説明

中耕除草機

【課題】枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境に好適で、操作性が良好で、作業者の負担が小さな中耕除草機を提供する。
【解決手段】中耕除草機の本体に、前後の中耕爪輪と移動制御部とを設け、枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境であっても、移動制御部によって、前後の中耕爪輪において使用する中耕爪輪を選択することによって、中耕除草機の前進速度の制御、前進後退の進行方向の制御を容易とし、これによって、中耕除草機の操作性を向上させ、作業者の負担を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘畑等の低木の果樹園で使用する中耕除草機に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
中耕除草は、作物の播種や移植後に、表土を耕転して、雑草を除去する他に、作物および土壌中の微生物が必要とする空気や水分を通しやすくする管理作業である。
【0003】
この中耕除草作業では根切り又は引き抜き処理をした雑草を放置すると、降雨などで土壌が湿潤して雑草が活性して除草効果が低下するため、除草処理を行った雑草を土中に埋没させることが求められる。このためには、中耕除草時に土を反転させ、処理した雑草を土中に埋め込むことが必要である。
【0004】
従来、野菜等の作物が植え付けられた畑地の土壌の中耕作業と除草作業とを同時に行う中耕除草機として種々のものが提案されている。例えば、耕転機やトラック等の比較的大型の機械を用いて、土壌表層を攪拌して雑草を根こそぎ浮き上がらせる方法や、排気量の小さな原動機によって地面に対して平行に回転する回転刃によって雑草の茎を切断する小型の刈払機が知られている。
【0005】
前記した耕転機やトラック等の大型機械は、平坦で大規模な農耕地の除草や整地に適しているが、畑地や傾斜地の農耕地や、家庭菜園等に見られる小規模の農耕地には不適当である。また、小型の刈払機では、刈払機の操作に熟練を要し、作業者の負担が大きいという問題がある(特許文献1)。
【0006】
また、従来、果樹園で使用する中耕除草機では、果樹の枝が垂れ下がっていることが多いことから、機高の低い中耕除草機が求められている。このために、低い平型フレームにロータリ耕転部を取り付けた四輪キャスターを有する中耕除草機を、トラクターの後側方に配して牽引するものが提案されている(特許文献2)。
【0007】
また、水田除草機において、前後に2個並列した羽根車を枠体に回転自在に支持し、羽根車を回転させることで中耕および除草を行うものが提案されている(特許文献3,4)。
【0008】
図12は、2個並列した羽根車を備える中耕除草機の構成例を説明するための図である。
【0009】
図12において、中耕除草機101は、胴体103に複数の羽根部を設けた羽根車102を枠体に対して前後に設け、この羽根車102をエンジン104によって同方向に回転させることで前進させる。羽根車102の回転は、エンジン104側のスプロケット105と羽根車102側のスプロケット106を駆動チェーン108で駆動する。中耕除草機101の操作は、羽根車102の上方に取り付けたハンドル107によって行う。
【0010】
また、中耕除草機の本体に斜め上方に延びたアームを設け、アームの他端に設けたハンドルによって中耕除草機を操作する構成が提案されている(特許文献1,5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3626026号
【特許文献2】特許第3658447号
【特許文献3】特開昭63−14923号公報
【特許文献4】実開平3−56382号公報
【特許文献5】特開昭64−49460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
中耕除草機は、上記したように、水田、畑地、果樹園等の種々の農耕地に適した形態のものが提案されている。
【0013】
本願発明の中耕除草機は、柑橘畑等の低木の果樹園などの、果樹の枝が垂れ下がっていることが多い作業環境に適した中耕除草機に関わるものである。果樹園に適した中耕除草機として前記特許文献2で示した中耕除草機が知られている。この中耕除草機では、低い平型フレームをトラクターで牽引することによって中耕除草機の機高を低くし、これによって果樹の枝を避けるようにしている。
