位相制御装置
【課題】より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能な位相制御装置を提供する。
【解決手段】位相制御装置は、交流電源1からの供給電力の導通角を制御して負荷2へ流れる電力を調整するものであって、供給電力をオンオフするスイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q1のオンオフを制御する制御回路4とを備える。制御回路4が供給電力の略ゼロ点でスイッチ素子Q1をオンし、供給電力の位相が略90度でスイッチ素子Q1をオフする逆位相制御を行う際、スイッチ素子Q1をオフする過渡時に、スイッチ素子Q1の損失による温度上昇が調光時と全灯時とで略同じになる所定時間の能動動作領域を設ける。
【解決手段】位相制御装置は、交流電源1からの供給電力の導通角を制御して負荷2へ流れる電力を調整するものであって、供給電力をオンオフするスイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q1のオンオフを制御する制御回路4とを備える。制御回路4が供給電力の略ゼロ点でスイッチ素子Q1をオンし、供給電力の位相が略90度でスイッチ素子Q1をオフする逆位相制御を行う際、スイッチ素子Q1をオフする過渡時に、スイッチ素子Q1の損失による温度上昇が調光時と全灯時とで略同じになる所定時間の能動動作領域を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明負荷等の交流負荷の電力制御を行うための位相制御装置に関し、詳しくは、位相制御装置におけるスイッチング雑音等の雑音低減対策に関する。
【背景技術】
【0002】
白熱灯等の照明負荷の調光など、交流負荷に対して供給する電力を調整するために用いられる装置として、負荷電流の導通角(導通期間の位相角)を制御する位相制御または逆位相制御を行うことにより供給電力を調整する位相制御装置が種々提案されている。
【0003】
従来の位相制御装置では、交流負荷への供給電力をオンオフするスイッチ手段として、トライアック等の半導体素子を用い、このスイッチ手段で負荷電流の導通角をスイッチング制御することによって位相制御を実現している。このような位相制御の場合、調光時において、スイッチ手段がオンしたときに急峻な電流が流れるため、スイッチング雑音が大きいという問題点があった。この点を改善したものとして、スイッチ手段にFET等の半導体スイッチ素子を用いて、電圧ゼロボルト(ゼロクロス)でスイッチ手段をオンし、電流がゼロから流れるようにした逆位相制御を行い、スイッチング雑音を軽減できるようにしたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のトライアックやサイリスタを用いた位相制御調光方式を、FET等を用いた逆位相制御に置換できるように、調光用の制御信号に信号変換機能を持たせた位相制御装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この構成によれば、既存の制御信号発生装置を変更することなく、逆位相制御によって従来の位相制御と同様の調光を実現できる。
【特許文献1】特開昭60−101620号公報
【特許文献2】特開2000−286075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、逆位相制御によって、電圧ゼロボルトでスイッチ手段をオンして電流がゼロから流れるようにすることで、雑音を軽減することが可能であるが、スイッチ手段をオフして電流が流れ終わるときのスイッチング雑音については、軽減できていない。電気用品安全法においてCISPR15の雑音規格が答申されているが、この厳しい雑音基準に対応するためには、上記スイッチング雑音も軽減しないと満足できない。従来例において、逆位相制御時のスイッチング雑音を軽減するためには、フィルタのコンデンサやコイルの追加、大容量化、大型化などが必要となる。このため、フィルタの複雑化によって回路が大型化してしまい、回路温度上昇やコスト的にも不利になる。
【0006】
また、スイッチ手段をオフする際に、スイッチング雑音低減のためにオフする速度を遅くさせすぎると、スイッチ手段の素子の損失が増大し、調光時のスイッチ手段の温度上昇が全灯時よりも高くなる。このため、調光時に合わせた装置の放熱設計が必要となり、全灯時のみの対応などを考慮すると、余分な放熱設計となる場合があり、非効率な設計となってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能な位相制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の位相制御装置は、交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオフする逆位相制御を行うものであり、前記制御部が前記スイッチ素子をオフする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有するものである。
【0009】
本発明の第2の位相制御装置は、交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオフする位相制御を行うものであり、前記制御部が前記スイッチ素子をオンする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に接続され、前記交流電源からの供給電力を整流する整流器を備え、前記スイッチ素子は、前記整流器の出力側に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記整流器で整流された脈流電力をオンオフする一つのスイッチ素子を有してなるものとする。
【0011】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記スイッチ素子は、前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に互いに逆極性で直列に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記交流電源からの供給電力をオンオフする第1及び第2のスイッチ素子を有してなるものとする。
【0012】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記能動動作領域は、交流電源の電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4であり、電力制御時の前記スイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失とを加算した平均損失と、非制御時の前記スイッチ素子のオン時の損失とが略同じになるように設定されるものとする。
【0013】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記逆位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオン状態からオフ状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量による電荷が、前記制御端子と前記接地端子間に設けられた抵抗により自然放電されることによって生成されるものとする。
【0014】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオフ状態からオン状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量と、前記制御端子と前記制御部間に設けられた抵抗との時定数により充電されることによって生成されるものとする。
【0015】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記スイッチ素子に電界効果トランジスタを用いたものとする。
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記スイッチ素子に絶縁ゲート型トランジスタを用いたものとする。
また、本発明は、上記いずれかに記載の位相制御装置を有し、負荷に白熱ランプ又はハロゲンランプを用いた照明装置を提供する。
【0016】
上記構成により、位相制御装置において逆位相制御または位相制御を行う際に、供給電力の位相が略90度のタイミングでスイッチ素子をオフまたはオンさせるときに、例えば交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4となる能動動作領域を設けることで、効率的な放熱設計を実施するために全灯時と調光時の損失が略同等となるようにし、かつ所定の雑音規格を十分満足させることが可能となる。したがって、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能な位相制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を説明するが、それはあくまで本発明に基づいて採択された例示的な実施形態であり、本発明をこの実施形態に特有な事項に基づいて限定解釈してはならず、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の請求項に示した事項さらにはその事項と実質的に等価である事項に基づいて定められるべきである。
【0019】
以下の実施形態では、交流負荷として白熱灯などの照明機器を負荷として用い、交流電源からの供給電力を逆位相制御または位相制御によって制御して調光を行う照明装置の調光装置に適用した構成例を示す。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図である。本実施形態の位相制御装置は、逆位相制御または位相制御による電力スイッチングが可能となっている。位相制御装置は、商用周波数の交流電源1が接続される電源接続部CN1と、交流電源1に対して直列に白熱灯等の負荷2が接続される負荷接続部CN2と、交流電源1からの供給電力を整流する整流器としてのダイオードブリッジDB1と、整流された脈流電力(脈流電圧、脈流電流)をオンオフするスイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q1のオンオフを制御する制御部の機能を有する制御回路4とを備えて構成される。本実施形態のように照明装置の調光装置に適用する場合、負荷2には白熱ランプ、ハロゲンランプなどが用いられる。
【0021】
スイッチ素子Q1は、例えば電界効果トランジスタ(MOS−FET)等の半導体スイッチング素子により構成される。スイッチ素子Q1としては、電界効果トランジスタの他に、絶縁ゲート型トランジスタ(IGBT)、バイポーラトランジスタなどを用いることができる。スイッチ素子Q1がMOS−FETの場合、図1に示すようにダイオードブリッジDB1の出力側にソース、ドレインが接続されてソースがグランドGNDに接地され、ゲートが抵抗R3を介して制御回路4に接続される。また、スイッチ素子Q1のゲート−ソース間には抵抗R2が設けられる。このスイッチ素子Q1は、制御回路4からの制御信号がゲートに入力されることにより、制御信号に応じてソース−ドレイン間をオンオフするものである。制御回路4は、制御電源3が接続され、マイコン制御により制御信号として後述する所定のタイミングで所定の制御電圧を出力してスイッチ素子Q1に供給する。
【0022】
また、交流電源1の電源ラインには、フューズFUSE、サージ吸収素子(バリスタ)ZNR、及び雑音低減用のフィルタF1が設けられる。フィルタF1は、電源ラインに直列に挿入されるコイル等のインダクタ素子と、並列に挿入されるコンデンサ等の容量素子とを有して構成される。また、フィルタF1の出力側には並列に抵抗R1が設けられる。
【0023】
