説明

中和ヒト抗IGFR抗体

【課題】IGFR1によって媒介される疾患(例えば、悪性疾患)を処置または予防する
ために有用な、完全ヒト抗ヒトIGFR1モノクローナル抗体を提供すること。
【解決手段】本発明は、CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3を含む軽鎖アミノ酸
配列と、CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3を含む重鎖アミノ酸配列とからなる
群から選択されるメンバーを含むことを特徴とするIGFR1に特異的に結合する結合組
成物を提供する。本発明は、ヒト・インスリン様増殖因子受容体−I(IGFR1)に対
する完全ヒト中和モノクローナル抗体を包含する。該抗体は、被験体中の癌を処置または
予防するために有用である。本発明の抗体を使用および生産する方法も包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願60/383,459号(2002年5月24日出願)、米国仮
出願60/393,214号(2002年7月2日出願)、および米国仮出願60/43
6,254号(2002年12月23日出願)の優先権を主張するもので、上記出願のそ
れぞれの全体を本明細書では援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、完全ヒトモノクローナル抗インスリン様増殖因子受容体−I(IGFR1)
抗体と、該抗体の使用方法および該抗体の生産方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ソマトメジンとしても知られるインスリン様増殖因子は、インスリン様増殖因子−I(
IGF−I)およびインスリン様増殖因子−II(IGF−II)を含む(非特許文献1
、および非特許文献2)。これらの増殖因子は、インスリン様増殖因子受容体−1(IG
FR1)と命名される共通の受容体に結合する(非特許文献3)ことによって、腫瘍細胞
を含む種々の細胞型にマイトジェン活性を作用させる(非特許文献4)。IGFR1とI
GFとの相互作用によって、チロシン残基上の該受容体の自己リン酸化を誘引してこの受
容体が活性化される(非特許文献5)。活性化されると、今度は、IGFR1が細胞内標
的をリン酸化して、細胞シグナル伝達経路を活性化させる。この受容体活性化は、腫瘍細
胞の増殖および生存の刺激にとって不可欠である。したがって、IGFR1活性の阻害は
、ヒト癌および他の増殖性疾患の増殖を処置または予防する有用な潜在的方法を表す。
【0004】
様々な系列の証拠は、IGF−I、IGF−II、およびそれらの受容体IGFR1が
悪性の表現型の重要な媒介物質であることを示している。IFG−Iの血漿レベルが前立
腺癌の危険性を最も強力に予測する判断材料であることが判明(非特許文献6)しており
、同様の疫学研究は、乳癌、結腸癌、および肺癌の危険性と血漿IGF−Iレベルを強く
関連付けている。
【0005】
インスリン様増殖因子受容体−Iの過剰発現がいくつかの癌細胞株および腫瘍組織で証
明されている。IGFR1は、全ての乳癌細胞株の40%で過剰発現し(非特許文献7)
、肺癌細胞株の15%で過剰発現する。乳癌腫瘍組織では、IGFR1は、6〜14倍過
剰発現し、IGFR1は、正常組織と比べて2〜4倍高いキナーゼ活性を示す(非特許文
献8、および非特許文献9)。90%の結腸直腸癌組織生検は、増加したIGFR1レベ
ルを示し、この際、IGFR1発現の程度は、疾患の重症度に相関している。子宮頸癌細
胞の初代培養および子宮頸癌細胞株の分析によって、正常子宮頸部細胞と比べて、それぞ
れ3倍および5倍のIGFR1過剰発現が明らかになった(非特許文献10)。滑膜肉腫
細胞でのIGFR1の発現も侵襲性の強い表現型(すなわち、転移および高増殖率;非特
許文献11)と相関していた。徐々に進展する疾患である先端巨大症は、成長ホルモンお
よびIGF−Iの分泌過多が原因である(非特許文献12)。IGFR1機能の拮抗作用
がこの疾患を処置する際有用である。当該技術分野で公知の抗体が複数あり、IGFR1
の活性を示す。しかし、治療上の有用性は比較的低い。例えば、α−IR3(非特許文献
13)、1H7(非特許文献14、および非特許文献15)、およびMAB391(R&
D Systems;Minneapolis,MN)は、マウスモノクローナル抗体で
あり、IGFR1と相互作用し、その活性を示す。これらは、マウス抗体であるので、ヒ
トでのその治療上の有用性は限られている。免疫応答性ヒト被験体に一服のマウス抗体を
投与すると、該被験体は、マウス免疫グロブリン配列に対する抗体を産生する。これらの
ヒト抗マウス抗体(HAMA)は、治療用抗体を中和し、急性毒性(すなわち、HAMA
応答)を誘導する可能性がある。
HAMA応答を回避するための一方法は、いずれの外来(例えば、マウス)アミノ酸配
列も持たない完全ヒト抗体の使用を介する。完全ヒト抗体の使用は、治療用抗体のヒト宿
主免疫拒絶反応を低減および予防するためには有効な方法であるが、完全ヒト抗体の拒絶
反応が生じうる。ヒト抗体の人体拒絶反応は、ヒト抗ヒト抗体応答(HAHA応答)と呼
ばれる。HAHA応答は、完全ヒト抗体中の極めて少ない低発生アミノ酸配列の存在等の
因子により媒介されうる。この理由のため、治療用抗体も、非免疫原性ヒト抗体フレーム
ワーク配列の内包または弱免疫原性ヒト抗体フレームワーク配列のみの内包によって最適
化されうる。好ましくは、該配列は、多くの場合、他のヒト抗体内で生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Klapperら、Endocrinol.(1983)112:p2215
【非特許文献2】Rinderknechtら、Febs.Lett.(1978)89:p283
【非特許文献3】Sepp−Lorenzino、Breast Cancer Research and Treatment(1998)47:p235
【非特許文献4】Macaulay、Br.J.Cancer(1992)65:p311
【非特許文献5】Butlerら、Comparative Biochemistry and Physiology(1998)121:p19
【非特許文献6】Chanら、Science(1998)279:p563
【非特許文献7】Pandiniら、Cancer Res.(1999)5:p1935
【非特許文献8】Websterら、Cancer Res.(1996)56:p2781
【非特許文献9】Pekonenら、Cancer Res.(1998)48:p1343
【非特許文献10】Stellerら、Cancer Res.(1996)56:p1762
【非特許文献11】Xieら、Cancer Res.(1999)59:p3588
【非特許文献12】Ben−Schlomoら、Endocrin.Metab.Clin.North.Am.(2001)30:p565−583
【非特許文献13】Kullら、J.Biol.Chem.(1983)258:p6561
【非特許文献14】Liら、Biochem.Biophys.Res.Comm.(1993)196.p92−98
【非特許文献15】Xiongら、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.;Santa Cruz biotechnology,Inc.;Santa Cruz,CA(1992)89:p5356−5360
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)a)配列番号8によって定義されるCDR−L1、配列番号9によって定義さ
れるCDR−L2、および配列番号10によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミ
ノ酸配列と、
b)配列番号31によって定義されるCDR−L1、配列番号32によって定義されるC
DR−L2、および配列番号33によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ酸配
列と、
c)配列番号14または配列番号17によって定義されるCDR−H1、配列番号15に
よって定義されるCDR−H2、および配列番号16によって定義されるCDR−H3を
含む重鎖アミノ酸配列と、
d)配列番号37または配列番号70によって定義されるCDR−H1、配列番号38に
よって定義されるCDR−H2、および配列番号39によって定義されるCDR−H3を
含む重鎖アミノ酸配列
からなる群から選択されるメンバーを含むことを特徴とするIGFR1に特異的に結合す
る結合組成物。
(項目2)(a)配列番号2のアミノ酸20〜128番目と、
(b)配列番号25のアミノ酸21〜130番目と、
(c)配列番号72のアミノ酸20〜128番目と、
(d)配列番号74のアミノ酸20〜128番目と、
(e)配列番号4のアミノ酸20〜137番目と、
(f)配列番号27のアミノ酸20〜140番目と、
(g)配列番号45のアミノ酸20〜137番目と、
(h)配列番号112のアミノ酸20〜137番目と、
(i)配列番号76のアミノ酸20〜128番目と、
(j)配列番号78のアミノ酸20〜128番目
からなる群から選択される可変領域を含むことを特徴とする、項目1に記載のIGFR1
に特異的に結合する結合組成物。
(項目3)(a)配列番号2のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列
番号4のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(b)配列番号25のアミノ酸21〜130番目を含む軽鎖可変領域および配列番号27
のアミノ酸20〜140番目を含む重鎖可変領域と、
(c)配列番号72のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号45
のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(d)配列番号74のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号45
のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(e)配列番号76のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号45
のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(f)配列番号78のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号45
のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(g)配列番号72のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号11
2のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(h)配列番号74のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号11
2のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(i)配列番号76のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号11
2のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域と、
(j)配列番号78のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号11
2のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域からなる群から選択されるメンバーを
含むことを特徴とするIGFR1に特異的に結合する結合組成物。
(項目4)項目1に記載の組成物および薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする
医薬組成物。
(項目5)(a)配列番号2のアミノ酸20〜128番目と、
(b)配列番号25のアミノ酸21〜130番目と、
(c)配列番号72のアミノ酸20〜128番目と、
(d)配列番号74のアミノ酸20〜128番目と、
(e)配列番号4のアミノ酸20〜137番目と、
(f)配列番号27のアミノ酸20〜140番目と、
(g)配列番号45のアミノ酸20〜137番目と、
(h)配列番号112のアミノ酸20〜137番目と、
(i)配列番号76のアミノ酸20〜128番目と、
(j)配列番号78のアミノ酸20〜128番目
からなる群から選択される、ポリペプチドをコードする単離核酸。
(項目6)(a)配列番号1のヌクレオチド58〜384番目と、
(b)配列番号24のヌクレオチド61〜390番目と、
(c)配列番号71のヌクレオチド58〜384番目と、
(d)配列番号73のヌクレオチド58〜384番目と、
(e)配列番号3のヌクレオチド58〜411番目と、
(f)配列番号26のヌクレオチド58〜420番目と、
(g)配列番号44のヌクレオチド58〜411番目と、
(h)配列番号111のヌクレオチド58〜411番目と、
(i)配列番号75のヌクレオチド58〜384番目と、
(j)配列番号77のヌクレオチド58〜384番目
からなる群から選択される、項目5に記載の核酸。
(項目7)項目5に記載の核酸を含むことを特徴とする組み換え型ベクター。
(項目8)項目7に記載のベクターを含むことを特徴とする宿主細胞。
(項目9)ポリペプチドを生産するための方法であって、
前記ポリペプチドが生産される条件下で、項目8に記載の宿主細胞を培養することを包含
することを特徴とする方法。
(項目10)病状がインスリン様増殖因子受容体−Iの発現または活性の増加によって媒
介される被験体の病状を処置または予防するための方法であって、項目1に記載の結合組
成物を前記被験体に投与することを包含することを特徴とする方法。
(項目11)前記病状が先端巨大症、膀胱癌、ウイルムス腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、良性前
立腺肥大症、乳癌、前立腺癌、骨癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、転移性カ
ルチノイドに関連する下痢、血管作動性腸管ペプチド分泌腫瘍、巨人症、乾癬、アテロー
ム性動脈硬化症、血管平滑筋再狭窄、および不適当な微小血管の増殖からなる群から選択
されることを特徴とする項目10に記載の方法。
(項目12)前記結合組成物が非経口経路によって前記被験体に投与されることを特徴と
する項目10に記載の方法。
(項目13)付加的な抗癌療法剤または抗癌療法手順に関連させて前記結合組成物が前記
被験体に投与されることを特徴とする項目10に記載の方法。
(項目14)病状がインスリン様増殖因子受容体−Iの発現または活性の増加によって媒
介される被験体の病状を処置または予防するための方法であって、
(a)配列番号8によって定義されるCDR−L1、配列番号9によって定義されるCD
R−L2、および配列番号10によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ酸配列
と、
(b)配列番号31によって定義されるCDR−L1、配列番号32によって定義される
CDR−L2、および配列番号33によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ酸
配列と、
(c)配列番号14または配列番号17によって定義されるCDR−H1、配列番号15
によって定義されるCDR−H2、および配列番号16によって定義されるCDR−H3
を含む重鎖アミノ酸配列と、
(d)配列番号37または配列番号70によって定義されるCDR−H1、配列番号38
によって定義されるCDR−H2、および配列番号39によって定義されるCDR−H3
を含む重鎖アミノ酸配列
からなる群から選択されるメンバーを含むIGFR1に特異的に結合する結合組成物をそ
の被験体に投与することを包含することを特徴する方法。
(項目15)前記病状が先端巨大症、膀胱癌、ウイルムス腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、良性前
立腺肥大症、乳癌、前立腺癌、骨癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、転移性カ
ルチノイドに関連する下痢、血管作動性腸管ペプチド分泌腫瘍、巨人症、乾癬、アテロー
ム性動脈硬化症、血管平滑筋再狭窄、および不適当な微小血管の増殖からなる群から選択
されることを特徴とする項目14に記載の方法。
(項目16)IGFR1に特異的に結合する完全ヒト・モノクローナル抗体を生産するた
めの方法であって、
(i)トランスジェニック非ヒト動物のB細胞によって前記抗体が産生されるように、ヒ
ト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するそのトランスジェニッ
ク非ヒト動物をIGFR1抗原ポリペプチドで免疫化するステップと、
(ii)その動物のそのB細胞を単離するステップと、
(iii)そのB細胞を骨髄腫細胞と融合して、その抗体を分泌する不死ハイブリドーマ
細胞を形成するステップと、
(iv)そのハイブリドーマ細胞からその抗体を単離するステップ
を包含することを特徴とする方法。
(項目17)前記抗原ポリペプチドが配列番号19のアミノ酸30〜902番目であるこ
とを特徴とする、項目16に記載の方法。
(項目18)(a)約86×10−11以下のKでIGFR1に結合することと、
(b)IGFR1に対して、約6.50×10−5以下の解離速度(Koff)を有する
ことと、
(c)IGFR1に対して、約0.7×10以上の結合速度(Kon)を有することと

(d)IGFR1への結合をIGF1と競合することと、
(e)IGFR1の自己リン酸化を阻害することと、
(f)IGFR1を発現する細胞の足場非依存性増殖を阻害することs
からなる群から選択される特性を含むことを特徴とする、ヒトIGFR1に特異的に結合
する結合組成物。
(項目19)前記特性を全て含むことを特徴とする項目18に記載の結合組成物。
(項目20)(a)配列番号8によって定義されるCDR−L1、配列番号9によって定
義されるCDR−L2、および配列番号10によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖
アミノ酸配列と、
(b)配列番号31によって定義されるCDR−L1、配列番号32によって定義される
CDR−L2、および配列番号33によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ酸
配列と、
(c)配列番号14または配列番号17によって定義されるCDR−H1、配列番号15
によって定義されるCDR−H2、および配列番号16によって定義されるCDR−H3
を含む重鎖アミノ酸配列と、
(d)配列番号37または配列番号70によって定義されるCDR−H1、配列番号38
によって定義されるCDR−H2、および配列番号39によって定義されるCDR−H3
を含む重鎖アミノ酸配列
からなる群から選択されるメンバーを含むことを特徴とする、項目18に記載の結合組成
物。
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、完全ヒト抗ヒトIGFR1モノクローナル抗体を提供し、これは、好ましく
は、ヒト被験体に投与される際に、HAMA応答もHAHA応答を誘導せず、かつIGF
R1によって媒介される疾患(例えば、悪性疾患)を処置または予防するために有用であ
る。
【0009】
本発明は、軽鎖を含む結合組成物(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)を
提供し、この際、その軽鎖は、配列番号8または31によって定義される軽鎖CDR−L
1アミノ酸配列、配列番号9または32によって定義される軽鎖CDR−L2アミノ酸配
列、および配列番号10または33によって定義される軽鎖CDR−L3アミノ酸配列を
含む。重鎖を含む結合組成物(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)も提供し
、この際、その重鎖は、配列番号14または37によって定義される重鎖CDR−H1ア
ミノ酸配列、配列番号15または38によって定義される重鎖CDR−H2アミノ酸配列
、および配列番号16または39によって定義される重鎖CDR−H3アミノ酸配列を含
む。好ましくは、本発明の結合組成物(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)
は、配列番号2のアミノ酸20〜128番目、配列番号25のアミノ酸21〜130番目
、配列番号41もしくは43のアミノ酸20〜128番目、または配列番号41、43、
72、74、76、もしくは78のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域、好ま
しくは成熟軽鎖可変領域、および/あるいは配列番号4のアミノ酸20〜137番目、配
列番号27のアミノ酸20〜140番目、配列番号45のアミノ酸20〜137番目、ま
たは配列番号112のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域、好ましくは成熟重
鎖可変領域を含む。
【0010】
本発明の結合組成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も本発明により提
供される。本発明の結合組成物をポリエチレングリコール等の物質と連結してもよい。
【0011】
本発明は、ヒトIGFR1に特異的に結合する結合組成物(例えば、ヒト抗体またはそ
の抗原結合フラグメント)も包含し、その結合組成物は、
(a)約86×10−11以下のKでIGFR1(例えば、ヒトIGFR1)に結合
することと、
(b)IGFR1(例えば、ヒトIGFR1)に対して、約6.50×10−5以下の
解離速度(Koff)を有することと、
(c)IGFR1(例えば、ヒトIGFR1)に対して、約0.7X10以上の結合
速度(Kon)を有することと、
(d)IGFR1(例えば、ヒトIGFR1)への結合に関してIGF1と競合するこ
とと、
(e)IGFR1(例えば、ヒトIGFR1)の自己リン酸化を(例えば、0.10n
MのIC50で)阻害することと、
(f)IGFR1(例えば、ヒトIGFR1)を発現する細胞の足場非依存性増殖を阻
害することと
からなる群から選択される特性を含む。好ましくは、その結合組成物は、上記特性(a〜
f)の全てを含む。より好ましくは、その結合組成物(例えば、ヒト抗体またはその抗原
結合フラグメント)は、
(a)配列番号8によって定義されるCDR−L1、配列番号9によって定義されるC
DR−L2、および配列番号10によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ酸配
列と、
(b)配列番号31によって定義されるCDR−L1、配列番号32によって定義され
るCDR−L2、および配列番号33によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ
酸配列と、
(c)配列番号14または配列番号17によって定義されるCDR−H1、配列番号1
5によって定義されるCDR−H2、および配列番号16によって定義されるCDR−H
3を含む重鎖アミノ酸配列と、
(d)配列番号37または配列番号70によって定義されるCDR−H1、配列番号3
8によって定義されるCDR−H2、および配列番号39によって定義されるCDR−H
3を含む重鎖アミノ酸配列と
から選択されるメンバーを含む。
【0012】
本発明は、
(a)配列番号2のアミノ酸20〜128番目と、
(b)配列番号25のアミノ酸21〜130番目と、
(c)配列番号72のアミノ酸20〜128番目と、
(d)配列番号74のアミノ酸20〜128番目と、
(a)配列番号4のアミノ酸20〜137番目と、
(b)配列番号27のアミノ酸20〜140番目と、
(c)配列番号45のアミノ酸20〜137番目と、
(d)配列番号112のアミノ酸20〜137番目と、
(e)配列番号76のアミノ酸20〜128番目と、
(f)配列番号78のアミノ酸20〜128番目と
から選択されるペプチドをコードする単離核酸も包含する。
【0013】
好ましくは、その核酸は、
(a)配列番号1のヌクレオチド58〜384番目と、
(b)配列番号24のヌクレオチド61〜390番目と、
(c)配列番号71のヌクレオチド58〜384番目と、
(d)配列番号73のヌクレオチド58〜384番目と、
(e)配列番号3のヌクレオチド58〜411番目と、
(f)配列番号26のヌクレオチド58〜420番目と、
(g)配列番号44のヌクレオチド58〜411番目と、
(h)配列番号111のヌクレオチド58〜411番目と、
(i)配列番号75のヌクレオチド58〜384番目と、
(j)配列番号77のヌクレオチド58〜384番目と
から選択される。本発明は、任意の前述のポリヌクレオチドを含む組み換え型ベクターも
、そのベクターを含む宿主細胞とともに提供する。
【0014】
本発明は、
(a)配列番号2のアミノ酸20〜128番目と、
(b)配列番号25のアミノ酸21〜130番目と、
(c)配列番号72のアミノ酸20〜128番目と、
(d)配列番号74のアミノ酸20〜128番目と、
(e)配列番号4のアミノ酸20〜137番目と、
(f)配列番号27のアミノ酸20〜140番目と、
(g)配列番号45のアミノ酸20〜137番目と、
(h)配列番号112のアミノ酸20〜137番目と、
(i)配列番号76のアミノ酸20〜128番目と、
(j)配列番号78のアミノ酸20〜128番目と
から選択されるポリペプチドも含む。
【0015】
好ましくは、本発明の結合組成物は、
(a)配列番号2のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号4の
アミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(15H12/19D12成熟LC−15
H12/19D12成熟HC)と、
(b)配列番号25のアミノ酸21〜130番目を含む軽鎖可変領域および配列番号2
7のアミノ酸20〜140番目を含む重鎖可変領域(1H3成熟LC−1H3成熟HC)
と、
(c)配列番号72のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号4
5のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCC−成熟HCA)と、
(d)配列番号74のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号4
5のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCD−成熟HCA)と、
(e)配列番号76のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号4
5のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCE−成熟HCA)と、
(f)配列番号78のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号4
5のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCF−成熟HCA)と、
(g)配列番号72のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号1
12のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCC−成熟HCB)と、
(h)配列番号74のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号1
12のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCD−成熟HCB)と、
(i)配列番号76のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号1
12のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCE−成熟HCB)と、
(j)配列番号78のアミノ酸20〜128番目を含む軽鎖可変領域および配列番号1
12のアミノ酸20〜137番目を含む重鎖可変領域(成熟LCF−成熟HCB)と
から選択される少なくとも1つ(例えば、1または2)の軽鎖/重鎖組み合わせを含むヒ
ト抗体である。
【0016】
より好ましくは、そのヒト抗体は、前述の軽鎖/重鎖対の2つを含む四量体である。好
ましくは、そのヒト抗体は、成熟HCAまたは成熟HCBと対になった成熟LCFを含む

