説明

低カロリーシロップおよびそれを用いた菓子および甘味飲料およびスポンジ生地およびホイップクリーム状物およびケーキおよびその製造方法

【課題】本発明は低カロリー(ノンカロリー)甘味料であるエリスリトールと水のみから製造され、使用時に結晶質成分の析出生じず口にした際にざらつき感のない低カロリーシロップを提供する。
【解決手段】粉末状又は顆粒状のエリスリトール100重量部に10〜71重量部の水を加えて沸騰させた後冷却してなることを特徴とする低カロリーシロップによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリスリトールと水のみから製造した非結晶性の低カロリーシロップおよびそれを用いた菓子および甘味飲料およびスポンジ生地およびホイップクリーム状物およびケーキおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エリスリトールは低カロリー(ノンカロリー)甘味料のとして知られている。しかしながら、エリスリトールは、結晶が大きく結晶化し易いため、菓子を製造すする際に砂糖や粉糖、あるいは、グラニュー糖の代用の甘味料として用いた際に、舌触りがざらついてしまい好ましくないという課題があった。
このような課題に対処する目的でいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「被膜ゼリー及びその製法」という名称で、エリスリトールを使用した被膜ゼリー及びその製法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明は、単糖または糖アルコールを含む糖類を加熱溶解した糖液に、ゲル化剤を添加した後、モールドして形成することを特徴とする被膜ゼリーの製法であり、糖アルコールとして特にエリスリトールを用いたことを特徴とするものである。
このような特許文献1に開示される発明によれば、ゼリー菓子の持つ高温時の溶け出しによる変形、べたつきなどの問題を糖衣掛けや晶出工程などの複雑な工程を付加することなく防止し、かつゼリー本来の食感を保持したゼリー菓子を提供することができる。
【0004】
特許文献2には「糖の析出抑制方法」という名称で高濃度の糖液を調製しても糖の析出・結晶化が生じず、安定な高濃度の糖を含む溶液を調製することができる、糖の析出抑制方法に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明は、高濃度の糖を含む溶液に多糖類を含有させることを特徴とする高糖濃度溶液の糖析出抑制方法において、高濃度の糖を含む溶液に含まれる主たる糖がエリスリトールのとき、多糖類が水溶性大豆多糖類であることを特徴とするものである。
このような特許文献2に開示される発明によれば、風味の変化を伴わず従来問題となっていた高濃度の糖を含む溶液の保存中に生じる糖の析出や結晶化を効果的に抑制し、食品製造等に至便な高濃度の糖を含む溶液を提供することができるという効果を有する。
また、特許文献2に開示される発明における高濃度の糖を含む溶液における糖の含量は、糖の種類にもよるが、従来調製されていた液糖に含まれる糖の飽和濃度付近から飽和濃度以上である、1.1〜2倍量を添加することが可能となる。
【0005】
特許文献3には「食品組成物および関連する方法」という名称で食品組成物の作製方法およびそれによって作製された食品組成物に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示される発明は、無糖チョコレート菓子の作製方法であって、(i)基本のチョコレート混合物を形成するように、砂糖代替物として機能する非晶質の無糖甘味料組成物をドライミルク代替物組成物、およびチョコレート形成性組成物と混合するステップと、(ii)前記混合物を加熱するステップと、(iii)前記混合物を真空乾燥するステップとを含み、非晶質の甘味料組成物が、ポリオールおよび難消化性デキストリンからなる群から選択され、さらに、非晶質の無糖甘味料組成物が、マルチトールシロップ、ソルビトールシロップ、マンニトールシロップ、ラクチトールシロップ、イソマルトシロップ、エリスリトールシロップ、キシリトールシロップ、加水分解水添デンプン、およびその組合せからなる群から選択されたポリオールであることを特徴とする方法である。
特許文献3に開示される発明によれば、非晶質の無糖甘味料組成物をチョコレート菓子で使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−191838号公報
【特許文献2】特開2006−204132号公報
【特許文献3】特表2008−505659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される発明においては、エリスリトールを用いながら食感にざらつきのないゼリーを提供することができるものの、エリスリトールと水から、添加物フリーのエリスリトールを主成分とする高濃度の低カロリーシロップを製造する技術やそれを用いた菓子等の食品を提供するための技術内容に関するものではなかった。
【0008】
また、特許文献2に開示される発明によれば、高糖濃度溶液において糖の析出を抑制することができるものの、高糖濃度溶液をエリスリトールと水のみから製造する技術に関するものではない。
【0009】
そして、特許文献3には製菓材料として非晶質のエリスリトールシロップを使用する旨の記載があるが、エリスリトールシロップの具体的な製造方法について開示はおろか、示唆や言及はされていなかった。
【0010】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、エリスリトールと水のみから作られる無添加で非晶質な低カロリーシロップおよびそれを用いた菓子および甘味飲料およびスポンジ生地およびホイップクリーム状物およびケーキおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である低カロリーシロップは、粉末状又は顆粒状のエリスリトール100重量部に10〜71重量部の水を加えて沸騰させた後冷却してなることを特徴とするものである。