本実施形態では、制御回路4によってスイッチ素子Q1をオンオフ制御することにより、交流電源1からの供給電力の導通角(導通期間の位相角)を制御し、白熱灯等の負荷2に流れる負荷電流を調整することで調光を行う。交流電源1からの電流はダイオードブリッジDB1で全波整流が行われ、脈流電流となってスイッチ素子Q1のソース−ドレイン間に供給される。そして、スイッチ素子Q1が制御回路4によってオンオフされ、逆位相制御または位相制御が行われる。これにより、交流電源1とダイオードブリッジDB1間に接続された負荷2は、逆位相制御または位相制御によって調光が行われる。
【0024】
まず、逆位相制御を行う第1の動作例を説明する。図2は第1の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図である。図2において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オフ過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の逆位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度逆位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0025】
逆位相制御を行う場合、図2(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度または180度)のタイミング5、7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流及び負荷電流がゼロから流れるようにする。また、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度または270度)のタイミング6、8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。上記動作を交流電源周波数の半周期で繰り返す。これにより、逆位相制御の電力スイッチング(逆位相調光制御)が行われる。
【0026】
このとき、図2(B)に示すように、スイッチ素子オフのタイミング13において、スイッチ素子Q1をオフさせる過渡時にスイッチ素子Q1の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域12を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に減少する所定の時間の能動動作領域12が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に増加する。
【0027】
ここで、能動動作領域12は、逆位相制御の場合、スイッチ素子Q1がオン状態からオフ状態になるとき、スイッチ素子Q1のゲート(制御端子)とソース(接地端子)間の入力容量による電荷がゲートとソース間に挿入した抵抗R2により自然放電されることによって生成される。
【0028】
次に、逆位相制御における所定時間の能動動作領域12及びスイッチ素子Q1の損失について詳しく説明する。図3はスイッチ素子Q1の全灯時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図、図4はスイッチ素子Q1の逆位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図、図5は図4のスイッチ素子Q1がオフする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図である。
【0029】
ここでは、スイッチ素子Q1がMOS−FETの場合を示す。まず、全灯時の場合は、図3に示すように、MOS−FETは常にオン状態にあり、ドレイン電流が略全期間にわたって流れる。このとき、MOS−FETの損失は、オン抵抗とMOS−FETに流れる電流で求められる。
【0030】
平均損失をP(全灯)、オン抵抗をRon、電流の実効値をID(rms)とすると、全灯時の平均損失P(全灯)は以下の(1)式で表される。
P(全灯)=Ron×ID(rms)×ID(rms) …(1)
【0031】
一方、逆位相制御による調光時の場合は、図4に示すように瞬時損失を近似できる。この場合、特に所定の時間の能動動作領域を設けたことによって、90度逆位相制御では損失が多くなる。調光時において、MOS−FETは、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期の2分の1の期間、すなわちT/2の期間はオン状態にあり、あとの半周期の2分の1(T/2)はオフ状態にある。よって、調光時の瞬時損失は、T/2期間のオン状態のときのMOS−FETの瞬時損失となり、この瞬時損失はオン抵抗とMOS−FETに流れる電流で求められる。
【0032】
オン状態の瞬時損失をPt、オン抵抗をRon、オンしている区間tの電流として、全灯時の半周期の電流の実効値をID(rms)とすると、90度逆位相制御による調光時の瞬時損失Ptは以下の(2)式で表される。
Pt=Ron×ID(rms)×ID(rms) …(2)
【0033】
次に、MOS−FETがターンオフする能動動作領域区間toffの瞬時損失を求める。能動動作領域区間toffでは、図5に示すように、瞬時損失をPtoff、MOS−FETのドレイン電流をID、ドレイン−ソース間電圧をVDSとすると、能動動作領域区間toffの瞬時損失Ptoffは以下の(3)式で表される。
Ptoff=1/6×ID×VDS …(3)
【0034】
なお、MOS−FETがターンオンする能動動作領域区間tonの瞬時損失は、電圧ゼロ点から電流が流れ出すことによって、ほとんど無いとみて無視する。
【0035】
次に、調光時の平均瞬時損失を近似すると、平均瞬時損失PDは以下の(4)式で表される。
PD=(Pt・t+Ptoff・toff)/(t+toff) …(4)
【0036】
そして、調光時の平均損失を近似すると、平均損失P(調光)は以下の(5)式で表される。
P(調光)=PD・(t+toff)/T …(5)
【0037】
スイッチ素子Q1として用いるMOS−FETの温度上昇は、損失とともに増加する。このため、商用電源の電源位相が略90度のタイミングで逆位相制御により調光を行う場合の能動動作領域として、調光時の温度上昇が全灯時よりも高くならない(または全灯時と略同じになる)所定の時間の能動動作領域を設けるということは、調光時の平均損失P(調光)が全灯時の平均損失P(全灯)と略同じになるように設定することである。つまり、P(調光)≒P(全灯)、すなわちPD・(t+toff)/T≒Ron×ID(rms)×ID(rms)となるように能動動作領域の時間を設定する。
【0038】
なお、調光時の逆位相制御を90度位相に限定すれば、Pt≒Ptoffの関係を満たすように能動動作領域の時間を設定してもよい。
【0039】
しかしながら、CISPR15規格対応の雑音特性を満足するためには、できるだけ長い時間の能動動作領域を設けることが望ましい。つまり、P(調光)≒P(全灯)、またはPt≒Ptoffのいずれかを満たすものから、できるだけ長い能動動作領域区間toffを設定することが望ましい。
【0040】
上記のように能動動作領域を設定した場合、スイッチ素子Q1の温度上昇は、全灯時と調光時とでほぼ同じとなる。なお、CISPR15規格対応の雑音特性を満足するために、できるだけ長い時間の能動動作領域を設けることが望ましいが、あまり長すぎると、スイッチ素子Q1の温度上昇が高くなってしまう。この場合、負荷電力の大きい全灯時よりも、負荷電力の小さい調光時の方が温度上昇が高くなり、負荷電力の小さい調光時に合わせた放熱設計が必要となり、非効率である。例えば、全灯時のみの対応などを考慮すると、余分な放熱設計となる場合がある。少なくとも、全灯時と比べて調光時の温度上昇を同等に抑えることが効率的な設計といえる。
【0041】
本実施形態の構成では、逆位相制御によりスイッチ素子Q1オン時のスイッチング雑音を抑えることができ、また、スイッチ素子Q1オフ時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。このため、入力部の雑音対策用のフィルタF1の回路部品は、容量素子はフィルムコンデンサ0.1μF〜0.47μF程度でよく、インダクタ素子に関しても47μH程度の小容量のものでよい。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0042】
図6は従来例の位相制御装置の構成及び動作を示す図である。従来の位相制御装置では、図6(A)に示すようにスイッチ素子としてトライアックTRIAC1を設け、図6(B)に示すように位相90度でトライアックTRIAC1をオンさせ、ゼロクロスで保持電流がなくなりオフする、いわゆる後縁制御と呼ばれる方式が一般的である。
【0043】
これに対し、本実施形態では、スイッチ素子としてMOS−FETを設けてオンオフ制御するため、保持電流の考え方はなくなり、MOS−FETのゲート信号により制御が可能である。よって、ゼロクロスでMOS−FETをオンさせ、位相90度でオフさせる逆位相制御が可能である。例えば、位相制御対応蛍光灯インバータ(調光型パルックボール(商標))などを負荷として用いる場合に、従来の位相制御によって位相90度でオンさせると、突入電流が毎周期流れるために回路のストレスが大きくなってしまう。一方、逆位相制御の場合は、ゼロクロス点から電流が流れるため、突入電流を無くすことができ、回路へかかるストレスを緩和できるという利点がある。
【0044】
次に、位相制御を行う第2の動作例を説明する。図7は第1の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図である。図7において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オン過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0045】
位相制御を行う場合、図7(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度または270度)のタイミング6、8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流及び負荷電流を流し始めるようにする。また、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度または180度)のタイミング5、7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。これにより、位相制御の電力スイッチング(位相調光制御)が行われる。
【0046】
このとき、図7(B)に示すように、スイッチ素子オンのタイミング15において、スイッチ素子Q1をオンさせる過渡時にスイッチ素子Q1の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域14を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に増加する所定の時間の能動動作領域14が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に減少する。
【0047】
ここで、能動動作領域14は、位相制御の場合、スイッチ素子Q1がオフ状態からオン状態になるとき、スイッチ素子Q1のゲート(制御端子)とソース(接地端子)間の入力容量と電流制限抵抗R3との時定数により充電されることによって生成される。
【0048】
次に、位相制御における所定時間の能動動作領域14及びスイッチ素子Q1の損失について詳しく説明する。図8はスイッチ素子Q1の位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図、図9は図8のスイッチ素子Q1がオンする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図である。
【0049】
