乗用型農作業機
【課題】 乗用型農作業機において、運転者が走行機体の前方の地上に立ちながら行う走行機体の操作の操作性を向上させる。
【解決手段】 走行機体の前部に操向操作具を備え、操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が可能な第1状態と、操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が不能な第2状態とを設定する。操向操作具を前方に倒伏操作可能に構成し、操向操作具の倒伏角度によって第1及び第2状態が選択されるように構成する。
【解決手段】 走行機体の前部に操向操作具を備え、操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が可能な第1状態と、操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が不能な第2状態とを設定する。操向操作具を前方に倒伏操作可能に構成し、操向操作具の倒伏角度によって第1及び第2状態が選択されるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【発明を実施するための最良の形態】
【0001】
図1に、本発明を適用した乗用型農作業機の一例としての乗用田植機が示されている。この乗用田植機は、前輪1及び後輪2を備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、油圧駆動されるリンク機構4を介して4条植の苗植付装置5が昇降可能に連結されて構成されている。図1及び図3に示すように、走行機体3の前部にエンジン6が搭載され、エンジン6の出力が前輪1を軸支したミッションケース7にベルト伝動装置8を介して伝達され、ミッションケース7によりギヤ変速されて前輪1が駆動される。ミッションケース7から取り出された出力が、後輪2を軸支した後部伝動ケース9に伝達され、ミッションケース7から取り出された作業用動力が苗植付装置5に伝達される。
【0002】
図3及び図4に示すように、ミッションケース7の下部に、ステアリングハンドル10によって軸心aを中心に左右に揺動操作されるピットマンアーム11が、前向き片持ち状に備えられ、ピットマンアーム11の前端と左右の前輪1のナックルアーム12とが、タイロッド13で連動連結されて、前輪1のステアリング用リンク機構14が構成されている。
【0003】
図3及び図6に示すように、ピットマンアーム11の下端部に、軸心aと同芯に回動部材としてのスプロケット15が連結され、ピットマンアーム11の前方側箇所に、回動操作部材としての操作スプロケット16が軸心aと平行な軸心b周りに回転自在に備えられており、スプロケット15及び操作スプロケット16が連動部材としてのチェーン17によって巻き掛け連動されている。
【0004】
図6及び図7に示すように、操作スプロケット16は、走行機体3側に固定された固定ボス19に回転自在に支持され、固定ボス19の中心に、操作スプロケット16にスプライン嵌合又はキー嵌合された操作軸20が、上下スライド自在に挿通されている。操作軸20の上部は回動ボス21を介して固定ボス22に支持されており、回動ボス21から前方に延出した回動ブラケット23が軸心b周りに左右回転可能に連結されている。回動ブラケット23の横向きの軸心c周りに上下回転可能に天秤アーム24が支持され、天秤アーム24の後端と操作軸20とがピン25で連結されており、天秤アーム24の軸心c周りの上下回転に伴って操作軸20が軸心bに沿って上下にスライド操作される。天秤アーム24の前端部の横向きの軸心d周りに、起伏揺動自在に操向レバー26が連結されており、軸心dに備えた皿バネ等によって、操向レバー26を任意の起伏位置で保持可能に構成されている。
【0005】
図6及び図7に示すように、操向レバー26の基端部に、天秤アーム24の前端部の下方に周り込む接当部26aが備えられており、図3に示すように操向レバー26を略鉛直な起立姿勢から所定角度αだけ前方に倒伏させると、接当部26aが天秤アーム24の前端部に下方から接当して、天秤アーム24に対して操向レバー26をそれ以上前方に倒伏不能となる。図3に示すように、操向レバー26を前方に所定角度αよりも大きい所定角度βの範囲で倒伏させると、操向レバー26と一体化された天秤アーム24が軸心c周りに回転して、天秤アーム24の後端部が上方に移動し、操作軸20が上方にスライド操作される。