【0014】
しかしながら、この中耕除草機はトラクターで牽引する構成であるため、果樹の樹高はトラクターの車高よりも高く、かつ、隣接する果樹間の距離はトラクターの車幅よりも広いことが必要である。一方、本願発明の中耕除草機は、柑橘畑等の低木の果樹園などのトラクターの導入が困難な作業環境に適した中耕除草機であって、人手によってアーム操作によって歩行しながら中耕除草作業を行うものである。そのため、従来提案される中耕除草機による中耕除草作業を行うことは困難である。
【0015】
また、特許文献1に示される中耕除草機によれば、トラクターの導入が困難な柑橘畑等の低木の果樹園においても、作業者が中耕除草機を持ち込むことで操作することが可能となる。しかしながら、特許文献1の中耕除草機は、本体から斜め上方に延びたアームの先端に設けたハンドルによって操作する構成であるため、このアームが果樹の枝に移動が妨げられる。また、前進後退の切り換えや進行方向の変更では作業者自身の労力によって中耕除草機を操作しなければないため、操作性が悪く、作業者に大きな負担を課すという問題がある。
【0016】
したがって、従来柑橘畑等の低木の果樹園に好適な中耕除草機は提案されておらず、歩行型の中耕除草機において、枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境に適し、操作性が良好で、作業者の負担が小さな中耕除草機が求められている。
【0017】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、歩行型の中耕除草機において、枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境に好適で、操作性が良好で、作業者の負担が小さな中耕除草機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、中耕除草機の本体に、前後に設けた中耕爪輪と、本体の下部に設けた移動制御部とを備え、枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境であっても、移動制御部によって、前後の中耕爪輪において使用する中耕爪輪を選択することによって、中耕除草機の前進速度の制御、前進後退の進行方向の制御を容易とし、これによって、中耕除草機の操作性を向上させ、作業者の負担を軽減する。
【0019】
本願発明の中耕除草機は、アーム操作により歩行と共に進行しながら土を中耕することによって除草を行う中耕除草機において、本体の前方に前方中耕爪輪を回転自在に設けると共に、本体の後方に後方中耕爪輪を回転自在に設け、さらに、本体の移動を制御する移動制御部を備える。
【0020】
本願発明の前方中耕爪輪と後方中耕爪輪は、回転方向を互いに逆方向とし、前方中耕爪輪は本体を前方に前進させる方向に回転し、後方中耕爪輪は本体を後方に後退させる方向に回転し、さらに、前方中耕爪輪の回転速度を後方中耕爪輪の回転速度よりも高速とする。
【0021】
また、本願発明の移動制御部は、本体の下方側において前後方向に延びると共に下方に湾曲した湾曲底部を有する弧状制御帯を備える。さらに、この弧状制御帯の湾曲底部には、弧状制御帯に対して速度制御爪を出し入れ自在に備える。
【0022】
中耕除草機を前方に進行させるときには、前方中耕爪輪と後方中耕爪輪の両中耕爪輪によって土壌を掻く。このとき、前方中耕爪輪と後方中耕爪輪は互いに回転方向が逆方向であるが、前方中耕爪輪の回転速度が後方中耕爪輪の回転速度よりも高速であるため、中耕除草機の本体は前方に進行する。
【0023】
この前方への進行において、弧状制御帯から速度制御爪が土壌中に突出する。速度制御爪は土壌中に突出することによって、土壌に対する抵抗を高めて本体の進行速度を低減させる。これによって、前方中耕爪輪が土壌中で空回転することを防いで、前方中耕爪輪による中耕動作および除草動作を奏さしめる。
【0024】
一方、中耕除草機を後方に後退させるときには、前方中耕爪輪を土壌から上方に上げて離して後方中耕爪輪によって土壌を掻く。これによって、中耕除草機の本体は後退する。この後退時の体勢は、ハンドルを押し下げることによって湾曲底部および後方中耕爪輪を支点として前方中耕爪輪を土壌から上方に離すことで行うことができる。