ここでは、逆位相制御の場合と同様に、スイッチ素子Q1がMOS−FETの場合を示す。位相制御による調光時の場合は、図8に示すように瞬時損失を近似できる。この場合、特に所定の時間の能動動作領域を設けたことによって、90度位相制御では損失が多くなる。調光時において、MOS−FETは、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期の2分の1の期間、すなわちT/2の期間はオフ状態にあり、あとの半周期の2分の1(T/2)はオン状態にある。よって、調光時の瞬時損失は、T/2期間のオン状態のときのMOS−FETの瞬時損失となり、この瞬時損失はオン抵抗とMOS−FETに流れる電流で求められる。
【0050】
オン状態の瞬時損失をPt、オン抵抗をRon、オンしている区間tの電流として、全灯時の半周期の電流の実効値をID(rms)とすると、90度位相制御による調光時の瞬時損失Ptは以下の(6)式で表される。
Pt=Ron×ID(rms)×ID(rms) …(6)
【0051】
次に、MOS−FETがターンオンする能動動作領域区間tonの瞬時損失を求める。能動動作領域区間tonでは、図9に示すように、瞬時損失をPton、MOS−FETのドレイン電流をID、ドレイン−ソース間電圧をVDSとすると、能動動作領域区間tonの瞬時損失Ptonは以下の(7)式で表される。
Pton=1/6×ID×VDS …(7)
【0052】
なお、MOS−FETがターンオフする能動動作領域区間toffの瞬時損失は、電圧ゼロ点で電流が流れ終わることによって、ほとんど無いとみて無視する。
【0053】
次に、調光時の平均瞬時損失を近似すると、平均瞬時損失PDは以下の(8)式で表される。
PD=(Pt・t+Pton・ton)/(t+ton) …(8)
【0054】
そして、調光時の平均損失を近似すると、平均損失P(調光)は以下の(9)式で表される。
P(調光)=PD・(t+ton)/T …(9)
【0055】
スイッチ素子Q1として用いるMOS−FETの温度上昇は、損失とともに増加する。このため、商用電源の電源位相が略90度のタイミングで位相制御により調光を行う場合の能動動作領域として、調光時の温度上昇が全灯時よりも高くならない(全灯時と略同じになる)所定の時間の能動動作領域を設けるということは、調光時の平均損失P(調光)が全灯時の平均損失P(全灯)と略同じになるように設定することである。つまり、P(調光)≒P(全灯)、すなわちPD・(t+ton)/T≒Ron×ID(rms)×ID(rms)となるように能動動作領域の時間を設定する。
【0056】
なお、調光時の位相制御を90度位相に限定すれば、Pt≒Ptonの関係を満たすように能動動作領域の時間を設定してもよい。
【0057】
しかしながら、CISPR15規格対応の雑音特性を満足するためには、できるだけ長い時間の能動動作領域を設けることが望ましい。つまり、P(調光)≒P(全灯)、またはPt≒Ptonのいずれかを満たすものから、できるだけ長い能動動作領域区間tonを設定することが望ましい。上記のように能動動作領域を設定した場合、スイッチ素子Q1の温度上昇は、全灯時と調光時とでほぼ同じとなる。
【0058】
このように位相制御による調光においても、逆位相制御の場合と同様に、スイッチ素子Q1オン時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0059】
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図である。本実施形態の位相制御装置は、第1の実施形態と同様、逆位相制御または位相制御による電力スイッチングが可能となっている。位相制御装置は、商用周波数の交流電源1が接続される電源接続部CN1と、交流電源1に対して直列に白熱灯等の負荷2が接続される負荷接続部CN2と、交流電源1と負荷2との間に互いに逆向きで直列に接続され、交流電源1からの供給電力をオンオフする第1のスイッチ素子Q1及び第2のスイッチ素子Q2と、これら一対のスイッチ素子Q1、Q2のオンオフを制御する制御部の機能を有する制御回路4とを備えて構成される。なお、交流電源1の電源ラインに設けられるフューズFUSE、サージ吸収素子(バリスタ)ZNR、雑音低減用のフィルタF1、抵抗R1は第1の実施形態と同様である。本実施形態のように照明装置の調光装置に適用する場合、負荷2には白熱ランプ、ハロゲンランプなどが用いられる。
【0060】
スイッチ素子Q1、Q2は、例えば電界効果トランジスタ(MOS−FET)等の半導体スイッチング素子により構成される。スイッチ素子Q1、Q2としては、電界効果トランジスタの他に、絶縁ゲート型トランジスタ(IGBT)、バイポーラトランジスタなどを用いることができる。スイッチ素子Q1、Q2がMOS−FETの場合、図10に示すようにフィルタF1の出力側にソース、ドレインが互いに逆極性で直列に接続されて両者のソースがグランドGNDに接地され、ゲートがそれぞれ抵抗R3、R5を介して制御回路4に接続される。また、スイッチ素子Q1、Q2のゲート−ソース間にはそれぞれ抵抗R2、R4が設けられる。このスイッチ素子Q1、Q2は、制御回路4からの制御信号がゲートに入力されることにより、制御信号に応じてソース−ドレイン間をオンオフするものである。制御回路4は、制御電源3が接続され、マイコン制御により制御信号として後述する所定のタイミングで所定の制御電圧を出力してスイッチ素子Q1、Q2に供給する。
【0061】
本実施形態では、制御回路4によってスイッチ素子Q1、Q2をオンオフ制御することにより、交流電源1からの供給電力の導通角(導通期間の位相角)を制御し、白熱灯等の負荷2に流れる負荷電流を調整することで調光を行う。交流電源1からの電流は直列接続されたスイッチ素子Q1、Q2のソース−ドレイン間に供給される。そして、スイッチ素子Q1、Q2が制御回路4によってオンオフされ、逆位相制御または位相制御が行われる。これにより、交流電源1と直列に接続された負荷2は、逆位相制御または位相制御によって調光が行われる。
【0062】
まず、逆位相制御を行う第1の動作例を説明する。図11は第2の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図である。図11において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オフ過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の逆位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度逆位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0063】
逆位相制御を行う場合、図11(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度)のタイミング7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流がゼロから流れるようにする。このとき、スイッチ素子Q2の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度)のタイミング8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。そして、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相180度)のタイミング5(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオンし、ドレイン電流がゼロから流れるようにする。このとき、スイッチ素子Q1の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相270度)のタイミング6(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオフする。上記動作を交流電源周波数の周期で繰り返す。これにより、逆位相制御の電力スイッチング(逆位相調光制御)が行われる。
【0064】
このとき、図11(B)に示すように、スイッチ素子オフのタイミング13において、スイッチ素子Q1、Q2をオフさせる過渡時にスイッチ素子Q1、Q2の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域12を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に減少する所定の時間の能動動作領域12が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に増加する。
【0065】
ここで、能動動作領域12は、逆位相制御の場合、スイッチ素子Q1、Q2がオン状態からオフ状態になるとき、スイッチ素子Q1、Q2のゲートとソース間の入力容量による電荷がゲートとソース間に挿入した抵抗R2、R4により自然放電されることによって生成される。
【0066】
このような第2の実施形態の構成においても、第1の実施形態と同様に、逆位相制御によりスイッチ素子Q1、Q2オン時のスイッチング雑音を抑えることができ、また、スイッチ素子Q1、Q2オフ時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0067】
次に、位相制御を行う第2の動作例を説明する。図12は第2の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図である。図12において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オン過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0068】
位相制御を行う場合、図12(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度)のタイミング8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流を流し始めるようにする。このとき、スイッチ素子Q2の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度)のタイミング7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。そして、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相270度)のタイミング6(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオンし、ドレイン電流を流し始めるようにする。このとき、スイッチ素子Q1の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相180度)のタイミング5(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオフする。上記動作を交流電源周波数の周期で繰り返す。これにより、位相制御の電力スイッチング(逆位相調光制御)が行われる。
【0069】
このとき、図12(B)に示すように、スイッチ素子オンのタイミング15において、スイッチ素子Q1、Q2をオンさせる過渡時にスイッチ素子Q1、Q2の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域14を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に増加する所定の時間の能動動作領域14が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に減少する。
【0070】
ここで、能動動作領域14は、位相制御の場合、スイッチ素子Q1、Q2がオフ状態からオン状態になるとき、スイッチ素子Q1、Q2のゲートとソース間の入力容量と電流制限抵抗R3、R5との時定数により充電されることによって生成される。
【0071】
このように位相制御による調光においても、逆位相制御の場合と同様に、スイッチ素子Q1、Q2オン時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0072】
