説明

乗用作業車

【課題】車体の走行に伴って車体周囲の作業対象物に対する作業を行う電動式作業デバイスの作業負荷の変動による不都合を低減する乗用作業車を提案する。
【解決手段】駆動車輪ユニットを走行駆動するための走行用電動機ユニットと、目標走行速度を設定するために運転者によって操作される速度設定操作ユニットと、車体の走行に伴って車体周囲の作業対象物に対する作業を行う作業デバイスを駆動するための作業用電動機と、作業用電動機の負荷を評価する作業負荷評価部によって評価された作業用電動機の負荷がしきい値より高い異常負荷である場合に目標走行速度より低い例外速度で走行用電動機ユニットを制御する例外速度制御を実行する例外速度制御部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 運転座席を備えた車体と、当該車体を支持する駆動車輪ユニットと、前記駆動車輪ユニットを走行駆動するための走行用電動機ユニットと、前記車体の目標走行速度を設定するために運転者によって操作される速度設定操作ユニットと、前記目標走行速度に基づいて前記走行用電動機ユニットを制御する走行制御部と、前記車体の走行に伴って車体周囲の作業対象物に対する作業を行う作業デバイスと前記作業デバイスを駆動するための作業用電動機とを有する作業ユニットと、前記作業用電動機を制御する作業制御部を備えた乗用作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような乗用作業車の一つとして、作業ユニットとして芝草を刈り取るモーアユニットを備えた乗用電動芝刈機がある。乗用電動芝刈機には、左右の駆動後輪への回転動力及びモーアユニットの芝刈用ブレードへの回転動力を電動モータによって行い、その電動モータの電源であるバッテリの充電をエンジンによって行うハイブリッド車両式と、エンジンを備えない電気車両式とがある。
【0003】
ハイブリッド車両式の乗用電動芝刈機は、例えば、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された乗用電動芝刈機では、左右の駆動後輪がそれぞれ独立して駆動制御される走行用電動モータが割り当てられており、左右の駆動後輪の回転速度が異ならせることでスムーズな旋回を実現することを意図している。芝刈用ブレードを回転させる電動モータは、座席の近くに設けられるモーア起動スイッチのオン・オフによって制御され、シートスイッチからの信号により、座席に運転者が着座していないと芝刈用ブレードを回転させないことが記載されているだけで、走行と芝刈との連係した制御は記載されていない。
【0004】
電気車両式の乗用電動芝刈機は、特許文献2に記載されている。この特許文献2に記載された乗用電動芝刈機では、後輪であり主駆動輪である左右車輪の駆動源、前輪である左右キャスタ輪の走行用駆動源及び操向用駆動源、芝刈機を構成する芝刈回転工具である芝刈用ブレードの駆動源としていずれも電動モータが用いられている。しかしながら、この乗用電動芝刈機においても、芝刈用ブレードの回転制御に関しては詳しく開示されておらず、芝刈用ブレードと走行用電動モータとの連係は記載されていない。
【0005】
人が歩きながら操作する、歩行型のバッテリ駆動式電動芝刈機では、バッテリが小さく、その容量が少ないことから、電力を効率良く利用して芝刈作業を長時間行えるように工夫されたものがある。そのような電動芝刈機として、例えば特許文献3に記載されたものでは、出力軸に刈刃を取付けた直流電動モータにバッテリを接続し、電動モータの回転数を、重負荷時でも刈刃を正常に機能させ得る最低回転数もしくはそれに近い回転数に略一定に維持すべく、負荷の増・減に応じて電動モータへの供給電流を増・減させる制御ユニットが電動モータ及びバッテリ間に接続されている。この制御ユニットは、重負荷時には電動モータの電力消費を芝刈りに必要な最小限に抑え、低負荷時には電動モータの回転数上昇を抑制して必要以上の電力消費を抑え、また負荷変動に対する消費電力の変化を少なくしている。しかしながら、乗用芝刈機では、モータやエンジンによって歩行速度よりはかなり速い走行速度で走行しながら芝刈り作業を行うものである。また、走行速度の可変範囲が大きく、走行速度によって作業負荷である芝刈り負荷が大きく変動し、その結果、作業結果が変化してしまうことを考慮すると、歩行型電動芝刈機における芝刈り制御をそのまま適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−255840号公報(段落番号〔0027−0089〕、図3)
【特許文献2】特開2010−184636号公報(段落番号〔0036−0117〕、図10)
【特許文献3】特開平9−201126号公報(段落番号〔0006−0030〕、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記実情に鑑み、本発明は、車体の走行に伴って車体周囲の作業対象物に対する作業を行う電動式作業デバイスの作業負荷の変動による不都合を低減する乗用作業車を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による乗用作業車は、運転座席を備えた車体と、当該車体を支持する駆動車輪ユニットと、前記駆動車輪ユニットを走行駆動するための走行用電動機ユニットと、前記車体の目標走行速度を設定するために運転者によって操作される速度設定操作ユニットと、前記目標走行速度に基づいて前記走行用電動機ユニットを制御する走行制御部と、前記車体の走行に伴って車体周囲の作業対象物に対する作業を行う作業デバイスと前記作業デバイスを駆動するための作業用電動機とを有する作業ユニットと、前記作業用電動機を制御する作業制御部と、前記作業用電動機の負荷を評価する作業負荷評価部と、前記作業負荷評価部によって評価された前記作業用電動機の負荷がしきい値より高い異常負荷である場合に前記目標走行速度より低い例外速度で前記走行用電動機ユニットを制御する例外速度制御を実行する例外速度制御部とを備えている。
