説明

乗用型草刈機

【課題】ユニバーサルジョイント付きの伝動軸を覆う軸カバーによって、モーアの昇降作動範囲が削減される度合いを少なくし、かつ、ユニバーサルジョイント部分を含めて伝動軸の全周を覆う。
【解決手段】走行機体1側からモーア4へ駆動力を伝える伝動軸3の外周を覆う軸カバー5を、走行機体1側に装着された第1カバー部51と、モーア4側に装着された第2カバー部52との組み合わせで構成し、第1カバー部51は、モーア4側のユニバーサルジョイント30部分から外れた位置の伝動軸3の軸部分を覆う筒状カバー部51aを備え、第2カバー部52は、モーア4側のユニバーサルジョイント30部分を覆うとともに、第1カバー部51のモーア4側端部に覆い被さるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝などの草を刈取るために用いられる乗用型草刈機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記乗用型草刈機においては、走行機体に昇降可能に吊設されたモーアを、走行機体側から伝動軸を介して駆動するように構成しているのであるが、その駆動構造部分としての伝動軸に保護カバーを設けることが要望される場合がある。この乗用型草刈機のうち、モーアを前輪と後輪の間に位置させて小回りでの旋回を行い易くしたミッドマウントタイプのものでは、前記伝動軸が車体下に隠れた状態となるため、その伝動軸に対する保護カバーを特に設けたものはなく、モーアを走行機体の前方側に設けたフロントマウントタイプのものでは、下記[1]に記載のように、モーアへの軸伝動構造部分にカバーを設けた構造のものがある。
[1] 走行機体側からモーア側へ動力を伝える伝動軸の上側において、モーア側のギヤケースの近くで伝動軸のモーア側ユニバーサルジョイントを覆うチャンネル状の固定カバーを備えるとともに、モーアを吊り下げ支持するリフトリンクに一端側を枢支したチャンネル状の伝動カバーで伝動軸の上側を覆うように構成したもの(特許文献1参照)。
【0003】
また、単に、軸中間部にユニバーサルジョイントを備えた構造の伝動軸部分を覆うことだけを示す技術としては、乗用型草刈機に用いられたものではないが、下記[2]に記載の構造もある。
[2] 伝動軸部分を筒状のカバーで覆い、ユニバーサルジョイント周りを軟質袋状のカバーで覆うように構成したもの(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−9050号公報(段落〔0020〕、〔0021〕、図2、図3)
【特許文献2】特開平8−20251号公報(段落〔0019〕、図1、図2、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のモーアに対して駆動力を伝達する伝動軸は、モーア自体が昇降作動するものであるから、軸中間部にユニバーサルジョイントを備えることが必須条件となっている。
このようなユニバーサルジョイントを備えた軸部分を覆うためにカバーを設けるにあたっては、昇降作動させられるモーアへの伝動構造という前提条件を考えなければ、一般的には、前記特許文献2に記載のように、ユニバーサルジョイント周りをその動きを妨げないような大きな内径を有する可撓性のカバーで覆うように構成するなどの手段を採用することが考えられる。
ところが、ユニバーサルジョイントは、それ自体が伝動軸部分に比べるとかなり回転径の大きいものであり、しかもモーアの昇降作動に伴うユニバーサルジョイントの屈折角度範囲が大きくなるほど、カバー内におけるユニバーサルジョイントの回転軌跡の径が大きいものとなり、ユニバーサルジョイントを覆うカバーの内径もかなり大きなものとなり、カバー自体が大型化する。このため、その径の大きなカバーをモーアのデッキ上に位置させると、そのカバーの大きさだけ、モーアの持ち上げ可能範囲が削減されることになり、モーアの持ち上げ可能範囲が制限されている場合には、走行機体に吊り持ちされるモーアを十分に大きく持ち上げ難いという問題がある。