(実施例)
以下に、本実施形態における能動動作領域及び損失に関する具体的な実施例を示す。本実施例では、図1に示す第1の実施形態の構成において、スイッチ素子Q1にMOS−FETを用い、白熱灯66W、110Vを負荷として接続した場合の一例を示す。交流電源としては、商用周波数50Hz、実効電圧100Vの商用電源を用いるものとする。
【0073】
図13はスイッチ素子のオン抵抗Ronが0.5Ωの場合、図14はスイッチ素子のオン抵抗Ronが0.3Ωの場合のそれぞれの能動動作領域の時間と平均損失との関係を示す図である。図13、図14において、×は全灯時の平均損失を、*は調光時の平均損失をそれぞれ示している。
【0074】
調光時においては、能動動作領域の時間を長くするに従って平均損失が大きくなる。図13に示す例のように、オン抵抗Ron:0.5Ωの場合、能動動作領域時間が約34μsecのときに、全灯時の平均損失と、調光時のスイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失を加算した平均損失とが同等となる。図14に示す例のように、オン抵抗Ron:0.3Ωの場合は、全灯時も調光時もRon:0.5Ωの場合より損失は低くなる。しかし、仮に能動動作領域時間を30μsec程度とした場合、調光時の方が全灯時より損失が大きくなる。この場合、位相制御装置の電子ブロックの放熱設計において調光時に合わせた設計をする必要がある。この電子ブロックを、例えば、調光機能の無い全灯のみの照明機器に流用することを考えた場合、本来、損失が大きい調光時に合わせた放熱手段は不要であるにも関わらず、余分な放熱構造をとった電子ブロックを使用することとなり、コスト的に非効率となってしまう。
【0075】
Ron:0.5Ωの場合は、仮に能動動作領域時間を30μsec程度とした場合、全灯時の平均損失と、調光時のスイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失とを加算した平均損失とが、ほぼ同等、あるいは調光時が全灯時より若干小さいレベルである。この場合、全灯時も調光時も同等の放熱構造を必要とするため、効率的な放熱設計が可能である。したがって、効率的な放熱設計を適用しつつ、損失の要因となるオン抵抗を0.3Ωから0.5Ωに上げることができ、スイッチ素子のコストを低く抑えることもできる。スイッチ素子のMOS−FETは、一般的に損失の要因となるオン抵抗が低いものほどコストは高くなる。
【0076】
図15は能動動作領域時間に対するスイッチ素子の損失と雑音レベルの関係を示す図である。この図15では、スイッチ素子のオン抵抗Ronを0.5Ωとした場合を示している。図15において、雑音レベルは、CIPR15の雑音規格の規格値に対して、ある周波数帯域で最も高いレベルを示している。よって、規格値に対してオーバーする場合はある周波数帯域で最もオーバーするレベルが示され、規格値を満足している場合はある周波数帯域で最も高いポイントでの余裕度が示される。
【0077】
雑音レベルの余裕度を約10dB程度とることを前提に考えた場合、全灯時と比較して調光時の損失が略同等となるようにするためには、能動動作領域時間を図15中の四角で囲んだ範囲tdに入るように設計目標値を設定すればよい。すなわち、能動動作領域時間は、約20μsec〜40μsecに設定するのが適当である。交流電源の周波数が商用周波数50Hzの場合、その半周期は10msecであるので、能動動作領域時間は交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4とするのが望ましい。
【0078】
つまり、図2(B)における逆位相制御による調光時の能動動作領域12、及び図7(B)における位相制御による調光時の能動動作領域14は、交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4の時間に設定すれば、CIPR15の雑音規格を十分余裕をもって満足させることができる。
【0079】
したがって、本実施例のように、位相制御装置において逆位相制御または位相制御を行う際に、供給電力の位相が略90度のタイミングでスイッチ素子をオフまたはオンさせるときに、交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4となる能動動作領域を設けることで、効率的な放熱設計を実施するために全灯時と調光時の損失が略同等となるようにし、かつCIPR15の雑音規格を十分満足させることができる。また、雑音低減用のフィルタを大型化しなくても済むため、位相制御装置を簡単な回路構成で実現できる。また、効率的な放熱設計を適用することで、よりシンプルな放熱構造をとることができる。これらにより、十分な雑音性能を確保しつつ装置の小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0080】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0081】
上述した実施形態では、位相制御装置を交流負荷として白熱灯などの照明機器を負荷として用いる照明装置の調光装置に適用した例を示したが、これに限るものではなく、交流負荷への供給電力をスイッチ素子でスイッチングして電力制御を行う構成であれば、他の種々の装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能となる効果を有し、照明負荷等の交流負荷の電力制御を行うための調光装置等に適用可能な位相制御装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図
【図2】第1の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図
【図3】本実施形態におけるスイッチ素子の全灯時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図
【図4】本実施形態におけるスイッチ素子の逆位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図
【図5】図4のスイッチ素子がオフする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図
【図6】従来例の位相制御装置の構成及び動作を示す図
【図7】第1の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図
【図8】本実施形態におけるスイッチ素子の位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図
【図9】図8のスイッチ素子がオンする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図
【図11】第2の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図
【図12】第2の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図
【図13】スイッチ素子のオン抵抗Ronが0.5Ωの場合の能動動作領域の時間と平均損失との関係を示す図
【図14】スイッチ素子のオン抵抗Ronが0.3Ωの場合の能動動作領域の時間と平均損失との関係を示す図
【図15】能動動作領域時間に対するスイッチ素子の損失と雑音レベルの関係を示す図
【符号の説明】
【0084】
1 交流電源
2 負荷
3 制御電源
4 制御回路
CN1 電源接続部
CN2 負荷接続部
DB1 ダイオードブリッジ
F1 フィルタ
Q1、Q2 スイッチ素子
R1、R2、R3、R4、R5 抵抗
10 スイッチ素子電流
11 スイッチ素子電圧
12、14 能動動作領域
toff、ton 能動動作領域区間
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明負荷等の交流負荷の電力制御を行うための位相制御装置に関し、詳しくは、位相制御装置におけるスイッチング雑音等の雑音低減対策に関する。
【背景技術】
【0002】
白熱灯等の照明負荷の調光など、交流負荷に対して供給する電力を調整するために用いられる装置として、負荷電流の導通角(導通期間の位相角)を制御する位相制御または逆位相制御を行うことにより供給電力を調整する位相制御装置が種々提案されている。
【0003】
従来の位相制御装置では、交流負荷への供給電力をオンオフするスイッチ手段として、トライアック等の半導体素子を用い、このスイッチ手段で負荷電流の導通角をスイッチング制御することによって位相制御を実現している。このような位相制御の場合、調光時において、スイッチ手段がオンしたときに急峻な電流が流れるため、スイッチング雑音が大きいという問題点があった。この点を改善したものとして、スイッチ手段にFET等の半導体スイッチ素子を用いて、電圧ゼロボルト(ゼロクロス)でスイッチ手段をオンし、電流がゼロから流れるようにした逆位相制御を行い、スイッチング雑音を軽減できるようにしたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のトライアックやサイリスタを用いた位相制御調光方式を、FET等を用いた逆位相制御に置換できるように、調光用の制御信号に信号変換機能を持たせた位相制御装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この構成によれば、既存の制御信号発生装置を変更することなく、逆位相制御によって従来の位相制御と同様の調光を実現できる。
【特許文献1】特開昭60−101620号公報
【特許文献2】特開2000−286075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、逆位相制御によって、電圧ゼロボルトでスイッチ手段をオンして電流がゼロから流れるようにすることで、雑音を軽減することが可能であるが、スイッチ手段をオフして電流が流れ終わるときのスイッチング雑音については、軽減できていない。電気用品安全法においてCISPR15の雑音規格が答申されているが、この厳しい雑音基準に対応するためには、上記スイッチング雑音も軽減しないと満足できない。従来例において、逆位相制御時のスイッチング雑音を軽減するためには、フィルタのコンデンサやコイルの追加、大容量化、大型化などが必要となる。このため、フィルタの複雑化によって回路が大型化してしまい、回路温度上昇やコスト的にも不利になる。
【0006】
また、スイッチ手段をオフする際に、スイッチング雑音低減のためにオフする速度を遅くさせすぎると、スイッチ手段の素子の損失が増大し、調光時のスイッチ手段の温度上昇が全灯時よりも高くなる。このため、調光時に合わせた装置の放熱設計が必要となり、全灯時のみの対応などを考慮すると、余分な放熱設計となる場合があり、非効率な設計となってしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能な位相制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の位相制御装置は、交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオフする逆位相制御を行うものであり、前記制御部が前記スイッチ素子をオフする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有するものである。
【0009】
本発明の第2の位相制御装置は、交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオフする位相制御を行うものであり、前記制御部が前記スイッチ素子をオンする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に接続され、前記交流電源からの供給電力を整流する整流器を備え、前記スイッチ素子は、前記整流器の出力側に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記整流器で整流された脈流電力をオンオフする一つのスイッチ素子を有してなるものとする。
