伝動装置用ガイド
【課題】伝動チェーンの誤組み付け状態を回避するとともにガイド側壁のガイド幅方向内側への倒れ込みを防止して、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースの相互間の融着強度を向上させる伝動装置用ガイドを提供すること。
【解決手段】伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面110aを備えた合成樹脂製シュー110と、この合成樹脂製シュー110の裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面120aを備えて合成樹脂製シュー110よりも高剛性の合成樹脂製ベース120とを2材成形加工により一体成形して組み付けて、合成樹脂製ベース120が、合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁121、121を備えている伝動装置用ガイド100。
【解決手段】伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面110aを備えた合成樹脂製シュー110と、この合成樹脂製シュー110の裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面120aを備えて合成樹脂製シュー110よりも高剛性の合成樹脂製ベース120とを2材成形加工により一体成形して組み付けて、合成樹脂製ベース120が、合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁121、121を備えている伝動装置用ガイド100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側スプロケットと従動側スプロケットとに周回して循環走行させるローラチェーンやサイレントチェーン等の伝動チェーンによって動力を伝達する自動車用エンジンなどの伝動装置において、伝動チェーンを摺接状態で走行案内させる固定ガイド、または、伝動チェーンを摺接状態で走行案内して緊張させる可動ガイドとして用いられる伝動装置用ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジンなどの伝動装置に用いられる伝動装置用ガイドとして、図21及び図22に示すように、伝動チェーンCを摺接面810a上で摺動走行させるシュー部材810とこのシュー部材810のシュー形態を保持するベース部材820とをそれぞれ別々に成形して一体に組み立てて、シュー部材810がガイド幅方向の両側に設けられた左右一対のガイド側壁811、811を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の伝動装置用ガイドとして、一次樹脂からなるベース部材とこのベース部材を成形した後にベース部材の裏面に一体に融着する支持面を備えて伝動チェーンに摺接する二次樹脂からなるシュー部材とを備えるチェーンガイドが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−114126号公報(段落[0013]、図1参照)
【特許文献2】特開2004−150615号公報(段落[0022]、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者のような従来の伝動装置用ガイド800は、シュー部材810のガイド側壁811が摺接面810aから低い状態で設けられていると、伝動チェーンCがガイド側壁811を跨いで乗り上げたままのような誤組み付け状態で伝動チェーンCが伝動装置用ガイド800に掛け回されるため、伝動チェーンCの誤組み付け状態により伝動装置を構成する伝動部品を破損させる虞があるという問題があった。
また、ベース部材820に比べて剛性が低いシュー部材810のガイド側壁811がガイド幅方向の外側から内側に向けた外力を受けると、ガイド側壁811がガイド幅方向内側へ倒れ込むため、伝動チェーンCとガイド側壁811の先端とが接触してチェーン走行を妨げる虞があるという問題があった。
また、エンジン稼働時におけるエンジン特有の負荷変動により伝動チェーンCが振動しながら摺接面810a上を摺接走行すると、シュー部材810がガイド長手方向に組み付け代の分だけ移動するため、シュー部材810のフック片812とベース部材820の切り欠き823との局部的な当接状態となり、フック片812に過度の応力集中が生じてフック片812が折損し、シュー部材810とベース部材820との組み付け状態が悪化して伝動チェーンCのチェーン軌道が不安定になる虞があるという問題があった。
【0005】
他方、後者のような従来のチェーンガイドは、伝動チェーンがシュー部材のガイド幅方向に偏在してシュー部材にガイド幅方向のせん断力が働いた場合に、シュー部材の平坦な裏面とベース部材の平坦な支持面とがガイド幅方向にずれてシュー部材とベース部材とが剥離するため、シュー部材とベース部材の相互間の融着強度を長期に亘って維持できないという問題があった。
【0006】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、伝動チェーンの誤組み付け状態を回避するとともにガイド側壁のガイド幅方向内側への倒れ込みを防止して、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースの相互間の融着強度を向上させる伝動装置用ガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る伝動装置用ガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューと該合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けた伝動装置用ガイドにおいて、前記合成樹脂製ベースが、前記合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項2の発明に係る伝動装置用ガイドは、請求項1に記載された伝動装置用ガイドの構成に加えて、前記合成樹脂製ベースのガイド側壁が、前記ガイド長手方向に沿って延在する側壁面と該側壁面のガイド長手方向に沿って所定間隔で側壁面からガイド幅方向に凹設したシュー係合用凹部とを備えていることにより、前述した課題を更に解決するものである。
【0009】
請求項3の発明に係る伝動装置用ガイドは、請求項2に記載された伝動装置用ガイドの構成に加えて、前記シュー係合用凹部のガイド幅方向に向けた開口縁が、R状もしくはテーパー状に面取りされていることにより、前述した課題を更に解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の伝動装置用ガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューとこの合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けたことにより、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとが成形加工時に一体化されているため、従来のような合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとを別部材とした成形加工後の組み付け作業が不要になるばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏することができる。
【0011】
すなわち、本請求項1に係る発明の伝動装置用ガイドは、合成樹脂製ベースが合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることにより、伝動チェーンをガイド側壁を乗り越えて摺接面に組み付けなければならないため、伝動チェーンを伝動装置用ガイドに組み付ける際に伝動チェーンがガイド側壁に乗り上げたまま摺接面に当接していないような誤組み付け状態を回避することができ、また、ガイド側壁がガイド幅方向の外力を受けた場合であっても、合成樹脂製ベースに形成されたガイド側壁が高剛性を発揮して直立姿勢を維持するため、ガイド側壁を合成樹脂製シューに備える従来の伝動装置用ガイドと比較すると、ガイド側壁がガイド幅方向内側への倒れ込みを回避して安定したチェーン軌道形態を確保することができ、また、ガイド側壁が合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持している分だけ合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとの融着面積が増えるため、合成樹樹脂製シューと合成樹脂製ベースとを強固に融着することができ、さらに、合成樹脂製シューにガイド幅方向のせん断力が作用した場合であっても、合成樹脂製シューがガイド側壁からガイド幅方向のせん断力に対する抗力を受けるため、合成樹脂製シューの平坦な裏面と合成樹脂製ベースの平坦な支持面のみとを融着させた伝動装置用ガイドと比較すると、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとの間でガイド幅方向の融着強度を大幅に向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明の伝動装置用ガイドによれば、請求項1に記載の伝動装置用ガイドが奏する効果に加えて、合成樹脂製ベースのガイド側壁がガイド長手方向に沿って延在する側壁面とこの側壁面の長手方向に沿って所定間隔で側壁面からガイド幅方向に凹設したシュー係合用凹部とを備えていることにより、合成樹脂製シューがガイド長手方向のせん断力を受けた場合であっても、合成樹脂製シューが合成樹脂製ベースのシュー係合用凹部からガイド長手方向のせん断力に対する抗力を受けるため、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとの強固な融着状態を維持することができ、また、エンジン内におけるミスト状の潤滑油がシュー係合用凹部に凝集して伝動チェーンと摺接面との間に流入するため、伝動チェーンの潤滑状態を長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製シューの熱劣化や摺動摩耗を抑制して合成樹脂製シューの長寿命化を達成することができ、さらに、ガイド側壁の側壁面がガイド厚み方向に亘って延びた補強リブとして機能するため、ガイド側壁を薄く形成してもガイド側壁のガイド幅方向内側への倒れ込みを更に抑制することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の伝動装置用ガイドによれば、請求項2に記載の伝動装置用ガイドが奏する効果に加えて、シュー係合用凹部のガイド幅方向に向けた開口縁がR状もしくはテーパー状に面取りされていることにより、伝動チェーンがガイド幅方向に蛇行してシュー係合用凹部の開口縁に接触した場合であっても伝動チェーンの接触抵抗がR状もしくはテーパー状に面取りされた開口縁により軽減されるため、伝動チェーンの円滑な走行を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例である伝動装置用ガイドの使用態様図。