【0025】
この後退において、進行時には土壌中に突出していた速度制御爪は弧状制御帯内に収納される。中耕除草機の後退は、中耕除草機の位置を変更したり、中耕除草機の進行方向を変更する際に行う操作であるため、このときには中耕処理および除草処理を行う必要はない。そのため、進行時に土壌中に突出していた速度制御爪を弧状制御帯内に収納することによって、土壌に対する抵抗を無くして後退動作を容易とする。
【0026】
また、本願発明の移動制御部は、その形状を、本体の前後方向に延びると共に下方に湾曲した湾曲底部を有した弧状制御帯とすることによって、本体の前後方向の進行動作を安定させると共に、湾曲底部を揺動中心とし、湾曲底部を通る水平方向の軸の回りで前後に揺動させる。これによって、本体を前後に揺動させて移動方向の切り換えを容易に行うことができる。
【0027】
また、本願発明の中耕除草機は、本体とハンドルとの間をつなぐアームを備える。本願発明のアームは、本体から水平方向に延びた水平部とこの水平部とハンドルとをつなぐ傾斜部とを備える。
【0028】
アームは本体から水平方向に延びる水平部を備えるため、枝の高さが低い果樹園であっても、アームが枝に遮られることがないため、本体を容易に移動させることができる。また、この状態から本体を戻す場合にも、単に、ハンドルを下方に押し下げる操作によって前方中耕爪輪を上方に浮かせた状態とするだけで、本体を後退させることができる。
【0029】
また、本発明の弧状制御帯は、進行方向の前方の位置に前方に突出する少なくとも1つの突出部を有する。この突出部は、前進時において土壌中に突入して土壌塊を破砕し、本体の進行を容易とする。
【0030】
本願発明の態様によれば、前後の中耕爪輪と移動制御部とを設け、枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境であっても、中耕除草機の前進速度の制御、前進後退の進行方向の制御を容易とすることができる。これによって、中耕除草機の操作性を向上させ、作業者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明の中耕除草機によれば、枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境に好適で、操作性が良好で、作業者の負担が小さな中耕除草機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の構成例を説明するための斜視図である。
【図2】本願発明の本体の断面図である。
【図3】本願発明の本体の断面図である。
【図4】本願発明の中耕爪輪および制御部を説明するための斜視図である。
【図5】本願発明の中耕爪輪の取り付けを説明するための斜視図である。
【図6】本願発明の中耕除草機の前進後退を切り換える状態を説明するための斜視図である。
【図7】本願発明の中耕除草機の前進後退を切り換える状態を説明するための制御部の断面図である。
【図8】本願発明の制御部の動作を説明するための斜視図である。
【図9】本願発明の中耕除草機の進行方向を変更する状態を説明するための斜視図である。
【図10】本願発明の中耕除草機の進行方向を変更する状態を説明するための平面図である。
【図11】本願発明の中耕除草機の操作状態を説明するための図である。
【図12】2個並列した羽根車を備える従来の中耕除草機の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、本発明の中耕除草機の構成例について、図1〜図11を用いて説明する。
【0034】
図1は本願発明の構成例を説明するための斜視図であり、図2は本願発明の本体の断面図であり、図3は本願発明の本体の断面図であり、図4は本願発明の中耕爪輪および制御部を説明するための斜視図であり、図は本願発明の中耕爪輪の取り付けを説明するための斜視図であり、図6は本願発明の中耕除草機の前進後退を切り換える状態を説明するための斜視図であり、図7は本願発明の中耕除草機の前進後退を切り換える状態を説明するための制御部の断面図であり、図8は本願発明の制御部の動作を説明するための斜視図であり、図9は本願発明の中耕除草機の進行方向を変更する状態を説明するための斜視図であり、図10は本願発明の中耕除草機の進行方向を変更する状態を説明するための平面図であり、図11は本願発明の中耕除草機の操作状態を説明するための図である。