一般に、エリスリトールは砂糖の60〜80%程度でかつ砂糖に近い甘みを呈しながら、その熱量(カロリー)はほぼゼロである。このため、上記構成の発明において、甘味料としてエリスルトールを用いることで、十分な甘み提供しながシロップのカロリーを低くするという作用を有する。また、粉末状又は顆粒状のエリスリトール100重量部に対する水の添加量を10〜71重量部とし、かつ、一旦沸騰させることで、このシロップ中におけるエリスリトール結晶質成分の析出を抑制させるという作用を有する。さらに、この低カロリーシロップを、食品の甘味料として用いた際にも、出来上がった食品中おけるエリスリトールの結晶質成分の析出を抑制するという作用を有する。
【0012】
請求項2記載の発明である菓子は、製菓原料の糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えたことを特徴とするものである。
上記構成の発明において低カロリーシロップは、請求項1記載の発明における低カロリーシロップと同じ作用を有する。また、菓子を製造する際に糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えることで、菓子中の糖質に由来するカロリーを低減するという作用を有する。
【0013】
請求項3記載の発明である菓子は、請求項2に記載の菓子であって、製菓原料のタンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えたことを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項2記載の発明と同じ発明に加えて、製菓原料のタンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えることで、菓子中のタンパク質に由来するカロリーを低減するという作用を有する。
【0014】
請求項4記載の発明である甘味飲料は、甘味飲料に添加される糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えたことを特徴とするものである。
上記構成の発明における低カロリーシロップは、請求項1記載の発明における低カロリーシロップと同じ作用を有する。また、甘味飲料を製造する際に糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えることで、甘味飲料中の糖質に由来するカロリーを低減するという作用を有する。
【0015】
請求項5記載の発明であるスポンジ生地は、請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分と、タンパク質と、小麦粉とを原料とすることを特徴とするものである。
上記構成の発明における低カロリーシロップは、請求項1記載の発明における低カロリーシロップと同じ作用を有する。糖分は、スポンジ生地に甘みを付与するという作用を有する。タンパク質及び糖質は、時間の経過とともに、および、熱に曝された場合でも消え難い安定した性質の気泡を形成させるという作用を有する。また、タンパク質は、焼成時に変性して硬化し気泡を保持することで、焼き上がったスポンジ生地の口当たりを柔らかくするという作用を有する。
また、小麦粉はタンパク質および糖質と共同して、スポンジ生地の固形部分を形成するという作用を有する。
そして、糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えることで、全ての糖分を砂糖又は粉糖又はグラニュー糖とした場合に比べてスポンジ生地のカロリーを低減するという作用を有する。
【0016】
請求項6記載の発明であるスポンジ生地は、請求項5記載のスポンジ生地であって、タンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えたことを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項5記載の発明と同じ作用に加えて、スポンジ生地を構成するタンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えることで、スポンジ生地中においてタンパク質に由来するカロリーを低減するという作用を有する。
【0017】
請求項7記載の発明であるスポンジ生地の製造方法は、請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分にタンパク質を加えてミキシングして泡立てた混合体とする第1の工程と、この第1の工程の後に、混合体に小麦粉を加えて撹拌してスポンジ種とする第2の工程と、この第2の工程の後に、スポンジ種を焼き上げてスポンジ生地にする第3の工程とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項5記載の発明を方法の発明として捉えたものであり、糖分、タンパク質、小麦粉、および、これらにより構成されるスポンジ生地は請求項5記載の糖分、タンパク質、小麦粉、および、これらにより構成されるスポンジ生地と同じ作用を有する。
また、第1の工程は、糖質とタンパク質を混合することで高粘性の液体を形成させ、それをミキシングして泡立てることで容易に消滅し難い気泡を形成させるという作用を有する。
また、第2の工程は、スポンジ生地の固形部分を実質的に形成する小麦粉を加えてスポンジ種を形成させるという作用を有する。
さらに、第3の工程は、それぞれの製菓材料を加熱して可食可能にするとともに、特にタンパク質を変性させてスポンジ種を硬化しスポンジ生地中に気泡を保持させてその食感を柔らかいものにするという作用を有する。
【0018】
請求項8記載の発明であるスポンジ生地の製造方法は、請求項7記載のスポンジ生地の製造方法であって、タンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えたことを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項6記載の発明を方法の発明として捉えたものであり、糖分、タンパク質、小麦粉、および、これらにより構成されるスポンジ生地は請求項6記載の糖分、タンパク質、小麦粉、および、これらにより構成されるスポンジ生地と同じ作用を有する。また、タンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えることで、スポンジ生地中のタンパク質に由来するカロリーを低減するという作用を有する。