【0009】
作業デバイスを電動機で駆動する場合、作業負荷が増大すると電動機の回転数の低下、つまり作業デバイスの作業品質の低下が生じうるが、運転者が作業デバイスを直接監視できるような構造となっていなければ、そのことを運転者が気づくのは困難である。
しかしながら、上述した本発明の構成によれば、速度設定操作ユニットによって設定された目標走行速度で走行作業中において作業用電動機にかかる負荷が作業負荷評価部によって評価され、さらにその評価された作業用電動機の負荷がしきい値より高い異常負荷である場合には、目標走行速度より低い例外速度で前記走行用電動機ユニットを制御する例外速度制御が実行される。これにより、乗用作業車の走行速度が低速になり、走行に伴って車体周囲の作業対象物に対する作業を行う作業デバイスの作業負担が低下し、作業デバイスの作業品質が復活する。
【0010】
このような車体の低速化は、車体側で自動的に行われるよりは、運転者の意識の下で行った方がよい場合は少なくない。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記異常負荷の発生を運転者に報知する報知部が備えられ、前記報知部による前記異常負荷の発生の報知にも関わらず、前記異常負荷が解消されない場合に前記例外速度制御が実行されるように構成されている。この構成では、作業デバイスの作業品質の低下を避けるための車体の低速化を自動的に行う前に、その必要性を運転者に報知し、それにも関わらず、運転者が気づかずにそのまま運転を続けた場合に、車体側で強制的に例外速度制御を実行して車速を低下させる。
【0011】
なお、例外速度制御の実行によって、速度設定操作ユニットの操作位置と、走行用電動機ユニットへの速度制御量との連係が遮断される。この連係を復活させるためには、運転者に現状の車速と速度設定操作ユニットの操作位置のずれとその修正を認識させる必要がある。このために、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記例外速度制御の実行にともなって、前記速度設定操作ユニットによる目標走行速度の値が前記例外速度に一致するまで前記速度設定操作ユニットによる目標走行速度はキャンセルされるように構成されている。この構成では、運転者が一旦速度設定操作ユニットを現状の車速である例外速度に対応する操作位置に操作することで初めて走行制御が運転者に戻されるので、運転者がそれまでの現状の車速と速度設定操作ユニットの操作位置のずれとその修正を認識することができる。
【0012】
作業用電動機にかかる負荷の原因は作業デバイスによる作業対象物に対する作業量であり、作業用電動機にかかった負荷の結果は作業用電動機への供給電流値又は前記作業用電動機の回転数に表れる。このためこれらの検出量に基づいて正常な作業負荷及び正常な作業負荷から外れた異常負荷を求めることができる。従って、作業用電動機にかかる負荷が正常かあるいは異常かを判定するしきい値は、推定される、正常な作業負荷時の検出量と異常負荷時の検出量との間の値をとればよい。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記しきい値は、走行作業中における、前記作業対象物に対する作業量と、前記作業用電動機への供給電流値又は前記作業用電動機の回転数との組み合わせから導出される負荷評価値に基づいて設定される。
【0013】
車体走行しながら回転ブレードを駆動することで芝生を整備していく乗用電動芝刈機による芝刈り作業では、例えば、芝生密集領域や刈り取り難い芝状態の領域に乗用電動芝刈機が入ることよって異常負荷が生じた場合、回転ブレードの回転数が低下し、刈り残しや仕上がり不備が生じるため、走行速度を低下させて、異常負荷から正常負荷に移行することが重要な課題である。このため、本発明を前記作業ユニットがモーアユニットで前記作業対象物は芝草となる乗用電動芝刈機に適用すると好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】作業ユニットに過剰負荷が生じた場合に目標走行速度より低い例外速度で車体を走行させる、本発明の制御原理を説明する模式図である。
【図2】本発明による乗用電動芝刈機の実施形態の一つを示す斜視図である。
【図3】乗用電動芝刈機の電気系統及び動力系統を示す系統図である。
【図4】モーアユニットの一例を示す斜視図である。
【図5】コントローラの機能ブロック図である。
【図6】芝刈り作業時の全体的な制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】作業機制御の概略的な流れを示すフローチャートである。