【0017】
配列番号2のアミノ酸20〜128番目、配列番号4のアミノ酸20〜137番目、配
列番号25のアミノ酸21〜130番目、配列番号27のアミノ酸20〜140番目、配
列番号41、43、72、74、76または78のアミノ酸20〜128番目、配列番号
45のアミノ酸20〜137番目、あるいは配列番号112のアミノ酸20〜137番目
を含むポリペプチドを生成する方法も提供し、その方法は、そのポリペプチドが産生され
る条件下で、宿主細胞を培養することを含む。好ましくは、そのポリペプチドをその宿主
細胞から単離もする。
【0018】
本発明は、インスリン様増殖因子受容体−Iの発現または活性の増加によってあるいは
1種類以上のそのリガンド(例えば、IGF−IまたはIGF−II)の発現の増加によ
って媒介される被験体の病状を処置または予防する方法も提供し、その方法は、本発明の
結合組成物(例えば、本発明の抗体または抗原結合フラグメント)をその被験体に投与す
ることを含む。
【0019】
好ましくは、その結合組成物は、
(a)配列番号8によって定義されるCDR−L1、配列番号9によって定義されるC
DR−L2、および配列番号10によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ酸配
列と、
(b)配列番号31によって定義されるCDR−L1、配列番号32によって定義され
るCDR−L2、および配列番号33によって定義されるCDR−L3を含む軽鎖アミノ
酸配列と、
(c)配列番号14または配列番号17によって定義されるCDR−H1、配列番号1
5によって定義されるCDR−H2、および配列番号16によって定義されるCDR−H
3を含む重鎖アミノ酸配列と、
(d)配列番号37または配列番号70によって定義されるCDR−H1、配列番号3
8によって定義されるCDR−H2、および配列番号39によって定義されるCDR−H
3を含む重鎖アミノ酸配列と
から選択されるメンバーを含む。
【0020】
本発明は、
(i)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCA(γ4)−
寄託名「15H12/19D12 HCA(γ4)」
ATCC登録番号______と、
(ii)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCB(γ4)−
寄託名「15H12/19D12 HCB(γ4)」
ATCC登録番号______と、
(iii)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCA(γ1)−
寄託名「15H12/19D12 HCA(γ1)」
ATCC登録番号______と、
(iv)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCC(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCC(κ)」
ATCC登録番号______と、
(v)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCD(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCD(κ)」
ATCC登録番号______と、
(vi)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCE(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCE(κ)」 ATCC登録番号_____
_と、
(vii)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCF(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCF(κ)」
ATCC登録番号______と、
任意の前述のプラスミドの核酸挿入断片と
からなる群から選択される任意のプラスミドを包含する。免疫グロブリン定常領域を任意
で含む(すなわち、シグナル配列を除く)プラスミド挿入断片中に含まれる免疫グロブリ
ン可変領域をコードする挿入断片の核酸部分も包含される。任意の前述のプラスミド挿入
断片の核酸にコードされる任意のポリペプチドと、免疫グロブリン定常領域を任意で含む
(すなわち、シグナル配列を除く)任意の挿入断片中に含まれる免疫グロブリン可変領域
をコードするポリペプチドとも包含される。
【0021】
上記に特定したプラスミドは、ブタペスト条約の下、アメリカンタイプカルチャーコレ
クション(ATCC);10801 University Boulevard;Ma
nassas,Virginia 20110−2209)に______日付で寄託し
た。ATCCに寄託したプラスミドへのアクセス制限の全ては、特許の付与により解除さ
れる。
【0022】
好ましくは、結合組成物は、医薬組成物内で、薬学的に許容される担体と組み合わされ
ている。本発明によって考察される病状としては、先端巨大症、卵巣癌、膵臓癌、良性前
立腺肥大症、乳癌、前立腺癌、骨癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、転移性カ
ルチノイドに関連する下痢、血管作動性腸管ペプチド分泌腫瘍、巨人症、乾癬、アテロー
ム性動脈硬化症、血管平滑筋再狭窄、および不適当な微小血管の増殖が挙げられる。
【0023】
例えば非経口経路によって、結合組成物を被験体に投与し得る。抗癌療法剤と関連させ
てまたは抗癌療法手順と関連させて、本発明の結合組成物の投与を含む併用療法も提供す
る。
【0024】
完全ヒト抗IFGR1抗体を生産するための方法も提供し、上記方法は、トランスジェ
ニック非ヒト動物のB細胞によって上記抗体が産生されるように、IGFR1抗原ポリペ
プチド、好ましくは配列番号19のアミノ酸30〜902および/またはその表面上にI
FGR1を発現する細胞(例えば、HEK293)で、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽
鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物を免疫化する工程、上
記動物のB細胞を単離する工程と、上記B細胞を骨髄腫細胞と融合して、IGFR1に特
異的なヒト・モノクローナル抗体を分泌する不死ハイブリドーマ細胞を形成する工程、な
らびに上記IGFR1に特異的なヒト・モノクローナル抗体を単離する工程と含む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
本発明の好ましい実施形態は、インスリン様増殖因子レセプターIを特異的に認識およ
び結合する完全ヒト・モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、好ましくは
配列番号19のアミノ酸30〜902を包含する。好ましくは、上記抗体またはその抗原
結合フラグメントは、1H3、15H12、19D12、15H12/19D12 LC
A、15H12/19D12 LCB、15H12/19D12 LCC、15H12/
19D12 LCD、15H12/19D12 LCE、15H12/19D12 LC
F、15H12/19D12 HCA、または15H12/19D12 HCBである。
【0026】
結合組成物または結合作用物質は、例えばリガンド−レセプター型様式または抗体−抗
原相互作用で、IGFR1と特異的に結合する分子、例えば共有結合または非共有結合の
いずれかで天然の生理学的に関連するタンパク質−タンパク質相互作用で、例えばIGF
R1に特異的に結合するタンパク質を指す。用語「結合組成物」は、好ましくは、本発明
の完全抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、15H12/19D12 LCA
、15H12/19D12 LCB、15H12/19D12 LCC、15H12/1
9D12 LCD、15H12/19D12 LCE、15H12/19D12 LCF
、15H12/19D12 HCA、または15H12/19D12 HCB、あるいは
表1で下記に記載する任意のペプチド)等のポリペプチドである。
【0027】
本発明の抗体および抗原結合フラグメントを用いて、細胞(好ましくは悪性細胞)の増
殖をインビトロ(in vitro)およびインビボ両方で阻害し得る。単一の理論に制
限されることなしに、本発明の抗体および抗原結合フラグメントは、IGFR1とこのレ
セプターに対するリガンド(例えば、インスリン様増殖因子I(IGFI)またはインス
リン様増殖因子II(IGFII))との間の相互作用を阻害することによって、細胞増
殖を阻害し得る。抗体および抗原結合フラグメントは、IGFR1自己リン酸化を阻害す
ること、IGFR1を発現する細胞(例えば、癌細胞)の足場非依存性増殖を阻害するこ
と、およびIGFR1の分解を誘導することによってAKTキナーゼの活性化を阻害する
こともし得る。好ましくは、抗体および抗原結合フラグメントは、IGFR1の活性を中
和し、かつ/またはIGFR1を下方制御する。抗体および抗原結合フラグメントを用い
て、IGFR1によって媒介される疾患を処置または予防し得る。本発明は、本発明の抗
体および抗原結合フラグメントを生成する方法も提供する。
【0028】
用語「抗体分子」とは、抗体全体(例えば、IgG、好ましくはIgG1またはIgG
4)およびそのフラグメント、好ましくは抗原結合フラグメントを指す。抗体フラグメン
トとしては、Fab抗体フラグメント、F(ab)抗体フラグメント、Fv抗体フラグ
メント、単鎖Fv抗体フラグメント、およびdsFv抗体フラグメントが挙げられる。
【0029】
用語「IGFR1」、「インスリン様増殖因子レセプターI」、および「I型インスリ
ン様増殖因子レセプター」は、当上記技術分野で周知である。IGFR1は、任意の生体
由来でもよいが、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、ラット、
ウサギ、ヒツジ、またはイヌ)、最も好ましくはヒト由来である。典型的なヒトIGFR
1前駆体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、Genbank登録番号X0443
4またはNM_000875(配列番号19)を有する。前駆体の切断(例えば、アミノ
酸710と711との間での切断)は、結合して成熟レセプターを形成するαサブユニッ
トおよびβサブユニットを産生する。本発明の好ましい実施形態では、完全長IGFR1
ポリペプチド由来のアミノ酸30〜902を抗IGFR1抗体の生成用の抗原として用い
る。
【0030】
用語「IGFI」、「インスリン様増殖因子I」、および「I型インスリン様増殖因子
」も当上記技術分野で周知である。用語「IGFII」、「インスリン様増殖因子II」
、および「II型インスリン様増殖因子」も当上記技術分野で周知である。IGFIまた
はIGFIIは、任意の生体由来でよいが、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(
例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはイヌ)、最も好ましくはヒト由来であ
る。典型的なヒトIGFIおよびIGFIIの核酸配列およびアミノ酸配列はそれぞれ、
Genbank登録番号XM_052648(配列番号20)およびNM_000612
(配列番号21)を有する。用語「sIGFR1」または「可溶性IGFR1」としては
、IGFR1(例えば、ヒトIGFR1)の任意の可溶性フラグメント、好ましくはレセ
プター膜貫通領域が欠失したフラグメント、より好ましくは配列番号19のアミノ酸30
〜902が挙げられる。
【0031】
本発明の好ましい完全ヒト・モノクローナル抗IGFR1抗体分子の可変領域のアミノ
酸配列(例えば、1H3、15H12、および19D12)を、上記領域をコードする核
酸のヌクレオチド配列とともに表1に概要を示す。本発明は、表1で下記に記載する核酸
またはポリペプチド(その成熟フラグメントを含む)のいずれかのうちの1種類以上(例
えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)を含む任意の核酸またはポリペプチド(
例えば、抗体)を包含する。表1は、抗体のCDR領域に対応するアミノ酸配列およびヌ
クレオチド配列の概要も包含する。15H12および19D12の可変領域に対応するア
ミノ酸配列およびヌクレオチド配列は同一である。この理由のため、各可変領域またはC
DRに対する単一配列のみを示す。
【0032】
(表1 本発明のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の概要)
【0033】
【表1−1】