【0019】
請求項9記載の発明であるホイップクリーム状物は、請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分と、卵白とからなることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、糖分は請求項9記載のホイップクリーム状物に甘みを付与するという作用を有する。また、卵白は糖分と共同して無数の潰れ難い細かい気泡を形成して、白色のクリーム状物を形成させるという作用を有する。さらに、低カロリーシロップは、請求項1記載の低カロリーシロップと同じ作用を有する。さらに、糖分及び請求項1記載の低カロリーシロップを、卵白に加えることで請求項9記載のホイップクリーム状物に、つやと滑らかさを付与するという作用を有する。
このような請求項9記載のホイップクリーム状物は、動物性又は植物性脂肪からなる生クリームを用いて作ったホイップクリームに似た外観を有しながらも、そのカロリーを動物性又は植物性脂肪からなる生クリームを用いて作ったホイップクリームに比べて大幅に低減するという作用を有する。
【0020】
請求項10記載の発明であるホイップクリーム状物の製造方法は、卵白に請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分を加えてメレンゲ状に泡立てることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項9記載の発明を方法の発明として捉えたものであり、糖分、低カロリーシロップ、卵白、および、これらからなるクリーム状物は、請求項9記載の糖分、低カロリーシロップ、卵白、および、これらからなるクリーム状物と同じ作用を有する。
また、卵白に請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分を加えてメレンゲ状に泡立てることで、卵白の粘性が高められ無数の潰れ難い細かい気泡が形成されることで、白色のクリーム状物を形成させるという作用を有する。
【0021】
請求項11記載の発明であるケーキは、請求項5又は請求項6記載のスポンジ生地と、請求項9記載のホイップクリーム状物とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明において、スポンジ生地は、請求項5又は請求項6記載のスポンジ生地と同じ作用を有する。また、ホイップクリーム状物は、請求項9記載のホイップクリーム状物と同じ作用を有する。
従って、請求項11記載の発明によれば、卵黄を含む卵と、砂糖と、生クリームを使用して用いたケーキと同様の外観を及び甘みを有しながら、それよりもはるかにカロリーの低いケーキを構成するという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1記載の発明によれば、カロリーがほぼゼロのエリスリトールと水のみから製造され、高濃度のシロップ状態でも結晶質成分を析出せず、また、食品にこのシロップを甘味料として使用した場合にも結晶質成分を析出しないので、単独で用いてもあるいは製菓材料や食品に用いた場合でも糖分に由来するカロリーを低減することができ、かつ、ざらつき感等がない舌触りの良い高濃度の低カロリーシロップを提供することができるという効果を有する。
また、請求項1記載の発明によれば甘味成分がエリスリトールのみであるため、食味が砂糖に近く、かつ、添加物フリーで、低カロリー(ほぼゼロkcal)のシロップを提供することができるという効果も有する。
この結果、従来、食品において甘味料として用いられてきた砂糖又はグラニュー糖を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えることで、従来の食品の食味を損なうことなくそのカロリーを削減することができるという効果を有する。
従って、カロリー制限が必要な人であっても、請求項1記載の低カロリーシロップを用いることで、甘い食べ物を食べることを楽しむことができるという効果を有する。
【0023】
請求項2記載の発明は、製菓材料における糖分の一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えることで、菓子中の糖分に由来するカロリーを低減することができるという効果を有する。
この結果、従来の菓子と同程度でかつ同質の甘さを有しながらよりカロリーの低い菓子を提供することができるという効果を有する。
また、請求項1記載の低カロリーシロップは、高濃度のシロップであるため、製菓材料として使用される糖分の一部と行きかえた場合でも、製造中の生地の水分含量が大幅に上昇することがないので、成形時や焼成時に型崩れ等の不具合が生じるのを防止することができる。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同じ効果に加えて、菓子中のタンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えることで、菓子中のタンパク質に由来するカロリーを低減することができるという効果を有する。
この結果、従来の菓子と同程度の同質の甘さおよび食味を有しながら、よりカロリーの低い菓子を提供することができるという効果を有する。
また、特に粉体状の乳清タンパクを用いることで、請求項1記載の低カロリーシロップを使用することによる製菓材料全体の水分含量の上昇分を、粉体状の乳清タンパクの添加により相殺することができる。
この結果、従来の製菓方法をそのまま用いて低カロリーの菓子を製造することが可能になる。
【0025】
請求項4記載の発明は、甘味飲料における糖分の一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えることで、甘味飲料中の糖分に由来するカロリーを低減することができるという効果を有する。
この結果、従来の甘味飲料と同程度かつ同質の甘さを有しながらよりカロリーの低い甘味飲料を提供することができるという効果を有する。
【0026】