【0035】
[中耕除草機の構成]
はじめに、本願発明の中耕除草機の構成について説明する。図1は本願発明の構成例を説明するための斜視図である。
【0036】
図1において、本願発明の中耕除草機1は、土壌を中耕および除草する本体10と、本体10の前進後退および進行後退の方向を操作するためのハンドル30と、本体10とハンドル30とをつなぐアーム20とを備える。
【0037】
本体10は、土壌を中耕し除草する中耕爪部2と、本体10の移動を制御する移動制御部11とを備える。中耕爪部2は、本体10の前方位置に回転自在に設けられた前方中耕爪輪2Aと、本体10の後方位置に回転自在に設けられた後方中耕爪輪2Bとを備える。本体10の材質は軽金属を用いることができる。
【0038】
前方中耕爪輪2Aおよび後方中耕爪輪2Bは、本体10の上方に設けた駆動部6によって駆動する。駆動部6と前方中耕爪輪2Aの駆動軸3Aおよび後方中耕爪輪2Bの駆動軸3Bと間には伝達部7(図1には示していない)が設けられ、前方中耕爪輪2Aと後方中耕爪輪2Bの回転方向を互いに逆方向とし、前方中耕爪輪2Aの回転速度を後方中耕爪輪2Bの回転速度よりも高速とする。
【0039】
前方中耕爪輪2Aは本体10を前方に進ませる方向に回転し、後方中耕爪輪2Bは本体10を後方に後退さる方向に回転する。したがって、前方中耕爪輪2Aと後方中耕爪輪2Bの回転方向は、互いに逆方向となる。
【0040】
駆動部6は、内燃機関によるエンジンの他に、バッテリ駆動される電動モータを用いることもできる。
【0041】
また、移動制御部11は、本体10の下方に設けられ、本体10の前後方向に延びる弧状制御帯12を備える。弧状制御帯12は下方に湾曲した湾曲底部13を有した形状としている。この弧状制御帯12は、湾曲底部13において、速度制御爪15を弧状制御帯12に対して出し入れ自在に備える。速度制御爪15(図示していない)は、前進時に弧状制御帯12内から土壌中に突入し、後退時に土壌から弧状制御帯12内に収納される。この速度制御爪15は、土壌に対して抵抗する面積を増やして本体10の進行速度を制御する。
【0042】
弧状制御帯12の進行方向の前方位置には、進行方向に向かって突出する突出部17を備える。この突出部17は、本体10が前方に進行する際に、土壌中の土塊に突入して土塊を破砕し、本体10の進行を容易とする。突出部17は、ボルト等の棒状体あるいは先端が細い錐状体を弧状制御帯12の前方位置にねじ込みあるいは埋め込むことによって取り付けることができる。
【0043】
本体10は土除部8を前後に位置に備え、前方中耕爪輪2Aや後方中耕爪輪2Bが回転した際に、付着した土壌が飛び散ることを防ぐ。
【0044】
本体10の後方には、アーム20の一端がアーム回動部21によって所定の回動角度位置に調整し固定することができる。アーム20は、本体10と同レベルの高さでほぼ水平方向に延びる水平部20aと、この水平部20aとハンドル30との間をつなぐ斜め上方に向かって延びる傾斜部20bとによって形成される。水平部20aは、柑橘類の果樹園での中耕除草作業に適した長さとすることができる。
【0045】
水平部20aの高さは本体10とほぼ同じであるため、柑橘類の果樹等のように枝が低い位置に伸びる場合であっても、枝に遮られることなく操作することができる。
【0046】
また、ハンドル30には、駆動部6の駆動状態をコントロールする、燃料増減用のレバー、クラッチレバー(図示していない)を設けることができる。なお、駆動部6の駆動を開始するメインスイッチは、ハンドル30あるいは駆動部6の本体側に設けてもよく、エンジン駆動による場合にはチョークや始動操作部は駆動部6の本体側に設けることができる。
【0047】
次に、本願発明の中耕除草機が備える中耕爪部2および移動制御部11について、図2,3の断面図、図4,図5の斜視図を用いて説明する。なお、図2に示す断面図は本体10の前後方向の断面図を示し、図3に示す断面図は図2の断面図中のA,B,Cの部分における横方向の断面図を示している。図3(a)は図2の断面図の"A"の部分の断面図を示し、図3(b)は図2の断面図の"B"の部分の断面図を示し、図3(c)は図2の断面図の"C"の部分の断面図を示している。
【0048】