【図8】走行制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の具体的な構成を説明する前に、図1を用いて、本発明を特徴付けている、作業ユニットの作業用電動機にかかる負荷を評価して、所定のしきい値より高い異常負荷であると判定された場合に、その時点での速度設定操作ユニットの操作位置に基づいて設定される目標走行速度より低い例外速度で前記走行用電動機ユニットを制御する例外速度制御の基本原理を説明する。なお、ここでは、電動作業車は、作業ユニットとしてモーアユニットを車体に装備している乗用電動芝刈機であり、作業用電動機は芝草を刈り取る回転ブレードのためのモータ(ブレードモータ)である。
【0016】
まず、この乗用電動芝刈機を操縦して芝刈り作業を行う前に、初期処理として、モーアユニット(作業ユニット)のブレードモータ(作業用電動機)にかかっている負荷が異常負荷であるかそうでない(正常負荷)かを判定するためのしきい値が設定される。モーアユニットを用いた芝刈り作業では、モーアユニットから排出される刈草量が大きくなるとブレードモータの回転数が低下し、回転数を維持しようとするためにはブレードモータへの給電量を大きくすることになる。このことから、ブレードモータにかかる負荷と関係するパラメータとしては、
【0017】
(1)ブレードモータへの給電量;α1、
(2)ブレードモータの回転数;α2(この回転数は単位時間当たりの回転数であり、回転速度を意味する)、
(3)モーアユニットから排出される刈草量;α3(=回転ブレードによって刈り取られた芝草量)、
(4)走行に伴ってモーアユニットに入り込む推定芝草量;α4((3)と類似するが、モーアユニットの走行方向前方側に接触センサや画像センサを設けて芝草量を推定することになる)、
などが挙げられる。
【0018】
ブレードモータにかかる負荷が所定以上となると、単にブレードモータの回転数が低下するだけでなく、それに伴って作業品質、芝刈り作業では刈り残しや刈り面の不ぞろいといった不都合が生じる。従って、試し作業等において、異常負荷を判定するしきい値は、所定の作業品質が確保できている状況での上述した物理量;α1〜α4・・・の少なくとも1つに基づいて、しきい値:Lthを導出するとよい。その際、しきい値は、
Lth=f(α1and/orα2and/orα3and/orα4・・・)
で示すことができる。なお、しきい値を導出するために適切な状況が実現できない場合は、予め記憶されている、デフォルトのしきい値、例えば前回作業時のしきい値を設定するとよい。もちろん、前回と同条件で作業のときは、前回作業時のしきい値が流用される。
【0019】
しきい値の設定等の初期設定処理が終了すると、芝生場をブレードを回転させながら走行することで実際の芝刈り作業が始まる。芝刈り作業が始まると、上述した、ブレードモータの負荷に関係する物理量の少なくとも1つが検出され、その検出値を入力パラメータとして、作業時負荷評価値:L=f(α1and/orα2and/orα3and/orα4・・・)が導出される。
【0020】
この作業時負荷評価値:Lは、前もって設定されているしきい値と比較される。この比較において、
(1)L<=Lth、作業時負荷評価値がしきい値以下の場合、ブレードモータが負担のない状態であるとみなされる。もし、例外速度制御の実行中であれば、運転者に例外速度制御からの離脱を促してもよい。所定時間にわたってしきい値を大きく下回っている場合には、走行速度を速度設定操作ユニットの操作位置に基づいて設定される目標走行速度に自動的に合わせることで、例外速度制御を自動離脱する制御を採用してもよいし、また、作業に余裕があることを運転者に報知してもよい。
(2)L>Lth、作業時負荷評価値がしきい値を越えている場合、ブレードモータが作業品質に異常をきたすような高負荷(異常負荷)状態であるとみなし、強制的に走行速度を例外速度まで低下させる例外速度制御が実行される。その際、例外速度を、予め設定された走行速度としてもよいし、その時点での走行速度から所定割合だけ低い走行速度としてもよい。この例外速度への走行速度の低下は強制的に行われるので、低下後の走行速度(例外速度)と、速度設定操作ユニットの操作位置に基づいて設定される目標走行速度とは不一致となる。ここでも、強制的な例外速度制御への移行の前に、作業が高負荷となっているので走行速度の低下を促す旨の報知を運転者に行ってもよい。
なお、瞬間的な負荷変動によって例外速度制御が実行されるのは不都合であるので、上述した、負荷評価値:L>しきい値という比較結果が所定時間継続することを付帯条件にすることや、経時的に得られる負荷評価値:Lに対して移動平均などの手法で経時的な平均化を行って算定された平均作業時負荷評価値:Laveを作業時負荷評価値:Lに代えて用いることが好ましい。
【0021】
一旦実行された例外速度制御の終結、つまり例外速度制御から通常速度への離脱の好適な方法の1つは、運転者が速度設定操作ユニットの操作によって、その目標走行速度を実際の走行速度に一致するように低下させることによって実現することである。これにより、運転者に対して実際の走行速度と速度設定操作ユニットの操作による目標走行速度とが異なっていることを気づかせることができ、異常負荷の発生を意識させることができるという利点が得られる。
【0022】
次に、上述した例外速度制御の基本原理を採用した乗用作業車の具体的な実施形態を以下に説明する。ここでも、乗用作業車は作業ユニットとしてモーアユニットを車体に装備している乗用電動芝刈機として構成されており、作業用電動機は芝草を刈り取る回転ブレードのためのブレードモータである。