請求項5記載の発明は、従来のスポンジ生地において糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えることで、糖分に由来するカロリーを低減することができるという効果を有する。
この結果、従来のスポンジ生地と同程度かつ同質の甘みを有しながらよりカロリーの低いスポンジ生地を提供することができるという効果を有する。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明と同じ効果に加えて、スポンジ生地を構成するタンパク質を、より具体的には、卵の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えることで、スポンジ生地においてタンパク質に由来するカロリーを低減することができるという効果を有する。
この結果、請求項6記載の発明によれば、請求項5記載のスポンジ生地と同程度の甘みを有しながらよりカロリーの低いスポンジ生地を提供することができるという効果を有する。
また、特に粉体状の乳清タンパクを用いることで、請求項1記載の低カロリーシロップを使用することによる製菓材料全体の水分含量の上昇分を、粉体状の乳清タンパクの添加により相殺することができる。
この結果、従来の製菓方法をそのまま用いて低カロリーの菓子を製造することが可能になる。
【0028】
請求項7記載の発明は、請求項5記載の発明を方法の発明として捉えたものであり、請求項7記載の発明により製造されたスポンジ生地は請求項5記載の発明と同じ効果を有する。
また、第1の工程を有することで、請求項1記載の低カロリーシロップとタンパク質により高粘性体を形成することができるので、この高粘性体をミキシングして泡立てることで、スポンジ生地の食感を柔らかくする気泡を形成させることができる。
また、第2の工程を有することで、スポンジ生地において気泡を保持する躯体となるスポンジ種を形成させることができるという効果を有する。
さらに、第3の工程を有することで、焼成時の温度でタンパク質を変性させて硬化させるとともに、製菓材料を可食可能に加熱調理して気泡を有する柔らかいスポンジ生地を形成することができるという効果を有する。
このように、請求項7記載の発明によれば、ベーキングパウダー等の添加物を用いることなしに無添加で低カロリーのスポンジ生地の製造方法を提供することができるという効果を有する。
【0029】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明を方法の発明として捉えたものであり、請求項8記載の発明により製造されたスポンジ生地は請求項6記載の発明と同じ効果を有する。
また、特に第1の工程では、製菓材料におけるタンパク質の一部を乳清タンパクに置き換えた場合でも、請求項1記載の低カロリーシロップと組み合わせて高粘性体を形成することができるという効果を有する。
また、従来のスポンジ生地の製造方法においては、糖分としては例えば砂糖又は粉糖又はグラニュー糖を用いるので糖分の含水率は低い。これに対して、タンパク質としては例えば、全卵を用いるので含水率は糖分に比べて高い。
これに対して、請求項8記載の発明においては、糖分の少なくとも一部が請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えられることで、その水分含量が上昇する反面、タンパク質の少なくとも一部を粉体状の乳清タンパクに置き換えることでタンパク質の水分含量は低下することになる。
従って、請求項8記載の発明においては、糖分請求項1記載の低カロリーシロップへの置換と、タンパク質の乳清タンパクへの置換を同時に行うことで、スポンジ種中の水分含量の増減を相殺することができる。
この結果、従来のスポンジ生地の風合いや食感に近いスポンジ生地を提供することができるという効果を有する。
よって、請求項8記載の発明によっても請求項7記載の発明と同様に、ベーキングパウダー等の添加物を用いることなしに無添加で低カロリーのスポンジ生地の製造方法を提供することができるという効果を有する。
【0030】
請求項9記載の発明によれば、従来の生クリーム又は植物性脂肪分と砂糖からなるホイップクリームと同程度かつ同質の甘さ,および,外観を有しながら、低カロリーであり、しかも、添加物フリーのホイップクリーム状物を提供することができるという効果を有する。
この結果、病気等の理由によりカロリー制限が必要で高カロリー食品である生クリーム及び砂糖からなるホイップクリームを食べられない人であっても、ホイップクリーム状の物を食べる楽しみを味わうことができるという効果を有する。
【0031】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明を方法の発明として捉えたものであり、請求項10記載の発明により製造されるホイップクリーム状物は、請求項9記載の発明と同じ効果を有する。
また、請求項10記載の発明において、請求項1記載の低カロリーシロップは、ホイップ状物に甘み、照り、滑らかさを付与しながら、卵白との混合体を高粘性体にすることができる。また、卵白を用いることで、請求項1記載の低カロリーシロップと混合されて、メレンゲ状に泡立てられることで無数の気泡からなる白色のクリーム状物を形成させることができる。
この結果、請求項10記載の発明によれば、乳化剤等の添加物を一切用いることなく、例えば、動物性又は植物性の生クリームを主成分とするホイップクリームのようなホイップクリーム状物を製造することができるという効果を有する。
【0032】
請求項11記載の発明は、請求項5又は請求項6記載の発明の効果に、請求項10記載の発明の効果を組み合せた効果を有する。
すなわち、請求項11記載の発明によれば、あたかも砂糖と卵からなるスポンジケーキに,生クリームを主成分とするホイップクリームを用いたような外観を有しながら、このケーキと同程度かつ同質の甘さを有し、かつ、低カロリーで、しかも、無添加のケーキを提供することができるという効果を有する。