【図2】図1に示す伝動装置用ガイドの斜視図。
【図3】図2の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す説明図。
【図4】図3の伝動装置用ガイドのIV矢印から視た説明図。
【図5】本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドの斜視図。
【図6】図5の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す説明図。
【図7】本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドをガイド厚み方向から視た説明図。
【図8】合成樹脂製シューがチェーン走行方向のせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図。
【図9】合成樹脂製シューがチェーン走行方向と逆向きのせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図。
【図10】図7に示す合成樹脂製シューのX―X線断面図とその一部拡大図。
【図11】図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例における断層状態を示す説明図。
【図12】図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図13】図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例における断層状態を示す説明図。
【図14】図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図15】図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例における断層状態を示す説明図。
【図16】図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図17】図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例における断層状態を示す説明図。
【図18】図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図19】図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例における断層状態を示す説明図。
【図20】図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図21】従来の伝動装置用ガイドを示す斜視図とその一部拡大図。
【図22】図21の伝動装置用ガイドの断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る伝動装置用ガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューとこの合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けた伝動装置用ガイドにおいて、合成樹脂製ベースが合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることにより、伝動チェーンの誤組み付け状態を回避するとともにガイド側壁のガイド幅方向内側への倒れ込みを防止して、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースの相互間の融着強度を向上させるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0016】
例えば、本発明の伝動装置用ガイドは、伝動チェーンのリンクプレートをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューとこの合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けたものであって、駆動側スプロケットと従動側スプロケットとに周回して循環走行させるローラチェーンやサイレントチェーン等の伝動チェーンによって動力を伝達する自動車用エンジンなどの伝動装置において、伝動チェーンを摺接状態で走行案内させる固定ガイドとして用いられるもの、あるいは、伝動チェーンを摺接状態で走行案内して緊張させる可動ガイドとして用いられるものの、いずれであっても構わない。
【0017】
そして、本発明の伝動装置用ガイドを一体成形するための2材成形加工については、一次キャビティとコアとで一次射出成形加工を施して合成樹脂製ベースを成形した後、合成樹脂製ベースを一次キャビティから取り出し、合成樹脂製ベースを二次キャビティ内に取り付け、二次キャビティとコアとで二次射出成形加工を施して合成樹脂製シューを成形するか、または、一次キャビティとコアとで一次射出成形加工を施して合成樹脂製シューを成形した後、合成樹脂製シューを一次キャビティから取り出し、合成樹脂製シューを二次キャビティ内に取り付け、二次キャビティとコアとで二次射出成形加工を施して合成樹脂製ベースを成形することにより、合成樹脂製ベースのガイド長手方向に沿って並列状態で延在する係合突条部が合成樹脂製ベースの支持面から突出して形成されているとともに、合成樹脂製ベースのガイド長手方向に沿って融着する合成樹脂製シューの係合凹溝部が合成樹脂製ベースの係合突条部にそれぞれ凹凸相対して形成することが可能な2材成形加工、2色成形加工、サンドイッチ成形加工などと称する当業者に一般的に用いられている通常の成形加工であれば良い。
【0018】
そして、本発明の伝動装置用ガイドで用いる合成樹脂の具体的な素材については、ポリアミド系、ポリブチレンテレフタレート系などの合成樹脂であれば良く、特に、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューの具体的な素材については、自己潤滑性を発揮しやすいポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド46樹脂、全芳香族樹脂などのポリアミド系樹脂が好ましく、他方、前述した合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する合成樹脂製ベースの具体的な素材については、ガイド強度、耐摩耗性などを発揮しやすいガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0019】
そして、本発明の伝動装置用ガイドで用いる合成樹脂製シューの具体的形態については、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えたものであればよく、摺接面を面一上に形成していても、摺接面の端縁から突設して伝動チェーンの蛇行を規制するガイド突条部を備えていても構わない。
【0020】
そして、本発明において合成樹脂製ベースのシュー係合用凹部をガイド長手方向に沿って設置する「所定間隔」とは、合成樹脂製シューのチェーン進入側端部、チェーン退出側端部、および、ガイド長手方向の中央付近の少なくとも3箇所に設けたものである。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の第1実施例である伝動装置用ガイド100について、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である伝動装置用ガイドの使用態様図であり、図2は、図1に示す伝動装置用ガイドの斜視図であり、図3は、図2の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す一部切欠説明図であり、図4は、図3の伝動装置用ガイドのIV矢印から視た説明図である。
【0022】
まず、本発明の第1実施例である伝動装置用ガイド100は、図1に示すように、駆動側スプロケットS1と従動側スプロケットS2とに周回して循環走行するローラチェーンとして用いる伝動チェーンCによって動力を伝達する自動車用エンジンのエンジンブロック壁Eに一端が取り付けられ、ショルダーボルトPにより揺動自在に取り付けられて、伝動チェーンCを摺接走行させながら緊張させる可動ガイドとして用いられる。
なお、図1に示す符号Tは、伝動チェーンCの張り過ぎ、緩み過ぎなどに起因する伝動障害を防止するために伝動装置用ガイド100に適切なチェーン張力を付与するテンショナであり、符号Fは、エンジンブロック壁Eに取り付け固定されて伝動チェーンCを摺接走行させながら案内する固定ガイドである。