【0011】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記スイッチ素子は、前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に互いに逆極性で直列に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記交流電源からの供給電力をオンオフする第1及び第2のスイッチ素子を有してなるものとする。
【0012】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記能動動作領域は、交流電源の電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4であり、電力制御時の前記スイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失とを加算した平均損失と、非制御時の前記スイッチ素子のオン時の損失とが略同じになるように設定されるものとする。
【0013】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記逆位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオン状態からオフ状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量による電荷が、前記制御端子と前記接地端子間に設けられた抵抗により自然放電されることによって生成されるものとする。
【0014】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオフ状態からオン状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量と、前記制御端子と前記制御部間に設けられた抵抗との時定数により充電されることによって生成されるものとする。
【0015】
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記スイッチ素子に電界効果トランジスタを用いたものとする。
また、本発明は、上記の位相制御装置であって、前記スイッチ素子に絶縁ゲート型トランジスタを用いたものとする。
また、本発明は、上記いずれかに記載の位相制御装置を有し、負荷に白熱ランプ又はハロゲンランプを用いた照明装置を提供する。
【0016】
上記構成により、位相制御装置において逆位相制御または位相制御を行う際に、供給電力の位相が略90度のタイミングでスイッチ素子をオフまたはオンさせるときに、例えば交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4となる能動動作領域を設けることで、効率的な放熱設計を実施するために全灯時と調光時の損失が略同等となるようにし、かつ所定の雑音規格を十分満足させることが可能となる。したがって、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能な位相制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を説明するが、それはあくまで本発明に基づいて採択された例示的な実施形態であり、本発明をこの実施形態に特有な事項に基づいて限定解釈してはならず、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の請求項に示した事項さらにはその事項と実質的に等価である事項に基づいて定められるべきである。
【0019】
以下の実施形態では、交流負荷として白熱灯などの照明機器を負荷として用い、交流電源からの供給電力を逆位相制御または位相制御によって制御して調光を行う照明装置の調光装置に適用した構成例を示す。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図である。本実施形態の位相制御装置は、逆位相制御または位相制御による電力スイッチングが可能となっている。位相制御装置は、商用周波数の交流電源1が接続される電源接続部CN1と、交流電源1に対して直列に白熱灯等の負荷2が接続される負荷接続部CN2と、交流電源1からの供給電力を整流する整流器としてのダイオードブリッジDB1と、整流された脈流電力(脈流電圧、脈流電流)をオンオフするスイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q1のオンオフを制御する制御部の機能を有する制御回路4とを備えて構成される。本実施形態のように照明装置の調光装置に適用する場合、負荷2には白熱ランプ、ハロゲンランプなどが用いられる。
【0021】
スイッチ素子Q1は、例えば電界効果トランジスタ(MOS−FET)等の半導体スイッチング素子により構成される。スイッチ素子Q1としては、電界効果トランジスタの他に、絶縁ゲート型トランジスタ(IGBT)、バイポーラトランジスタなどを用いることができる。スイッチ素子Q1がMOS−FETの場合、図1に示すようにダイオードブリッジDB1の出力側にソース、ドレインが接続されてソースがグランドGNDに接地され、ゲートが抵抗R3を介して制御回路4に接続される。また、スイッチ素子Q1のゲート−ソース間には抵抗R2が設けられる。このスイッチ素子Q1は、制御回路4からの制御信号がゲートに入力されることにより、制御信号に応じてソース−ドレイン間をオンオフするものである。制御回路4は、制御電源3が接続され、マイコン制御により制御信号として後述する所定のタイミングで所定の制御電圧を出力してスイッチ素子Q1に供給する。
【0022】
また、交流電源1の電源ラインには、フューズFUSE、サージ吸収素子(バリスタ)ZNR、及び雑音低減用のフィルタF1が設けられる。フィルタF1は、電源ラインに直列に挿入されるコイル等のインダクタ素子と、並列に挿入されるコンデンサ等の容量素子とを有して構成される。また、フィルタF1の出力側には並列に抵抗R1が設けられる。
【0023】
本実施形態では、制御回路4によってスイッチ素子Q1をオンオフ制御することにより、交流電源1からの供給電力の導通角(導通期間の位相角)を制御し、白熱灯等の負荷2に流れる負荷電流を調整することで調光を行う。交流電源1からの電流はダイオードブリッジDB1で全波整流が行われ、脈流電流となってスイッチ素子Q1のソース−ドレイン間に供給される。そして、スイッチ素子Q1が制御回路4によってオンオフされ、逆位相制御または位相制御が行われる。これにより、交流電源1とダイオードブリッジDB1間に接続された負荷2は、逆位相制御または位相制御によって調光が行われる。
【0024】
まず、逆位相制御を行う第1の動作例を説明する。図2は第1の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図である。図2において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オフ過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の逆位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度逆位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0025】
逆位相制御を行う場合、図2(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度または180度)のタイミング5、7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流及び負荷電流がゼロから流れるようにする。また、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度または270度)のタイミング6、8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。上記動作を交流電源周波数の半周期で繰り返す。これにより、逆位相制御の電力スイッチング(逆位相調光制御)が行われる。
【0026】
このとき、図2(B)に示すように、スイッチ素子オフのタイミング13において、スイッチ素子Q1をオフさせる過渡時にスイッチ素子Q1の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域12を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に減少する所定の時間の能動動作領域12が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に増加する。
【0027】
ここで、能動動作領域12は、逆位相制御の場合、スイッチ素子Q1がオン状態からオフ状態になるとき、スイッチ素子Q1のゲート(制御端子)とソース(接地端子)間の入力容量による電荷がゲートとソース間に挿入した抵抗R2により自然放電されることによって生成される。
【0028】
次に、逆位相制御における所定時間の能動動作領域12及びスイッチ素子Q1の損失について詳しく説明する。図3はスイッチ素子Q1の全灯時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図、図4はスイッチ素子Q1の逆位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図、図5は図4のスイッチ素子Q1がオフする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図である。
【0029】
ここでは、スイッチ素子Q1がMOS−FETの場合を示す。まず、全灯時の場合は、図3に示すように、MOS−FETは常にオン状態にあり、ドレイン電流が略全期間にわたって流れる。このとき、MOS−FETの損失は、オン抵抗とMOS−FETに流れる電流で求められる。
【0030】
平均損失をP(全灯)、オン抵抗をRon、電流の実効値をID(rms)とすると、全灯時の平均損失P(全灯)は以下の(1)式で表される。
P(全灯)=Ron×ID(rms)×ID(rms) …(1)
【0031】
一方、逆位相制御による調光時の場合は、図4に示すように瞬時損失を近似できる。この場合、特に所定の時間の能動動作領域を設けたことによって、90度逆位相制御では損失が多くなる。調光時において、MOS−FETは、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期の2分の1の期間、すなわちT/2の期間はオン状態にあり、あとの半周期の2分の1(T/2)はオフ状態にある。よって、調光時の瞬時損失は、T/2期間のオン状態のときのMOS−FETの瞬時損失となり、この瞬時損失はオン抵抗とMOS−FETに流れる電流で求められる。
【0032】
オン状態の瞬時損失をPt、オン抵抗をRon、オンしている区間tの電流として、全灯時の半周期の電流の実効値をID(rms)とすると、90度逆位相制御による調光時の瞬時損失Ptは以下の(2)式で表される。
Pt=Ron×ID(rms)×ID(rms) …(2)
【0033】
次に、MOS−FETがターンオフする能動動作領域区間toffの瞬時損失を求める。能動動作領域区間toffでは、図5に示すように、瞬時損失をPtoff、MOS−FETのドレイン電流をID、ドレイン−ソース間電圧をVDSとすると、能動動作領域区間toffの瞬時損失Ptoffは以下の(3)式で表される。
Ptoff=1/6×ID×VDS …(3)
【0034】
なお、MOS−FETがターンオンする能動動作領域区間tonの瞬時損失は、電圧ゼロ点から電流が流れ出すことによって、ほとんど無いとみて無視する。
【0035】
次に、調光時の平均瞬時損失を近似すると、平均瞬時損失PDは以下の(4)式で表される。
PD=(Pt・t+Ptoff・toff)/(t+toff) …(4)