この結果、病気等によりカロリー制限を余儀なくされている人も、安心してケーキを食べる楽しみを味わうことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る低カロリーシロップの製造工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施例2に係るスポンジ生地の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例3に係るホイップクリーム状物の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の実施の形態に係る低カロリーシロップおよびそれを用いた菓子および甘味飲料およびスポンジ生地およびホイップクリーム状物およびケーキおよびその製造方法について実施例1乃至実施例3を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1に係る低カロリーシロップ及びその製造方法について図1を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施例1に係る低カロリーシロップの製造工程を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の実施例1に係る低カロリーシロップの製造方法1は、まず、ステップS1として粉末状または顆粒状のエリスリトール100重量部に対して10〜71重量部の水を加えた後、撹拌しながら加熱して水とエリスリトールの混合体を沸騰させる(ステップS2)。より、具体的には、ステップS2においては、100〜110℃程度まで温度を上昇させて沸騰させる。この工程により、顆粒又は粉末状のエリスリトールは水(湯)に溶けて無色透明なシロップとなるので、シロップ状になったら加熱を止めて冷ませばよい(ステップS3)。
上述のように、粉末状または顆粒状のエリスリトールに水を加え(ステップS1)、さらに、加熱してエリスリトールを溶かす(ステップS2)ことにより、非結晶性で添加物フリーの低カロリーシロップ2を得ることができるという効果を有する。
また、このような実施例1に係る低カロリーシロップ2は、甘味料としてエリスリトールを用いているが、高濃度のシロップの状態のままでも、また、この低カロリーシロップ2を甘味料として他の食品に用いた場合でも原料のエリスリトールが結晶質成分として析出することがない。
このため、従来、甘味料としてエリスリトールを用いる場合の特有の課題とされてきた結晶質成分の析出による舌触りの悪さや、ざらついた食感が生じるのを、防止することができる。
しかも、このような従来の課題を解決するために実施例1に係る低カロリーシロップの製造方法1においては、ゲル化剤等の添加物を一切使用していない点に特徴がある。
なお、実施例1に係る低カロリーシロップ2を特にスポンジ生地に用いる場合には、粉末状または顆粒状のエリスリトール100重量部に対して10〜15重量部の水を加えた後、100℃程度まで加熱して沸騰させてから冷却した実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ1)を用いることが望ましい。
なお、実施例1に係る低カロリーシロップ2を特に、後段において説明するホイップクリーム状物に使用する場合には、粉末状または顆粒状のエリスリトール100重量部に対して43〜71重量部の水を加えた後、より具体的には、粉末状または顆粒状のエリスリトール70重量部に対して30〜50重量部の水を加えた後、110℃程度まで加熱して沸騰させてから冷却した実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2)を用いることが望ましい。
【0036】
また、実施例1に係る低カロリーシロップ2の熱量の分析を日本食品分析センターに依頼したところ、実施例1に係る低カロリーシロップ2の熱量はほぼゼロcalであった。このため、実施例1に係る低カロリーシロップ2は、非熱量発生性の甘味料であるといえる。
なお、実施例1に係る低カロリーシロップ2の原料であるエリスリトールは、上述のような温度帯域まで加熱した場合でもその化学的構造が変化することはない。
従って、食品の甘味料として砂糖を用いる代わりに、砂糖の少なくとも一部を実施例1に係る低カロリーシロップに置き換えることで、食品の甘みを損なうことなく安全かつ効率的に糖質に由来するカロリーを低減することができるという効果を有する。
【0037】
また、エリスリトールは砂糖の甘さに近い甘さを有していることから、実施例1に係る低カロリーシロップの甘さも砂糖に似たすっきりとしたものにすることができる。
このため、実施例1に係る低カロリーシロップを砂糖の代わりに食品の甘味料として用いることで、甘味料として砂糖を用いた場合と比較して大幅に食品の味を変化させるおそれがないので、砂糖の代替品として気軽に利用することができる。
特に、菓子を製造する際に用いる多量の砂糖又は粉糖又はグラニュー等の少なくとも一部を実施例1に係る低カロリーシロップに置き換えることで、菓子中の糖分に由来するカロリーを低減することができる。この場合、実施例1に係る低カロリーシロップ2は高濃度液体であるため、製造段階において生地等の水分含量を大幅に上昇させる恐れがないので、上記糖分に容易に置き換えることができる。
この結果、甘みを損なうことなく低カロリーの菓子を提供することができるという効果を有する。
【0038】
さらに、上述のような実施例1に係る低カロリーシロップ2を用いた菓子を製造する場合、製菓材料として用いられるタンパクを、例えば、卵(全卵)の少なくとも一部又は全部を、低カロリータンパク質である乳清タンパク、より望ましくは、粉体状の乳清タンパクに置き換えてもよい。
通常、菓子を製造する場合、加熱調理後の菓子の形状を保持させるためにタンパク質(卵、特に全卵)の熱による変性(硬化)現象を利用している。そして、乳清タンパクは製菓材料として用いた場合、卵、特に全卵とほぼ同じ効果を発揮させることができる反面、全卵よりも乳清タンパクのカロリーは大幅に低いので、製菓材料におけるタンパク質(卵、特に全卵)の少なくとも一部又は全部を乳清タンパク質に置き換えることで、出来上がった菓子の風合いや食感を大幅に損なうことなくそのカロリーを低減することができるという効果を有する。
つまり、菓子を製造する際に糖分の少なくとも一部又は全部を実施例1に係る低カロリーシロップに置き換えるとともに、タンパク質(卵、特に全卵)の少なくとも一部又は全部を乳清タンパクに置き換えることにより、甘みや食感を損なうことなく、かつ、添加物フリーで安全で低カロリーの菓子を提供することができるという効果を有する。