【0006】
図6に示すように、操作軸20の下端に、一対のピン27が上向きに立設されたディスク28が固定され、操作スプロケット16にピン27に対向する係合孔29が設けられている。操作軸20が下方にスライド操作された状態では、係合孔29からピン27が離脱して、操作軸20と操作スプロケット16との連係が断たれており、操作軸20が上方にスライド操作されることにより、係合孔29にピン27が係合して操作軸20と操作スプロケット16とが連結される。
【0007】
以上のように、操向レバー26を起立姿勢に設定すると、操作軸20と操作スプロケット16との連係が断たれ、操向レバー26を前方に所定角度βの範囲で倒伏させると、操作軸20と操作スプロケット16とが連結される連係断続機構30が構成されている。
【0008】
これにより操向レバー26を前方に所定角度α以上に倒伏させて、操作軸20と操作スプロケット16とを連結した状態では、操向レバー26を左右に振ることで、回動ブラケット23と一緒に操作軸20が回転して操作スプロケット16を回転させることができ、操作スプロケット16の回転がチェーン17によりスプロケット15に伝達されて、ピットマンアーム11が操向レバー26の操作方向と同方向に強制的に操作される。
【0009】
図6,7,8に示すように天秤アーム24の底部に、回動ブラケット23を上下に貫通したレバー31によって縦軸心e周りに回転操作されるロック軸32が備えられており、ロック軸32の上端のロック爪33が回動ブラケット23の上面に係合するロック状態、及びロック爪33が回動ブラケット23の中央空間に臨むロック解除状態に切換可能に構成されている。従って、操向レバー26を起立姿勢に設定して操作軸20と操作スプロケット16との連係を断った状態で、図8に示すようにロック軸32をロック状態に回転しておくと、天秤アーム24を操作軸20の引き上げ方向へ回転させることが不能になる。通常の搭乗操縦時は、操向レバー26を起立姿勢に設定してロックを掛けておくことによって、ステアリングハンドル10による操縦でピットマンアーム11が左右に操作されても、操作スプロケット16が空回りするだけで、操作軸20が操作されることはない。
【0010】
図10に示すように、比較的急傾斜のスロープを介しての圃場への走行機体3の出し入れや、歩み板を用いて走行機体3をトラックの荷台等に積み降ろしする場合等、走行機体3の前後傾斜が大きくなる状態で操縦を行う際には、レバー31によって天秤アーム24のロックを解除した状態で、操向レバー26を前方に所定角度α以上に倒伏させて操作軸20と操作スプロケット16とを連結し、走行機体3の前方で地上に立った作業者が操向レバー26を左右に振ることで、ピットマンアーム11を強制的に操作して、極低速で走行機体3を移動させながら所望の方向に操向する。ディスク28が操作スプロケット16の下面に接当すると、操向レバー26をそれ以上に倒伏することが不能となり、この状態では操向レバー26の押し下げ力を走行機体3の前部に伝えて、走行機体3の前部の浮き上がりを阻止しながら操縦することができる。
【0011】
図6及び図9に示すように、操作軸20の上端に牽制ピン35が後方に突出して設けられ、走行機体3側に設けた牽制金具36にV字状の案内凹部37が形成されている。これにより、操作軸20を下方にスライド操作しながら操向レバー26を起立姿勢に設定すると、操向レバー26が走行機体3の直前方に向かう姿勢(ピットマンアーム11が直前方に向かう直進状態)で、操向レバー26が起立姿勢になる。
【0012】
操向レバー26を用いて地上から操縦する場合、走行機体3を停止操作するために、以下のような構造が備えられている。図2及び図4に示すように、走行機体3の運転ステップ40の左側前部に主クラッチペダル41が備えられ、運転ステップ40の右側前部に左右一対の操向ペダル42が備えられており、操向ペダル42と後部伝動ケース9に内装された左右のサイドクラッチ・ブレーキ43とが独立的にロッド44で連係されている。
【0013】
