説明

一斉開放弁

【課題】 圧力損失が低く、軽量化が可能な一斉開放弁を提供する。
【解決手段】 弁箱1の内部が隔壁2により一次側室3と二次側室4に分けられており、隔壁2および弁箱1の一部を切欠いて形成された切欠き部5と接離可能な椀状の主弁体6が設置され、主弁体6の切欠き部5と当接する側と反対側には感知ヘッド13が設置された感知配管14と接続された制御室10が形成されており、一次側室3と制御室10とはオリフィスまたは逆止弁11により連通可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に設置される一斉開放弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一斉開放弁は主に泡消火設備に設置されている。一斉開放弁の内部は玉型弁構造をしており、弁箱内が隔壁によって一次側室と二次側室とに仕切られ、隔壁上に穿設された連通穴をピストン状の主弁体が閉塞している。一次側室は消火液の供給源と接続され、二次側室は泡ヘッドと接続される。主弁体の背面側には制御室と呼ばれる空間が形成されており、制御室は泡ヘッドの近傍に設置された感知ヘッドと接続している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一斉開放弁の一次側室と制御室内には消火液が充填されている。一次側室と制御室は小径の流路によって連通しており、逆止弁によって一次側室から制御室への流体の通過が可能となっている。従って一次側室と制御室の流体圧力は同圧となっており、平時において制御室内の流体圧力および主弁体を連通穴側に付勢するバネの力によって主弁体は連通穴を閉塞して、一次側室から二次側室への流体の通過は遮断されている。
【0004】
火災が発生すると、感知ヘッドが作動して制御室内の流体が作動した感知ヘッドから外部へ流出する。一次側室から制御室へ小径の流路を通過して流体が制御室内へ補充されるが、この補充される流体の量よりも感知ヘッドから外部へ流出する量の方が多いので制御室内の流体圧力が低下して、一次側室の流体圧力が制御室内の流体圧力を上回り、連通穴を塞いでいた主弁体が開放して一次側室から二次側室へ流体が流れ込む。二次側室へ流入した消火液は泡ヘッドによって発泡され、泡となって散布される。泡は火災の表面を覆い、酸素を遮断して消火が行われる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−161870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の一斉開放弁は玉型構造をしているので、消火液の流路が複雑に湾曲しており、湾曲した流路が流れの抵抗となり圧力損失が大きいものであった。さらに、主弁体には一次側室の圧力と制御室内の圧力が作用しているが、前述のとおり一次側室と制御室内の圧力が等しい場合、主弁体の安定した閉止力を得るために作動圧力比を大きく設定していた。作動圧力比とは、主弁体において一次側室内の圧力が作用する面積と制御室内の圧力が作用する面積との比であり、一次側室に対して制御室の数値が大きくなる程、より大きな主弁体の閉止力が得られる。この作動圧力比を大きく設定すると主弁体が大型化してしまい軽量化の障害となっていた。
【0007】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、圧力損失が低く、軽量化が可能な一斉開放弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の一斉開放弁を提供する。
弁箱内が隔壁により一次側室と二次側室に分けられており、隔壁および弁箱の一部を切欠いて形成された切欠き部と接離可能な椀状の主弁体が設置され、主弁体の切欠き部と当接する側と反対側には感知ヘッドが設置された感知配管と接続された制御室が形成されており、一次側室と制御室とはオリフィスまたは逆止弁により連通可能であることを特徴とする一斉開放弁である。
これによれば、一次側室から二次側室へ流体が通過する際には隔壁に形成された切欠きを通過していくので、玉型弁構造の場合と比較して流路がシンプルになり圧力損失が低減される。また、主弁体が切欠き部に着座して一次側室から二次側室への流体の通過を閉塞しているときに、主弁体の底面には切欠き部を境に一次側室内の流体圧力と二次側室内の大気圧が半分ずつ作用しており、一次側室内の圧力が主弁体に作用する面積に対して制御室内の圧力が主弁体に作用する面積のほうが大きくなるので従来の一斉開放弁のように主弁体を大型化する必要がない。
【0009】
前記本発明については、主弁体を樹脂にモールドして形成し、主弁体の開口部に鍔状のダイアフラムを形成して構成可能である。
これによれば、ダイアフラムによって制御室の気密性を確保することができ、さらに切欠き部と主弁体との間のシール構造は、主弁体をモールドした樹脂によりシール性を確保できる。
【0010】
前記本発明については、主弁体の側面に設置された環状のシール部材と、切欠き部にシール部材を設置して構成可能である。
これによれば、制御室と一次側室および二次側室との気密性は主弁体の側面に設置された環状のシール部材により確保することができ、切欠き部に設置したシール部材によって一次側室および二次側室間の気密性が確保できる。
【0011】
前記本発明については、切欠き部が断面円弧状に形成されており、主弁体が切欠き部に接離可能に構成されている。
これによれば、切欠き部を断面円弧状に形成したことで主弁体が開放した際に一次側室から二次側室へ流れる消火液の流れの抵抗を低減することができる。

