亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置
【課題】水処理工程の被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視することが可能な亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置を提供する。
【解決手段】
亜硝酸性窒素濃度監視装置1は、処理槽5に流入する被処理水の波長353nmの光に対する吸光度を測定する吸光度測定手段a2と、処理槽5から排出される処理水の波長353nmの光に対する吸光度を測定する吸光度測定手段b3とを備える。さらに、吸光度測定手段a2で測定された吸光度aと吸光度測定手段b3により測定された吸光度bの差に基づいて、演算手段4が処理槽5で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度若しくは処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する。
【解決手段】
亜硝酸性窒素濃度監視装置1は、処理槽5に流入する被処理水の波長353nmの光に対する吸光度を測定する吸光度測定手段a2と、処理槽5から排出される処理水の波長353nmの光に対する吸光度を測定する吸光度測定手段b3とを備える。さらに、吸光度測定手段a2で測定された吸光度aと吸光度測定手段b3により測定された吸光度bの差に基づいて、演算手段4が処理槽5で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度若しくは処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の亜硝酸性窒素濃度の監視方法及び監視装置に関する。特に、水処理の分野で、水処理工程の制御に用いられる亜硝酸性窒素濃度の監視方法及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素は環境中に広く存在し、自然水中にも含まれているが、富栄養化として問題となるほど水中の窒素が増加する要因は、生活排水、工場排水、農業排水等の混入に由来する場合が多い。窒素は生物の増殖活動に重要な役割を果たしており、排水の生物処理に関わる微生物にとって必須の元素である。しかし、窒素は湖沼、海域等の富栄養化を促進する一因とされており、水中の窒素化合物の増加は好ましくない。そこで、非特許文献1に示される生物学的硝化脱窒法等の方法により排水中の窒素除去が行われている。
【0003】
生物学的硝化脱窒法について説明する。まず好気条件下において硝化細菌の働きにより水中のアンモニアを亜硝酸や硝酸に転換する。生じた硝酸、亜硝酸は脱窒細菌の働きにより、NO3-→NO2-→NO→N2O→N2の順で還元されて窒素ガスとして除去される。
【0004】
この生物学的硝化脱窒プロセスの制御について、非特許文献1に「窒素除去プロセスについては、硝化や脱窒反応をセンサを用いてモニタリングする技術がある程度確立されており、それを応用した技術開発が活発である。アンモニアの測定法としてイオン電極法、硝酸・亜硝酸の測定として紫外線吸光度法が主に用いられる」と記載されている。
【0005】
生物学的硝化脱窒プロセスの制御は、上記のモニタリング技術を用いて、硝化反応、脱窒反応の終点を検出し酸素供給をオン・オフするという制御法が多く用いられている。
【0006】
硝化工程ではアンモニア性窒素(NH4+−N)を、亜硝酸性窒素(NO2-−N)を経由して硝酸性窒素(NO3-−N)まで好気条件下で酸化するのが一般的である。しかし、脱窒するためには、硝酸性窒素まで酸化する必要はなく、亜硝酸性窒素まで酸化すればよい。そのほうが亜硝酸性窒素を硝酸性窒素に酸化するために必要な酸素供給を行う必要がなくなり、省エネルギーにつながる。
【0007】
しかし、水処理プロセスで亜硝酸性窒素を単独でモニタリングできる技術がないため、必要酸素供給量は増えるものの、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化するのが一般的である。
【0008】
水中の亜硝酸性窒素を単独でモニタリングできる計測装置があれば、上記のような生物学的硝化脱窒法において、アンモニア性窒素が亜硝酸性窒素に酸化された段階を検出できるため、現状より省エネルギー運転が可能となる。
【0009】
また、近年新しい生物学的窒素除去法として、嫌気性アンモニア酸化細菌(アナモックス細菌)による窒素除去法が提案されている(例えば、非特許文献2)。嫌気性アンモニア酸化の反応は、NO2-がNH2OHに還元され、還元されたNH2OHとNH4+とからN2H4が生成し、最終的にN2ガスに脱窒される。化学量論的には次式で表される。
NH4++1.32NO2-+0.066HCO3-+0.13H+→
1.02N2+0.26NO3-+0.066CH2O0.5N0.15+2.03H2O…(1)
アナモックス細菌による窒素除去法では、(1)アナモックス細菌が独立栄養性の脱窒素反応を行うので水素供与体としての有機炭素源が不要となる、(2)被処理水中のNH4+の半量をNO2-に酸化すればよいので酸素供給量を削減できる、(3)余剰汚泥発生量が低減できる、(4)従来の生物学的窒素処理に比べて高い窒素処理速度で処理可能であるなどの特長を有する。この嫌気性アンモニア酸化プロセスの適用は、有機物濃度が低く(低C/N比)で比較的アンモニア性窒素(NH4+−N)濃度が高い排水に適しているといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−123705号公報
【特許文献2】特開2010−197383号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】水環境ハンドブック、(社)日本水環境学会編、朝倉書店、2006年10月、p.241
【非特許文献2】造水技術ハンドブック.2004、(財)造水促進センター、造水技術ハンドブック編集企画委員会編、2004年11月、p.75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、アナモックス細菌による反応で基質となるアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素のうち、亜硝酸性窒素はその濃度が高いと、嫌気性アンモニア酸化反応を阻害する場合がある。そこで、嫌気性アンモニア酸化処理をアナモックス細菌の活性を高い状態に維持して行うためには、基質でありかつ濃度によっては阻害物質となる可能性のある亜硝酸性窒素濃度を監視することが重要となる。
【0013】
そこで、本発明は、水処理工程の被処理水の亜硝酸性窒素濃度監視することが可能な亜硝酸性窒素濃度監視装置及び亜硝酸性窒素濃度監視方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出することを特徴としている。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出することを特徴としている。
【0016】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、予め、前記亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度と、前記有機物により吸収される光に対する吸光度との相関性を算出し、前記処理槽に流入する被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽に流入する被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、補正された前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と、補正された前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理液中の亜硝酸性窒素濃度を算出することを特徴としている。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、上記亜硝酸性窒素濃度監視方法において、前記亜硝酸性窒素により吸収される光の波長は、330〜380nmであることを特徴としている。
【0018】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0020】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置は、被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第3吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第4吸光度測定手段と、前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第3吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第4吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、補正された前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、補正された前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度変化を算出する演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
以上の発明によれば、水処理工程の被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視することが可能な亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置を提供することに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置の吸光度測定手段の概略構成図である。
【図3】試料水及び各種窒素様態の標準液における吸収スペクトルの測定結果である。
【図4】亜硝酸性窒素標準液の濃度と、その濃度における亜硝酸性窒素標準液の波長353nmの光に対する吸光度との関係を示す図(検量線)である。
【図5】実施例に係る嫌気性アンモニア酸化処理工程の処理槽に流入する被処理水または処理槽から流出する処理水の波長353nmの光に対する吸光度の経日変化を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置で算出された、処理槽で処理されて低下した亜硝酸性窒素濃度の演算値と、公定法による実測値に基づいて算出した処理槽で処理されて低下した亜硝酸性窒素濃度の演算値との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のUV測定手段の概略構成図である。
【図10】本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置の吸光度測定手段の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置について、アナモックス細菌による嫌気性アンモニア酸化処理プロセスを例示して説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1は、吸光度測定手段a2、吸光度測定手段b3、演算手段4より構成され、嫌気性アンモニア酸化処理槽5(以後、処理槽5とする)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。
【0025】
吸光度測定手段a2は、アナモックス細菌による脱窒反応を行う処理槽5に被処理水を供給する供給配管6に設けられる。吸光度測定手段a2には、ポンプ7により供給配管6から被処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度aが測定される。
【0026】
吸光度測定手段b3は、処理槽5で処理された後の被処理水(以後、処理水とする)を排出する排出配管8に設けられる。吸光度測定手段b3には、ポンプ9により排出配管8から処理水がサンプリングされる。そして、この処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度bが測定される。
【0027】
演算手段4は、吸光度測定手段a2から吸光度aが、吸光度測定手段b3から吸光度bがそれぞれ入力され、処理槽5で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度、または処理槽5に供給される被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。処理槽5では、(1)式に示すアナモックス細菌による反応(アナモックス反応)により、被処理水の亜硝酸性窒素濃度が減少する。つまり、被処理水の亜硝酸性窒素濃度は、処理水の亜硝酸性窒素濃度と比較して高いので、吸光度aは吸光度bより高くなる。よって、吸光度aから吸光度bを差引き、処理槽5で処理された被処理水における亜硝酸性窒素濃度の低下を算出する。
【0028】
嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおいて、処理槽5には、供給配管6よりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含んだ被処理水が移送される。処理槽5に保持されたアナモックス細菌により(1)式に示したアナモックス反応が起こり、被処理水中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とが反応して窒素が生成し、被処理水の脱窒が行われる。処理槽5で処理された処理水は、排出配管8を介して排出される。