【0036】
そして、調光時の平均損失を近似すると、平均損失P(調光)は以下の(5)式で表される。
P(調光)=PD・(t+toff)/T …(5)
【0037】
スイッチ素子Q1として用いるMOS−FETの温度上昇は、損失とともに増加する。このため、商用電源の電源位相が略90度のタイミングで逆位相制御により調光を行う場合の能動動作領域として、調光時の温度上昇が全灯時よりも高くならない(または全灯時と略同じになる)所定の時間の能動動作領域を設けるということは、調光時の平均損失P(調光)が全灯時の平均損失P(全灯)と略同じになるように設定することである。つまり、P(調光)≒P(全灯)、すなわちPD・(t+toff)/T≒Ron×ID(rms)×ID(rms)となるように能動動作領域の時間を設定する。
【0038】
なお、調光時の逆位相制御を90度位相に限定すれば、Pt≒Ptoffの関係を満たすように能動動作領域の時間を設定してもよい。
【0039】
しかしながら、CISPR15規格対応の雑音特性を満足するためには、できるだけ長い時間の能動動作領域を設けることが望ましい。つまり、P(調光)≒P(全灯)、またはPt≒Ptoffのいずれかを満たすものから、できるだけ長い能動動作領域区間toffを設定することが望ましい。
【0040】
上記のように能動動作領域を設定した場合、スイッチ素子Q1の温度上昇は、全灯時と調光時とでほぼ同じとなる。なお、CISPR15規格対応の雑音特性を満足するために、できるだけ長い時間の能動動作領域を設けることが望ましいが、あまり長すぎると、スイッチ素子Q1の温度上昇が高くなってしまう。この場合、負荷電力の大きい全灯時よりも、負荷電力の小さい調光時の方が温度上昇が高くなり、負荷電力の小さい調光時に合わせた放熱設計が必要となり、非効率である。例えば、全灯時のみの対応などを考慮すると、余分な放熱設計となる場合がある。少なくとも、全灯時と比べて調光時の温度上昇を同等に抑えることが効率的な設計といえる。
【0041】
本実施形態の構成では、逆位相制御によりスイッチ素子Q1オン時のスイッチング雑音を抑えることができ、また、スイッチ素子Q1オフ時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。このため、入力部の雑音対策用のフィルタF1の回路部品は、容量素子はフィルムコンデンサ0.1μF〜0.47μF程度でよく、インダクタ素子に関しても47μH程度の小容量のものでよい。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0042】
図6は従来例の位相制御装置の構成及び動作を示す図である。従来の位相制御装置では、図6(A)に示すようにスイッチ素子としてトライアックTRIAC1を設け、図6(B)に示すように位相90度でトライアックTRIAC1をオンさせ、ゼロクロスで保持電流がなくなりオフする、いわゆる後縁制御と呼ばれる方式が一般的である。
【0043】
これに対し、本実施形態では、スイッチ素子としてMOS−FETを設けてオンオフ制御するため、保持電流の考え方はなくなり、MOS−FETのゲート信号により制御が可能である。よって、ゼロクロスでMOS−FETをオンさせ、位相90度でオフさせる逆位相制御が可能である。例えば、位相制御対応蛍光灯インバータ(調光型パルックボール(商標))などを負荷として用いる場合に、従来の位相制御によって位相90度でオンさせると、突入電流が毎周期流れるために回路のストレスが大きくなってしまう。一方、逆位相制御の場合は、ゼロクロス点から電流が流れるため、突入電流を無くすことができ、回路へかかるストレスを緩和できるという利点がある。
【0044】
次に、位相制御を行う第2の動作例を説明する。図7は第1の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図である。図7において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オン過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0045】
位相制御を行う場合、図7(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度または270度)のタイミング6、8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流及び負荷電流を流し始めるようにする。また、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度または180度)のタイミング5、7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる脈流電圧、脈流電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。これにより、位相制御の電力スイッチング(位相調光制御)が行われる。
【0046】
このとき、図7(B)に示すように、スイッチ素子オンのタイミング15において、スイッチ素子Q1をオンさせる過渡時にスイッチ素子Q1の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域14を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に増加する所定の時間の能動動作領域14が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に減少する。
【0047】
ここで、能動動作領域14は、位相制御の場合、スイッチ素子Q1がオフ状態からオン状態になるとき、スイッチ素子Q1のゲート(制御端子)とソース(接地端子)間の入力容量と電流制限抵抗R3との時定数により充電されることによって生成される。
【0048】
次に、位相制御における所定時間の能動動作領域14及びスイッチ素子Q1の損失について詳しく説明する。図8はスイッチ素子Q1の位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図、図9は図8のスイッチ素子Q1がオンする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図である。
【0049】
ここでは、逆位相制御の場合と同様に、スイッチ素子Q1がMOS−FETの場合を示す。位相制御による調光時の場合は、図8に示すように瞬時損失を近似できる。この場合、特に所定の時間の能動動作領域を設けたことによって、90度位相制御では損失が多くなる。調光時において、MOS−FETは、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期の2分の1の期間、すなわちT/2の期間はオフ状態にあり、あとの半周期の2分の1(T/2)はオン状態にある。よって、調光時の瞬時損失は、T/2期間のオン状態のときのMOS−FETの瞬時損失となり、この瞬時損失はオン抵抗とMOS−FETに流れる電流で求められる。
【0050】
オン状態の瞬時損失をPt、オン抵抗をRon、オンしている区間tの電流として、全灯時の半周期の電流の実効値をID(rms)とすると、90度位相制御による調光時の瞬時損失Ptは以下の(6)式で表される。
Pt=Ron×ID(rms)×ID(rms) …(6)
【0051】
次に、MOS−FETがターンオンする能動動作領域区間tonの瞬時損失を求める。能動動作領域区間tonでは、図9に示すように、瞬時損失をPton、MOS−FETのドレイン電流をID、ドレイン−ソース間電圧をVDSとすると、能動動作領域区間tonの瞬時損失Ptonは以下の(7)式で表される。
Pton=1/6×ID×VDS …(7)
【0052】
なお、MOS−FETがターンオフする能動動作領域区間toffの瞬時損失は、電圧ゼロ点で電流が流れ終わることによって、ほとんど無いとみて無視する。
【0053】
次に、調光時の平均瞬時損失を近似すると、平均瞬時損失PDは以下の(8)式で表される。
PD=(Pt・t+Pton・ton)/(t+ton) …(8)
【0054】
そして、調光時の平均損失を近似すると、平均損失P(調光)は以下の(9)式で表される。
P(調光)=PD・(t+ton)/T …(9)
【0055】
スイッチ素子Q1として用いるMOS−FETの温度上昇は、損失とともに増加する。このため、商用電源の電源位相が略90度のタイミングで位相制御により調光を行う場合の能動動作領域として、調光時の温度上昇が全灯時よりも高くならない(全灯時と略同じになる)所定の時間の能動動作領域を設けるということは、調光時の平均損失P(調光)が全灯時の平均損失P(全灯)と略同じになるように設定することである。つまり、P(調光)≒P(全灯)、すなわちPD・(t+ton)/T≒Ron×ID(rms)×ID(rms)となるように能動動作領域の時間を設定する。
【0056】
なお、調光時の位相制御を90度位相に限定すれば、Pt≒Ptonの関係を満たすように能動動作領域の時間を設定してもよい。
【0057】
しかしながら、CISPR15規格対応の雑音特性を満足するためには、できるだけ長い時間の能動動作領域を設けることが望ましい。つまり、P(調光)≒P(全灯)、またはPt≒Ptonのいずれかを満たすものから、できるだけ長い能動動作領域区間tonを設定することが望ましい。上記のように能動動作領域を設定した場合、スイッチ素子Q1の温度上昇は、全灯時と調光時とでほぼ同じとなる。
【0058】
このように位相制御による調光においても、逆位相制御の場合と同様に、スイッチ素子Q1オン時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0059】
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図である。本実施形態の位相制御装置は、第1の実施形態と同様、逆位相制御または位相制御による電力スイッチングが可能となっている。位相制御装置は、商用周波数の交流電源1が接続される電源接続部CN1と、交流電源1に対して直列に白熱灯等の負荷2が接続される負荷接続部CN2と、交流電源1と負荷2との間に互いに逆向きで直列に接続され、交流電源1からの供給電力をオンオフする第1のスイッチ素子Q1及び第2のスイッチ素子Q2と、これら一対のスイッチ素子Q1、Q2のオンオフを制御する制御部の機能を有する制御回路4とを備えて構成される。なお、交流電源1の電源ラインに設けられるフューズFUSE、サージ吸収素子(バリスタ)ZNR、雑音低減用のフィルタF1、抵抗R1は第1の実施形態と同様である。本実施形態のように照明装置の調光装置に適用する場合、負荷2には白熱ランプ、ハロゲンランプなどが用いられる。
【0060】
スイッチ素子Q1、Q2は、例えば電界効果トランジスタ(MOS−FET)等の半導体スイッチング素子により構成される。スイッチ素子Q1、Q2としては、電界効果トランジスタの他に、絶縁ゲート型トランジスタ(IGBT)、バイポーラトランジスタなどを用いることができる。スイッチ素子Q1、Q2がMOS−FETの場合、図10に示すようにフィルタF1の出力側にソース、ドレインが互いに逆極性で直列に接続されて両者のソースがグランドGNDに接地され、ゲートがそれぞれ抵抗R3、R5を介して制御回路4に接続される。また、スイッチ素子Q1、Q2のゲート−ソース間にはそれぞれ抵抗R2、R4が設けられる。このスイッチ素子Q1、Q2は、制御回路4からの制御信号がゲートに入力されることにより、制御信号に応じてソース−ドレイン間をオンオフするものである。制御回路4は、制御電源3が接続され、マイコン制御により制御信号として後述する所定のタイミングで所定の制御電圧を出力してスイッチ素子Q1、Q2に供給する。
【0061】
本実施形態では、制御回路4によってスイッチ素子Q1、Q2をオンオフ制御することにより、交流電源1からの供給電力の導通角(導通期間の位相角)を制御し、白熱灯等の負荷2に流れる負荷電流を調整することで調光を行う。交流電源1からの電流は直列接続されたスイッチ素子Q1、Q2のソース−ドレイン間に供給される。そして、スイッチ素子Q1、Q2が制御回路4によってオンオフされ、逆位相制御または位相制御が行われる。これにより、交流電源1と直列に接続された負荷2は、逆位相制御または位相制御によって調光が行われる。