【0006】
そこで従来では、特許文献1に記載のように、チャンネル状の固定カバーで伝動軸のモーア側のユニバーサルジョイントを覆い、固定カバーの下端開放側をモーアデッキに固定してユニバーサルジョイントの全周を覆うとともに、伝動軸部分は、チャンネル状の伝動カバーでその上面側のみを覆うように構成していた。このように構成することで、ユニバーサルジョイント部分の全周を覆うカバーでユニバーサルジョイント部分を覆う場合に比べて、モーアデッキ上における固定カバーの高さは比較的低く抑えられる点で有利なものである。
しかしながら、この構造では、伝動カバーのモーア側の端部が固定カバーの上側に重なる状態で設けられるものであり、その伝動カバーがモーアの上下位置変化に伴って固定カバーの上側で揺動変位することを許容するための上下高さが必要となる。そのため、モーアを走行機体下側で昇降操作したい場合に、固定カバーの上側に重なる伝動カバーの厚み分と、モーアの上下位置変化に伴って伝動カバーが固定カバーの上側で揺動変位することを許容するための上下高さ分だけ、モーアの持ち上げ可能範囲が削減されることになる。
また、この構造では、伝動ケースがチャンネル状で下方が開放された形状のものであるため、規格上の問題等から伝動軸の全周を覆いたい場合には用いることができないという不具合もある。
【0007】
本発明の目的は、走行機体に昇降可能に吊設されたモーアへ駆動力を伝達するためのユニバーサルジョイント付きの伝動軸を覆う軸カバーを構成するにあたり、モーアの昇降作動範囲を軸カバーの存在によって削減する度合いを極力少なくし、かつ、ユニバーサルジョイント部分を含めて伝動軸の全周を覆うことのできる軸カバーを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、走行機体に昇降可能に吊設され、走行機体側から伝動軸を介して駆動力を伝達されるモーアを備えた乗用型草刈機において、
前記伝動軸は、走行機体側の出力軸とモーア側の入力軸とのそれぞれに対して連結されるユニバーサルジョイントを各端部に備えて屈折自在に構成してあるとともに、この伝動軸の外周を覆う軸カバーを備え、
前記軸カバーを、走行機体側に装着された第1カバー部と、モーア側に装着された第2カバー部との組み合わせで構成し、
前記第1カバー部は、モーア側のユニバーサルジョイント部分から外れた位置の伝動軸の軸部分を覆う筒状カバー部を備え、
前記第2カバー部は、モーア側のユニバーサルジョイント部分を覆うとともに、前記第1カバー部のモーア側端部に覆い被さるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明の乗用型草刈機では、次の作用及び効果を奏する。
すなわち、軸カバーのうち、モーア側に装着された第2カバー部は、モーア側のユニバーサルジョイント部分を覆うとともに、第1カバー部のモーア側端部に覆い被さるように構成されている。このため、モーア側のユニバーサルジョイント部分の全周をカバーなどで覆う場合に比べて、少なくともモーア側のユニバーサルジョイント部分の下側を覆うカバー部分は必要なく、その分、この部位の第2カバー部を、できるだけモーアデッキに近づけた状態に配置することができる。
そして、第1カバー部のモーア側端部は、モーア側のユニバーサルジョイント部分を覆う必要はなく、伝動軸部分を覆う筒状に形成された比較的小径のものであるため、この第1カバー部のモーア側端部を覆う第2カバー部は、内側に第1カバー部のモーア側端部を位置させても、ユニバーサルジョイント部分を覆う場合のように大きく形成する必要はない。
また、第1カバー部はモーア側のユニバーサルジョイント部分から外れた位置の伝動軸の軸部分を覆う筒状カバー部を備え、モーア側のユニバーサルジョイント部分は前記第2カバー部とモーアデッキとの協働で全周を覆われているので、前記伝動軸はその全周を覆われた状態で設けられる。
【0010】