【0023】
そこで、図2乃至図4に示すように、本実施例の伝動装置用ガイドである可動ガイド100は、伝動チェーンCをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面110aを備えたポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー110と、合成樹脂製シュー110の裏面110bをガイド長手方向に沿って支持するガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなって合成樹脂製シュー110よりも高剛性の合成樹脂製ベース120とを2材成形加工により一体成形して組み付けられたものである。
【0024】
すなわち、本実施例の伝動装置用ガイド100は、まず、一次射出成形加工を施してガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製ベース120を成形した後、二次射出成形加工を施してポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー110を成形したものである。
これにより、本実施例の伝動装置用ガイド100は、合成樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120とが成形加工時に一体化されている。
【0025】
そして、図3及び図4に示すように、合成樹脂製ベース120は、合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁121、121を備えている。
これにより、伝動チェーンCがガイド側壁121を乗り越えて組み付けなければならないように構成され、また、ガイド側壁121がガイド幅方向の外力を受けた場合であっても、合成樹脂製ベース120に形成されたガイド側壁121が高剛性を発揮して直立姿勢を維持し、また、ガイド側壁121が合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持している分だけ合成樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120との融着面積が増大し、さらに、合成樹脂製シュー110にガイド幅方向のせん断力が作用した場合であっても、合成樹脂製シュー110がガイド側壁121からガイド幅方向のせん断力に対する抗力を受けるように成っている。
【0026】
このようにして得られた本発明の第1実施例である可動ガイド100は、合成樹脂製ベース120が合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁121、121を備えていることにより、伝動チェーンCを伝動装置用ガイド100に組み付ける際に伝動チェーンCがガイド側壁121に乗り上げたまま摺接面110aに当接していないような誤組み付け状態を回避することができ、また、ガイド側壁を合成樹脂製シューに備える従来の伝動装置用ガイドと比較すると、ガイド側壁121がガイド幅方向内側への倒れ込みを回避して安定したチェーン軌道形態を確保することができ、また、合成樹樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120とを強固に融着することができ、さらに、合成樹脂製シューの平坦な裏面と合成樹脂製ベースの平坦な支持面のみを融着させた伝動装置用ガイドと比較すると、合成樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120との間でガイド幅方向の融着強度を大幅に向上させることができる等、その効果は甚大である。
【0027】
次に、本発明の第2実施例である可動ガイド200について、図面に基づいて説明する。
ここで、図5は、本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドの斜視図であり、図6は、図5の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す一部切欠説明図であり、図7は、本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドをガイド厚み方向から視た説明図であり、図8は、合成樹脂製シューがチェーン走行方向のせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図であり、図9は、合成樹脂製シューがチェーン走行方向と逆向きのせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図であり、図10は、図7に示す合成樹脂製シューのX―X線断面図とその一部拡大図である。
【0028】
そこで、伝動チェーンCを摺接走行させながら緊張させる可動ガイドとして用いられる本実施例の伝動装置用ガイド200は、図5乃至図7に示すように、伝動チェーンCをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面210aを備えたポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー210と、合成樹脂製シュー210の裏面210bをガイド長手方向に沿って支持するガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなって合成樹脂製シュー210よりも高剛性の合成樹脂製ベース220とを2材成形加工により一体成形して組み付けられたものである。
【0029】
すなわち、本実施例の伝動装置用ガイド200は、まず、一次射出成形加工を施してガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製ベース220を成形した後、二次射出成形加工を施してポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー210を成形したものである。
これにより、本実施例の伝動装置用ガイド200は、合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220とが成形加工時に一体化されている。
【0030】
そして、図5乃至図7に示すように、合成樹脂製ベース220は、合成樹脂製シュー210をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁221、221を備えている。
これにより、伝動チェーンCがガイド側壁221を乗り越えて組み付けなければならないように構成され、また、ガイド側壁221がガイド幅方向の外力を受けた場合であっても、合成樹脂製ベース220に形成されたガイド側壁221が高剛性を発揮して直立姿勢を維持し、また、ガイド側壁221が合成樹脂製シュー210をガイド幅方向の両側から挟持している分だけ合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220との融着面積が増大し、さらに、合成樹脂製シュー210にガイド幅方向のせん断力が作用した場合であっても、合成樹脂製シュー210がガイド側壁221からガイド幅方向のせん断力に対する抗力を受けるように成っている。
【0031】
また、前述のガイド側壁221は、図5乃至図7に示すように、ガイド長手方向に沿って延在する側壁面221aと、この側壁面221aのガイド長手方向に沿って所定間隔で側壁面220aからガイド幅方向に凹設した多数のシュー係合用凹部222、222とを備えている。
これにより、図8に示すように、合成樹脂製シュー210がチェーン進行側からチェーン退出側に向けた、すなわち、図8中の上方向のせん断力F1を受けた場合には、合成樹脂製シュー210がシュー係合用凹部222のチェーン退出側に形成される開口端222aからせん断力F1に対する抗力F1’を受け、また、図9に示すように、合成樹脂製シュー210がチェーン退出側からチェーン進入側に向けた、すなわち、図9中の下方向のせん断力F2を受けた場合には、合成樹脂製シュー210がシュー係合用凹部222のチェーン進入側に形成される開口端222aからせん断力F2に対する抗力F2’を受け、さらに、図10中の矢印に示すように、エンジン内におけるミスト状の潤滑油がシュー係合用凹部222に凝集して伝動チェーンCと摺接面210aとの間に流入し、また、図10の紙面右側に示すように、ガイド側壁221の側壁面221aがガイド厚み方向に亘って延びた補強リブとして機能するようになっている。
【0032】
このようにして得られた本実施例の可動ガイド200は、合成樹脂製ベース220が合成樹脂製シュー210をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁221、221を備えていることにより、伝動チェーンCを伝動装置用ガイド200に組み付ける際に伝動チェーンCがガイド側壁221に乗り上げたまま摺接面210aに当接していないような誤組み付け状態を回避することができ、また、ガイド側壁を合成樹脂製シューに備える従来の伝動装置用ガイドと比較すると、ガイド側壁221がガイド幅方向内側への倒れ込みを回避して安定したチェーン軌道形態を確保することができ、また、合成樹樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220とを強固に融着することができ、さらに、合成樹脂製シューの平坦な裏面と合成樹脂製ベースの平坦な支持面のみを融着させた伝動装置用ガイドと比較すると、合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220との間でガイド幅方向の融着強度を大幅に向上させることができる。
【0033】