従来、低カロリーの菓子等の食品は、甘味料である砂糖やタンパク質(卵、特に全卵)の使用量を大幅に減らして作られているので、甘味が乏しく美味しく感じられなかったり、食感がぼそぼそとして口当たりが悪い場合が多く、食べる楽しみを十分に満足させない場合が多かった。
これに対して、実施例1に係る低カロリーシロップ及び乳清タンパクを用いて菓子を製造することで、甘くて美味しく低カロリーで、しかも、添加物フリーの安全な菓子の製造を容易にすることが可能になる。従って、病気等を理由に低カロリー食を余儀なくされる人に対して、菓子を食べる楽しみを提供することができるという効果を有する。
【0039】
さらに、実施例1に係る低カロリーシロップは、結晶質成分を析出しないので、甘味飲料の甘味料として砂糖等の糖分の代わりとして使用することも可能である。この場合、甘味飲料の糖分の少なくとも一部を実施例1に係る低カロリーシロップに置き換えることで、甘味飲料中の糖分に由来するカロリーを低減することができるという効果を有する。
また、実施例1に係る低カロリーシロップ2は高濃度のシロップであるため、少量の添加で十分な甘みを付与することができるという効果を有する。
この結果、甘みを損なうことなく低カロリーの甘味飲料を提供することができるという効果を有する。
この場合も、病気等を理由に低カロリー食を余儀なくされる人に対して、甘くて美味しい甘味飲料を摂取カロリーを心配することなく飲める楽しみを提供することができる。
【実施例2】
【0040】
本発明の実施例2に係るスポンジ生地の製造方法について図2を参照しながら詳細に説明する。
実施例2に係るスポンジ生地は、一般的な卵(全卵)と、砂糖又は粉糖又はグラニュー糖等の糖分と、小麦粉からなるケーキ用スポンジ生地における糖分の少なくとも一部又は全部を、上記実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ1)に置き換えることで、従来の無添加のスポンジ生地の甘味や食感を損なうことなくカロリーを低くしたものである。
図2は本発明の実施例2に係るスポンジ生地の製造工程を示すフローチャートである。なお、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例2に係るスポンジ生地の製造方法3は、まず、ステップS1において製菓材料である糖分として例えば、砂糖、及び実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ1)と、タンパク質として卵、特に全卵、小麦粉のそれぞれを計量する。なお、小麦粉はだまにならないよう計量した後にふるいにかけておくとよい。
また、スポンジ生地を製造する際の製菓材料の配合量の一例は、以下の表に示すとおりである。
【0041】
【表1】

【0042】
まず、上表1における配合例1に従って計量された製菓材料を用いてスポンジ生地を製造する場合(ジェノワーズタイプのスポンジ生地を製造する場合)を例に挙げて説明すると、先のステップS11の材料計量工程の後に、容器にタンパク質である全卵を入れ、糖分として砂糖および実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ1)を少しずつ加えながらミキサーでミキシングして泡立てる(ステップS12)。なお、この場合、ある程度泡立てた全卵に、砂糖および実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ1)を加え、さらに、ミキシングしてもよい。
そして、このミキシング工程(ステップS12)の後に、気泡をふんだんに含んで容積が増したタンパク質(全卵)と糖分の混合体の中に、先のステップS11において計量し予めふるっておいた小麦粉を混ぜて気泡を潰さないようにさっくりと混ぜ合わせてスポンジ種とする(ステップS13)。
最後に、この撹拌工程(ステップS13)の後に、型にスポンジ種を流しいれ表面を平に200℃のオーブンで焼いて(ステップS14)スポンジ生地4とする。
【0043】
上述のような実施例2に係るスポンジ生地4の製造方法3によれば、一般的な無添加のスポンジ生地を製造する際に使用する糖分の一部を、実施例1に係る低カロリーシロップ2に置き換えることで、従来の一般的なスポンジ生地と比較して甘さや食感(口当たり)に遜色がなく、かつ、低カロリーであるスポンジ生地4を提供することができるという効果を有する。
この結果、例えば、病気等を理由に低カロリー食の摂取を余儀なくされている人も、甘くて美味しいスポンジ生地を食べる楽しみを味わうことが可能になる。
【0044】
なお、実施例2に係るスポンジ生地を製造する場合で、かつ、糖分の全てを実施例1に係る低カロリーシロップ2とする場合でも、具体的には、上記表1中の配合例2に示される製菓材料を用いてスポンジ生地を製造する場合でも、実施例1に係る低カロリーシロップ2は高濃度のシロップであるため、スポンジ種が柔らかくなりすぎるという不具合等はほとんど生じない。
また、スポンジ生地の製造に用いられるタンパク質の全卵は、先にも述べたように乳清タンパクに置き換えることが可能である。さらに、乳清タンパクは通常粉末状であるため、全卵の添加量を減らしてそれを補うように粉末状の乳清タンパク質を添加した場合(上記表1中の配合例3を参照)、実施例1に係る低カロリーシロップ2を用いることによるスポンジ種の水分含量の上昇分が、粉体状のタンパク質の添加により相殺されるので、出来上がった実施例2に係るスポンジ生地4を従来のスポンジ生地の風合いに一層近づけることができる。
さらに、上表1の配合例4に示すように、実施例2に係るスポンジ生地4の製造時に、糖分の全てを実施例1に係る低カロリーシロップ2を用いる場合、タンパク質の全てを乳清タンパク質に置き換えてもよい。この場合も同様に、実施例1に係る低カロリーシロップ2を用いることによるスポンジ種の水分含量の上昇を、粉体状のタンパク質の添加により相殺することができるので、来上がった実施例2に係るスポンジ生地4を従来のスポンジ生地に比べて遜色のない柔らかいものにすることができるという効果を有する。
【0045】