その結果、走行機体に昇降可能に吊設されたモーアへ駆動力を伝達するためのユニバーサルジョイント付きの伝動軸の軸カバーを、その軸カバーの存在によってモーアの昇降作動範囲を削減する度合いを極力少なくした状態で提供することができる利点がある。
また、ユニバーサルジョイント部分を含めて伝動軸の全周を覆うことのできる軸カバーをコンパクトに構成し得る利点がある。
【0011】
〔解決手段2〕
本発明の乗用型草刈機における第2の解決手段は、請求項2の記載のように、第2カバー部がモーア側に固定支持されていることである。
【0012】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明の乗用型草刈機では、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、モーア側のユニバーサルジョイント部分を覆う第2カバー部が、モーア側に固定支持されているので、機体走行に伴う振動などによって軸カバーが揺れ動く度合いを少なくし、軸カバーを安定的に姿勢維持できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔乗用型草刈機の全体構成〕
図1に、本発明に係る乗用型草刈機の全体側面が、また、図2にその全体平面がそれぞれ示されている。この乗用型草刈機は、機体フレーム10の前端側にキャスタ式の遊転輪に構成された左右一対の前輪11を備え、機体フレーム10の後端側に左右一対の駆動輪で構成された後輪12を備えて走行機体1を構成し、この走行機体1の前後輪間に、バーブレード型のモーア4が昇降自在に吊り下げ支持された、いわゆるミッドマウント仕様に構成されている。
【0014】
走行機体1の後部にはエンジンボンネット20内に水冷式ディーゼルエンジン21を収容した原動部2が、前記機体フレーム10の後側フレーム部分に配備されるとともに、走行機体1の前後中間部位には運転座席13が配備されている。
運転座席13の後部には門形の転倒保護フレーム14が略鉛直に立設固定されている。転倒保護フレーム14は、その上下中間部位で支点x1周りに後方に折り畳み可能に構成されており、樹木の幹回りの草刈り時に転倒保護フレーム14を折り畳むことで、転倒保護フレーム14を張出した枝に引っ掛かけることなく作業ができるよう構成されている。
前記機体フレーム10における前側フレーム部分には、運転座席13の足元に位置するステップ15が搭載装着されるとともに、運転座席13の左右にはフェンダ16が配備されている。
【0015】
伝動系の構造は周知のものであるため詳細な構造の説明は省略するが、エンジン21の出力はカウンターケース22に入力されて走行系と作業系とに分岐され、走行系の動力はカウンターケース22の左右両側に配備された図示されない左右一対の静油圧式無段変速装置(HST)(図示せず)に入力され、その変速出力が減速ケース23を介して左右の後輪12に伝達されるようになっている。
左右の後輪12を駆動する静油圧式無段変速装置は、運転座席13の左右両脇に前後揺動操作可能に配備された左右一対の走行レバー17を各別に揺動操作することで、左右の後輪12をそれぞれ独立して無段階に前後進変速するよう構成されていて、図1に示す中立停止の状態から、左右の走行レバー17の同時同方向の操作で直進前後進、左右各別の操作でピボットターン、および、スピンターンを任意に行うことができるようになっている。
【0016】
〔モーアの構成〕
モーア4は、四連リンク構造のリンク機構18を介して吊り下げ支持された構造となっている。リンク機構18は、そのリンク機構18の一部に連結された油圧シリンダ19の伸縮作動によって昇降操作され、モーア4を略平行に昇降作動させるよう構成してある。
このモーア4への動力伝達は、前記カウンターケース22で分岐された作業系の動力が、カウンターケース22の前面下部に突設された、走行機体1側からの出力軸であるPTO軸24から機体前方に向けて出力され、このPTO軸24及び伝動軸3を介してモーア4にエンジン動力を軸伝達するように構成してある。
【0017】