【0029】
図2に示すように、供給配管6を流通する被処理水の一部がポンプ7により吸光度測定手段a2のセル10に導入される。そして、光源11からの光がレンズ12、干渉フィルタ13を通過することで、波長353nmの光がセル10に照射される。そして、セル10を透過した光の強度をフォトダイオード14で検出し、この検出された光の強度に基づいて演算部15で吸光度aが算出される。算出された吸光度aは、図1に示す演算手段4に入力される。なお、吸光度測定手段b3の構成も図2に示す吸光度測定手段a2と同様であり、排出配管8を流通する処理水の吸光度bが算出され、算出された吸光度bが演算手段4に入力される。
【0030】
演算手段4では、吸光度aから吸光度bを差引き、その差から嫌気性アンモニア酸化処理で低下した被処理水と処理水の亜硝酸性窒素濃度差を演算する。また、この演算により求められる亜硝酸性窒素濃度差に基づいて処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を推定する。
【0031】
(実施例)
具体的な実施例を挙げて、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1及びこの装置による亜硝酸性窒素濃度監視方法をより詳細に説明する。実施例では、下水処理場の引き抜き汚泥の脱離液を被処理水として、被処理液中のアンモニア性窒素を窒素ガスとして分離除去する処理試験を行った。
【0032】
被処理液は、好気性アンモニア酸化細菌(硝化細菌)の存在下で曝気してアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素に転換する部分亜硝酸化処理槽(PN槽)で処理した。その後、PN槽で処理後の被処理水を、アナモックス細菌の存在下でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて窒素に転換する嫌気性アンモニア酸化処理槽(AX槽)により処理した。この処理試験において、図1に示した亜硝酸性窒素濃度監視装置1で、AX槽(すなわち、処理槽5)の亜硝酸性窒素濃度を監視した。
【0033】
まず、AX槽に流入する被処理水(試料水)の吸収スペクトルを測定した。被処理水には、有機成分のほか、窒素成分として、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素が含まれている。吸収スペクトル測定は、被処理水(5Cの濾紙にて濾過したもの)、アンモニア標準溶液(NH4+−N 100mg/L)、亜硝酸標準液(NO2-−N 100mg/L)、硝酸標準溶液(NO3-−N 100mg/L)の溶液でそれぞれ行った。測定結果を図3に示す。
【0034】
図3に示すように、330〜380nmの吸収領域において、硝酸性窒素及びアンモニア性窒素の吸収が存在せず、亜硝酸性窒素のみ吸収があることが確認できた。すなわち、波長330〜380nmの光に対する吸光度を測定することにより、アンモニア性窒素及び硝酸性窒素の影響を受けずに亜硝酸性窒素を検出することが可能であることがわかる。
【0035】
また、図4に示すように、亜硝酸性窒素溶液の濃度と、その濃度における波長353nm付近の光(波長330〜380nmの光)に対する吸光度との関係は直線関係にある。そこで、亜硝酸性窒素を含む溶液の吸光度を測定し、この直線関係(検量線)に基づいて、亜硝酸性窒素濃度を算出する。なお、亜硝酸性窒素濃度の検出範囲は特に限定されるものではないが、図4に示した検量線からは、少なくとも0〜1000mg−N/Lの範囲での亜硝酸性窒素濃度の測定が可能であることがわかる。
【0036】
図5は、亜硝酸性窒素濃度監視装置1における、AX槽に流入する被処理水の波長353nmの光に対する吸光度a(すなわち、吸光度測定手段a2での測定値)と、AX槽で処理後の処理水の波長353nmの光に対する吸光度b(すなわち、吸光度測定手段b3での測定値)の測定結果である。
【0037】
図5に示すように、被処理水の吸光度aは、経過日数に対して大きく変化している。これは、AX槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度が変化するだけではなく、波長353nmの光を吸収する亜硝酸性窒素以外の物質物質(以後、阻害物質とする)の濃度が変化するためと考えられる。阻害物質としては、有機物等が考えられる。また、処理水の吸光度bも、経過日数に対して大きく変化している。これは、処理水の亜硝酸性窒素濃度(アナモックス反応で消費されなかった亜硝酸性窒素)及びAX槽に流入する阻害物質の濃度が変化するためであると考えられる。
【0038】
被処理水の吸光度aと処理水の吸光度bとの差は、アナモックス反応により消費されることによる亜硝酸性窒素濃度の低下に基づくものであると考えられる。そこで、吸光度aと吸光度bの差を算出してアナモックス反応により低下した亜硝酸性窒素濃度を算出した。また、亜硝酸性窒素濃度を測定する公定法であるイオンクロマトグラフ法により、被処理水の亜硝酸性窒素濃度と、処理水の亜硝酸性窒素濃度を測定し、AX槽のアナモックス反応で低下した亜硝酸性窒素濃度を算出した。
【0039】
図6に、アナモックス反応により低下した亜硝酸性窒素濃度の公定法による実測値より算出した演算値と、吸光度より算出した演算値との関係を示す。
【0040】
図6に示すように、吸光度より算出された亜硝酸性窒素濃度は、実測値に基づいて算出される亜硝酸性窒素濃度とよく一致していることがわかる。すなわち、図5に示した結果より、被処理水と処理水中には、阻害物質に起因する波長353nmの光の吸収成分があることが確認できるが、図6に示した結果より、AX槽において亜硝酸性窒素以外の吸収成分の増減がほとんどなかった(無視できるほど小さかった)ことを示している。
【0041】
つまり、波長353nmの光の吸光度を吸光度E353とすると、被処理水及び処理水のそれぞれの吸光度E353は、(2)式、(3)式で示される。
被処理水の吸光度E353
=(被処理水のNO2-−Nの吸光度E353)+(被処理水の阻害物質の吸光度E353)
…(2)
処理水の吸光度E353
=(処理水のNO2-−Nの吸光度E353)+(処理水の阻害物質の吸光度E353)
…(3)
そして、AX槽において、阻害物質の吸収成分の増減がほとんどない場合には、
(被処理水の阻害物質の吸光度E353)=(処理水の阻害物質の吸光度E353)
…(4)
であるので、(2)〜(4)式から
被処理水の吸光度E353−処理水の吸光度E353
=(処理水のNO2-−Nの吸光度E353)−(被処理水のNO2-−Nの吸光度E353)
…(5)
となり、被処理水の吸光度aと処理水の吸光度bとの差が、AX槽で除去された亜硝酸性窒素による吸光度の差になる。
【0042】
このように、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1によれば、AX槽(処理槽5)での反応により低下した亜硝酸性窒素濃度を迅速に検出することができる。この検出結果に基づいて、AX槽での反応が滞りなく進行しているかチェックすることができる。例えば、同じ窒素負荷でAX槽での処理を行っている場合には、除去された亜硝酸性窒素濃度が小さくなってきたことを検出することで(換言すると、被処理水と処理水との亜硝酸性窒素濃度差が小さくなってきたことを検出することで)、AX槽での処理状態が悪化していると判断することができる。また、亜硝酸性窒素濃度の低下がほとんど検出できない場合には、AX槽での窒素除去反応が進行していない場合が想定されるので、AX槽の運転を中止する等、被処理水の処理を制御することができる。
【0043】
表1に、実施例の処理試験において、PN槽に流入する被処理水中、AX槽に流入する被処理水中、及びAX槽から排出される処理水中の窒素成分(アンモニア性窒素等)及び汚濁成分(Biochemical Oxygen Demand:BOD)の平均濃度の公定法による測定値を示す。なお、ATU−BODとは、硝化反応を抑制したBODのことであり、硝化反応における酸素消費を含まない有機物に基づく汚濁量である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、PN槽で処理することで被処理水の亜硝酸性窒素濃度が上昇し、AX槽で処理することで亜硝酸性窒素濃度及びアンモニア性窒素濃度(すなわち、全窒素濃度)が減少していることがわかる。また、ATU−BODの変化を見ると、PN槽、AX槽における各処理にて減少傾向にある。
【0046】
また、AX槽の処理条件により被処理水中の亜硝酸性窒素の除去率は変動する。実施例では、表1に示すように、AX槽から流出する処理水中に残留する亜硝酸性窒素は低濃度となっている。すなわち、AX槽で約95%の亜硝酸性窒素の高除去率が得られ、良好な処理条件で運転されていることを示す。しかし、流入負荷の変動や嫌気性アンモニア酸化細菌活性の低下などで処理状態が悪化すれば、AX槽から流出する処理水の亜硝酸性窒素濃度は上昇することとなる。したがって、AX槽の前後における亜硝酸性窒素濃度の差を測定することで、AX槽の処理状態を監視でき、処理状態が悪化した場合には、運転条件(被処理水の供給速度や希釈水の供給速度など)を変更することで処理を安定させる制御を行うことが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1及び亜硝酸性窒素濃度監視方法によれば、嫌気性アンモニア酸化処理槽(AX槽)の亜硝酸性窒素濃度の変化を迅速に検出することができる。そして、嫌気性アンモニア酸化処理で除去された亜硝酸性窒素濃度を連続的に監視することで、嫌気性アンモニア酸化処理槽の処理状況を把握することができる。その結果、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおいて、処理状況が悪化傾向にある場合には、被処理水濃度、被処理水供給量を制御して窒素負荷量を減少させる等の対策をとることができる。
【0048】
AX槽に流入する被処理水には、亜硝酸性窒素以外にも波長353nmの光を吸収する成分(例えば、着色成分など)が存在しているので、単純に吸光度を測定し、吸光度の測定値と検量線を用いて亜硝酸性窒素濃度を算出することができない場合がある。
【0049】
本発明の実施形態において、AX槽の除去対象は亜硝酸性窒素であり、被処理水と処理水の亜硝酸性窒素濃度が大きく変化する。一方で、共存する阻害物質はAX槽での除去対象でないため、除去されないか、除去されても少量であると考えられる。そのため、AX槽に流入する被処理水とAX槽から流出する処理水のそれぞれで測定した吸光度の差を算出することで、AX槽で除去された亜硝酸性窒素を推測することができる。
【0050】
なお、表1に示したように、AX槽でのアナモックス反応によりほとんどの亜硝酸性窒素が除去された場合、AX槽で除去された亜硝酸性窒素濃度はAX槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度とほぼ等しいものと考えられる。よって、AX槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度に基づいて、AX槽の処理条件を制御することもできる。
【0051】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視方法、及び亜硝酸性窒素濃度監視装置について、図7を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16は、吸光度測定手段17を1つ備え、この吸光度測定手段17で、被処理水の吸光度aと処理水の吸光度bを測定するものである。よって、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1と同様のものについては同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0052】
図7に示すように、本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16は、吸光度測定手段17、演算手段4より構成され、嫌気性アンモニア酸化処理槽(処理槽5)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。
【0053】
吸光度測定手段17は、アナモックス細菌による脱窒反応を行う処理槽5に被処理水を供給する供給配管6と処理槽5で処理された処理水を排出する排出配管8に流路切換弁18を介して設けられる。吸光度測定手段17には、供給配管6の被処理水若しくは排出配管8の処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水若しくは処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度が測定される。
【0054】
演算手段4は、吸光度測定手段17から吸光度a及び吸光度bが入力され、処理槽5で処理されて低下した亜硝酸性窒素濃度、及び処理槽5に供給される被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。
【0055】
嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおいて、処理槽5には、供給配管6よりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含んだ被処理水が移送される。処理槽5に保持されたアナモックス細菌により(1)式に示したアナモックス反応が起こり、被処理水中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とが反応して窒素が生成し、被処理水の脱窒が行われる。処理槽5で処理された処理水は、排出配管8を介して排出される。