【0034】
【表1−2】

【0035】
【表1−3】

【0036】
【表1−4】

【0037】
【表1−5】

【0038】
【表1−6】

【0039】
【表1−7】

【0040】
【表1−8】


CDR−L1は、軽鎖で生じる第1の相補性決定領域(CDR)であり、CDR−L2
は、軽鎖で生じる第2のCDRであり、CDR−L3は、軽鎖で生じる第3のCDRであ
る。
【0041】
同様に、CDR−H1は、重鎖で生じる第1のCDRであり、CDR−H2は、重鎖で
生じる第2のCDRであり、CDR−H3は、重鎖で生じる第3のCDRである。
【0042】
FR−L1は、軽鎖の第1のフレームワーク領域であり、FR−L2は、軽鎖の第2の
フレームワーク領域であり、FR−L3は、軽鎖の第3のフレームワーク領域であり、F
R−L4は、軽鎖の第4のフレームワーク領域である。FR−H1は、重鎖の第1のフレ
ームワーク領域であり、FR−H2は、重鎖の第2のフレームワーク領域であり、FR−
H3は、重鎖の第3のフレームワーク領域であり、FR−H4は、重鎖の第4のフレーム
ワーク領域である。これらの用語と、免疫グロブリン鎖上のCDRおよびFRの配置とは
、当その技術分野で周知である。
【0043】
シグナル・ペプチド(すなわち、最初の19または20残基)を持たない本発明の成熟
軽鎖可変領域は、配列番号1、40、42、71、73、75、または77のヌクレオチ
ド58〜384番目にコードされる配列番号2、41、43、72、74、76、または
78のアミノ酸20〜128番目、あるいは配列番号24のヌクレオチド61〜390番
目にコードされる配列番号25のアミノ酸21〜130番目である。
【0044】
シグナル・ペプチド(すなわち、最初の19残基)を持たない成熟重鎖可変領域は、配
列番号3、44、または111のヌクレオチド58〜411番目にコードされる配列番号
4、45、または112のアミノ酸20〜137番目、あるいは配列番号26のヌクレオ
チド58〜420番目にコードされる配列番号27のアミノ酸20〜140番目である。
【0045】
複数の実施形態では、15H12および19D12 CDR−H1は、配列番号18の
ヌクレオチド配列にコードされるGFTFSSFAMH(配列番号17)である。複数の
実施形態では、1H3 CDR−H1は、NYAMH(配列番号70)である。
【0046】
本発明は、本発明の抗体および抗原結合フラグメントのフレームワーク領域を含む抗体
および抗原結合フラグメントも包含する。好ましくは、FR−L1は、配列番号2のアミ
ノ酸20〜42番目または配列番号25のアミノ酸21〜43番目であり、FR−L2は
、配列番号2のアミノ酸54〜68番目または配列番号25のアミノ酸55〜69番目で
あり、FR−L3は、配列番号2のアミノ酸76〜107番目または配列番号25のアミ
ノ酸77〜108番目であり、FR−L4は、配列番号2のアミノ酸117〜128番目
または配列番号25のアミノ酸128〜130番目である。FR−H1は、配列番号4の
アミノ酸20〜44番目または20〜49番目あるいは配列番号27のアミノ酸20〜4
4番目または20〜49番目であり、FR−H2は、配列番号4のアミノ酸55〜68番
目または配列番号27のアミノ酸55〜68番目であり、FR−H3は、配列番号4のア
ミノ酸85〜116番目または配列番号27のアミノ酸85〜116番目であり、FR−
H4は、配列番号4のアミノ酸127〜137番目または配列番号27のアミノ酸130
〜140番目である。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明の抗体分子は、配列番号41または43のアミノ酸20
〜42番目によって定義されるFR−L1、配列番号41または43のアミノ酸54〜6
8番目によって定義されるFR−L2、配列番号41または43のアミノ酸76〜107
番目によって定義されるFR−L3、および配列番号41または43のアミノ酸117〜
128番目によって定義されるFR−L4を含む。さらに、好ましい実施形態には、配列
番号45のアミノ酸20〜44番目によって定義されるFR−H1、配列番号45のアミ
ノ酸55〜68番目によって定義されるFR−H2、配列番号45のアミノ酸85〜11
6番目によって定義されるFR−H3、および配列番号45のアミノ酸127〜137番
目によって定義されるFR−H4含む抗体分子が包含される。
【0048】
(分子生物学)
本発明にしたがって、当その技術分野の技術内にある従来の分子生物学、微生物学、お
よび組み換えDNA技術を用いることが可能である。このような技術は、文献内で十分に
説明されている。例えば、Sambrook,FritschおよびManiatis,
Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2
版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Pre
ss,Cold Spring Harbor,New York(本明細書で、「Sa
mbrookら,1989」);DNA Cloning:A Practical A
pproach,Volumes I and II(D.N.Glover編.198
5);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編.1
984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hame
sおよびS.J.Higgins編(1985));Transcription An
d Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1
984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney編(
1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL
Press(1986));B.Perbal,A Practical Guide
To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubelら
(編),Current Protocols in Molecular Biolo
gy,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照せよ。
【0049】
「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」、「核酸(nucleic
acid)」、または「核酸分子(nucleic acid molecule)」と
は、一本鎖型、二本鎖型、またはその他の型で、リン酸エステル高分子形態のリボヌクレ
オシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン(「RNA分子(RNA
molecule)」))またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオ
キシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン(「DNA分子(DNA
molecule)」))、あるいはホスホロチオエート類およびチオエステル類等のそ
の任意のリン酸エステル類似体を指すことが可能である。
【0050】
「ポリヌクレオチド配列(polynucleotide sequence)」、「
核酸配列(nucleic acid sequence)」、または「ヌクレオチド配
列(nucleotide sequence)」とは、DNAまたはRNA等の核酸中
の一続きのヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド(nucleotide)」とも呼ぶ)で
あり、2つ以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。
【0051】
「コード配列(coding sequence)」あるいはRNA、ポリペプチド、
タンパク質、または酵素等の発現産物を「コードする(encoding)」配列とは、
発現される際に産物を産生するヌクレオチド配列である。
【0052】
用語「遺伝子(gene)」とは、1種類以上のRNA分子、タンパク質または酵素の
全てまたは部分を含むリボヌクレオチドまたはアミノ酸の特定の配列をコードするか、ま
たはその特定の配列に対応し、かつ例えば遺伝子が発現する条件を決定するプロモーター
配列等の調節DNA配列を含んでもよく、または含まなくてもよいDNA配列を意味する
。遺伝子は、DNAからRNAに転写され、そのRNAは、アミノ酸配列に翻訳されても
よく、または翻訳されなくてもよい。
【0053】
本明細書で使用されるように、DNAの「増幅(amplification)」とは
、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、DNA配列の混合物内の特定のDNA配列
の濃度を増加させることを表すことが可能である。PCRの説明に関しては、Saiki
ら,Science(1988)239:487を参照せよ。特定の実施形態では、本発
明は、PCRによって増幅することができる抗IGFR1抗体、抗IGFR1抗体重鎖ま
たは軽鎖、抗IGFR1抗体重鎖または軽鎖可変領域、抗IGFR1抗体重鎖または軽鎖
定常領域、あるいは抗IGFR1抗体CDR(例えば、CDR−L1、CDR−L2、C
DR−L3、CDR−H1、CDR−H2、またはCDR−H3)をコードする核酸を包
含する。
【0054】
本明細書で使用するように、用語「オリゴヌクレオチド(oligonucleoti
de)」とは、一般的に少なくとも10(例えば、10、11、12、13、または14
)、好ましくは少なくとも15(例えば、15、16、17、18、または19)、より
好ましくは少なくとも20ヌクレオチド(例えば、20、21、22、23、24、25
、26、27、28、29、または30)、好ましくは100ヌクレオチド以下(例えば
、40、50、60、70、80、または90)の核酸を指し、遺伝子、mRNA,cD
NA、または他の対象核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子、またはmRN
A分子にハイブリダイズすることが可能である。例えば、32P−ヌクレオチド、H−
ヌクレオチド、14C−ヌクレオチド、35S−ヌクレオチド、またはビオチン等の標識
を共有結合的に連結したヌクレオチドを組み込むことによって、オリゴヌクレオチドを標
識することができる。一実施形態では、標識オリゴヌクレオチドをプローブとして用いて
、核酸の存在を検出することができる。別の実施形態では、オリゴヌクレオチド(オリゴ
ヌクレオチドの1つまたは両方を標識することが可能)をPCRプライマーとして用いて
、遺伝子の完全長またはフラグメントをクローニングすること、あるいは核酸の存在を検
出することのいずれかをすることができる。一般に、オリゴヌクレオチドを、好ましくは
核酸合成装置で合成的に調製する。
【0055】
任意の核酸(例えば、IGFR1遺伝子をコードする核酸あるいは抗IGFR1抗体ま
たはそのフラグメントもしくは部分をコードする核酸)の配列を、当その技術分野で周知
の任意の方法によってシーケンシングすることが可能である(例えば、化学的シーケンシ
ングまたは酵素的シーケンシング)。DNAの「化学的シーケンシング(chemica
l sequencing)」とは、MaxamおよびGilbert(1977)(P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560)の方法等の方法を示し得
、この際、個々の塩基特異的反応を用いてDNAを無作為に切断する。DNAの「酵素的
シーケンシング(enzymatic sequencing)」とは、Sanger(
Sangerら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5
463)の方法等の方法を示すことが可能である。
【0056】
本明細書中の核酸は、天然の調節(発現制御)配列が隣接(flank)することが可
能であり、またはプロモーター、リボソーム内部進入部位(IRES)および他のリボソ
ーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリ
アデニル化配列、イントロン、5’および3’非コーディング領域等を含む異種配列と連
結することが可能である。
【0057】
「プロモーター(promoter)」または「プロモーター配列(promoter
sequence)」とは、細胞内でRNAポリメラーゼを結合(例えば、直接に、あ
るいは他のプロモーター結合タンパク質または物質を介して)して、コード配列の転写を
開始することができるDNA調節領域である。プロモーター配列は、一般的に、その3’
末端で転写開始部位に結合され、上流(5’方向)に伸張し、任意のレベルで転写を開始
するために必要な最少数の塩基またはエレメントを含む。転写開始部位(例えばヌクレア
ーゼS1を用いたマッピングによって都合よく定義される)と、RNAポリメラーゼの結
合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)とをプロモーター配列内で見出す
ことが可能である。エンハンサーおよびリプレッサー配列を含む他の発現制御配列と、ま
たは本発明の核酸(例えば、配列番号1、3、5〜7、11〜13、18、22〜24、
26、28〜30、または34〜36)とそのプロモーターを作用自在に連結することが
可能である。遺伝子発現を制御するために用いることが可能なプロモーターとしては、限
定はされないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385
,839号および第5,168,062号)と、SV40初期プロモーター領域(Ben
oistら(1981)Nature 290:304−310)と、ラウス肉腫ウイル
スの3’長鎖末端反復配列(long terminal repeat)内に含有され
るプロモーター(Yamamotoら(1980)Cell 22:787−797)と
、ヘルペス・チミジン・キナーゼ・プロモーター(Wagnerら(1981)Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441−1445)と、メタロチオネ
イン遺伝子の調節配列(Brinsterら(1982)Nature 296:39−
42)、β−ラクタマーゼ・プロモーター等の原核生物発現ベクター(Villa−Ko
maroffら(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3
727−3731)、またはtacプロモーター(DeBoerら(1983)Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25)(”Useful pro
teins from recombinant bacteria”Scientif
ic American(1980)242:74−94も参照せよ)と、Gal4プロ
モーター、ADC(アルコール・デヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリ
セロール・キナーゼ)プロモーター、またはアルカリ性ホスファターゼ・プロモーター等
の酵母または他の真菌由来のプロモーター・エレメントとが挙げられる。
【0058】
コード配列は、配列がRNA、好ましくはmRNA中にコード配列のRNAポリメラー
ゼ媒介転写を誘導し、その後そのRNAがトランスRNAスプライシングされ(イントロ
ンを含有する場合)、コード配列にコードされるタンパク質中に任意で翻訳されることが
可能である際、細胞内の転写および翻訳制御配列「の制御下にある(under the
control of)」、「と機能的に連結する(functionally as
sociated with)」、または「と作用自在に連結する(operably
associated with)」ものである。
【0059】
用語「発現する(express)」および「発現(expression)」とは、
遺伝子、RNA、またはDNA配列内の情報を顕在化することを可能にするか、または引
き起こすことを意味し、例えば、対応する遺伝子の転写および翻訳に関与する細胞機能を
活性化することによってタンパク質を産生することを意味する。DNA配列は、細胞内で
または細胞によって発現し、RNA(例えば、mRNA)またはタンパク質(例えば、抗
体1H3、15H12、または19D12、あるいはそのフラグメント)等の「発現産物
(expression product)」を形成する。発現産物自体も、細胞によっ
て「発現される(expressed)」と言うことが可能である。
【0060】
用語「ベクター(vector)」、「クローニング・ベクター(cloning v
ector)」、および「発現ベクター(expression vector)」とは
、宿主を形質転換するようにDNAまたはRNA配列が宿主細胞に導入され得、導入され
た配列の発現および/または複製を任意で促進し得る媒体(例えば、プラスミド)を意味
する。
【0061】
用語「トランスフェクション(transfection)」または「形質転換(tr
ansformation)」とは、細胞中への核酸の導入を意味する。これらの用語は
、細胞中への抗IGFR1抗体またはそのフラグメントをコードする核酸の導入を指すこ
とが可能である。導入された遺伝子または配列を「クローン(clone)」と呼ぶこと
が可能である。導入されたDNAまたはRNAを受け取る宿主細胞は、「形質転換され(
transformed)」、「形質転換体(transformant)」または「ク
ローン(clone)」となる。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、任意の供
給源に由来することができ、その供給源としては、宿主細胞と同じ属または種の細胞ある
いは異なる属または種の細胞が挙げられる。
【0062】
用語「宿主細胞(host cell)」とは、細胞による物質の産生、例えば細胞に
よる遺伝子、DNAまたはRNA配列、タンパク質、あるいは酵素の発現または複製のた
めに、任意の方法で選択、修飾、トランスフェクション、形質転換、増殖、あるいは使用
または操作される任意の生体の任意の細胞を意味する。
【0063】
用語「発現系(expression system)」とは、適当な条件下で、ベク
ターによって運搬され宿主細胞に導入されるタンパク質または核酸を発現することができ
る宿主細胞および適合するベクターを意味する。通常の発現系としては、大腸菌(E.c
oli)宿主細胞およびプラスミド・ベクターと、昆虫宿主細胞およびバキュロウイウル
ス・ベクターと、哺乳動物宿主細胞およびベクターとが挙げられる。特定の実施形態では
、IGFR1または本発明の抗体および抗原結合フラグメントをヒト胎児腎臓細胞(HE
K293)中で発現させることが可能である。他の適当な細胞としては、CHO(チャイ
ニーズ・ハムスター卵巣)細胞、HeLa細胞、およびNIH 3T3細胞、およびNS
O細胞(非Ig産生マウス骨髄腫細胞株)が挙げられる。米国特許第4,952,496
号、第5,693,489号、および第5,869,320号、ならびにDavanlo
o,P.ら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,203
5−2039;Studier,F.W.ら(1986)J.Mol.Biol.189
:113−130;Rosenberg,A.H.ら(1987)Gene 56:12
5−135;およびDunn,J.J.ら(1988)Gene 68:259(本明細
書で参考として援用)とに開示されるように、本発明の抗体または抗原結合フラグメント
、sIGFR1またはIGFR1をコードする核酸を大腸菌(E.coli)/T7発現
系で高レベルで発現させることが可能である。
【0064】
本発明は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントに対応するアミノ酸またはヌクレ
オチド配列に対する任意の表面的なまたはわずかな修飾を考察する。具体的には、本発明
は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸の配列保存的変異体を考
察する。ポリヌクレオチド配列の「配列保存的変異体(sequence−conser
vative variant)」とは、所定のコドン内の1個以上のヌクレオチドの変
化が、その位置でコードされるアミノ酸の改変を生じないものである。本発明の抗体の機
能保存的変異体も本発明により考察される。「機能保存的変異体(function−c
onservative variant)」とは、ポリペプチドの全体的なコンフォメ
ーションおよび機能を改変することなしにタンパク質または酵素内の1個以上のアミノ酸
残基を変化させたものであり、その変化には、決して限定はされないが、類似の特性を有
するアミノ酸でのアミノ酸の置換が含まれる。類似の特性を有するアミノ酸は、当その技
術分野で周知である。例えば、交換可能であり得る極性/親水性アミノ酸としては、アス
パラギン、グルタミン、セリン、システイン、トレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチ
ジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸が挙げられる。交換可能であり得る非極性/
疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロ
リン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。
交換可能であり得る酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げら
れ、交換可能であり得る塩基性アミノ酸としては、ヒスチジン、リジン、およびアルギニ
ンが挙げられる。
【0065】
本発明は、表1に記載されるような核酸と、それにハイブリダイズする核酸とにコード
される抗IGFR1抗体およびそのフラグメントを包含する。核酸は、好ましくは低スト
リンジェンシー条件下で、より好ましくは中ストリンジェンシー条件下で、最も好ましく
は高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし、好ましくはIGFR1結合活性を示
す。適当な温度条件および溶液イオン強度条件(Sambrookら(上掲)を参照せよ
)下で、一本鎖型の核酸分子が他の核酸分子にアニールすることができる際に、核酸分子
は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA等の別の核酸分子に「ハイブリダイズ可能(
hybridizable)」である。温度条件およびイオン強度条件によって、ハイブ
リダイゼーションの「ストリンジェンシー(stringency)」が決定される。通
常の低ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件は、55℃、5×SSC、0.
1%SDS、0.25%乳汁、およびホルムアミドなしまたは30%ホルムアミド、5×
SSC、0.5%SDSでありうる。通常、中ストリンジェンシー・ハイブリダイゼーシ
ョン条件は、5×または6×SSCを用いて40%ホルムアミド内でハイブリダイゼーシ
ョンを実行する以外は、低ストリンジェンシー条件と同様である。高ストリンジェンシー
・ハイブリダイゼーション条件は、任意でより高い温度(例えば、57℃、59℃、60
℃、62℃、63℃、65℃、または68℃)で、50%ホルムアミド、5×または6×
SSC内でハイブリダイゼーション条件を実行する以外は、低ストリンジェンシー条件と
同様である。一般に、SSCは、0.15M NaClおよび0.015Mクエン酸Na
である。ハイブリダイゼーションには、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに
応じて、塩基間のミスマッチが可能であるが、2個の核酸が相補配列を含有することが必
要となる。核酸をハイブリダイズするための適当なストリンジェンシーは、当その技術分
野で周知の変数である核酸の長さおよび相補性の度合いに依存する。2個のヌクレオチド
配列間の類似性または相同性の度合いが大きくなるほど、核酸がハイブリダイズすること
が可能なストリンジェンシーが高くなる。100ヌクレオチド長を超える混成体に対して
、融解温度を計算するための方程式が導き出されている(Sambrookら(上掲)、
9.50〜9.51を参照せよ)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドを用いた
ハイブリダイゼーションについて、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオ
チドの長さによって、その特異性が決定される(Sambrookら(上掲)、11.7
〜11.8を参照せよ)。
【0066】
各参照配列間の全長にわたって、それぞれの配列間で最大一致(マッチ)を得るように
アルゴリズムのパラメータを選択して、BLASTアルゴリズムによって比較を実行する
際に、表1の参照ヌクレオチドおよびアミノ酸配列に少なくとも約70%同一、好ましく
は少なくとも約80%同一、より好ましくは少なくとも約90%同一、最も好ましくは少
なくとも約95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)同一
なヌクレオチド配列を含む核酸およびアミノ酸配列を含むポリペプチドも本発明に包含さ
れる。各参照配列間の全長にわたって、それぞれの配列間で最大一致を得るようにアルゴ
リズムのパラメータを選択して、BLASTアルゴリズムによって比較を実行する際に、
表1の参照アミノ酸配列(例えば、配列番号2(例えば、アミノ酸20〜128番目)、
配列番号4(例えば、アミノ酸20〜137番目)、配列番号8〜10、14〜16、1
7、25(例えば、アミノ酸21〜130番目)、配列番号27(例えば、アミノ酸20
〜140番目)、配列番号31〜33、または配列番号37〜39)に、少なくとも約7
0%類似、好ましくは少なくとも約80%類似、より好ましくは少なくとも約90%類似
、最も好ましくは少なくとも約95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99
%、100%)類似のアミノ酸配列を含むポリペプチドも本発明に包含される。
【0067】
配列同一性は、比較している2個の配列間のヌクレオチドまたはアミノ酸間での厳密な
一致を指す。配列類似性は、非同一な生化学的に関連するアミノ酸間の一致に加えて、比
較している2個のポリペプチドのアミノ酸間の厳密な一致両方を指す。類似の特性を共有
し、かつ交換可能であり得る生化学的に関連するアミノ酸については、上記で論じている