モーア4は、下向きに開放されたモーアデッキ40の内部に、縦軸心周りに回転駆動される3枚の回転ブレード41L,41C,41Rが、中央の回転ブレード41Cが少し前方に偏位するよう平面視で三角配置されて軸支された構造となっており、走行機体1が直進移動した際に、隣接する回転ブレード41L,41C,41R同士の先端回動軌跡の左右端が部分的に重複して、刈残しの無い草刈が行えるようになっている。
【0018】
モーアデッキ40は、天板高さが全体的に同高さに設定されたフラットデッキに構成されているとともに、このモーアデッキ40の上面中央位置に、前記PTO軸24から取り出された作業用動力が伝達されるベベルギヤケース42を設けてある。
このベベルギヤケース42では、伝動軸3を介して伝達された水平方向の回転動力を、内部のベベルギヤ機構(図示せず)を介して縦軸回転に変換し、中央の回転ブレード41Cの回転軸43Cに伝達するように構成されている。
前記中央の回転軸43Cと左右の回転ブレード41L,41Rの回転軸43L,43Rとは、それぞれの軸端に設けた伝動プーリ44,44,44にベルト45を巻き掛けて連動され、各回転ブレード41L,41C,41Rが同じ方向(平面視で時計回り)に等速で回転駆動されるようになっている。
【0019】
上記の伝動プーリ44,44,44、及び巻き掛けられたベルト45は、これらを上側から覆うように設けたベルトカバー46によって、モーアデッキ40の上面との間に挟み込まれた状態で隠蔽されている。
前記ベルトカバー46は、図3に示すように、前記ベベルギヤケース42の存在箇所と、前記伝動軸3の存在箇所とを避ける切り欠き部分46Cを中央側に形成してあり、かつ左右に二分割された右カバー部46Rと左カバー部46Lとによって構成してある。また、前記伝動プーリ44,44,44に巻き掛けられたベルト45も、伝動軸3のモーア側端部に設けたユニバーサルジョイント30の回転軌跡を避けた位置に配設してある。
したがって、図4に示すように、モーア側のユニバーサルジョイント30は、その回転軌跡の下縁がベルトカバー46の上面よりも下方側に或程度入り込む状態で設けてあっても、ベルトカバー46の上面や、内部のベルト45との接触を回避することができる。
【0020】
モーアデッキ40の周囲には障害物乗り越え用の遊転輪(アンチスキャルプローラ)47が配備されており、上方への移動融通をもってリンク機構18に吊り下げ支持されたモーア4に地上の斜面や隆起部などに接近すると、遊転輪47のいずれかが隆起部などに乗り上がることでモーア4が相対的に持ち上げられて、モーアデッキ40が直接に接触して地面を削ることが回避されるようになっている。
【0021】
〔軸カバーの構成〕
図4及び図5に示すように、前記PTO軸24からベベルギヤケース42へ動力を伝達する伝動軸3は、前記PTO軸24に対してユニバーサルジョイント30を介して連結される筒状の第1軸部31と、前記ベベルギヤケース42の入力軸42aに対してユニバーサルジョイント30を介して連結される棒状の第2軸部32との組み合わせで構成してある。
前記筒状の第1軸部31は筒内面側にスプライン部31aを形成したスプライン筒によって構成してあり、前記棒状の第2軸部32は外表面にスプライン部32aを形成したスプラインシャフトによって構成してあって、互いのスプライン部31a,32aを嵌合させることによって、相対回転不能に、かつ、伝動軸3の軸線方向長さを伸縮調節可能に構成してある。
【0022】
上記構造の伝動軸3に対する軸カバー5は、走行機体1側に装着された第1カバー部51と、モーア4側に装着された第2カバー部52との組み合わせで構成してある。
前記第1カバー部51は、モーア4側のユニバーサルジョイント30部分から外れた位置の第1軸部31、及び第2軸部32の軸部分を覆う筒状カバー部51aと、その筒状カバー部51aの走行機体1側の端部において、走行機体1側のユニバーサルジョイント30部分を覆うように接続されたカバー部51bとを備えて構成されている。カバー部51bは、その開放側端部を走行機体1のカウンターケース22の壁部に固定してある。前記筒状カバー部51aのモーア側端部は、前記第1軸部31のモーア側端部近くとの間に設けた間隔維持用のカラー部材51cによって姿勢規制してある。