【0023】
そのような乗用電動芝刈機の概観が図2に斜視図として示されている。また、その電気系統図及び動力系統図が図3に模式的に示されている。この乗用電動芝刈機は、左右一対の遊転自在なキャスタ型前車輪1a,1bからなる前車輪ユニット1、左右一対の駆動型後車輪2a,2bからなる後車輪ユニット2、前車輪ユニット1と後車輪ユニット2とによって支持される車体10、車体10の後部に配置されたバッテリ20、バッテリ20の前方に配置された運転座席11、運転座席11の後方から立設された転倒保護フレーム12、前車輪ユニット1と後車輪ユニット2との間で車体10の下方空間に昇降リンク機構13を介して昇降可能に車体10から吊り下げられたモーアユニット3を備えている。後車輪ユニット2やモーアユニット3への給電は、ECUとも呼ばれるコントローラ5による制御に基づいて動作するインバータ4を介して行われる。
【0024】
運転座席11の前方には運転者の足載せ場であるフロアプレートが設けられており、そこからブレーキペダル14が突き出している。運転座席11の両側には、車体横断方向の水平揺動軸回りに揺動する左操縦レバー15aと右操縦レバー15bとからなる操縦ユニット(速度設定操作ユニット)15が配置されている。さらに、運転座席11の片側、ここでは左側に電気制御系のスイッチボタンやスイッチレバー等を有する電気操作パネル18が設けられている。
【0025】
左後車輪2aと右後車輪2bとをそれぞれ回転駆動するインホイールモータである左輪モータ21と右輪モータ22が装備されている。各モータ21,22はそれぞれ独立的にインバータ4を介して供給される電力量によってその回転速度が変化する。従って、左後車輪2aと右後車輪2bの回転速度を相違させることができ、この左右後車輪速度差によって乗用電動芝刈機の方向転換が行われる。
【0026】
このモーアユニット3は、図4に示すように、3枚ブレードのサイドディスチャージタイプであり、モーアデッキ30と、3枚の回転ブレード31a,32a,33aとを備えている。回転ブレード31a,32a,33aがそれぞれブレードモータ31,32,33によって回転駆動されること以外は、モーアユニット3それ自体は公知のものと類似している。従って、図示されていないが、モーアユニット3の外側には、4つのコーナに配置されたゲージ輪と、中央の前後に配置された接地ローラとを備えており、モーアデッキ30の内部には、各回転ブレード31a,32a,33aよりも前側に設けたバッフルプレートと、モーアデッキ30の内部後側に各回転ブレード31a,32a,33aの先端が描く回転軌跡の後部側に沿うように形成したバキュームプレートとが設けられている。なお、モーアデッキ30の右端には排出口38が形成されている。
【0027】
モーアデッキ30は、天井面と、この天井面の前縁部から下方向きに延出した前縦壁と、天井面後縁部から下向きに延出した後縦壁と、天井面の横端部から下向きに延出した横縦壁とによって構成されている。3枚の回転ブレード32aは、モーアデッキ30の内部に横方向に並列配置されている。モーアデッキ30の横方向での中央に位置する回転ブレード32aが、少し前方に偏位するように平面視で三角配置される。回転ブレード31aは、排出口38から最も離れて存在し、且つ刈草流動方向での最上手に位置する。このモーアユニット3では、回転ブレード33aは、排出口38の最も近くに位置し、且つ刈草流動方向での最下手に位置する。回転ブレード31a,32a,33aのそれぞれは、モーアデッキ30の天井面に図示しないブラケットを介して固定されている各ブレードモータ31,32,33の駆動軸に取り付けられている。尚、回転ブレード31a,32a,33aのそれぞれは、その両端部に切断刃先を形成しており、さらに各切断刃先の背後側に形成された起風羽根を形成している。
【0028】
芝刈り作業時には、各回転ブレード31a,32a,33aを回転させながら乗用電動芝刈機を走行させることで各回転ブレード31a,32a,33aによって切断処理された刈草は、各回転ブレード31a,32a,33aの起風羽根によって発生した風により、バキュームプレート及びバッフルプレートに案内されてモーアデッキ30の内部を排出口38の位置する横一端側に搬送されて、排出口からモーアデッキ30の横外側に放出される。
【0029】
上述したように、各ブレードモータ31,32,33も、それぞれ独立的にインバータ4を介して供給される電力量によってその回転速度を変更することができるが、ここでは制御を簡単にするため、この実施形態では、回転速度の変更を行わない定速制御(ON・OFF制御)として説明されている。但し、各ブレードモータ31,32,33の回転速度を同一にする必要はなく、排出口38から最も離れている回転ブレード31aを回転させるブレードモータ31の回転速度を、排出口38から最も近い回転ブレード33aを回転させるブレードモータ33の回転速度より高速とする等により、各ブレードモータ31,32,33の回転速度を異ならせることで、省電力と刈草の排出搬送の効率とを考慮して最適な選択をするとよい。なお、同様な目的で、排出口38から最も近い回転ブレード33aのブレードモータ33には他の刈草の排出も引き受けることになるので、排出口38から最も近いブレードモータほど回転トルクを大きくするような構成を採用してもよい。
【0030】