【0068】
BLASTアルゴリズムに関する以下の参考文献を本明細書で参考として援用する:B
LASTアルゴリズム:Altschul,S.F.ら(1990)J.Mol.Bio
l.215:403−410;Gish,W.ら(1993)Nature Genet
.3:266−272;Madden,T.L.ら(1996)Meth.Enzymo
l.266:131−141;Altschul,S.F.ら(1997)Nuclei
c Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.ら(1997)
Genome Res.7:649−656;Wootton,J.C.ら(1993)
Comput.Chem.17:149−163;Hancock,J.M.ら(199
4)Comput.Appl.Biosci.10:67−70;アラインメント・スコ
アリング・システム:Dayhoff,M.O.ら”A model of evolu
tionary change in proteins.”Atlas of Pro
tein Sequence and Structure(1978)第5巻,補遺3
.M.O.Dayhoff(編),pp.345−352,Natl.Biomed.R
es.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.ら”M
atrices for detecting distant relationsh
ips.”Atlas of Protein Sequence and Struc
ture(1978)第5巻,補遺3.”M.O.Dayhoff(編),pp.353
−358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D
C;Altschul,S.F.(1991)J.Mol.Biol.219:555−
565;States,D.J.ら(1991)Methods 3:66−70;He
nikoff,S.ら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8
9:10915−10919;Altschul,S.F.ら(1993)J.Mol.
Evol.36:290−300;アラインメント統計学:Karlin,S.ら(19
90)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268;K
arlin,S.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90
:5873−5877;Dembo,A.ら(1994)Ann.Prob.22:20
22−2039;およびAltschul,S.F.”Evaluating the
statistical significance of multiple dis
tinct local alignments.”Theoretical and
Computational Methods in Genome Research
(S.Suhai編)(1997)pp.1−14,Plenum,New York。
【0069】
(抗体構造)
一般に、基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は、ポ
リペプチド鎖の2個の同一対を含み、各対は、1個の「軽(light)」鎖(約25k
Da)および1個の「重(heavy)」鎖(約50ないし70kDa)を有する。各鎖
のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100ないし110個以上のアミノ酸の可変
領域を含むことが可能である。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担
う定常領域を定義することが可能である。通常、ヒト軽鎖は、κおよびλ軽鎖として分類
される。さらに、ヒト重鎖は、通常、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、それぞ
れIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを定義する
。軽鎖および重鎖内では、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」
領域によって連結され、重鎖も約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。一般的には
、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.編,第2
版、Raven Press,N.Y.(1989))(全ての目的のためにその全体を
本明細書で参考として援用する)を参照せよ。
【0070】
各重鎖/軽鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成することが可能である。したがって
、一般的に、インタクトなIgG抗体は、2個の結合部位を有する。二機能性または二重
特異性の抗体内以外では、2個の結合部位は、一般的に同じものである。
【0071】
通常、鎖全ては、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3個の超可変領域によって
連結される比較的に保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。各対
の2個の鎖由来のCDRは、通常、フレームワーク領域によって整列され、特異的なエピ
トープへの結合を可能にする。一般に、N末端からC末端に向かって、軽鎖および重鎖両
方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4
を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割り当ては、一般に、Sequences of
Proteins of Immunological Interest,Kaba
tら;National Institutes of Health,Bethesd
a,Md.;第5版;NIH Publ.No.91−3242(1991);Kaba
t(1978)Adv.Prot.Chem.32:1−75;Kabatら(1977
)J.Biol.Chem.252:6609−6616;Chothiaら(1987
)J Mol.Biol.196:901−917、またはChothiaら(1989
)Nature 342:878−883の定義に従う。本発明は、KabatおよびC
hothia(上記参考文献参照)によって定義されるような1H3、15H12、およ
び19D12(例えば、15H12/19D12 LCA、15H12/19D12 L
CB、15H12/19D12 HCA、配列番号2、4、25、27、41、43、お
よび45)の軽鎖および重鎖由来のCDRおよびFRを含む本発明の抗体または抗原結合
フラグメントを提供する。
【0072】
(抗体分子)
用語「抗体分子」としては、限定はされないが、抗体およびそのフラグメント、好まし
くは抗原結合フラグメントが挙げられる。その用語には、モノクローナル抗体、ポリクロ
ーナル抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、F(ab)抗体フラグメント
、Fv抗体フラグメント(例えば、VまたはV)、単鎖Fv抗体フラグメント、およ
びdsFv抗体フラグメントが包含される。さらに、本発明の抗体分子は、完全ヒト抗体
またはキメラ抗体でもよい。好ましくは、抗体分子は、モノクローナル完全ヒト抗体であ
る。より好ましくは、抗体分子は、1H3、15H12、または19D12である。好ま
しくは、抗体分子は、1個以上の可変領域およびCDRを含み、そのアミノ酸およびヌク
レオチドの配列は表1に記載されている。
【0073】
本発明は、CDRを含む任意の抗体分子を包含し、そのCDRは、
RASQSIGSSLH(配列番号8)
YASQSLS(配列番号9)
HQSSRLPHT(配列番号10)
SFAMH(配列番号14)
GFTFSSFAMH(配列番号17)
VIDTRGATYYADSVKG(配列番号15)
LGNFYYGMDV(配列番号16)
RASQSVSSFLA(配列番号31)
DASNRAP(配列番号32)
QQRSNWPRWT(配列番号33)
GFTFSNYAMH(配列番号37)
AIGAGGDTYYADSVKG(配列番号38)、および
GRHRNWYYYNKDY(配列番号:39)
NYAMH(配列番号70)から選択される。
【0074】
本発明の範囲には、任意の免疫グロブリン定常領域に結合した本発明の抗体可変領域(
例えば、表1に示される成熟のまたはプロセッシングされていな任意の可変領域)が包含
される。軽鎖可変領域が定常領域に結合する場合、好ましくは、その定常領域は、κ鎖で
ある。重鎖可変領域が定常領域に結合する場合、好ましくは、その定常領域は、γ1、γ
2、γ3、またはγ4定常領域であり、より好ましくはγ1、γ2、またはγ4であり、
さらにより好ましくはγ1またはγ4である。
【0075】
本発明の抗IGFR1抗体分子は、好ましくは、ヒトIGFR1、好ましくはsIGF
R1を認識する。しかし、本発明は、異なる種、好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、
ラット、ウサギ、ヒツジ、またはイヌ)由来のIGFR1を認識する抗体分子を包含する
。本発明はまた、IGFR1または任意のそのフラグメント(例えば、配列番号9のアミ
ノ酸30ないし902番目)、あるいは細胞表面上にIGFR1またはその任意の部分も
しくはフラグメントを発現する任意の細胞(例えば、ヒトIGFR1またはMCF7(例
えば、ATCC細胞株番号HTB−22)で安定に形質転換されるHEK293細胞)と
複合体を形成する抗IGFR1抗体またはそのフラグメントも包含する。抗体または抗体
フラグメントをIGFR1またはIGFR1フラグメントと接触させることによって、そ
のような複合体を生成することが可能である。
【0076】
好ましい実施形態では、マウス免疫系の代わりにヒト免疫系の部分を保有するトランス
ジェニック・マウスを用いて、IGFR1に対する完全ヒト・モノクローナル抗体を生成
する。これらのトランスジェニック・マウス(本明細書で、「HuMAb」マウスともい
う)は、ヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含有し、そのミニ遺伝子座は、内因性
のμ鎖遺伝子座およびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的化突然変異と一緒に、再編成され
ていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードする(Lon
berg,N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859)。
したがって、そのマウスは、マウスIgMまたはκの発現の減少を示し、免疫化に応答し
て、導入されたヒト重鎖および軽鎖の導入遺伝子は、クラス・スイッチングおよび体細胞
突然変異を受け、高親和性ヒトIgGκモノクローナル抗体を生成する(Lonberg
,N.ら(1994)(前出);Lonberg,N.(1994)Handbook
of Experimental Pharmacology 113:49−101;
Lonberg,N.ら(1995)Intern.Rev.Immunol.13:6
5−93、およびHarding,F.ら(1995)Ann.N.Y Acad.Sc
i 764:536−546内で総説される)。HuMabマウスの調製については、当
その分野で公知であり、例えばTaylor,L.ら(1992)Nucleic Ac
ids Research 20:6287−6295;Chen,J.ら(1993)
International Immunology 5:647−656;Tuail
lonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:3720
−3724;Choiら(1993)Nature Genetics 4:117−1
23;Chen,J.ら(1993)EMBO J.12:821−830;Tuail
lonら(1994)J Immunol.152:2912−2920;Lonber
gら(1994)Nature 368(6474):856−859;Lonberg
,N.(1994)Handbook of Experimental Pharma
cology 113:49−101;Taylor,L.ら(1994)Intern
ational Immunology 6:579−591;Lonberg,N.ら
(1995)Intern.Rev.Immunol.Vol.13:65−93;Ha
rding,F.ら(1995)Ann.N.Y Acad.Sci 764:536−
546;Fishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnolo
gy 14:845−851、およびHardingら(1995)Annals NY
Acad.Sci.764:536−546(上記全ての内容全体を本明細書で参考と
して援用)に記載されている。さらに、米国特許第5,545,806号、同第5,56
9,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,789
,650号、同第5,877,397号、同第5,661,016号、同第5,814,
318号、同第5,874,299号、同第5,770,429号、および同第5,54
5,807号、ならびに国際特許出願公報WO 98/24884、WO 94/255
85、WO 93/12227、WO 92/22645、およびWO 92/0391
8(上記全ての開示の全体を本明細書で参考として援用する)を参照せよ。
【0077】
IGFR1に対する完全ヒト・モノクローナル抗体を生成するために、Lonberg
,N.ら(1994)Nature 368(6474):856−859;Fishw
ild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845
−851、およびWO 98/24884に記載されるように、抗原性IGFR1ポリペ
プチド、好ましくは配列番号19のアミノ酸30ないし902番目を用いて、HuMab
マウスを免疫化することができる。好ましくは、そのマウスは、最初の免疫化時には、6
ないし16週齢である。例えば、IGFR1またはsIGFR1の精製調製物を用いて、
HuMabマウスを腹腔内で免疫化することができる。そのマウスをまた、IGFR1遺
伝子で安定に形質転換またはトランスフェクションされるHEK293細胞全体で免疫化
することもできる。「抗原性IGFR1ポリペプチド(antigenic IGFR1
polypeptide)」とは、抗IGFR1免疫応答を好ましくはHuMabマウ
ス内で誘発するIGFR1ポリペプチドまたは任意のそのフラグメント、好ましくは配列
番号19のアミノ酸30ないし902番目を指すことが可能である。
【0078】
一般に、HuMAbトランスジェニック・マウスは、初めにフロイント完全アジュバン
ト内の抗原を用いて腹腔内(IP)で免疫化された後に、フロイントの不完全アジュバン
ト内の抗原を用いた隔週のIP免疫化(通常、全数6回まで)を行う場合、十分に応答す
る。初めにIGFR1を発現する細胞(例えば、安定に形質転換されたHEK293細胞
)で、その後IGFR1の可溶性フラグメント(例えば、配列番号19のアミノ酸30な
いし902番目)でマウスを免疫化することができ、そのマウスは、連続的に、この2個
の抗原で交互に免疫化を受けることができる。眼後出血によって得られる血漿試料を用い
た免疫化プロトコールの全工程にわたって、免疫応答をモニタリングすることができる。
例えばELISAによって、抗IGFR1抗体の存在に対してその血漿をスクリーニング
することができ、十分な力価の免疫グロブリンを有するマウスを融合のために用いること
ができる。屠殺および脾臓除去前3日に、抗原を用いてマウスを静脈内で追加免疫するこ
とができる。各抗原に対する2ないし3回の融合の実行が必要となる可能性があると考え
られる。複数匹のマウスを各抗原に対して免疫化することができる。例えば、HC07お
よびHC012系統の全数12匹のHuMAbマウスを免疫化することができる。
【0079】
モノクローナル完全ヒト抗IGFR1抗体を産生するハイブリドーマ細胞を当その分野
で公知の方法によって生産することが可能である。これらの方法としては、限定はされな
いが、Kohlerら(1975)(Nature 256:495−497)によって
当初開発されたハイブリドーマ技術と、トリオーマ技術(Heringら(1988)B
iomed.Biochim.Acta.47:211−216、およびHagiwar
aら(1993)Hum.Antibod.Hybridomas 4:15)と、ヒト
B細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunology Tod
ay 4:72、およびCoteら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci
.U.S.A 80:2026−2030)と、EBV−ハイブリドーマ技術(Cole
ら、Monoclonal Antibodies and Cancer Thera
py,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96,1985)とが挙げられ
る。好ましくは、標準的プロトコールに基づいて、マウス脾細胞を単離して、PEGを用
いてマウス骨髄腫細胞株と融合する。その後、得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体
の産生に対してスクリーニングすることが可能である。例えば、50%PEGを用いて、
免疫化したマウス由来の脾臓リンパ球の単一細胞懸濁物を1/6数のP3X63−Ag8
.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC,CRL 1580)に融合することが可能
である。細胞を平底マイクロタイター・プレート中に約2×10細胞/mLで播種した
後、20%胎児クローン血清、18%「653」馴化培地、5%オリゲン(origen
)(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mM L−グルタミン、1mMピルビン酸
ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50単
位/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシ
ン、および1×HAT(Sigma、HATは融合後24時間目に添加)を含有する選択
培地中で2週間インキュベートすることが可能である。2週間後に、HATをHTと取り
換えた培地中で細胞を培養することが可能である。その後、ヒト抗IGFR1モノクロー
ナルIgG抗体に対して個々のウェルをELISAによってスクリーニングすることが可
能である。広範なハイブリドーマ増殖が生じたら、通常、10〜14日後に培地を観察す
ることができる。抗体分泌ハイブリドーマを再播種して、再度スクリーニングし、依然と
してヒトIgGに対して陽性である場合は、限界希釈法によって、抗IGFR1モノクロ
ーナル抗体を少なくとも2回サブクローニングすることができる。その後、安定なサブク
ローンをインビトロで培養して、特徴づけのために組織培地中で少量の抗体を生成するこ
とが可能である。
【0080】
本発明の抗IGFR抗体分子はまた、組み換え的に生産することも可能である(例えば
、上記で論じたようなE.coli/T7発現系で)。この実施形態では、本発明の抗体
分子(例えば、VまたはV)をコードする核酸をpETベースのプラスミド中に挿入
し、E.coli/T7系で発現させることが可能である。当その分野で公知の組み換え
型抗体を生産する方法が複数ある。抗体の組み換え的生産のための方法の一例は、米国特
許第4,816,567号(本明細書で参考として援用)に開示されている。形質転換は
、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の公知の方法によってであり得る。
哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入方法は、当その分野で周知であり、デキス
トラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン媒介トランスフェ
クション、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム中でのポリヌクレオチドの被包、
微粒子銃注入(biolistic injection)、および核へのDNAの直接
マイクロインジェクションが挙げられる。さらに、ウイルス・ベクターによって、核酸分
子を哺乳動物細胞に導入することが可能である。細胞を形質転換する方法は、当その分野
で周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、
同第4,740,461号、および同第4,959,455号を参照せよ。
【0081】
発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当その分野で周知であり、Amer
ican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能
な多くの不死化細胞株が挙げられる。これらの細胞株としては、特に、チャイニーズ・ハ
ムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、仔ハムスター腎臓(
BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、
A549細胞、3T3細胞、および多数の他の細胞株が挙げられる。哺乳動物宿主細胞と
しては、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、およびハムスタ
ーの細胞が挙げられる。どの細胞株が高発現レベルを有するかについて決定することによ
って、特に好ましい細胞株を選択する。使用可能な他の細胞株は、Sf9細胞等の昆虫細
胞株、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞、および真菌細胞である。重鎖またはその抗原結
合部分、軽鎖、および/またはその抗原結合部分をコードする組み換え型発現ベクターを
哺乳動物宿主細胞に導入する際は、宿主細胞中での抗体の発現、またはより好ましくは、
宿主細胞を増殖させる培養培地中への抗体の5分泌(5 secretion)を可能に
する十分な期間で宿主細胞を培養することによって、抗体を生産する。
【0082】
標準的なタンパク質精製法を用いて、抗体を培養培地から回収することができる。さら
に、多数の公知の技術を用いて、産生細胞株からの本発明の抗体(またはそれ由来の他の
部分)の発現を高めることができる。例えば、グルタミン・シンテターゼ遺伝子発現系(
GS系)は、特定の条件下で発現を高めるための共通のアプローチである。GS系につい
ては、欧州特許第0 216 846号、第0 256 055号、および第0 323
997号、ならびに欧州特許出願第89303964.4号に関連して完全にまたは部
分的に論じられている。
【0083】
異なる細胞株によってまたはトランスジェニック動物内で発現される抗体は、互いに異
なるグリコシル化を有する可能性がある。しかし、本明細書で提供する核酸分子にコード
されるか、または本明細書で提供するアミノ酸配列を含む抗体の全ては、抗体のグリコシ
ル化に関わらず本発明の部分である。
【0084】
「Koff」とは、抗体/抗原複合体からの抗体の解離に対する解離速度定数を指す。
【0085】
「Kon」とは、抗体が抗原に結合する時の速度を指す。
【0086】
「K」とは、特定の抗体/抗原相互作用の解離定数を指す。K=Koff/Kon

【0087】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用するように、実質的に相同な抗体の
集団から得た抗体、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、より少ない量で存在しうる
可能な自然発生的な突然変異以外は同一であることを指す。モノクローナル抗体は、非常
に特異的であるので、単一の抗原部位に向けられる。モノクローナル抗体は、本質的に他
の免疫グロブリンが混入していないハイブリドーマ培養によって合成すること可能である
点で有利である。修飾語句「モノクローナル」とは、実質的に相同な抗体集団間にあるよ
うな抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするとは解釈されな
い。上述のように、Kohlerら(1975)Nature 256:495によって
初めに記載されたハイブリドーマ法によって、本発明にしたがって用いられるモノクロー
ナル抗体を生成することが可能である。
【0088】
ポリクローナル抗体は、1種類以上の他の非同一抗体間でまたはその非同一抗体の存在
下で産生される抗体である。一般に、非同一抗体を産生する複数の他のBリンパ球の存在
下で、Bリンパ球からポリクローナル抗体が生産される。通常、免疫化した動物からポリ
クローナル抗体が直接得られる。
【0089】
二重特異性または二機能性抗体は、2個の異なる重鎖/軽鎖対および2個の異なる結合
部位を有する人工ハイブリッド抗体である。ハイブリドーマの融合またはFab’フラグ
メントの結合を含む様々な方法によって、二重特異性抗体を生産することができる。例え
ば、Songsivilaiら(1990)Clin.Exp.Immunol.79:
315−321,Kostelnyら(1992)J Immunol.148:154
7−1553を参照せよ。さらに、二重特異性抗体を「ダイアボディ(diabody)
」(Holligerら(1993)PNAS USA 90:6444−6448)と
して、または「Janusin」(Trauneckerら(1991)EMBO J.
10:3655−3659、およびTrauneckerら(1992)Int.J.C
ancer Suppl.7:51−52)として形成することが可能である。
【0090】
用語「完全ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリン・タンパク質配列のみを含む抗体を指
す。完全ヒト抗体は、マウス内、マウス細胞内、またはマウス細胞由来のハイブリドーマ
内で産生される場合は、マウス糖鎖を含有してもよい。同様に、「マウス抗体」とは、マ
ウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。
【0091】
本発明は、別の非ヒト種(例えば、マウス、ウマ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリ)由
来の抗体領域(例えば、定常領域)に融合またはキメラ化された本発明の可変領域を含む
抗体である「キメラ抗体」を包含する。これらの抗体を用いて、非ヒト種内でIGFR1
の発現または活性を調節することが可能である。
【0092】
「単鎖Fv(single−chain Fv)」または「sFv」抗体フラグメント
は、抗体のVおよびVドメインを有し、この際、これらのドメインは、単一のポリペ
プチド鎖に存在する。一般に、sFvポリペプチドは、VおよびVドメイン間のポリ
ペプチド・リンカーをさらに含み、そのポリペプチド・リンカーは、sFvが抗原結合の
ための所望の構造を形成することを可能にする。単鎖抗体の生産について記載される技術
(米国特許第5,476,786号、同第5,132,405号、および同第4,946
,778号)を適合させて、抗IGFR1特異的単鎖抗体を生産することができる。SF
vの総説に関しては、Pluckthun、The Pharmacology of
Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg
and Moore編、Springer−Verlag,N.Y.,pp.269−3
15(1994)を参照せよ。
【0093】
「ジスルフィド安定化Fvフラグメント」および「dsFv」とは、ジスルフィド架橋
によって結合する可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)を含む抗体分子を指す。
【0094】
本発明の範囲内の抗体フラグメントは、例えばペプシンによるIgGの酵素切断によっ
て産生されうるF(ab)フラグメントも含む。例えばジチオトレイトールまたはメル
カプトエチルアミンを用いたF(ab)の還元によって、Fabフラグメントを生産す
ることが可能である。Fabフラグメントは、ジスルフィド架橋によってV−CH1
に付加されるV−C鎖である。F(ab)フラグメントは、次に2つのジスルフィ
ド架橋によって付加される2個のFabフラグメントである。F(ab)分子のFab
部分は、ジスルフィド架橋が位置するF領域の一部分を含む。
【0095】
フラグメントは、VまたはV領域である。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列
によって、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。少なくとも5つの
主要な免疫グロブリンのクラスがある。すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、お
よびIgMであり、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIg
G−1、IgG−2、IgG−3、およびIgG−4と、IgA−1およびIgA−2と
にさらに分けることが可能である。
【0096】
本発明の抗IGFR1抗体分子を化学的部に結合することも可能である。化学的部は、
特に、高分子、放射性核種、または細胞障害性因子でもよい。好ましくは、化学的部は、
被験体の体内で抗体分子の半減期を増加させる高分子である。適当な高分子としては、限
定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、分子量2kDa、5kD
a、10kDa、12kDa、20kDa、30kDa、または40kDaを有するPE
G)、デキストラン、およびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げら
れる。Lee他(1999)(Bioconj.Chem.10:973−981)は、
PEG結合単鎖抗体を開示している。Wen他(2001)(Bioconj.Chem
.12:545−553)は、放射性金属キレート化剤(ジエチレントリアミン五酢酸(
DTPA))に結合するPEGとの結合抗体を開示している。
【0097】
99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、H、131I、11
15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59
Fe、57Se、152Eu、67CU、217Ci、211At、212Pb、47
c、109Pd、234Th、40K、157Gd、55Mn、52Tr、および56
e等の標識と本発明の抗体および抗体フラグメントを結合することもできる。
【0098】
希土類キレート等の蛍光団、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその
誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン
、o−フタルアルデヒド、フルオレサミン、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン、
ルシフェリン、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標
識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン標識
、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン標識、ならびに安定
遊離基を含む蛍光または化学発光標識と本発明の抗体および抗体フラグメントを結合する
こともできる。
【0099】
ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A
鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシ
ン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質および化合物(例
えば、脂肪酸)、ジアンチン(dianthin)タンパク質、アメリカヤマゴボウ(P
hytolacca americana)タンパク質PAPI、PAPII、およびP
AP−S、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン(
curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(saponaria off
icinalis)阻害剤、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(
restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、ならびにエノ
マイシン(enomycin)等の細胞障害性因子と抗体分子を結合することも可能であ
る。
【0100】
本発明の抗体分子を種々の部に結合するための当その技術分野で公知の任意の方法を用
いることが可能であり、その方法としては、Hunterら(1962)Nature
144:945;Davidら(1974)Biochemistry 13:1014
;Painら(1981)J.Immunol.Meth.40:219;およびNyg
ren,J.(1982)Histochem.and Cytochem.30:40
7によって記載されるものが挙げられる。抗体を結合するための方法は、従来からあり、
当その技術分野で非常に公知である。
【0101】
(改変抗体分子)
本発明は、配列番号41、43、72、74、76、または78の軽鎖(15H12/1
9D12 LCA、LCB、LCC、LCD、LCE、またはLCF)、好ましくは配列
番号41、43、72、74、76、78のアミノ酸20〜128番目(成熟15H12
/19D12 LCA、LCB、LCC、LCD、LCE、またはLCF)を含む抗体お
よび抗原結合フラグメント(例えば、完全ヒト抗体、SFv、dsv、Fv、キメラ抗体
)を包含する。本発明は、配列番号45または112の重鎖(15H12/19D12
HCAまたはHCB)、好ましくは配列番号45または112のアミノ酸20〜137番
目(成熟15H12/19D12 HCAまたはHCB)を含む抗体分子も包含する。
【0102】
15H12/19D12 LCA、LCB、LCC、LCD、LCE、およびLCFを
、任意の他の免疫グロブリン重鎖、好ましくは本発明の免疫グロブリン重鎖を用いて二量
体化することが可能である。同様に、15H12/19D12 HCAまたはHCBも、
任意の軽鎖、好ましくは本発明の軽鎖を用いて二量体化することが可能である。例えば、
15H12/19D12 HCAまたはHCBを15H12/19D12 LCC、LC
D、LCE、またはLCFで二量体化することが可能である。
【0103】
15H12/19D12 LCA、15H12/19D12 LCB、15H12/1
9D12 LCC、15H12/19D12 LCD、15H12/19D12 LCE
、15H12/19D12 LCF、15H12/19D12 HCA、または15H1
2/19D12 HCB、あるいはその任意のフラグメントを含む抗体および抗原結合フ
ラグメントは、ヒト被験体内で最少の免疫原生を示すことによって、ヒト被験体に投与さ
れる際、HAHA応答の発生率は低い。
【0104】
好ましい抗体鎖を下記に示す。点線の下線が引かれている型は、シグナル・ペプチドを
コードする。実線の下線が引かれている型は、CDRをコードする。下線のない型は、フ
レームワーク領域をコードする。最も好ましくは、抗体鎖は、シグナル・ペプチドを持た
ない成熟フラグメントである。
修飾19D12/15H12軽鎖−C(配列番号71)
【0105】
【化1A】