また、ガイド側壁221がガイド長手方向に沿って延在する側壁面221aとこの側壁面221aからガイド幅方向に所定間隔で凹設したシュー係合用凹部222とを備えていることにより、合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220の強固な融着状態を維持することができ、また、伝動チェーンCの潤滑状態を長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製シュー210の熱劣化や摺動摩耗を抑制して合成樹脂製シュー210の長寿命化を達成することができ、さらに、ガイド側壁221を薄く形成してもガイド側壁221がガイド幅方向内側への倒れ込みを更に抑制することができる等、その効果は甚大である。
【0034】
次に、前述した第2実施例の第1変形例である可動ガイド300について、図面に基づいて説明する。
ここで、図11は、図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図12は、図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第1変形例である可動ガイド300は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する300番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0035】
すなわち、図11及び図12に示すように、シュー係合用凹部322は、ガイド厚み方向から視て円弧状断面を呈して、ガイド幅方向の内側に向って漸次拡幅に形成されている。
これにより、シュー係合用凹部322の開口端322aの幅が拡大して形成されて、摺接面310a上に供給される潤滑油を更に広範囲かつ効率的に供給可能になっている。
【0036】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド300は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの潤滑状態を更に長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製種シュー310の更なる長寿命化を達成することができる等、その効果は甚大である。
【0037】
次に、前述した第2実施例の第2変形例である可動ガイド400について、図面に基づいて説明する。
ここで、図13は、図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図14は、図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第2変形例である可動ガイド400は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する400番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0038】
すなわち、図13及び図14に示すように、シュー係合用凹部422は、ガイド幅方向の内側に向って漸次拡幅に形成されて、ガイド厚み方向から視て鈍角二等辺三角形状断面を呈している。
これにより、シュー係合用凹部422の開口端422aの幅が拡大して形成されて、摺接面410a上に供給される潤滑油を更に広範囲かつ効率的に供給可能になっている。
【0039】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド400は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの潤滑状態を更に長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製種シュー410の更なる長寿命化を達成することができる等、その効果は甚大である。
【0040】
次に、前述した第2実施例の第3変形例である可動ガイド500について、図面に基づいて説明する。
ここで、図15は、図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図16は、図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第3変形例である可動ガイド500は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する500番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0041】
すなわち、図15及び図16に示すように、シュー係合用凹部522は、ガイド幅方向の内側に向って漸次拡幅に形成されるとともに伝動チェーンCが走行するチェーン走行方向に向って漸次縮幅に形成されて、ガイド厚み方向から視て直角三角形状断面を呈している。
これにより、シュー係合用凹部522の開口端522aの幅が拡大して形成されて、摺接面510a上に供給される潤滑油を更に広範囲かつ効率的に供給可能になっている。
【0042】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド500は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの潤滑状態を更に長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製種シュー510の更なる長寿命化を達成することができる等、その効果は甚大である。
【0043】
次に、前述した第2実施例の第4変形例である可動ガイド600について、図面に基づいて説明する。
ここで、図17は、図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図18は、図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第4変形例である可動ガイド600は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する600番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0044】
すなわち、図17及び図18に示すように、シュー係合用凹部622のガイド幅方向に向けたチェーン退出側の開口縁622aは、テーパー状に面取りされている。
これにより、伝動チェーンCがガイド幅方向に蛇行してシュー係合用凹部622の開口縁622aに接触した場合であっても、伝動チェーンCの接触抵抗がテーパー状に面取りされた開口縁622aにより軽減されるようになっている。
【0045】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド600は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの円滑な走行を確保することができる等、その効果は甚大である。
【0046】
次に、前述した第2実施例の第5変形例である可動ガイド700について、図面に基づいて説明する。
ここで、図19は、図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図20は、図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第5変形例である可動ガイド700は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する700番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0047】
すなわち、図19及び図20に示すように、シュー係合用凹部722のガイド幅方向に向けたチェーン退出側の開口縁722aは、R状に面取りされている。
これにより、伝動チェーンCがガイド幅方向に蛇行してシュー係合用凹部722の開口縁722aに接触した場合であっても、伝動チェーンCの接触抵抗がR状に面取りされた開口縁722aにより軽減されるようになっている。
【0048】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド700は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの円滑な走行を確保することができる等、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300、400、500、600、700・・・伝動装置用ガイド
110、210、310、410、510、610、710・・・合成樹脂製シュー
110a、210a、310a、410a、510a、610a、710a・・・摺接面
110b、210b、310b、410b、510b、610b、710b・・・裏面
120、220、320、420、520、620、720・・・合成樹脂製ベース
120a、220a、320a、420a、520a、620a、720a・・・支持面
121、221、321、421、521、621、721・・・ガイド側壁
221a、321a、421a、521a、621a、721a・・・側壁面
222、322、422、522、622、722・・・シュー係合用凹部
222a、322a、422a、522a、622a、722a・・・開口端
800 ・・・ 伝動装置用ガイド
810a・・・ 摺接面
810 ・・・ シュー部材
811 ・・・ ガイド側壁
812 ・・・ フック片
820 ・・・ ベース部材
823 ・・・ 切り欠き
C ・・・ 伝動チェーン
S1・・・ 駆動側スプロケット
S2・・・ 従動側スプロケット
E ・・・ エンジンブロック壁
T ・・・ テンショナ
F ・・・ 固定ガイド