【0056】
吸光度測定手段17には、流路切換弁18を切り換えることで、供給配管6から被処理水がサンプリングされる。そして、サンプリングされた被処理水の吸光度aが測定される。また、一定時間経過後に流路切換弁18を切り換えて、排出配管8から処理水がサンプリングされる。そして、サンプリングされた処理水の吸光度bが測定される。なお、吸光度測定手段17での、被処理水と処理水の吸光度測定の順番は特に限定するものではないが、処理槽5での反応は亜硝酸性窒素が減少する反応であるので、処理水の吸光度bを測定した後に、流路切換弁18を切り換えて被処理水aの吸光度を測定することで、吸光度の測定誤差を低減することができる。
【0057】
演算手段4では、吸光度aから吸光度bを差引き、その差から嫌気性アンモニア酸化処理の被処理水と処理水の亜硝酸性窒素濃度差を演算する。また、算出された亜硝酸性窒素濃度に基づいて処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を推定する。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16は、吸光度測定手段17が1つであるので、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1より構成が簡略化される。
【0059】
そして、本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16においても、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1と同様に、AX槽(処理槽5)の亜硝酸性窒素濃度を監視することができた。
【0060】
(実施形態3)
図8に示すように、本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19は、吸光度測定手段a2、吸光度測定手段b3、UV測定手段a20、UV測定手段b21、演算手段4より構成され、部分亜硝酸化処理槽(以後、処理槽22とする)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。なお、吸光度測定手段a2及び吸光度測定手段b3は、実施形態1の吸光度測定手段と同様であるので、同じ符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0061】
UV測定手段a20は、硝化細菌による部分亜硝酸化反応を行う処理槽22に被処理水を供給する供給配管23に設けられる。UV測定手段a20には、ポンプ24により供給配管23から被処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水に波長254nmのUV光を照射して、このUV光に対する吸光度UVaが測定される。また、この被処理水に波長546nmのVIS光(可視光)を照射して、このVIS光に対する吸光度(VISa)が測定される。UV測定手段a20では、UVa(または、UVa−VISa)と有機成分とが相関関係を有することからCODなどの有機汚濁濃度を測定し、VISaと濁質成分とが相関関係を有することから濁度またはSSを測定する。そして、UV測定手段a20での測定結果は、演算手段4に送信される。また、UV測定手段a20で測定された後の被処理水は、吸光度測定手段a2に移送される。
【0062】
吸光度測定手段a2は、UV測定手段a20の後段に設けられ、UV測定手段a20から移送された被処理水に波長353nmの光を照射して、サンプリングされた被処理水の吸光度が測定される。
【0063】
UV測定手段b21は、処理槽22で処理された処理水を排出する排出配管25に設けられる。UV測定手段b21には、ポンプ26により排出配管25から処理水がサンプリングされる。そして、UV測定手段b21では、UV測定手段a20と同様に、UVb(または、UVb−VISb)と有機成分とが相関関係を有することからCODなどの有機汚濁濃度を測定し、VISbと濁質成分とが相関関係を有することから濁度またはSSを測定する。そして、UV測定手段b21での測定結果は、演算手段4に送信される。また、UV測定手段b21で測定された後の処理水は、吸光度測定手段b3に移送される。
【0064】
吸光度測定手段b3は、UV測定手段b21の後段に設けられ、UV測定手段b21から移送された処理水に波長353nmの光を照射して、サンプリングされた処理水の吸光度が測定される。
【0065】
演算手段4は、吸光度測定手段a2から吸光度aが、吸光度測定手段b3から吸光度bがそれぞれ入力され、処理槽22で処理されて生成した亜硝酸性窒素濃度を算出する。なお、演算手段4には、UV測定手段a20からUVaが、UV測定手段b21からUVbがそれぞれ入力され、吸光度a及び吸光度bの補正が行われる。
【0066】
処理槽22では、(6)式に示す硝化細菌等による反応(アンモニア酸化反応)により、亜硝酸性窒素濃度が増加する。
2NH3+3O2→2HNO2+2H2O …(6)
つまり、処理水の亜硝酸性窒素濃度は、被処理水の亜硝酸性窒素濃度と比較して高いので、吸光度bは吸光度aより高くなる。よって、吸光度bから吸光度aを差し引くことで、処理槽22で処理された処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。
【0067】
また、処理槽22に保持される硝化細菌は独立栄養細菌であるが、従属栄養性のBOD酸化細菌も共生するので有機成分が減少する。つまり、実施形態1、2の嫌気性アンモニア酸化処理プロセスと異なり、阻害物質による波長330〜380nmの光の吸光度を一定とみなすことができない場合がある。そこで、UV測定手段a20及びUV測定手段b21により、亜硝酸性窒素成分の存在による影響を受けることなく有機成分に基づく吸光度を計測し、この計測結果に基づいて、吸光度測定手段a2及び吸光度測定手段b3で測定された吸光度を補正する。
【0068】
アンモニア性窒素の部分亜硝酸化工程において、処理槽22には、供給配管23よりアンモニア性窒素を含んだ被処理水が移送される。処理槽22に保持された硝化細菌等を含む細菌群により(6)式に示した反応が起こり、被処理水中のアンモニア性窒素の一部が亜硝酸性窒素に転換される。処理槽22で処理された処理水は、排出配管25を介して後段の嫌気性アンモニア処理槽(図示省略)に移送される。
【0069】
ここで、UV測定手段a20(及びUV測定手段b21)について浸漬型UV計を例示して説明する。UV測定手段a20(及びUV測定手段b21)は、サンプリング型(フローセル方式)のものや浸漬型のものがあるが、どちらの形態でも本実施形態に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19に適用することができる。
【0070】
図9に示すように、浸漬型のUV計は、光源11からの光がハーフミラー27で参照側28と測定側29に振り分けられる。参照側28で取り出された光は、光学フィルタ(図示せず)を透過してUV検出器30、VIS検出器31で強度が検出され、検出された参照信号(UV−R,VIS−R)が演算部33に送信される。測定側29の光は、サンプリングされた試料水が流れている平行窓34,34を透過した後、ハーフミラー35で2つの光(UVとVIS)に分けられ、光学フィルタ(図示せず)を透過してUV検出器36、VIS検出器37で強度が検出され、検出された測定信号(UV−S,VIS−S)が演算部33に送信される。演算部33では、参照信号及び測定信号に基づいて、COD濃度、SS濃度等が算出される。
【0071】
演算手段4では、UV測定手段b21の測定結果に基づいて補正された吸光度bから、UV測定手段a20の測定結果に基づいて補正された吸光度aを差引き、その差から部分亜硝酸化工程により生成した亜硝酸性窒素濃度(すなわち、処理水の亜硝酸性窒素濃度)を演算する。
【0072】
(実施例)
具体的な実施例を挙げて、本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19及び亜硝酸性窒素濃度監視方法をより詳細に説明する。
【0073】
実施例では、実施形態1の実施例と同様に、下水処理場の引き抜き汚泥の脱離液を被処理水として、被処理液中のアンモニア性窒素を窒素ガスとして分離除去する処理試験を行った。
【0074】
被処理液は、硝化細菌の存在下で曝気してアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素に転換する部分亜硝酸化処理槽(PN槽)で処理した。その後、PN槽で処理後の被処理水は、嫌気性アンモニア酸化細菌(アナモックス細菌)の存在下でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて窒素に転換する嫌気性アンモニア酸化処理槽(AX槽)により処理した。この処理試験において、図8に示した亜硝酸性窒素濃度監視装置19で、PN槽(処理槽22)で生成する処理水中の亜硝酸性窒素を監視した。
【0075】
亜硝酸性窒素濃度監視装置19では、UV光に対する吸光度E254と波長353nmの光に対する吸光度E353との相関関係(検量線)を予め算出しておき、吸光度E254に基づいて吸光度E353の補正を行う。
【0076】
つまり、PN槽に供給される被処理水の吸光度も、PN槽から排出される処理水の吸光度も、実施形態1の実施例で示した(2)、(3)式と同様であると考えられる。しかしながら、PN槽では、実施形態1の実施例で示した(4)式が成り立たない場合がある。
そこで、(2),(3)式において、有機汚濁物質の吸光度E254と相関関係にある有機汚濁物質の吸光度E353に基づいて、被処理水の吸光度E353及び処理水の吸光度E353の測定値を補正する。図3に示すように、試料水は、波長254nm、波長353nmの光に対して吸収がある。そして、有機汚濁物質の波長254nmの光に対する吸光度E254と有機汚濁物質の波長353nmの光に対する吸光度E353は対応関係にあり、有機汚濁物質の吸光度E254の値から有機汚濁物質の吸光度E353の値を一義的に定めることができる。すなわち、被処理水(または、処理水)において、有機汚濁物質の吸光度E254と有機汚濁物質の吸光度E353との関係により、その検量線により、有機汚濁物質の吸光度E254から有機汚濁物質の吸光度E353を求めることができる。また、生活系排水の処理水、一般河川水では、有機物の形態が類似しているため、UV計の吸光度E254(UVまたはUV−VIS)と有機物濃度の指標であるCODの値の比は、地域に関係なく類似していることから、通常の試料水にも適応可能である。
【0077】
よって、(2),(3)式は次のように近似することができる。
被処理水の吸光度E353
=(被処理水のNO2-−Nの吸光度E353)
+(吸光度E254から換算した被処理水の有機汚濁物質の吸光度E353) …(7)
処理水の吸光度E353
=(処理水のNO2-−Nの吸光度E353)
+(吸光度E254から換算した処理水の有機汚濁物質の吸光度E353) …(8)
そして、(7),(8)式に基づいて、吸光度測定手段の吸光度E353とUV測定手段の吸光度E254の測定結果より、直接被処理水または処理水の亜硝酸性窒素による吸光度(NO2-−Nの吸光度E353)を算出することができる。そして、(7),(8)の測定結果の差をとることにより、PN槽で生成した亜硝酸性窒素の濃度を算出(または、監視)することができる。なお、表1に示すように、PN槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度が低い(若しくは、生成量に対して無視できるほど小さい)場合には、算出された亜硝酸性窒素濃度は、排出される処理水の亜硝酸性窒素濃度となる。
【0078】
このように、実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19によれば、PN槽(処理槽22)での反応により生成した亜硝酸性窒素による被処理水の亜硝酸性窒素濃度変化を迅速に検出することができる。この検出結果に基づいて、PN槽での処理状態(処理状況)を監視することができる。そして、亜硝酸性窒素濃度監視装置19の検出結果に基づいて、PN槽の制御を行うことができる。また、後段のAX槽に供給される亜硝酸性窒素濃度を算出することもできる。
【0079】
PN槽では、好気処理により有機成分の濃度が変化する。すなわち、亜硝酸性窒素の吸光度測定に使用される光を吸収する阻害物質の濃度が変化する可能性がある。そこで、UV測定手段a20、及びUV測定手段b21を備えることで、吸光度aをUVaに基づいて補正(吸光度bをUVbに基づいて補正)して、補正された吸光度の測定値と検量線を用いてAX槽で生成した亜硝酸性窒素濃度を算出することができる。
【0080】
なお、実施形態3では、PN槽における亜硝酸性窒素濃度監視方法及び監視装置について説明した。しかし、通常の生物学的硝化・脱窒処理においても、その処理前後で、亜硝酸性窒素濃度や有機物濃度は増減する。そのため、実施形態3はPN槽への適用に限定されるものではなく、生物学的硝化・脱窒処理槽への適用も可能である。
【0081】
また、実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19は、吸光度測定手段a2とUV測定手段a20が別々に備えられた形態であるが、吸光度測定手段a2とUV測定手段a20とを組み込み1体としたものを用いて、吸光度aをUVaに基づいて補正するようにしてもよい。その場合、一体型の測定手段には、吸光度を測定する流路とUVを測定する流路の2つの流路が備えられることとなる(UV測定手段b21についても同様である)。
【0082】
また、実施形態では、UVを測定した後に吸光度を測定した形態であるが、UVの測定と吸光度の測定の順序は特に限定するものではない。
【0083】