(配列番号72)
【0106】
【化1B】


修飾19D12/15H12軽鎖−D(配列番号73)
【0107】
【化1C】


(配列番号74)
【0108】
【化1D】


修飾19D12/15H12軽鎖−E(配列番号75)
【0109】
【化1E】


(配列番号76)
【0110】
【化1F】


修飾19D12/15H12軽鎖−F(配列番号77)
【0111】
【化1G】


(配列番号78)
【0112】
【化1H】



修飾19D12/15H12重鎖−A(配列番号44)
【0113】
【化1I】


(配列番号45)
【0114】
【化1J】


修飾19D12/15H12重鎖−B(配列番号111)
【0115】
【化1K】


(配列番号112)
【0116】
【化1L】


(遺伝子療法)
本発明の抗IGFR1抗体を遺伝子療法手法で被験体に投与することも可能である。遺
伝子療法手法では、本発明の抗体をコードする核酸で被験体の細胞を形質転換する。その
後、その核酸を含む被験体は、抗体分子を内因的に産生する。先行して、Alvarez
他(2000)(Clinical Cancer Research 6:3081−
3087)は、遺伝子療法手法を用いて、一本鎖抗ErbB2抗体を被験体に導入した。
Alvarez他によって記載される方法は、被験体への本発明の抗IGFR1抗体分子
をコードする核酸の導入に容易に適合されうる。
【0117】
本発明の任意のポリペプチドまたは抗体分子をコードする核酸を被験体に導入すること
が可能であるが、好ましい実施形態では、その抗体分子は、完全ヒト単鎖抗体である。
【0118】
当その技術分野で公知の任意の手段によって、核酸を被験体の細胞に導入することが可
能である。好ましい実施形態では、核酸をウイルス・ベクターの部分として導入する。ベ
クターが由来する好ましいウイルスの例としては、レンチウイルス、ヘルペス・ウイルス
、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニア・ウイルス、バキュロウイルス、ア
ルファウイルス、インフルエンザ・ウイルス、および望ましい細胞向性を有する他の組み
換え型ウイルスが挙げられる。
【0119】
様々な企業がウイルス・ベクターを商業的に生産しており、決して限定はされないが、
アビジェン社(Avigen,Inc.,Alameda,CA(AAVベクター))、
セル・ジェネシス(Cell Genesys,Foster City,CA(レトロ
ウイルス・ベクター、アデノウイルス・ベクター、AAVベクター、およびレンチウイル
ス・ベクター))、クローンテック(Clontech(レトロウイルス・ベクターおよ
びバキュロウイルス・ベクター))、ジェノーボ社(Genovo,Inc.,Shar
on Hill,PA(アデノウイルス・ベクターおよびAAVベクター))、ジェネベ
ック(Genvec(アデノウイルス・ベクター))、イントロジーン(IntroGe
ne,Leiden,Netherlands(アデノウイルス・ベクター))、モレキ
ュラー・メディシン(Molecular Medicine(レトロウイルス・ベクタ
ー、アデノウイルス・ベクター、AAVベクター、およびヘルペス・ウイルス・ベクター
))、ノルジェン(Norgen(アデノウイルス・ベクター))、オックスフォード・
バイオメディカル(Oxford BioMedica,Oxford,United
Kingdom(レンチウイルス・ベクター))、およびトランスジーン(Transg
ene,Strasbourg,France(アデノウイルス・ベクター、ワクシニア
・ベクター、レトロウイルス・ベクター、およびレンチウイルス・ベクター))が挙げら
れる。
【0120】
ウイルス・ベクターを構築および使用するための方法は、当その技術分野で公知である
(例えば、Millerら(1992)BioTechniques 7:980−99
0を参照せよ)。好ましくは、ウイルス・ベクターは、複製欠損型であり、すなわち、そ
のウイルス・ベクターは、自律的に複製することができず、そのため標的細胞内で非感染
性である。好ましくは、複製欠損ウイルスは、最小限のウイルスである。すなわち、その
複製欠損ウイルスは、ゲノムをキャプシド被包してウイルス粒子を産生するために必要な
そのゲノムの配列のみを保有する。ウイルス遺伝子を完全にまたはほぼ完全に持たない欠
損ウイルスが好ましい。欠損ウイルス・ベクターを用いることによって、そのベクターが
他の細胞に感染する恐れがなく、特定の局所的領域中の細胞への投与が可能になる。した
がって、特定の組織を特異的に標的することができる。
【0121】
弱毒化されたDNAウイルス配列または欠損DNAウイルス配列を含むベクターの例と
しては、限定はされないが、欠損ヘルペス・ウイルス・ベクター(Kannoら(199
9)Cancer Gen.Ther.6:147−154;Kaplittら(199
7)J.Neurosci.Meth.71:125−132、およびKaplittら
(1994)J.Neuro Onc.19:137−147)が挙げられる。
【0122】
アデノウイルスは、修飾されて本発明の核酸を種々の細胞型に効率的に送達することが
できる真核生物DNAウイルスである。Strafford−Perricaudetら
(1992)(J.Clin.Invest.90:626−630)によって記載され
るベクター等の弱毒化されたアデノウイルス・ベクターが複数の例で望ましい。種々の複
製欠損アデノウイルスおよび最小限のアデノウイルス・ベクターについて記載されている
(PCT公開WO94/26914、WO94/28938、WO94/28152、W
O94/12649、WO95/02697、およびWO96/22378)。本発明の
係る複製欠損組み換え型アデノウイルスを当業者に公知の任意の技術によって調製するこ
とができる(Levreroら(1991)Gene 101:195;EP 1855
73;Graham(1984)EMBO J.3:2917;Grahamら(197
7)J.Gen.Virol.36:59)。
【0123】
アデノ関連ウイルス(AAV)は、このウイルスが感染する細胞のゲノム中に安定かつ
部位特異的な様式で組み込まれうる比較的に小型のDNAウイルスである。アデノ関連ウ
イルスは、細胞増殖、形態、または分化に何ら影響を引き起こすことなしに、広範囲な細
胞に感染することができ、ヒトの病状へは関与しないようである。遺伝子をインビトロお
よびインビボで移送するためのAAVに由来するベクターの使用について記載されている
(Dalyら(2001)Gene Ther.8:1343−1346,1245−1
315;Larsonら(2001)Adv.Exp.Med.Bio.489:45−
57;PCT公開WO91/18088およびWO93/09239;米国特許第4,7
97,368号および第5,139,941号、ならびにEP 488528B1を参照
せよ)。
【0124】
別の実施形態では、例えば米国特許第5,399,346号、第4,650,764号
、第4,980,289号、および第5,124,263号;Mannら(1983)C
ell 33:153;Markowitzら(1988)J.Virol.,62:1
120;EP 453242およびEP178220に記載されるように、遺伝子をレト
ロウイルス・ベクター内に導入することができる。レトロウイルスは、分裂細胞に感染す
る組み込み型ウイルスである。
【0125】
脳、網膜、筋肉、肝臓、および血液を含む複数の組織型で本発明の抗体分子コードする
核酸の直接送達および持続性発現のための物質として、レンチウイルス・ベクターを用い
ることができる。そのベクターは、これらの組織内の分裂および非分裂細胞を効率的に形
質導入することができ、抗体分子の長期的な発現を維持することができる。概要について
は、Zuffereyら(1998)J.Virol.72:9873−80、およびK
afriら(2001)Curr.Opin.Mol.Ther.3:316−326を
参照せよ。レンチウイルス・パッキング細胞株が利用可能であり、当その技術分野で公知
である。その細胞株は、遺伝子療法のための高力価のレンチウイルス・ベクターの生産を
促進する。一例としては、少なくとも3〜4日間106IU/mlより多い力価でウイル
ス粒子を生成することができるテトラサイクリン誘導性VSV−G偽型レンチウイルス・
パッキング細胞株がある。Kafriら(1999)(J.Virol.73:576−
584)を参照せよ。非分裂細胞をインビトロおよびインビボで効率的に形質導入するた
めに、誘導性細胞株によって産生されるベクターを必要に応じて濃縮することができる。
【0126】
シンドビス・ウイルスは、アルファウイルス属のメンバーであり、世界の様々な場所で
、1953年に始まってその発見以来広範囲に研究されている。アルファウイルス、特に
シンドビス・ウイルスにもとづいた遺伝子形質導入は、インビトロで十分に研究されてい
る(Strausら(1994)Microbiol.Rev.,58:491−562
;Bredenbeekら(1993)J.Virol.,67;6439−6446
Iijimaら(1999)Int.J.Cancer 80:110−118、および
Sawaiら(1998)Biochim.Biophyr.Res.Comm.248
:315−323を参照せよ)。アルファウイルス・ベクターの多くの特性によって、そ
のベクターが開発されている他のウイルス由来のベクター系に対する望ましい代替物とな
り、その特性としては、発現コンストラクトの迅速な操作、感染性粒子の高力価ストック
の生産、非分裂細胞の感染、および高度の発現が含まれる(Straussら(1994
)Microbiol.Rev.58:491−562)。遺伝子療法のためのシンドビ
ス・ウイルスの使用について記載されている(Wahlforsら(2000)Gene
.Ther.7:472−480、およびLundstrom(1999)J.Rece
p.Sig.Transduct.Res.19(1−4):673−686)。
【0127】
別の実施形態では、リポフェクションまたは他のトランスフェクション促進物質(ペプ
チド、高分子等)によってベクターを細胞に導入することができる。合成カチオン性脂質
を用いて、マーカーをコードする遺伝子のインビボおよびインビトロトランスフェクショ
ンのためにリポソームを調製することができる(Feignerら(1987)Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417、およびWangら
(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851−785
5)。核酸の移送のための有用な脂質化合物および組成物についてはPCT公開WO 9
5/18863およびWO96/17823、ならびに米国特許第5,459,127号
に記載されている。
【0128】
ベクターを裸DNAプラスミドとしてインビボで導入することも可能である。当その技
術分野で公知の方法、例えば電気穿孔、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE
デキストラン、リン酸カルシウム沈降、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体の
使用によって、遺伝子療法用の裸DNAベクターを所望の宿主細胞中に導入することがで
きる(例えば、Wilsonら(1992)J.Biol.Chem.267:963−
967;Williamsら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 88:2726−2730を参照せよ)。受容体媒介DNA送達手法も用いることが
できる(Wuら(1988)J.Biol.Chem.263:14621−14624
)。米国特許第5,580,859号および第5,589,466号は、哺乳動物内での
トランスフェクション促進物質なしでの外因性DNA配列の送達を開示している。近年、
電子移動と称される比較的に低電圧の高効率性インビボDNA移送技術について記載され
ている(Vilquinら(2001)Gene Ther.8:1097;Payen
ら(2001)Exp.Hematol.29:295−300;Mir(2001)B
ioelectrochemistry 53:1−10;PCT公開WO99/011
57、WO99/01158、およびWO99/01175)。
【0129】
(薬学的組成物)
インビボでの被験体への投与に適した薬学的に受容可能なキャリアとともに、本発明の抗
体または抗原結合フラグメントを薬学的組成物に組み込むことができる。本発明の範囲に
は、任意の経路(例えば、経口、眼、局所的、または肺経路(吸入))によって被験体に
投与されうる薬学的組成物が包含されるが、腫瘍内注射、静脈内注射、皮下注射、または
筋肉内注射等の非経口経路による投与が好ましい。好ましい実施形態では、本発明の薬学
的組成物は、1H3、15H12、19D12、15H12/19D12 LCA、15
H12/19D12 LCB、15H12/19D12 LCC、15H12/19D1
2LCD、15H12/19D12 LCE、15H12/19D12 LCF、15H
12/19D12 HCA、または15H12/19D12 HCB、および薬学的に受
容可能なキャリアを含む。
【0130】
配合に関する一般的情報については、例えばGilmanら(eds.)(1990)
The Pharmacological Bases of Therapeuti
cs,8th Ed.,Pergamon Press;A.Gennaro(ed.)
Remington’s Pharmaceutical Sciences,18t
h Edition(1990),Mack Publishing Co.,East
on,Pennsylvania.;Avisら(eds.)(1993)Pharma
ceutical Dosage Forms:Parenteral Medicat
ions Dekker,New York;Liebermanら(eds.)(19
90)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets
ekker,New York;およびLiebermanら(eds.)(1990)
Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Sy
stems Dekker,New York,Kenneth A.Walters(
ed.)(2002)Dermatological and Transdermal
Formulations(Drugs and the Pharmaceutic
al Sciences),Vol 119,Marcel Dekkerを参照せよ。
【0131】
薬学的に受容可能なキャリアは、従来からあり、当その技術分野で非常に公知である。
例としては、生理学的に適合している水性および非水性キャリア、安定剤、酸化防止剤、
溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤、緩衝剤、血清タンパク質、等張剤、吸収遅延剤等が挙げ
られる。好ましくは、キャリアは、被験体体内への注入に適している。
【0132】
本発明の薬学的組成物で使用可能な適当な水性および非水性キャリアの例としては、水
、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレ
ングリコール等)およびその適当な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、ならびに注
入可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。例えば、レクチン等
の被覆物質を使用することによって、分散剤の場合は必要な粒径を維持することによって
、および界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。
【0133】
乾燥または凍結乾燥の分解作用から、本発明の抗体分子を安定化するために、α、α−
トレハロースニ水和物等の安定剤を含むことが可能である。
【0134】
薬学的に受容可能な酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫
酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性酸化防止剤と、ア
スコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロ
キシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール等の
油可溶性酸化防止剤と、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール
、酒石酸、リン酸等の金属キレート化剤とが挙げられる。
【0135】
殺菌手順と、種々の抗菌剤(例えば、EDTA、EGTA、パラベン、クロロブタノー
ル、フェノール、ソルビン酸等)の内包との両方によって、微生物の存在の予防を確実に
することが可能である。
【0136】
本発明の医薬組成物内に含まれ得る適当な緩衝剤としては、L−ヒスチジン系緩衝剤、
リン酸系緩衝剤(例えば、リン酸緩衝食塩水、pH約7)、ソルベート系緩衝剤、または
グリシン系緩衝剤が挙げられる。
【0137】
本発明の医薬組成物内に含まれ得る血清タンパク質としては、ヒト血清アルブミンを挙
げることが可能である。
【0138】
砂糖、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、
液状ポリエチレングリコール、マンニトール、またはソルビトール)、クエン酸ナトリウ
ム、または塩化ナトリウム(例えば、緩衝食塩水)等の等張剤も本発明の医薬組成物内に
含むことが可能である。
【0139】
モノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチン等の吸収を遅延させる作用物質
を内包することによって、注入可能な医薬形態の持続性吸収を引き起こすことが可能であ
る。
【0140】
グリセロール、液状ポリエチレングリコール、およびその混合物内で、ならびに油内で
、分散剤を調製することも可能である。
【0141】
薬学的に許容される担体には、無菌注入可能溶液または分散剤の即時調製のための無菌
水溶液または分散剤、および無菌粉剤が含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのよう
な媒体および作用物質の使用は、当その技術分野で周知である。
【0142】
必要に応じて、任意で上記に列記した成分の1種類のまたは組み合わせとともに、本発
明の抗体または抗原結合フラグメントを必要量の適当な溶媒内に組み込み、その後無菌微
細濾過することによって、無菌注入可能溶液を調製することができる。一般に、基本的な
分散媒および上記に列記したもののなかから必要な他の成分を含有する無菌媒体の中に抗
体分子を組み込むことによって分散剤を調製する。無菌注入可能溶液の調製のための無菌
粉剤の場合、好ましい調製方法は、予め無菌濾過した溶液から任意の付加的な所望の成分
に加えて活性成分の粉剤を生成する真空乾燥および凍結乾燥(凍結乾燥法(lyophi
lization))である。
【0143】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントを経口投与することも可能である。経口投与
用の医薬組成物は、結合組成物に加えて、テンプン(例えば、ジャガイモ、トウモロコシ
、または小麦のデンプンまたはセルロース)、デンプン誘導体(例えば、微晶質セルロー
スまたはシリカ)、砂糖(例えば、ラクトース)、タルク、ステアレート、炭酸マグネシ
ウム、または燐酸カルシウム等の添加剤を含有することが可能である。本発明の抗体また
は抗原結合フラグメントを含む経口組成物が患者の消化系に十分に許容されることを確実
にするために、粘膜構成物または樹脂を含むことが可能である。胃液に溶けないカプセル
内に抗体または抗原結合フラグメントを配合することによって、許容度を改善することも
望ましくあり得る。粉末形態、ラクトース、タルク、およびステアリン酸マグネシウム内
の本発明の抗体または抗原結合フラグメントを標準的な二構成硬ゼラチン・カプセルに充
填することによって、カプセル形態でのこの発明の例示的な医薬組成物を調製する。免疫
グロブリンの経口投与について記載されている(Fosterら(2001)Cochr
ane Database System rev.3:CD001816)。
【0144】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントを、局所投与用の医薬組成物内に含むことも
可能である。局所投与に適した配合物としては、皮膚を介して処置が必要な部位へと浸透
させるために適した液状または半液状製剤が含まれ、例えば、眼、耳、または鼻への投与
に適したリニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペースト、およびドロップが
ある。
【0145】
本発明に係るドロップは、無菌水性もしくは油性溶液または懸濁液を含むことが可能で
あり、抗体または抗原結合フラグメントを殺菌剤および/または殺真菌剤ならびに/ある
いは任意の他の適当な防腐剤の適当な水溶液に溶解し、かつ好ましくは界面活性剤を含む
ことによって調製され得る。その後、濾過によって得られた溶液を浄化することが可能で
ある。
【0146】
本発明に係るローションとしては、皮膚または眼への適用に適したものが含まれる。眼
用ローションは、殺菌剤を必要に応じて含有する無菌水性溶液を含むことが可能であり、
ドロップの調製方法と同様の方法によって調製され得る。皮膚への適用のためのローショ
ンまたはリニメント剤には、乾燥を促進する作用物質および皮膚を冷却する作用物質も含
むことが可能であり、その作用物質には、例えば、アルコールまたはアセトン、および/
または加湿剤(例えば、グリセロール、あるいはひまし油または落花生油などの油)があ
る。本発明に係るクリーム、軟膏、またはペーストは、外用のための活性成分の半固体状
配合物である。細かく分包された形態または粉末形態の本発明の抗体または抗原結合フラ
グメントを単独で、あるいは水性流体または非水性流体の溶液または懸濁液中で油脂性ま
たは非油脂性の主剤と適当な機器の補助によって混合することによって、それらを作製す
ることが可能である。主剤は、炭化水素(例えば、硬パラフィン、軟パラフィン、液状パ
ラフィン、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸)か、粘漿剤か、天然由来の油(例えば、アー
モンド油、コーン油、ピーナッツ油、ひまし油、オリーブ油)か、羊毛脂またはその誘導
体か、あるいはアルコール(例えば、プロピレングリコール)またはマクロゲルと組み合
わせた脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはオレイン酸)かを含むことが可能である。配
合物は、アニオン性、カチオン性、非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステル
またはそのポリオキシエチレン誘導体)などの任意の適当な界面活性剤を組み込むことが
可能である。天然ゴム、セルロース誘導体、または無機物質(例えば、珪質シリカ)、お
よび他の成分(例えば、ラノリン)等の懸濁剤も含むことが可能である。
【0147】
本発明の抗体および抗原結合フラグメントを吸入によって投与することも可能である。
吸入に適当な医薬組成物は、エアロゾルでありうる。本発明の抗体または抗原結合フラグ
メントの吸入のための例示的な医薬組成物としては、15ないし20mlの容積を有する
エアロゾル容器が含まれ、そのエアロゾル容器は、好ましくは1,2−ジクロロテトラフ
ルオロエタンおよびジフルオロクロロメタンと組み合わせた推進薬(例えば、フレオン)
内に分散させた本発明の抗体または抗原結合フラグメントおよび潤滑剤(例えば、ポリソ
ルベート85またはオレイン酸)を含み得る。好ましくは、その組成物は、経鼻または経
口吸入投与のいずれかに適合させた適当なエアロゾル容器中にある。
【0148】
本発明のさらに別の実施形態では、多剤併用療法によって、医薬組成物を投与すること
ができる。例えば、多剤併用療法は、1種類以上の抗癌療法剤(例えば、アルキル化剤、
代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂抑制剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管形成剤、
抗エストロゲン、抗アンドロゲン、抗体療法、または免疫調節剤)と関連させて本発明の
医薬組成物を含むことができる。
【0149】
「抗癌療法剤(anti−cancer therapeutic agent)」と
は、被験体に投与される際に、被験体体内で癌の発達を処置または予防する物質である。
1種類以上の抗癌療法手順(例えば、放射線療法または外科的腫瘍摘出術)と関連させて
本発明の組成物を投与することが可能である。「抗癌療法手順(anti−cancer
therapeutic procedure)」とは、被験体の癌の発病を処置また
