説明

三方電磁弁

【課題】差圧が小さい環境下でもヒートポンプ装置の冷媒流路を確実に切り換えることができ、信頼性の高い三方電磁弁を提供する。
【解決手段】熱交換器33に連通する流入口2aと、膨張機構36に連通する第1流出口2bと、圧縮機32の吸入口に連通する第2流出口2cと、流入口と第1流出口との間に位置する第1弁座3と、流入口と第2流出口との間に位置する第2弁座4と、2つの弁座を挟んで相対向する第1及び第2弁体6、7と、第1弁体と第2弁体との間に介装された作動棒9とを備え、第1弁体が第1弁座に着座した状態で作動棒が第2弁体を第2弁座から離間させ、第2弁体が第2弁座に着座した状態で作動棒が第1弁体を第1弁座から離間させ、第1弁体の第1弁座への着座を、第1弁体を第1弁座へ弾性力によって付勢する付勢手段12により行い、第2弁体の第2弁座への着座を、電磁コイル14aへの通電に伴う第2弁体の移動により行う三方電磁弁1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ装置を備えた空調装置において冷媒の流路を切り換えるために用いられる三方電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷暖房システム等のヒートポンプ装置では、圧縮機の吐出側と室内側及び室外側熱交換器との間と、圧縮機の吸入側と室内側及び室外側熱交換器との間に各々電磁弁を配置して冷媒の流路を切り換えていた。
【0003】
しかし、上記ヒートポンプ装置では、2つの電磁弁を用いるため、部品点数が多くなり、装置コストの上昇に繋がるとともに、消費電力も大きくなるため、運転コストが上昇するという問題があった。
【0004】
特許文献1に記載の冷媒流路の切換弁は、ホットガスサイクル回路を備えた空調装置において、1つの弁本体に、圧縮機とコンデンサとの間に設けられ、冷媒回路を遮断するパイロット電磁弁機構と、圧縮機とエバポレータとの間に設けられ、パイロット電磁弁機構が閉弁するとともに圧縮機とコンデンサの冷媒圧力が所定の差圧に達した時に作動させる差圧弁機構とを一体的に設け、1つの切換弁で冷媒の流路を切り換えることで、上記問題の解決を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3413385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の冷媒流路の切換弁は、差圧弁機構を用いるため、寒冷地等のような差圧が小さい環境下では機能しない虞があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の切換弁等における問題点に鑑みてなされたものであって、差圧が小さい環境下でも確実に機能し、信頼性の高い三方電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ヒートポンプ装置の熱交換器に連通する流入口と、該ヒートポンプ装置の膨張機構に連通する第1流出口と、該ヒートポンプ装置の圧縮機の吸入口に連通する第2流出口とを備える弁本体と、該弁本体内で、前記流入口と前記第1流出口との間に位置する第1弁座と、前記流入口と前記第2流出口との間に位置する第2弁座と、前記弁本体内で前記2つの弁座を挟んで相対向する位置に配置された第1及び第2弁体と、該第1弁体と該第2弁体との間に介装された作動部材とを備え、前記第1弁体が前記第1弁座に着座した状態で前記作動部材が前記第2弁体を前記第2弁座から離間させ、前記第2弁体が前記第2弁座に着座した状態で前記作動部材が前記第1弁体を前記第1弁座から離間させる三方電磁弁であって、前記第1弁体の前記第1弁座への着座を、該第1弁体を該第1弁座へ弾性力によって付勢する付勢手段により行い、前記第2弁体の前記第2弁座への着座を、電磁コイルへの通電に伴う該第2弁体の移動により行うことを特徴とする三方電磁弁である。
【0009】
そして、本発明によれば、冷媒流路の切換を、差圧機構を用いずに、付勢手段による弾性力又は電磁コイルへの通電によって行うため、寒冷地等のような差圧が小さくなる環境下でも確実に機能し、信頼性の高い三方電磁弁を提供することができる。
【0010】
上記三方電磁弁において、前記電磁コイルへの通電の際に、前記第2弁体は、前記流入口側の流体圧によって前記第2弁座側に付勢されるように構成することができ、熱交換器から圧縮機に流れる低圧冷媒の流路をパイロット弁とすることで、直動弁に比較して弁口径を大きくすることができ、これにより圧損が低下し、システム効率が向上する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、差圧が小さい環境下でも確実に機能して信頼性が向上するとともに、システム効率の向上を図ることも可能な三方電磁弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる三方電磁弁の一実施の形態を示す断面図であって、(a)は無通電時、(b)は電磁コイルへ通電した時を示す。