また、実施形態の説明では、UV測定手段a20がUVaとVISaを検出している形態であるが、これはUVa測定値に対する濁質の影響などを考慮してのことである。すなわち、濁質などの影響が無視できない場合には、濁質に基づく吸光度を差し引く補正を行うためにUV光とVIS光を計測して、紫外線吸光度UVaを計測する。よって、濁質の影響が少ない被処理水中の紫外線吸光度を計測する場合には、濁質の影響を補正せずUV光のみの測定に基づいた測定値で吸光度測定手段a2の吸光度aを補正してもよい(UV測定手段b21についても同様である)。
【0084】
(実施形態4)
図10を参照して、本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38について説明する。なお、実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38は、実施形態1の亜硝酸性窒素濃度監視装置1において、吸光光度測定手段39を1つ備え、反応槽5に流入する被処理水の吸光度aと反応槽から排出される処理水の吸光度bをこの吸光度測定手段39で測定するものである。よって、実施形態1の亜硝酸性窒素濃度監視装置1と同様の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0085】
図10に示すように、本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38は、吸光度測定手段39、演算手段4より構成され、嫌気性アンモニア酸化処理槽(処理槽5)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。
【0086】
吸光度測定手段39は、処理槽5に被処理水を供給する供給配管6と、処理槽5から処理水を排出する排出配管8とに接続される。吸光度測定手段39は、供給配管6からの被処理水の一部が流通する流路39aと、排出配管8からの処理水の一部が流通する経路39bとを備える。そして、図11に示すように、一つの光源11からの光を流路39a、流路39bを流通するサンプル水の吸光度測定に使用する。吸光度測定手段39は、それぞれの経路39a,39bにおいて流通するサンプル水の吸光度a、吸光度bを測定する。そして、吸光度測定手段39で測定された吸光度a及び吸光度bは演算手段4に送信される。なお、図11において、図2で示した吸光度測定手段a2の構成と同じものについては同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0087】
演算手段4は、吸光度a及び吸光度bの差をとることで、処理槽5で処理されて減少した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。また、処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を推定する。
【0088】
以上のように、本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38によれば、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1の有する効果に加えて、吸光度測定手段39で用いる光源11を共通利用することができる。
【0089】
また、被処理水の吸光度a及び処理水の吸光度bをリアルタイムに測定できるので、測定切換によるタイムラグがない。
【0090】
なお、本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19においても、吸光度測定手段a2、吸光度測定手段b3、UV測定手段a20、UV測定手段b21を単一の測定手段とし、それぞれの吸光度(吸光度a、吸光度b、UVa、UVb)を測定するために被処理水と処理水が流通する2つの流路を備えて、リアルタイムで亜硝酸性窒素濃度を監視してもよい。この場合、図9を例示して説明したように、光学ミラーを利用することで、単一の光源より複数の波長の測定が可能である。
【0091】
以上のように、本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置及び亜硝酸性窒素濃度監視方法によれば、部分亜硝酸化処理槽や嫌気性アンモニア酸化処理槽で処理されて生成(若しくは、低下)した亜硝酸性窒素濃度を迅速に把握することができる。そして、部分亜硝酸化処理槽や嫌気性アンモニア酸化処理槽に流入する被処理水(または、流出する処理水)の亜硝酸性窒素濃度を迅速に把握することができる。
【0092】
特に、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスでは、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素から脱窒するため、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素のモニタリングがプロセス監視制御において重要になる(例えば、亜硝酸性窒素によるアナモックス反応の阻害濃度は200mg一N/L程度以上といわれている)。また、このプロセスの処理対象となる水の亜硝酸性窒素は高濃度(数100〜数1000mg−N/Lのオーダー)であり、プロセスの結果である処理水の亜硝酸性窒素は低濃度(数mg−N/L程度)になる。しかも、アナモックス反応は、反応速度が速く、被処理水の反応槽の滞留時間を短時間として処理を行うことが多いので、亜硝酸性窒素により阻害を受けた場合、処理水質の亜硝酸性窒素の濃度が急激に上昇する。
【0093】
本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置は、広い濃度範囲(0〜1000mg−N/L以上)で被処理水の亜硝酸性窒素濃度を迅速に測定できるので、嫌気性アンモニア酸化プロセスの亜硝酸性窒素濃度の監視に適用することができる。そして、迅速に亜硝酸性窒素濃度を算出する(リアルタイムで亜硝酸性窒素濃度を監視する)ことができるので、非常に高い窒素処理速度で処理を行う嫌気性アンモニア酸化処理において、亜硝酸性窒素濃度がアナモックス反応を阻害しない濃度かどうかを監視することができる。 すなわち、アナモックス反応の処理状況を把握することができる。
【0094】
このように、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおける亜硝酸性窒素濃度を迅速かつ正確に測定することができるので、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスの制御がより行いやすくなり、窒素処理能力の高い嫌気性アンモニア酸化処理プロセスの導入を促進することに貢献することができる。そして、吸光度を測定する機器は、精密な構造や微妙な機器調整を必要としないため、嫌気性アンモニア酸化処理プロセス等の水処理装置の付帯設備として用いることができる。
【0095】
なお、本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、その発明の効果を損なわない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、吸光度測定手段での吸光度測定に用いる光の波長は、353nmに限定するものではなく、330〜380nmであれば亜硝酸性窒素濃度を算出することができた。また、UV測定手段に用いる光の波長も254nm、546nmに限定するものではなく、その波長の近傍の波長(±10nm)など、亜硝酸性窒素濃度の影響を受けずに有機物の濃度を検出できる波長の光を適宜選択して用いればよい。
【0096】
また、UV測定手段と同様に、吸光度測定手段もサンプリング型(フローセル方式)に限定せず、浸漬型でも本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置、及び亜硝酸性窒素濃度監視方法に適用することができる。
【0097】
また、被処理水としては、下水処理、事業場排水(食品、半導体、革なめし等)処理、畜産排水処理等の多様な排水処理における窒素除去プロセスの亜硝酸性窒素濃度の監視に適用可能である。
【0098】
また、本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置を、従来の脱硝細菌による部分亜硝酸化工程に用いることで、被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視し、曝気動力を低減させることができる。また、従来の脱窒細菌による反応槽の亜硝酸性窒素濃度の監視装置として用いることができる。
【0099】
なお、被処理水中に濁質が存在し、且つ、その濁質成分が計測値に与える影響が大きい場合には、吸光度の測定前に、濁質を除去可能な濾過フィルタを用いて被処理水を濾過することで、吸光度の測定値に対する汚濁の影響を低減させ、亜硝酸性窒素濃度の測定精度を向上させることができる。この濾過操作に使用するフィルタとしては濾紙など公知のものが利用でき、材質としては、セラミック、ガラス繊維、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、イオン交換セルロース、ナイロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネートなどを用いることができる。また、他の濾過操作として、上下水用計測器用の濁質除去用の前処理装置である砂濾過装置を利用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1,16,19,38…亜硝酸性窒素濃度監視装置
2…吸光度測定手段a(第1吸光度測定手段)
3…吸光度測定手段b(第2吸光度測定手段)
4…演算手段
5…処理槽(嫌気性アンモニア酸化処理槽)
17,39…吸光度測定手段
18…流路切換弁
20…UV測定手段a(第3吸光度測定手段)
21…UV測定手段b(第4吸光度測定手段)
22…処理槽(部分亜硝酸化処理槽)
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の亜硝酸性窒素濃度の監視方法及び監視装置に関する。特に、水処理の分野で、水処理工程の制御に用いられる亜硝酸性窒素濃度の監視方法及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素は環境中に広く存在し、自然水中にも含まれているが、富栄養化として問題となるほど水中の窒素が増加する要因は、生活排水、工場排水、農業排水等の混入に由来する場合が多い。窒素は生物の増殖活動に重要な役割を果たしており、排水の生物処理に関わる微生物にとって必須の元素である。しかし、窒素は湖沼、海域等の富栄養化を促進する一因とされており、水中の窒素化合物の増加は好ましくない。そこで、非特許文献1に示される生物学的硝化脱窒法等の方法により排水中の窒素除去が行われている。
【0003】
生物学的硝化脱窒法について説明する。まず好気条件下において硝化細菌の働きにより水中のアンモニアを亜硝酸や硝酸に転換する。生じた硝酸、亜硝酸は脱窒細菌の働きにより、NO3-→NO2-→NO→N2O→N2の順で還元されて窒素ガスとして除去される。
【0004】
この生物学的硝化脱窒プロセスの制御について、非特許文献1に「窒素除去プロセスについては、硝化や脱窒反応をセンサを用いてモニタリングする技術がある程度確立されており、それを応用した技術開発が活発である。アンモニアの測定法としてイオン電極法、硝酸・亜硝酸の測定として紫外線吸光度法が主に用いられる」と記載されている。
【0005】
生物学的硝化脱窒プロセスの制御は、上記のモニタリング技術を用いて、硝化反応、脱窒反応の終点を検出し酸素供給をオン・オフするという制御法が多く用いられている。
【0006】
硝化工程ではアンモニア性窒素(NH4+−N)を、亜硝酸性窒素(NO2-−N)を経由して硝酸性窒素(NO3-−N)まで好気条件下で酸化するのが一般的である。しかし、脱窒するためには、硝酸性窒素まで酸化する必要はなく、亜硝酸性窒素まで酸化すればよい。そのほうが亜硝酸性窒素を硝酸性窒素に酸化するために必要な酸素供給を行う必要がなくなり、省エネルギーにつながる。
【0007】
しかし、水処理プロセスで亜硝酸性窒素を単独でモニタリングできる技術がないため、必要酸素供給量は増えるものの、アンモニア性窒素を硝酸性窒素まで酸化するのが一般的である。
【0008】
水中の亜硝酸性窒素を単独でモニタリングできる計測装置があれば、上記のような生物学的硝化脱窒法において、アンモニア性窒素が亜硝酸性窒素に酸化された段階を検出できるため、現状より省エネルギー運転が可能となる。
【0009】
また、近年新しい生物学的窒素除去法として、嫌気性アンモニア酸化細菌(アナモックス細菌)による窒素除去法が提案されている(例えば、非特許文献2)。嫌気性アンモニア酸化の反応は、NO2-がNH2OHに還元され、還元されたNH2OHとNH4+とからN2H4が生成し、最終的にN2ガスに脱窒される。化学量論的には次式で表される。
NH4++1.32NO2-+0.066HCO3-+0.13H+→
1.02N2+0.26NO3-+0.066CH2O0.5N0.15+2.03H2O…(1)
アナモックス細菌による窒素除去法では、(1)アナモックス細菌が独立栄養性の脱窒素反応を行うので水素供与体としての有機炭素源が不要となる、(2)被処理水中のNH4+の半量をNO2-に酸化すればよいので酸素供給量を削減できる、(3)余剰汚泥発生量が低減できる、(4)従来の生物学的窒素処理に比べて高い窒素処理速度で処理可能であるなどの特長を有する。この嫌気性アンモニア酸化プロセスの適用は、有機物濃度が低く(低C/N比)で比較的アンモニア性窒素(NH4+−N)濃度が高い排水に適しているといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−123705号公報