図2,4,5に示すように、主クラッチペダル41から前方に向けて主クラッチレバー45が延出されて、主クラッチペダル41を走行機体3の前部から手動で切り操作することができる。主クラッチペダル41のクラッチ切り操作に連動して回転する連係軸46が備えられ、連係軸46の右端と左右の操向ペダル42とが長孔融通47を備えた連係金具48を介して連係されており、主クラッチペダル41をクラッチ切り操作すると、連係金具48を介して左右の操向ペダル42が踏み込み方向に操作され、左右のサイドクラッチ・ブレーキ43が同時に操作されて、機体停止操作が行われる。主クラッチペダル41はロックレバー49によって踏み込み操作位置に係止固定することができ、走行機体3を傾斜状態で停止させる場合に使用する。
【0014】
図2及び図3に示すように、操向レバー26の先端にループ状の把手部26aが形成されており、倒伏姿勢の操向レバー26の把手部26aを把持して、走行機体3を前後に押し引き操作することが容易に行える。操向レバー26に、植付走行作業時に走行機体3の前進方向を目視確認する照準具50が折り込み可能に備えられており、操向レバー26を倒伏姿勢に設定した地上操縦時には、照準具50を後方に折り込んで使用する。図3の二点鎖線に示すように、エンジンボンネット51を開放してエンジン6の周りを点検整備するメンテナンス時に、照準具50を上げてエンジンボンネット51を開放姿勢に係止保持するように使用することもできる。
【0015】
[発明の実施の別形態]
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
(1) 簡易には、操向レバー26と操作スプロケット16とを常時連動しておいてもよい。
【0016】
(2) 図11に示すように、天秤アーム24に挿抜可能な係合ピン61を備えて、回動ブラケット23に係合ピン61が挿入される複数の係合孔62を、軸心cを中心とした円弧上に形成し、天秤アーム24と操向レバー26とを一体化しておくことにより、操向レバー26を複数の倒伏姿勢で固定して使用することもできる。これにより、操向レバー26を横に操作しながら、上下方向に力を掛けて操縦することが可能になる。
【0017】
(3) 図12に示すように、主クラッチペダル41にワイヤ63を介して連係した主クラッチレバー64を操向レバー26の把手部26aの近くに備え、把手部26aと主クラッチレバー64とを共握り操作することにより、走行機体3を停止させることができるように構成しておくと便利である。
【0018】
(4) 図13に示すように、天秤アーム24から左右に延出した操作アーム24aと、左右の後輪2のサイドクラッチ・ブレーキ43とをワイヤ65で連係し、操向レバー26を直進位置から左右に設定角以上に操作して前輪1を操向操作すると、操向内側の後輪2のサイドクラッチ・ブレーキ43が操作されて、操向内側の後輪2を停止させるように構成してもよい。これにより、一層地上からの小回りの利いた走行機体3の操縦が可能になる。この場合、操向レバー26を直進位置から左右に設定角以上に操作すると、後輪2のサイドクラッチのみを切り操作する形態で実施してもよい。
【0019】
(5) 操向レバー26と操作スプロケット16とを連係及び解除する連係断続機構30を、専用の操作レバー等で切り換えるように構成することも可能である。
【0020】
(6) 左右の後輪2をデフ機構及びサイドブレーキを介して駆動する機種では、操向レバー26を直進位置から左右に設定角度以上に操作すると、操向内側の後輪2のサイドブレーキを制動作動させるようにして、地上操縦時の小回り移動を可能にすることもできる。
【0021】
(7) ピットマンアーム11と一体回転する回動部材としてのスプロケット15、及び操向レバー26により回転する回動操作部材としての操作スプロケット16をギヤに変更し、スプロケット15及び操作スプロケット16を中間ギヤにより咬合させて、操向レバー26の操作方向にピットマンアーム11を回転させることが可能である。ピットマンアーム11と一体回転する回動部材、及び操向レバー26により回転する回動操作部材をアーム部材で構成し、スプロケット15及び操作スプロケット16をロッドで連動連結することによっても、操向レバー26の操作方向にピットマンアーム11を操作することが可能である。
【0022】
(8) 簡易な構造としては、操向レバー26を操作スプロケット16に着脱可能に構成し、地上操縦時の場合にのみ、取り付けた操向レバー26で操作スプロケット16を回転させ、通常の搭乗操縦時には、操向レバー26を取り外して保管しておくようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】走行機体の前部の斜視図
【図3】走行機体の前部の側面図