P ・・・ ショルダーボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側スプロケットと従動側スプロケットとに周回して循環走行させるローラチェーンやサイレントチェーン等の伝動チェーンによって動力を伝達する自動車用エンジンなどの伝動装置において、伝動チェーンを摺接状態で走行案内させる固定ガイド、または、伝動チェーンを摺接状態で走行案内して緊張させる可動ガイドとして用いられる伝動装置用ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジンなどの伝動装置に用いられる伝動装置用ガイドとして、図21及び図22に示すように、伝動チェーンCを摺接面810a上で摺動走行させるシュー部材810とこのシュー部材810のシュー形態を保持するベース部材820とをそれぞれ別々に成形して一体に組み立てて、シュー部材810がガイド幅方向の両側に設けられた左右一対のガイド側壁811、811を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来の伝動装置用ガイドとして、一次樹脂からなるベース部材とこのベース部材を成形した後にベース部材の裏面に一体に融着する支持面を備えて伝動チェーンに摺接する二次樹脂からなるシュー部材とを備えるチェーンガイドが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−114126号公報(段落[0013]、図1参照)
【特許文献2】特開2004−150615号公報(段落[0022]、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者のような従来の伝動装置用ガイド800は、シュー部材810のガイド側壁811が摺接面810aから低い状態で設けられていると、伝動チェーンCがガイド側壁811を跨いで乗り上げたままのような誤組み付け状態で伝動チェーンCが伝動装置用ガイド800に掛け回されるため、伝動チェーンCの誤組み付け状態により伝動装置を構成する伝動部品を破損させる虞があるという問題があった。
また、ベース部材820に比べて剛性が低いシュー部材810のガイド側壁811がガイド幅方向の外側から内側に向けた外力を受けると、ガイド側壁811がガイド幅方向内側へ倒れ込むため、伝動チェーンCとガイド側壁811の先端とが接触してチェーン走行を妨げる虞があるという問題があった。
また、エンジン稼働時におけるエンジン特有の負荷変動により伝動チェーンCが振動しながら摺接面810a上を摺接走行すると、シュー部材810がガイド長手方向に組み付け代の分だけ移動するため、シュー部材810のフック片812とベース部材820の切り欠き823との局部的な当接状態となり、フック片812に過度の応力集中が生じてフック片812が折損し、シュー部材810とベース部材820との組み付け状態が悪化して伝動チェーンCのチェーン軌道が不安定になる虞があるという問題があった。
【0005】
他方、後者のような従来のチェーンガイドは、伝動チェーンがシュー部材のガイド幅方向に偏在してシュー部材にガイド幅方向のせん断力が働いた場合に、シュー部材の平坦な裏面とベース部材の平坦な支持面とがガイド幅方向にずれてシュー部材とベース部材とが剥離するため、シュー部材とベース部材の相互間の融着強度を長期に亘って維持できないという問題があった。
【0006】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、伝動チェーンの誤組み付け状態を回避するとともにガイド側壁のガイド幅方向内側への倒れ込みを防止して、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースの相互間の融着強度を向上させる伝動装置用ガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る伝動装置用ガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューと該合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けた伝動装置用ガイドにおいて、前記合成樹脂製ベースが、前記合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項2の発明に係る伝動装置用ガイドは、請求項1に記載された伝動装置用ガイドの構成に加えて、前記合成樹脂製ベースのガイド側壁が、前記ガイド長手方向に沿って延在する側壁面と該側壁面のガイド長手方向に沿って所定間隔で側壁面からガイド幅方向に凹設したシュー係合用凹部とを備えていることにより、前述した課題を更に解決するものである。
【0009】
請求項3の発明に係る伝動装置用ガイドは、請求項2に記載された伝動装置用ガイドの構成に加えて、前記シュー係合用凹部のガイド幅方向に向けた開口縁が、R状もしくはテーパー状に面取りされていることにより、前述した課題を更に解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の伝動装置用ガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューとこの合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けたことにより、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとが成形加工時に一体化されているため、従来のような合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとを別部材とした成形加工後の組み付け作業が不要になるばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏することができる。
【0011】
すなわち、本請求項1に係る発明の伝動装置用ガイドは、合成樹脂製ベースが合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることにより、伝動チェーンをガイド側壁を乗り越えて摺接面に組み付けなければならないため、伝動チェーンを伝動装置用ガイドに組み付ける際に伝動チェーンがガイド側壁に乗り上げたまま摺接面に当接していないような誤組み付け状態を回避することができ、また、ガイド側壁がガイド幅方向の外力を受けた場合であっても、合成樹脂製ベースに形成されたガイド側壁が高剛性を発揮して直立姿勢を維持するため、ガイド側壁を合成樹脂製シューに備える従来の伝動装置用ガイドと比較すると、ガイド側壁がガイド幅方向内側への倒れ込みを回避して安定したチェーン軌道形態を確保することができ、また、ガイド側壁が合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持している分だけ合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとの融着面積が増えるため、合成樹樹脂製シューと合成樹脂製ベースとを強固に融着することができ、さらに、合成樹脂製シューにガイド幅方向のせん断力が作用した場合であっても、合成樹脂製シューがガイド側壁からガイド幅方向のせん断力に対する抗力を受けるため、合成樹脂製シューの平坦な裏面と合成樹脂製ベースの平坦な支持面のみとを融着させた伝動装置用ガイドと比較すると、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとの間でガイド幅方向の融着強度を大幅に向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明の伝動装置用ガイドによれば、請求項1に記載の伝動装置用ガイドが奏する効果に加えて、合成樹脂製ベースのガイド側壁がガイド長手方向に沿って延在する側壁面とこの側壁面の長手方向に沿って所定間隔で側壁面からガイド幅方向に凹設したシュー係合用凹部とを備えていることにより、合成樹脂製シューがガイド長手方向のせん断力を受けた場合であっても、合成樹脂製シューが合成樹脂製ベースのシュー係合用凹部からガイド長手方向のせん断力に対する抗力を受けるため、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースとの強固な融着状態を維持することができ、また、エンジン内におけるミスト状の潤滑油がシュー係合用凹部に凝集して伝動チェーンと摺接面との間に流入するため、伝動チェーンの潤滑状態を長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製シューの熱劣化や摺動摩耗を抑制して合成樹脂製シューの長寿命化を達成することができ、さらに、ガイド側壁の側壁面がガイド厚み方向に亘って延びた補強リブとして機能するため、ガイド側壁を薄く形成してもガイド側壁のガイド幅方向内側への倒れ込みを更に抑制することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の伝動装置用ガイドによれば、請求項2に記載の伝動装置用ガイドが奏する効果に加えて、シュー係合用凹部のガイド幅方向に向けた開口縁がR状もしくはテーパー状に面取りされていることにより、伝動チェーンがガイド幅方向に蛇行してシュー係合用凹部の開口縁に接触した場合であっても伝動チェーンの接触抵抗がR状もしくはテーパー状に面取りされた開口縁により軽減されるため、伝動チェーンの円滑な走行を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例である伝動装置用ガイドの使用態様図。
【図2】図1に示す伝動装置用ガイドの斜視図。
【図3】図2の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す説明図。
【図4】図3の伝動装置用ガイドのIV矢印から視た説明図。
【図5】本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドの斜視図。
【図6】図5の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す説明図。
【図7】本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドをガイド厚み方向から視た説明図。