は低減させる被験体でおこなわれる過程である。多剤併用療法を用いる際は、本発明の抗
体または抗原結合フラグメント、あるいはその医薬組成物を同時送達のために単一の組成
物に配合することが可能であり、または2種類以上の組成物(例えば、キット)に別々に
配合することが可能である。さらに、他の療法剤または療法手順を投与する時以外の異な
る時間に、抗体または抗原結合フラグメントを被験体に投与することが可能である。例え
ば、所定の期間にわたって、複数の間隔で非同時的に各投与を与えることが可能である。
【0150】
「アルキル化剤」とは、細胞内の任意の分子、好ましくは核酸(例えば、DNA)を架
橋またはアルキル化することができる任意の物質を指す。アルキル化剤の例としては、メ
クロレタミン、シクロフォスファミド、イホスファミド、フェニルアラニンマスタード、
メルファラン(melphalen)、クロラムブシル(shlorambucol)、
ウラシルマスタード、エストラムスチン、チオテパ、ブスルファン、ロムスチン、カルム
スチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、およびアル
トレタミンが挙げられる。
【0151】
「代謝拮抗剤」とは、特定の活性、通常はDNA合成に干渉することによって、細胞増
殖および/または代謝を遮断する物質を指す。代謝拮抗剤の例としては、メトトレキセー
ト、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、5−フルオロデオキシウリジン、カペシ
タビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニ
ン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシン、およびペントスタチンが挙
げられる。
【0152】
「抗腫瘍抗生物質」とは、DNA合成、RNA合成、および/またはタンパク質合成を
防止または阻害し得る化合物を指す。抗腫瘍抗生物質の例としては、ドキソルビシン、ダ
ウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミ
トラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、およびプロカルバ
ジンが挙げられる。
【0153】
「有糸分裂抑制剤」は、細胞周期および有糸分裂の正常な進行を防止する。一般に、パ
クリタキセルおよびドセタキセルなどの微小血管阻害剤が有糸分裂を阻害することができ
る。ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンなどのビンカアルカロイドも
有糸分裂を阻害することができる。
【0154】
「クロマチン機能阻害剤」とは、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼII等の
クロマチン・モデリング・タンパク質の正常機能を阻害する物質を指す。クロマチン機能
阻害剤の例としては、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、およびテニポシドが挙げ
られる。
【0155】
「抗血管形成剤」とは、血管成長を阻害する任意の薬剤、化合物、物質、または作用物
質を指す。例示的な抗血管形成剤としては、決して限定はされないが、ラゾキシン(ra
zoxin)、マリマスタット、COL−3、ネオバスタット、BMS−275291、
サリドマイド、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インター
フェロン−α、EMD121974、インターロイキン−12、IM862、アンギオス
タチン、およびバイタクシンが挙げられる。
【0156】
「抗エストロゲン」または「抗エストロゲン剤」とは、エストロゲンの作用を低減、拮
抗、または阻害する任意の物質を指す。抗エストロゲン剤の例としては、タモキシフェン
、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、アナストロゾ
ール、レトロゾール、およびエキセメスタンが挙げられる。
【0157】
「抗アンドロゲン」または「抗アンドロゲン剤」とは、アンドロゲンの作用を低減、拮
抗、または阻害する任意の物質を指す。抗アンドロゲンの例には、フルタミド、ニルタミ
ド、ビカルタミド、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリド、およびシメ
チジンがある。
【0158】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントと組み合わせて投与することが可能な抗体療
法としては、トラスズマブ(例えば、ハーセプチン)(例えば、Sliwkowskiら
(1999)Semin.Oncol.26(4 Suppl 12):60−70を参
照せよ)、バイタクシン、およびリツキシマブが挙げられる。
【0159】
「免疫調節剤」は、免疫系を刺激する物質である。免疫調節剤の例としては、デニロイ
キンジフチトックス(denileukin diftitox)、5−フルオロウラシ
ルと組み合わせたレバミソール、インターフェロン、およびインターロイキン−2が挙げ
られる。「放射線療法(radiotherapy)」または「放射線療法(radia
tion therapy)」とは、電離放射線の投与(好ましくは、腫瘍部位への)に
よって癌等の疾患を処置することを指す。投与可能な電離放射線の例としては、X線、ガ
ンマ線(例えば、ラジウム、ウラン、またはコバルト60により放出)、および粒子線放
射(例えば、プロトン、中性子、パイオン、または重イオン)が挙げられる。
【0160】
(投与量)
好ましくは、未処置の被験体と比べて、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは
少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは
少なくとも約80ないし100%の任意の程度までIGFR1媒介疾患または症状(例え
ば、腫瘍増殖)を好適に阻害する「治療上有効な投与量」で本発明の抗体または抗原結合
フラグメントを被験体に投与する。癌を阻害する本発明の抗体または抗原結合フラグメン
トの能力を、ヒト腫瘍での効力を予測する動物モデル系で評価することができる。また、
腫瘍細胞増殖を阻害する本発明の抗体または抗原結合フラグメントの能力を当業者に周知
のアッセイ(下記参照)によって生体外(in vitro)で調べることによって、組
成物のこの特性を評価することができる。当業者は、被験体サイズ、被験体の症状の重症
度、および選択した特定の組成物または投与経路等の因子にもとづいて、そのような量を
決定することができる。
【0161】
投与計画を調整して、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供することが可能で
ある。例えば、単一のボーラスを投与することが可能であり、複数回に分けた分量を期間
にわたって投与することが可能であり、または治療状況の緊急性によって示されることに
比例して分量を減少または増加させることが可能である。投与および投与量の均一性を容
易にするために、投与単位形態の非経口組成物を配合することが特に有利である。
【0162】
当その技術分野の通常の技術を有する医師または獣医師は、必要とされる有効量の医薬
組成物を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、医薬組
成物に用いられる本発明の抗体または抗原結合フラグメントの容量を、所望の治療効果を
達成するために必要なものより低度で開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量
を増加させることが可能である。一般に、本発明の組成物の適当な日用量は、治療効果を
生むために効果的な最少用量である化合物量であり得る。そのような有効投与量は、一般
に、上述の因子に依存する。好ましくは標的部位(例えば、腫瘍)に近接した注 入によ
る投与が好ましい。所望される場合、1日の間で適当な間隔で別々に投与される2回、3
回、4回、5回、6回、またはより多くの副用量で、有効な日用量の医薬組成物を投与す
ることが可能である。
【0163】
(治療法および投与)
被験体の任意の疾患または症状を処置または予防するために、本発明の抗体または抗原結
合フラグメント、および本発明の抗体または抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を用
いることが可能であり、その疾患または症状は、IGFR1の発現または活性の増加によ
ってあるいはそのリガンド(例えば、IGF−IまたはIGF−II)の発現の増加によ
って媒介され、かつIGFR1リガンド結合、活性、または発現の調節によって処置また
は予防され得る。好ましくは、その疾患または症状は、IGFR1、IGF−I、または
IGR−IIの濃度の増加によって媒介され、IGFR1リガンド結合、活性(例えば、
自己リン酸化活性)、または発現を低下させることによって処置または予防される。好ま
しくは、その疾患または症状は、悪性疾患であり、より好ましくはIGFR1を発現する
腫瘍によって特徴付けられる悪性疾患であり、例えば、限定はされないが、膀胱癌、ウイ
ルムス腫瘍、骨癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、卵巣癌、
膵臓癌、良性前立腺肥大症(BPH)、転移性カルチノイドに関連する下痢、および血管
作動性腸管ペプチド分泌腫瘍(例えば、ビポーマまたはヴァーナー・モリソン症候群)が
ある。先端巨大症も本発明の抗体分子で処置することが可能である。IGF−Iの拮抗作
用が先端巨大症の処置に関して報告されている(Drakeら(2001)Trends
Endocrin.Metab.12:408−413)。本発明の抗IGFR1抗体
を投与することによっても被験体内で処置することが可能な他の非悪性病状としては、巨
人症、乾癬、アテローム性動脈硬化症、血管平滑筋再狭窄、または糖尿病の、特に眼の合
併症として見出される不適当な微小血管の増殖が挙げられる。
【0164】
用語「被験体」とは、任意の生体、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば
、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒトを指すことが可能である
。好ましい実施形態では、注入等の侵襲性経路(上記参照)によって本発明の抗体および
抗原結合フラグメントならびにその医薬組成物を投与する。非侵襲性経路(上記参照)に
よる投与も本発明の範囲内にある。
当その技術分野で公知の医療機器を用いて、組成物を投与することができる。例えば、好
ましい実施形態では、皮下用注射針を用いた注入によって、本発明の医薬組成物を投与す
ることができる。
【0165】
米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,33
5号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824
号、または同第4,596,556号に開示される機器等の注射針を用いない皮下注入用
機器を用いて、本発明の医薬組成物を投与することも可能である。
【0166】
本発明で有用な周知のインプラントおよびモジュールの例としては、調節された速度で
薬物を分注するための埋め込み型マイクロインフュージョン・ポンプを開示する米国特許
第4,487,603号、精密な注入速度で薬物を送達するための薬物注入ポンプを開示
する米国特許第4,447,233号、連続的な薬剤送達のための可変流埋め込み型注入
装置を開示する米国特許第4,447,224号、多重チャンバ区画を有する浸透圧性薬
剤送達系を開示する米国特許第4,439,196号が挙げられる。多くの他のそのよう
なインプラント、送達系、およびモジュールが当業者に周知である。
【0167】
(アッセイ)
抗IGFR1抗体を用いて、生体試料中のIGFR1を生体外(in vitro)ま
たは生体内(in vivo)で検出することが可能である(例えば、Zola,Mon
oclonal Antibodies:A Manual of Technique
,pp.147−158(CRC Press,Inc.,1987)を参照せよ)。
抗IGFR1抗体を従来のイムノアッセイで用いることが可能であり、そのイムノアッセ
イとしては、限定はされないが、ELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学、ウ
エスタン・ブロット法、または免疫沈降法が挙げられる。本発明の抗IGFR1抗体を用
いて、ヒトからIGFR1を検出することが可能である。本発明は、生体試料内のIGF
R1を検出するための方法を提供し、その方法は、生体試料を本発明の抗IGFR1抗体
に接触させることと、IGFR1に結合した抗IGFR1抗体を検出することとによって
、生体試料内のIGFR1の存在を示すことを包含する。一実施形態では、抗IGFR1
抗体を検出可能な標識で直接標識し、直接検出することが可能である。別の実施形態では
、抗IGFR1抗体(第1の抗体)を標識せずに、抗IGFR1抗体に結合することがで
きる2次抗体をまたは他の分子を標識する。当業者に周知であるように、第1の抗体の特
定の種およびクラスに特異的に結合することができる2次抗体を選択する。例えば、抗I
GFR1抗体がヒトIgGである場合、2次抗体は、抗ヒトIgGでよい。標識した2次
抗体の存在を検出することによって、生体試料内の抗IGFR1/IGFR1複合体の存
在を検出することができる。抗体(例えば、抗IGFR1抗体)に結合することができる
他の分子としては、限定はされないが、プロテインAおよびプロテインGが挙げられ、そ
れら両方が、例えばピアース・ケミカル社(Pierce Chemical Co.)
(Rockford,IL)から市販されている。
【0168】
抗IGFR1抗体または2次抗体に適当な標識が開示されており(上掲)、種々の酵素
、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、磁性物質、および放射性物質を含む。適当な酵素の
例としては、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリ・ホスファターゼ、β−
ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンステラーゼが挙げられる。適当な補欠分子族複
合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ
る。適当な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセイン
イソチオシアネート、ローダミン、ジクロロチリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダ
ンシル、またはフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の例としては、ルミノールが挙
げられる。磁性物質の例としては、ガドリニウムが挙げられる。適当な放射性物質の例と
しては、125I、131I、35S、またはHが挙げられる。
【0169】
別の実施形態では、検出可能な物質で標識したIGFR1標準および標識していない抗
IGFR1抗体を利用する競合イムノアッセイによって、IGFR1を生体試料内でアッ
セイし得る。このアッセイでは、生体試料、標識IGFR1標準、および抗IGFR1抗
体を組み合わせて、未標識抗体に結合した標識IGFR1標準の量を測定する。生体試料
内のIGFR1の量は、抗IGFR1抗体に結合した標識IGFR1標準の量に反比例す
る。多数の目的のために、上記に開示するイムノアッセイが用いられうる。一実施形態で
は、抗IGFR1抗体を用いて、細胞培養での細胞内のIGFR1を検出し得る。好まし
い実施形態では、抗IGFR1抗体を用いて、種々の化合物での細胞処置後に、チロシン
・リン酸化の程度、IGFR1のチロシン自己リン酸化の程度、および/または細胞表面
上のIGFR1の量を測定し得る。この方法を用いて、IGFR1を活性化または阻害す
るために用いられうる化合物を試験することができる。この方法では、一定期間、1種類
の細胞試料を試験化合物で処置し、その一方で別の試料を処置しないでおく。チロシン自
己リン酸化を測定しようとする場合、細胞を溶解して、例えば上記に記載したようなイム
ノアッセイを用いてIGFR1のチロシン・リン酸化を測定する。IGFR1の全濃度を
測定しようとする場合、細胞を溶解し、上述のイムノアッセイの1つを用いて、全IGF
R濃度を測定する。
【0170】
IGFR1チロシンリン酸化を測定するための、または全IGFR1濃度を測定するた
めの好ましいイムノアッセイは、ELISAまたはウエスタン・ブロット法である。IG
FRの細胞表面濃度のみを測定しようとする場合、細胞を溶解せずに、上記のイムノアッ
セイの1つを用いて、IGFR1の細胞表面濃度を測定する。IGFR1の細胞表面濃度
を測定するための好ましいイムノアッセイは、ビオチンまたは125I等の検出可能な標
識で細胞表面タンパク質を標識するステップと、抗IGFR1抗体を用いてIGFR1を
免疫沈降するステップと、その後標識IGFR1を検出するステップとを包含する。IG
FR1の局在化、例えば細胞表面濃度を測定するための別の好ましいイムノアッセイは、
免疫組織化学を用いることによるものである。ELISA、RIA、ウエスタン・ブロッ
ト法、免疫組織化学、内在性膜タンパク質の細胞表面標識、および免疫沈降法等の方法は
、当その技術分野で公知である。さらに、IGFR1の活性化または阻害のいずれかにつ
いて多数の化合物を試験するために、ハイ・スループット・スクリーニングに対してイム
ノアッセイをスケール・アップすることが可能である。
【0171】
また、本発明の抗IGFR1抗体を用いて、組織またはその組織に由来する細胞内のI
GFR1の濃度を測定し得る。好ましい実施形態では、その組織は、疾患組織である。よ
り好ましい実施形態では、その組織は腫瘍またはその生検である。その方法の好ましい実
施形態では、組織またはその生検は、患者から切除される。その後、その組織または生検
をイムノアッセイで用いて、例えばIGFR1濃度、IGFR1の細胞表面濃度、IGF
R1のチロシン・リン酸化程度、またはIGFR1の局在化を、上記に論じた方法によっ
て測定する。その方法を用いて、腫瘍がIGFR1を高濃度で発現するか否かを決定し得
る。
【0172】
上記の診断法を用いて、腫瘍が高濃度のIGFR1を発現するかどうかを決定し得、こ
れは、腫瘍が抗IGFR1抗体での処置に十分に応答していることを示し得る。また、そ
の診断法を用いて、腫瘍が高濃度のIGFR1を発現する場合は潜在的に癌性であるか、
または腫瘍が低濃度のIGFR1を発現する場合は良性であるかを決定し得る。さらにま
た、その診断法を用いて、抗IGFR1抗体での処置が腫瘍に低濃度のIGFRを発現さ
せるか否か、および/またはより低度のチロシン自己リン酸化を示させるか否かをも決定
し得るため、その方法を用いて処置が成功したかどうかを決定し得る。一般に、抗IGF
R1抗体がチロシン・リン酸化を減少させるかどうかを決定する方法は、対象の細胞また
は組織内のチロシン・リン酸化の程度を測定するステップと、抗IGFR1抗体またはそ
の抗原結合部分を用いてその細胞または組織をインキュベートするステップと、その後そ
の細胞または組織内のチロシン・リン酸化の程度を再測定するステップとを包含する。I
GFR1または別のタンパク質(群)のチロシン・リン酸化を測定し得る。その診断法を
用いて、組織または細胞が、小人症、骨粗しょう症、または糖尿病に罹患する個体の症例
でありうる十分に高濃度のIGFR1または十分に高濃度の活性化IGFR1を発現して
いないかどうかをも決定し得る。IGFR1または活性IGFR1の濃度が低すぎるとい
う診断は、抗IGFR1抗体、IGF−1、IGF−2、またはIGFR1濃度または活
性を増加させるための他の療法用作用物質での処置のために用いられうる。
【0173】
また、本発明の抗体を生体内(in vivo)で用いて、IGFR1を発現する組織
および器官を局在化させ得る。好ましい実施形態では、抗IGFR1抗体を用いて、IG
FR1を発現する腫瘍を局在化させ得る。本発明の抗IGFR1抗体の利点は、その抗I
GFR1抗体が、投与時に免疫応答を生じないことである。その方法は、抗IGFR1抗
体またはその医薬組成物をそのような診断試験が必要な患者に投与するステップと、その
患者に画像診断分析を受けさせ、IGFR1発現組織の位置を決定するステップとを包含
する。画像診断分析は、医療技術分野で公知であり、限定はされないが、X線分析、磁気
共鳴映像法(MRI)、またはコンピュータ断層撮影法(CT)が挙げられる。その方法
の別の実施形態では、患者から生検を得て、その患者に画像診断分析を受けさせる代わり
に、対象組織がIGFR1を発現するかどうかを決定する。好ましい実施形態では、患者
内で画像化できる検出可能な作用物質で抗IGFR1抗体を標識し得る。例えば、X線分
析で使用可能なバリウム等の造影剤で、あるいはMRIまたはCTで使用可能なガドリニ
ウムキレート化合物等の磁性造影剤で抗体を標識し得る。他の標識用作用物質としては、
限定はされないが、99Tc等の放射性同位体が挙げられる。別の実施形態では、抗IG
FR1抗体を標識せずに、検出可能でありかつ抗IGFR1抗体に結合し得る2次抗体ま
たは他の分子を投与することによって画像化する。
【実施例】
【0174】
本発明をさらに説明するために以下の実施例を提供するが、本発明の範囲を限定するとは
何ら解釈されない。
【0175】
(実施例1 完全ヒト抗IGFR1抗体の構築)
(1.0 序文)
Hco7遺伝子型のHuMabマウス(下記参照)から、ヒト・インスリン様増殖因子
受容体1(IGFR1)に特異的な完全ヒト・モノクローナル抗体を生成し、組み換え型
sIGFR1およびIGFR1でトランスフェクションしたHEK293細胞で免疫化し
た。Hco7マウスの詳細な説明は、米国特許第5,545,806号、第5,569,
825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号
、第5,770,429号、第5,789,650号、第5,814,318号、第5,
874,299号、および第5,877,397号、ならびにHardingら(199
5)Ann.NY Acad.Sci.764:536−546に提供される。免疫化用
抗原に対して抗原特異的な25,600力価の血清IgGの存在にもとづく融合のために
選択したHuMabマウス(本明細書中で、番号23716と呼ばれる)から抗体1H3
、抗体15H12、および抗体19D12を単離した。1H3抗体、15H12抗体、お
よび19D121抗体は、IGFR1に結合することが判明した。
【0176】
(2.0 材料および方法および結果)
(2.1.抗原)
(2.1.1.)
2種類の形態の抗原、すなわち(1)生細胞(IGFR1でトランスフェクションした
HEK293細胞)および(2)精製タンパク質(sIGFR1、α−サブユニットと、
IGFR1のβ−サブユニットの細胞外ドメインとを包含するNSO発現組み換え型タン
パク質)でマウスを免疫化した。このタンパク質の生物学的活性型は、グリコシル化形態
である。
【0177】
(2.1.2.)
可溶性IGFR1抗原による3回の免疫化と、最終尾静脈免疫追加とを、濃度2.67
mg/mlの精製IGFR1調製物を用いて実行した。可溶性IGFR1をフロイント完
全アジュバントまたは不完全アジュバント(CFAおよびIFA)のいずれかと混合し、
マウス腹腔内に0.2cc(立方センチメートル)調製抗原を注入した。無菌PBS(リ
ン酸緩衝食塩水)内の可溶性IGFR1で最終尾静脈免疫化を実行した。
【0178】
(2.1.3.)
IGFR1 DNAでトランスフェクションしたHEK293細胞を用いた免疫化もま
た、実行した。具体的には、IGFR1を発現する1.0〜2.0×10HEK293
細胞を含有する無菌食塩水0.2ccを腹腔内に注入することによって、各マウスを免疫
化した。
【0179】
(2.2.トランスジェニック・マウス)
(2.2.1.)
フィルタ・ケージ内でマウスを飼育し、免疫化時、採血時および融合を実行した日に良
好な健康状態であることを評価した。
【0180】
(2.2.2.)
選択したハイブリドーマを産生したマウスは、(CMD)++、(Hco7)1195
2+、(JKD)++、(KCo5)9272+遺伝子型の雄(マウスID番号2371
6)であった。個々の導入遺伝子の名称は、括弧内にあり、その後に、無作為に組み込ん
だ導入遺伝子に関する系統番号が続く。記号++および+は、ホモ接合性またはヘミ接合
性であることを示す。しかし、慣用的に、無作為に組み込まれたヒトIg導入遺伝子に対
してはヘテロ接合性とホモ接合性との間の識別が不可能なPCRにもとづくアッセイを用
いてマウスをスクリーニングするので、+名称を、これらのエレメントに対して実質的に
ホモ接合性のマウスとし得る。
【0181】
(2.3.免疫化手順および計画表)
(2.3.1.)
免疫化計画表を下記の表に示す。
【0182】
(表2 マウス免疫化計画表)
【0183】
【表2】


