説明

伸縮式梯子

【課題】 伸張時における抜け止め機能を確実かつ適正に発揮させ得て伸張状態での使用時の安全性を長期に亘って確保することができる伸縮式梯子を提供する。
【解決手段】 互いに平行な一対の筒状支柱体11と横桟体12とからなる複数の基本部材7を、各筒状支柱体11同士が摺動可能となるように順次接続して短縮状態と伸長状態とに変更可能に構成された伸縮式梯子本体2と、各横桟体12に設けられて伸張状態を係止保持する係止解除可能な係止手段3と、伸張状態で隣接する筒状支柱体11の抜け出しを阻止する抜止め手段10と、を備えた伸縮式梯子において、抜止め手段10を構成する外向き凸部27及び内向き凸部28が、雌雄一対の金型を用いたプレス成形加工により、筒軸線方向に対して直交又は略直交する当接面27b,28b及び当接面27b,28b直下の肉厚部分27c,28cを有する形態に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築現場において作業員が高所と低所との間を昇り降りしたり、あるいは、不測に緊急停車した旅客用の鉄道車両等から乗客が地上に移動したりする場合に用いられる梯子で、横桟体を横架する一対の支柱体を伸縮構造に構成してなる伸縮式梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の伸縮式梯子として、本出願人は、例えば特許第3594341号公報や特許第4050263号公報等に開示されているような構成のものを既に提案している。本出願人が既に提案している伸縮式梯子は、所定の間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の筒状支柱体と該一対の筒状支柱体の筒軸線方向の一端部間に亘って横架される横桟体とからなり、前記筒状支柱体の筒部径の大きさが順次異なるように形成された複数の基本部材を、筒部径の大きい一対の筒状支柱体内にそれよりも筒部径の小さい一対の筒状支柱体が筒軸線方向に摺動可能に嵌合されるように順次接続することにより、複数の基本部材における横桟体が順次当接した短縮状態と、複数の基本部材の横桟体が筒軸線方向に適当間隔に離間し、かつ、筒軸線方向で隣接する両筒状支柱体の端部分は嵌合保持されている伸長状態と、に変更可能に構成されていると共に、前記複数の基本部材のうち、最も筒部の小さい筒状支柱体を有する基本部材を除く各基本部材における横桟体に設けられ、伸張状態において筒軸線方向で隣接する両筒状支柱体の端部分それぞれに形成の係合孔に棒状部材を係入させることにより伸張状態を係止保持し、棒状部材を前記係合孔から引抜くことにより係止解除可能な係止手段と、前記伸張状態において嵌合保持される隣接する両筒状支柱体の端部分で筒部径の小さい筒状支柱体の端部分から外方へ向け突出する外向き凸部と筒部径の大きい筒状支柱体の端部分から内方へ向け突出する内向き凸部とが前記短縮状態から前記伸張状態への摺動時に互いに当接することにより隣接する両筒状支柱体の抜け出しを阻止する抜止め手段と、を備えた構成のものである。
【0003】
上記のような構成を備えた伸縮式梯子は、非使用時には、短縮状態とすることにより、全体が嵩張らないコンパクトな状態として、保管時の省スペース化を図り得る一方、使用時には、前記伸張状態とすることにより、梯子の段部となる横桟体の間隔を昇り降りや移動歩幅に適したものに変化させると共に、前記係止手段における棒状部材を筒軸線方向で隣接する両筒状支柱体の端部分それぞれに形成の係合孔に係入させることで横桟体に荷重がかかっても不測に短縮することがない状態として、安全に使用し得る。
【0004】
ところで、上記のような構成の伸縮式梯子において、短縮状態から伸張状態へと変化させるべく基本部材における筒状支柱体どうしを筒軸線方向に摺動させた際に互いに当接して隣接する両筒状支柱体の抜け出しを阻止する抜止手段の外向き凸部及び内向き凸部が、筒状支柱体の筒部の内面から外方へ向けて及び外面から内方へ向けての局所的な張出し(膨出)加工により形成されていた(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】 特許第3594341号公報の図1