【図8】合成樹脂製シューがチェーン走行方向のせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図。
【図9】合成樹脂製シューがチェーン走行方向と逆向きのせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図。
【図10】図7に示す合成樹脂製シューのX―X線断面図とその一部拡大図。
【図11】図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例における断層状態を示す説明図。
【図12】図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図13】図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例における断層状態を示す説明図。
【図14】図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図15】図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例における断層状態を示す説明図。
【図16】図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図17】図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例における断層状態を示す説明図。
【図18】図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図19】図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例における断層状態を示す説明図。
【図20】図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例をガイド厚み方向から視た説明図。
【図21】従来の伝動装置用ガイドを示す斜視図とその一部拡大図。
【図22】図21の伝動装置用ガイドの断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る伝動装置用ガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューとこの合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けた伝動装置用ガイドにおいて、合成樹脂製ベースが合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることにより、伝動チェーンの誤組み付け状態を回避するとともにガイド側壁のガイド幅方向内側への倒れ込みを防止して、合成樹脂製シューと合成樹脂製ベースの相互間の融着強度を向上させるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0016】
例えば、本発明の伝動装置用ガイドは、伝動チェーンのリンクプレートをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューとこの合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けたものであって、駆動側スプロケットと従動側スプロケットとに周回して循環走行させるローラチェーンやサイレントチェーン等の伝動チェーンによって動力を伝達する自動車用エンジンなどの伝動装置において、伝動チェーンを摺接状態で走行案内させる固定ガイドとして用いられるもの、あるいは、伝動チェーンを摺接状態で走行案内して緊張させる可動ガイドとして用いられるものの、いずれであっても構わない。
【0017】
そして、本発明の伝動装置用ガイドを一体成形するための2材成形加工については、一次キャビティとコアとで一次射出成形加工を施して合成樹脂製ベースを成形した後、合成樹脂製ベースを一次キャビティから取り出し、合成樹脂製ベースを二次キャビティ内に取り付け、二次キャビティとコアとで二次射出成形加工を施して合成樹脂製シューを成形するか、または、一次キャビティとコアとで一次射出成形加工を施して合成樹脂製シューを成形した後、合成樹脂製シューを一次キャビティから取り出し、合成樹脂製シューを二次キャビティ内に取り付け、二次キャビティとコアとで二次射出成形加工を施して合成樹脂製ベースを成形することにより、合成樹脂製ベースのガイド長手方向に沿って並列状態で延在する係合突条部が合成樹脂製ベースの支持面から突出して形成されているとともに、合成樹脂製ベースのガイド長手方向に沿って融着する合成樹脂製シューの係合凹溝部が合成樹脂製ベースの係合突条部にそれぞれ凹凸相対して形成することが可能な2材成形加工、2色成形加工、サンドイッチ成形加工などと称する当業者に一般的に用いられている通常の成形加工であれば良い。
【0018】
そして、本発明の伝動装置用ガイドで用いる合成樹脂の具体的な素材については、ポリアミド系、ポリブチレンテレフタレート系などの合成樹脂であれば良く、特に、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューの具体的な素材については、自己潤滑性を発揮しやすいポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド46樹脂、全芳香族樹脂などのポリアミド系樹脂が好ましく、他方、前述した合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する合成樹脂製ベースの具体的な素材については、ガイド強度、耐摩耗性などを発揮しやすいガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0019】
そして、本発明の伝動装置用ガイドで用いる合成樹脂製シューの具体的形態については、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えたものであればよく、摺接面を面一上に形成していても、摺接面の端縁から突設して伝動チェーンの蛇行を規制するガイド突条部を備えていても構わない。
【0020】
そして、本発明において合成樹脂製ベースのシュー係合用凹部をガイド長手方向に沿って設置する「所定間隔」とは、合成樹脂製シューのチェーン進入側端部、チェーン退出側端部、および、ガイド長手方向の中央付近の少なくとも3箇所に設けたものである。
【実施例】
【0021】
以下に、本発明の第1実施例である伝動装置用ガイド100について、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である伝動装置用ガイドの使用態様図であり、図2は、図1に示す伝動装置用ガイドの斜視図であり、図3は、図2の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す一部切欠説明図であり、図4は、図3の伝動装置用ガイドのIV矢印から視た説明図である。
【0022】
まず、本発明の第1実施例である伝動装置用ガイド100は、図1に示すように、駆動側スプロケットS1と従動側スプロケットS2とに周回して循環走行するローラチェーンとして用いる伝動チェーンCによって動力を伝達する自動車用エンジンのエンジンブロック壁Eに一端が取り付けられ、ショルダーボルトPにより揺動自在に取り付けられて、伝動チェーンCを摺接走行させながら緊張させる可動ガイドとして用いられる。
なお、図1に示す符号Tは、伝動チェーンCの張り過ぎ、緩み過ぎなどに起因する伝動障害を防止するために伝動装置用ガイド100に適切なチェーン張力を付与するテンショナであり、符号Fは、エンジンブロック壁Eに取り付け固定されて伝動チェーンCを摺接走行させながら案内する固定ガイドである。
【0023】
そこで、図2乃至図4に示すように、本実施例の伝動装置用ガイドである可動ガイド100は、伝動チェーンCをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面110aを備えたポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー110と、合成樹脂製シュー110の裏面110bをガイド長手方向に沿って支持するガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなって合成樹脂製シュー110よりも高剛性の合成樹脂製ベース120とを2材成形加工により一体成形して組み付けられたものである。
【0024】
すなわち、本実施例の伝動装置用ガイド100は、まず、一次射出成形加工を施してガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製ベース120を成形した後、二次射出成形加工を施してポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー110を成形したものである。
これにより、本実施例の伝動装置用ガイド100は、合成樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120とが成形加工時に一体化されている。
【0025】
そして、図3及び図4に示すように、合成樹脂製ベース120は、合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁121、121を備えている。
これにより、伝動チェーンCがガイド側壁121を乗り越えて組み付けなければならないように構成され、また、ガイド側壁121がガイド幅方向の外力を受けた場合であっても、合成樹脂製ベース120に形成されたガイド側壁121が高剛性を発揮して直立姿勢を維持し、また、ガイド側壁121が合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持している分だけ合成樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120との融着面積が増大し、さらに、合成樹脂製シュー110にガイド幅方向のせん断力が作用した場合であっても、合成樹脂製シュー110がガイド側壁121からガイド幅方向のせん断力に対する抗力を受けるように成っている。