【図2】本発明にかかる三方電磁弁を用いたヒートポンプ装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について図1を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる三方電磁弁の一実施の形態を示し、この三方電磁弁1は、1つの流入口2aと、第1流出口2b及び第2流出口2cと、弁室2d、2eとを備える弁本体2と、弁本体2内に位置する第1弁座3、第2弁座4と、これらの弁座3、4に接離して流入口2aと流出口2b、2cを連通させる第1弁体6及び第2弁体7と、両弁体6、7間に介装され、各々の端部で両弁体6、7に当接する複数の作動部材としての作動棒9(9A、9B)と、弁本体2の下部開口を塞ぐ蓋11と、蓋11と第1弁体6との間に介装され、第1弁体6を第1弁座3側に付勢するコイルばね12と、下端部で第2弁体7に接離するとともに、貫通孔15aを有する弁ホルダ15と、弁ホルダ15に一体化されたプランジャ13を昇降させるための電磁コイル組立体14等を備える。
【0015】
弁本体2は、弁室2dに第2弁体7を、弁室2eに第1弁体6を収容し、上部開口は吸引子16によって閉じられ、下部開口は蓋11によって塞がれている。吸引子16と弁本体2との間にはOリング17が、蓋11と弁本体2との間にはOリング18が各々装着され、三方電磁弁1の気密性を確保している。
【0016】
第1弁体6は、コイルばね12によって上方に付勢され、図1(a)の無通電時にコイルばね12の弾性力によって第1弁座3に着座する。第1弁体6の上面には、作動棒9の下端部が当接する。
【0017】
第2弁体7は、上下方向に貫通する2つの貫通孔7a、7bを備え、第2弁体7と吸引子16の間には、ピストンリング20が装着される。
【0018】
作動棒9(9A、9B)は、弁室2d内において弁本体2を貫通する挿通孔(不図示)によって上下方向に移動可能に設けられ、上述のように、両弁体6、7に挟持される。尚、図示の例では、作動棒9が2本存在するが、作動棒9の本数は特に限定されるものではない。
【0019】
弁ホルダ15は、プランジャ13と一体に形成され、下端部に水平方向に延設された貫通孔15aを有する。
【0020】
プランジャ13は、円筒状のパイプ21内に昇降可能に収容され、プランジャ13と吸引子16との間に介装されたコイルばね19によって上方へ付勢される。プランジャ13は、電磁コイル組立体14の電磁コイル14aに通電した際に、吸引子16に吸引されて下降する。
【0021】
次に、上記構成を有する三方電磁弁1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0022】
電磁コイル14aへ通電しない場合には、図1(a)に示すように、第1弁体6がコイルばね12によって上方に付勢され、第1弁座3に着座するとともに、第1弁体6及び作動棒9を介して第2弁体7が上方へ移動し、弁座4から離間する。これにより、流入口2aから弁室2dを介して第2流出口2cへ流体が流れる。
【0023】
次に、電磁コイル14aに通電すると、プランジャ13が吸引子16に吸引されて下降し、これに伴い弁ホルダ15も下降する。弁ホルダ15の下降直後に、弁ホルダ15の下端部15bが貫通孔7aの上端部に当接して上部開口を塞ぐとともに、弁ホルダ15の貫通孔15aが弁室2dに連通することで、流入口2a側の流体圧が第2弁体7に対して該第2弁体7を下降させる方向に加わり、プランジャ13の下降と相まって第2弁体7を円滑に下降させ、第2弁体7が最終的に弁座4に着座する。
【0024】
プランジャ13、弁ホルダ15及び第2弁体7の移動に伴い、複数の作動棒9も下降し、これによって第1弁体6も下降し、第1弁座3から離間する。これにより、流入口2aから弁室2eを介して第1流出口2bへ流体が流れる。
【0025】
次に、上記構成を有する三方電磁弁1を用いた冷暖房システム(ヒートポンプ装置)31について、図2を中心に参照しながら説明する。
【0026】
この冷暖房システム31は、冷媒として例えばHFC−134aやHFO−1234yfを用い、圧縮機32と、室外側熱交換器33と、第1室内側熱交換器34と、第2室内側熱交換器35と、第1膨張機構36と、第2膨張機構37と、室外側熱交換器33から第1膨張機構36又は圧縮機32への冷媒流路を切り換える三方電磁弁1と、第2室内側熱交換器35から室外側熱交換器33への冷媒流路に配置された電磁弁39とで構成される。ここで、三方電磁弁1は、図1に示した流入口2aが室外側熱交換器33に連通し、第1流出口2bが第1膨張機構36に連通し、第2流出口2cが圧縮機32の吸入口に連通するように接続される。