【特許文献2】特開2010−197383号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】水環境ハンドブック、(社)日本水環境学会編、朝倉書店、2006年10月、p.241
【非特許文献2】造水技術ハンドブック.2004、(財)造水促進センター、造水技術ハンドブック編集企画委員会編、2004年11月、p.75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、アナモックス細菌による反応で基質となるアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素のうち、亜硝酸性窒素はその濃度が高いと、嫌気性アンモニア酸化反応を阻害する場合がある。そこで、嫌気性アンモニア酸化処理をアナモックス細菌の活性を高い状態に維持して行うためには、基質でありかつ濃度によっては阻害物質となる可能性のある亜硝酸性窒素濃度を監視することが重要となる。
【0013】
そこで、本発明は、水処理工程の被処理水の亜硝酸性窒素濃度監視することが可能な亜硝酸性窒素濃度監視装置及び亜硝酸性窒素濃度監視方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出することを特徴としている。
【0015】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出することを特徴としている。
【0016】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、予め、前記亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度と、前記有機物により吸収される光に対する吸光度との相関性を算出し、前記処理槽に流入する被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽に流入する被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、補正された前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と、補正された前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理液中の亜硝酸性窒素濃度を算出することを特徴としている。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法は、上記亜硝酸性窒素濃度監視方法において、前記亜硝酸性窒素により吸収される光の波長は、330〜380nmであることを特徴としている。
【0018】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0020】
また、上記目的を達成する本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置は、被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第3吸光度測定手段と、前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第4吸光度測定手段と、前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第3吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第4吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、補正された前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、補正された前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度変化を算出する演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
以上の発明によれば、水処理工程の被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視することが可能な亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置を提供することに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置の吸光度測定手段の概略構成図である。
【図3】試料水及び各種窒素様態の標準液における吸収スペクトルの測定結果である。
【図4】亜硝酸性窒素標準液の濃度と、その濃度における亜硝酸性窒素標準液の波長353nmの光に対する吸光度との関係を示す図(検量線)である。
【図5】実施例に係る嫌気性アンモニア酸化処理工程の処理槽に流入する被処理水または処理槽から流出する処理水の波長353nmの光に対する吸光度の経日変化を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置で算出された、処理槽で処理されて低下した亜硝酸性窒素濃度の演算値と、公定法による実測値に基づいて算出した処理槽で処理されて低下した亜硝酸性窒素濃度の演算値との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のUV測定手段の概略構成図である。
【図10】本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置のシステム構成図である。
【図11】本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置の吸光度測定手段の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置について、アナモックス細菌による嫌気性アンモニア酸化処理プロセスを例示して説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1は、吸光度測定手段a2、吸光度測定手段b3、演算手段4より構成され、嫌気性アンモニア酸化処理槽5(以後、処理槽5とする)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。
【0025】
吸光度測定手段a2は、アナモックス細菌による脱窒反応を行う処理槽5に被処理水を供給する供給配管6に設けられる。吸光度測定手段a2には、ポンプ7により供給配管6から被処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度aが測定される。
【0026】
吸光度測定手段b3は、処理槽5で処理された後の被処理水(以後、処理水とする)を排出する排出配管8に設けられる。吸光度測定手段b3には、ポンプ9により排出配管8から処理水がサンプリングされる。そして、この処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度bが測定される。
【0027】
演算手段4は、吸光度測定手段a2から吸光度aが、吸光度測定手段b3から吸光度bがそれぞれ入力され、処理槽5で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度、または処理槽5に供給される被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。処理槽5では、(1)式に示すアナモックス細菌による反応(アナモックス反応)により、被処理水の亜硝酸性窒素濃度が減少する。つまり、被処理水の亜硝酸性窒素濃度は、処理水の亜硝酸性窒素濃度と比較して高いので、吸光度aは吸光度bより高くなる。よって、吸光度aから吸光度bを差引き、処理槽5で処理された被処理水における亜硝酸性窒素濃度の低下を算出する。
【0028】
嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおいて、処理槽5には、供給配管6よりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含んだ被処理水が移送される。処理槽5に保持されたアナモックス細菌により(1)式に示したアナモックス反応が起こり、被処理水中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とが反応して窒素が生成し、被処理水の脱窒が行われる。処理槽5で処理された処理水は、排出配管8を介して排出される。
【0029】
図2に示すように、供給配管6を流通する被処理水の一部がポンプ7により吸光度測定手段a2のセル10に導入される。そして、光源11からの光がレンズ12、干渉フィルタ13を通過することで、波長353nmの光がセル10に照射される。そして、セル10を透過した光の強度をフォトダイオード14で検出し、この検出された光の強度に基づいて演算部15で吸光度aが算出される。算出された吸光度aは、図1に示す演算手段4に入力される。なお、吸光度測定手段b3の構成も図2に示す吸光度測定手段a2と同様であり、排出配管8を流通する処理水の吸光度bが算出され、算出された吸光度bが演算手段4に入力される。
【0030】
演算手段4では、吸光度aから吸光度bを差引き、その差から嫌気性アンモニア酸化処理で低下した被処理水と処理水の亜硝酸性窒素濃度差を演算する。また、この演算により求められる亜硝酸性窒素濃度差に基づいて処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を推定する。
【0031】
(実施例)
具体的な実施例を挙げて、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1及びこの装置による亜硝酸性窒素濃度監視方法をより詳細に説明する。実施例では、下水処理場の引き抜き汚泥の脱離液を被処理水として、被処理液中のアンモニア性窒素を窒素ガスとして分離除去する処理試験を行った。
【0032】
被処理液は、好気性アンモニア酸化細菌(硝化細菌)の存在下で曝気してアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素に転換する部分亜硝酸化処理槽(PN槽)で処理した。その後、PN槽で処理後の被処理水を、アナモックス細菌の存在下でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて窒素に転換する嫌気性アンモニア酸化処理槽(AX槽)により処理した。この処理試験において、図1に示した亜硝酸性窒素濃度監視装置1で、AX槽(すなわち、処理槽5)の亜硝酸性窒素濃度を監視した。
【0033】
まず、AX槽に流入する被処理水(試料水)の吸収スペクトルを測定した。被処理水には、有機成分のほか、窒素成分として、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素が含まれている。吸収スペクトル測定は、被処理水(5Cの濾紙にて濾過したもの)、アンモニア標準溶液(NH4+−N 100mg/L)、亜硝酸標準液(NO2-−N 100mg/L)、硝酸標準溶液(NO3-−N 100mg/L)の溶液でそれぞれ行った。測定結果を図3に示す。
【0034】
図3に示すように、330〜380nmの吸収領域において、硝酸性窒素及びアンモニア性窒素の吸収が存在せず、亜硝酸性窒素のみ吸収があることが確認できた。すなわち、波長330〜380nmの光に対する吸光度を測定することにより、アンモニア性窒素及び硝酸性窒素の影響を受けずに亜硝酸性窒素を検出することが可能であることがわかる。
【0035】
また、図4に示すように、亜硝酸性窒素溶液の濃度と、その濃度における波長353nm付近の光(波長330〜380nmの光)に対する吸光度との関係は直線関係にある。そこで、亜硝酸性窒素を含む溶液の吸光度を測定し、この直線関係(検量線)に基づいて、亜硝酸性窒素濃度を算出する。なお、亜硝酸性窒素濃度の検出範囲は特に限定されるものではないが、図4に示した検量線からは、少なくとも0〜1000mg−N/Lの範囲での亜硝酸性窒素濃度の測定が可能であることがわかる。
【0036】
図5は、亜硝酸性窒素濃度監視装置1における、AX槽に流入する被処理水の波長353nmの光に対する吸光度a(すなわち、吸光度測定手段a2での測定値)と、AX槽で処理後の処理水の波長353nmの光に対する吸光度b(すなわち、吸光度測定手段b3での測定値)の測定結果である。
【0037】
図5に示すように、被処理水の吸光度aは、経過日数に対して大きく変化している。これは、AX槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度が変化するだけではなく、波長353nmの光を吸収する亜硝酸性窒素以外の物質物質(以後、阻害物質とする)の濃度が変化するためと考えられる。阻害物質としては、有機物等が考えられる。また、処理水の吸光度bも、経過日数に対して大きく変化している。これは、処理水の亜硝酸性窒素濃度(アナモックス反応で消費されなかった亜硝酸性窒素)及びAX槽に流入する阻害物質の濃度が変化するためであると考えられる。
【0038】
被処理水の吸光度aと処理水の吸光度bとの差は、アナモックス反応により消費されることによる亜硝酸性窒素濃度の低下に基づくものであると考えられる。そこで、吸光度aと吸光度bの差を算出してアナモックス反応により低下した亜硝酸性窒素濃度を算出した。また、亜硝酸性窒素濃度を測定する公定法であるイオンクロマトグラフ法により、被処理水の亜硝酸性窒素濃度と、処理水の亜硝酸性窒素濃度を測定し、AX槽のアナモックス反応で低下した亜硝酸性窒素濃度を算出した。
【0039】
図6に、アナモックス反応により低下した亜硝酸性窒素濃度の公定法による実測値より算出した演算値と、吸光度より算出した演算値との関係を示す。