【特許文献2】 特許第4050263号公報の図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1や2に示されたように、張出し加工により形成された凸部は、断面が半円弧又は略半円弧形状であるため、隣接する筒状支柱体の内周面と外周面との間の微小なクリアランスによって両筒状支柱体間にガタが存在する関係から、外向き凸部と内向き凸部との当接点が定まらず、伸張状態において隣接する筒状支柱体同士が互いに傾いた状態で抜け出し阻止されて両筒状支柱体の係合孔が直線状に合致しないで位置ずれすることが多いために、棒状部材の係合孔への係入作業が困難となったり、あるいは、棒状部材を弾性付勢力により係合孔に自動的に係入させる構成が採用されている場合、棒状部材が確実正常に係入されないとか、係入が不完全なものとなったりしやすい。こうなると、伸張状態での使用時に筒状支柱体が不測に収縮されるなど梯子使用時の安全性を確保することができなくなる。
【0007】
また、張出し加工により凸部の突出量を大きくすると、その分、凸部の肉厚が薄くなって、強度の弱い凸部が形成される。このように肉厚が薄く強度の弱い凸部同士が伸張される毎に繰り返し当接されることにより、短期間の使用で凸部が変形あるいは破損されやすい。このように凸部が変形あるいは破損されると、外向き凸部と内向き凸部との当接点が益々定まらないばかりか、所定の抜け止め阻止機能が損なわれて伸張時に隣接する筒状支柱体が抜け落ちてしまう等の不具合を招きやすいという問題があった。
【0008】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、伸張時における抜け止め機能を確実かつ適正に発揮させ得て伸張状態での使用時の安全性を長期に亘って確保することができる伸縮式梯子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために案出された本発明に係る伸縮式梯子は、所定の間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の筒状支柱体と該一対の筒状支柱体の筒軸線方向の一端部間に亘って横架される横桟体とからなり、前記筒状支柱体の筒部径の大きさが順次異なるように形成された複数の基本部材を、筒部径の大きい一対の筒状支柱体内にそれよりも筒部径の小さい一対の筒状支柱体が筒軸線方向に摺動可能に嵌合されるように順次接続することにより、複数の基本部材における横桟体が順次当接した短縮状態と、複数の基本部材の横桟体が筒軸線方向に適当間隔に離間し、かつ、筒軸線方向で隣接する両筒状支柱体の端部分は嵌合保持されている伸長状態と、に変更可能に構成されていると共に、前記複数の基本部材のうち、最も筒部径の小さい筒状支柱体を有する基本部材を除く各基本部材における横桟体に設けられ、伸張状態において筒軸線方向で隣接する両筒状支柱体の端部分それぞれに形成の係合孔に棒状部材を係入させることにより伸張状態を係止保持し、棒状部材を前記係合孔から引抜くことにより係止解除可能な係止手段と、前記伸張状態において嵌合保持される隣接する両筒状支柱体の端部分で筒部径の小さい筒状支柱体の端部分から外方へ向け突出する外向き凸部と筒部径の大きい筒状支柱体の端部分から内方へ向け突出する内向き凸部とが前記短縮状態から前記伸張状態への摺動時に互いに当接することにより隣接する両筒状支柱体の抜け出しを阻止する抜止め手段と、を備えている伸縮式梯子において、前記抜止め手段を構成する外向き凸部及び内向き凸部が、各筒状支柱体の端部分の内外に配置される雌雄一対の金型を用いたプレス成形加工により、両凸部それぞれに筒軸線方向に対して直交又は略直交する当接面を有し、この当接面の直下部分が肉厚となるような形態に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記のごとき特徴構成を有する本発明によれば、次に列挙するような効果を奏する。