本体10は、中耕爪部2と移動制御部11とを備える。中耕爪部2は、本体10の前方位置に回転自在に取り付けられると共に駆動部6によって回転駆動する前方中耕爪輪2Aと、本体10の後方位置に回転自在に取り付けられると共に駆動部6によって回転駆動する後方中耕爪輪2Bとを備える。また、移動制御部11は、弧状制御帯12および弧状制御帯12の湾曲底部13に設けられた速度制御爪15を備える。
【0049】
前方中耕爪輪2Aは、駆動パイプ4Aを介して取り付けられた駆動軸3Aによって回転自在に軸支され、伝達部7を介して駆動部6から伝えられた駆動力によって回転駆動される。また、後方中耕爪輪2Bは、駆動パイプ4Bを介して取り付けられた駆動軸3Bによって回転自在に軸支され、伝達部7を介して駆動部6から伝えられた駆動力によって回転駆動される。
【0050】
伝達部7は駆動部6で発生した駆動の回転速度と回転方向を調整し、前方中耕爪輪2Aと後方中耕爪輪2Bの回転方向を互いに逆方向とすると共に、前方中耕爪輪2Aの回転速度を後方中耕爪輪2Bの回転速度よりも高速とする。伝達部7は、例えばギヤ機構によって構成することができる。また、伝達部7はクラッチ機構を備えることができ、ハンドル30に設けたクラッチレバーを操作することによって、駆動部6から駆動軸への伝達を制御することができる。このクラッチレバーの操作によって、中耕爪部2による前進あるいは後退の駆動動作と、停止動作とを切り換えることができる。
【0051】
前方中耕爪輪2Aおよび後方中耕爪輪2Bには、その外周部分に周方向に沿って複数の爪部2a,2bが設けられている。この爪部2a,2bは、前方中耕爪輪2Aおよび後方中耕爪輪2Bが回転することによって、土壌を攪拌して中耕する他、雑草を除草する。
【0052】
前方中耕爪輪2Aの爪部2aは、本体10を前方に移動する方向に回転することによって中耕処理および除草処理を行う。図2において、左方を本体10の進行方向とした場合には、前方中耕爪輪2Aは反時計方向に回転する。
【0053】
一方、後方中耕爪輪2Bの爪部2bは、本体10を後方に移動する方向に回転することによって、主に本体10を後退させる。図2において、後方中耕爪輪2Bは時計方向に回転する。
【0054】
また、前方中耕爪輪2Aの回転速度は、後方中耕爪輪2Bの回転速度よりも高速とする。例えば、前方中耕爪輪2Aの回転速度を後方中耕爪輪2Bの回転速度よりも約3倍の速度とする。これによって、前方中耕爪輪2Aおよび後方中耕爪輪2Bが共に土壌中にある場合には、回転速度の速い前方中耕爪輪2Aの駆動によって、本体10は前方に前進する。また、後退は、前方中耕爪輪2Aを土壌中から上方に上げて離し、後方中耕爪輪2Bのみを土壌中で回転させることで行う。
【0055】
図3(a)および図4において、弧状制御帯12を挟んだ両側の位置に、それぞれ2個の前方中耕爪輪2Aを配置する。したがって、前方には4個の前方中耕爪輪2Aを備えることになる。前方中耕爪輪2Aを駆動軸3Aに固定し、駆動軸3Aを伝達部7に対してジョイント5を介して連結する。ジョイント5は、伝達部7から駆動を伝達すると共に、前方中耕爪輪2Aからの衝撃が伝達部7に伝わらないように緩衝部に役目を成している。
【0056】
移動制御部11が備える弧状制御帯12は、本体10の前後方向に延びる部分と、ほぼ中央部において下方に膨出させた湾曲底部13とを備える。前後方向に延びる部分は、本体が進行する際の直進性を向上させる。
【0057】
また、湾曲底部13は、本体10が前進する際の速度を制御する速度制御爪15を内部に収納し、前進時に外部に突出させ、後退時に内部に収納自在としている。速度制御爪15は、回転体14に径方向に向かって突出させて設けられ、土壌中に突出させることで土壌との抵抗を増加させて、本体10の速度を制限する。本体10の速度を制限することで、中耕処理および除草処理の効率を向上させることができる。この速度制御爪15がない場合には、爪部2aは土壌を攪乱させることなく進行し、本体10は前方中耕爪輪2Aの回転力によって単に前進するのみとなる。速度制御爪15を土壌中に突出させることで、本体10の速度は制限され、爪部2aは土壌を攪乱させることができる。
【0058】
このとき、速度制御爪15に当たった土壌が、弧状制御帯12内に形成した空間部に土壌が入りこまないように、回動体14に蓋部16を設ける。
【0059】
これによって、本体10が前進している際には、速度制御爪15は土壌中に突出して抵抗となって本体10の進行速度を制限し、また、蓋部16は弧状制御帯12の空間部に蓋をする。
【0060】