【0027】
次に、上記構成を有する冷暖房システム31の動作について説明する。
【0028】
まず、暖房時の動作について説明する。三方電磁弁1の電磁コイル14aに通電せずに図1(a)の状態とし、室外側熱交換器33から流入口2a、第2流出口2cを介して圧縮機32への冷媒流路を開状態とし、第1流出口2bから第1膨張機構36への冷媒流路を閉状態とし、電磁弁39を閉じる。これにより、圧縮機32より吐出された冷媒は、第2室内側熱交換器35、第2膨張機構37を経て室外側熱交換器33に導入された後、圧縮機32に戻る。この場合、室外側熱交換器33は蒸発器として機能し、第2室内側熱交換器35は凝縮器として機能し、ダクト50内を矢印F方向に流れる風が第2室内側熱交換器35で温められて温風通路51から車室内に吹き出す暖房運転となる。尚、53はダンパーであり、破線は暖房時の位置、実線は冷房時の位置を示している。
【0029】
次に、冷房時の動作について説明する。三方電磁弁1の電磁コイル14aに通電して図1(b)の状態とし、室外側熱交換器33から流入口2a、第1流出口2bを介して第1膨張機構36への冷媒流路を開状態とし、第2流出口2cから圧縮機32への冷媒流路を閉状態とし、電磁弁39を開く。これにより、圧縮機32より吐出された冷媒は、第2室内側熱交換器35、電磁弁39を経て室外側熱交換器33に導入された後、第1膨張機構36、第1室内側熱交換器34を経て圧縮機32に戻る。この場合、室外側熱交換器33は凝縮器として機能し、第1室内側熱交換器34は蒸発器として機能し、ダクト50内を矢印F方向に流れる風が第1室内側熱交換器34で冷却されて冷風通路52から車室内に吹き出す冷房運転となる。
【0030】
尚、上記実施の形態においては、弁ホルダ15を有するパイロット型の三方電磁弁1を例示したが、パイロット機構は必須の構成要素ではなく、吸引子16の吸引力のみで第2弁体7を第2弁座4に着座させる直動機構とすることも可能である。また、冷暖房システム31を流れる冷媒の種類は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 三方電磁弁
2 弁本体
2a 流入口
2b 第1流出口
2c 第2流出口
2d 弁室
3 第1弁座
4 第2弁座
6 第1弁体
7 第2弁体
7a、7b 貫通孔
9(9A、9B) 作動棒
11 蓋
12 コイルばね
13 プランジャ
14 電磁コイル組立体
14a 電磁コイル
15 弁ホルダ
15a 貫通孔
15b 下端部
16 吸引子
17、18 Oリング
19 コイルばね
20 ピストンリング
21 パイプ
31 冷暖房システム
32 圧縮機
33 室外側熱交換器
34 第1室内側熱交換器
35 第2室内側熱交換器
36 第1膨張機構
37 第2膨張機構
39 電磁弁
50 ダクト
51、52 温風通路
53 ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ装置の熱交換器に連通する流入口と、該ヒートポンプ装置の膨張機構に連通する第1流出口と、該ヒートポンプ装置の圧縮機の吸入口に連通する第2流出口とを備える弁本体と、
該弁本体内で、前記流入口と前記第1流出口との間に位置する第1弁座と、前記流入口と前記第2流出口との間に位置する第2弁座と、
前記弁本体内で前記2つの弁座を挟んで相対向する位置に配置された第1及び第2弁体と、
該第1弁体と該第2弁体との間に介装された作動部材とを備え、前記第1弁体が前記第1弁座に着座した状態で前記作動部材が前記第2弁体を前記第2弁座から離間させ、前記第2弁体が前記第2弁座に着座した状態で前記作動部材が前記第1弁体を前記第1弁座から離間させる三方電磁弁であって、
前記第1弁体の前記第1弁座への着座を、該第1弁体を該第1弁座へ弾性力によって付勢する付勢手段により行い、
前記第2弁体の前記第2弁座への着座を、電磁コイルへの通電に伴う該第2弁体の移動により行うことを特徴とする三方電磁弁。
【請求項2】
前記電磁コイルへの通電の際に、前記第2弁体は、前記流入口側の流体圧によって前記第2弁座側に付勢されることを特徴とする請求項1に記載の三方電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−2282(P2012−2282A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137855(P2010−137855)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】