2軸線CL2及び位置決め孔55の中心線CL3は、位置決めピン25の第1軸線CL1方向の押圧力(パレット2の上昇変位の反力)が基端ガイド部28を介して受部91に作用することにより、基端ガイド部73とガイド凹部92とが密接するため、位置決めピン7のピン貫通孔81を支点にして第1軸線CL1が修正移動して、第1軸線CL1と第2軸線CL2が略一致し、それに伴い先端ガイド部72が移動して中心線CL3が略一致することで精度の高い位置決めが可能になる。
【0041】
このような構造にすることにより、位置決めピン25の先端ガイド部27がサイドメンバ65の位置決め孔67に嵌入して、第1軸線CL1方向の押圧力でシリンダ8内に退避した時に、該シリンダ8の第2軸線CL2と位置決めピン25の第1軸線CL1が一致するように位置決めピン25の基端ガイド部28をガイドする受部91を設けたので、位置決めピン7の大部分がシリンダ内部に退避した状態の時に、ガイド手段9によって高精度の位置決め修正が行われる。
また、位置決めピン25を圧縮空気にて移動(付勢)させるので、ワークであるエンジン1(図1参照)と被取付部材である車体側のサイドメンバ65との高さ方向の変化に対応でき、装置としての汎用性が大きくなる。
尚、付勢手段として、第1実施形態で使用したコイルスプリングの構造を、第2実施形態に使用すること、又は第2実施形態において使用した圧縮エアーを第1実施形態に使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
ワークに形成した位置決め孔に位置決めピンを嵌入して位置決めを行うワーク位置決め装置及びその方法として利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジン(ワーク)
2 パレット
3、4 位置決め装置
5 車体(被取付部材)
6 エンジンマウント
7 位置決めピン
8 シリンダ
9 ガイド手段
10 付勢手段
26、71 ピン
27、72 先端ガイド部
28、73 基端ガイド部
29、74 鍔部
55,67 位置決め孔
75 コイルスプリング
91 受部
92 ガイド凹部
CL1 第1軸線(軸線)
CL2 第2軸線(軸線)
CL3 中心線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搭載するパレットと、
先端部が前記ワークに取付けられる被取付部材の位置決め孔に嵌入する位置決めピンと、
前記パレットに固定され、前記位置決めピンを内嵌して、前記位置決めピンを進退可能に支持するシリンダと、
該シリンダ内に前記位置決めピンを進出方向へ付勢する付勢手段と、
前記位置決めピンが前記シリンダ内に退避した時に、該シリンダの軸線に前記位置決めピンの軸線が一致するように、前記位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段と、を備えたことを特徴とするワーク位置決め装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記位置決めピンの基端部に形成された円錐形状の突起部と、該突起部と対向した円錐形状の凹部とで構成されていることを特徴とする請求項1項記載のワーク位置決め装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記位置決めピンの軸線方向中間部に配設された鍔部と、前記ガイド手段との間に介装されたコイルスプリングとで構成されていることを特徴とする請求項1記載のワーク位置決め装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記位置決めピンの軸線方向中間部に配設された鍔部と、前記ガイド手段との間に供給する圧縮空気によって行われることを特徴とする請求項1記載のワーク位置決め装置。
【請求項5】
パレットに搭載されたワークを該ワークが取付けられる被取付部材との間で位置決めを行うワーク位置決め方法において、
ワークを搭載したパレットを被取付部材位置に設置する工程と、
該パレットを上方向に変位する工程と、
該パレットに固定されたシリンダ内に進退可能にかつ進出方向に付勢されて配設された位置決めピンの先端部を前記被取付部材に設けられた位置決め孔に嵌入する工程と、
前記位置決めピンの上昇が停止し、該位置決めピンが前記付勢に抗して前記シリンダ内を相対的に退避して、前記位置決めピンの基端部をガイドするガイド手段の受部に保持して、前記シリンダの軸線に前記位置決めピンの軸線を一致させる工程と、
を備えたことを特徴とするワーク位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82036(P2013−82036A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224434(P2011−224434)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】