中耕除草の動作は本体10が前進する際に行う。一方、本体10が後退する際には行わない。そのため、後退時に速度制御爪15を土壌中に突出させた場合には、抵抗となって後退速度が低下する。そのため、後退時には速度制御爪15は抵抗とならないようにする必要がある。そこで、本願発明の速度制御爪15は、回動体14を所定角度分だけ回動させることによって弧状制御帯12内に収納する構成とする。弧状制御帯12内への収納は、本体10が後退する際に、速度制御爪15が土壌から抵抗を受けることによって、格別に駆動機構を設けることなく自動で行うことができる。
【0061】
図3(b)、(c)において、弧状制御帯12内の湾曲底部13の位置に空間部を形成し、この空間部内に回動体14を回転自在に設ける。回動体14の外周部分には、速度制御爪15と蓋部16とを所定の角度を開けて配置する。この配置角度は、速度制御爪15が土壌中に突出した際に、蓋部16が空間部を閉じる角度に設定される。図3(b)は、本体10の前進時において速度制御爪15が土壌中に突出した状態を示し、図3(c)は、本体10の後退時において速度制御爪15が弧状制御帯12内に収納された状態を示している。
【0062】
図3(d)および図4において、弧状制御帯12を挟んだ両側の位置に、それぞれ1個の後方中耕爪輪2Bを配置する。後方中耕爪輪2Bを駆動軸3Bに固定し、駆動軸3Bを伝達部7に対してジョイント5を介して連結する。ジョイント5は、伝達部7から駆動を伝達すると共に、後方中耕爪輪2Bからの衝撃が伝達部7に伝わらないように緩衝部に役目を成している。
【0063】
中耕爪部2は駆動パイプ4を介して駆動軸3に取り付けられる。図5は中耕爪輪2の取り付け状態を説明するための斜視図である。中耕爪部2は駆動パイプ4に設けられたフランジ4aに対してボルト4bおよびナット4cによって固定される。駆動軸3は、駆動パイプ4の軸方向に形成された中空部内に通され、図示しないネジ機構等の固定手段によって駆動パイプ4に固定される。
【0064】
この構成によれば、中耕爪輪2を駆動パイプ4のフランジ4aに固定することによって駆動軸3に取り付けることができる。本発明は、中耕爪部2を駆動軸3に対して直接取り付ける構成に代えて、中耕爪部2を駆動パイプ4のフランジ4aに固定する構成とすることによって、中耕爪部2の交換を容易に行うことができる。中耕爪部2を駆動軸3に直接取り付ける構成では、中耕爪部2と駆動軸3との一体構造を交換する必要があるため、交換作業が複雑となって作業時間が長引くという問題がある他、駆動軸3の交換も必要となるためメンテナンス費用が嵩むという問題がある。
【0065】
本発明のように、中耕爪部2を駆動パイプ4に交換可能とする構成とすることによって、交換作業を簡易にすることができ、また、破損した中耕爪部2のみを交換することができるためメンテナンス費用を抑制することができるという効果を奏することもできる。
【0066】
[中耕除草機の前進後退を切り換える動作]
次に、本願発明の中耕除草機の前進後退を切り換える動作について、図6〜図8を用いて説明する。
【0067】
本願発明の中耕除草機1は、ハンドル30の操作によって前進と後退とを切り換えることができる。図6において、図6(a)は中耕除草機1の前進状態を示し、図6(b)は中耕除草機1の後退状態を示している。
【0068】
中耕除草機1を前進させる場合には、本体10が土壌に対してほぼ平らな状態となるようにハンドル30を保持する。本体10が土壌に対してほぼ平らな状態であるときには、前方中耕爪輪2Aと後方中耕爪輪2Bの両方の中耕爪輪は土壌中に入り、前記したように前方中耕爪輪2Aと後方中耕爪輪2Bの速度差によって前進する。
【0069】
この前進状態において、ハンドル30を押し下げると、本体10は弧状制御帯12の湾曲底部13を支点にして後方に傾く。更に、ハンドル30を押し下げると、本体10は支点を湾曲底部13から後方中耕爪輪2Bに移動して後方に傾く。
【0070】
この本体10の後方への傾斜動作によって、前方中耕爪輪2Aは土壌中から離れ、後方中耕爪輪2Bのみが土壌中に入り込むことになる。後方中耕爪輪2Bは、本体10を後方に向かって移動する方向(図中において時計回りの方向)に回転しているため、本体10はこの後方中耕爪輪2Bの回転によって後退する。
【0071】
図7は、前方中耕爪輪2A、後方中耕爪輪2B、および移動制御部11を説明するための断面図であり、図中の左方を本体10の進行方向とし、右方を本体10の後退方向としている。