【図4】走行機体の操縦系の概略平面図
【図5】主クラッチペダル及び操向ペダルの操作系を展開した側面図
【図6】操向レバーの基部の付近の縦断側面図
【図7】操向レバーの基部の付近の横断平面図
【図8】操向レバーの基部の付近の縦断正面図
【図9】操向レバーの基部の付近の背面図
【図10】地上操縦時の状態を示す側面図
【図11】発明の実施の別形態における操向レバーの基部の付近の縦断側面図
【図12】発明の実施の別形態における操向レバーの付近の平面図
【図13】発明の実施の別形態における走行機体の操縦系の概略平面図
【符号の説明】
【0024】
1 前輪
2 後輪
3 走行機体
26 操向操作具
45 主クラッチレバー
【発明を実施するための最良の形態】
【0001】
図1に、本発明を適用した乗用型農作業機の一例としての乗用田植機が示されている。この乗用田植機は、前輪1及び後輪2を備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、油圧駆動されるリンク機構4を介して4条植の苗植付装置5が昇降可能に連結されて構成されている。図1及び図3に示すように、走行機体3の前部にエンジン6が搭載され、エンジン6の出力が前輪1を軸支したミッションケース7にベルト伝動装置8を介して伝達され、ミッションケース7によりギヤ変速されて前輪1が駆動される。ミッションケース7から取り出された出力が、後輪2を軸支した後部伝動ケース9に伝達され、ミッションケース7から取り出された作業用動力が苗植付装置5に伝達される。
【0002】
図3及び図4に示すように、ミッションケース7の下部に、ステアリングハンドル10によって軸心aを中心に左右に揺動操作されるピットマンアーム11が、前向き片持ち状に備えられ、ピットマンアーム11の前端と左右の前輪1のナックルアーム12とが、タイロッド13で連動連結されて、前輪1のステアリング用リンク機構14が構成されている。
【0003】
図3及び図6に示すように、ピットマンアーム11の下端部に、軸心aと同芯に回動部材としてのスプロケット15が連結され、ピットマンアーム11の前方側箇所に、回動操作部材としての操作スプロケット16が軸心aと平行な軸心b周りに回転自在に備えられており、スプロケット15及び操作スプロケット16が連動部材としてのチェーン17によって巻き掛け連動されている。
【0004】
図6及び図7に示すように、操作スプロケット16は、走行機体3側に固定された固定ボス19に回転自在に支持され、固定ボス19の中心に、操作スプロケット16にスプライン嵌合又はキー嵌合された操作軸20が、上下スライド自在に挿通されている。操作軸20の上部は回動ボス21を介して固定ボス22に支持されており、回動ボス21から前方に延出した回動ブラケット23が軸心b周りに左右回転可能に連結されている。回動ブラケット23の横向きの軸心c周りに上下回転可能に天秤アーム24が支持され、天秤アーム24の後端と操作軸20とがピン25で連結されており、天秤アーム24の軸心c周りの上下回転に伴って操作軸20が軸心bに沿って上下にスライド操作される。天秤アーム24の前端部の横向きの軸心d周りに、起伏揺動自在に操向レバー26が連結されており、軸心dに備えた皿バネ等によって、操向レバー26を任意の起伏位置で保持可能に構成されている。
【0005】
図6及び図7に示すように、操向レバー26の基端部に、天秤アーム24の前端部の下方に周り込む接当部26aが備えられており、図3に示すように操向レバー26を略鉛直な起立姿勢から所定角度αだけ前方に倒伏させると、接当部26aが天秤アーム24の前端部に下方から接当して、天秤アーム24に対して操向レバー26をそれ以上前方に倒伏不能となる。図3に示すように、操向レバー26を前方に所定角度αよりも大きい所定角度βの範囲で倒伏させると、操向レバー26と一体化された天秤アーム24が軸心c周りに回転して、天秤アーム24の後端部が上方に移動し、操作軸20が上方にスライド操作される。
【0006】
図6に示すように、操作軸20の下端に、一対のピン27が上向きに立設されたディスク28が固定され、操作スプロケット16にピン27に対向する係合孔29が設けられている。操作軸20が下方にスライド操作された状態では、係合孔29からピン27が離脱して、操作軸20と操作スプロケット16との連係が断たれており、操作軸20が上方にスライド操作されることにより、係合孔29にピン27が係合して操作軸20と操作スプロケット16とが連結される。