力価情報を下記に示す。
131日目に融合を実行した。
【0184】
(表3 表2(上記参照)に記載するマウス23716の免疫化期間中のIGFR1特
異的抗体の力価)
【0185】
【表3】


(2.4.ハイブリドーマ調製および試験)
(2.4.1.)
SP2/0−AG14骨髄腫細胞株(ATCC CRL 1581)を融合のために用
いた。最初のATCCバイアルを解凍して、培養で増殖させた。冷凍バイアルの種(se
ed stock)をこの増殖から調製した。6〜8週間、細胞を培養物中で維持して、
1週間に2度移した。
【0186】
(2.4.2.)
10%FBS、抗生物質−抗真菌剤(100×)、および0.1%L−グルタミンを含
有する高グルコースDMEMを用いて、骨髄腫細胞を培養した。5%オリゲン・ハイブリ
ドーマ・クローニング・ファクター(Origen−−Hybridoma Cloni
ng Factor)(Fischer Scientific;Suwanee,GA
)、4.5×10−4Mピルビン酸ナトリウム、HAT 1.0×10−4Mヒポキサン
チン、4.0×10−7Mアミノプテリン、1.6×10−5MチミジンまたはHT 1
.0×10−4Mヒポキサチン、1.6×10−5Mチミジン、および特性が明らかな胎
児ウシ血清を含むハイブリドーマ増殖培地に追加の培地補充を加えた。
【0187】
(2.4.3.)
マウス番号23716由来の脾臓は、大きさが正常であり、5.73×10生細胞を
産生した。
【0188】
(2.4.4.)
以下の手順にしたがって脾細胞を融合した。すなわち、
1.DMEM+10%PBS約10mlを50mL管に入れる。
【0189】
2.静脈内で追加免疫したマウスを屠殺する。
【0190】
3.そのマウスをペーパー・タオル上のフード中に移す。
【0191】
4.マウスをアルコールに浸して、その右側を上にして置く。
【0192】
5.脾臓領域の上方の皮膚を小さく切断する。
【0193】
6.両手を使ってマウスから皮膚を引き剥がす。
【0194】
7.アルコールに再び浸す。
【0195】
8.無菌器具を用いて、腹膜を開口する。
【0196】
9.鋏の先端を脾臓の下に挿入し、ピンセットで脾臓を掴む余地があるように鋏を広
げる。
【0197】
10.脾臓を取り出して、DMEM+10%PBSを含有する管に入れる。無菌組織
培養室に移す。
【0198】
11.無菌フード内部で、2つの無菌60mm培養皿のそれぞれに、無血清のDME
M約7mLを添加する。
【0199】
12.脾臓を第1の皿に移す。
【0200】
13.無菌器具を用いて、脾臓からいずれの付着物も除去する。
【0201】
14.無菌ホモジナイザーの底部を試験管ラック(支持用)に置く。
【0202】
15.浄化した脾臓をそのホモジナイザーに加える。
【0203】
16.DMEM約5mLを添加して、4回の操作で均質化する。無菌50mL遠心管
に注ぐ。
【0204】
17.ホモジナイザーにDMEMをさらに5ないし6ml添加して、さらに3ないし
4回追加の操作をする。
【0205】
18.上記のように同管に注ぐ。
【0206】
19.遠心機で、1000rpmで10分間細胞をスピンする。
【0207】
20.上清を除去する。ペレットをDMEMに注いで再懸濁する。
【0208】
21.脾臓細胞を計数する。
【0209】
22.適当な容量のSP2/0細胞(SP2/0細胞1個あたり6個の脾臓細胞)を
50mL遠心管に移す。容量を記録する。
【0210】
23.遠心のために都合よく均衡させるために、DMEMを用いて脾臓細胞の容量を
調整する。
【0211】
24.遠心機で、10分間1000rpmで細胞をスピンする。
【0212】
25.上清を除去する。DMEM洗浄培地(無血清)30〜40mLにペレットを注
いで再懸濁する。全ての細胞を1つの管にまとめる。
【0213】
26.上記のように再びスピンする。
【0214】
27.上清を除去して、ペレットを再懸濁する。
【0215】
28.37℃水を含有するビーカー内で管を穏やかに旋回させながらPEG(ポリエ
チレングリコール)約1.2mLを約1分目に添加する。
【0216】
29.管を90秒静置し、その後、3分目にDMEM洗浄培地15mLを添加する。
【0217】
30.上記のように管をスピンする。
【0218】
31.上清を除去して、ペレットを穏やかに再懸濁する。
【0219】
32.Hat培地約10mLを管に添加する。
【0220】
33.HAT培地の全容量中に細胞をピペッティングする。播種前に、インキュベー
ター内で細胞を30〜60分間静置する。
【0221】
34.200μL/ウェル(96ウェル・プレートあたり約1×10細胞)で、9
6ウェル培養プレート中に細胞を播種する。
【0222】
35.7日目に、250μl/ウェルでHT培地(アミノプテリンを除いたHAT培
地と同様のHT培地)を細胞に供給する。
【0223】
(2.4.5.)
融合後7〜10日目に、下記の手順にしたがってヒトIgGκ抗体に対する最初のEL
ISAスクリーニングを実行した。すなわち、
1.50μL/ウェルで、1×PBS中の抗hu−κ(1μg/mL)または抗hu
−γ(1μg/mL)でプレートを一晩被覆する。冷蔵庫内で保存する。
【0224】
2.プレートを空にして、1×PBST(Tweenを有するPBS)+5%ニワト
リ血清中でプレートを1時間室温で遮断する(100μL/ウェル)。
【0225】
3.プレートを空にして、1×PBSTを用いて、手動で洗浄ビンによって(3回)
、またはプレート洗浄器によって(3回)洗浄する。洗浄ビンを用いる場合は、プレート
をペーパー・タオル上で排水する。
【0226】
4.クローンの生産程度を試験するために標準を用いる。未知物を有する希釈を作製
する(第1のウェル中で1:10で希釈し、そしてプレート全体にわたって2倍で希釈す
る)。Hu−IgG標準は、1000ng/mLで開始し、プレート全体にわたって2倍
で希釈する。少数のウェルをブランク用に残しておく。すなわち、100μL/ウェルで
、希釈用に用いた1×PBST+5%ニワトリ血清。室温で1時間インキュベートする。
遮断用緩衝液で1:2に希釈して、融合スクリーニングおよびサブクローニングを一般的
に試験する。融合およびサブクローニングをスクリーニングする際、陽性対照もまた用い
得る。
【0227】
5.洗浄ステップ3を繰り返す。
【0228】
6.2次抗体HRP(ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ)−抗huIgG−F
c試薬またはHRP−抗hu−κを、1×PBST+5%ニワトリ血清中で、1:500
0で希釈する。100μL/ウェルで添加する。室温で1時間インキュベートする。
【0229】
7.洗浄ステップ3を繰り返す(2回)。
【0230】
8.プレート毎に10mlクエン酸リン酸緩衝液(pH4.0)、80μL ABT
S、8μL Hを用いて、プレートを展開する。
【0231】
9.室温で30分〜1時間インキュベートする。OD415nm〜490nmでプレ
ートを読み取る。
【0232】
(溶液)
1×PBST=1×PBS+0.05%tween−20
クエン酸リン酸緩衝液=21gm/Lクエン酸、14.2gm/Lリン酸水素二ナト
リウム(無水)(pH4.0)
ABTS=クエン酸緩衝液中27.8mg/mL 2,2’−アジノ−ビス(3−エ
チルベンズ−チオゾリン−6−スルホン酸)ニアンモニウム塩、1mLアリコートを冷凍

【0233】
プレート=96ウェル・アッセイ・プレート
ハイブリドーマ1H3、15H12、および19D12に対応するウェル中で、陽性
ELISAシグナルを検出し、これらのハイブリドーマがヒトIgG抗体を産生すること
が実証された。
【0234】
(2.4.6.)
その後、以下の手順にしたがって、ヒトIgGκ陽性ウェルに対応するハイブリドーマ
上清を可溶性IGFR1被覆ELISAプレート上でスクリーニングした。すなわち、
1.50μL/ウェルで、1×PBS中のIGFR1(1.0μg/mL)でプレー
トを一晩被覆する。冷蔵庫で保存する。プレートを被覆するためには5ミリリットルが必
要である。
【0235】
2.プレートを空にして、1×PBST+5%ニワトリ血清中でプレートを1時間室
温で遮断する(100μL/ウェル)。
【0236】
3.プレートを空にして、1×PBSTを用いて、手動で洗浄ビンによって(3回)
、またはプレート洗浄器によって(3回)洗浄する。洗浄ビンを用いる場合は、プレート
をペーパー・タオル上で排水する。
【0237】
4.遮断用緩衝液を希釈剤として用いる。プレートの最上列で1:50希釈率で始め
て血清を試験し、プレートの列を下がるごとに2倍で希釈する(7回)。室温で1時間イ
ンキュベートする。サブクローン・スクリーニングのために、遮断用緩衝液中の1:1希
釈の培養上清を出発物質として用いる。
【0238】
5.洗浄ステップ3を繰り返す。
【0239】
6.1×PBST+5%ニワトリ血清中で、2次HRP−抗hu IgG−Fc特異
的試薬および/またはHRP−抗hu−κ試薬を1:2500〜5000で希釈し、10
0μL/ウェルで添加する。室温で1時間インキュベートする。
【0240】
7.洗浄ステップ3を繰り返す(2回)。
【0241】
8.プレート毎に10mLクエン酸リン酸緩衝液(pH4.0)、80μL ABTS
、8μL Hを用いて、プレートを展開する。
【0242】
9.室温で30分〜1時間インキュベートする。OD415nm−490nmでプレー
トを読み取る。バックグラウンド力価限度にわたって2回検討する。
【0243】
これらのアッセイで、ハイブリドーマ15H12および19D12は、陽性ELISA
シグナルを産生した。これらのデータによって、そのハイブリドーマが、可溶性IGFR
1に結合することができる抗体を産生することが実証される。
【0244】
その後、抗原陽性ハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、最終的には組織培養フ
ラスコに移した。IGFR1特異的ハイブリドーマを限界希釈法によってサブクローニン
グして、単クローン性を確認した。オリゲン(Origen)DMSO冷凍培地(Fis
cher Scientific;Suwanee,GA)中で細胞を冷凍することによ
って、展開過程の複数の段階で抗原陽性ハイブリドーマを保存した。
【0245】
(2.4.7.)
以下の手順にしたがって抗体アイソタイプを測定した。すなわち:
1.50μL/ウェルで、1×PBS中の1μg/mL可溶性IGFR1でプレートを
一晩冷蔵庫内で被覆する。プレートを空にする。
【0246】
2.室温で1時間、1×PBST+5%ニワトリ血清を添加する(100μL/ウェル
)。プレートを空にする。
【0247】
3.ブロッキング緩衝液を希釈剤として用い、試験すべき上清または精製物質を、試験
すべき2次抗体(50μL/ウェル)あたり1ウェルで添加する。室温で90分間インキ
ュベートする。プレートを空にする。
【0248】
4.プレートを空にして、1×PBSTを用いて、手動で洗浄ビンによって(3回)、
またはプレート洗浄器によって(3回)洗浄する。洗浄ビンを用いる場合は、プレートを
ペーパータオル上で排水する。
【0249】
5.ブロッキング緩衝液を希釈剤として用い、1:1000で希釈した2次抗体、すな
わち:
HRP−抗hu−γ、
HRP−抗hu−κ、
HRP−抗ヒトIgGI、または
HRP−抗ヒトIgG3
を添加する。室温で45分間インキュベートする。プレートを空にする。
【0250】
6.洗浄ステップ4を繰り返す(3回)
7.プレート毎に10mLクエン酸リン酸緩衝液(pH4.0)、80μL ABTS
、8μL Hを用いて、プレートを展開する。
【0251】
8.室温で30分〜1時間インキュベートする。OD415nm−490nmでプレー
トを読み取る。
【0252】
これらのアッセイから得たデータを下記に表4で示す。
【0253】
(表4 アイソタイプELISA結果
【0254】
【表4】


各数値は、各2次抗体に関して観察されたELISAシグナルの大きさ(magnit
ude)を表す。
【0255】
これらのデータによって、抗体15H12がIgG3κ抗体であることが実証される。
【0256】
(2.4.8)
固定化細胞ELISAアッセイで、IGFR1を発現する細胞に直接結合する能力に関
して、ハイブリドーマ上清(1H3、15H12、および19D12)ならびにMAB3
91も試験した。そのアッセイでは、IGFR1 DNAでトランスフェクトしたMCF
−7細胞またはHEK293細胞を用いた。アッセイを以下のように実行した。すなわち