(1)梯子を構成する複数の基本部材が、筒部径の大きさが異なる一対の筒状支柱体を順次筒軸線方向に摺動可能に接続して短縮収納状態と伸長使用状態とに変更可能に構成されたものであるから、短縮収納状態における梯子全体の著しいコンパクト化を図ることができる。したがって、短縮収納状態での保管スペースを節減できるとともに、コンパクトな短縮収納状態のままで使用箇所に容易に運搬することができる。
(2)また、伸張状態において、係止手段を係止解除するだけで、複数の基本部材における筒状支柱体を重力により順次直線的に摺動させて短縮状態に変更させることが可能であるから、伸長状態で使用した後における短縮状態への変更を容易かつ迅速に行うことができる。
(3)しかも、短縮状態から伸張状態への摺動時に互いに当接することにより隣接する両筒状支柱体の抜け出しを阻止する抜止め手段を構成する外向き凸部及び内向き凸部が、各筒状支柱体の端部分の内外に配置される雌雄一対の金型を用いたプレス成形加工により両凸部それぞれに筒軸線方向に対して直交又は略直交する当接面を有する形態に形成されているので、外向き凸部と内向き凸部とが前記当接面で当接することにより、両筒状支柱体をそれらの軸線が一致した同一姿勢で抜け出し阻止することが可能である。これにより、抜け出し阻止状態において両筒状支柱体の係合孔を直線状に合致させて係止手段の棒状部材を両係合孔に容易確実かつ完全に係入させることができ、伸張状態での使用時に筒状支柱体が不測に収縮されるような不都合の発生がなく、使用時の安全性を確保することができる。
(4)加えて、プレス成形加工により、外向き及び内向きの各凸部の筒軸線方向に対して直交又は略直交する当接面の直下部分は肉厚に形成されているので、抜け止め時に最も大きい衝撃力を受ける当接面の強度を十分に大きくして、伸張時に繰り返し衝撃力を受けたとしても、当接面が変形したり、破損したりすることを抑制できる。したがって、長期間に亘る使用においても、所定の抜け止め機能を確実かつ適正に発揮させることができる。
【0011】
以上の(1)〜(3)の相乗により、本発明は、非使用時における著しいコンパクト化による保管スペースの節減、運搬の容易化を図り得るとともに、伸張時における抜け止め機能を確実かつ適正に発揮させ得て伸張状態での使用時の安全性を長期に亘って確保することができる伸縮式梯子を提供することに成功したのである。
【0012】
本発明に係る伸縮式梯子において、前記外向き凸部及び内向き凸部は、それぞれ筒状支柱体の全周に亘って環状形に形成されている(請求項2)、又は、筒状支柱体の周方向に沿って断片的に形成されている(請求項3)のいずれであってもよいが、特に、周方向に沿って断片的に形成する場合は、凸部の形成個所における筒状支柱体の強度低下を少なくすることができ、できるだけ肉厚が薄い筒状支柱体を用いて梯子全体の軽量化を図りつつも強度的にも耐久性に優れた梯子を提供することができる。
【0013】
また、本発明に係る伸縮式梯子において、前記外向き凸部及び内向き凸部は、それらの当接面が互いに当接したとき、前記両筒状支柱体の端部分それぞれに形成の係合孔が合致する位置に形成されていることが望ましい(請求項4)。
この場合は、抜け止め阻止されたとき、両筒状支柱体の係合孔が合致したかどうかの確認及び合致していないと確認されたとき、両係合孔が合致するように両筒状支柱体を微妙に位置調整するといった面倒な作業は不要で、抜け止めされたとき直ちに係止手段の棒状部材を内方へ向けて移動させることにより、該棒状部材を両係合孔に係入させることができる。したがって、伸張状態での係止固定作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0014】
さらに、本発明に係る伸縮式梯子において、前記係止手段は、棒状部材が前記係合孔に係入する方向に向けて弾性的に移動付勢されており、その移動付勢力に抗して棒状部材を前記係合孔から引抜き操作して係止解除する操作部が備えられている構成とすることが好ましい(請求項5)。
この場合は、伸張状態とされ、かつ、抜け止めされたとき、両筒状支柱体の係合孔が合致していれば、係止手段の棒状部材が移動付勢力により自動的に両係合孔に係入移動し、また、両筒状支柱体の係合孔が合致せず、僅かに変位している場合、両筒状支柱体を筒軸線方向に摺動調整させるだけで、両係合孔が一致した時点で係止手段の棒状部材が移動付勢力により自動的に両係合孔に係入移動して両筒状支柱体を容易に係止固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る伸縮式梯子の部分省略正面図である。