【0007】
以上のように、操向レバー26を起立姿勢に設定すると、操作軸20と操作スプロケット16との連係が断たれ、操向レバー26を前方に所定角度βの範囲で倒伏させると、操作軸20と操作スプロケット16とが連結される連係断続機構30が構成されている。
【0008】
これにより操向レバー26を前方に所定角度α以上に倒伏させて、操作軸20と操作スプロケット16とを連結した状態では、操向レバー26を左右に振ることで、回動ブラケット23と一緒に操作軸20が回転して操作スプロケット16を回転させることができ、操作スプロケット16の回転がチェーン17によりスプロケット15に伝達されて、ピットマンアーム11が操向レバー26の操作方向と同方向に強制的に操作される。
【0009】
図6,7,8に示すように天秤アーム24の底部に、回動ブラケット23を上下に貫通したレバー31によって縦軸心e周りに回転操作されるロック軸32が備えられており、ロック軸32の上端のロック爪33が回動ブラケット23の上面に係合するロック状態、及びロック爪33が回動ブラケット23の中央空間に臨むロック解除状態に切換可能に構成されている。従って、操向レバー26を起立姿勢に設定して操作軸20と操作スプロケット16との連係を断った状態で、図8に示すようにロック軸32をロック状態に回転しておくと、天秤アーム24を操作軸20の引き上げ方向へ回転させることが不能になる。通常の搭乗操縦時は、操向レバー26を起立姿勢に設定してロックを掛けておくことによって、ステアリングハンドル10による操縦でピットマンアーム11が左右に操作されても、操作スプロケット16が空回りするだけで、操作軸20が操作されることはない。
【0010】
図10に示すように、比較的急傾斜のスロープを介しての圃場への走行機体3の出し入れや、歩み板を用いて走行機体3をトラックの荷台等に積み降ろしする場合等、走行機体3の前後傾斜が大きくなる状態で操縦を行う際には、レバー31によって天秤アーム24のロックを解除した状態で、操向レバー26を前方に所定角度α以上に倒伏させて操作軸20と操作スプロケット16とを連結し、走行機体3の前方で地上に立った作業者が操向レバー26を左右に振ることで、ピットマンアーム11を強制的に操作して、極低速で走行機体3を移動させながら所望の方向に操向する。ディスク28が操作スプロケット16の下面に接当すると、操向レバー26をそれ以上に倒伏することが不能となり、この状態では操向レバー26の押し下げ力を走行機体3の前部に伝えて、走行機体3の前部の浮き上がりを阻止しながら操縦することができる。
【0011】
図6及び図9に示すように、操作軸20の上端に牽制ピン35が後方に突出して設けられ、走行機体3側に設けた牽制金具36にV字状の案内凹部37が形成されている。これにより、操作軸20を下方にスライド操作しながら操向レバー26を起立姿勢に設定すると、操向レバー26が走行機体3の直前方に向かう姿勢(ピットマンアーム11が直前方に向かう直進状態)で、操向レバー26が起立姿勢になる。
【0012】
操向レバー26を用いて地上から操縦する場合、走行機体3を停止操作するために、以下のような構造が備えられている。図2及び図4に示すように、走行機体3の運転ステップ40の左側前部に主クラッチペダル41が備えられ、運転ステップ40の右側前部に左右一対の操向ペダル42が備えられており、操向ペダル42と後部伝動ケース9に内装された左右のサイドクラッチ・ブレーキ43とが独立的にロッド44で連係されている。
【0013】
図2,4,5に示すように、主クラッチペダル41から前方に向けて主クラッチレバー45が延出されて、主クラッチペダル41を走行機体3の前部から手動で切り操作することができる。主クラッチペダル41のクラッチ切り操作に連動して回転する連係軸46が備えられ、連係軸46の右端と左右の操向ペダル42とが長孔融通47を備えた連係金具48を介して連係されており、主クラッチペダル41をクラッチ切り操作すると、連係金具48を介して左右の操向ペダル42が踏み込み方向に操作され、左右のサイドクラッチ・ブレーキ43が同時に操作されて、機体停止操作が行われる。主クラッチペダル41はロックレバー49によって踏み込み操作位置に係止固定することができ、走行機体3を傾斜状態で停止させる場合に使用する。
【0014】