【0062】
まず、逆位相制御を行う第1の動作例を説明する。図11は第2の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図である。図11において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オフ過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の逆位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度逆位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0063】
逆位相制御を行う場合、図11(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度)のタイミング7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流がゼロから流れるようにする。このとき、スイッチ素子Q2の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度)のタイミング8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。そして、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相180度)のタイミング5(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオンし、ドレイン電流がゼロから流れるようにする。このとき、スイッチ素子Q1の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相270度)のタイミング6(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオフする。上記動作を交流電源周波数の周期で繰り返す。これにより、逆位相制御の電力スイッチング(逆位相調光制御)が行われる。
【0064】
このとき、図11(B)に示すように、スイッチ素子オフのタイミング13において、スイッチ素子Q1、Q2をオフさせる過渡時にスイッチ素子Q1、Q2の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域12を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に減少する所定の時間の能動動作領域12が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に増加する。
【0065】
ここで、能動動作領域12は、逆位相制御の場合、スイッチ素子Q1、Q2がオン状態からオフ状態になるとき、スイッチ素子Q1、Q2のゲートとソース間の入力容量による電荷がゲートとソース間に挿入した抵抗R2、R4により自然放電されることによって生成される。
【0066】
このような第2の実施形態の構成においても、第1の実施形態と同様に、逆位相制御によりスイッチ素子Q1、Q2オン時のスイッチング雑音を抑えることができ、また、スイッチ素子Q1、Q2オフ時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0067】
次に、位相制御を行う第2の動作例を説明する。図12は第2の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図である。図12において、(A)は負荷電圧及びスイッチ素子電流(ドレイン電流)を示し、(B)は(A)の破線で囲んだ部分で示されるスイッチ素子オン過渡時の素子にかかる電圧、電流波形を示したものである。また、図中の斜線部は調光時の位相制御により電流が流れている区間を示している。ここでは、90度位相制御により調光を行う例を示す。なお、交流電源の周波数(商用周波数)の半周期をTとする。
【0068】
位相制御を行う場合、図12(A)に示すように、制御回路4はマイコン制御により、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相90度)のタイミング8(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオンし、ドレイン電流を流し始めるようにする。このとき、スイッチ素子Q2の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相0度)のタイミング7(すなわちスイッチ素子Q1にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q1をオフする。そして、負荷電圧が上昇した略ピーク(位相270度)のタイミング6(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ピーク点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオンし、ドレイン電流を流し始めるようにする。このとき、スイッチ素子Q1の寄生ダイオードを介してドレイン電流が交流電源1に戻り、負荷2に負荷電流が流れる。また、負荷電圧が略ゼロボルト(ゼロクロス、位相180度)のタイミング5(すなわちスイッチ素子Q2にかかる電圧、電流が略ゼロ点のタイミング)でスイッチ素子Q2をオフする。上記動作を交流電源周波数の周期で繰り返す。これにより、位相制御の電力スイッチング(逆位相調光制御)が行われる。
【0069】
このとき、図12(B)に示すように、スイッチ素子オンのタイミング15において、スイッチ素子Q1、Q2をオンさせる過渡時にスイッチ素子Q1、Q2の調光時(電力制御時)の損失による温度上昇が全灯時(非制御時)よりも高くならない(または全灯時と略同等である)所定の時間の能動動作領域14を設ける。つまり、スイッチ素子電流(ドレイン電流)10が徐々に増加する所定の時間の能動動作領域14が生じるようにする。なお、このときスイッチ素子電圧(ドレイン電圧)11は徐々に減少する。
【0070】
ここで、能動動作領域14は、位相制御の場合、スイッチ素子Q1、Q2がオフ状態からオン状態になるとき、スイッチ素子Q1、Q2のゲートとソース間の入力容量と電流制限抵抗R3、R5との時定数により充電されることによって生成される。
【0071】
このように位相制御による調光においても、逆位相制御の場合と同様に、スイッチ素子Q1、Q2オン時の所定時間の能動動作領域の設定によって、CISPR15規格対応の雑音特性を満足する低雑音の位相制御装置を実現することが可能である。したがって、雑音対策における部品の小型化、低コスト化を実現しつつ、CISPR15の雑音規格を満足し、かつ、調光時のスイッチング損失によるスイッチ素子の温度上昇を全点灯時と略同等にできるという効果が得られる。
【0072】
(実施例)
以下に、本実施形態における能動動作領域及び損失に関する具体的な実施例を示す。本実施例では、図1に示す第1の実施形態の構成において、スイッチ素子Q1にMOS−FETを用い、白熱灯66W、110Vを負荷として接続した場合の一例を示す。交流電源としては、商用周波数50Hz、実効電圧100Vの商用電源を用いるものとする。
【0073】
図13はスイッチ素子のオン抵抗Ronが0.5Ωの場合、図14はスイッチ素子のオン抵抗Ronが0.3Ωの場合のそれぞれの能動動作領域の時間と平均損失との関係を示す図である。図13、図14において、×は全灯時の平均損失を、*は調光時の平均損失をそれぞれ示している。
【0074】
調光時においては、能動動作領域の時間を長くするに従って平均損失が大きくなる。図13に示す例のように、オン抵抗Ron:0.5Ωの場合、能動動作領域時間が約34μsecのときに、全灯時の平均損失と、調光時のスイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失を加算した平均損失とが同等となる。図14に示す例のように、オン抵抗Ron:0.3Ωの場合は、全灯時も調光時もRon:0.5Ωの場合より損失は低くなる。しかし、仮に能動動作領域時間を30μsec程度とした場合、調光時の方が全灯時より損失が大きくなる。この場合、位相制御装置の電子ブロックの放熱設計において調光時に合わせた設計をする必要がある。この電子ブロックを、例えば、調光機能の無い全灯のみの照明機器に流用することを考えた場合、本来、損失が大きい調光時に合わせた放熱手段は不要であるにも関わらず、余分な放熱構造をとった電子ブロックを使用することとなり、コスト的に非効率となってしまう。
【0075】
Ron:0.5Ωの場合は、仮に能動動作領域時間を30μsec程度とした場合、全灯時の平均損失と、調光時のスイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失とを加算した平均損失とが、ほぼ同等、あるいは調光時が全灯時より若干小さいレベルである。この場合、全灯時も調光時も同等の放熱構造を必要とするため、効率的な放熱設計が可能である。したがって、効率的な放熱設計を適用しつつ、損失の要因となるオン抵抗を0.3Ωから0.5Ωに上げることができ、スイッチ素子のコストを低く抑えることもできる。スイッチ素子のMOS−FETは、一般的に損失の要因となるオン抵抗が低いものほどコストは高くなる。
【0076】
図15は能動動作領域時間に対するスイッチ素子の損失と雑音レベルの関係を示す図である。この図15では、スイッチ素子のオン抵抗Ronを0.5Ωとした場合を示している。図15において、雑音レベルは、CIPR15の雑音規格の規格値に対して、ある周波数帯域で最も高いレベルを示している。よって、規格値に対してオーバーする場合はある周波数帯域で最もオーバーするレベルが示され、規格値を満足している場合はある周波数帯域で最も高いポイントでの余裕度が示される。
【0077】
雑音レベルの余裕度を約10dB程度とることを前提に考えた場合、全灯時と比較して調光時の損失が略同等となるようにするためには、能動動作領域時間を図15中の四角で囲んだ範囲tdに入るように設計目標値を設定すればよい。すなわち、能動動作領域時間は、約20μsec〜40μsecに設定するのが適当である。交流電源の周波数が商用周波数50Hzの場合、その半周期は10msecであるので、能動動作領域時間は交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4とするのが望ましい。
【0078】
つまり、図2(B)における逆位相制御による調光時の能動動作領域12、及び図7(B)における位相制御による調光時の能動動作領域14は、交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4の時間に設定すれば、CIPR15の雑音規格を十分余裕をもって満足させることができる。
【0079】
したがって、本実施例のように、位相制御装置において逆位相制御または位相制御を行う際に、供給電力の位相が略90度のタイミングでスイッチ素子をオフまたはオンさせるときに、交流電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4となる能動動作領域を設けることで、効率的な放熱設計を実施するために全灯時と調光時の損失が略同等となるようにし、かつCIPR15の雑音規格を十分満足させることができる。また、雑音低減用のフィルタを大型化しなくても済むため、位相制御装置を簡単な回路構成で実現できる。また、効率的な放熱設計を適用することで、よりシンプルな放熱構造をとることができる。これらにより、十分な雑音性能を確保しつつ装置の小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0080】
なお、本発明は上記の実施形態において示されたものに限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0081】