【発明の効果】
【0012】
上記に説明したように本発明によれば、圧力損失が低く、軽量化が可能な一斉開放弁を実現することができる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の一斉開放弁の断面図
【図2】図1の蓋を外した状態の平面図
【図3】図1の作動時の断面図
【図4】第2実施形態の一斉開放弁の断面図
【図5】図4の作動時の断面図
【図6】切欠き部の変形例1を示す断面図
【図7】切欠き部の変形例2を示す平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1実施形態(図1〜図3)
第1実施形態の一斉開放弁100の弁箱1は中空状をしており弁箱の内壁から内方へ拡張して形成された隔壁2によって一次側室3と二次側室4に分けられている。一次側室3は一次側配管3Aと接続され、一次側配管3Aは泡原液タンクTや水源W、ポンプP等の消火液の供給元と接続されている。二次側室4は泡ヘッドFが設置された二次側配管4Aと接続されている。
【0015】
隔壁2には切欠きが形成され、該切欠きは隔壁2および弁箱1に及んで形成される。隔壁2上には断面円弧状の切欠き部5が設けられ、弁箱1の切欠き5の付近には外部へ通じる開口1Aが形成されている。この開口1Aから主弁体6を弁箱1内に着脱することが可能である。図2に示すように切欠き部5の形状は弁箱1による円環部5Aと隔壁2による線状部5Bとから成る。切欠き部5は断面が円弧状であるが、円環部5Aと線状部5Bの表面は立体的には曲面形状をしており、弁箱1の外面から隔壁2に向かって曲面形状に削り取ることで形成可能である。
【0016】
切欠き部5は線状部5Bを境として一次側室3と連通する半円状の開口5Cと、二次側室4と連通する半円状の開口5Dが形成されている。本実施形態では開口5C、5Dの面積は略等しい。切欠き部5の近傍には、椀状をしており底部が切欠き部5と接離可能な主弁体6が設置される。
【0017】
主弁体6は、椀状をした金属製の芯材を樹脂によりモールドして成型している。また主弁体6の開口端には鍔状のダイアフラム7が樹脂により形成されている。樹脂の材料としては天然ゴムやシリコンゴムを用いる。主弁体6の底面が切欠き5に着座する際、円環部5Aと線状部5Bに当接して開口5C、5Dを閉塞するとともに、ダイアフラム7がシール部材として作用して後述する制御室10内の流体が一次側室3や二次側室4へ流出することを阻止する。
【0018】
ダイアフラム7の外縁部は弁箱1と蓋8に挟持されており、蓋8は弁箱1にボルト9によって固定設置され開口1Aを閉塞する。主弁体6とダイアフラム7、蓋8によって形成される内部空間が制御室10である。制御室10は主弁体6に設置された逆止弁11によって一次側室3から制御室10への流体の通過が可能となっている。常時において、一次側室3と制御室10内の流体圧力は同圧となっている。
【0019】
蓋8には接続口12が形成されており、感知ヘッド13が設置された感知配管14と接続している。感知配管14内も制御室10内の流体が充填されている。感知ヘッド13は火災の熱により作動して感知配管14および制御室10内の流体を外部に排出するものであり、一般的にはスプリンクラーヘッドが感知ヘッド13として用いられている。
【0020】
蓋8の中心には牝ネジ15が螺刻されており、牝ネジ15にスピンドル16が螺入されている。スピンドル16は、主弁体6の開放量を調節可能である。主弁体6が閉止状態のときにスピンドル16の下端を主弁体6に接触させた状態にセットすると、制御室10内の流体が外部に排出されても主弁体6は閉止状態を維持する。通常、スピンドル16の下端は図1に示すように主弁体6から離れた位置にセットされる。
【0021】
次に第1実施形態の一斉開放弁の作動について説明する。
【0022】
図1に示すように一斉開放弁100は、常時において閉弁状態にあり、主弁体6の底面が切欠き部5に着座した状態にある。主弁体6は樹脂により覆われているので、該樹脂がシール部材として作用して一次側室3と二次側室4との気密性が確保されている。消火制御室10内には逆止弁11によって一次側室4の流体が流入しており一次側室4と制御室10内の圧力は略等しい。
【0023】