【0040】
図6に示すように、吸光度より算出された亜硝酸性窒素濃度は、実測値に基づいて算出される亜硝酸性窒素濃度とよく一致していることがわかる。すなわち、図5に示した結果より、被処理水と処理水中には、阻害物質に起因する波長353nmの光の吸収成分があることが確認できるが、図6に示した結果より、AX槽において亜硝酸性窒素以外の吸収成分の増減がほとんどなかった(無視できるほど小さかった)ことを示している。
【0041】
つまり、波長353nmの光の吸光度を吸光度E353とすると、被処理水及び処理水のそれぞれの吸光度E353は、(2)式、(3)式で示される。
被処理水の吸光度E353
=(被処理水のNO2-−Nの吸光度E353)+(被処理水の阻害物質の吸光度E353)
…(2)
処理水の吸光度E353
=(処理水のNO2-−Nの吸光度E353)+(処理水の阻害物質の吸光度E353)
…(3)
そして、AX槽において、阻害物質の吸収成分の増減がほとんどない場合には、
(被処理水の阻害物質の吸光度E353)=(処理水の阻害物質の吸光度E353)
…(4)
であるので、(2)〜(4)式から
被処理水の吸光度E353−処理水の吸光度E353
=(処理水のNO2-−Nの吸光度E353)−(被処理水のNO2-−Nの吸光度E353)
…(5)
となり、被処理水の吸光度aと処理水の吸光度bとの差が、AX槽で除去された亜硝酸性窒素による吸光度の差になる。
【0042】
このように、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1によれば、AX槽(処理槽5)での反応により低下した亜硝酸性窒素濃度を迅速に検出することができる。この検出結果に基づいて、AX槽での反応が滞りなく進行しているかチェックすることができる。例えば、同じ窒素負荷でAX槽での処理を行っている場合には、除去された亜硝酸性窒素濃度が小さくなってきたことを検出することで(換言すると、被処理水と処理水との亜硝酸性窒素濃度差が小さくなってきたことを検出することで)、AX槽での処理状態が悪化していると判断することができる。また、亜硝酸性窒素濃度の低下がほとんど検出できない場合には、AX槽での窒素除去反応が進行していない場合が想定されるので、AX槽の運転を中止する等、被処理水の処理を制御することができる。
【0043】
表1に、実施例の処理試験において、PN槽に流入する被処理水中、AX槽に流入する被処理水中、及びAX槽から排出される処理水中の窒素成分(アンモニア性窒素等)及び汚濁成分(Biochemical Oxygen Demand:BOD)の平均濃度の公定法による測定値を示す。なお、ATU−BODとは、硝化反応を抑制したBODのことであり、硝化反応における酸素消費を含まない有機物に基づく汚濁量である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、PN槽で処理することで被処理水の亜硝酸性窒素濃度が上昇し、AX槽で処理することで亜硝酸性窒素濃度及びアンモニア性窒素濃度(すなわち、全窒素濃度)が減少していることがわかる。また、ATU−BODの変化を見ると、PN槽、AX槽における各処理にて減少傾向にある。
【0046】
また、AX槽の処理条件により被処理水中の亜硝酸性窒素の除去率は変動する。実施例では、表1に示すように、AX槽から流出する処理水中に残留する亜硝酸性窒素は低濃度となっている。すなわち、AX槽で約95%の亜硝酸性窒素の高除去率が得られ、良好な処理条件で運転されていることを示す。しかし、流入負荷の変動や嫌気性アンモニア酸化細菌活性の低下などで処理状態が悪化すれば、AX槽から流出する処理水の亜硝酸性窒素濃度は上昇することとなる。したがって、AX槽の前後における亜硝酸性窒素濃度の差を測定することで、AX槽の処理状態を監視でき、処理状態が悪化した場合には、運転条件(被処理水の供給速度や希釈水の供給速度など)を変更することで処理を安定させる制御を行うことが可能となる。
【0047】
以上、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1及び亜硝酸性窒素濃度監視方法によれば、嫌気性アンモニア酸化処理槽(AX槽)の亜硝酸性窒素濃度の変化を迅速に検出することができる。そして、嫌気性アンモニア酸化処理で除去された亜硝酸性窒素濃度を連続的に監視することで、嫌気性アンモニア酸化処理槽の処理状況を把握することができる。その結果、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおいて、処理状況が悪化傾向にある場合には、被処理水濃度、被処理水供給量を制御して窒素負荷量を減少させる等の対策をとることができる。
【0048】
AX槽に流入する被処理水には、亜硝酸性窒素以外にも波長353nmの光を吸収する成分(例えば、着色成分など)が存在しているので、単純に吸光度を測定し、吸光度の測定値と検量線を用いて亜硝酸性窒素濃度を算出することができない場合がある。
【0049】
本発明の実施形態において、AX槽の除去対象は亜硝酸性窒素であり、被処理水と処理水の亜硝酸性窒素濃度が大きく変化する。一方で、共存する阻害物質はAX槽での除去対象でないため、除去されないか、除去されても少量であると考えられる。そのため、AX槽に流入する被処理水とAX槽から流出する処理水のそれぞれで測定した吸光度の差を算出することで、AX槽で除去された亜硝酸性窒素を推測することができる。
【0050】
なお、表1に示したように、AX槽でのアナモックス反応によりほとんどの亜硝酸性窒素が除去された場合、AX槽で除去された亜硝酸性窒素濃度はAX槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度とほぼ等しいものと考えられる。よって、AX槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度に基づいて、AX槽の処理条件を制御することもできる。
【0051】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視方法、及び亜硝酸性窒素濃度監視装置について、図7を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16は、吸光度測定手段17を1つ備え、この吸光度測定手段17で、被処理水の吸光度aと処理水の吸光度bを測定するものである。よって、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1と同様のものについては同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0052】
図7に示すように、本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16は、吸光度測定手段17、演算手段4より構成され、嫌気性アンモニア酸化処理槽(処理槽5)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。
【0053】
吸光度測定手段17は、アナモックス細菌による脱窒反応を行う処理槽5に被処理水を供給する供給配管6と処理槽5で処理された処理水を排出する排出配管8に流路切換弁18を介して設けられる。吸光度測定手段17には、供給配管6の被処理水若しくは排出配管8の処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水若しくは処理水に波長353nmの光を照射して、この光に対する吸光度が測定される。
【0054】
演算手段4は、吸光度測定手段17から吸光度a及び吸光度bが入力され、処理槽5で処理されて低下した亜硝酸性窒素濃度、及び処理槽5に供給される被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。
【0055】
嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおいて、処理槽5には、供給配管6よりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含んだ被処理水が移送される。処理槽5に保持されたアナモックス細菌により(1)式に示したアナモックス反応が起こり、被処理水中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とが反応して窒素が生成し、被処理水の脱窒が行われる。処理槽5で処理された処理水は、排出配管8を介して排出される。
【0056】
吸光度測定手段17には、流路切換弁18を切り換えることで、供給配管6から被処理水がサンプリングされる。そして、サンプリングされた被処理水の吸光度aが測定される。また、一定時間経過後に流路切換弁18を切り換えて、排出配管8から処理水がサンプリングされる。そして、サンプリングされた処理水の吸光度bが測定される。なお、吸光度測定手段17での、被処理水と処理水の吸光度測定の順番は特に限定するものではないが、処理槽5での反応は亜硝酸性窒素が減少する反応であるので、処理水の吸光度bを測定した後に、流路切換弁18を切り換えて被処理水aの吸光度を測定することで、吸光度の測定誤差を低減することができる。
【0057】
演算手段4では、吸光度aから吸光度bを差引き、その差から嫌気性アンモニア酸化処理の被処理水と処理水の亜硝酸性窒素濃度差を演算する。また、算出された亜硝酸性窒素濃度に基づいて処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を推定する。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16は、吸光度測定手段17が1つであるので、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1より構成が簡略化される。
【0059】
そして、本発明の実施形態2に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置16においても、実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1と同様に、AX槽(処理槽5)の亜硝酸性窒素濃度を監視することができた。
【0060】
(実施形態3)
図8に示すように、本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19は、吸光度測定手段a2、吸光度測定手段b3、UV測定手段a20、UV測定手段b21、演算手段4より構成され、部分亜硝酸化処理槽(以後、処理槽22とする)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。なお、吸光度測定手段a2及び吸光度測定手段b3は、実施形態1の吸光度測定手段と同様であるので、同じ符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0061】
UV測定手段a20は、硝化細菌による部分亜硝酸化反応を行う処理槽22に被処理水を供給する供給配管23に設けられる。UV測定手段a20には、ポンプ24により供給配管23から被処理水がサンプリングされる。そして、この被処理水に波長254nmのUV光を照射して、このUV光に対する吸光度UVaが測定される。また、この被処理水に波長546nmのVIS光(可視光)を照射して、このVIS光に対する吸光度(VISa)が測定される。UV測定手段a20では、UVa(または、UVa−VISa)と有機成分とが相関関係を有することからCODなどの有機汚濁濃度を測定し、VISaと濁質成分とが相関関係を有することから濁度またはSSを測定する。そして、UV測定手段a20での測定結果は、演算手段4に送信される。また、UV測定手段a20で測定された後の被処理水は、吸光度測定手段a2に移送される。
【0062】
吸光度測定手段a2は、UV測定手段a20の後段に設けられ、UV測定手段a20から移送された被処理水に波長353nmの光を照射して、サンプリングされた被処理水の吸光度が測定される。
【0063】
UV測定手段b21は、処理槽22で処理された処理水を排出する排出配管25に設けられる。UV測定手段b21には、ポンプ26により排出配管25から処理水がサンプリングされる。そして、UV測定手段b21では、UV測定手段a20と同様に、UVb(または、UVb−VISb)と有機成分とが相関関係を有することからCODなどの有機汚濁濃度を測定し、VISbと濁質成分とが相関関係を有することから濁度またはSSを測定する。そして、UV測定手段b21での測定結果は、演算手段4に送信される。また、UV測定手段b21で測定された後の処理水は、吸光度測定手段b3に移送される。
【0064】
吸光度測定手段b3は、UV測定手段b21の後段に設けられ、UV測定手段b21から移送された処理水に波長353nmの光を照射して、サンプリングされた処理水の吸光度が測定される。
【0065】
演算手段4は、吸光度測定手段a2から吸光度aが、吸光度測定手段b3から吸光度bがそれぞれ入力され、処理槽22で処理されて生成した亜硝酸性窒素濃度を算出する。なお、演算手段4には、UV測定手段a20からUVaが、UV測定手段b21からUVbがそれぞれ入力され、吸光度a及び吸光度bの補正が行われる。
【0066】
処理槽22では、(6)式に示す硝化細菌等による反応(アンモニア酸化反応)により、亜硝酸性窒素濃度が増加する。
2NH3+3O2→2HNO2+2H2O …(6)
つまり、処理水の亜硝酸性窒素濃度は、被処理水の亜硝酸性窒素濃度と比較して高いので、吸光度bは吸光度aより高くなる。よって、吸光度bから吸光度aを差し引くことで、処理槽22で処理された処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。
【0067】