上述した実施形態では、位相制御装置を交流負荷として白熱灯などの照明機器を負荷として用いる照明装置の調光装置に適用した例を示したが、これに限るものではなく、交流負荷への供給電力をスイッチ素子でスイッチングして電力制御を行う構成であれば、他の種々の装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、より効率的な放熱設計を適用でき、小型かつ低コストで低雑音の装置を実現することが可能となる効果を有し、照明負荷等の交流負荷の電力制御を行うための調光装置等に適用可能な位相制御装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図
【図2】第1の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図
【図3】本実施形態におけるスイッチ素子の全灯時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図
【図4】本実施形態におけるスイッチ素子の逆位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図
【図5】図4のスイッチ素子がオフする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図
【図6】従来例の位相制御装置の構成及び動作を示す図
【図7】第1の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図
【図8】本実施形態におけるスイッチ素子の位相制御による調光時の場合の電流・電圧波形及び損失を示す図
【図9】図8のスイッチ素子がオンする能動動作領域区間の瞬時損失を示す図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る位相制御装置の構成を示す回路図
【図11】第2の実施形態において逆位相制御を行う第1の動作例の動作波形を示す図
【図12】第2の実施形態において位相制御を行う第2の動作例の動作波形を示す図
【図13】スイッチ素子のオン抵抗Ronが0.5Ωの場合の能動動作領域の時間と平均損失との関係を示す図
【図14】スイッチ素子のオン抵抗Ronが0.3Ωの場合の能動動作領域の時間と平均損失との関係を示す図
【図15】能動動作領域時間に対するスイッチ素子の損失と雑音レベルの関係を示す図
【符号の説明】
【0084】
1 交流電源
2 負荷
3 制御電源
4 制御回路
CN1 電源接続部
CN2 負荷接続部
DB1 ダイオードブリッジ
F1 フィルタ
Q1、Q2 スイッチ素子
R1、R2、R3、R4、R5 抵抗
10 スイッチ素子電流
11 スイッチ素子電圧
12、14 能動動作領域
toff、ton 能動動作領域区間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、
前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、
前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオフする逆位相制御を行うものであり、
前記制御部が前記スイッチ素子をオフする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有する位相制御装置。
【請求項2】
交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、
前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、
前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオフする位相制御を行うものであり、
前記制御部が前記スイッチ素子をオンする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有する位相制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に接続され、前記交流電源からの供給電力を整流する整流器を備え、
前記スイッチ素子は、前記整流器の出力側に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記整流器で整流された脈流電力をオンオフする一つのスイッチ素子を有してなる位相制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記スイッチ素子は、前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に互いに逆極性で直列に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記交流電源からの供給電力をオンオフする第1及び第2のスイッチ素子を有してなる位相制御装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記能動動作領域は、交流電源の電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4であり、電力制御時の前記スイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失とを加算した平均損失と、非制御時の前記スイッチ素子のオン時の損失とが略同じになるように設定される位相制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の位相制御装置であって、
前記逆位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオン状態からオフ状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量による電荷が、前記制御端子と前記接地端子間に設けられた抵抗により自然放電されることによって生成される位相制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の位相制御装置であって、
前記位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオフ状態からオン状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量と、前記制御端子と前記制御部間に設けられた抵抗との時定数により充電されることによって生成される位相制御装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記スイッチ素子に電界効果トランジスタを用いた位相制御装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記スイッチ素子に絶縁ゲート型トランジスタを用いた位相制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の位相制御装置を有し、負荷に白熱ランプ又はハロゲンランプを用いた照明装置。
【請求項1】
交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、
前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、
前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオフする逆位相制御を行うものであり、
前記制御部が前記スイッチ素子をオフする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有する位相制御装置。
【請求項2】
交流電源からの供給電力の導通角を制御して負荷へ流れる電力を調整する位相制御装置であって、
前記供給電力をオンオフするスイッチ素子と、
前記スイッチ素子のオンオフを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記供給電力の位相が略90度で前記スイッチ素子をオンし、前記供給電力の略ゼロ点で前記スイッチ素子をオフする位相制御を行うものであり、
前記制御部が前記スイッチ素子をオンする過渡時に、前記スイッチ素子の損失による温度上昇が電力制御時と非制御時とで略同じになる所定の時間の能動動作領域を有する位相制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に接続され、前記交流電源からの供給電力を整流する整流器を備え、
前記スイッチ素子は、前記整流器の出力側に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記整流器で整流された脈流電力をオンオフする一つのスイッチ素子を有してなる位相制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記スイッチ素子は、前記交流電源とこの交流電源と直列接続される負荷との間に互いに逆極性で直列に接続され、前記制御部からの制御信号に基づき、前記交流電源からの供給電力をオンオフする第1及び第2のスイッチ素子を有してなる位相制御装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記能動動作領域は、交流電源の電源周波数の半周期の略1000分の2から1000分の4であり、電力制御時の前記スイッチ素子の能動動作領域の損失とオン時の損失とを加算した平均損失と、非制御時の前記スイッチ素子のオン時の損失とが略同じになるように設定される位相制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の位相制御装置であって、
前記逆位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオン状態からオフ状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量による電荷が、前記制御端子と前記接地端子間に設けられた抵抗により自然放電されることによって生成される位相制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の位相制御装置であって、
前記位相制御における能動動作領域は、前記スイッチ素子がオフ状態からオン状態になるとき、前記スイッチ素子の制御端子と接地端子間の入力容量と、前記制御端子と前記制御部間に設けられた抵抗との時定数により充電されることによって生成される位相制御装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記スイッチ素子に電界効果トランジスタを用いた位相制御装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の位相制御装置であって、
前記スイッチ素子に絶縁ゲート型トランジスタを用いた位相制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の位相制御装置を有し、負荷に白熱ランプ又はハロゲンランプを用いた照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−181790(P2008−181790A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15022(P2007−15022)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(392000567)松下電工インテリア照明株式会社 (100)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(392000567)松下電工インテリア照明株式会社 (100)
【Fターム(参考)】
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