【0072】
図7(a)は、前方中耕爪輪2A、後方中耕爪輪2B、および移動制御部11の位置関係を示している。ここで、移動制御部11は、回動体14に設けた速度制御爪15と蓋部16とを備え、図7(a)では複数の回動の角度位置を示している。なお、回動体14は、図示しないストッパ、又は蓋体16を弧状制御帯12の内部に設けた段部に当接させる構成によって、速度制御爪15と蓋部16とが所定角度位置まで回動して停止するようにしている。
【0073】
図7(b)は本体10が前進する際の状態を示している。前進時には、前方中耕爪輪2Aと後方中耕爪輪2Bとは共に土壌中にあり、前方中耕爪輪2Aが後方中耕爪輪2Bよりも高速で回転することによって前進する。このとき、速度制御爪15は、土壌中に突出した状態となり、土壌から抵抗を受けることによって本体10の進行速度を制限し、前方中耕爪輪2Aが空回りすることを防ぐ。また、蓋部16は、弧状制御帯12内に形成した空間部を閉じて、内部に土壌が侵入することを防いでいる。図8(a)はこのときの速度制御爪15の状態を示している。
【0074】
図7(c)は本体10が後退する際の状態を示している。後退時には、前方中耕爪輪2Aは土壌中から上方に移動して離れ、後方中耕爪輪2Bは土壌中にある。後方中耕爪輪2Bの回転方向は本体10を後退させる方向(図中において時計回りの方向)に回転しているため、本体10はこの後方中耕爪輪2Bの回転によって後退する。このとき、速度制御爪15は、土壌によって押されて弧状制御帯12内に形成した空間部内に収納される。図8(b)はこのときの速度制御爪15の状態を示している。
【0075】
また、弧状制御帯12の湾曲底部13を支点とする傾きを調整して、前方中耕爪輪2Aによる前進の駆動力と、後方中耕爪輪2Bによる後退の駆動力をほぼ釣り合わせることによって、本体10を一定の位置に止まらせる操作を行うこともできる。
【0076】
[中耕除草機の進行方向を変更する動作]
次に、本願発明の中耕除草機の進行方向を変更する動作について、図9、図10を用いて説明する。
【0077】
本願発明の中耕除草機1は、ハンドル30の操作によって進行方向を変更することができる。図9において、中耕除草機1の前進状態を濃線の実線で示し、中耕除草機1の進行方向を変更する状態を淡線の破線で示している。
【0078】
中耕除草機1の進行方向を変更させる場合には、ハンドル30を左右に移動させ、本体10に対するアーム20の角度を変更することで行う。アーム20は本体10に対してアーム回動部21によって回動自在であり、所定の回動角度位置で固定することができるため、ハンドル30を左右に移動させるだけで、本体10の進行方向を変更することができる。
【0079】
図10はアーム回動部21の一例、および本体10とアーム20との関係を示している。図10(b)はアーム回動部21の一例を示している。アーム回動部21は、アーム20の水平部20aの一端が固定された回動部21aを備え、本体10の後方部分に取り付けられる。また、アーム回転部21は、ハンドル21bを備え、回動部21aを本体10に対して締め付けるあるいは緩める固定機構を有している。ハンドル21bを緩めることによって、回動部21bは回転自在とし、アーム水平部20aの本体10に対する回転角度位置を調整自在とする。また、ハンドル21bを締め付けることによって、回動角度位置の調整を行ったアーム水平部20aを所定の角度位置に固定する。
【0080】
図10(b)は、本体10を直進させる場合を示し、本体10とアーム20とを一直線上となるようにハンドル30を操作する。また、図10(c)は、本体10の進行方向を右方向に変更させる場合を示し、ハンドルを本体10に対して右方に移動させる操作を行い、図10(d)は、本体10の進行方向を左方向に変更させる場合を示し、ハンドルを本体10に対して左方に移動させる操作を行う。
【0081】
図11は本願発明の中耕除草機の使用状態の例を示している。中耕除草機1は、本体10側においては、中耕爪輪を挟んで伝達部を配置する構成とし、アームを本体10とほぼ同レベルの高さで水平方向に延長させた後にハンドルに向かった斜めに傾斜させる構成とすることによって、低木の果樹の枝に妨げられることなく移動させることができる。
【0082】
本願発明の態様によれば、前後の中耕爪輪と移動制御部とを設け、枝の高さが低く、樹木間の距離が狭い作業環境であっても、中耕除草機の前進速度の制御、前進後退の進行方向の制御を容易とすることができる。