【0026】
このようにして得られた本発明の第1実施例である可動ガイド100は、合成樹脂製ベース120が合成樹脂製シュー110をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁121、121を備えていることにより、伝動チェーンCを伝動装置用ガイド100に組み付ける際に伝動チェーンCがガイド側壁121に乗り上げたまま摺接面110aに当接していないような誤組み付け状態を回避することができ、また、ガイド側壁を合成樹脂製シューに備える従来の伝動装置用ガイドと比較すると、ガイド側壁121がガイド幅方向内側への倒れ込みを回避して安定したチェーン軌道形態を確保することができ、また、合成樹樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120とを強固に融着することができ、さらに、合成樹脂製シューの平坦な裏面と合成樹脂製ベースの平坦な支持面のみを融着させた伝動装置用ガイドと比較すると、合成樹脂製シュー110と合成樹脂製ベース120との間でガイド幅方向の融着強度を大幅に向上させることができる等、その効果は甚大である。
【0027】
次に、本発明の第2実施例である可動ガイド200について、図面に基づいて説明する。
ここで、図5は、本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドの斜視図であり、図6は、図5の伝動装置用ガイドにおける断層状態を示す一部切欠説明図であり、図7は、本発明の第2実施例である伝動装置用ガイドをガイド厚み方向から視た説明図であり、図8は、合成樹脂製シューがチェーン走行方向のせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図であり、図9は、合成樹脂製シューがチェーン走行方向と逆向きのせん断力を受けた状態を示す図7のA部拡大説明図であり、図10は、図7に示す合成樹脂製シューのX―X線断面図とその一部拡大図である。
【0028】
そこで、伝動チェーンCを摺接走行させながら緊張させる可動ガイドとして用いられる本実施例の伝動装置用ガイド200は、図5乃至図7に示すように、伝動チェーンCをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面210aを備えたポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー210と、合成樹脂製シュー210の裏面210bをガイド長手方向に沿って支持するガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなって合成樹脂製シュー210よりも高剛性の合成樹脂製ベース220とを2材成形加工により一体成形して組み付けられたものである。
【0029】
すなわち、本実施例の伝動装置用ガイド200は、まず、一次射出成形加工を施してガラス繊維を含有した強化ポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製ベース220を成形した後、二次射出成形加工を施してポリアミド系樹脂からなる合成樹脂製シュー210を成形したものである。
これにより、本実施例の伝動装置用ガイド200は、合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220とが成形加工時に一体化されている。
【0030】
そして、図5乃至図7に示すように、合成樹脂製ベース220は、合成樹脂製シュー210をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁221、221を備えている。
これにより、伝動チェーンCがガイド側壁221を乗り越えて組み付けなければならないように構成され、また、ガイド側壁221がガイド幅方向の外力を受けた場合であっても、合成樹脂製ベース220に形成されたガイド側壁221が高剛性を発揮して直立姿勢を維持し、また、ガイド側壁221が合成樹脂製シュー210をガイド幅方向の両側から挟持している分だけ合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220との融着面積が増大し、さらに、合成樹脂製シュー210にガイド幅方向のせん断力が作用した場合であっても、合成樹脂製シュー210がガイド側壁221からガイド幅方向のせん断力に対する抗力を受けるように成っている。
【0031】
また、前述のガイド側壁221は、図5乃至図7に示すように、ガイド長手方向に沿って延在する側壁面221aと、この側壁面221aのガイド長手方向に沿って所定間隔で側壁面220aからガイド幅方向に凹設した多数のシュー係合用凹部222、222とを備えている。
これにより、図8に示すように、合成樹脂製シュー210がチェーン進行側からチェーン退出側に向けた、すなわち、図8中の上方向のせん断力F1を受けた場合には、合成樹脂製シュー210がシュー係合用凹部222のチェーン退出側に形成される開口端222aからせん断力F1に対する抗力F1’を受け、また、図9に示すように、合成樹脂製シュー210がチェーン退出側からチェーン進入側に向けた、すなわち、図9中の下方向のせん断力F2を受けた場合には、合成樹脂製シュー210がシュー係合用凹部222のチェーン進入側に形成される開口端222aからせん断力F2に対する抗力F2’を受け、さらに、図10中の矢印に示すように、エンジン内におけるミスト状の潤滑油がシュー係合用凹部222に凝集して伝動チェーンCと摺接面210aとの間に流入し、また、図10の紙面右側に示すように、ガイド側壁221の側壁面221aがガイド厚み方向に亘って延びた補強リブとして機能するようになっている。
【0032】
このようにして得られた本実施例の可動ガイド200は、合成樹脂製ベース220が合成樹脂製シュー210をガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンCを収容規制する左右一対のガイド側壁221、221を備えていることにより、伝動チェーンCを伝動装置用ガイド200に組み付ける際に伝動チェーンCがガイド側壁221に乗り上げたまま摺接面210aに当接していないような誤組み付け状態を回避することができ、また、ガイド側壁を合成樹脂製シューに備える従来の伝動装置用ガイドと比較すると、ガイド側壁221がガイド幅方向内側への倒れ込みを回避して安定したチェーン軌道形態を確保することができ、また、合成樹樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220とを強固に融着することができ、さらに、合成樹脂製シューの平坦な裏面と合成樹脂製ベースの平坦な支持面のみを融着させた伝動装置用ガイドと比較すると、合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220との間でガイド幅方向の融着強度を大幅に向上させることができる。
【0033】
また、ガイド側壁221がガイド長手方向に沿って延在する側壁面221aとこの側壁面221aからガイド幅方向に所定間隔で凹設したシュー係合用凹部222とを備えていることにより、合成樹脂製シュー210と合成樹脂製ベース220の強固な融着状態を維持することができ、また、伝動チェーンCの潤滑状態を長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製シュー210の熱劣化や摺動摩耗を抑制して合成樹脂製シュー210の長寿命化を達成することができ、さらに、ガイド側壁221を薄く形成してもガイド側壁221がガイド幅方向内側への倒れ込みを更に抑制することができる等、その効果は甚大である。
【0034】
次に、前述した第2実施例の第1変形例である可動ガイド300について、図面に基づいて説明する。
ここで、図11は、図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図12は、図5に示す伝動装置用ガイドの第1変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第1変形例である可動ガイド300は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する300番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0035】
すなわち、図11及び図12に示すように、シュー係合用凹部322は、ガイド厚み方向から視て円弧状断面を呈して、ガイド幅方向の内側に向って漸次拡幅に形成されている。
これにより、シュー係合用凹部322の開口端322aの幅が拡大して形成されて、摺接面310a上に供給される潤滑油を更に広範囲かつ効率的に供給可能になっている。
【0036】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド300は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの潤滑状態を更に長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製種シュー310の更なる長寿命化を達成することができる等、その効果は甚大である。
【0037】
次に、前述した第2実施例の第2変形例である可動ガイド400について、図面に基づいて説明する。