火災が発生すると、感知配管14に設置されている感知ヘッド13が作動して感知配管14内の流体が流出する。すると感知配管14と接続している制御室10内の流体も流出して制御室10内の圧力が低下する。主弁体6に設置された逆止弁11により一次室3から制御室10へ消火液が供給されるが、作動した感知ヘッド13から外部に流出する液量のほうが逆止弁11から制御室10へ供給される液量を上回るので制御室10内の圧力はさらに低下して、制御室10内から主弁体6に作用する力が弱まり、主弁体6は切欠き部5から離れて蓋8側に移動して主弁体6が開放する(図3)。
【0024】
主弁体6の開放により、一次側室3の消火液は二次側室4に流入する(消火液の流れを図中において破線で示す)。二次側室4と接続された二次側配管4Aに設置された泡ヘッドFより消火液が散布される。泡ヘッドFから消火液が散布される際に、消火液は発泡して泡となって散布され火災の表面を覆う。泡により酸素の供給が遮断され火災が消火される。
【0025】
さらに上記の一斉開放弁100を長期間使用すると、樹脂が劣化してきて交換が必要となるが、シール部はダイアフラム7と主弁体6の底面部であるので、ダイアフラム7を含む主弁体6を新しいものと交換することで容易に交換を行うことができる。
【0026】
第2実施形態(図4〜図5)
続いて第2実施形態の一斉開放弁200について説明する。第2実施形態の一斉開放弁200において第1実施形態の一斉開放弁100と構成が同じ部分については同符号を付して説明を省略する。
【0027】
第1実施形態では主弁体6が樹脂によりモールドされていたが、第2実施形態において主弁体19は金属製であり、切欠き部5の表面にシール部材20を設置したものである。また、主弁体19の側面の気密性を保持する環状のシール部材21を弁箱1の内壁に設置した。
【0028】
これにより、長期間の使用によりシール部材の交換が必要になった場合に、シール部材20、21のみを交換するだけで主弁体19は交換せずに使用可能となり、第1実施形態と比較して交換部材の費用が安価で済む。
【0029】
変形例1(図6)
上記に説明した第1、第2実施形態の変形例として、図6(a)に示すように円環部5Aと線状部5Bによる切欠き部5の形状を平面形状とすると、切欠き部5の加工が容易となるとともに、シール部材30の形状も平面化されて形成および貼付作業が行いやすい。一方、第1実施形態で示したように切欠き部5の形状を断面円弧状とすると、一次側室3から二次側室4へ流れる流体の抵抗を低減することができる。より具体的には図6(b)に示すように、切欠き部5の形状を、隔壁2に形成された線状部5Bの深さをより深く形成することで、図中に破線で示す消火液の流れのカーブが緩やかとなるので主弁体6の開放時に隔壁2が流れに及ぼす影響を少なくできる。
【0030】
変形例2(図7)
切欠き部5の変形例として、線状部5Bの形状を図7に示すようにクロス形状にすることも可能である。

【符号の説明】
【0031】
1 弁箱
2 隔壁
3 一次側室
4 二次側室
5 切欠き部
5A 円環部
5B 線状部
6 主弁体
7 ダイアフラム
8 蓋
10 制御室
11 逆止弁
20、21、30 シール部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内が隔壁により一次側室と二次側室に分けられており、隔壁および弁箱の一部を切欠いて形成された切欠き部と接離可能な椀状の主弁体が設置され、主弁体の切欠き部と当接する側と反対側には感知ヘッドが設置された感知配管と接続された制御室が形成されており、一次側室と制御室とはオリフィスまたは逆止弁により連通可能であることを特徴とする一斉開放弁。

【請求項2】
主弁体を樹脂にモールドして形成し、主弁体の開口部に鍔状のダイアフラムを形成した請求項1記載の一斉開放弁。

【請求項3】
主弁体の側面に設置された環状のシール部材と、切欠き部にシール部材を設置した請求項1記載の一斉開放弁。

【請求項4】
切欠き部が断面円弧状に形成されており、主弁体が切欠き部に接離可能とした請求項1〜請求項3の何れか1項記載の一斉開放弁。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96423(P2013−96423A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236560(P2011−236560)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】