走行のための左輪モータ21と右輪モータ22、及び芝刈りのためのブレードモータ31,32,33への給電は、コントローラ5によるインバータ制御によって行われる。このため、バッテリに接続されたインバータ4は、各ブレードモータ31,32,33に同一又は異なる電力を給電するブレード給電部40、左輪モータ21に給電する左輪給電部41、右輪モータ22に給電する右輪給電部42を備えている。
【0031】
図5に示すように、コントローラ5は、走行状態検出センサ群7と、操縦状態検出センサ群8と、作業状態検出センサ群9と、インバータ4と、接続している。
走行状態検出センサ群7には、左後車輪2aの回転数を検出する左後輪回転検出センサ70a、右後車輪2bの回転数を右後輪回転検出センサ70bなど、走行に関する情報を検出するセンサが含まれる。操縦状態検出センサ群8には、左操縦レバー15aの揺動角を検出する左操縦角検出センサ80a、右操縦レバー15bの揺動角を検出する右操縦角検出センサ80b、ブレーキペダル14の操作角を検出するブレーキ検出センサなど操縦に関する情報を検出するセンサが含まれる。作業状態検出センサ群9には、各ブレードモータ31,32,33の回転数を検出するブレード回転検出センサ91a、91b、91cまたは各ブレードモータ31,32,33を流れる電流を検出する電流計あるいはその両方、モーアデッキ30の排出口38から排出される刈草量を検出する刈草検出センサ、走行に伴ってモーアデッキ30に入り込む芝草の量を推定する刈草推定センサなどが含まれるが、ブレードモータ31,32,33の負荷を評価するためには、少なくとも1つ備えるとよい。ここでは、作業状態検出センサ群9には、ブレード回転検出センサ91a,91b,91cだけが備えられていることにする。
【0032】
コントローラ5では、センサ情報処理部51、左輪速度演算部52、右輪速度演算部53、走行制御部54、例外速度制御部55、作業負荷評価部56、しきい値設定部57、モーア制御部58、報知部59などが、プログラムの実行によって構築されるが、必要に応じて、ハードウエアによって構築してもよい。センサ情報処理部51は、走行状態検出センサ群7や操縦状態検出センサ群8や作業状態検出センサ群9から入力されたセンサ信号を処理して、コントローラ5の内部で利用可能な情報に変換する。報知部59は運転者に知らせる情報を生成し、その情報が視覚情報なら液晶ディスプレイ等である表示パネル19aを出力機器として、聴覚情報ならスピーカ19bを用いて報知する。
【0033】
左輪速度演算部52は、運転者による左操縦レバー15aの操作量を検出する左操縦角検出センサ80aを通じての操作情報に基づいて左後車輪2aの回転速度(回転数)、つまり左輪モータ21の回転速度(回転数)を求める。その際、操作位置:pと回転速度:vの関係:v=g(p)を表すテーブルや関数が用いられる。同様な方法で、右輪速度演算部53も、運転者による右操縦レバー15bの操作量を検出する右操縦角検出センサ80bを通じての操作情報に基づいて右後車輪2bの回転速度(回転数)、つまり右輪モータ22の回転速度(回転数)を求める。
【0034】
走行制御部54は、左輪速度演算部52及び右輪速度演算部53によって求められた左輪モータ21の回転速度と右輪モータ22の回転速度を実現するために必要な電力を左輪モータ21及び右輪モータ22送るための制御信号を左輪給電部41及び右輪給電部42に与える。なお、その際、車体の左右振れなどを避けるために左輪モータ21と右輪モータ22との間の僅かな目標回転速度差が生じた場合には、不感帯を設けてチャタリングを避ける走行制御や、運転者が直進走行を意図しているか緩やかな旋回走行を意図しているかを推定して、その推定に合わせた制御信号を生成するような走行制御を行うことも好適である。
【0035】
作業負荷評価部56は、センサ情報処理部51から得られた各ブレードモータ31,32,33の回転速度と各ブレードモータ31,32,33に与えられた制御信号との関係、刈草量、各ブレードモータ31,32,33を流れる電流値などの、制御入力パラメータ(α:α1,α2・・・)からモーアユニット3における負荷、つまり各ブレードモータ31,32,33の負荷を示す負荷評価値:L=f(α1and/orα2・・・)を求める。
【0036】
しきい値設定部57は、モーアユニット3の正常な負荷、つまり平均レベルで密集した芝生を適切な走行速度で走行しながら刈り取り作業を行った際のブレードモータ31,32,33における参照負荷評価値:Lrefを求め、その値を基準として、例えば所定値:ΔLを上乗せした値をモーアユニット3の異常負荷を判定するしきい値:Lth=Lref+ΔLとして設定する機能を有する。
【0037】
モーア制御部58は、運転者によるスイッチ操作等に基づいて、各ブレードモータ31,32,33を設定された速度で回転させる。基本的には各ブレードモータ31,32,33の回転速度は同期され同一となるが、それぞれの回転軌跡が重なっていない場合などでは、互いの回転速度を相違させることも可能である。さらに、要求される芝刈り幅に応じて、3つのモータうちのいずれかを停止させることも可能である。各ブレードモータ31,32,33の回転速度は等速同期されている場合でも、例えば低速モードと高速モードといった複数段の速度に切替可能な構成とすることも可能である。
【0038】