【図2】同第1の実施形態に係る伸縮式梯子における係止手段が係止解除状態にあることを示す要部の拡大縦断正面図である。
【図3】同第1の実施形態に係る伸縮式梯子における係止手段が係止状態にあることを示す要部の拡大縦断正面図である。
【図4】同第1の実施形態に係る伸縮式梯子における抜止め手段が抜止め状態にあることを示す要部の拡大側面図である。
【図5】同第1の実施形態に係る伸縮式梯子における抜止め手段が抜止め状態にあることを示す要部の拡大縦断側面図である。
【図6】同第1の実施形態に係る伸縮式梯子における抜止め手段を示し、(A)は外向き凸部、(B)は内向き凸部の構成を示す要部の拡大縦断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る伸縮式梯子における抜止め手段が抜止め状態にあることを示す要部の拡大縦断正面図である。
【図8】同第2の実施形態に係る伸縮式梯子における抜止め手段を示すもので、図7のX−X線での横断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る伸縮式梯子における抜止め手段の変形例を示す要部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
<第1の実施形態>
【0016】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1〜図6を参照しながら説明する。
本発明の第1の実施形態に係る伸縮式梯子1は、伸縮式の梯子本体2と、該梯子本体2の伸張状態を保持する係止手段3と、を具備している。
【0017】
伸縮式の梯子本体2は、複数の基本部材7a,7b,7c,……7m,7n(以下、特定しない場合は、基本部材7と記載する)と、抜止め手段10と、等を有する。
【0018】
基本部材7は、所定の間隔を隔てて平行に配置された左右一対の筒状支柱体11a,11b,11c,……11m,11n(以下、特定しない場合は、筒状支柱体11と記載する)と、該一対の筒状支柱体11の筒軸線方向の上端部間に亘って横架される複数の横桟体12a,12b,12c,……12m,12n(以下、特定しない場合は、横桟体12と記載する)とから構成されている。前記筒状支柱体11としては、アルミ引抜きパイプが使用される。
【0019】
前記複数の基本部材7を構成する筒状支柱体11は、筒部径の大きさが順次異なるように形成されており、最も大径の筒状支柱体11aを有し最下部に位置する基本部材7aの一対の筒状支柱体11aに、これよりも順次小径の筒状支柱体11b,11c,……11m,11nを有する基本部材7b,7c,……7m,7nの一対の筒状支柱体11b,11c,……11m,11nを筒軸線方向(上下方向)に摺動可能に嵌合されるように下方から上方にかけて順次接続することにより、図1の下半部に示すように、複数の基本部材7における横桟体12が順次上下に当接し重なり合った短縮状態と、図1の上半部に示すように、複数の基本部材7における横桟体12の各々が梯子本体2の1段分のステップ(蹴上げ)高さに相当する間隔で上下に離間し、かつ、上下に隣接する基本部材7の筒状支柱体11同士の嵌合状態が後述する抜止め手段10により保持された伸長状態とに変更可能に構成されている。
【0020】
なお、筒部径が最も小さい最上部の基本部材7nにおける筒状支柱体11nは、他の基本部材7における筒状支柱体11よりも長く形成されており、横桟体12nの他に上方に1段分のステップ高さを隔てて横桟体12n´が固定されている。また、筒部径が最も大きい最下部の基本部材7aにおける筒状支柱体11aも、他の基本部材7における筒状支柱体11よりも少し下方に長く形成され、横桟体12aの他に下方に1段分のステップ高さを隔てて横桟体12a´が固定されていると共に、その下端部にゴム栓状の滑り止め部材13が嵌着されている。
【0021】