また、処理槽22に保持される硝化細菌は独立栄養細菌であるが、従属栄養性のBOD酸化細菌も共生するので有機成分が減少する。つまり、実施形態1、2の嫌気性アンモニア酸化処理プロセスと異なり、阻害物質による波長330〜380nmの光の吸光度を一定とみなすことができない場合がある。そこで、UV測定手段a20及びUV測定手段b21により、亜硝酸性窒素成分の存在による影響を受けることなく有機成分に基づく吸光度を計測し、この計測結果に基づいて、吸光度測定手段a2及び吸光度測定手段b3で測定された吸光度を補正する。
【0068】
アンモニア性窒素の部分亜硝酸化工程において、処理槽22には、供給配管23よりアンモニア性窒素を含んだ被処理水が移送される。処理槽22に保持された硝化細菌等を含む細菌群により(6)式に示した反応が起こり、被処理水中のアンモニア性窒素の一部が亜硝酸性窒素に転換される。処理槽22で処理された処理水は、排出配管25を介して後段の嫌気性アンモニア処理槽(図示省略)に移送される。
【0069】
ここで、UV測定手段a20(及びUV測定手段b21)について浸漬型UV計を例示して説明する。UV測定手段a20(及びUV測定手段b21)は、サンプリング型(フローセル方式)のものや浸漬型のものがあるが、どちらの形態でも本実施形態に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19に適用することができる。
【0070】
図9に示すように、浸漬型のUV計は、光源11からの光がハーフミラー27で参照側28と測定側29に振り分けられる。参照側28で取り出された光は、光学フィルタ(図示せず)を透過してUV検出器30、VIS検出器31で強度が検出され、検出された参照信号(UV−R,VIS−R)が演算部33に送信される。測定側29の光は、サンプリングされた試料水が流れている平行窓34,34を透過した後、ハーフミラー35で2つの光(UVとVIS)に分けられ、光学フィルタ(図示せず)を透過してUV検出器36、VIS検出器37で強度が検出され、検出された測定信号(UV−S,VIS−S)が演算部33に送信される。演算部33では、参照信号及び測定信号に基づいて、COD濃度、SS濃度等が算出される。
【0071】
演算手段4では、UV測定手段b21の測定結果に基づいて補正された吸光度bから、UV測定手段a20の測定結果に基づいて補正された吸光度aを差引き、その差から部分亜硝酸化工程により生成した亜硝酸性窒素濃度(すなわち、処理水の亜硝酸性窒素濃度)を演算する。
【0072】
(実施例)
具体的な実施例を挙げて、本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19及び亜硝酸性窒素濃度監視方法をより詳細に説明する。
【0073】
実施例では、実施形態1の実施例と同様に、下水処理場の引き抜き汚泥の脱離液を被処理水として、被処理液中のアンモニア性窒素を窒素ガスとして分離除去する処理試験を行った。
【0074】
被処理液は、硝化細菌の存在下で曝気してアンモニア性窒素の一部を亜硝酸性窒素に転換する部分亜硝酸化処理槽(PN槽)で処理した。その後、PN槽で処理後の被処理水は、嫌気性アンモニア酸化細菌(アナモックス細菌)の存在下でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて窒素に転換する嫌気性アンモニア酸化処理槽(AX槽)により処理した。この処理試験において、図8に示した亜硝酸性窒素濃度監視装置19で、PN槽(処理槽22)で生成する処理水中の亜硝酸性窒素を監視した。
【0075】
亜硝酸性窒素濃度監視装置19では、UV光に対する吸光度E254と波長353nmの光に対する吸光度E353との相関関係(検量線)を予め算出しておき、吸光度E254に基づいて吸光度E353の補正を行う。
【0076】
つまり、PN槽に供給される被処理水の吸光度も、PN槽から排出される処理水の吸光度も、実施形態1の実施例で示した(2)、(3)式と同様であると考えられる。しかしながら、PN槽では、実施形態1の実施例で示した(4)式が成り立たない場合がある。
そこで、(2),(3)式において、有機汚濁物質の吸光度E254と相関関係にある有機汚濁物質の吸光度E353に基づいて、被処理水の吸光度E353及び処理水の吸光度E353の測定値を補正する。図3に示すように、試料水は、波長254nm、波長353nmの光に対して吸収がある。そして、有機汚濁物質の波長254nmの光に対する吸光度E254と有機汚濁物質の波長353nmの光に対する吸光度E353は対応関係にあり、有機汚濁物質の吸光度E254の値から有機汚濁物質の吸光度E353の値を一義的に定めることができる。すなわち、被処理水(または、処理水)において、有機汚濁物質の吸光度E254と有機汚濁物質の吸光度E353との関係により、その検量線により、有機汚濁物質の吸光度E254から有機汚濁物質の吸光度E353を求めることができる。また、生活系排水の処理水、一般河川水では、有機物の形態が類似しているため、UV計の吸光度E254(UVまたはUV−VIS)と有機物濃度の指標であるCODの値の比は、地域に関係なく類似していることから、通常の試料水にも適応可能である。
【0077】
よって、(2),(3)式は次のように近似することができる。
被処理水の吸光度E353
=(被処理水のNO2-−Nの吸光度E353)
+(吸光度E254から換算した被処理水の有機汚濁物質の吸光度E353) …(7)
処理水の吸光度E353
=(処理水のNO2-−Nの吸光度E353)
+(吸光度E254から換算した処理水の有機汚濁物質の吸光度E353) …(8)
そして、(7),(8)式に基づいて、吸光度測定手段の吸光度E353とUV測定手段の吸光度E254の測定結果より、直接被処理水または処理水の亜硝酸性窒素による吸光度(NO2-−Nの吸光度E353)を算出することができる。そして、(7),(8)の測定結果の差をとることにより、PN槽で生成した亜硝酸性窒素の濃度を算出(または、監視)することができる。なお、表1に示すように、PN槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度が低い(若しくは、生成量に対して無視できるほど小さい)場合には、算出された亜硝酸性窒素濃度は、排出される処理水の亜硝酸性窒素濃度となる。
【0078】
このように、実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19によれば、PN槽(処理槽22)での反応により生成した亜硝酸性窒素による被処理水の亜硝酸性窒素濃度変化を迅速に検出することができる。この検出結果に基づいて、PN槽での処理状態(処理状況)を監視することができる。そして、亜硝酸性窒素濃度監視装置19の検出結果に基づいて、PN槽の制御を行うことができる。また、後段のAX槽に供給される亜硝酸性窒素濃度を算出することもできる。
【0079】
PN槽では、好気処理により有機成分の濃度が変化する。すなわち、亜硝酸性窒素の吸光度測定に使用される光を吸収する阻害物質の濃度が変化する可能性がある。そこで、UV測定手段a20、及びUV測定手段b21を備えることで、吸光度aをUVaに基づいて補正(吸光度bをUVbに基づいて補正)して、補正された吸光度の測定値と検量線を用いてAX槽で生成した亜硝酸性窒素濃度を算出することができる。
【0080】
なお、実施形態3では、PN槽における亜硝酸性窒素濃度監視方法及び監視装置について説明した。しかし、通常の生物学的硝化・脱窒処理においても、その処理前後で、亜硝酸性窒素濃度や有機物濃度は増減する。そのため、実施形態3はPN槽への適用に限定されるものではなく、生物学的硝化・脱窒処理槽への適用も可能である。
【0081】
また、実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19は、吸光度測定手段a2とUV測定手段a20が別々に備えられた形態であるが、吸光度測定手段a2とUV測定手段a20とを組み込み1体としたものを用いて、吸光度aをUVaに基づいて補正するようにしてもよい。その場合、一体型の測定手段には、吸光度を測定する流路とUVを測定する流路の2つの流路が備えられることとなる(UV測定手段b21についても同様である)。
【0082】
また、実施形態では、UVを測定した後に吸光度を測定した形態であるが、UVの測定と吸光度の測定の順序は特に限定するものではない。
【0083】
また、実施形態の説明では、UV測定手段a20がUVaとVISaを検出している形態であるが、これはUVa測定値に対する濁質の影響などを考慮してのことである。すなわち、濁質などの影響が無視できない場合には、濁質に基づく吸光度を差し引く補正を行うためにUV光とVIS光を計測して、紫外線吸光度UVaを計測する。よって、濁質の影響が少ない被処理水中の紫外線吸光度を計測する場合には、濁質の影響を補正せずUV光のみの測定に基づいた測定値で吸光度測定手段a2の吸光度aを補正してもよい(UV測定手段b21についても同様である)。
【0084】
(実施形態4)
図10を参照して、本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38について説明する。なお、実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38は、実施形態1の亜硝酸性窒素濃度監視装置1において、吸光光度測定手段39を1つ備え、反応槽5に流入する被処理水の吸光度aと反応槽から排出される処理水の吸光度bをこの吸光度測定手段39で測定するものである。よって、実施形態1の亜硝酸性窒素濃度監視装置1と同様の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0085】
図10に示すように、本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38は、吸光度測定手段39、演算手段4より構成され、嫌気性アンモニア酸化処理槽(処理槽5)における亜硝酸性窒素濃度変化を監視する。
【0086】
吸光度測定手段39は、処理槽5に被処理水を供給する供給配管6と、処理槽5から処理水を排出する排出配管8とに接続される。吸光度測定手段39は、供給配管6からの被処理水の一部が流通する流路39aと、排出配管8からの処理水の一部が流通する経路39bとを備える。そして、図11に示すように、一つの光源11からの光を流路39a、流路39bを流通するサンプル水の吸光度測定に使用する。吸光度測定手段39は、それぞれの経路39a,39bにおいて流通するサンプル水の吸光度a、吸光度bを測定する。そして、吸光度測定手段39で測定された吸光度a及び吸光度bは演算手段4に送信される。なお、図11において、図2で示した吸光度測定手段a2の構成と同じものについては同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0087】
演算手段4は、吸光度a及び吸光度bの差をとることで、処理槽5で処理されて減少した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する。また、処理槽5に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を推定する。
【0088】
以上のように、本発明の実施形態4に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置38によれば、本発明の実施形態1に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置1の有する効果に加えて、吸光度測定手段39で用いる光源11を共通利用することができる。
【0089】
また、被処理水の吸光度a及び処理水の吸光度bをリアルタイムに測定できるので、測定切換によるタイムラグがない。
【0090】
なお、本発明の実施形態3に係る亜硝酸性窒素濃度監視装置19においても、吸光度測定手段a2、吸光度測定手段b3、UV測定手段a20、UV測定手段b21を単一の測定手段とし、それぞれの吸光度(吸光度a、吸光度b、UVa、UVb)を測定するために被処理水と処理水が流通する2つの流路を備えて、リアルタイムで亜硝酸性窒素濃度を監視してもよい。この場合、図9を例示して説明したように、光学ミラーを利用することで、単一の光源より複数の波長の測定が可能である。
【0091】
以上のように、本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置及び亜硝酸性窒素濃度監視方法によれば、部分亜硝酸化処理槽や嫌気性アンモニア酸化処理槽で処理されて生成(若しくは、低下)した亜硝酸性窒素濃度を迅速に把握することができる。そして、部分亜硝酸化処理槽や嫌気性アンモニア酸化処理槽に流入する被処理水(または、流出する処理水)の亜硝酸性窒素濃度を迅速に把握することができる。
【0092】
特に、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスでは、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素から脱窒するため、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素のモニタリングがプロセス監視制御において重要になる(例えば、亜硝酸性窒素によるアナモックス反応の阻害濃度は200mg一N/L程度以上といわれている)。また、このプロセスの処理対象となる水の亜硝酸性窒素は高濃度(数100〜数1000mg−N/Lのオーダー)であり、プロセスの結果である処理水の亜硝酸性窒素は低濃度(数mg−N/L程度)になる。しかも、アナモックス反応は、反応速度が速く、被処理水の反応槽の滞留時間を短時間として処理を行うことが多いので、亜硝酸性窒素により阻害を受けた場合、処理水質の亜硝酸性窒素の濃度が急激に上昇する。
【0093】