例外速度制御部55は、モーアユニット3に異常負荷が発生していると判定された場合、左右操縦レバー15a,15bの操作量によって決定される目標走行速度より低い例外速度で、つまり運転者の意図している速度より低速でこの乗用芝刈機を走行させる。モーアユニット3における異常負荷の発生は、モーアユニット3の負荷評価値、つまりここではブレードモータ31,32,33の負荷を示す負荷評価値がしきい値設定部57によって設定されたしきい値Lthを越えて異常負荷と判定されることで検知される。このような走行速度の自動低下をいきなり実行するよりは、運転者に異常負荷の発生を報知し、運転者自らが走行速度を低下させる機会を与えてもよい。その場合は、異常負荷の発生後、その旨を報知部59を通じて運転者に報知し、それにも関わらず所定時間内で異常負荷が解消されなければ、例外速度制御部55による走行速度を強制的に例外速度に低下させることになる。なお、例外速度は、予め定めた固定値でもよいし、現状の走行速度に応じて算定される速度であってもよい。
例外速度制御では、左右操縦レバー15a,15bの操作量によって決定される目標走行速度と実際の走行速度(例外速度)が異なっているので、そのことを運転者に認識させるためにも、一旦実行された例外速度制御は、実際の走行速度である例外速度に対応する位置に左右操縦レバー15a,15bを戻すことにより、走行制御が運転者つまり左右操縦レバー15a,15bに渡される。
【0039】
以上のように構成された乗用電動芝刈機による芝刈り作業における制御の流れを図6、図7、図8を用いて以下に説明する。
この乗用電動芝刈機がキーオンされて、コントローラ5が起動すると、フラグやタイマ等の初期化やデフォルト値の設定などの初期設定処理が行われ(#10)、その後、ここではモーアユニット3に対する制御である作業機制御(#20)と走行制御(#50)とが運転終了(#100Yes分岐)まで行われる。なお、便宜上、ここでは作業機制御と走行制御がシーケンシャルに実行されるように記載しているが、これらが並列的に実行されるのが一般的である。
【0040】
作業機制御(#20)では、まず作業機の駆動要求(作業駆動要求)、つまりモーアユニット3に対する駆動要求が入力されているかどうかチェックされる(#21)。このチェックは、例えば、電気操作パネル18に配置されたモーアON/OFFスイッチの状態判定によって行われる。モーアユニット3に対する駆動要求がない場合(#21No分岐)、ブレードモータ31,32,33が駆動中であればこれを停止する指令を出して(#22)、この処理を終了する。
【0041】
モーアユニット3に対する駆動要求がある場合(#21Yes分岐)、各ブレードモータ31,32,33に対する回転指令を新規に与えるか、あるいは現状で出力している回転指令を繰り返す(#23)。さらに、作業負荷評価部56は、各ブレードモータ31,32,33の回転速度、または各ブレードモータ31,32,33を流れる電流値あるいはその両方を、各ブレードモータ31,32,33の負荷を評価するための制御入力パラメータとしてセンサ情報処理部51から取得する(#24)。なお、そのような制御入力パラメータとして刈草量などを採用してもよい。次いで、作業負荷評価部56は、取得した制御入力パラメータからモーアユニット3における負荷、つまり各ブレードモータ31,32,33の負荷を示す負荷評価値:Lを演算する(#25)。得られた負荷評価値Lは、先に述べたしきい値設定部57によって設定されたしきい値Lthと比較される(#26)。このしきい値Lthは、モーアユニット3、つまりブレードモータ31,32,33の負荷が適正状態であるか異常負荷(高負荷)であるかを判定する判定基準である。
【0042】
従って、L<=Lthの場合(#26No分岐)、ブレードモータ31,32,33にかかっている負荷は適正であるとみなされ、負荷フラグに「正常」がセットされ(#27)、このルーチンを終了する。これに対して、L>Lthの場合(#26Yes分岐)、ブレードモータ31,32,33にかかっている負荷は高すぎるとみなされ、負荷フラグに「異常」がセットされ(#28)、このルーチンを終了する。負荷フラグに「異常」をセットすることは、以下に述べる走行制御における例外制御処理のトリガーとなる。
【0043】
図8に示すように、走行制御(#50)では、まず車両走行の駆動要求(走行駆動要求)、つまり左輪モータ21と右輪モータ22とに対する駆動要求が入力されているかどうかチェックされる(#51)。左輪右輪モータ21,22に対する駆動要求がない場合(#51No分岐)、左輪右輪モータ21,22が動作中であればこれを停止する指令を出して(#52)、この処理を終了する。左輪右輪モータ21,22に対する駆動要求が出されている場合(#51Yes分岐)、左輪右輪モータ21,22の回転制御が行われる。まず、左右操縦レバー15a,15bの操作量を検出する操縦状態検出センサ群8からのセンサ信号がセンサ情報処理部51で処理され、左右操縦レバー15a,15bの操作量に対応する走行速度に関する情報(内部信号)が取得される(#53)。この走行速度に関する情報から、実際は左輪右輪モータ21,22の目標回転速度である目標走行速度が算定され(#54)、算定された目標走行速度を実現するためのモータ制御値(ここでは左輪モータ21と右輪モータ22とに対する給電量を決定する値)が演算される(#55)。
【0044】