1.96ウェルプレートの各ウェルに、1×PBS中の20μg/mLポリ−L−リジ
ン溶液を50μg/ウェルで添加し、室温で30分間または4℃で一晩インキュベートす
る。プレートを空にして、ウェルからポリ−L−リジンを除去し、使用するまで室温で乾
燥させる。
【0257】
2.遠心(1000RPM/5分)によって、1×PBSを用いて生細胞を3回洗浄す
る。1×PBS中で、最終細胞濃度をウェルあたり2×10細胞に調整する。この細胞
懸濁液をウェルあたり50μL添加する。
【0258】
3.細胞を5分間2000RPMでスピンする。緩衝液を破棄する。
【0259】
4.1×PBS中の0.5%氷冷グルタルアルデヒドを50μL/ウェルで添加する。
室温で15分間静置する。プレートを空にする。
【0260】
5.1×PBST+5%ニワトリ血清を添加して、室温で1時間インキュベートする(
100μL/ウェル)。プレートを空にする。
【0261】
6.1×PBSTを用いてプレートを穏やかに洗浄する(2回)。細胞の損失を避ける
ために、任意のプレート洗浄器は避けて容器内で、このステップを手動でおこなうべきで
ある。
【0262】
7.ブロッキング緩衝液を希釈剤として用いて、1:1希釈の100μgを添加するこ
とによって培養上清を試験する。室温で1時間インキュベートする。
【0263】
8.ステップ6を繰り返す(3回)。
【0264】
9.1×PBST+5%ニワトリ血清で2次HRP−抗hu IgG−Fc特異的試薬
および/またはHRP−抗hu−κ試薬を1:2500〜5000に希釈し、100μL
/ウェルで添加する。室温で1時間インキュベートする。
【0265】
10.ステップ6を繰り返す(3回)
11.プレート毎に10mlクエン酸リン酸緩衝液(pH4.0)、80μL ABT
S、8μL Hを用いて、プレートを展開する。
【0266】
12.室温で15分〜20分インキュベートする。OD415nm−490nmでプレ
ートを読み取る。
【0267】
これらのアッセイから得た結果によって、ハイブリドーマ1H3、15H12および1
9D12が、IGFR1を発現するHEK293細胞に結合する免疫グロブリンを産生す
ることならびに、ハイブリドーマ1H3、15H12および19D12が、内因性IGF
R1を発現するMCF−7細胞に結合する免疫グロブリンを産生することとが実証された
。さらに、この結果によって、IGFR1発現HEK293細胞に、かつMCF−7細胞
にMAB391が結合することが実証された。
【0268】
(2.4.9.)
1)IGFR1発現HEK293細胞上およびMCF7細胞上の上清の染色強度ならび
に、2)IGFR1発現細胞へのIGF1−ビオチンの結合を阻害する上清の能力とを測
定することによって、ハイブリドーマ上清(1H3、15H12、および19D12)の
IGFR1に対するIGF1の結合を阻害する能力を評価した。最初に、本発明の抗体に
よるIGF1のその受容体への結合の阻害を評価するための適切な濃度を確立するために
、IGFR1発現HEK293細胞上でビオチン標識IGF1を滴定した。以下の手順に
よってこれをおこなった。すなわち:
1.フラスコを叩いて円錐管にピペッティングした細胞をほぐすことによって、IGF
R1発現HEK293細胞をフラスコから回収する。その後、その細胞を300×gで5
分間遠心して、細胞をペレット化する。その後、培地を吸引する。
【0269】
2.0.02% アジ化ナトリウムを含有する10〜20mLPBSで、細胞を洗浄し
、約2.5×10細胞/mL(±10細胞)で、同緩衝液中で再懸濁する。4℃で、
同緩衝液中で、96ウェルマイクロタイタープレート中に細胞を200μL/ウェルでア
リコートする。細胞をペレット化し、上清を吸引する。
【0270】
3.同緩衝液中で、50μL/ウェルの連続希釈したIGF1−ビオチンを添加するこ
とによって、細胞を染色する。1:5希釈で開始して、その後4倍連続希釈する。プレー
トを軽く叩くか、または穏やかにボルテックスして、細胞の均一な懸濁液が懸濁されてい
ることを確実する。その後、細胞を4℃で30分間インキュベートする。
【0271】
4.最初の洗浄のために150μL緩衝液を添加することによって、細胞を3回洗浄し
、その後ペレット化する。上清を吸引して、200μL緩衝液を添加する。再び、細胞を
ペレット化して、上清を吸引する。この洗浄ステップをさらにもう1度繰り返す。ストレ
プトアビジン−PE(ストレプトアビジン−R−フィコエリトリン)を添加して、細胞を
4℃で30分間インキュベートする。
【0272】
5.2%FBSおよび0.02%アジ化物を含有するPBSで、細胞を1回洗浄し、5
0μg/mLヨウ化プロピジウムも含有する以外は同じ緩衝液で再懸濁し、死細胞を除外
する。
【0273】
6.細胞をFACSによって分析する。
【0274】
ブロッキングアッセイを以下のように実行した。すなわち、
1.フラスコ側面を叩いて細胞をほぐすことによって、組織培養フラスコからMCF7
細胞またはHEK293/IGFR1細胞を回収する。細胞を円錐管にピペッティングす
る。その管を300×gで5分間遠心して、細胞をペレット化する。培地を吸引する。
【0275】
2.2%FBSおよび0.02%アジ化ナトリウムを含有するPBS(PFA)10〜
20mLで、細胞を洗浄し、約2.5×10(±1×10)で、同緩衝液中で再懸濁
する。4℃で、同緩衝液中で、96ウェルマイクロタイタープレート中に200μL/ウ
ェルでアリコートする。細胞をペレット化し、緩衝液を吸引する。
【0276】
3.培地(陰性)対照および陽性対照としてのMAB391を含む100μL/ウェル
を添加することによって、各IGFR1ハイブリドーマ上清で細胞を染色する。プレート
を軽く叩いて、細胞の均一な懸濁を確実にする。4℃で30〜60分間インキュベートす
る。
【0277】
4.最初の洗浄のために100μL緩衝液を添加することによって、PFA中で細胞を
3回洗浄し、ペレット化および吸引をして、200μL緩衝液中で再懸濁し、ペレット化
および吸引をして、200μL緩衝液中で再び再懸濁し、各試料を2つのウェルに分けて
ペレット化する。
【0278】
5.ウェルの1セットに、上清染色試料および培地対照に対してPFA(パラ−ホルム
アルデヒド)で1:100で希釈した抗ヒトIgG−FITCを添加し、MAB391染
色試料に対して1:200希釈の抗マウスIgG−FITCを添加し、再び、細胞の均一
な分散を確実にする(染色アッセイ)。4℃で30分間インキュベートする。
【0279】
6.ウェルの第2のセットに、0.02%アジ化物を含有するPBS(FBSなし)で
1:500で希釈したIGF1−ビオチンを添加し、4℃で30分間インキュベートする
。ステップ4に記載するように(ただし、試料の分割はせずに)、細胞を3回洗浄する。
PFA中でストレプトアビジン−PE(ストレプトアビジン−R−フィコエリトリン)を
添加することによって、これらの細胞を染色する(ブロッキングアッセイ)。4℃で30
分間インキュベートする。
【0280】
7.PFAで全ての試料を1回洗浄し、50μg/mLヨウ化プロピジウムも含有する
以外は同じ緩衝液中で再懸濁して、死細胞を除外する。
【0281】
8.FACS分析によって分析する。
【0282】
これらのブロッキングアッセイから得た結果によって、ハイブリドーマ1H3、15H
12および19D12由来の上清が、ビオチン標識IGF1のIGFR1への結合を阻害
し、内因性IGFR1を発現するMCF7細胞を染色し、かつIGFR1を発現するHE
K293細胞を染色することが実証された。
【0283】
(2.4.10)
以下の手順にしたがって、IGFR1へのビオチン標識IGF1の結合を阻害する精製
抗体1H3および15H12の能力をELISAアッセイで評価するとともに、IGFR
1へのビオチン標識MAB391の結合を阻害する抗体1H3、15H12および19D
12の能力もELISAアッセイで評価した。
【0284】
1.50μL/ウェルの1×PBS中の1μg/mL可溶性IGFR1でプレートを一
晩冷蔵庫内で被覆する。
【0285】
2.室温で1時間、1×PBST+5%ニワトリ血清を添加する(100μL/ウェル
)。プレートを空にする。
【0286】
3.洗浄緩衝液(1×PBS+0.05%tween−20)でプレートを3回洗浄す
る。プレートを叩いて乾燥させる。
【0287】
4.プレート全体にわたって、2μg/mL 1H3、15H12または19D12あ
るいは陽性または陰性対照抗体をブロッキング緩衝液中で希釈する。プレートを室温で1
時間インキュベートする。
【0288】
5.洗浄緩衝液中でプレートを3回洗浄する。
【0289】
6.ビオチン−IGF1またはビオチン−MAB391を50μL/ウェルで添加し、
室温で30分間インキュベートする。
【0290】
7.プレートを3回洗浄する。
【0291】
8.ストレプトアビジン標識アルカリホスファターゼまたはホースラディッシュペルオ
キシダーゼを100μL/ウェルで添加し、室温で30分間インキュベートする。
【0292】
9.プレートを3回洗浄する。使用する標識に応じた適当な試薬で展開する。
【0293】
10.10〜15分後に読み取る。
以下の手順にしたがって、MAB391をビオチン標識した。すなわち、
1.PBS緩衝液中でMAB391を調製する(透析または脱塩カラムを用いて、Tr
isまたはグリシン等の不要な緩衝液を除去する)。
【0294】
2.スルホ−NHS−LC−ビオチン溶液の新たなストック溶液を使用直前に調製する
。スルホ−NHS−LC−ビオチン2.0mgを200mL蒸留水に添加する。MAB3
91の10mg/mLで作業する場合は12倍過剰モルで、またはMAB391(2mg
/mL)の希釈調製物で作業する際は20倍過剰モルで、この試薬をMAB391に添加
する。
【0295】
3.計算:ミリモルMAB391=mgタンパク質/150,000ミリモル×12ま
たは20=添加するミリモルビオチン試薬
添加するミリモルビオチン×556=添加するmgビオチン試薬
1mg/mLについて:
1/150000=6.6×10−6
20×6.6×10−6ミリモル=1/32×10−4NHS−LC−ビオチン
1.32×10−4×556=0.073mgスルホNHS−LC−ビオチン
ストックNHS−LC−ビオチン溶液から、1または2mgに対するmgIgGあたり
10μL(100μg)の溶液を用いる。
【0296】
4.氷上で2時間または室温で30分間インキュベートする。PBSに対して透析する
か、または脱塩カラムを用いて、未反応のビオチン試薬を除去する。PBS 0.1%ア
ジ化ナトリウム中で、4℃で保存する。一般に、標識した各IgG分子に3〜5個のビオ
チンを添加すべきである。
【0297】
これらのブロッキングアッセイから得た結果によって、抗体1H3および15H12が
、sIGFR1へのビオチン標識IGF1の結合を遮断することと、抗体1H3、15H
12および19D12が、sIGFR1へのビオチン標識MAB391の結合をブロッキ
ングすることとが実証された。
【0298】
(2.4.11.)
以下の手順にしたがって、IGFR1と1H3、15H12および19D12抗体との
間の結合をビアコア(BIAcore)/表面プラズモン共鳴アッセイで評価した。すな
わち:
1.アミンカップリング法によって、フローセル上で350.4応答単位のレベルに、
IGFR1をCM−5チップ上で固定化する。固定化に用いるIGFR1の濃度は、酢酸
ナトリウム緩衝液中で2.5μg/mLであり、タンパク質をpH3.5で固定化する。
【0299】
2.プロテインAまたはプロテインGカラム上でハイブリドーマ上清から抗体1H3、
15H12および19D12を精製し、SDS−PAGE分析によって純度に関して試験
する(4%〜12%Tris−グリシン)。
【0300】
3.上記で調製したIGFR1表面にわたって抗体を流れさせる。
【0301】
4.用いる抗体の濃度範囲は、4、2、1、0.5および0.25μg/mLである。
バックグラウンド置換のためにブランクも用いる。試料をHBS緩衝液中で調製する。
【0302】
5.注入時間(結合相)は、流速20μL/分で10分間であり、解離時間(解離相)
は、同じ流速で1時間である。
【0303】
6.25℃および37℃両方でアッセイを実行する。全ての実験を二連でおこなう。
【0304】
7.ビア−エバリュエーション(Bia−Evaluation)ソフトウェアv.3
.0.2(Biacore,Inc;Piscataway,NJ)を用いて、データ分
析を実行する。
【0305】
8.ビアコア(Biacore)3000表面プラズモン共鳴機器(Biacore,
Inc;Piscataway,NJ)を用いて、全ての実験を実行する。
【0306】
これらのアッセイの結果によって、抗体15H12および19D12が25℃および3
7℃でIGFR1と結合することと、抗体1H3が25℃でIGFR1と結合することと
が実証された。これらの実験から得たデータを用いて、IGFR1に結合する1H3、1
5H12および19D12の親和性および速度定数も計算した(下記、表5参照を参照の
こと)。
【0307】
(表5 IGFR1との抗体1H3、15H12および19D12の親和性および速度
定数)
【0308】
【表5】


半減期として計算=ln(2/koff
【0309】
(実施例2 細胞にもとづく受容体結合アッセイ)
細胞にもとづく受容体結合アッセイを用いて、IGFR1への結合に対して抗体1H3
、15H12および19D12がIGF1と競合するか否かについて測定した。
【0310】
このアッセイでは、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBSを用いて96ウェ
ルフィルタプレート(1.2μm孔)を4℃で2時間予め湿らせた。その後、緩衝液を真
空マニホルドで除去した。種々の濃度の6×対照または試験抗体(1H3、15H12ま
たは19D12)をウェルに添加した(25μL)。その後、[125I]−IGF−1
リガンドをBSA/PBS中での最終濃度0.375nMでウェルに添加した。細胞解離
溶液を用いて、細胞を回収し、トリパンブルーで計数し、細胞数1〜3×10/mlに
0.5%BSA/PBSで再懸濁した。100μlの細胞(10,000〜30,000
個)を各ウェルに添加した。プレートを4℃で1時間振盪した。その後、プレートを吸引
して、真空マニホルドを用いて、氷冷PBSによって3回洗浄した。フィルタに孔をあけ
て、ガンマ線計数器で計数した。競合結合に関してデータを分析した。
これらの実験の結果によって、IGFR1への結合に対して1H3、15H12および1
9D12がIGF−Iと競合できることが示された。
【0311】
(実施例3:IGFR1自己リン酸化アッセイ)
IGFR1自己リン酸化を阻害する1H3、15H12および19D12の能力も測定
した。
【0312】
抗体(1H3、15H12または19D12)を、IGFR1を保持する細胞に種々の
時間長で添加した。その後、10ng/ml IGF−Iで細胞を37℃で5分間刺激し
た。0.1mMバナジン酸ナトリウムを含有する冷PBSで細胞を2回洗浄し、溶解緩衝
液(50mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、10%グリセロール
、1%トリトン×−100、1.5mM MgCl、プロテアーゼ阻害剤および2mM
バナジン酸ナトリウム)中で溶解した。溶解物を氷上で30分間インキュベートし、その
後4℃で10分間13,000RPMで遠心した。クーマシー比色定量アッセイによって
溶解物のタンパク質濃度を測定し、免疫沈降法およびウエスタンブロット法をおこなった

【0313】
これらのアッセイの結果によって、抗体1H3、15H12および19D12が0.1
0nMのIC50でIGFR1自己リン酸化を阻害することが示された。
【0314】
(実施例4 足場非依存性増殖(軟寒天)アッセイ)
ヒト乳癌細胞株MCF7、ヒト結腸直腸癌細胞HT29、およびヒト前立腺癌細胞DU
145を含む種々の細胞の足場非依存性増殖を阻害する抗IGFR1抗体1H3、15H
12、19D12、およびMAB391の能力を評価した。
【0315】
これらの実験では、完全MEM培地中の0.6%アガロース3ミリリットルを6ウェル
組織培養プレート中の各ウェルに添加し、固体化させた(下層)。抗体1H3、15H1
2、19D12、またはMAB391(上記に論じた)の100マイクロリットルを様々
な濃度で培養管に添加した。細胞を回収した。細胞のアリコート(15,000個の細胞
)を、抗体を含有する培養管に添加し、室温で10ないし15分間インキュベートした。
0.35%アガロース/完全最小必須培地(MEM)層(上層)の3ミリリットルを抗体
/細胞混合物に添加して、その後、固体化下層にプレートした。上層を固体化させた。そ
の後、プレートを3週間インキュベートした。MTT(3−(4,5−ジメチル−2−チ
アゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−臭化テトラゾリウム)をウェルに添加して、1
ないし2時間インキュベートした。プレートを走査して、カスタマイズしたコロニー計数
器適用プログラムを用いてコロニーを計数および分析した。
【0316】
これらの実験の結果によって、抗IGFR1抗体が試験した3種類の悪性細胞株全ての
足場非依存性増殖を阻害することができることが実証された。
【0317】
(実施例5 ハイブリドーマ由来抗体の可変領域のクローニング)
以下の手順にしたがって、1H3、15H12、および19D12可変領域をコードす
る核酸をハイブリドーマから得た。
【0318】
マイクロ−ファースト・トラック(Micro−Fast Track)キット(In
vitrogen;Carlsbad,CA)を用いて、2×10ハイブリドーマ細胞
由来のメッセンジャーRNA(mRNA)を調製した。「cDNAサイクル(cDNA
Cycle)」キット(Invitrogen;Carlsbad,CA)に記載される
手順にしたがって、その可変領域をコードする細胞DNA(cDNA)を調製した。
【0319】
5’RACE(Clotech;Palo Alto,CA)技術を利用して、cDN
Aをテンプレートとして用いて抗体可変領域をPCR増幅した。以下の3’プライマー配
列を用いて、重鎖を増幅した。すなわち、5’−TGCCAGGGGGAAGACCGA
TGG−3’(配列番号22)である。以下の3’プライマー配列を用いて軽鎖を増幅し
た。すなわち、5’−CGGGAAGATGAAGACAGATG−3’(配列番号23
)である。さらに、5’RACE PCRプライマー(Clotech;Palo Al
to,CA)を各増幅で用いた。
【0320】
PCR反応混合物には、適当な緩衝液中のPfu Iポリメラーゼの2.5単位(St
ratagene;La Joola,CA)、各dNTP 0.2mM、各5’および
3’プライマー750nM、およびcDNAテンプレートを含めた。全反応容量は、50
μlであった。サーモサイクラーを用いて、以下のPCRサイクル・プログラムを実行し
た。すなわち、
1× 94℃、2分 10× 94℃、45秒
65℃、45秒。サイクルごとに−1℃
72℃、1分、
25× 94℃、45秒
55℃、45秒
72℃、1分
1× 72℃、15分
である。
【0321】
得られたPCR増幅産物をゼロ・ブラント・トポ(Zero Blunt TOPO)
PCRクローニング・ベクター(Invitrogen;Carlsbad,CA)中に
挿入した。制限酵素分析によって挿入断片の同一性を検証し、その後、シーケンシングに
よって挿入のヌクレオチド配列を得た。
【0322】
(実施例6 抗体鎖の組み換え的発現)
この実験では、本発明の種々の抗IGFR1抗体鎖をコードする核酸を用いて、dhf
哺乳動物細胞株(CHO−DXB11)をトランスフェクションし、その中でその鎖
を発現させた。下記に列記するプラスミド1ないし11から選択される1個の重鎖(γ1
またはγ4)および1個の軽鎖(κ)プラスミドの種々の組み合わせで細胞株の共トラン
スフェクションによって一時的なトランスフェクションを実行した。下記に列記する単一
のプラスミド12または13のいずれかによるトランスフェクションによって安定細胞株
の構築を以下のように実行した。すなわち、核酸を単一のプラスミド内に配置し、作用自
在にサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターに結合させた。プラスミドは、プラス
ミド増幅のために用いられるマウス乳癌ウイルス長末端配列(mouse mammar
y tumor virus long terminal repeat(MMTV−
LTR))に作用自在に結合するDHFR cDNAも含有していた。プラスミドは、哺
乳動物細胞内での選択のためのTKプロモーターに作用自在に結合するハイグロマイシン
B遺伝子をさらに含んだ。
【0323】
下記に、構築した13種類のプラスミド内のプロモーター発現カセットを記載する。ブ
ダペスト条約のもと、American Type Culture Collecti
on(ATCC);10801 University Boulevard;Mana
ssas,Virginia 20110−2209に______で、表示した名称お
よび登録番号の下で、表示したプラスミド(2ないし4および8ないし11)を寄託した
。すなわち、
(1)CMVプロモーター−15H12/19D12 HC(γ4)
挿入配列:配列番号3、
(2)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCA(γ4)−
寄託名「15H12/19D12 HCA(γ4)」
ATCC登録番号:
挿入配列:配列番号44
(3)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCB(γ4)−
寄託名「15H12/19D12 HCB(γ4)」
ATCC登録番号:
挿入配列:配列番号111
(4)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCA(γ1)−
寄託名「15H12/19D12 HCA(γ1)」
ATCC登録番号:
挿入配列:配列番号44
(5)CMVプロモーター−15H12/19D12 LC(κ)
挿入配列:配列番号1
(6)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCA(κ)
挿入配列:配列番号40
(7)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCB(κ)
挿入配列:配列番号42
(8)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCC(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCC(κ)」
ATCC登録番号:
挿入配列:配列番号71
(9)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCD(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCD(κ)」
ATCC登録番号:
挿入配列:配列番号73
(10)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCE(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCE(κ)」
ATCC登録番号:
挿入配列:配列番号75
(11)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCF(κ)−
寄託名「15H12/19D12 LCF(κ)」
ATCC登録番号:
挿入配列:配列番号77
(12)CMVプロモーター−15H12/19D12 HC(γ4)およびCMVプロ
モーター−15H12/19D12 LC(κ)
(13)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCA(γ1)およびCMVプ
ロモーター−15H12/19D12 LC(κ)
ATCCに寄託したプラスミドへのアクセス制限の全ては特許の付与により解除される

【0324】
各カセットの3’末端をβ−グロブリン・ポリAシグナルに結合させた。発現させた可
変鎖を括弧内で示した定常領域(すなわち、γ1、γ4、またはκ)に結合させた。各プ
ラスミドを含有するトランスフェクションした細胞株の分析によって、対応する抗体鎖ポ
リペプチドが発現する(発現産物のアミノ酸配列は確認せず)ことが示された。
【0325】
上記に参照したプラスミドのそれぞれは、本発明の部分を構成する。さらに、各発現カ
セット内に位置する核酸は、その中の免疫グロブリン可変領域とともに、その成熟プロセ
ッシング型(すなわち、シグナル配列を持たない)とともに、特に配列番号44の成熟H
CA(配列番号44のヌクレオチド58ないし411)、配列番号111の成熟HCB(
配列番号111のヌクレオチド58ないし411)、配列番号71の成熟LCC(配列番
号71のヌクレオチド58ないし384)、配列番号73の成熟LCD(配列番号73の
ヌクレオチド58ないし384)、配列番号75の成熟LCE(配列番号75のヌクレオ
チド58ないし384)、配列番号77すなわち成熟LCF(配列番号77のヌクレオチ
ド58ないし384)とともに、任意の前述の核酸にコードされる任意のポリペプチドと
ともに免疫グロブリン定常領域を任意で含み、成熟または非プロセッシング鎖を含み、免
疫グロブリン定常領域を任意で含み、本発明の一部である。さらに、コードされたポリペ
プチドの1つを含む、それらの任意の抗体または抗原結合フラグメントは、本発明の一部
である。
【0326】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本
明細書に記載されるものに加えて、本発明の様々な変更は、前述の記載および添付図面か
ら当業者には自明であるだろう。そのような変更は、添付の請求項の記載の範囲内にある
ことが意図される。
【0327】
特許、特許明細書、ジーンバンク登録番号、および刊行物がこの明細書全体を通して引
用されている。それらの開示の全体を参考として本明細書で援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2011−92202(P2011−92202A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288975(P2010−288975)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2006−138156(P2006−138156)の分割
【原出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】