ここで、図13は、図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図14は、図5に示す伝動装置用ガイドの第2変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第2変形例である可動ガイド400は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する400番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0038】
すなわち、図13及び図14に示すように、シュー係合用凹部422は、ガイド幅方向の内側に向って漸次拡幅に形成されて、ガイド厚み方向から視て鈍角二等辺三角形状断面を呈している。
これにより、シュー係合用凹部422の開口端422aの幅が拡大して形成されて、摺接面410a上に供給される潤滑油を更に広範囲かつ効率的に供給可能になっている。
【0039】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド400は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの潤滑状態を更に長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製種シュー410の更なる長寿命化を達成することができる等、その効果は甚大である。
【0040】
次に、前述した第2実施例の第3変形例である可動ガイド500について、図面に基づいて説明する。
ここで、図15は、図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図16は、図5に示す伝動装置用ガイドの第3変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第3変形例である可動ガイド500は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する500番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0041】
すなわち、図15及び図16に示すように、シュー係合用凹部522は、ガイド幅方向の内側に向って漸次拡幅に形成されるとともに伝動チェーンCが走行するチェーン走行方向に向って漸次縮幅に形成されて、ガイド厚み方向から視て直角三角形状断面を呈している。
これにより、シュー係合用凹部522の開口端522aの幅が拡大して形成されて、摺接面510a上に供給される潤滑油を更に広範囲かつ効率的に供給可能になっている。
【0042】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド500は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの潤滑状態を更に長期に亘って維持できるとともに合成樹脂製種シュー510の更なる長寿命化を達成することができる等、その効果は甚大である。
【0043】
次に、前述した第2実施例の第4変形例である可動ガイド600について、図面に基づいて説明する。
ここで、図17は、図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図18は、図5に示す伝動装置用ガイドの第4変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第4変形例である可動ガイド600は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する600番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0044】
すなわち、図17及び図18に示すように、シュー係合用凹部622のガイド幅方向に向けたチェーン退出側の開口縁622aは、テーパー状に面取りされている。
これにより、伝動チェーンCがガイド幅方向に蛇行してシュー係合用凹部622の開口縁622aに接触した場合であっても、伝動チェーンCの接触抵抗がテーパー状に面取りされた開口縁622aにより軽減されるようになっている。
【0045】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド600は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの円滑な走行を確保することができる等、その効果は甚大である。
【0046】
次に、前述した第2実施例の第5変形例である可動ガイド700について、図面に基づいて説明する。
ここで、図19は、図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例における断層状態を示す一部切欠説明図であり、図20は、図5に示す伝動装置用ガイドの第5変形例をガイド厚み方向から視た説明図である。
可動ガイド200の第5変形例である可動ガイド700は、上述した第2実施例の可動ガイド200と比較すると、ガイド側壁の具体的な形態のみが異なっており、その余の部品形態については、基本的に何ら変わることがないため、上述した第2実施例の可動ガイド200と同一の部材について対応する700番台の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0047】
すなわち、図19及び図20に示すように、シュー係合用凹部722のガイド幅方向に向けたチェーン退出側の開口縁722aは、R状に面取りされている。
これにより、伝動チェーンCがガイド幅方向に蛇行してシュー係合用凹部722の開口縁722aに接触した場合であっても、伝動チェーンCの接触抵抗がR状に面取りされた開口縁722aにより軽減されるようになっている。
【0048】
このようにして得られた本変形例の可動ガイド700は、前述した可動ガイド200が奏する効果に加えて、伝動チェーンCの円滑な走行を確保することができる等、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0049】
100、200、300、400、500、600、700・・・伝動装置用ガイド
110、210、310、410、510、610、710・・・合成樹脂製シュー
110a、210a、310a、410a、510a、610a、710a・・・摺接面
110b、210b、310b、410b、510b、610b、710b・・・裏面
120、220、320、420、520、620、720・・・合成樹脂製ベース
120a、220a、320a、420a、520a、620a、720a・・・支持面
121、221、321、421、521、621、721・・・ガイド側壁
221a、321a、421a、521a、621a、721a・・・側壁面
222、322、422、522、622、722・・・シュー係合用凹部
222a、322a、422a、522a、622a、722a・・・開口端
800 ・・・ 伝動装置用ガイド
810a・・・ 摺接面
810 ・・・ シュー部材
811 ・・・ ガイド側壁
812 ・・・ フック片
820 ・・・ ベース部材
823 ・・・ 切り欠き
C ・・・ 伝動チェーン
S1・・・ 駆動側スプロケット
S2・・・ 従動側スプロケット
E ・・・ エンジンブロック壁
T ・・・ テンショナ
F ・・・ 固定ガイド
P ・・・ ショルダーボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューと該合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けた伝動装置用ガイドにおいて、
前記合成樹脂製ベースが、前記合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることを特徴とする伝動装置用ガイド。
【請求項2】
前記合成樹脂製ベースのガイド側壁が、前記ガイド長手方向に沿って延在する側壁面と該側壁面のガイド長手方向に沿って所定間隔で側壁面からガイド幅方向に凹設したシュー係合用凹部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の伝動装置用ガイド。
【請求項3】
前記シュー係合用凹部のガイド幅方向に向けた開口縁が、R状もしくはテーパー状に面取りされていることを特徴とする請求項2に記載の伝動装置用ガイド。
【請求項1】
伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接面を備えた合成樹脂製シューと該合成樹脂製シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持する支持面を備えて合成樹脂製シューよりも高剛性の合成樹脂製ベースとを2材成形加工により一体成形して組み付けた伝動装置用ガイドにおいて、
前記合成樹脂製ベースが、前記合成樹脂製シューをガイド幅方向の両側から挟持して伝動チェーンを収容規制する左右一対のガイド側壁を備えていることを特徴とする伝動装置用ガイド。
【請求項2】
前記合成樹脂製ベースのガイド側壁が、前記ガイド長手方向に沿って延在する側壁面と該側壁面のガイド長手方向に沿って所定間隔で側壁面からガイド幅方向に凹設したシュー係合用凹部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の伝動装置用ガイド。
【請求項3】
前記シュー係合用凹部のガイド幅方向に向けた開口縁が、R状もしくはテーパー状に面取りされていることを特徴とする請求項2に記載の伝動装置用ガイド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−57345(P2013−57345A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195339(P2011−195339)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】
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