次いで、現状の走行制御が通常速度制御であるか例外速度制御であるかを走行フラグの内容からチェックする(#60)。走行フラグの内容が「通常」ならば、通常速度制御が行われているとみなし、さらに現状のモーアユニット3の負荷状態を前述した負荷フラグの内容からチェックする(#61)。負荷フラグの内容が「正常」ならば、負荷は適正であるとみなし、通常速度制御を実行すべく、ステップ#55で得られたモータ制御値を指令し、目標走行速度での走行を行う(#63)。但し、ステップ#61のチェックが以下に述べる例外速度制御への猶予期間での「異常」から「正常」への移行の場合であることも考慮して、タイマフラグの「ON」から「OFF」への変更と、タイマリセットを実行しておくとよい(#62)。
【0045】
ステップ#61で負荷フラグの内容が「異常」ならば、負荷は高すぎるとみなし、走行速度を低下させてモーアユニット3の負荷を軽くする例外走行処理が実行される。但し、この実施形態では、いきなり、例外走行処理を実行するのではなく、まずモーアユニット3の負荷が高すぎることを運転者に伝えて、走行速度の低下を促す。そのため、例外走行処理実行の猶予期間を管理するタイマフラグをチェックする(#70)。タイマフラグの内容が「OFF」ならば、まだ猶予期間が開始されていないので、タイマフラグに「ON」を設定するともにタイマをスタートさせる(#71)。そして、異常負荷が発生しており、走行速度の低下を促すメッセージを報知する(#72)。その後は、まだ猶予期間なので、通常速度制御を実行すべく、ステップ#55で得られたモータ制御値を指令し、目標走行速度での走行を行う(#63)。
【0046】
ステップ#70でタイマフラグの内容が「ON」ならば、例外走行処理実行の猶予期間が始まっているので、タイマがタイムアップしているかどうかチェックする(#80)。タイムアップしていなければ、まだ猶予期間なので、通常速度制御を実行すべく、ステップ#55で得られたモータ制御値を指令し、目標走行速度での走行を行う(#63)。ステップ#80でタイムアップが確認されると、例外速度制御部55が強制的に走行速度を例外速度まで低下させる。まず、タイマフラグの「ON」から「OFF」への変更及びタイマリセットを行い(#81)、走行フラグは「通常」から「例外」に変更しておく(#82)。次いで、例外速度を算定する(#83)。この例外速度の算定では、予め設定されている値を読み出す方法や、現状の左輪右輪モータ21,22の回転速度(時間当たりの回転数)の数十%というような方法を採用することができる。もちろん、この例外速度制御を旋回中に実行する場合には、現状の左輪右輪モータ21,22の速度比に対応した例外速度をそれぞれのモータ21,22に割り当てる必要がある。いずれにしても、例外速度が算定されると、算定された例外速度を実現するために演算されたモータ制御値を指令し、例外速度での走行を行う(#84)。
【0047】
このように例外速度制御が開始されると、走行フラグに「例外」が設定されるので、ステップ#60のチェックで例外速度制御実行中と判定される。この実施形態では、例外速度制御からの離脱は、実際の走行速度である例外速度に対応する位置に左右操縦レバー15a,15bを戻すことが条件となっている。従って、まず、目標走行速度が実際の走行速度(例外速度)以下であるかどうかチェックされる(#90)。このチェックで、左右操縦レバー15a,15bの位置によって決定される目標走行速度が例外速度を越えている場合(#90No分岐)、例外速度制御を続行する必要があるので、算定された例外速度に対応するモータ制御値を指令する(#91)。ステップ#90のチェックで、左右操縦レバー15a,15bの位置によって決定される目標走行速度が例外速度を越えていない場合(#90Yes分岐)、例外速度制御から通常速度制御に移行するため、走行フラグを「例外」から「通常」に変更する(#92)。そして左右操縦レバー15a,15bの位置によって決定される目標走行速度を実現するためのモータ制御値を演算し、指令する(#93)。
【0048】
上述した制御の流れでは、説明を簡単にするためモーアユニット3に含まれるブレードモータ31,32,33を1つのモータとして取り扱っていたが、各モータに対して共通または専用のしきい値Lthを設定して、モーアユニット3に負荷状態を評価してもよい。その際、実際には以下のように異なる制御方法を採用することができる。
(a)設定された共通または専用のしきい値Lthより低い低負荷と評価されたモータの数が多数となった場合に、モーアユニット3が過負荷状態と評価して、例外速度制御に移行する。
(b)1つでもしきい値Lth以上と評価されるモータがあれば例外速度制御に移行する。
【0049】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、通常走行から例外速度による低速走行へ移行するためのしきい値Lth(作業機ユニットにおける過剰負荷レベル)は単一であるとしていたが、複数のしきい値で複数の過剰負荷レベルを判定にして、過剰負荷レベル毎に当該過剰負荷レベルに合わせて異なる例外速度を設定するようにしてもよい。また、しきい値以上の過剰負荷レベルに応じて無段階で例外速度を設定するようにしてもよい。
(2)上述した実施形態では、一旦設定されたしきい値Lthは新たに求められるまでは固定値として用いられていたが、作業中の作業環境変化等に基づいて所定範囲で変動するアクティブなしきい値としてもよい。