【0023】
前記第2カバー部52は、図3及び図6に示すように、下端側が開放されたチャンネル状の部材によって構成され、その両横側片部分が、前記モーアデッキ40上のベルトカバー46の立ち上がり辺部分46aに対して、ボルト・ナット53で連結されている。
したがって、この第2カバー部52は、その装着姿勢でモーア4側のユニバーサルジョイント30部分を上側から覆うとともに、前記第1カバー部51のモーア側端部に上側から覆い被さるように構成されている。
【0024】
上記のように構成された軸カバー5は、図4に示すように、モーア4を下限及び上限に移動させても、伝動軸3が外部に露出しないように、伝動軸3の外周を囲繞している。
すなわち、第1カバー部51のモーア側の端部(前端側)は、概ね、走行機体1側のユニバーサルジョイント30の屈折点x3を支点として揺動するものであるから、その端部は前記屈折点x3周りの円弧に近い揺動軌跡a上を移動する。
そして、モーア4全体は前記リンク機構18による昇降動作に伴ってほぼ平行に上下移動するものであるが、そのモーア4側に取り付けられた前記第2カバー部52の上面側の後端は、前記リンク機構18による昇降動作に伴って、リンク機構18のリンク部分の揺動支点を揺動中心とする円弧軌跡に沿った図示の揺動軌跡b上を移動する。
【0025】
したがって、モーア4が下限に位置した状態では、第1カバー部51と第2カバー部52との位置関係は、図示の仮想下限線d(下限における伝動軸3の軸心位置)の付近に仮想線で図示した状態にあって端部同士が重なり合い、モーア4が上限に位置した状態では、第1カバー部51と第2カバー部52との位置関係は、図示の仮想上限線u(上限における伝動軸3の軸心位置)の付近に仮想線で図示した状態にあって、やはり端部同士が重なり合っている。尚、この仮想上限線uは、走行機体1が水平姿勢であるときに少し前方側が上向きである前上がり傾斜を有している。
上記のように仮想下限線dの状態にモーア4が位置する状態から、仮想上限線uの状態にモーア4が位置する状態にモーア4の高さが変化すると、図4,5に示すように、伝動軸3の長さは、前者の場合よりも後者の場合が短くなり、これに伴って第1カバー部51と第2カバー部52との重なり代も、前記両揺動軌跡a,bの変化量に相当する量だけ大きくなる。
【0026】
〔比較例の説明〕
図7は、本発明に対する比較例を示すものであり、本発明の構造との比較を容易にするため、便宜上、前記図4に示す本発明の構造のものに、伝動軸3の軸部分を本発明と同様な筒状のカバー51で覆い、モーア4側のユニバーサルジョイント30周りをカバー54で覆うように構成したものを付加的に書き加えて示している。
上記のカバー54は、単にユニバーサルジョイント30部分の屈曲動作を許すためだけのものではなく、モーア4の昇降動作に起因して生じる伝動軸3の伸縮動作をも許容する必要があるため、その軸線方向長さを、走行機体1側のユニバーサルジョイント30部分を覆うカバー部51bよりも長く形成する必要がある。そして、長く形成したカバー54は、モーア4側のユニバーサルジョイント30の屈曲作動に伴って、その長さ方向中間部が凹入屈曲してユニバーサルジョイント30と接触し易くなることを避けるために、長さ方向中間部ほど径の大きな形状のものを採用している。
したがって、このカバー54自体が比較的その径も長さも大きいものとなる。このように構成されたカバー54を用いた場合、その下部がベルトカバー46の内部のベルト45の邪魔にならないように、そのほぼ全体を図示のベルトカバー46の位置よりも、図示の高さh1程度だけ上方側へ移行させる必要がある。また、カバー54の上部が図示の第2カバー52よりも上方側へはみ出した高さh2も考慮すると、前記上方側へ移行させる高さh1に前記上方側へはみ出した高さh2を加えた上下高さ(h1+h2)程度を、ベルトカバー46よりも上方側へカバー46を配設するための空間として、本発明の軸カバー5を設ける場合よりも余分に要することになる。