しかも、先にものべたように、乳清タンパクは全卵と同様にスポンジ生地を固めるという作用を有しながら、全卵よりも低カロリーであるため、実施例2に係るスポンジ生地4の製造時に、実施例2に係るスポンジ生地4のカロリーを大幅に低減することができる。
この結果、食べたときに十分に甘くて、口当たりが滑らかであり、かつ、低カロリーで、しかも、添加物フリーのスポンジ生地4を提供することができるという効果を有する。
従って、カロリー制限が必要な人であっても、甘くて美味しくて安全なスポンジ生地を食べながら、確実にカロリー制限を行うことができるという効果を有する。つまり、カロリー制限に伴う心理的苦痛、例えば、甘いものが食べられない、あるいは、食べ物が美味しく感じられないといった感覚を大幅に緩和することができる。
【0046】
なお、配合例4の配合で実施例2に係るスポンジ生地4を製造した場合、焼き上がったスポンジ生地は黄色味の少ない白っぽいものになってしまい食欲をそそらない場合もある。
この場合、上表1の配合例5に示すように、糖分として添加する実施例1に係る低カロリーシロップ2の一部を、同じく低カロリーの糖分として知られる羅漢糖(羅漢糖100(g)で約1calに相当)に置き換えることで、この羅漢糖によりスポンジ生地を黄色味がかった色に着色することができる、この結果、スポンジ生地4をあたかも全卵を用いて作ったかのような風合いにすることができる。
この場合、甘くて美味しくしかも低カロリーであり、かつ、外観が通常の全卵を使用したスポンジ生地に近く、添加物フリーのスポンジ生地を提供することができるという効果を有する。
【0047】
なお、実施例2に係るスポンジ生地を製造する際の製菓材料の配合は上表1に示されるものに限定されるものではなく、スポンジ生地の用途や目的に応じて適宜変更可能である。
また、実施例2に係るスポンジ生地の製造方法3は、図2に示されるものに限定されるものではなく、例えば、上表1に示す配合例1場合のように全卵及び砂糖を使用する場合には下記のような手順(ビスキュイタイプのスポンジ生地の製造方法)で実施例2に係るスポンジ生地4を製造することも可能である。
まず、卵黄と卵白を分けておき、卵黄と砂糖及び実施例1に係る低カロリーシロップ2を、又は、卵黄と実施例1に係る低カロリーシロップ2をミキシングし(第1のミキシング工程)、これとは別に、卵白に砂糖を加えながらミキシングしてメレンゲ状にしておき(第2のミキシング工程)、卵黄と糖分をミキシングしたものにメレンゲ状の卵白を加えてメレンゲの気泡を潰さないように混ぜた後(第1の撹拌工程)、ふるった小麦粉を加えてさっくりと混ぜてから(第2の撹拌工程)、型に流しいれて200℃のオーブンで焼成してスポンジ生地4としてもよい。
この場合も、糖分として添加する砂糖の少なくとも一部が実施例1に係る低カロリーシロップ2に置き換えられているので、従来のスポンジ生地よりもカロリーの低いスポンジ生地4を提供することができるという効果を有する。
なお、上表1に示す配合例1〜5はいずれも、直径18cmのスポンジケーキ型1個分の分量である。
【実施例3】
【0048】
本発明の実施例3に係るホイップクリーム状物の製造方法について図3を参照しながら詳細に説明する。
一般に、ホイップクリームは、動物性脂肪又は乳化した植物性脂肪からなる生クリームに砂糖を加えてミキシングして無数の微小な気泡を含ませることでクリーム状にしたものであり、高カロリー食品であることが知られている。このため、カロリー制限が必要な人の食品としては適さないとされてきた。
これに対して、ホイップクリームを用いたケーキ等は菓子類の代表的なものであり、これらの全てを我慢しなければならないことは、カロリー制限が必要な人にとって大きなストレスになっていた。
そこで、発明者は鋭意研究の結果、ミキシングすることで白色のクリーム状となる卵白からなるメレンゲと、上述の実施例1に係る低カロリーシロップ2とを組み合わせることで、外観は動物性又は植物性脂肪と砂糖とからなるホイップクリームとほぼ同じに見えるホイップクリーム状物を作ることで、従来のホイップクリームの代用品として利用できることを見出した。
【0049】
図3は本発明の実施例3に係るホイップクリーム状物の製造工程を示すフローチャートである。なお、図1又は図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例3に係るホイップクリーム状物6を製造するには、まず、製菓材料である卵白と、砂糖(又は粉糖又はグラニュー糖)及び実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2),又は,実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2)のみを計量し(ステップS21)しておく。
そして、この材料計量工程(ステップS21)の後に、計量された卵白を容器に移して六分立て程度になるようミキシングし(ステップS22)てから、先に計量しておいた,砂糖(又は粉糖又はグラニュー糖)及び実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2),又は,実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2)のみを加え、さらに、口金等を備える絞り器で絞り出した際にその形状が維持される程度の硬さになるまでミキシングすればよい(ステップS23)。
なお、実施例3に係るホイップクリーム状物6を製造する際に、糖分として使用する砂糖及び実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2),又は,実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2)の一部を羅漢糖に置き換えても良い。この場合、実施例3に係るホイップクリーム状物6を、食欲をそそるような黄味がかった色にすることができるという効果を有する。
【0050】
このような実施例3に係るホイップクリーム状物6によれば、動物性又は植物性の脂肪を一切用いることなしに、外観が動物性又は植物性脂肪からなるホイップクリームとほとんど変わらないものを提供することができる。