【0083】
中耕除草機の寸法例について、図3、図9を用いて説明する。
【0084】
図9において、本体10の前後方向の長さは400mm、本体10の横方向の幅は300mm、アーム20の水平部20aの長さは400mm、アーム20の傾斜部20bの水平方向の長さは300mm、アーム20の傾斜部20bの垂直方向の高さは最下部から950mmである。また、本体10上に設けられた駆動部6の前後方向の長さは350mmであり、本体10の後方部分の前後方向の長さは140mmである。
【0085】
また、本体10と爪部2a,2bの下端との間は250mmであり、本体10と速度制御爪15が土壌中に垂下してときの下端との間は320mmである。また、ハンドル30の2つの握る部分の間の距離は420mmである。
【0086】
図3において、弧状制御帯12の幅は60mm、4個の前方中耕爪輪2Aを配置した際の設置幅は500mm、爪部2の広がり幅は70mmである。なお、この寸法例は一例であって、この数値に限られるものではない。
【0087】
本願発明の態様によれば、中耕除草機の操作性を向上させ、作業者の負担を軽減することができる。
【0088】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の中耕爪輪は、柑橘果樹園に限らず、畑地の耕作に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 中耕除草機
2 中耕爪部
2A 前方中耕爪輪
2B 後方中耕爪輪
2a,2b 爪部
3A 駆動軸
3B 駆動軸
4 駆動パイプ
4a フランジ
4b ボルト
4c ナット
5 ジョイント
6 駆動部
7 伝達部
8 土除部
9 カバー
10 本体
11 移動制御部
12 弧状制御帯
13 湾曲底部
14 回動体
15 速度制御爪
16 蓋部
20 アーム
20a 水平部
20b 傾斜部
21 アーム回動部
21a 回動部
21b ハンドル
30 ハンドル
101 中耕除草機
102 羽根車
103 胴体
104 エンジン
105 スプロケット
106 スプロケット
107 ハンドル
108 駆動チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行しながら土を中耕することによって除草を行う中耕除草機において、
本体の前方に回転自在に設けられた前方中耕爪輪と、
本体の後方に回転自在に設けられた後方中耕爪輪と、
前記前方中耕爪輪と後方中耕爪輪との間において本体の下方位置に設けられた、本体の移動を制御する移動制御部とを備え、
前記前方中耕爪輪と後方中耕爪輪の回転方向を互いに逆方向とし、
前記前方中耕爪輪の回転速度は前記後方中耕爪輪の回転速度よりも高速とし、
前記移動制御部は、
本体の前後方向に延び本体の下方に湾曲した湾曲底部を有する弧状制御帯と、
前記弧状制御帯の湾曲底部において、弧状制御帯に対して出し入れ自在に設けた速度制御爪とを有し、
当該速度制御爪は、前進時に弧状制御帯内から土中に突入し、後退時に弧状制御帯内に収納して本体の進行速度を制御することを特徴とする、中耕除草機。
【請求項2】
前記本体とハンドルとの間をつなぐアームを備え、
前記アームは、本体から水平方向に延びた水平部と当該水平部と前記ハンドルとをつなぐ傾斜部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の中耕除草機。
【請求項3】
前記弧状制御帯は、進行方向の前方の位置に前方に突出する少なくとも1つの突出部を有し、前進時において土壌中に突入して土壌塊を破砕することを特徴とする、請求項1に記載の中耕除草機。

【図3】
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【図10】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−259367(P2010−259367A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112670(P2009−112670)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(309014643)
【Fターム(参考)】