図2及び図3に示すように、操向レバー26の先端にループ状の把手部26aが形成されており、倒伏姿勢の操向レバー26の把手部26aを把持して、走行機体3を前後に押し引き操作することが容易に行える。操向レバー26に、植付走行作業時に走行機体3の前進方向を目視確認する照準具50が折り込み可能に備えられており、操向レバー26を倒伏姿勢に設定した地上操縦時には、照準具50を後方に折り込んで使用する。図3の二点鎖線に示すように、エンジンボンネット51を開放してエンジン6の周りを点検整備するメンテナンス時に、照準具50を上げてエンジンボンネット51を開放姿勢に係止保持するように使用することもできる。
【0015】
[発明の実施の別形態]
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
(1) 簡易には、操向レバー26と操作スプロケット16とを常時連動しておいてもよい。
【0016】
(2) 図11に示すように、天秤アーム24に挿抜可能な係合ピン61を備えて、回動ブラケット23に係合ピン61が挿入される複数の係合孔62を、軸心cを中心とした円弧上に形成し、天秤アーム24と操向レバー26とを一体化しておくことにより、操向レバー26を複数の倒伏姿勢で固定して使用することもできる。これにより、操向レバー26を横に操作しながら、上下方向に力を掛けて操縦することが可能になる。
【0017】
(3) 図12に示すように、主クラッチペダル41にワイヤ63を介して連係した主クラッチレバー64を操向レバー26の把手部26aの近くに備え、把手部26aと主クラッチレバー64とを共握り操作することにより、走行機体3を停止させることができるように構成しておくと便利である。
【0018】
(4) 図13に示すように、天秤アーム24から左右に延出した操作アーム24aと、左右の後輪2のサイドクラッチ・ブレーキ43とをワイヤ65で連係し、操向レバー26を直進位置から左右に設定角以上に操作して前輪1を操向操作すると、操向内側の後輪2のサイドクラッチ・ブレーキ43が操作されて、操向内側の後輪2を停止させるように構成してもよい。これにより、一層地上からの小回りの利いた走行機体3の操縦が可能になる。この場合、操向レバー26を直進位置から左右に設定角以上に操作すると、後輪2のサイドクラッチのみを切り操作する形態で実施してもよい。
【0019】
(5) 操向レバー26と操作スプロケット16とを連係及び解除する連係断続機構30を、専用の操作レバー等で切り換えるように構成することも可能である。
【0020】
(6) 左右の後輪2をデフ機構及びサイドブレーキを介して駆動する機種では、操向レバー26を直進位置から左右に設定角度以上に操作すると、操向内側の後輪2のサイドブレーキを制動作動させるようにして、地上操縦時の小回り移動を可能にすることもできる。
【0021】
(7) ピットマンアーム11と一体回転する回動部材としてのスプロケット15、及び操向レバー26により回転する回動操作部材としての操作スプロケット16をギヤに変更し、スプロケット15及び操作スプロケット16を中間ギヤにより咬合させて、操向レバー26の操作方向にピットマンアーム11を回転させることが可能である。ピットマンアーム11と一体回転する回動部材、及び操向レバー26により回転する回動操作部材をアーム部材で構成し、スプロケット15及び操作スプロケット16をロッドで連動連結することによっても、操向レバー26の操作方向にピットマンアーム11を操作することが可能である。
【0022】
(8) 簡易な構造としては、操向レバー26を操作スプロケット16に着脱可能に構成し、地上操縦時の場合にのみ、取り付けた操向レバー26で操作スプロケット16を回転させ、通常の搭乗操縦時には、操向レバー26を取り外して保管しておくようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】走行機体の前部の斜視図
【図3】走行機体の前部の側面図
【図4】走行機体の操縦系の概略平面図
【図5】主クラッチペダル及び操向ペダルの操作系を展開した側面図
【図6】操向レバーの基部の付近の縦断側面図
【図7】操向レバーの基部の付近の横断平面図
【図8】操向レバーの基部の付近の縦断正面図
【図9】操向レバーの基部の付近の背面図
【図10】地上操縦時の状態を示す側面図
【図11】発明の実施の別形態における操向レバーの基部の付近の縦断側面図
【図12】発明の実施の別形態における操向レバーの付近の平面図