前記最上部の基本部材7nを除く各基本部材7における横桟体12の長手方向の両端部には、例えば、図2及び図3に示すように、伸張状態において筒軸線方向で隣接する、つまり、上下に隣接する二つの基本部材7,7における筒状支柱体11,11の端部分11A,11Aそれぞれに径方向に貫通して形成された係合孔8,8に対して径方向の外方から棒状部材9を係入させることにより、隣接する二つの基本部材7,7における筒状支柱体11,11同士の伸張状態を固定保持可能な係止手段3が設けられている。
【0022】
前記係止手段3の棒状部材9は、胴部16、頸部17、端部18とからなり、胴部16が横桟体12内の支持壁19に形成された貫通孔20に水平方向摺動可能に支持されており、胴部16の先端16aが、横桟体12の側壁21に形成された案内孔22から前記係合孔8,8を貫通して筒状支柱体11,11の内部に突出するように構成されている。前記支持壁19と胴部16に設けたばね受け座23との間には、コイルバネ24が圧縮状態に介装されており、このコイルバネ24の弾性力により、前記棒状部材9は、胴部16の先端16aが案内孔22及び係合孔8,8を経て筒状支柱体11,11の内部に突出するように移動付勢されている。
【0023】
また、前記棒状部材9の頸部17には、前記コイルバネ24による弾性的な移動付勢力に抗して棒状部材9を前記係合孔8,8から引抜き操作して係止手段3による筒状支柱体11,11同士の係止固定を解除するレバー状操作部25が横桟体12aにピン26を介して回動操作可能に設けられている。
【0024】
次に、本発明の特徴部分である抜止め手段10の構成について詳細に説明する。
前記抜止め手段10は、基本部材7が使用状態に伸長されたとき、上下に隣接する基本部材7,7における筒状支柱体11,11同士が不測に抜け出すことを阻止するためのものである。この抜止め手段10は、図4及び図5に示すように、伸張状態において筒軸線方向の適当長さ範囲に亘って嵌合保持される上下に隣接の両筒状支柱体11,11のうち上部の基本部材7におけるアルミ引抜きパイプからなる筒状支柱体11の下端部分11Aの全周壁部から外方へ向けて環状形に突出される外向き凸部27と、下部の基本部材7におけるアルミ引抜きパイプからなる筒状支柱体11の上端部分11Aの全周壁部から内方へ向けて環状形に突出される内向き凸部28と、からなり、これら外向き凸部27と内向き凸部28とが当接することにより、下部の基本部材7における筒状支柱体11が上部の基本部材7における筒状支柱体11から下方へ抜け出すことを阻止する。
【0025】
前記抜止め手段10を構成する外向き凸部27及び内向き凸部28のうち、外向き凸部27は、図6の(A)に示すように、上部の筒状支柱体11の下端部分11Aの内部及び外部に配置された雄雌一対の金型30A,30Bを用いたプレス成形加工により、また、内向き凸部28は、図6の(B)に示すように、下部の筒状支柱体11の上端部分11Aの内部及び外部に配置された雌雄一対の金型31A,31Bを用いたプレス成形加工により形成される。
【0026】
前記雄雌一対の金型30A,30B及び雌雄一対の金型31A,31Bによりプレス成形加工される外向き凸部27及び内向き凸部28は、それぞれ各筒状支柱体11,11の内周及び外周側に断面が略半円弧状の凹み27a,28aを有する一方、各筒状支柱体11,11の外周及び内周側に筒軸線方向oに対して直交又は略直交し、かつ、平坦な環状当接面27b,28bを有し、かつ、環状当接面27b,28bの直下部分27c,28cが肉厚となるような形態に形成されている。
【0027】
また、前記抜止め手段10を構成する外向き凸部27及び内向き凸部28は、それらの当接面27b及び28bが互いに当接したとき、上下の筒状支柱体11,11の端部分11A,11Aそれぞれに形成の係合孔8,8が直線状に合致する位置に形成されている。
【0028】