また、実施例3に係るホイップクリーム状物6は十分な甘さを有しながら低カロリーで、かつ、乳化剤等の添加物もフリーであるため、このホイップクリーム状物6を食べることで擬似的に動物性又は植物性脂肪からなるホイップクリームを食べる楽しみを味わうことができるという効果を有する。
【0051】
なお、実施例3に係るホイップクリーム状物6を製造する場合で、かつ、実施例1に係る低カロリーシロップ2のみを用いる場合は、配合の目安として、例えば、卵白100重量部に対して実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2)を60〜100重量部加えるとよい。
なお、実施例3に係るホイップクリーム状物6の使用目的に応じて硬さや甘さを調節する必要がある場合には、上記の低カロリーシロップ2の添加量をメレンゲの形成を妨げない範囲内において適宜変更することが可能である。
【実施例4】
【0052】
本発明の実施例4に係るケーキについて説明する。
実施例4に係るケーキは、上述の実施例2に係るスポンジ生地を円筒状の型で焼成した後、荒熱をとり、2〜3枚にスライスしてその間に実施例3に係るホイップクリーム状物6を挟んだものである。
なお、ホイップクリーム状物6と併せてフルーツ等を挟み込んでもよいし、ホイップクリーム状物6を挟んだスポンジ生地4の上面及び周囲を実施例3に係るホイップクリーム状物6及び季節のフルーツ等でデコレートしてもよい。
このような実施例4に係るケーキによれば、卵や砂糖を使用した従来のスポンジ生地に、動物性又は植物性の脂肪からなるホイップクリームを挟んだ,又は,デコレートしたケーキとほとんど外観が同じケーキを提供することができるという効果を有する。
この実施例4に係るケーキは、従来の例えばショートケーキ等に比べて大幅にカロリーが低いものとなっている。
より具体的には、日本食品分析センターに分析を依頼したところ、上述の表1の配合例4に記載される製菓材料から作られたスポンジ生地4に、実施例3に係るホイップクリーム状物6(糖分として実施例1に係る低カロリーシロップ2(タイプ2)のみを使用)を使用したショートケーキ状のケーキ一切れ(約45(g))の熱量は24kcalであった。なお、同じく日本食品分析センターにおいて分析された、卵(全卵)と砂糖を用いて製造した従来のスポンジ生地に動物性脂肪と砂糖からなるホイップクリームを使用したケーキ100(g)当たりの熱量は334kcalであるため、実施例4に係るケーキは従来のケーキよりも大幅にカロリーが低減されているといえる。
従って、実施例4に係るケーキによれば、カロリー制限が必要な人でも甘くて美味しく、かつ、添加物フリーのケーキを食べるという楽しみを味わいながら、摂取カロリーを大幅に削減することができるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように本発明は低カロリー(ノンカロリー)甘味料であるエリスリトールと水のみから製造され、使用時に結晶質成分の析出生じず、口にした際にざらつき感のない高濃度の低カロリーシロップおよびそれを用いた菓子および甘味飲料およびスポンジ生地およびホイップクリーム状物およびケーキおよびその製造方法であり、食品や健康食品、飲料に関する分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…低カロリーシロップの製造方法 2…低カロリーシロップ 3…スポンジ生地の製造方法 4…スポンジ生地 5…ホイップクリーム状物の製造方法 6…ホイップクリーム状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状又は顆粒状のエリスリトール100重量部に10〜71重量部の水を加えて沸騰させた後冷却してなることを特徴とする低カロリーシロップ。
【請求項2】
製菓原料の糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えたことを特徴とする菓子。
【請求項3】
製菓原料のタンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えたことを特徴とする請求項2に記載の菓子。
【請求項4】
甘味飲料に添加される糖分の少なくとも一部を請求項1記載の低カロリーシロップに置き換えたことを特徴とする甘味飲料。
【請求項5】
請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分と、タンパク質と、小麦粉とを原料とすることを特徴とするスポンジ生地。
【請求項6】
前記タンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えたことを特徴とする請求項5記載のスポンジ生地。
【請求項7】
請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分にタンパク質を加えてミキシングして泡立てた混合体とする第1の工程と、
この第1の工程の後に、前記混合体に小麦粉を加えて撹拌してスポンジ種とする第2の工程と、
この第2の工程の後に、前記スポンジ種を焼き上げてスポンジ生地にする第3の工程とを有することを特徴とするスポンジ生地の製造方法。
【請求項8】
前記タンパク質の少なくとも一部を乳清タンパクに置き換えたことを特徴とする請求項7記載のスポンジ生地の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分と、卵白とからなることを特徴とするホイップクリーム状物。
【請求項10】
卵白に請求項1記載の低カロリーシロップを少なくとも一部含有する糖分を加えてメレンゲ状に泡立てることを特徴とするホイップクリーム状物の製造方法。
【請求項11】
請求項5又は請求項6記載のスポンジ生地と、請求項9記載のホイップクリーム状物とを有することを特徴とするケーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−67181(P2011−67181A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223424(P2009−223424)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(399017027)有限会社お菓子のピエロ (1)
【Fターム(参考)】