本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置は、広い濃度範囲(0〜1000mg−N/L以上)で被処理水の亜硝酸性窒素濃度を迅速に測定できるので、嫌気性アンモニア酸化プロセスの亜硝酸性窒素濃度の監視に適用することができる。そして、迅速に亜硝酸性窒素濃度を算出する(リアルタイムで亜硝酸性窒素濃度を監視する)ことができるので、非常に高い窒素処理速度で処理を行う嫌気性アンモニア酸化処理において、亜硝酸性窒素濃度がアナモックス反応を阻害しない濃度かどうかを監視することができる。 すなわち、アナモックス反応の処理状況を把握することができる。
【0094】
このように、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスにおける亜硝酸性窒素濃度を迅速かつ正確に測定することができるので、嫌気性アンモニア酸化処理プロセスの制御がより行いやすくなり、窒素処理能力の高い嫌気性アンモニア酸化処理プロセスの導入を促進することに貢献することができる。そして、吸光度を測定する機器は、精密な構造や微妙な機器調整を必要としないため、嫌気性アンモニア酸化処理プロセス等の水処理装置の付帯設備として用いることができる。
【0095】
なお、本発明の亜硝酸性窒素濃度監視方法及び亜硝酸性窒素濃度監視装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、その発明の効果を損なわない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、吸光度測定手段での吸光度測定に用いる光の波長は、353nmに限定するものではなく、330〜380nmであれば亜硝酸性窒素濃度を算出することができた。また、UV測定手段に用いる光の波長も254nm、546nmに限定するものではなく、その波長の近傍の波長(±10nm)など、亜硝酸性窒素濃度の影響を受けずに有機物の濃度を検出できる波長の光を適宜選択して用いればよい。
【0096】
また、UV測定手段と同様に、吸光度測定手段もサンプリング型(フローセル方式)に限定せず、浸漬型でも本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置、及び亜硝酸性窒素濃度監視方法に適用することができる。
【0097】
また、被処理水としては、下水処理、事業場排水(食品、半導体、革なめし等)処理、畜産排水処理等の多様な排水処理における窒素除去プロセスの亜硝酸性窒素濃度の監視に適用可能である。
【0098】
また、本発明の亜硝酸性窒素濃度監視装置を、従来の脱硝細菌による部分亜硝酸化工程に用いることで、被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視し、曝気動力を低減させることができる。また、従来の脱窒細菌による反応槽の亜硝酸性窒素濃度の監視装置として用いることができる。
【0099】
なお、被処理水中に濁質が存在し、且つ、その濁質成分が計測値に与える影響が大きい場合には、吸光度の測定前に、濁質を除去可能な濾過フィルタを用いて被処理水を濾過することで、吸光度の測定値に対する汚濁の影響を低減させ、亜硝酸性窒素濃度の測定精度を向上させることができる。この濾過操作に使用するフィルタとしては濾紙など公知のものが利用でき、材質としては、セラミック、ガラス繊維、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、イオン交換セルロース、ナイロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネートなどを用いることができる。また、他の濾過操作として、上下水用計測器用の濁質除去用の前処理装置である砂濾過装置を利用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1,16,19,38…亜硝酸性窒素濃度監視装置
2…吸光度測定手段a(第1吸光度測定手段)
3…吸光度測定手段b(第2吸光度測定手段)
4…演算手段
5…処理槽(嫌気性アンモニア酸化処理槽)
17,39…吸光度測定手段
18…流路切換弁
20…UV測定手段a(第3吸光度測定手段)
21…UV測定手段b(第4吸光度測定手段)
22…処理槽(部分亜硝酸化処理槽)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項2】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項3】
被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
予め、前記亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度と、前記有機物により吸収される光に対する吸光度との相関性を算出し、
前記処理槽に流入する被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽に流入する被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、
前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、
補正された前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と、補正された前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理液中の亜硝酸性窒素濃度を算出する
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項4】
前記亜硝酸性窒素により吸収される光の波長は、330〜380nmである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項5】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、
前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えた
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視装置。
【請求項6】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、
前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えた
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視装置。
【請求項7】
被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、
前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第3吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第4吸光度測定手段と、
前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第3吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第4吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、補正された前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、補正された前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度変化を算出する演算手段と、を備えた
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視装置。
【請求項1】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項2】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を嫌気性アンモニア細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項3】
被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視方法であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、前記被処理水に含まれる有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定し、
予め、前記亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度と、前記有機物により吸収される光に対する吸光度との相関性を算出し、
前記処理槽に流入する被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽に流入する被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、
前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された亜硝酸性窒素により吸収される光に対する吸光度を、前記処理槽で処理された後の被処理水で測定された有機物により吸収される光に対する吸光度に基づいて補正し、
補正された前記処理槽に流入する被処理水で測定された吸光度と、補正された前記処理槽で処理された被処理水で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理液中の亜硝酸性窒素濃度を算出する
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項4】
前記亜硝酸性窒素により吸収される光の波長は、330〜380nmである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の亜硝酸性窒素濃度監視方法。
【請求項5】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、
前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理されて低下した被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えた
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視装置。
【請求項6】
アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含有する被処理水を、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で処理して、前記被処理水中の亜硝酸性窒素を除去する処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された後の被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、
前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽に流入する被処理水の亜硝酸性窒素濃度を算出する演算手段と、を備えた
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視装置。
【請求項7】
被処理水を微生物の存在下で処理して、前記被処理水の生物学的硝化・脱窒を行う処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度を監視する亜硝酸性窒素濃度監視装置であって、
前記処理槽に流入する被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第1吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された被処理水に亜硝酸性窒素により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第2吸光度測定手段と、
前記処理槽に流入する被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第3吸光度測定手段と、
前記処理槽で処理された被処理水に、亜硝酸性窒素により吸収されない光であって、有機物により吸収される光を照射して、この光に対する吸光度を測定する第4吸光度測定手段と、
前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第3吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度を前記第4吸光度測定手段で測定された吸光度に基づいて補正し、補正された前記第1吸光度測定手段で測定された吸光度と、補正された前記第2吸光度測定手段で測定された吸光度との差に基づいて、前記処理槽で処理された被処理水の亜硝酸性窒素濃度変化を算出する演算手段と、を備えた
ことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−166171(P2012−166171A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30758(P2011−30758)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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