【0027】
〔別実施形態の1〕
軸カバー5の第2カバー部52は、最良の実施形態ではベベルギヤケース42に固定して設けたものを示したが、図8に示すような第2カバー部52を採用してもよい。図8に示すように、この第2カバー部52は、その一端側を、図4に示す前記ベルギヤケース42側への固定支点x4周りで揺動自在に装着し、他端側を自由端として、自重で第1カバー部51の端部に接触し、モーア4の昇降に伴う第1カバー部51の角度変更に応じて上下揺動可能であるように構成されている。
また、前記自由端側を自重で下方付勢するのではなく、図示しないが、適宜つる巻きバネ等を用いて下方付勢したり、第1カバー部51に対して、弾性的に係脱可能な挟持具を用いて連結するなどしてもよい。
【0028】
〔別実施形態の2〕
軸カバー5の第1カバー部51は、最良の実施形態で説明した、筒状カバー部51aとカバー部51bとの組み合わせで構成されたものに限らず、例えば、第1軸部31、及び第2軸部32の軸部分を覆う筒状カバー部51aのみで構成して、走行機体1側のユニバーサルジョイント30部分が、走行機体1のカウンターケース22内部に入り込む状態で構成された構造部分に適用する構成としてもよい。
【0029】
〔別実施形態の3〕
モーア4の仕様としては、マルチング仕様に構成されたものや、サイドディスチャージ仕様に構成されたもの、あるいはリヤディスチャージ仕様に構成されたものなど、適宜の仕様を選択することができる。本発明は走行機体1の前部にモーアを昇降自在に支持した
フロントモーアにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】乗用型草刈機の全体側面図
【図2】乗用型草刈機の全体平面図
【図3】モーア部分を示す平面図
【図4】伝動構造と軸カバー部分を示す側面視での断面図
【図5】伝動構造と軸カバー部分を示す正面視での断面図
【図6】伝動構造と軸カバー部分を示す側面視での拡大断面図
【図7】伝動構造と軸カバー部分の比較例を示す側面視での断面図
【図8】他の実施形態における伝動構造と軸カバー部分を示す側面視での断面図
【符号の説明】
【0031】
1 走行機体
3 伝動軸
4 モーア
5 軸カバー
30 ユニバーサルジョイント
31 第1軸部
32 第2軸部
40 モーアデッキ
51 第1カバー部
51a 筒状カバー部
52 第2カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に昇降可能に吊設され、走行機体側から伝動軸を介して駆動力を伝達されるモーアを備えた乗用型草刈機であって、
前記伝動軸は、走行機体側の出力軸とモーア側の入力軸とのそれぞれに対して連結されるユニバーサルジョイントを各端部に備えて屈折自在に構成してあるとともに、この伝動軸の外周を覆う軸カバーを備え、
前記軸カバーを、走行機体側に装着された第1カバー部と、モーア側に装着された第2カバー部との組み合わせで構成し、
前記第1カバー部は、モーア側のユニバーサルジョイント部分から外れた位置の伝動軸の軸部分を覆う筒状カバー部を備え、
前記第2カバー部は、モーア側のユニバーサルジョイント部分を覆うとともに、前記第1カバー部のモーア側端部に覆い被さるように構成されていることを特徴とする乗用型草刈機。
【請求項2】
第2カバー部はモーア側に固定支持されている請求項1記載の乗用型草刈機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−296900(P2009−296900A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151892(P2008−151892)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】