上述のように構成された伸縮式の梯子本体2は、短縮状態では、図1の下半部に見られるように、各横桟体12が上下に当接した状態にある。このような短縮状態から伸張状態へ切替えるべく上下に隣接する基本部材7,7の筒状支柱体11,11を筒軸線方向に所定量相対摺動させると、図4及び図5に示すように、上部の筒状支柱体11の下端部分11Aの外向き凸部27における筒軸線方向に直交する当接面27bと下部の筒状支柱体11の上端部分11Aの内向き凸部28における筒軸線方向に直交する当接面28bとが互いに水平面上で面当接する。これによって、上下に隣接する基本部材7,7における筒状支柱体11,11を、それらの軸線が一致した同一姿勢で抜け出し阻止することが可能であり、図1の上半部に見られるように、横桟体12の各々を梯子本体2の1段分のステップ(蹴上げ)高さに相当する間隔で上下に離間した伸張状態に切替えることができる。
【0029】
上記のような伸張状態において、前記係止手段の棒状部材9を、案内孔22及び上下に隣接する二つの基本部材7,7における筒状支柱体11,11の端部分11A,11Aそれぞれに形成された係合孔8,8に径方向の外方から係入させることにより、上下に隣接する二つの基本部材7,7における筒状支柱体11,11同士を所定の伸張状態に確実に固定保持することが可能となり、伸縮式梯子1を高所と低所との間の昇り降り等に安全に使用することができる。
【0030】
そしてまた、前記抜止め手段10を構成する外向き凸部27及び内向き凸部28がプレス成形加工により、筒軸線方向oに対して直交又は略直交し、かつ、平坦な当接面27b及び28bの直下部分27c及び28cは肉厚に形成されているので、抜け止め時に最も大きい衝撃力を受ける当接面27b,28bの耐久強度を十分に大きくして、伸張時に繰り返し衝撃力を受けたとしても、当接面27b,28bが変形したり、破損したりすることを抑制できる。したがって、長期間に亘る使用においても、所定の抜け止め機能を確実かつ適正に発揮させることができる。
【0031】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、図7及び図8に基づいて説明する。第2の実施形態については、主として、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態と同様な構成については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。第2の実施形態において、特に説明しない点は、第1の実施形態での説明が適用される。
【0032】
図7は、第2の実施形態に係る伸縮式梯子1の伸張状態を示す要部の拡大縦断面図、図8は、図7のX−X線での横断面図である。
図7及び図8に示すように、第2の実施形態の伸縮式梯子1においては、抜止め手段10を構成する外向き凸部27及び内向き凸部28を、プレス成形加工によって、筒状支柱体11,11の端部分11A,11Aの周壁部に周方向に沿って断片的に複数個、形成したものである。
【0033】
詳述すると、外向き凸部27及び内向き凸部28それぞれを、筒状支柱体11の筒軸心を中心とする中心角度において45°の間隔を隔てて周方向に4個形成し、かつ、それら4個の外向き凸部27及び内向き凸部28はそれぞれ前記中心角度において45°の周方向長さを有する。
【0034】
上記構成の第2の実施形態の伸縮式梯子1は、第1の実施形態の伸縮式梯子1と同様に使用され、第1の実施形態の伸縮式梯子1と同様な効果を奏することができるのはもとより、プレス成形加工される凸部27,28の形成個所における筒状支柱体11,11部分の強度が低下することを抑制可能である。従って、できるだけ肉厚が薄い筒状支柱体11,11を用いて梯子全体の軽量化を図りつつも、使用時等において筒状支柱体11,11が凸部27,28の形成個所で折れ曲がり変形したり、座屈したりすることがなく、強度的に耐久性に優れた伸縮式梯子1を提供することができる。
【0035】
なお、上記第2の実施の形態では、外向き凸部27及び内向き凸部28の周方向の形成数を4個で説明したが、直径方向に対向させて2個形成しても、周方向に等しい間隔を隔てて3個あるいは5個以上形成してもよい。
【0036】
また、上記第1の実施の形態においては、外向き凸部27及び内向き凸部28それぞれの当接面27b及び28bが筒軸線方向oに対して直交又は略直交する面に沿って平坦な面に形成されているもので説明したが、図9に示すように、外向き凸部27側の当接面27bは筒軸線方向oに対して鋭角θ1に、また、内向き凸部28側の当接面28aは筒軸線方向oに対して鈍角θ2になるような平坦面に形成してもよい。