【図13】発明の実施の別形態における走行機体の操縦系の概略平面図
【符号の説明】
【0024】
1 前輪
2 後輪
3 走行機体
26 操向操作具
45 主クラッチレバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に操向操作具を備え、前記操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が可能な第1状態と、前記操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が不能な第2状態とを設定して、
前記操向操作具を前方に倒伏操作可能に構成し、前記操向操作具の倒伏角度によって第1及び第2状態が選択されるように構成してある乗用型農作業機。
【請求項2】
前記第1状態に対応する倒伏角度及び第2状態に対応する倒伏角度に、前記操向操作具を固定可能に構成してある請求項1に記載の乗用型農作業機。
【請求項3】
前記第2状態において、前記操向操作具が直進位置に保持されるように構成してある請求項1又は2に記載の乗用型農作業機。
【請求項4】
前記第2状態において、前記操向操作具により走行機体の前部を押し下げ操作可能に構成してある請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の乗用型農作業機。
【請求項5】
前記操向操作具を直進位置から左右に設定以上に操作すると、操向内側の後輪のサイドクラッチが切り操作されるように構成してある請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の乗用型農作業機。
【請求項6】
機体停止操作が可能な主クラッチレバーを走行機体の前部に備えてある請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の乗用型農作業機。
【請求項1】
走行機体の前部に操向操作具を備え、前記操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が可能な第1状態と、前記操向操作具により走行機体の前方の地上から前輪の操向操作が不能な第2状態とを設定して、
前記操向操作具を前方に倒伏操作可能に構成し、前記操向操作具の倒伏角度によって第1及び第2状態が選択されるように構成してある乗用型農作業機。
【請求項2】
前記第1状態に対応する倒伏角度及び第2状態に対応する倒伏角度に、前記操向操作具を固定可能に構成してある請求項1に記載の乗用型農作業機。
【請求項3】
前記第2状態において、前記操向操作具が直進位置に保持されるように構成してある請求項1又は2に記載の乗用型農作業機。
【請求項4】
前記第2状態において、前記操向操作具により走行機体の前部を押し下げ操作可能に構成してある請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の乗用型農作業機。
【請求項5】
前記操向操作具を直進位置から左右に設定以上に操作すると、操向内側の後輪のサイドクラッチが切り操作されるように構成してある請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の乗用型農作業機。
【請求項6】
機体停止操作が可能な主クラッチレバーを走行機体の前部に備えてある請求項1〜5のうちのいずれか一つに記載の乗用型農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−15687(P2007−15687A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195675(P2006−195675)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【分割の表示】特願2004−62006(P2004−62006)の分割
【原出願日】平成10年6月10日(1998.6.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【分割の表示】特願2004−62006(P2004−62006)の分割
【原出願日】平成10年6月10日(1998.6.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]