(3)上述した実施形態では、しきい値Lthは所定のアルゴリズムに基づいて設定されていたが、運転部の電気操作パネル18などに設けられたしきい値設定器により人為的に設定・変更できるように構成し、この人為的に設定されたしきい値で、例外速度制御を実行するような構成を採用してもよい。もちろん、コントローラ5に予め設定・記憶されたしきい値のみで例外速度制御を実行するような構成を採用してもよい。
(4)上述した実施形態では、各ブレードモータ31,32,33には回転速度の変更を行わない定速制御(ON・OFF制御)が採用されていたが、例外速度制御の移行にともなって、各ブレードモータ31,32,33の回転速度を変更することも本発明に含まれている。例えば、例外速度制御の実行にともなう走行速度の低下とともに各ブレードモータ31,32,33の回転速度を上げて芝刈り性能をさらにアップさせてもよいし、逆に回転速度を下げてモーアユニット3の負荷をさらに下げるようにしてもよい。
(5)上述した実施形態では、異常負荷の検知による例外速度制御への移行前にその旨を報知して、その移行を猶予する方法が採用されていたが、もちろんそのような猶予を設けずに、直ぐに例外速度制御へ移行してもよい。このような猶予なしの例外速度制御への移行時には例外速度制御に移行したこと、走行速度を低下させたことを報知するとよい。また、報知部59そのものを省略して、報知なしの例外速度への移行を猶予有り又は猶予なしで行うことも可能である。
(6)上述した実施形態の乗用作業車は、駆動車輪ユニットも電動機で行う完全電気車両であったが、エンジン(内燃機関)を搭載して、エンジンの駆動力で駆動車輪ユニットを駆動したり、発電機を回してバッテリを充電したりするハイブリッド型車両であってもよい。
(7)上述した実施形態では、作業ユニットをモーアユニット3とする乗用電動芝刈機を例としていたが、本発明が適用できる乗用作業車としては、芝刈機以外、耕耘機、トラクタ、田植機、コンバイン、土木・建築作業機、除雪車などが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、車速の変化によって作業デバイスを駆動する作業用電動機にかかる負荷変動する乗用作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
2:後車輪ユニット(駆動車輪ユニット)
2a:左後車輪
2b:右後車輪
3:モーアユニット(作業ユニット)
10:車体
11:運転座席
15:操縦ユニット(速度設定操作ユニット)
15a:左操縦レバー
15b:右操縦レバー
19a:表示パネル
19b:スピーカ
20:バッテリ
21:左輪モータ(走行用電動機ユニット)
22:右輪モータ(走行用電動機ユニット)
31,32,33:ブレードモータ(作業用電動機)
31a,32a,33a:回転ブレード(作業デバイス)
5:コントローラ
51:センサ情報処理部
52:左輪速度演算部
53:右輪速度演算部
54:走行制御部
55:例外速度制御部
56:作業負荷評価部
57:しきい値設定部
58:モーア制御部(作業制御部)
59:報知部
7:走行状態検出センサ群
8:操縦状態検出センサ群
80a:左操縦角検出センサ
80b:右操縦角検出センサ
9:作業状態検出センサ群
Lth:しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席を備えた車体と、当該車体を支持する駆動車輪ユニットと、前記駆動車輪ユニットを走行駆動するための走行用電動機ユニットと、前記車体の目標走行速度を設定するために運転者によって操作される速度設定操作ユニットと、前記目標走行速度に基づいて前記走行用電動機ユニットを制御する走行制御部と、前記車体の走行に伴って車体周囲の作業対象物に対する作業を行う作業デバイスと前記作業デバイスを駆動するための作業用電動機とを有する作業ユニットと、前記作業用電動機を制御する作業制御部と、前記作業用電動機の負荷を評価する作業負荷評価部と、前記作業負荷評価部によって評価された前記作業用電動機の負荷がしきい値より高い異常負荷である場合に前記目標走行速度より低い例外速度で前記走行用電動機ユニットを制御する例外速度制御を実行する例外速度制御部とを備えた乗用作業車。
【請求項2】
前記異常負荷の発生を運転者に報知する報知部が備えられ、前記報知部による前記異常負荷の発生の報知にも関わらず、前記異常負荷が解消されない場合に前記例外速度制御が実行される請求項1に記載の乗用作業車。
【請求項3】
前記例外速度制御の実行にともなって、前記速度設定操作ユニットによる目標走行速度の値が前記例外速度に一致するまで前記速度設定操作ユニットによる目標走行速度はキャンセルされる請求項1又は2に記載の乗用作業車。
【請求項4】
前記しきい値は、走行作業中における、前記作業対象物に対する作業量と、前記作業用電動機への供給電流値又は前記作業用電動機の回転数との組み合わせから導出される負荷評価値に基づいて設定される請求項1から3のいずれか一項に記載の乗用作業車。
【請求項5】
前記作業ユニットは、モーアユニットで、前記作業対象物は芝草である請求項1から4のいずれか一項に記載の乗用作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−187026(P2012−187026A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52004(P2011−52004)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】