この場合は、外向き凸部27側の当接面27bの先端部(外端部)が内向き凸部28側の当接面28aに当接することにより、隣接する筒状支柱体11,11が多少変心した状態で伸張摺動しても、両筒状支柱体11,11を同芯状態で抜止めする自動調芯機能を発揮させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 伸縮式梯子
2 伸縮式の梯子本体
3 係止手段
7a,7b,7c,……7m,7n 基本部材
8 係合孔
9 棒状部材
10 抜止め手段
11a,11b,11c,……11m,11n 筒状支柱体
11A 端部分
12a,12b,12c,……12m,12n 横桟体
25 操作部
27 外向き凸部
28 内向き凸部
27b,28b 当接面
27c,28c 肉厚直下部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて互いに平行に配置された一対の筒状支柱体と該一対の筒状支柱体の筒軸線方向の一端部間に亘って横架される横桟体とからなり、前記筒状支柱体の筒部径の大きさが順次異なるように形成された複数の基本部材を、筒部径の大きい一対の筒状支柱体内にそれよりも筒部径の小さい一対の筒状支柱体が筒軸線方向に摺動可能に嵌合されるように順次接続することにより、複数の基本部材における横桟体が順次当接した短縮状態と、複数の基本部材の横桟体が筒軸線方向に適当間隔に離間し、かつ、筒軸線方向で隣接する両筒状支柱体の端部分は嵌合保持されている伸長状態と、に変更可能に構成されていると共に、前記複数の基本部材のうち、最も筒部径の小さい筒状支柱体を有する基本部材を除く各基本部材における横桟体に設けられ、伸張状態において筒軸線方向で隣接する両筒状支柱体の端部分それぞれに形成の係合孔に棒状部材を係入させることにより伸張状態を係止保持し、棒状部材を前記係合孔から引抜くことにより係止解除可能な係止手段と、前記伸張状態において嵌合保持される隣接する両筒状支柱体の端部分で筒部径の小さい筒状支柱体の端部分から外方へ向け突出する外向き凸部と筒部径の大きい筒状支柱体の端部分から内方へ向け突出する内向き凸部とが前記短縮状態から前記伸張状態への摺動時に互いに当接することにより隣接する両筒状支柱体の抜け出しを阻止する抜止め手段と、を備えている伸縮式梯子において、
前記抜止め手段を構成する外向き凸部及び内向き凸部が、各筒状支柱体の端部分の内外に配置される雌雄一対の金型を用いたプレス成形加工により、両凸部それぞれに筒軸線方向に対して直交又は略直交する当接面を有し、この当接面の直下部分が肉厚となるような形態に形成されていることを特徴とする伸縮式梯子。
【請求項2】
前記外向き凸部及び内向き凸部は、それぞれ筒状支柱体の全周に亘って環状形に形成されている請求項1に記載の伸縮式梯子。
【請求項3】
前記外向き凸部及び内向き凸部は、それぞれ筒状支柱体の周方向に沿って断片的に形成されている請求項1に記載の伸縮式梯子。
【請求項4】
前記外向き凸部及び内向き凸部は、それらの当接面が互いに当接したとき、前記両筒状支柱体の端部分それぞれに形成の係合孔が合致する位置に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の伸縮式梯子。
【請求項5】
前記係止手段は、棒状部材が前記係合孔に係入する方向に向けて弾性的に移動付勢されており、その移動付勢力に抗して棒状部材を前記係合孔から引抜き操作して係止解除する操作部が備えられている請求項1ないし4のいずれかに記載の伸縮式梯子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−72638(P2012−72638A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234033(P2010−234033)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(509292412)特殊梯子製作所有限会社 (3)
【Fターム(参考)】